(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528621(P2015-528621A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】パターンを記録媒体内に光転写するための方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/84 20060101AFI20150901BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20150901BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
G11B5/84 Z
G03F7/20 501
G03F7/40 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-526875(P2015-526875)
(86)(22)【出願日】2013年7月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月10日
(86)【国際出願番号】DE2013000377
(87)【国際公開番号】WO2014026662
(87)【国際公開日】20140220
(31)【優先権主張番号】102012016178.6
(32)【優先日】2012年8月16日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ハルトデーゲン・ヒルデ
(72)【発明者】
【氏名】ミクリッツ・マルティン
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
5D112
【Fターム(参考)】
2H196AA30
2H196EA06
2H196EA23
2H196HA23
2H196JA04
2H197AA28
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2H197CE10
2H197HA10
5D112AA02
5D112AA24
5D112BA09
5D112GA00
(57)【要約】
本発明の範囲内では、パターンを記録媒体内に光転写するための方法が改良されてある。この記録媒体の特定の個所が、1つの光子源からの複数の光子を入射することによって書き込まれていない第1状態から書き込まれた第2状態に移行可能である。その結果、この記録媒体の当該2つの状態が、この記録媒体の異なる物理特性及び/又は化学特性として現れる。本発明によれば、毎秒10
4個未満の光子から成る光量子束を放射する少なくとも1つの光子源が、当該光子の入射のために選択される。当該入射が、マスクによって部分的に遮蔽される必要なしに、非常に微細なパターンが、当該非常に小さい光量子束によって記録媒体内に有益に転写され得ることが確認された。こうして、回折限界によって予め設定された、放射された光子が当たる場所に対する確率分布の幅よりも、明らかに狭いパターンが、当該光子の所定の波長(エネルギー)によって転写され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを記録媒体内に光転写するための方法であって、この記録媒体の特定の個所が、1つの光子源からの複数の光子を入射することによって書き込まれていない第1状態から書き込まれた第2状態に移行可能であり、この記録媒体の当該2つの状態が、この記録媒体の異なる物理特性及び/又は化学特性として現れる当該方法において、
毎秒104個未満の光子から成る光量子束を放射する少なくとも1つの光子源が、当該光子の入射のために選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記光子源は、1〜100個の光子を放射するデューティーサイクルで駆動されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光子源は、前記記録媒体に対して1μm未満の駆動距離に離間されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記光子源と前記記録媒体とが、互いに相対移動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
