特表2015-528656(P2015-528656A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-528656凹状ポートを有する、バスレフ型スピーカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528656(P2015-528656A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】凹状ポートを有する、バスレフ型スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20150901BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   H04R1/02 101B
   H04R1/28 310B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-525928(P2015-525928)
(86)(22)【出願日】2013年8月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月1日
(86)【国際出願番号】FR2013051895
(87)【国際公開番号】WO2014023912
(87)【国際公開日】20140213
(31)【優先権主張番号】1257662
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】504029086
【氏名又は名称】ネクソ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラリュー,マティアス
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AD12
5D017AD31
5D017AD33
(57)【要約】
本発明は、少なくとも一つのスピーカ(2)と少なくとも一つのポート(3)を含むスピーカキャビネット(1)であって、当該ポートは、キャビネット(1)の一壁面に形成されるアウトレット(32)と、キャビネット(1)内のインレット(31)と、インレット(32)及びアウトレット(31)を共に連結させる筺体とを有し、ポート(3)のインレット(32)は、筺体に少なくとも一つの凹部をさらに有しているスピーカキャビネット(1)に関する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのスピーカ(2)と少なくとも一つのポート(3)とを備えるスピーカキャビネット(1)であって、前記ポート(3)は、前記キャビネット(1)の一壁面に形成されたアウトレット(32)と、前記キャビネット(1)内にあるインレット(31)と、前記インレット(31)及び前記アウトレット(32)を連結する筺体とを有し、前記ポート(3)の前記インレット(31)は、前記筺体に少なくとも一つの凹部を有することを特徴とするスピーカキャビネット。
【請求項2】
前記凹部には二つの縁部があり、前記二つの縁部のうちの少なくとも一つは、前記筺体の表面を追従する直線によって定義されることを特徴とする、請求項1に記載のキャビネット(1)。
【請求項3】
前記凹部には二つの縁部があり、前記二つの縁部のうちの少なくとも一つは、前記筺体の表面を追従する曲線によって定義されることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項4】
前記凹部の前記二つの縁部は、前記筺体と直交する平面に関して対称であることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項5】
前記凹部は、凸形状であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項6】
前記ポート(3)の前記インレット(31)は、一端部(40)をそれぞれ有するいくつかの凹部を備え、前記凹部は、それらの端部を通過する前記筺体と直交する少なくとも一つの平面に関して対称であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項7】
前記ポート(3)の前記インレット(31)は、幾つかの同一の凹部を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項8】
前記凹部は、前記筺体の平板状の仕切り上に形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項9】
前記凹部は、深さpと、その深さpと直交する方向における二つの縁部の間の距離によって定義される幅とを有し、前記幅は深さpに従って可変であり、前記幅は、前記凹部の初期幅を定義する前記ポート(3)の前記インレット(31)において最大になることを特徴とする請求項1から8のいずれかに一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項10】
前記凹部の前記初期幅は、それが形成される前記筺体の少なくとも一つの仕切り(33)の幅に等しいことを特徴とする、請求項9に記載のキャビネット(1)。
【請求項11】
前記凹部は、その端部(40)において、前記初期幅よりもはるかに幅が狭いことを特徴とする、請求項9又は10のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項12】
前記キャビネットは、正中面に関して対称である仕切り(33)に形成されて前記仕切り(33)と直交する二つの凹部を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項13】
前記凹部の幅は、非線形関数に従って起点から一端(40)に向かって次第に狭くなり、それによって前記凹部はアーチ形状となることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項14】
