特表2015-528684(P2015-528684A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-528684モータ駆動式アクチュエータ部材の位置を求めるための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528684(P2015-528684A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】モータ駆動式アクチュエータ部材の位置を求めるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20060101AFI20150901BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   H02P7/00 P
   G01D5/12 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-528937(P2015-528937)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2013066172
(87)【国際公開番号】WO2014032900
(87)【国際公開日】20140306
(31)【優先権主張番号】102012215214.8
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローマン モラヴェク
【テーマコード(参考)】
2F077
5H501
【Fターム(参考)】
2F077AA20
2F077JJ01
2F077JJ08
2F077JJ23
2F077NN02
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN24
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2F077QQ13
2F077UU22
5H501AA20
5H501CC01
5H501DD01
5H501JJ04
5H501JJ12
5H501JJ17
5H501JJ25
5H501JJ26
5H501LL10
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL34
5H501MM19
(57)【要約】
本発明は、モータ駆動式アクチュエータ部材の位置(x)、特に電動式のウインドウ、サンルーフ、リアリッド、スライドドア、またはシートの位置(x)を求めるための方法及び装置に関し、その際には現在位置(μneu)が求められている。本発明では、この現在位置(μneu)を求めるために、それに対して新たに求められた位置(μmess)が、最後に有効な位置(μalt)と関連させて考慮され、前記2つの位置(μmess、μalt)の間で、比較的低い不確実性値を有する位置に近い、現在位置(μneu)が選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動式アクチュエータ部材の位置(x)、特に電動式のウインドウ、サンルーフ、リアリッド、スライドドア、またはシートの位置(x)を求めるための方法であって、
現在位置(μneu)が求められる方法において、
現在位置(μneu)を求めるために、それに対して新たに求められた位置(μmess)が、最後に有効な位置(μalt)と関連させて考慮され、前記2つの位置(μmess、μalt)の間で、比較的低い不確実性値(σ2)を有する位置に近い、現在位置(μneu)が選択されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記新たに求められた位置(μmess)は、基準特性曲線(Kref)と実際値特性曲線(Kist)との間の相関関数から求められる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記2つの特性曲線(Kref、Kist)は、力−移動量曲線またはその他の特性数−移動量曲線であり、前記特性数は、力に対して相関付けられ、例えば電流−移動量曲線または回転速度−移動量曲線である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記相関関数から、不確実性値(σ2mess)が求められ、かつ不確実性値(σ2mess)は同じ相関関数から求められた位置(μmess)に対応付けられる、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記現在位置(μneu)の不確実性値(σ2neu)は、前記新たに求められた位