光子数が、所定の閾値を上回るときに初めて、この記録媒体の特定の個所が、書き込まれていない状態から書き込まれた状態に移行される1つの記録媒体が選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
フォトリソグラフィー用のフォトレジストが、記録媒体として選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
別々に駆動可能な複数の光子源から構成された1つの配列が選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の光子源は、100nm未満、好ましくは50nm未満の格子幅を有する格子内に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各光子源iが駆動される頻度及び/又は期間xiが、連立方程式の解として算定され、この連立方程式では、前記記録媒体上又は内の各箇所kに入射された光子数Dkは、各光子源iがこの光子数Dkを放射するための寄与率dik(xi)の和として表されていることを特徴とする請求項7〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記連立方程式では、前記寄与率dik(xi)は、xiと、前記光子源iから放射されたそれぞれ1つの光子が前記記録媒体上又は内の前記箇所kに入射する確率pikとの積として表されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記の複数の光子源から構成された配列は、前記記録媒体に対して異なるn個の位置に設けられること、及び、光子数Dkは、位置p=1,...,nに対する前記各光子源iが前記光子数Dkを放射するための寄与率dikp(xip)の和として表されることを特徴とする請求項9〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マイクロパターン及びナノパターンが、多くの場合に光リソグラフィーの方法で製作される。この場合、最初に、パターン形成すべき基板が、記録媒体でコーティングされる。
【0002】
光が、マスクの特定の個所を通過してこの記録媒体に露光されることによって、製作すべきパターンが、この記録媒体内に転写される。この記録媒体は、当該転写によって書き込まれていない状態から書き込まれた状態に移行される。当該書き込まれた状態は、この記録媒体の変化した物理特性及び/又は化学特性として明確に現れる。次いで、この記録媒体は、その書き込まれた箇所又はその書き込まれていない箇所で選択的に除去される。さらに、当該基板が、その露出された箇所で処理、例えばエッチングされ得る。
【背景技術】
【0003】
書き込むべきパターンの最少寸法が、回折に起因して光の波長の長さに拘束される。それ故に、当該パターンを小さくするためには、すなわち、空間解像度を改良するためには、使用される光の波長が、引き続き短くされる必要がある。パターンの変更ごとに時間と経費をかけて新しいマスクを改めて製作しなければならない場合、特に新しいパターンの原盤を製作するために光リソグラフィーを実際に使用することが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007078613号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故に、本発明の課題は、改良された空間解像度を呈し、同時にマスクの製作なしに実施できる、パターンを記録媒体に光転写するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、独立請求項に記載の方法によって解決される。その他の好適な構成は、当該独立請求項を引用する従属請求項に記載されている。
【0007】
パターンを記録媒体内に光転写するための方法が、本発明の範囲内で改良された。この記録媒体の特定の個所が、1つの光子源からの複数の光子を入射することによって書き込まれていない第1状態から書き込まれた第2状態に移行可能である。その結果、この記録媒体の当該2つの状態が、この記録媒体の異なる物理特性及び/又は化学特性として明確に現れる。
【0008】
本発明によれば、毎秒10
4個未満の光子から成る光量子束を放射する少なくとも1つの光子源が、上記の光子の入射のために選択される。
【0009】
