(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-528781(P2015-528781A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】少なくとも2つのブリッジを用いて大面積の基板をレーザ加工する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C03B 32/00 20060101AFI20150904BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20150904BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20150904BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20150904BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20150904BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20150904BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20150904BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20150904BHJP
【FI】
C03B32/00
B23K26/073
H01S3/00 B
H01S3/10 Z
B23K26/00 G
B23K26/064 K
C03C17/36
C03C17/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-518924(P2015-518924)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013060247
(87)【国際公開番号】WO2014005755
(87)【国際公開日】20140109
(31)【優先権主張番号】12174902.2
(32)【優先日】2012年7月4日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】リー−ヤー イェー
【テーマコード(参考)】
4E168
4G015
4G059
5F172
【Fターム(参考)】
4E168AC03
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4E168CB04
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4E168DA03
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4E168EA17
4E168EA19
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4E168JA11
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4E168JA27
4G015EA00
4G059AA01
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4G059EA01
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4G059EA05
4G059EB04
5F172AE03
5F172AE06
5F172AE09
5F172AF02
5F172AF03
5F172AF06
5F172AF07
5F172DD06
5F172NN05
5F172NR06
5F172ZZ01
(57)【要約】
本願は、大面積のガラス基板(7)上の金属含有又は金属酸化物含有のコーティングを熱処理するレーザ装置(1)であって、少なくとも:a)少なくとも1つのレーザ源(2)と、b)ガラス基板(7)を有する搬送ベルト(5)上に架け渡される少なくとも2つのブリッジ(4)と、を備え、各ブリッジ(4)は、少なくとも2つのブリッジ(4)に互い違いに配置されている複数の光学アッセンブリ(3)を有し、各光学アッセンブリ(3)は、レーザライン(12)を発生させ、かつすべての光学アッセンブリ(3)のレーザライン(12)は、相俟ってガラス基板(7)の全幅をカバーするレーザ装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積のガラス基板(7)上の金属含有又は金属酸化物含有のコーティングを熱処理するレーザ装置(1)であって、少なくとも:
a)少なくとも1つのレーザ源(2)と、
b)ガラス基板(7)を有する搬送ベルト(5)上に架け渡される少なくとも2つのブリッジ(4)と、