置(μmess)と前記最後に有効な位置(μalt)の不確実性値(σ2mess、σ2alt)から求められる、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記現在位置(μneu)を求めるために、前記新たに求められた位置(μmess)と前記最後に有効な位置(μalt)とが、それぞれ自身の各不確実性値(σ2mess、σ2alt)に反比例する形で考慮される、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記現在位置(μneu)とその不確実性値(σ2neu)は、カルマンフィルタを用いて、前記新たに求められた位置(μmess)と前記最後に有効な位置(μalt)並びに自身の各不確実性値(σ2mess、σ2alt)とから求められる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
さらなる位置変化(2)の前の初期化過程(1)のケースにおいて、前記現在位置(μneu)とその不確実性値(σ2neu)は、それぞれ実質的にゼロで初期化される、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記アクチュエータ部材の位置(x)は、エラーを含んだ手法(3)によって追跡され、前記現在位置(μneu)の不確実性値(σ2neu)は、位置変化(2)が発生した場合に増加される、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記エラーを含んだ手法(3)は、直流モータの整流子電流のリップルの評価から成る、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記エラーを含んだ手法(3)は、モータに設けられたマグネットホイールと協働して回転を検出する単一のホールセンサの評価から成る、請求項9記載の方法。
【請求項12】
モータ駆動式アクチュエータ部材の位置、特に電動式のウインドウ、サンルーフ、リアリッド、スライドドア、またはシートの位置を求めるための装置であって、
位置追跡ユニット(15)と、位置測定ユニット(24)とを備え、前記位置測定ユニット(24)は、位置偏差を求めるように構成されている装置において、
現在位置を求めるように構成された平均化ユニット(28)が、前記位置測定ユニット(24)と前記位置追跡ユニット(15)とに接続されており、
前記平均化ユニット(28)は、求められた位置偏差と、前記位置追跡ユニット(15)によって求められた最後に有効な位置とを考慮するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記位置測定ユニット(24)は、相関ユニットを含んでおり、該相関ユニットは、位置偏差を求めるために、基準特性曲線メモリ(23)と特性曲線検出ユニット(20)とに接続されている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記特性曲線検出ユニット(20)は、力−移動量曲線またはその他の特性数−移動量曲線、例えば電流−移動量曲線または回転速度−移動量曲線を記録するように構成されており、前記特性数は、力と相関付けられる、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記相関ユニットは、不確実性値(σ2mess)を求めるように構成され、その不確実性値(σ2mess)は位置偏差と一緒に平均化ユニット(28)に伝送するために提供される、請求項13または14記載の装置。
【請求項16】
前記平均化ユニット(28)は、前記位置追跡ユニット(15)によって特定された不確実性値(σ2alt)と、新たに求められた位置の不確実性値(σ2mess)とを処理するように構成されている、請求項12から15いずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記平均化ユニット(28)は、カルマンフィルタを含んでいる、請求項12から16いずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記位置追跡ユニット(15)は、ゼロで初期化されている、請求項12から17いずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記位置追跡ユニット(15)は、位置変化を検出するために位置メモリ(17)と接続されている、請求項12から18いずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記位置追跡ユニット(15)は、直流モータの整流子電