上記入射が、マスクによって部分的に遮蔽される必要なしに、非常に微細なパターンが、当該非常に小さい光量子束によって記録媒体内に有益に転写され得る。すなわち、記録媒体内に書き込まれるパターンを固定するため、様々な選択肢が、小さい光量子束に起因して提供され得る。例えば、複数又は多数の光子源から構成された配列が選択され得る。これらの光子源が、別々に駆動可能でない場合は(受動的なリソグラフィー)、書き込まれるパターンが、これらの光子源の位置によって固定される。さらに、これらの光子源が、別々に駆動可能である場合は(能動的なリソグラフィー)、書き込まれるパターンが、駆動パターンによって固定される。また、これらの光子源又は複数の光子源から構成された配列は、記録媒体に対して移動、特に走査され得る。
【0010】
従来の技術によるマスクの使用には、多くの欠点があることが確認されている。これらの欠点を総括すると、一般に、上記リソグラフィーで実際に達成可能な空間解像度が、光の波長の約半分の回折限界よりも明らかに低いということである。
・一般に、マスクは、横方向にパターン形成された非透光性層、例えばクロム層から構成される。当該非透光性層は、書き込むべきパターンを特定し、当該非透光性層自体が、透光性層上にコーティングされている。十分な機械的な安定性を保証するため、この透光性層は、少なくとも約1〜2mmの厚さを有する必要がある。当該非透光性層は、光の侵入深さよりも明らかに厚い必要がある。何故なら、光が、完全に遮蔽されなければならないからである。光の極一部が透過されると、記録媒体の本来ならば書き込むべきでない箇所が、徐々に書き込まれてしまう。何故なら、当該記録媒体が、その期間にわたって光子と相互に作用するからである。このとき、光の波長、すなわちパターンの大きさに比べて明らかに厚い幅のマスクが、光源と記録媒体との間の最小距離を決定する。この距離が大きいほど、使用される光子に対するエネルギーと露光方向との専ら限定されたシャープな分布が、書き込まれたパターンのボケとしてより強く現れる。
・別の回折効果が、非透光性層のパターンのエッジで発生する。当該別の回折効果も、書き込まれたパターンにボケを発生させる。
・マスクは、制限された精度でしか製作され得ない。その結果、書き込まれるパターンの寸法パターンの精度が、さらに低下する。
・巨視的なサイズ、例えば、数インチの直径を成す一般的な半導体ウェハのサイズを有するマスクが、通常は広帯域光源、例えばランプによって露光される。当該光源の強度分布が、当該巨視的なサイズにわたって均一でない。その結果、記録媒体の異なる複数の領域内の複数のパターンが、異なる強度で書き込まれる。
【0011】
一方で、本発明によれば、マスクが省略され得ることによって、これらの誤差源が排除され、達成可能な解像度が、回折限界に近づく。また、多大な労力を要し且つ非常に高価なマスクの製造及びパターン形成が省略される。従来の技術によれば、当該マスクの製造及びパターン形成は、新規のパターンの原盤を実現するときの障害となっていた。
【0012】
記録媒体の1つの分子又は1つの化学単位を、書き込まれていない状態から書き込まれた状態に移行させるためには、少なくとも1つの光子が、エネルギー入力として必要である。供給される光子が少ないほど、より少数の分子又は化学単位が変化される。それ故に、好ましくは、光子源が、1〜100個の光子を放射するデューティーサイクルで駆動される。1つの光子が、1デューティーサイクル当たり正確に放射されるときに、最も小さい変化が、記録媒体で起こり得る。
【0013】
何処でこの変化が起こるかは、光子源の放射特性にしたがって確率分布によって決まる。光子数が多い場合には、この確率分布は、当該光子源の巨視的な放射輪郭に対応する。光子源と記録媒体との間の距離が大きいほど、当該確率分布が、空間的により広くなる。それ故に、好ましくは、当該光子源は、記録媒体に対して1μm未満の駆動距離に離間される。最小に可能な当該駆動距離が、主に、表面粗さと、これに起因した光源と記録媒体との間の機械的な衝突の危険とを踏まえて予め設定されている。
【0014】
本発明の特に好適な構成では、光子源と記録媒体とが互いに相対移動される。この移動は、パターンとして記録媒体内に転写することができる1つの線に沿って実施される。しかし、当該移動は、例えばスクリーニングして実施されてもよい。この場合、当該光子源は、記録材料が転写すべきパターンにしたがって変化されなければならない格子の地点だけで活性化される。
【0015】