を備え、
各ブリッジ(4)は、前記少なくとも2つのブリッジ(4)に互い違いに配置されている複数の光学アッセンブリ(3)を有し、
各光学アッセンブリ(3)は、レーザライン(12)を発生させ、かつ
すべての前記光学アッセンブリ(3)のレーザライン(12)は、相俟って基板(7)の全幅をカバーする、
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記搬送ベルト(5)の上方に、第1のブリッジ(4.1)及び第2のブリッジ(4.2)が配置されており、前記光学アッセンブリ(3)の数は、前記第1のブリッジ(4.1)にn個、前記第2のブリッジ(4.2)にn+1個であるか、又は反対に前記第2のブリッジ(4.2)にn個、前記第1のブリッジ(4.1)にn+1個である、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記搬送ベルト(5)の上方に、第1のブリッジ(4.1)、第2のブリッジ(4.2)及び第3のブリッジ(4.3)が配置されている、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記レーザ源(2)の数は、少なくとも前記ブリッジ(4)の数に等しい、請求項1から3までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記光学アッセンブリ(3)は、少なくとも1つのレーザスキャナ(8)、1つのレンズ(9)及び1つの絞り(10)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記レーザスキャナ(8)は、ポリゴンスキャナ又はガルバノメータスキャナであり、好ましくはポリゴンスキャナである、請求項1から5までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項7】
レーザビーム(11)は、ミラー(13)又はライトガイド(14)を介して前記レーザ源(2)から前記光学アッセンブリ(3)に導かれる、請求項1から6までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項8】
ガラス基板(7)の表面に対する前記光学アッセンブリ(3)の間隔は、10cm〜100cmであり、前記光学アッセンブリ(3)は、前記ブリッジ(4)に沿って前記搬送ベルト(5)の搬送方向(6)に対して横方向に1cm〜20cm、好ましくは5cm〜15cmの分だけ可動である、請求項1から7までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項9】
隣り合う前記光学アッセンブリ(3)のレーザライン(12)は、500μm〜1cm、好ましくは0.1cm〜0.3cmの幅を有する範囲を一緒にカバーする、請求項1から8までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記ブリッジ(4)は、互いに20cm〜90cm、好ましくは40cm〜60cmの間隔を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記レーザ源(2)としてCWレーザ又はパルスレーザ、好ましくは固体レーザ、特に好ましくはネオジウムをドープしたイットリウム−アルミニウム−ガーネット−レーザ(Nd:YAG−レーザ)、イッテルビウムをドープしたイットリウム−アルミニウム−ガーネット−レーザ(Yb:YAG−レーザ)、エルビウムをドープしたイットリウム−アルミニウム−ガーネット−レーザ(Er:YAG−レーザ)、チタン:サファイア−レーザ又はネオジウムをドープしたバナジン酸イットリウム−レーザ(Nd:YVO4−レーザ)が使用される、請求項1から10までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のレーザ装置(1)を用いて大面積のガラス基板(7)を連続的にレーザ加工する方法であって、
a)光学アッセンブリ(3)を調整し、
b)搬送ベルト(5)の速度とレーザスキャナ(8)の速度とを同期化し、
c)前記搬送ベルト(5)上のガラス基板(7)がブリッジ(4)の下を通過したときに自動的にレーザ加工する、
ことを特徴とする、レーザ加工する方法。
【請求項13】
隣り合う光学系のレーザライン(12)がガラス基板(7)上で500μm〜1cm、好ましくは0.1cm〜0.3cmの分だけオーバラップするように、前記光学系(3)を調整する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記搬送ベルト(5)を毎分5m〜15m、好ましくは毎分9m〜11mの速度で動かす、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から11までのいずれか1項記載のレーザ装置(1)の、金属コーティング又は金属酸化物コーティングされたガラス基板、特に好ましくは1m〜6mの幅、好ましくは少なくとも3mの幅を有する大面積のガラス基板を加工するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ放射を用いて大面積の基板を加工する方法及び装置に関する。