前記凹部の縁部は、前記凹部の一端(40)において、180°未満或いはさらに90°未満の角度を定義することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項15】
前記凹部の二つの縁部は、前記凹部の前記端部(40)において前記二つの縁部の間に鋭角を定義することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項16】
前記ポート(3)の前記筺体によって定義される前記ポート(3)の内部容積は、前記内部容積を複数の副容積に分割する少なくとも一つの壁を有利に備え、前記ポートの前記筺体に対してより高い剛性の付与を可能にすることを特徴とする、請求項1から15のいずれかに一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項17】
前記ポート(3)の前記筺体は円筒形であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項18】
前記インレット(31)は、前記凹部の少なくとも前記縁部によって、さらに追加部分(310)によって定義されることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項19】
前記追加部分(313)は、前記ポート(3)の前記アウトレット(32)を備える平面と平行な平面において定義されることを特徴とする、請求項18に記載のキャビネット(1)。
【請求項20】
前記凹部の前記縁部のうちの一つは、前記キャビネットの一壁面によって形成されることを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項21】
前記凹部の二つの縁部は、前記ポート(3)の前記筺体の仕切り(33)に形成されることを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のキャビネット(1)。
【請求項22】
少なくとも一つのスピーカ(2)と少なくとも一つのポート(3)とを備えるスピーカキャビネット(1)であって、前記ポート(3)は、少なくとも一つの仕切り(33)によって形成された筺体から構成され、前記筺体は、インレット(31)とアウトレット(32)とを有し、前記キャビネット(1)内に位置する前記インレット(31)と前記キャビネット(1)の一壁面に形成された開口によって構成される前記アウトレット(32)とを有する前記ポート(3)の内部容積を定義し、前記ポートは、前記仕切り(33)内に延在する凹部を備える、スピーカキャビネット(1)。
【請求項23】
少なくとも一つのスピーカ(2)と少なくとも一つのポート(3)とを備えるスピーカキャビネット(1)であって、前記ポート(3)は、少なくとも一つの仕切り(33)によって形成された筺体から構成され、前記筺体は、インレット(31)とアウトレット(32)とを有し、前記キャビネット(1)内に位置する前記インレット(31)と、前記キャビネット(1)の一壁面に形成された開口によって構成される前記アウトレット(32)とを有する前記ポート(3)の内部容積を定義し、前記ポートは、前記仕切り(33)内に延在する凹部を備え、前記凹部は、前記インレット(31)から延在して一端部(40)で結合する二つの直線状縁部によって形成され、前記凹部の前記二つの縁部は、前記端部(40)で鋭角を定義する、スピーカキャビネット(1)。
【請求項24】
少なくとも一つのスピーカ(2)と少なくとも一つのポート(3)とを備えるスピーカキャビネット(1)であって、前記ポート(3)は、少なくとも一つの仕切り(33)によって形成された筺体から構成され、前記筺体は、インレット(31)とアウトレット(32)とを有し、前記キャビネット(1)内に位置する前記インレット(31)と、前記キャビネット(1)の一壁面に形成された開口によって構成される前記アウトレット(32)とを有する前記ポート(3)の内部容積を定義し、前記ポートは、前記仕切り(33)内に延在する凹部を備え、前記凹部は、前記インレット(31)から延在して一端部(40)で結合する二つの曲線状縁部によって形成され、前記凹部の前記二つの縁部は、非線形関数に従って次第に狭くなる前記凹部の幅を前記二つの縁部間に定義し、前記凹部をアーチ形状にする、スピーカキャビネット(1)。
【請求項25】
少なくとも一つのスピーカ(2)と少なくとも一つのポート(3)とを備えるスピーカキャビネット(1)であって、前記ポート(3)は、少なくとも一つの仕切り(33)によって形成された筺体から構成され、前記筺体は、インレット(31)とアウトレット(32)を有し、前記キャビネット(1)内に位置する前記インレット(31)と、前記キャビネット(1)の一壁面に形成された開口によって構成される前記アウトレット(32)とを有する前記ポート(3)の内部容積を定義し、前記ポートは、前記仕切り(33)内に延在する凹部を備え、前記凹部は、前記インレット(31)から延在して一端(40)で結合される二つの縁部によって尖状に形成される、スピーカキャビネット(1)。
【請求項26】
請求項1から25のいずれかに記載の二つの同一のサブキャビネットを備える、キャビネット。
【請求項27】
各サブキャビネットの前記ポート(3)の前記筺体は、内部容積を三つの副容積に分割する二つの壁(51、 52)を備える前記ポート(3)の内部容積を定義することを特徴とする、請求項26に記載のキャビネット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカキャビネットに関し、より詳細には、「バスレフ型(バスレフレックス型)」キャビネットとも呼ばれる、ポートを有するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、そのようなキャビネットは、密閉型キャビネット、すなわちポートのないキャビネットと比較して、最低周波数放射(一般に、20Hz(ヘルツ)から200Hzの間)の効率を高めるためのポートをスピーカとは別に備えている。