したがって、放射された格子が記録媒体上に当たる場所が、格子点ごとに同様に確率分布によって決まる。それにもかかわらず、この確率分布の幅よりも明らかに小さいパターンが転写され得る。このため、光子数が、所定の閾値を上回るときに初めて、記録媒体の特定の個所が、書き込まれていない状態から書き込まれた状態に移行されるように、当該記録媒体は有益に選択される。このとき、当該格子の幅と、各格子点に入射される光子数とを適切に選択することによって、当該記録媒体上に入射される全ての光子数のうちの、転写すべきパターンに沿って存在する、当該閾値より上にある空間分布だけが生成され得る。当該記録媒体のその他の領域も光子を受け取ることは、2つの状態である「書き込まれていない状態」と「書き込まれた状態」とを区別するだけの実際の用途に対しては、もはや重要でない。
【0016】
こうして、回折限界によって予め設定された、放射された光子が当たる場所に対する確率分布の幅よりも、明らかに狭いパターンが、当該光子の所定の波長(エネルギー)によって転写され得る。従来のリソグラフィーは、これとは違って回折によって制限され、より小さいパターンサイズを転写するために、より短い波長を必要とする。波長が短いほど、光源と光学装置とに対してかけるべき経費がより大きい。直接熱光源では、当該直接熱光源を構成している個々の光子のエネルギー及び露光方向が、大きく揺らぐ。
【0017】
好ましくは、フォトリソグラフィー用のフォトレジストが、記録媒体として選択される。このフォトレジストは、当該書き込まれた状態にある個所(ネガ型レジスト)又は当該書き込まれていない状態にある個所(ポジ型レジスト)を選択的に除去され得る。このとき、フォトレジストがコーティングされてある基板が、このようにしてパターン形成されたフォトレジストから成るマスクを通じて、例えばイオンエッチング又は湿式化学エッチングによって物理的又は化学的に処理され得る。こうして、パターンが、記録媒体から基板内に転写される。フォトレジストのほかに、例えば、相変化媒体及び熱能動媒体も、記録媒体として適する。
【0018】
本発明の特に好適な構成では、別々に駆動可能な複数の光子源から構成された配列が選択される。この配列は、特に100nm未満、好ましくは50nm未満の格子幅を有する格子の形態で配置され得る。20nmまでの寸法を有する複数の単一光子源が使用可能である。当該格子は、一次元、例えば1つの線に沿ったドットマトリックスでもよく、又は二次元、例えば格子状のドットマトリックスでもよい。このとき、起動されたそれぞれの光子源が、当該光子源から放射された光子の空間確率分布で当該記録媒体を露光する。この場合、起動された隣接の光子源に起因する空間確率分布が重畳してもよい。当該記録媒体は、その露光された個所にわたって書き込まれていない状態から書き込まれた状態に移行される。総数で少なくとも必要な閾値に達する数の光子が、当該個所に入射する。上記ドットマトリックス内のどの光子源を、どのくらいの期間で又はどのくらいの頻度で駆動させなければならないかという規則にしたがって、サイズが上記ドットマトリックスの範囲内で変更可能であるパターンが、直接的に鮮明に形成され得る。異なる多数のパターンが、物理的に製作された1つの配列を用いて、当該駆動を変更することによって書き込まれ得る。このとき、当該パターンの適合が、ハードウェアによってマスクを適合するのではなくて、当該駆動をソフトウェアによって変更することで実施され得る。
【0019】
本発明の特に好適な構成では、上記頻度及び/又は期間x
iが、連立方程式の解として算定される。各光子源iが、当該頻度及び/又は期間x
iで駆動される。この連立方程式では、記録媒体上又は内の各箇所kに入射された光子数D
kは、各光子源iがこの光子数D
kを放射するための寄与率d
ik(x
i)の和として表されている。ここで、右辺で成立する当該D
kは、転写すべきパターンによって予め設定されている。この場合、当該連続する記録媒体は、個々の箇所kに離散化されてある。当該寄与率d
ik(x
i)は、光子源の放射特性によって決まる。原理的には、実際に書き込まれたパターンと予め設定されたパターンとには、小さい偏差が常に存在する。何故なら、記録媒体上又は内のどの箇所に、各光子源から放射された光子が入射するかの複数の確率分布が、書き込むべきパターンに似た形を有するとは限らないからである。しかしながら、これらの確率分布は重畳するので、当該偏差が最少になるように、個々の光子源の寄与率が、当該連立方程式の解によって最適化され得る。好ましくは、当該寄与率d
ik(x
i)は、x
iと、光子源iから放射された個々の光子が記録媒体上又は内の箇所kに入射する確率p