【0002】
現代建築は、大面積の窓又はガラスファサードを多用している。これらは、審美的に魅力に富んだ印象を与え、快適な室内環境を形成するとともに、冬季にも十分な昼光の入射を提供する。しかし、太陽光の赤外成分は、特に夏季には、居住空間の強い温度上昇を引き起こし、大きな入射面積を有する窓面は、欠点と化してしまう。これについては、ブラインド等の暗幕装置や、空調設備の導入といった対策を講じることも可能であるが、暗幕装置は、昼光も通さない。また、室内の強い温度上昇は、空調設備のエネルギ消費の増大を招き、これに伴い温室効果ガス排出の増大も招いてしまう。
【0003】
居住空間に侵入する前に赤外線を既に遮蔽すると同時に、昼光を通す効果的な可能性は、いわゆるLow−Eコーティングである。Low−Eコーティングは、熱放射を反射するコーティングであり、赤外線のかなりの部分を反射する。このことは、夏季の居住空間の温度上昇を和らげることにつながる。さらにコーティングが、窓ガラスの室内側に被着されている場合は、内室からの熱放射の損失が軽減され得る。つまりこのコーティングは、居住空間の断熱にも寄与する。
【0004】
Low−Eコーティングは、一般に拡散遮断部と、金属又は金属酸化物含有の複層と、遮断層とを含んでいる。拡散遮断部は、直接ガラス表面に被着され、ガラス内への金属原子の拡散による変色を防止している。しばしば、二重又は三重の銀層が、複層として使用される。様々なLow−Eコーティングが、例えば独国特許出願公開第102009006062号明細書、国際公開第2007/101964号パンフレット、欧州特許第0912455号明細書、独国特許第19927683号明細書、欧州特許第1218307号明細書及び欧州特許第1917222号明細書において公知である。
【0005】
Low−Eコーティングの析出は、好ましくは磁界によりアシストしながら実施される自体公知の陰極スパッタリング法を介して実施される。磁界によりアシストしながら実施される陰極スパッタリングにより析出された層は、非晶質の構造を有し、ガラス又は透明のポリマー等の透明基板の曇りを生じる。非晶質の層の温度処理は、透過性が改善された結晶質の層への結晶構造変化を引き起こす。コーティングへの温度供給は、火炎処理、プラズマバーナ、赤外線又はレーザ処理を介して実施可能である。
【0006】
国際公開第2008/096089号パンフレットは、薄層を析出し、温度処理する方法を開示している。基板に被着した層の加熱は、不可避的に基板自体の加熱にもつながる。熱は、この層から、層に接触しているより低温の基板に導出されてしまう。これにより、基板に沿った温度勾配が発生する。この温度勾配は、熱応力を惹起し、この熱応力は、基板を破損させる恐れがある。この種の損傷は、層が最大300℃の温度に加熱される一方、同時にガラスの反対側の温度が150℃未満に維持されることにより、回避可能である。温度処理は、層の性状次第で様々な方法により実施され、例えば銀含有の複層を熱処理するには、レーザ構造が使用される。しかし、市販のレーザでは、数百ミリメートルまでの小さな範囲しかカバーできない。この理由から、基板を有する搬送ベルトの進行方向に対して垂直にレーザを動かし、これにより表面全体をカバーすることを可能にする構造が使用される。しかし、個々のレーザの速度は、特に基板が大きいとき、レーザ処理を基板のコーティングとインライン式に実施することができない程に遅い。
【0007】
大面積の基板を加工する別の可能性は、基板の領域全体を、その際にその位置を変えることなくカバーする単独のレーザ光学系である。しかし、この規模の単独の光学アッセンブリは、個々に調整されねばならない複数の光学部品からなる手間のかかる高価な構造を必要とする。
【0008】
択一的に、複数のレーザモジュールが、相並んで装着される場合もある。レーザモジュールの各々は、基板表面の一部領域をカバーする。しかし、相並んで装着された複数のレーザユニットは、基板全幅の正確なカバーを実施するには、正確な調整を必要とする。
【0009】