【0003】
ある特定のキャビネットは、幾つかのスピーカ及び/又は低周波電力を増大させるための幾つかのポートを備えることができる。
【0004】
それゆえ、バスレフ型のキャビネットは、二種類の放射面を有しており、すなわち図5に示すように、一方は同調周波数fc(EV曲線)付近で放射するポート(又は幾つかのポート)であり、他方は、その放射が寄与限界周波数(contribution limit frequency)fL(HP曲線)より上でポート(又は複数のポート)の放射を超えるスピーカ(又は幾つかのスピーカ)である。これら二つの周波数fcおよびfLは、ポートの大きさ及びキャビネットの大きさによって決定される。同調周波数fcより上では、スピーカ及びポートは放射の効率を高める同相で放射し、一方で同調周波数fcより下では、スピーカ及びポートは逆位相で放射し、図5において、スピーカの寄与とポートの寄与の合計を示すS曲線が、周波数fcを起点としてEV曲線及びHP曲線の上を通過するという事実によって示されている。
【0005】
ポートは、一般に、一つ以上の仕切りによって形成される筺体から構成され、該仕切りは、インレットとアウトレットとを有し、ポートの内部容積を定義する。インレットは、キャビネット内に位置し、アウトレットは、キャビネットの一壁面に形成された開口、すなわち、キャビネットの一壁面における穴又は切り欠きによって構成される。アウトレットは、円形又は矩形である場合が多く、また、筺体は、従来から円筒形であり、つまり、断面の形状にかかわらず、ポートの断面がインレットとアウトレットとを結合する軸に沿って一定であることを意味する。
【0006】
ある特定のキャビネット構造によると、ポートの筺体は、特に、キャビネットの一壁面の少なくとも一部から少なくとも部分的に構成され得る。
【0007】
キャビネットの寸法設定を行うことは、二つの共振周波数(f1及びf2)と、これらの二つの共振周波数の間に位置する同調周波数(fc)を決定するためだけでなく、放出される音の周波数の関数としてポートとスピーカの振動速度を求めるために、連立方程式を解くことを必要とする。これらの二つの共振周波数f1及びf2は、二つの自由度を伴う方式の特性であり、ここでバスレフ型キャビネットのための二つの未知のものとは、ポートの速度とスピーカの速度のことである。
【0008】
この連立方程式は、例えば、Jacques Jouhaneau氏による参考文献Notion elementaires d'acoustique−Electroacoustique−(Editions Technique et Documentation 2000、第5節、52)などの専門文献に詳細に説明されている。
【0009】
ところで、連立方程式を解くためには、バスレフ型キャビネットの同調周波数fcを、すなわちポートの振動速度が最大になる場合の周波数を決定するために、一般に低周波近似を使用する。
【0010】
この近似を用いて当該連立方程式を解くことは、二つの共振周波数(f1及びf2)の決定につながる。一方で、該近似は、f1及びf2(fr1からfr4はグラフ4及び5で確認できる)を超えて位置する高次共振周波数を消滅させる。次に、電気インピーダンス(オーム(Ω))を周波数の関数として表す曲線は、二つのピーク(f1とf2に相当)のみを有し、同調周波数fcにおけるインピーダンスに相当する最小値をそれらのピークの間に定義する。
【0011】
したがって、近似なしで当該連立方程式を解くことによって共振周波数f1及びf2よりも高い値の共振周波数fr(fr1からfr4)を出現させる。スピーカ端末で測定された対応するインピーダンス曲線は、図4に示すように、他のピークの存在によってこれらの共振周波数frの存在を特に説明する。
【0012】
さらに、キャビネットの寸法設定は、スピーカの放射とポートの放射との間で位相シフトを必要とし、ポート及びスピーカを備える平面における考慮すべき指向性機能の大幅な変更を行うことになる。同相音源の使用は、角度有効範囲(angular coverage)の狭小化を引き起こすが、該有効範囲内の放射の効率を向上させ、一方で、異なる位相の音源の使用は、角度有効範囲の拡張を含むが、放射の効率を低下させる。この現象は、共振周波数frで一層顕著になる。
【0013】
後者はスピーカ及びポートに対して同じ割合で起きるので、バスレフ型キャビネットの挙動におけるこの欠点は、信号を処理することによって修正できるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、アセンブリ、すなわちキャビネットの周波数応答ができる限り平坦になるように、また、キャビネットに対する配向の関数としての放射が、周波数に依存せずにできるだけ遠くなるように、共振周波数frと関連付けられたポートの応答におけるピークを制限或いはさらに防止することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明の第一態様によると、少なくとも一つのスピーカと少なくとも一つのポートとを備えるスピーカキャビネットであって、前記ポートは、キャビネットの一壁面、好ましくは前面に形成されたアウトレットと、キャビネット内にあるインレットと、前記インレット及び前記アウトレットを連結する筺体とを有し、前記ポートの前記インレットは、前記筺体に、例えば筺体の少なくとも一つの縁部によって形成された少なくとも一つの凹部を有するスピーカキャビネットが提案される。
【0016】
ポートのアウトレットは、いかなる種類の形状であってもよく、好ましくは円形又は矩形、或いは正方形であってもよい。
【0017】
筺体は、少なくとも一つの仕切りによって有利に形成され、ポートの内部容積を定義する。
【0018】