ikとの積として表される。このとき、当該連立方程式は、線形になる。個々の光子源の放射特性、これらの光子源の空間配列及び画素密度が、この連立方程式の複数の係数で表されている。記録媒体が、当該画素密度によって個々の箇所kに離散化されてある。
【0020】
本発明の特に好適な構成では、複数の光子源から構成された配列が、記録媒体に対して異なるn個の位置に設けられている。この連立方程式の複数の方程式では、D
kは、位置p=1,...,nに対する各光子源iがこの光子数D
kを放射するための寄与率d
ikp(x
ip)の和として表されている。当該n個の位置は、例えば、ドットマトリックスの複数のドットでもよい。このドットマトリックスは、複数の個所kの格子よりも明らかに微細である。達成すべき光子数D
kが、これらの個所kに対して設けられている。この連立方程式の解は、一組のx
ipである。すなわち、この連立方程式の解は、各光子源iに対して、この光子源iを、どの個所pに対してどのくらいの期間で又はどのくらいの頻度で駆動させなければならないかという厳密な規則である。個所p=1,...,nに対する当該複数の光子源の配列が、連続して次々に起動する間に、当該個々の光子源が、記録媒体内に転写すべき予め設定された1つのパターンから「発光」される。
【0021】
こうして、複数の光子源が配置されている上記格子よりも明らかに微細なパターンも転写され得る。当該精度の一部が、転写されたパターンの精度になる。当該複数の光子源から構成された配列の位置が、当該精度に起因して記録媒体に対してずれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】マトリックスを成す個々の光子源を別々に駆動させるための回路構成を示す。
【
図3】複数の光子源から構成された六角形配列の電子顕微鏡写真を示す。
【
図4】
図3に示された複数の光子源に由来する発光特性を示す。
【
図6】高周波パターン内に組み込まれている
図5に示された単一光子源を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の方法の実施の形態を概略的に示す。記録媒体2が、基板1上に形成されている。パターンをこの記録媒体2内に転写することができる。このパターンを転写するため、多数の単一光子源4を有するキャリア基板3が、この記録媒体2に近接して配置される。このとき、この記録媒体2は、起動されて光5を放つ光子源4の領域内だけで、書き込まれていない状態から書き込まれた状態に切り替えられる。したがって、様々なパターンが、専ら異なる駆動だけで書き込まれ得る。この実施の形態の最も簡単な方式では、当該複数の単一光子源4が、別々に起動可能であるのではなくて、全体で起動されているか又は全体で起動されていない。このとき、当該書き込まれるパターンは、キャリア基板3の平面内の光子源4の二次元配列によって既定されている。
【0024】
図2は、複数の光子源4を別々に駆動させるための回路構成を示す。複数のワード線W1,W2,…,Wnから構成された第1格子と、複数のビット線B1,B2,…,Bnから構成された第2格子とが設けられている。当該両格子が一緒に、矩形格子を生成する。当該複数の光子源4が、この矩形格子と同じ周期で配置されている。この場合、1つの光子源が、1つのワード線に正確に接続されていて且つ1つのビット線に正確に接続されている。したがって、電圧が、1つのワード線と1つのビット線との間に印加されると、1つの光子源4が、正確に駆動される。しかしながら、これらのワード線及びビット線は、同一平面上に延在する必要はなく、当該複数の光子源4と同一平面上に延在する必要もない。当該複数の光子源4は、例えば発光ダイオード(LED)である。当該発光ダイオードの場合、n接点とpn接合とp接点とから構成された積層体が、図面に対して法線方向に延在する。すなわち、各ワード線が、複数のn接点だけに接合するように、例えば当該複数のワード線が、これらのn接点の下に延在してもよいし又はこれらのn接点と同一平面上に延在してもよい。各ビット線が、複数のp接点だけに接合するように、当該複数のビット線が、これらのp接点の上に延在してもよいし又はこれらのp接点と同一平面上に存在してもよい。
【0025】