流のリップルを評価するように構成されている、請求項12から19いずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記位置追跡ユニット(15)は、モータに設けられたマグネットホイールと協働してその回転を検出する単一のホールセンサを評価するように構成されている、請求項12から19いずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動式アクチュエータ部材、特に電動ウインドウ、電動サンルーフ、電動リアリッド、電動コンバーチブルトップシステム、電動スライドドア、電動シートなどの位置を求めるための方法に関しており、ここでは位置測定によって現在位置の補正値が求められている。また本発明は、位置追跡ユニット(カウンタ)と位置測定ユニットとを用いて前記方法を実施する装置にも関している。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動式アクチュエータの位置の検出は、特に自動車用の電動ウインドウ、電動サンルーフ、電動スライドドアなどの閉鎖部材の場合には、当該閉鎖部材を所定の目標位置にて停止させると共に、挟込み防止に関する法的要件を満たす必要がある。基本的に、そのような位置決め過程は、例えば、事前に定められた位置あるいは記憶された位置に設定することができるように、電動シートや電動ブラインド、電動サンシェードなど多種多様なアクチュエータ部材に使用されている。
【0003】
このような位置を求める方法は、次の2つのクラスに分けることができる。
(1)その1つは、いつでも全ての所定の周辺条件のもとで位置を正確に検出する、計数方法である。通常これは、モータシャフトに取り付けられたマグネットホイールにより2つのホールセンサと協働して行われる。この2つのホールセンサは、モータの回転速度並びに回転方向の識別を可能にする。
(2)他の1つは、位置を求めることはできるが、特定の外的状況のもとでは位置検出プロセスにおけるシステムに内在する僅かな誤差の回避まではできない位置検出方法または位置追跡方法である。そのような方法は、単一のホール式ポジションカウンタと、とりわけ例えばDCモータの整流子電流の電流リップルから位置を推論するセンサレス手法とを含んでいる。そのようなエラーを含んだ位置検出プロセスには、定期的な補正が必要である。このことは、例えば初期化処理のように、位置測定装置によって行われる。
【0004】
現在位置を、相対的位置変化によって追跡可能にする方法は、EP 2 102 725 B1明細書に記載がある。ここでは、最初の絶対位置検出、例えば機械的に固定された初期位置から出発して、現在位置が、全ての位置変化の和から求められる。各位置変化には不確実性が含まれているので、そこから算出される絶対位置の不確実性は、位置変化の数に伴って増加する。従って、位置不確実性を許容限界内に維持するためには、絶対位置検出による定期的な再初期化が必要である。
【0005】
独国特許 10 2007 050 173 B3明細書には、力−移動量基準値曲線と力−移動量実際値曲線との間の相関関数によって行われる位置測定を用いた、モータ駆動式アクチュエータ部分のための位置補正方法が記載されている。ここでは前記2つの特性マップ間の対応関係が、前記2つの特性マップ間の位置補正値に依存して検出され、そのように検出された補正値を用いて補正された位置におけるアクチュエータ部材の現在位置が想定される。しかしながら例えば既存の補正値のように、他のソースからの位置情報は考慮されず、せいぜい相関サーチの初期化として用いられるにすぎない。その結果、場合によってはより正確な位置情報、すなわち相関関数から得られたものよりも少ない不確実性値しか持たない位置情報が上書きされて、当該位置情報が失われてしまう。
【0006】
それに対して本発明の課題は、絶対位置検出の枠内で、絶対位置検出および/または相対位置検出から得られた情報の再利用が可能となり、それによって例えば何らかの位置情報が新たに求められることのない、但し状況によってはあまり正確でない新たな位置情報によって上書きされないような方法及び装置を提供することである。
【0007】
上記課題は、冒頭に述べたような形式の本発明により、現在の位置を求めるために、2つの入力量が考慮され、詳細には、
(1)エラーを含んだ位置追跡(計数)と
(2)エラーを含んだ位置測定とが考慮され、前記2つの位置の間で比較的低い不確実性値を有する位置近傍の新たに検出される位置が選択されることによって解決される。
【0008】
それに応じて本発明による装置は、位置測定ユニットと位置追跡ユニットとに接続されている現在位置を求めるように構成された平均化ユニットを有しており、前記平均化ユニットは、求められた位置偏差と、前記位置追跡ユニットによって求められた最後に有効な位置とを考慮するように構成されている。