より大型のキャビネットを製造するために、ポートの内部容積は、内部容積を複数の副容積に分割する少なくとも一つの壁を有利備え、ポートの筺体に対してより高い剛性の付与を可能にする。
【0019】
凹部は、ここではキャビネット内に位置して筺体に形成される切り欠け、開口を意味し、起点となるポートのインレットから始まり、終端を定義するアウトレットに向かって延在している。
【0020】
凹部は、その他の要素と接触する筺体の少なくとも一つの縁部によって形成され、すなわち、その起点から測定されたゼロではない距離だけ当該他の要素から離されている。ここで、起点までの当該距離は、凹部の「初期幅」と呼ばれる。
【0021】
凹部は、一方では筺体の縁部によって形成されるのが好ましく、他方では、例えば、筺体に形成される別の縁部又は、例えばキャビネットの一壁面である別の要素を用いて形成されるのが好ましい。
【0022】
従って、ここでは、凹部は二つの縁部を有し、各縁部は、端部の形状にかかわらず、凹部の端部の間からポートのインレットに延在していることが考慮される。
【0023】
筺体、又は凹部を備える筺体の少なくとも一部が湾曲している場合、凹部の初期幅は、縁部の少なくとも起点と別の要素との間の筺体の形状に従って特定される。これは、例えば、凹部の初期幅が管状ポートの円周の半分に相当する場合、凹部は、ポートの一端においてそれぞれ起点を有する二つの縁部を備え、初期幅は、仮想の筺体の一部による円弧の長さと同等であり、すなわち、凹部を形成するために切り込まれる前に存在したインレットを定義する縁部の一部であって、凹部の二つの起点を結合しうる直径又は弦長ではないことを意味する。それゆえ、幅は、適切な場合、筺体の平面における起点と他の要素との間の距離、又は二つの起点の間の距離である。
【0024】
好ましくは、凹部は、筺体の平板状仕切りに形成されることである。
【0025】
従って、ポートは、例えば平板状仕切りがキャビネットの壁と協働するように形成され、それによってそのようなポートの製造を簡易化する筺体の全体を形成するようにする。
【0026】
好ましくは、凹部は、深さpと、その深さpに直交する方向におけるその二つの縁部の間の距離によって定義される幅とを有し、幅は深さpに従って可変的であり、すなわち、幅は、その起点および終点との間で変化する。
【0027】
ここで、「深さp」は、凹部の起点と終点との間の寸法のことであり、該深さはその幅と直交し、ポートの長さLに沿って、すなわち筺体の長さに沿って測定され、ポートの長さLは、ここでは、そのインレットとアウトレットとの間の最大距離によって定義される。
【0028】
また好ましくは、幅は、凹部の初期幅を定義するポートのインレットにおいて最大となり、それにより端部におけるその幅は、初期幅よりもはるかに小さく、或いは凹部の端部が点を形成することを意味するゼロさえもあり得る。さらに、凹部の縁部は、その端部において、他の要素(例えば、筺体に形成された別の縁部、或いはキャビネットの一壁面)に対して180°未満の角度、或いは更に90°未満の角度を定義することが好ましい。実際には、形状がより尖状になるほど、より音響効果が高まる。
【0029】
次に、ポートのインレットは、凹部の縁部によって少なくとも部分的に形成される。
【0030】
有利な実施形態によると、凹部の初期幅は、それが形成される筺体の少なくとも一つの仕切りの幅に等しく、該仕切りの幅は、凹部の幅と平行な方向におけるその寸法に相当する。ポートが円筒形状である場合、幅は、ポートの外周に相当する。それゆえポートのインレットは、凹部によって完全に定義される。
【0031】
従って、凹部は、スピーカとポートとの間において共振周波数frで誘導された位相シフトを制限することができ、それによって標準ポートの場合のような顕著なピークではなく、周波数応答の平滑化をもたらす。従って、角度のある放射は、高次共振周波数を抑制することによって、周波数の関数として安定性が高い。
【0032】
好ましくは、凹部の深さpは、共振周波数f2を超える第一の高次共振周波数fr1に対応する波長の四分の一に等しいことである。
【0033】
凹部は、長さが筺体の少なくとも一部に及び、深さpは、筺体の長さLよりも小さいほうが好ましい。言い換えれば、凹部の端部とポートのアウトレットは、別々であることが好ましい。
【0034】
凹部の深さpと同様にポートの長さLは、同調周波数fc及び共振周波数frの関数として定義される。
【0035】
有利には、凹部には二つの縁部があり、前記二つの縁部のうちの少なくとも一つは、前記筺体の表面を追従する直線によって定義される。
【0036】
次に、他の要素は、筺体の第二の縁部の切り欠きによって形成される。
【0037】
円形断面を有するポートの場合、ポートを折り畳み又は押し出し成形によって製造することができる。ポートが折り畳みによって製造される場合、凹部の少なくとも一つの縁部の直線の切り欠きは、折り畳みの前に形成されることが好ましい。
【0038】
平行六面体ポートの場合、又は、凹部が形成される少なくとも一つの平坦面をポートが有している一般的な場合、切り欠きをポートが設置される前又は後に形成するかは重要ではない。ただし、当該面が変形されない場合に限る(それゆえこの場合は事前に作ることが好ましい)。
【0039】
直線状縁部は、凹部に対して、放射については良い結果を非常に容易にもたらすことができる。
【0040】
有利には、凹部には二つの縁部があり、前記二つの縁部のうちの少なくとも一つは、筺体の表面を追従する曲線によって定義される。
【0041】
同様に、ポートの筺体がポートをキャビネット内に設置するために変形される場合、該曲線を形成して事前に切り取ることが好ましい。
【0042】
曲線は、双曲線の一部によって定義されるのが好ましい。
【0043】
上述の双曲線の方程式によってさらに有利に湾曲した形状は、放射測定に関して得られた結果、すなわち指向性関数に関する結果を改善することができる。従って、周波数の関数として可及的に広い角度有効範囲に渡ってより安定した放射を得られるだけでなく、キャビネットのより直線状の軸におけるレスポンスも得られる。