1つのワード線と1つのビット線との間の当該クロスバーアレイにおいて、このワード線とこのビット線との間を直接に接続する光子源4を貫く電流経路は、原理的には1つだけでない。この直接の電流経路のほかに、多数の別の光子源4を貫く複数の別の寄生電流経路がさらに存在する。しかしながら、当該寄生電流経路上の各光子源は、駆動されたワード線と駆動されたビット線との間に直接に接続されている光子源よりも遥かに低い電圧で印加される。寄生電流経路上の光子源に対する当該電圧は、LEDを発光させるように駆動させるため必要になる、バンドギャップに起因する最小電圧より低い。それ故に、複数の別の光子源を貫く複数の寄生電流経路が存在するものの、上記の駆動されたワード線と駆動されたビット線との間に直接に接続された光子源4だけが、当該発光のために起動される。
【0026】
図3は、複数の光子源4から構成された六角形配列の電子顕微鏡写真を示す。部分写真bは、部分写真aの一部の領域の拡大写真である。これらの光子源4は、複数のLED構造体である。これらのLED構造体に共通のn領域は、
図3に暗く示された、サファイア基板上のnドープされたGaN層4aである。ドープされなかったGaInN/GaN多層構造体4bから成るエッチングされた複数の柱体が、当該nドープされたGaN層4a上に存在する。これらの柱体はそれぞれ、1つの多重量子井戸(MQW)を形成する。このMQWは、当該光子源の波長を決定する能動媒体として機能する。pドープされたGaNが、p領域4cとして各MQW上に成長されている。
【0027】
上記多層構造体4b及び上記p領域4cが、最初に平坦な複数の層として上記GaN層4a上に形成されたことによって、上記六角形配列が製作された。次いで、光子源4が、柱体として形成されなければならない箇所にわたって、当該p領域4cが露出されるように、フォトレジストが、電子線リソグラフィーによってパターン形成されてある。ニッケル層が形成された。次いで、ニッケル4dだけが、当該p領域4c上に残り、その他のニッケルは除去されるように、当該フォトレジストが、リフトオフによって除去された。当該多層構造体4b及び当該p領域4cが、当該ニッケルによって保護されなかった箇所にわたって、当該多層構造体4b及び当該p領域4cが、当該GaN層4aまでエッチングによって除去されてある。
【0028】
図3に示された段階では、上記六角形配列には、p領域4cをその外部に接続する電気接続部がない。領域4c及び4dが、少しだけ突出する程度の高さまで、絶縁材料が、柱体同士間に充填されることによって、この電気接続部は製作され得る。例えば水素シルセスキオキサン(HSQ)が、当該絶縁材料として適する。この水素シルセスキオキサン(HSQ)は、スピンコートで当該六角形配列上に成膜され得、熱の作用の下で絶縁性のSiO
2を最終生成物として形成する。当該SiO
2層が形成されている場合、上記ニッケルが選択的に除去され、ニッケル・金合金から成る透明で導電性の接触層が、当該ニッケルを除去されたp領域4c上に形成される。この接触層は、当該希望した領域4cをその外部に接続する。n接点が、SiO
2のアルゴンイオンビームエッチングによって、リソグラフィー法で予め決めてある領域内のnGaN層まで形成される。次いで、Ti層/Al層/Ni層/Au層が金属コーティングされる。その後に、当該Ti層/Al層/Ni層/Au層は合金にされる。
【0029】
また、複数の光子源4が、別々にアドレス付け可能になるように、上記六角形配列が構成され得る。このため、GaN層4aが、複数のワード線として構成される。これらのワード線はそれぞれ、列を成す複数の柱体を互いに接続する。このとき、各柱体は、1つのワード線上ごとに正確に直立している。これらのワード線が、互いに絶縁されているように、当該GaN層4aが、これらのワード線同士間でサファイア基板まで除去される。上記の透明で導電性の接触層が、複数のビット線として横方向にパターン形成される。これらのビット線はそれぞれ、複数の領域4cの相互の間隙を結合し、その外部に接続する。このとき、1つの光子源4が、1つのワード線と1つのビット線との間に電圧を印加することによって正確に起動され得る。
【0030】
図4aは、
図3に示された層配列を325nmの光波長で光励起させて発光したフォトルミネセンスの空間分布を示す。当該フォトルミネセンスは、440nmの波長で発生する。当該フォトルミネセンスの測定は、製造時の品質管理のための中間試験として適している。フォトルミネセンスが発生しないときは、当該製造された六角形配列は、不良品であり、さらなる処理ステップは不要である。
【0031】
図4bは、(フォトレジストをコーティングする前の)平坦な積層スタック(曲線(i))と1つの光子源(曲線(ii))とのためのエネルギーEに対するエレクトロルミネセンスの強度分布Iを示す。