【0009】
それにより、本発明による方法のもとでは、最後に有効な位置情報が無条件に拒絶されるのではなく、新たに求められる位置と通常は相異なる現在位置の位置決定のためにそれは利用される。既存の位置の不確実性と、新たに求められた位置の不確実性とに応じて、現在位置は、2つの位置のうちの精度の低い位置の近傍に選択される。それにより、不確実性のより少ない値が、現在位置の検出により大きな影響を有する。これらの利点は、本発明による装置の平均化ユニットによって達成される。
【0010】
位置測定ユニットを実施するための手段は、例えば、特徴点のために駆動モータの力経過、回転速度経過または電流経過を求めるように構成されている。例えば1つの特徴点は、例えばサンルーフのウインドデフレクタのもとで生じるような強い力の増加であってもよい。重要なのは、上記の特徴点がアクチュエータ要素の常に同じ位置に発生することだけである。その位置は例えばウインドデフレクタの場合、サンルーフの移動経過においてウインドデフレクタが機械的に係合する位置であってもよい。位置測定ユニットにおける経過の評価は特徴点を識別し、その結果から所定の位置を推論する。位置測定ユニットの実施のための別の有利な方法は、独国特許DE 10 2007 050 173 B3明細書に記載の相関関数の利用からなる。このような測定ユニットの利点は、絶対的な機械的基準点への非依存性にある。
【0011】
相関関数を用いた位置測定ユニットにおいては、とりわけ力−移動量曲線またはその他の特性数−移動量曲線が、前記相関関数と結び付けて使用するための特性曲線として適しており、この場合有利には、前記特性数が力と相関付けられる(例えば電流−移動量曲線または回転速度−移動量曲線)。しかしながらこれに対しては、原則的には、移動量に関連し、かつ非周期的な経過を有している全ての特性曲線が好適である。したがって、前記特性曲線検出ユニットは、有利には、位置追跡ユニットと接続され、力−移動量曲線や他の特性数−移動量曲線、例えば電流−移動量曲線や回転速度−移動量曲線を記録するように構成され、前記特性数は力と相関付けられる。
【0012】
相関関数から新たに求められた位置の不確実性は、使用された特性曲線の経過に強く依存し得るので、有利には、相関関数から不確実性値が求められ、同じ相関関数から求められた位置に対応付けされる。この目的のために有利には、本発明による装置の相関ユニットは、位置偏差と共に平均化ユニットに伝送する不確実性値を求めるように構成されている。一定値とみなした不確実性値または他のパラメータから推定される不確実性値のような別の可能性の方が、より容易に求めることが可能であるが、しかしながらいずれにせよ従来の推定でなければならないであろう。なぜなら、それは、求められた位置の不確実性値の過大な推定につながり、位置決定に悪影響を及ぼすからである。
【0013】
複数の位置値の組み合わせの他に、有利には、2つの位置の不確実性値が組み合わされ、新たに求められた最後に有効な位置の不確実性値から現在位置の不確実性値が求められる。この場合典型的には、結果として得られた不確実性値は、元の2つの不確実性値よりも低く、このことは、複数の位置値の組み合わせの結果として得られた情報であることを反映している。このような理由から有利には、平均化ユニットは、位置追跡ユニットから提供される位置不確実性値と、位置測定ユニットの不確実性値とを処理するように構成されている。
【0014】
補正された位置を求めるために、有利には、位置追跡ユニットからの位置と、位置測定ユニットからの位置とが、それらの不確実性値に反比例する形で考慮される。これにより、不確実性に関するレベルの比較的大きな値が、不確実性に関するレベルの比較的小さな値よりも考慮されないことを簡単に保証できる。したがって、考慮されるこれらの値は、その都度の不確実性値の逆数で重み付けされる。ここで発生する特殊なケースとして、例えば機械的に正確に定められた基準位置における再初期化に基づく完璧に既知の場合である。その値は、測定ユニットから求められた値によって影響されることはない。なぜなら、この値は不確実性値がゼロであるため、無限のような影響ないし重み付けを伴うからである。
【0015】
使用する位置がガウス分布の平均値であり、算出される不確実性値がそれらの分散であるならば、現在位置とそれらの不確実性値は、特に有利にはカルマンフィルタを用いて、新たに求められた位置と最後に有効な位置、並びにそれらのその都度の不確実性値とから求めることが可能である。カルマン・フィルタは、この状況においては最適な線形フィルタである。それ故に有利なケースでは、平均化ユニットは、カルマンフィルタを有する。