【0044】
好ましくは、凹部の二つの縁部は、筺体に直交する平面に関して対称である。この対称性によって、音響レスポンスを改善しつつ、ポートの製造とキャビネットにおけるその組み立てが容易になる。
【0045】
例えば、凹部の端部の幅は、初期幅よりもはるかに小さい。
【0046】
好ましくは、凹部は、凸形状であることである。
【0047】
該凸状は、凹部の観点から算出され、すなわち、その深さpと直交する方向における二つの縁部の間の距離によって定義される凹部の幅は、非線形関数によって次第に狭くなり、それによって凹部を弓形状にする。
【0048】
この形状によって、可及的に尖状にしながら、その起点において幅広い凹部を有することを可能にする。
【0049】
例えば、凹部の縁部は、凹部の一端において180°未満或いはさらに90°未満の角度を定義する。
【0050】
例えば、凹部の二つの縁部は、凹部の端部において二つの縁部の間に鋭角を定義する。
【0051】
例えば、凹部の幅は、非線形関数に従って起点から一端に向かって次第に狭くなり、それによって当該凹部はアーチ形状となる。
【0052】
有利な実施形態によると、ポートのインレットは、それぞれが一端部を有する幾つかの凹部を有し、該凹部は、それらの端部を通過する筺体と直交する少なくとも一つの平面に関して対称であることが好ましい。
【0053】
次に凹部のそれぞれの深さは、それぞれ高次共振周波数に相当する異なるピークごとに算出され、音響レスポンスをさらに改善する。
【0054】
好ましくは、ポートのインレットは、幾つかの同一の凹部を有することである。
【0055】
これによって、指向性に影響を与えることなく製造工程を容易にする。
【0056】
有用な実施例によると、キャビネットは仕切りに形成された二つの凹部を有し、該凹部は、仕切りと直交する正中面に関して鏡面対称である。
【0057】
別の実施例によると、ポートの筺体によって定義されるポートの内部容積は、内部容積を複数の副容積に分割する少なくとも一つの壁を有利に備え、ポートの筺体に対してより高い剛性を付与できる。
【0058】
例えば、ポート(3)の筺体は円筒形である。
【0059】
一実施例によると、インレットは、凹部の少なくとも縁部、及び追加部分によって定義される。
【0060】
追加部分は、例えば、ポートのアウトレットを備える平面と平行である平面に定義される。
【0061】
一実施例によると、凹部の縁部のうちの一つは、キャビネットの一壁面によって形成される。
【0062】
別の実施例によると、凹部の二つの縁部は、ポートの筺体の仕切りに形成される。
【0063】
したがって、少なくとも一つのスピーカと少なくとも一つのポートとを備えるスピーカキャビネットであって、ポートは、少なくとも一つの仕切りによって形成された筺体から構成され、筺体は、インレットとアウトレットとを有し、キャビネット内に位置するインレットとキャビネットの一壁面に形成された開口によって構成されるアウトレットとを有するポートの内部容積を定義し、ポートは、仕切り内に延在する凹部を備えるスピーカキャビネットも提案される。
【0064】
そのようなキャビネットは、前述の特徴の全て或いは幾つかを有している。
【0065】
少なくとも一つのスピーカと少なくとも一つのポートとを備えるスピーカキャビネットであって、ポートは、少なくとも一つの仕切りによって形成された筺体から構成され、筺体は、インレットとアウトレットとを有し、キャビネットに位置するインレットと、キャビネットの一壁面に形成された開口によって構成されるアウトレットとを有するポートの内部容積を定義し、ポートは、仕切り内に延在する凹部を備え、凹部は、インレットから延在して一端部で結合する二つの直線状縁部によって形成され、凹部の二つの縁部は、端部で鋭角を定義するスピーカキャビネットも提案される。
【0066】
そのようなキャビネットは、前述の特徴の全て又はいくつかを有している。
【0067】
少なくとも一つのスピーカと少なくとも一つのポートとを備えるスピーカキャビネットであって、ポートは、少なくとも一つの仕切りによって形成された筺体から構成され、筺体は、インレットとアウトレットとを有し、キャビネットに位置するインレットと、キャビネットの一壁面に形成された開口によって構成されるアウトレットとを有するポートの内部容積を定義し、ポートは、仕切り内に延在する凹部を備え、凹部は、インレットから延在して一端部で結合する二つの曲線状縁部によって形成され、凹部の二つの縁部は、非線形関数に従って次第に狭くなる二つの縁部間の凹部の幅を定義し、それにより凹部をアーチ形状にするスピーカキャビネットも提案される。
【0068】
そのようなキャビネットは、前述の特徴の全て又は幾つかを有している。
【0069】
少なくとも一つのスピーカと少なくとも一つのポートとを備えるスピーカキャビネットであって、ポートは、少なくとも一つの仕切りによって形成された筺体から構成され、筺体は、インレットとアウトレットを有し、キャビネットに位置するインレットと、キャビネットの一壁面に形成された開口によって構成されるアウトレットとを有するポートの内部容積を定義し、ポートは、仕切り内に延在する凹部を備え、凹部は、インレットから延在して一端で結合される二つの縁部によって尖状に形成されるスピーカキャビネットも提案される。
【0070】
そのようなキャビネットは、前述の特徴の全て又は幾つかを備えている。
【0071】
例えば、一つのキャビネットは、前述のようにそれぞれが二つのスピーカ及び少なくとも一つのポートを備える二つの同一のサブキャビネットを備え、各サブキャビネットは、前述の全ての特徴或いは幾つかの特徴を有するキャビネットである。
【0072】
例えば、各サブキャビネットのポートの筺体は、内部容積を三つの副容積に分割する二つの壁を備えるポートの内部容積を定義する。
【0073】