他の技術分野においては、既に大面積の基板を加工するレーザ法が公知である。米国特許出願公開第2007/0211323号明細書は、例えばOLED(organic light emitting displays:有機発光ディスプレイ)を製造するレーザ装置を記載している。この場合、複数のレーザが可動に1つのブリッジに取り付けられており、ブリッジは、2つのガイドレール上をx方向及び−x方向で移動可能となっている。独国特許出願公開第19620391号明細書も、複数の加工ヘッドを有する1つのブリッジ構造を開示している。このブリッジ構造も、x方向及び−x方向のブリッジの運動が必要である。このようなx方向及び−x方向でのブリッジの前後進は、搬送ベルト上にある基板の時間的に効率的なレーザ加工と両立しない。それというのも、こうして低い絶対的な搬送速度が達成されるにすぎないからである。米国特許第4889140号明細書及び米国特許出願公開第2009/0212033号明細書において、搬送ベルト上に架け渡されている複数のブリッジを有するレーザ装置が開示されている。しかし、このレーザ装置では、基板の点状の加工が実施されるだけであり、大面積の加工は、予定されてもいなければ、可能でもない。これらの装置のいずれも、大面積のガラス基板のLow−Eコーティングを、このLow−Eコーティングの析出とインライン式に、全面的に熱処理するのに好適なものではない。
【0010】
本発明の課題は、大面積のガラス基板上の金属含有又は金属酸化物含有のコーティングの熱処理を、コーティングを析出する方法とインライン式に行うことを可能とすると同時に、レーザモジュールの簡単な調整が保証されている装置を提供することである。レーザ装置は、可及的安価に製造可能であることが望ましい。
【0011】
本発明の課題は、本発明の独立請求項1に係る大面積のガラス基板をレーザ加工するレーザ装置、独立請求項12に係る大面積のガラス基板をレーザ加工する方法及び独立請求項15に係るレーザ装置の、金属コーティング又は金属酸化物コーティングされたガラス基板の加工のための使用により解決される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に係る発明である。
【0012】
大面積の平面のガラス基板を加工するレーザ装置は、少なくとも複数のレーザ源、複数の光学アッセンブリ及び搬送ベルト上に架け渡される少なくとも2つのブリッジを有している。搬送ベルト上には、加工すべきガラス基板が存在する。好ましくは、ガラス基板のサイズは、フロートガラスで一般的な3m×6mの標準寸法に相当する。基板は、短辺がブリッジに対して平行になるように搬送ベルト上に載置される。好ましくは、レーザ装置は、ガラス基板上に金属含有又は金属酸化物含有のコーティングを析出する生産ラインの終端に存在する。レーザ加工は、コーティングとインライン式に実施可能である。光学アッセンブリは、互い違いにブリッジに取り付けられている。各光学アッセンブリは、1つのレーザラインを形成し、すべての光学アッセンブリのレーザラインは、相俟ってガラス基板の全幅をカバーする。ここで、ガラス基板の全幅とは、搬送ベルトの搬送方向に対して垂直な基板の最大の延在長さを指している。
【0013】
本発明に係るレーザ装置の好ましい態様において、2つのブリッジが、横方向に搬送ベルトの上方に取り付けられている。光学アッセンブリは、交互に両ブリッジに取り付けられているので、第1の光学アッセンブリは、第1のブリッジに、横方向で第1の光学アッセンブリの次に位置する光学アッセンブリは、第2のブリッジに装着されている。次の光学アッセンブリは、再び第1のブリッジに取り付けられている。この交互の配置は、第2のブリッジに第1のブリッジよりも1つ多い光学アッセンブリが存在する前提である。概して、第1のブリッジの光学アッセンブリの数は、n個であり、第2のブリッジの光学アッセンブリの数は、n+1個である。ここでnは1より大きい自然数である。択一的には、第2のブリッジの光学アッセンブリの数をn個とし、第1のブリッジの光学アッセンブリの数をn+1個としてもよい。好ましくは、光学アッセンブリの総数は、5〜15個、特に好ましくは10〜12個である。
【0014】
本発明に係るレーザ装置の別の態様は、第1及び第2のブリッジに対して付加的に第3のブリッジを搬送ベルトの上方に有している。光学アッセンブリは、互い違いに計3つのブリッジに配置されている。この場合、第1の光学アッセンブリは、第1のブリッジに、搬送方向に対して横方向で次に位置する光学アッセンブリは、別のブリッジに、さらに次の光学アッセンブリは、まだ光学アッセンブリが装着されていないブリッジに装着されている。この場合、3つのブリッジの順序は、任意である。好ましくは、光学アッセンブリの総数は、5〜15個、特に好ましくは10〜12個である。3つのブリッジを有するレーザ装置は、好ましくは、光学アッセンブリの所要スペースが大きく、2つのブリッジには配置しきれない場合に使用される。
【0015】
レーザ源の数は、好ましくは少なくともブリッジの数に等しい。レーザ源は、それぞれブリッジにおいて直接光学アッセンブリの横に取り付けられても、ブリッジの横に取り付けられてもよい。レーザ源から発せられるレーザビームは、ミラー又はライトガイドを介して光学アッセンブリに向けて変向される。択一的には、すべてのブリッジのすべての光学アッセンブリのために単独のレーザ源が使用されてもよい。