【0016】
さらに、相関関数を用いた絶対位置検出に加えて、既知の固定位置からスタートした際の絶対位置検出も可能にするために、例えば、既知の初期位置または静止位置からスタートする場合には、最初の位置変化をする前は、現在の位置値とその不確実性値をその都度実質的にゼロを用いて初期化するか、ないしは初期化してもよい。このスタート過程の際に当て嵌まるゼロを用いた不確実性値の初期化は、完全に既知の位置に相応している。なぜなら初期位置は定義上ゼロ位置に相応するからである。
【0017】
複数の絶対位置検出の間で、アクチュエータ部材の連続的に更新される位置を提供するために、有利には、位置追跡ユニットが、位置変化の検出と更新の実行のために位置メモリに接続されている。アクチュエータ部材の位置は、(わずかに)エラーを含んだ方法によって追跡される。その場合に現在位置の不確実性値は、位置が変化した場合に増加する。この方法には、例えばリップルの計数やホールセンサの信号の評価も含まれる。(リップルの計数やホールセンサのように)独立した測定の不確実性値は、通常の場合単に加算されるので、現在位置は複数の位置変化の後で推定できるが、対応する不確実性値も相対位置測定の回数の増加と共に拡大する。
【0018】
以下では、本発明の特に有利な実施例を、図面に基づき詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による方法を含めたアクチュエータ部材の位置を連続的に求めるための方法のフローチャート
図2】本発明による位置検出のもとでの不確実性値の時系列的増加を表した概略図
図3】本発明による方法を実施するための装置の概略的ブロック図
【0020】
図1に示された方法は、開始ステップSの後で、位置計数または位置追跡の初期化ステップ1で始まる。ここでは、基準位置も基準位置の不確実性値もゼロで初期化される。それにより、アクチュエータ部材が移動を開始する前に、その正確な位置がわかる。例えばパワーウインドウや電動サンルーフが操作される場合に、アクチュエータ部材が使用されると同時に、位置変化2が起きる。この位置変化2の後で、現在位置を推定できるようにするために、前記位置変化2が適切な手法3によって追跡される。この追跡手法3は、記録されている位置変化2に基づいて、現在のカウントされた位置に適用され、同時にその不確実性値も、使用されている前記追跡手法3における位置検出が発生する不確実性値に従って増加する。ここでは新たな初期化が何もトリガされない限り、前記位置変化2のステップと前記追跡手法3とが繰り返される。カウント位置に対応する不確実性値は、位置変化2の回数の増加と共に拡大する。不確実性を高める絶対値は、目下使用されている追跡手法3によって決定され、例えばそれには、既知の信号パターンからの偏差が記録された場合にのみ増加するファジー間隔が含まれる。しかしながら一定の増加、例えば所定の経験値による一定の増加が、各移動追跡の終わりに増加される。
【0021】
遅くとも、現在の基準位置の不確実性値が許容最大値を超えたときに、分岐ステップ4において再標準化がトリガされる。この再標準化は、図示の例では、後続する分岐ステップ5によっても示されている2つの方法で行うことができる。一つの選択肢は、特定の位置、例えば閉鎖位置への接近6である。但しその代わりに、アクチュエータ部材を監視して、所定の位置に達したときに再標準化をトリガすることも可能である。どちらの場合でも、それぞれの初期化位置に達すると同時に、再標準化1が実行される。この場合の欠点は、事前に定められた初期化位置をとる必要があることである。様々な不定位置の間で連続的に移動されるアクチュエータ部材を作動させる場合には、再初期化はまれに行われる程度で、ほとんど実施されることはない。さらなる欠点としては、この初期化過程が、しばしばパワーウインドウや電動サンルーフの機械系において多大な応力の蓄積に結びつくことであり、このことは、機構の寿命に悪影響を与える。
【0022】
前記再初期化に対して代替的に、絶対位置測定のための任意の他の方法を使用することもできる。本発明による技法によれば、この関係において、例えば相関による位置検出が用いられる。第1のステップ7では、コントロールされた条件下で定められる基準特性曲線Krefと、最後の移動中に記録された現下の実際特性曲線Kistとの間で相関関数が評価され、この相関関数に基づいて、位置の平均値と不確実性値とが分散の形態で求められる。この相関関数は、実質的には以下の構造を有する。
【0023】
特性曲線は、例えば、力−移動量曲線、電流−移動量曲線、または速度−移動量曲線であってもよい。この場合それらの微分が利用されてもよい。この微分を利用した場合の利点は、例えば摩耗や周辺環境の影響に基づくシステム的な誤差に起因する特性値の何らかのシフトやずれが、あまり若しくはほとんど結果に影響を及ぼさないことである。