本発明は、以下に言及された各図面を参照して暗示的及び非限定的にもたらされた以下の詳細な説明を解釈することでより理解され、その利点がより明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1図1は、標準ポートを有するキャビネットの等角図を示す。
図2図2は、図1のキャビネットの正面図を示す。
図3図3は、図1のキャビネットの上面図を示す。
図4図4は、従来のバスレフ型キャビネット、すなわち標準ポートを有するキャビネットにおけるスピーカの電気インピーダンスを表すグラフである。
図5図5は、従来のバスレフ型キャビネットのポート(EV)とスピーカ(HP)の放射とそれらの合計を表す。
図6図6a、図6b及び図6cは、それぞれ同調周波数fc、共振周波数fr1及びfr2における従来のポートを有するバスレフ型キャビネットの指向性を説明する。
図7図7は、第一実施例による本発明のポートを有するバスレフ型キャビネットを示す。
図8図8は、図7のキャビネットの断面を示す。
図9図9は、第二実施例による本発明のポートを有するバスレフ型キャビネットを示す。
図10図10は、V字形凹部、すなわち二つの直線状縁部を有する本発明の平行六面体ポートを表す。
図11図11は、凸形状の凹部を有する本発明による平行六面体ポートを表す
図12図12は、ポートの正中面について対称である二つの同一の凸状凹部を有する本発明による平行六面体ポートを表す。
図13図13は、凸状凹部を有する本発明による円形断面の円筒形のポートを表す。
図14図14aから図14hは、標準ポート(点線)及び本発明による凹部を有するポート(実線)のそれぞれ160Hz、200Hz、250Hz、315Hz、400Hz、500Hz、630Hz及び800Hzの指向性の図を示す。
図15図15は、標準ポート(点線)及び本発明によるポート(実線)の−6dB(デシベル)における角度有効範囲を表す。
図16図16は、本発明によるキャビネットの一実施例の等角図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
従来のバスレフ型キャビネット1は、一般に、図1に特に示すように平行六面体形状であるが、いかなる種類の形状も適当である。
【0076】
キャビネット1の高さとは、ここでは、上面11と底面12との間に定義されるキャビネットの寸法を意味する。キャビネット1は前面15を有し、該前面15にスピーカ2とポート3とが位置付けられる。背面14は、前面15の反対側にある。さらに、キャビネット1は、バッキング(backing)13を含む二つの側面を有する。
【0077】
ポート3は、キャビネット1の前面15で開口するアウトレット32を有する。アウトレット32は、通常、キャビネット1の前面15に形成される穴もしくは切り欠きである。
【0078】
ポート3は、第一の内部の仕切り33と、ここではバッキング13によって構成される第二仕切り34と、上部仕切り35と、底部仕切り36とによって定義される筺体を備える。上部仕切り35は、ここでは上面11の一部によって形成され、底部仕切り36は、ここでは底面12の一部によって形成される。
【0079】
本実施例によると、アウトレット32は矩形であり、キャビネット1の全長に亘っている。アウトレット32自体は、仕切り33、34、35、36の前縁部によって画定され、前面15の穴の範囲を定めている。
【0080】
最終的には、ポートは、仕切り33の縁部によって定義されるインレット31を有する。次に、空気は、キャビネット1の仕切り33と、上面11、底面12及び背面14との間を通過することによってポート内を循環する。
【0081】
仕切り33は、ポート3の長さを定義する長さLを有する。
【0082】
従来のキャビネット1では、ポートは標準であり、本例においては、仕切り33は、例えば木材の矩形のパネルであり、縁部31は背面14と平行である。
【0083】
別の従来の実施形態(不図示)によると、ポートは、円形断面を有する円筒形である。次にポートのアウトレットは、キャビネットの前面に形成された円形穴であり、筺体は、キャビネットの内部において、前述の仕切り33に相当する単一の仕切りのみによって概ね構成され、アウトレットと反対側の該仕切りの縁部がポートのインレットを構成する。従来のポートのインレットの縁部は、次に平面内に含まれ、該平面は、キャビネットの前面と略平行である。
【0084】
図4は、ヘルツ(Hz)で表される周波数の関数として、スピーカ端末で測定された従来のキャビネット1のインピーダンス曲線(オーム(Ω))を示す。
【0085】
前述のように、近似なしで連立方程式を解くことは、f1及びf2で示される第一の二つのピークの上に、より高い値(fr1、fr2、fr3、及びfr4で示される)の他のピークによって示されるキャビネットの他の共振周波数があることを説明する。
【0086】
第一の二つのピーク(ここでは、それぞれおおよそf1=35Hz、f2=140Hz)は、2つの自由度を有する方式の特性であり、ポートの最大振動速度は、ポートの同調周波数fc、すなわち、ここでは約fc=85Hzに対応する、これらの二つのピークの間に位置する最低値で得られる。
【0087】
それに続くピーク(それぞれ約460、870、1300及び1650Hz)は、非常に顕著であり、また、ポートの放射の振幅をスピーカの振幅と同等としてもよく、それによって図5で明白なようにキャビネットの周波数応答に顕著な異変をもたらす。
【0088】
実際には、図5は、ポートの放射(EV曲線)、スピーカの放射(HP曲線)及びそれらの合計(S曲線)、すなわちキャビネットの放射を示している。ヘルツ表示の周波数はx軸に沿って示され、また、dBSPL(デシベル「音圧レベル」、すなわち、音響圧力のレベル)表示の圧力レベルは、y軸に沿って示される。
【0089】
同調周波数fc未満の周波数に対しては、スピーカ及びポートは位相が異なっている。これによってHP曲線及び/又はEV曲線より下にあるS曲線になる。
【0090】