【0016】
レーザ源がブリッジにおいて直接光学アッセンブリの横に取り付けられる場合、光学アッセンブリ毎に1つのレーザ源が必要である。この場合、好ましくはレーザは、可動にブリッジに装着されている。その結果、レーザの位置は、光学アッセンブリの移動時にやはり変更可能である。これにより、搬送ベルトの搬送方向に対して横方向の光学アッセンブリ及びレーザの調整が可能となる。択一的には、光学アッセンブリの調整範囲が、光学アッセンブリとレーザ源との間の間隔より小さければ、レーザは不動に取り付けられてもよい。レーザ源と光学アッセンブリとの間の距離が小さく、ビームの経路が妨げられていなければ、レーザビームは、直接ミラーを介して光学アッセンブリに導かれ得る。このことは、レーザ源がブリッジにおいて直接光学アッセンブリに隣接して取り付けられている場合に、特に有利である。
【0017】
択一的な態様において、ブリッジ毎に唯一のレーザ源が必要とされ、ブリッジの横又はブリッジの縁部に取り付けられている。この場合、レーザビームは、ライトガイド、好ましくはガラスファイバケーブルを介してレーザ源から光学アッセンブリに向けて変向される。
【0018】
光学アッセンブリは、少なくとも1つのレーザスキャナ、1つのレンズ及び1つの絞りを有する。レーザスキャナとして、ポリゴンスキャナ又はガルバノスキャナが使用可能である。
【0019】
好ましくは、ポリゴンスキャナがレーザスキャナとして使用される。レーザビームは、まずレンズを通してポリゴンスキャナの面に向けてフォーカシングされる。その際、小さな直径を有する1つのレンズだけが必要である。このことは、レーザ装置のコストに関して有利である。レーザビームは、レンズにより約50μmの幅にフォーカシングされる。レンズの直径は、例えば5cmである。ポリゴンスキャナの中心的な構成部材は、多面を有した可動のミラープリズムであり、ミラープリズムは、約10,000rpmで回転し、こうして基板の一本の線を連続的に走査する。使用されるポリゴンスキャナにより達成されるスキャン速度は、毎秒10mより高く、好ましくは毎秒25mである。ミラーの高い回転速度に基づいて、連続的な均一なレーザラインが形成される。レーザラインの長さは、ポリゴンミラーのファセットの数及び長さと、基板表面に対する間隔とにより決定される。好ましくは、100mm〜1000mm幅、好ましくは200mm〜400mm幅のレーザラインを発生させる光学系アッセンブリが使用される。このレーザラインは、レーザラインの端を切り取る絞りを通して導かれ、その後、基板の表面に衝突する。その際、基板の表面は、レーザラインの焦点にある。これにより、レーザラインの焦点は、基板表面に対する光学アッセンブリの間隔を介して調節可能である。
【0020】
択一的には、ガルバノメータスキャナがレーザスキャナとして使用されてもよい。ガルバノメータスキャナの機能形式は、ポリゴンスキャナの機能形式と類似しているが、ガルバノメータスキャナは、ミラープリズムの代わりに1つのミラーしか有していない。これにより、ガルバノメータスキャナの最大のスキャン速度は、毎秒5mであり、ポリゴンスキャナの速度より大幅に小さい。レーザ源から発せられたレーザビームは、ガルバノメータスキャナのミラーに直接衝突し、ミラーからレンズに向けて変向される。レンズは、レーザビームを約50μmの幅にフォーカシングする。レンズの直後には、絞りが存在し、絞りは、レーザラインの端を切り取る。形成されるレーザラインの幅は、毎秒5mのスキャン速度を有するガルバノメータスキャナを選択したとき、最大300mmに制限されている。
【0021】
基板の表面に対する光学アッセンブリの間隔は、好ましくは10cm〜100cmである。レーザラインのフォーカシングは、ポリゴンスキャナの使用時、やはりこの間隔の変更を介して実施される。光学アッセンブリは、ブリッジに沿って搬送ベルトの搬送方向に対して横方向に可動である。これにより、光学アッセンブリの簡単な調整が保証される。ブリッジにおける光学アッセンブリの互い違いの配置は、十分なスペースが光学アッセンブリの移動のために存在し、光学アッセンブリの移動が空間的に妨げられることがないので、光学アッセンブリの互いに独立的な調整を可能にする。光学アッセンブリは、ブリッジに沿って1cm〜20cm、好ましくは5cm〜15cmの分だけ可動である。
【0022】
個々の光学アッセンブリのレーザラインは、足し合わされて、ガラス基板の全幅をカバーする1つの照光領域を形成する。その際、隣り合う光学アッセンブリのレーザラインは、500μm〜1cm、好ましくは0.1cm〜0.3cmの1つの共通の基板領域をカバーする。この基板領域は、両レーザラインにより照光される。個々のレーザラインの加工領域の重複により、ガラス基板の全面がカバーされ、2つの加工領域間の移行部に隙間が生じないことが保証される。
【0023】
好ましくは、ブリッジは、互いに20cm〜90cm、好ましくは40cm〜60cmの間隔を有する。