図3に示された六角形配列は、この積層スタックから製造された。当該強度分布は、曲線(i)に対しては140meVの半値幅(FWHM)を有し、当該強度分布は、曲線(ii)に対しては100meVの半値幅を有する。この光子源4の空間寸法が、平坦な層から柱体に縮小されたことによって、複数の単一光子の放射が、十分に短いパルス期間で誘発され得るように、単位時間当たりに放射された当該光子の数が大幅に減少した。エッチングされた柱体が小さいほど、当該柱体内の量子閉じ込め効果がより顕著であり、1つの単一光子源を発光させる光子エネルギーの範囲がより狭い。
【0032】
図5は、本発明の方法を実施するために適している、単一光子源4を実現するための別の実施の形態を示す。最初に、nドープされたGaN層52が、有機金属気相成長(MOVPE)法によってサファイア基板51上に形成される。HSQ層53が、スピンコートでこのGaN層52上に成膜される。このHSQ層53は、熱の作用の下で絶縁性のSiO
2を最終生成物として形成する。ポリメタクリル酸メチル樹脂PMMAが、コーティングされ、電子線リソグラフィー用のポジ型レジストとして使用される。当該層が、単一光子源4を構成しなければならない箇所で電子線によって露光され、次いで選択的に除去される。露出されたSiO
2が、反応性イオンエッチングによって除去される。次いで、当該PMMAが除去される。SiO
2は、単なる絶縁性の材料ではなくて、後続するエピタキシー用のマスクとして使用される。InNが、さらなるMOVPE法によって当該HSQ層内に形成されている開口部を通じて当該n−GaN上に選択的に形成される。当該InNは、錐体として当該SiO
2マスクから成長する。当該錐体は、pドープされたGaN55によって等角に成長される。その結果、LEDのpin接合が、当該pドープされたGaNと当該ドープされなかったInNと当該nドープされたGaNとの間に形成される(
図5a)。
【0033】
SiO
2層53が露出される複数の領域が、錐体54/55の左側と右側とに発生するように、フォトレジスト層56が、コーティングされ、リソグラフィー法によってパターン形成される。これらの領域内では、当該SiO
2層53とnGaN層52の表面に近い領域とが、破線の矢印で示されたアルゴンイオンビームエッチングによって除去される(
図5b)。次いで、複数の金属Ti/Al/Ni/Auがコーティングされる。これらの金属は、これらの領域内でその合金化後に複数の金属端子57を形成する。これらの金属端子57は、当該n−GaN層をその外部に接続する。残りの金属は、フォトレジスト層56のリフトオフによって除去される。別のフォトレジスト層58がコーティングされ、錐体54が露出されるように、当該別のフォトレジスト層58が、横方向にパターン形成される(
図5c)。
【0034】
上記錐体54/55を包囲する金属−ここでは、Ni及びAu−が、新たにコーティングされる。上記フォトレジスト層58上に沈着された当該金属が、新たなリフトオフによって除去される。1つの金属端子59が残存する。当該錐体54/55が、この金属端子59を通じて駆動され得る。電圧が、当該金属端子57と当該金属端子59との間に印加されるときに、当該光子源が起動される。
【0035】
図6は、こうして製造された1つの単一光子源の電子顕微鏡写真を示す。この単一光子源は、1つの高周波パターン内に組み込まれている。部分写真a−dが、異なるズームレベルを示す。ここでは、金属端子59が、金属舌状部59a,59bとして形成されている。この金属端子59は、依然として目視可能なp−GaNを包囲するInNの錐体54/55を覆う。この錐体54/55をその外部に電気接続するため、これらの舌状部のうちのそれぞれ2つの舌状部が、巨視的な1つの接触パッド59c内に通じている。n−GaN層をその外部に接続するため、上記の複数の金属端子57が、同様に巨視的な複数の接触パッド57a,57b内に通じている。電圧が、接触パッド59aと接触パッド57aとの間に印加されると、金属舌状部59a上の光子源が起動される。
【符号の説明】
【0036】
1 基板
2 記録媒体
3 キャリア基板
4 光子源
5 光
51 サファイア基板
52 GaN層
53 HSQ層
54 錐体
55 錐体
56 フォトレジスト層
57 金属端子
58 フォトレジスト層
59 金属端子
Bn ビット線
Wn ワード線
【国際調査報告】