同調周波数fcを超える周波数に対しては、スピーカ及びポートは同相であり、放射に建設的な効果がある。
【0091】
しかしながら、寄与限界周波数と呼ばれる周波数fLがあり、その周波数の上では、ポートの放射は、スピーカの放射に満たなくなる。さらに、共振周波数(ここではfr1、fr2、fr3およびfr4によって表される)が近似してくると、干渉は、キャビネットの放射に悪影響を及ぼす位相シフトを引き起こすこととなる。
【0092】
放射に対するこの悪影響は、図6aと比較して図6b及び図6cで確認できる。
【0093】
図6aは、キャビネットに対する配向に従った制限周波数fcにおけるデシベル(dB)での放射を示す。この周波数では、放射は配向にかかわらず安定しており、本例では、61dBに等しい。
【0094】
周波数fr1では(図6b))、共振が放射にキャビネットの軸に対して約−8°の位置にまで降下(drop)を誘発し、本例では72dBから40dBになる。
【0095】
周波数fr2では(図6c)、放射は、配向に従って非常に可変的になる。
【0096】
これらの欠点のうちの少なくとも幾つかを克服するために、ポート3の仕切り33は、ポートのインレットに少なくとも一つの凹部を有利に有する。
【0097】
当然のことながら、例示された各実施形態が図面の簡素化のためにポートを一つだけしか備えていない場合、本明細書は、二つ(またはそれ以上)のポートを備えるキャビネットにも当てはまる。
【0098】
従来、仕切り33は、ここでは本発明の凹部が延在するポート3の筺体の少なくとも一部を形成する仕切りを意味する。
【0099】
次に、ポートの長さLは、仕切り33の縁部の少なくとも一部によってそれぞれ形成されるインレット31とアウトレット32との間の最大距離として定義され、アウトレット32と直交する軸に沿っている。
【0100】
凹部は、インレット31と一端部40との間の最大距離を示す深さpを有し、深さpは長さLの測定の距離と平行の軸に沿っている。
【0101】
最終的に、仕切り33の幅はその長さと直交する寸法を意味し、凹部の初期幅は、仕切り33の幅に沿ったその起点までの寸法を意味する。
【0102】
図7から図12においては、ポートは平行六面体形状である。凹部又は複数の凹部は、仕切り33が変形されないため、キャビネットの製造中にいつでも仕切り33に形成される。その目的は、キャビネットの製造を最も簡略化させることである。しかしながら、特にポートが差込式である場合、キャビネットの保護と保存という明白な理由で、仕切り33がキャビネット1に設置される前に凹部を形成することが好ましい。
【0103】
図7の実施例において、縁部31によって画定されるインレットは、二つの凹部を定義する二つの横方向の切り欠きを有する。
【0104】
凹部はそれぞれ、縁部41a及び41bを有し、それによって二つの凹部は、正中面に関して対称であり、仕切り33と直交している(不図示)。
【0105】
凹部のそれぞれの第二縁部は、ここでは、キャビネット1の上面11又は底面12によってそれぞれ形成される。
【0106】
それゆえ、凹部は、曲線状の縁部41a又は41b及びキャビネット1の面11又は12によって定義された直線状縁部を有する。
【0107】
従って、縁部41a及び上面11は、端部40aと共に第一凹部を定義し、縁部41b及び底面12は、端部40bとともに第二凹部を定義する。
【0108】
さらに、縁部41aの曲率は、端部40aにおける上面11との鋭角の定義を可能にする。同様のことが縁部41bと底面12との間にも言える。
【0109】
二つの凹部は同一であり、それゆえ同じ深さpを有する。
【0110】
さらに、縁部41a及び41bの曲率は、縁部41a及び41bが互いに結合するようになっている。次にインレット31は、縁部41a及び41bによって完全に定義され、アウトレット32の一部を定義している仕切り33の縁部と平行な直線部分はもはや無くなっている。それゆえ二つの凹部の幅は、仕切り33の幅の半分に等しい。
【0111】
図9の実施例において、仕切り33は、正中面(不図示)に対して対称であり、仕切り33に直交する二つの湾曲した縁部42a及び42bを有する中央の凹部を有している。
【0112】
縁部42a及び42bは、それらの端部40で縁部間に鋭角を定義する。さらに、それらの曲率は、インレット31の縁部が縁部42a及び42bによって完全に定義されるようになっている。次に凹部の幅は、仕切り33の幅に等しい。
【0113】
図10から図13は、前述のように、キャビネット内に組み込まれるように意図された本発明によるポートを示している。
【0114】
図10から図12の実施例において、ポートは平行六面体形状であり、平板状仕切り33、34、35及び36によって形成された筺体だけでなく、アウトレット32及びインレット31を有する。
【0115】
ポート3のインレット31は、ポートの筺体に、ここではキャビネット内部の仕切り33に形成された少なくとも一つの凹部を有する。
【0116】
製造を容易にするために、そのようなポートは、仕切り33のみをキャビネット内に組み込むことによって形成されることが好ましく、仕切り34、35及び36は、後に一体化されるキャビネットのバッキング13、上面11及び底面12によってそれぞれ有利に形成され得る。
【0117】
図10によると、凹部は、二つの直線状縁部43a及び43bによって形成され、また、正中面(不図示)に関して対称であり、仕切り33に直交している。インレット31の縁部は、ここでは、追加部分310によってだけでなく、縁部43a及び43bによって部分的に定義され、縁部43a及び43bによって定義される凹部の幅は、仕切り33の幅よりも狭いという事実に基づいている。
【0118】
それゆえ、直線状縁部により、凹部は、端部でできる限り鋭角な角度を維持するためにより狭くする必要があり、それによってより良い結果を得ることができる。
【0119】