【0024】
レーザ源として、好ましくは連続型又はパルス型の固体レーザが使用される。特に好ましくは、ネオジウムをドープしたイットリウム−アルミニウム−ガーネット−レーザ(Nd:YAG−レーザ)が使用される。択一的には、イッテルビウム(Yb:YAG−レーザ)又はエルビウム(Er:YAG−レーザ)もドープ材料として使用可能であり、又はチタン:サファイア−レーザ又はネオジウムをドープしたバナジン酸イットリウム−レーザ(Nd:YVO
4−レーザ)も使用可能である。Nd:YAG−レーザは、1064nmの波長の赤外線を発する。しかし、周波数を2倍又は3倍にすることにより、532nm及び355nmの波長の放射も形成可能である。
【0025】
レーザ加工は、300nm〜1300nmの波長で実施される。その際、使用される波長は、コーティングの種類による。その際、レーザ放射の波長は、コーティングがレーザ放射を吸収し、これによりエネルギ供給により加熱され得る範囲内になければならない。好適に使用されるNd:YAG−レーザは、355nm、532nm及び1064nmの波長のレーザ放射を提供可能である。銀コーティングの加工には、好ましくは1064nmの波長が使用される。
【0026】
レーザ加工のために必要な総出力は、光学アッセンブリの設計、設備の構造及びレーザビームのビームガイドに強く依存している。典型的な出力値は、1kW〜16kWである。
【0027】
レーザ出力は、やはり層厚、層構造及びコーティングの組成に合わせて調整すべきである。
【0028】
さらに本発明は、本発明に係るレーザ装置を用いて大面積の平板のガラス基板を連続的にレーザ加工する方法を包含する。第1の工程において、複数の光学アッセンブリが相俟って基板の全幅をカバーするように、光学アッセンブリをブリッジに沿って調整する。その際、好ましくは、個々の光学アッセンブリの領域は、500μm〜1cm、好ましくは0.1cm〜0.3cmの分だけオーバラップする。本発明に係る方法の第2の工程において、搬送ベルトの速度とレーザスキャナの速度とを同期化する。この同期化は、表面の均質な加工を保証する。製品品質は、無作為抽出試験方式で電気抵抗及び透過性の測定により検査される。透過性の値は、レーザ加工により全領域で均一に上昇するのが望ましい一方、電気抵抗は低下する。択一的には、コーティングの検査は、レーザの痕跡が目で良好に看取可能であるので、マニュアル式に実施されてもよい。
【0029】
その後、ガラス基板を搬送ベルト上に載置する。好ましくは、ガラス基板のレーザ加工は、直接コーティングの析出に続いて実施する。この場合、両プロセスは、インライン式に進行する。レーザ加工の速度は、本発明に係る方法によればコーティングプロセスの速度に少なくとも等しい。その結果、従来技術において一般的な方法のような搬送ベルトの減速は、本発明では不要である。搬送ベルトは、好ましくは毎分5m〜15m、特に好ましくは毎分9m〜11mの速度を有している。プロセスの最後の工程において、ブリッジを通して基板を通過させ、ブリッジに取り付けられたレーザアッセンブリを用いて完全に連続的に加工する。その際、レーザスキャナは、ガラス基板間の移行部において、2つのガラス基板間に比較的大きな間隙が発生しても、停止される必要がない。
【0030】
さらに本発明は、本発明に係るレーザ装置の、金属コーティング又は金属酸化物コーティングされたガラス基板、特に好ましくは1m〜6mの幅、好ましくは少なくとも3mの幅を有する大面積のガラス基板を加工するための使用を包含する。本発明に係るレーザ装置及び本発明に係る方法は、特に幅3m、長さ6mの一般的なフロートガラス標準寸法のガラス基板の加工に好適である。
【0031】
使用されるガラス基板は、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス及び/又は透明なプラスチック、例えばポリメチルメタクリレートを含む。好ましくは、フロートガラスが使用される。
【0032】
ガラス基板のコーティングは、好ましくは金属層又は酸化物、例えばTCO層(transparent conductive oxide:透明導電性酸化物)、例えば銀層又はITO層(indium tin oxide:インジウム・すず酸化物)を含む。特に好ましくは、ニッケル−クロム及び/又はチタンを含み、0.5nm〜2nmの厚さを有する2つの遮断層により包囲される、6nm〜15nmの厚さを有する銀層が使用される。遮断層とガラス表面との間には、好ましくはSi
3N
4、TiO
2、SnZnO及び/又はZnOを含み、25nm〜35nmの厚さを有する拡散遮断部が被着されている。上側の遮断層上には、周囲に面して、好ましくはZnO及び/又はSi
3N
4を含み、35nm〜45nmの厚さを有する拡散遮断部が被着されている。この上側の拡散遮断部には、任意選択的に、TiO
2及び/又はSnZnO