【0024】
ここで特定される形態において、関数パラメータjは移動量を示し、パラメータiは移動量や移動量補正の変化を表す。すなわち、相関関数自体は、移動量補正や位置補正の関数である。したがって測定された位置は、先行時点の位置と、相関関数から求められた補正値との和からなっている。位置シフトないしずれを計算するために、相関関数は、位置補正の確率密度分布として解釈され、その結果、平均値μmess及び位置の分散σ2messに対して相関関数cov(i)との以下のような関係が得られる。
【0025】
代替的に、前記位置シフトは、相関関数の最大値を決定することによって求めることも可能である。測定された位置値は、このシフト値と先行値の和である。
【0026】
そのようにして得られた値は、最終的に現在位置データと一緒にカルマンフィルタリングステップ8において使用される。結果として得られる補正位置の計算、すなわち現下の平均値μneuと新たな分散σ2neuの計算は、以下の式を用いて行われる。
【0027】
それに続く(さらなる)位置変化2の場合は、この方法で決定されるこの位置は、追跡手法3の枠内で算出された絶対位置が新しい平均値μneuに基づいて求められた位置であるという観点で使用される。
【0028】
図2の線図は、位置データの不確実性の時間経過を概略的に表した図である。横軸には時間ないし動作時間がプロットされ、縦軸にはアクチュエータ部材の位置がプロットされている。アクチュエータ部材の移動は、機構的に最小位置xminと最大位置xmaxの間に制限される。これら2つの位置の間で、移動がエラーを含んだ手法によって追跡され、このことは、不確実性間隔9を表す線10,11のステップ状の経過によって示されている。この場合線10,11は、現在位置値の下方と上方に対称に配置されている。図示の経過は、時点t0で開放位置xminからスタートして、時点t8で閉鎖位置xmaxに到達する連続した完全な閉鎖移動を示している。その後アクチュエータ部材は再び完全に開かれるが、但し時点t13とt14の間では短い中断を伴い、時点t19で新たな閉鎖過程が開始される前の時点t18において再び開放位置xminに到達する。
【0029】
当該線図の2本の線は、ステップ状に経過し、この経過は、不正確な位置追跡に基づく不確実性値が上昇する時(t1,t2,t4t5,t7,t9,t11,t12,t15,t16)、または不確実性値が絶対位置検出に基づいて低減し得る時(t3,t6,t8,t10,t13,t17,t18)には、いつも跳躍する。最後の2つのケース(t8,t18)における位置検出は、再初期化であり、そのため不確実性値はゼロに設定される。従ってアクチュエータ部材は、再初期化の時点(t8,t18)では、機構的に固定的に定められた既知の2つの初期化位置xminまたはxmaxにある。他のケース(t3,t6,t10,t13,t17)では、それの代わりに本発明による方法が実施され、そのため、一般的に前記初期化位置xminまたはxmaxとは異なる絶対位置が求められ、不確実性値が低減され得る。第1のスタート時点(t0)と第1の再初期化時点(t8)との間の経過において認められるように不確実性は、再初期化なしでも限られた領域内に留まることが見て取れる。その場合、この領域が狭幅に留まれば留まるほど、より頻繁にかつより正確に絶対位置検出が実施される。位置データに関する事前情報に依存しない測定とは対照的に、本発明による方法においては、絶対位置検出からの位置データも使用されるか、あるいは特性曲線を用いて考慮される。そのためこの関係において一般に、位置データの比較的低い不確実性値が達成される。
【0030】
図3には、最終的に本発明の方法を実施するための装置のブロック回路図が概略的に示されている。電気モータ12は、当該の大幅に簡略化した描写の中で、スイッチングによってその優先度が変更可能である直流電源13によって駆動される。このモータ12は例えば、窓、座席、サンルーフを移動させるか、ないしはパワーウインドウや他の同様の制御機器の一部であり得る。このモータ12ないしは関連するセンサユニット12′から測定データ14が、位置追跡ユニット15(単に位置追跡器とも称する)に伝送される。センサデータないし測定データ14は、例えば、駆動電流及び/又は駆動電圧に関する情報を含むだけでなく、特別に設けられたセンサ、例えばホールセンサを用いて求められた測定結果も含み得る。位置追跡ユニット15は、入力された測定データから、対応するモータ電流リップルの検出に関連して、場合によって生じ得る位置変化を導出ないし算出するように構成されている。さらに位置メモリ17からの現在有効な位置データも加えて、そこから新たな位置値が導出される。その際には、位置変化の絶対値だけでなく、例えば基本的に不正確な若しくは一貫性のないデータに基づいて生じた、固定的位置変化に対応する不確実性値も検出される。