図11は、図9のポートと同様のポートを示しているが、開口はより狭くなっている。次に縁部31は、追加部分311によってだけでなく、縁部44a及び44bによっても定義される。
【0120】
縁部44aおよび44bによって凹部に凸形状をもたらし、凹部は次に例えばその縁部のそれぞれの双曲線部分によって定義され得る。
【0121】
図12は、図9のポートに相当する二つの凹部を備えるポートを示しているが、該二つの凹部の幅は両方ともポートの幅よりも小さく、それぞれ図9又は図11の凹部よりも短くなっている。二つの凹部は、第一の場合、二つの湾曲した縁部45a及び45bをそれぞれ有し、第二の場合は二つの湾曲した45c及び45dをそれぞれ有し、該縁部は仕切り33と直交して対応する凹部の端部40を通過する面に関して対称である。さらにこれらの凹部は、正中面(不図示)に関して対称であり、仕切り33と直交している。インレット31は、縁部45bの起点から縁部45cの起点を結ぶ追加部分312によってだけでなく、縁部45a、45b、45c及び45dによっても定義される。図12の実施例において、縁部45aの起点及び縁部45dの起点は、ポートの平板状仕切り35と36との交点にそれぞれ位置している。しかしながら、追加部分312は、縁部45bの起点から縁部45cの起点を結ぶ一区分(segment)だけでなく、仕切り35から縁部45aの起点を結ぶ区分及び/又は縁部45dの起点から仕切り36を結ぶ区分といった幾つかの区分によって構成され得る。或いはさらに、追加部分は、仕切り35から縁部45aの起点までを結ぶ一区分のみ、及び/又は縁部45dから仕切り36を結ぶ区分を備え得る。さらに別の実施例によると、縁部45aの起点及び縁部45dの起点がポートの平板状仕切り35と36との交点にそれぞれ位置するだけでなく、縁部45bの起点も縁部45cの起点に連結されて、インレット31の縁部がここで縁部45a、45b、45c及び45dによってのみ定義されることとなる。
【0122】
図13は、管状ポートを示している。そのようなポートは、その一縁部がアウトレット32を定義し、もう一方の縁部がインレット31を定義する仕切り33によって完全に定義される筺体を備える。インレット31は、ここで、追加部分313によってだけでなく、凹部を定義する、同一の(すなわち、凹部の正中面に関して対称である)二つの縁部46a及び46bによって形成される。ここで、凹部の幅は、インレットの外周よりも小さく、凹部の初期幅は、仕切り33に沿って決定される。これは、例えば、凹部の初期幅が管状ポートの円周の半分を意味する場合、該初期幅は、ポートの仮想縁部に沿った円弧の長さと同じ、すなわち、凹部を形成するために切り欠きする前にあったインレット縁部の一部分であって、凹部の二つの根元を結合しうる直径又は弦長ではないことを意味する。
【0123】
さらに、追加部分313は、ここではアウトレット32を備える平面と平行である平面に定義される。そのようなポートは、例えば高分子材料の押し出し成形によって有利に製造されるが、 例えば一枚の板などの薄板を折り畳むことによっても形成できる。ポートを構成する仕切りの折り畳み或いは変形によってポートが製造される場合、事前に切り欠きを作ることが有利である。
【0124】
これらの異なる可能な構成(凹部の数や寸法、ポート又は複数のポートの数や寸法)は、キャビネットの幾何学的パラメータ及び音響パラメータに直面した当業者による選択に依存する。
【0125】
図14は、凹部の指向性測定結果に対する寄与を示している。
【0126】
点線曲線は、標準ポートを表し、実線曲線は、本発明による凹部を有するポートを表す。
【0127】
これらの図において、0°の位置は、キャビネットの軸における位置を示し、180°の位置は、キャビネットの後方となる位置を示す。
【0128】
凹部の存在によって指向性ローブ(directivity lobe)の幅を安定させることができ、すなわち、図15でも確認できるように、周波数にかかわらず、有効範囲がより一定となる。
【0129】
図15は、従来のキャビネット(点線曲線)と本発明によるポートを有するキャビネット(実線曲線)の−6dB(デシベル)における角度有効範囲を、キャビネットに対する配向の機能として表す(0°の位置は、キャビネットの軸における位置を意味し、一方、180°の位置は、キャビネットの後方となる位置を意味する)。
【0130】
凹部がない場合、315Hzから約550Hzまでの角度有効範囲の明確な狭小化が確認され、その後、再び約800Hzに拡張している。言い換えると、周波数は、規定の配向と同じ割合で全てが伝達されるわけではない。例えば、キャビネットに対して45°の位置、つまり横にいる人物は、約315Hzと620Hzとの間に含まれる周波数よりもずっと少ない周波数を感知するであろう。それゆえ、音は、等距離にキャビネットと対面する位置と比較して著しく変化する。
【0131】
凹部が存在する場合、グラフは、800Hzまでの安定値に到達するために、キャビネットの角度有効範囲は、徐々に400Hzまで減少されることを示す。
【0132】
最後に、図16は、本発明によるキャビネット1の設計例を示している。例示のキャビネット1は、二つの同一の(すなわち、キャビネット1の正中面に関して対称である)サブキャビネットを備える。
【0133】
サブキャビネットはそれぞれ、二つのスピーカ2及びポート3を備える。ポート3は、二つの縁部42a及び42bによって形成される凹部を有する仕切り33を有し、すなわち、図9を参照して説明したように、該凹部の幅は仕切り33の幅と等しくなっている。
【0134】
ポートはここでは、仕切り33とは別に、サブキャビネットのバッキング34によって、さらに、上面11及び底面12の一部によって形成される。従って、形成された筺体は、内部容積を三つの副容積に分割する二つの壁51及び52をここでは備えるポートの内部容積を定義する。そのような壁51及び52によって、仕切り33の剛性の強化を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】