2を含み、1nm〜5nmの厚さを有する保護層が設けられている。すべての層の総厚さは、好ましくは67.5nm〜102nmである。
【0033】
以下に、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。図面は、本発明を何らかの形態に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】搬送ベルトの上方に2つのブリッジを有する本発明に係るレーザ装置を示す図である。
【
図1b】
図1aに示した本発明に係るレーザ装置を、光路の詳細図とともに示す図である。
【
図2】レーザビームがライトガイドを介して光学アッセンブリに向けて変向される本発明に係るレーザ装置の別の実施の形態を示す図である。
【
図3】
図1aに示した本発明に係るレーザ装置の平面図である。
【
図4】搬送ベルトの上方に3つのブリッジを有する本発明に係るレーザ装置のさらに別の実施の形態を示す図である。
【
図5】
図4に示した本発明に係るレーザ装置の平面図である。
【
図6】
図1aに示した本発明に係るレーザ装置の、ガラス基板上の加工領域を示す図である。
【
図7】レーザラインを形成するために使用されるポリゴンスキャナを示す図である。
【
図8】レーザラインを形成するために使用されるガルバノメータスキャナを示す図である。
【
図9】大面積の基板をレーザ加工する本発明に係る方法を示す図である。
【0035】
図1aは、本発明に係るレーザ装置(1)を示している。レーザ装置(1)は、搬送ベルト(5)の上方に2つのブリッジ(4)を有している。ブリッジ(4)は、搬送方向(6)に対して横方向に、搬送ベルト(5)上に架け渡されている。搬送ベルト(5)上には、ガラス基板(7)が載置されている。ガラス基板(7)は、ブリッジ(4)の下を通して搬送される。第1のブリッジ(4.1)及び第2のブリッジ(4.2)には、光学アッセンブリ(3)が取り付けられている。ブリッジ(4)には、光学アッセンブリ(3)の横に、光学アッセンブリ(3)毎にそれぞれ1つのレーザ源(2)が存在している。第1のブリッジ(4.1)には、5つの光学アッセンブリ(3)が5つのレーザ源(2)とともに取り付けられている一方、第2のブリッジ(4.2)には、6つの光学アッセンブリ(3)と6つのレーザ源(2)とが装着されている。光学アッセンブリ(3)は、両ブリッジ(4)に交互に取り付けられている。両ブリッジ(4)における光学アッセンブリ(3)の交互の配置は、隣り合う光学アッセンブリ(3)の間隔が十分に大きくなるため、ブリッジ(4)に沿って光学アッセンブリ(3)を調整する十分なスペースを保証する。3mの幅を有するガラス基板(7)を加工するには、好ましくは計11個の光学アッセンブリ(3)を有するこの種のレーザ装置(1)が使用される。各光学アッセンブリ(3)は、300mm幅のレーザラインを発生させ、これによりガラス基板(7)の全幅をカバーする。
【0036】
図1bは、
図1aに示した本発明に係るレーザ装置(1)を、レーザビーム(11)の経路の詳細とともに示している。レーザ源(2)により発生されたレーザビーム(11)は、ミラー(13)を介して隣接する光学アッセンブリ(3)に向けて変向され、ハウジングの側面に設けられた開口を介して光学アッセンブリ(3)に入射する。レーザ源、対応するミラー(13)及び対応する光学アッセンブリ(3)は、可動にブリッジ(4)に装着されているので、これらのアッセンブリは、容易にブリッジ(4)に沿って移動可能である。ガラス基板(7)の表面に対する光学アッセンブリ(3)の間隔も可変であり、この場合、レーザ源(2)及びミラー(13)の高さは、一般に変更される必要がない。光学アッセンブリ(3)の高さ調整は、光学アッセンブリ(3)の態様次第で、ガラス基板(7)の表面上でのフォーカシングあるいは集光を保証するために必要である。しかし、この高さ調整は、比較的小さな高さ調整であるので、ミラー(13)及びレーザ源(2)の高さは変更される必要がなく、レーザビーム(11)の経路だけがミラー(13)の回動により新規に調整され得る。
【0037】
図2は、本発明に係るレーザ装置(1)の別の実施の形態を示している。本実施の形態では、レーザビーム(11)は、ライトガイド(14)を介して光学アッセンブリ(3)に向けて変向される。本実施の形態における基本的な構造は、
図1aに示した構造に相当する。
図1aに示した構造とは異なり、ブリッジ(4)毎に1つのレーザ源(2)しか必要でなく、レーザ源(2)は、ブリッジ(4)の縁部に組み付けられている。レーザ源(2)からレーザビーム(11)は、それぞれのライトガイド(14)を通してそれぞれの光学アッセンブリ(3)に導かれる。本実施の形態は、レーザビーム(11)を変向するミラーが省略されるので、光学アッセンブリ(3)を僅かに位置変更しただけで行わなければならないミラーの新規調整が省略されるという利点を提供する。ミラーを備えた実施の形態に対して、本実施の形態で使用されるライトガイド(14)は、限られた範囲で可動性を有しているので、光学アッセンブリ(3)の位置の比較的小さな変更は、許容範囲内にあり、新規調整を必要としない。