【0031】
結果として検出される位置変化とその不確実性値は、位置メモリ17に伝送される位置データレコード16を形成する。位置メモリ17は、絶対位置と、通常は絶対位置の分散σ2の形態である、絶対位置に対応する不確実性絶対値とを記憶している。位置データレコード16を受信した場合には、記憶された絶対位置データが、検出された位置変化とその不確実性値とに基づいて更新される。これは相対的な変化であるため、不確実性値は、位置変化の不確実性に応じて、拡大されなければならない。
【0032】
初期化の場合には、位置メモリ17は、リセット信号18を受け取る。このリセット信号18は、位置メモリ17において、絶対位置データが所定の初期化データレコードに置き換えられるように作用する。この種の初期化は、例えば工場において、ないしは制御ユニットの組み立て後に、機構ブロック上でモータ12を動作させることによって実行される。その際に使用される初期化データレコードは、1つの位置とそれぞれのゼロの不確定値とを含んでいる。そのためこれらの2つの絶対値が位置メモリ17内でゼロに設定される。
【0033】
測定データの第2のレコード19は、モータ12ないしはセンサユニット12′から特性曲線検出ユニット20に伝送される。この特性曲線検出ユニット20は、その他にも位置メモリ17から現在位置データ21を受け取るため、前記測定データ19と前記位置データ21とに基づいて、少なくとも1つの特性曲線を検出して、バッファする。特性曲線の検出が、コントロールされた条件下で、初期化中に、若しくは、位置データの正確性を保証する他の手段の下で、行われるならば、そのようにして得られた特性曲線22が基準特性曲線メモリ23へ伝送される。この基準特性曲線メモリ23は、伝送された特性曲線を、通常動作モードにおいて書き込みアクセスから保護される永久メモリに保存する。
【0034】
位置測定ユニット24として機能する相関ユニット24は、特性曲線検出ユニット20からの最後に検出された現下の実際値特性曲線25も、メモリ23に記憶されている基準特性曲線26も使用し、これらの2つの特性曲線から相関関数を求める。それに続いて前記相関ユニット24は、算出された相関関数を用いて、平均値と、2つの特性曲線の間の位置偏差の分散とを検出する。この偏差データ27は、その後、特にカルマンフィルタを備えた平均化ユニット28に供給される。前記平均化ユニット28は、その他にも前記位置メモリ17から現在位置データ29(位置および不確実性)をロードする。
【0035】
前記偏差データにおいて特定される平均値は、現在位置データに関連する。なぜなら特性曲線検出ユニット20も実際にこのデータを実際値特性曲線25の記録中に使用しているからである。それ故に、相関関係から検出された位置偏差の平均値は明らかに相対値である。そこから現下の絶対位置を検出するために、この値は、位置メモリ17からの現在位置値に関連付けられるが、しかしながらその不確実性は考慮される必要がない。なぜならそれは既に偏差の不確実性の中に(実際値特性曲線を介して)暗黙的に含まれているからである。カルマンフィルタ内では、2つの絶対位置値が、それぞれに割り当てられた分散と共に使用されている。それによって平均化ユニット28から得られる結果は、絶対位置データ30の新しいレコードであり、これは位置メモリ17内に格納されている位置データを置き換える。この過程において、位置メモリ17に格納されたている位置データの不確実性値は、低減されるだけである。なぜなら、平均化ユニット28は、最悪のケースでも既存の位置データを不変のまま戻すからである。
【0036】
モータ12の動作を制御する制御ユニット31は、位置メモリ17に記憶されている位置データにアクセスし、そのデータを、例えばモータ12によって移動されるアクチュエータ部材を所定の位置に動かしたり、挟込み状況を識別したり、挟込み保護を実行するために使用する。
【0037】
位置測定の更なる例は以下の通りである。すなわち、力経過、回転速度経過、または電流経過において、例えば、電動サンルーフのウインドデフレクタのもとで発生し得る、比較的大きな力の上昇がみられる特徴点が識別される。この特徴点は、常に同じ場所で起こり、例えばそこではウインドデフレクタが機構的に一連の動作に係合し得る。この力の上昇がソフトウェアの評価によって検出された場合には、そこから所定の位置が推定される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】