【0038】
図3は、
図1aに示した本発明に係るレーザ装置(1)の平面図である。光学アッセンブリ(3)は、第1のブリッジ(4.1)と第2のブリッジ(4.2)とに交互の順序で配置されている。この場合、光学アッセンブリ(3)の加工領域は、ブリッジ(4)に沿ったガラス基板(7)の全幅をカバーしている。
【0039】
図4は、本発明に係るレーザ装置(1)の別の実施の形態を示しており、本実施の形態のレーザ装置(1)は、ガラス基板(7)を有する搬送ベルト(5)の上方に3つのブリッジ(4)を有している。本実施の形態において、第1のブリッジ(4.1)には、3つの光学アッセンブリ(3)が、第2のブリッジ(4.2)には、5つの光学アッセンブリ(3)が、第3のブリッジ(4.3)には、3つの光学アッセンブリ(3)が、互い違いに取り付けられている。ブリッジ(4)の光学アッセンブリ(3)の分布は、可変であり、唯一留意すべきは、個々の光学アッセンブリ(3)の加工領域が相俟ってガラス基板(7)の全幅をカバーすることである。光学アッセンブリ(3)の横には、それぞれ1つのレーザ源(2)がブリッジ(4)に装着されている。しかし、択一的には、
図2に示すようにライトガイドケーブルを用いてレーザ源を削減することも可能である。
【0040】
図5は、
図4に示した本発明に係るレーザ装置(1)の平面図である。3つのブリッジ(4)における光学アッセンブリ(3)の互い違いの配置が看取可能である。第1のブリッジ(4.1)及び第3のブリッジ(4.3)には、それぞれ3つの光学アッセンブリ(3)が取り付けられている一方、第2のブリッジ(4.2)には、5つの光学アッセンブリ(3)が装着されている。各光学アッセンブリ(3)は、ガラス基板(7)の部分領域をカバーし、光学アッセンブリ(3)の個々の領域は、相俟ってブリッジ(4)の領域でガラス基板(7)の全幅をカバーしている。
【0041】
図6は、
図1aに示した本発明に係るレーザ装置(1)の、ガラス基板(7)上の加工領域(15)を示している。ガラス基板(7)上に形成されるレーザライン(12)は、搬送ベルト(5)の運動によりガラス基板(7)の長さにわたってガラス基板(7)上を案内される。これにより、ガラス基板(7)上には、複数の加工領域(15)が発生する。第1のブリッジ(4.1)の加工領域(15.1)は、第2のブリッジ(4.2)の加工領域(15.2)間に位置し、第2のブリッジ(4.2)の加工領域(15.2)とオーバラップする。このオーバラップにより、未加工領域が発生しないことが保証される。ガラス基板(7)は、搬送ベルト(5)を介して搬送方向(6)に送られ、その結果、ガラス基板(7)の表面は、完全に加工される。
【0042】
図7は、レーザライン(12)を発生させるために使用されるポリゴンスキャナ(8.1)を示している。レーザビーム(11)は、光学アッセンブリ(3)への入射後、レンズ(9)を通してポリゴンスキャナ(8.1)の1つの面にフォーカシングされる。回転するポリゴンスキャナ(8.1)は、レーザビーム(11)をガラス基板(7)の表面に向けて反射する。その際、ポリゴンスキャナ(8.1)の高速回転運動により、1本のレーザライン(12)が発生する。レーザライン(12)の端は、絞り(10)により切り取られる。ガラス基板(7)の表面上でのレーザライン(12)のフォーカシングは、基板表面に対するポリゴンスキャナ(8.1)の高さ調整により実施される。
【0043】
図8は、ポリゴンスキャナ(8.1)に対して択一的に、レーザスキャナ(8)として光学アッセンブリ(3)に含まれていてもよい、レーザライン(12)を発生させるために使用されるガルバノメータスキャナ(8.2)を示している。レーザビーム(11)は、光学系(3)のハウジングに入射し、ガルバノメータスキャナ(8.2)によりレンズ(9)に向けて変向される。ガルバノメータスキャナ(8.2)は、回動により1本のレーザライン(12)を発生させ、レーザライン(12)は、レンズによりガラス基板(7)の表面に向けてフォーカシングされる。レンズ(9)は、レーザライン(12)の端を切り取る絞り(10)内に嵌め込まれている。本実施の形態では、レーザライン(12)の長さは、レンズの大きさにより制限されている。
【0044】
図9は、大面積のガラス基板(7)をレーザ加工する本発明に係る方法を示している。第1の工程において、ガラス基板(7)の幅に関する光学アッセンブリ(3)の調整を実施する。光学アッセンブリ(3)は、ガラス基板(7)の全幅が加工可能であり、個々の光学アッセンブリ(3)の加工領域(15)が部分的にオーバラップするように調整される。次に、搬送ベルト(5)の速度とレーザスキャナ(8)の速度とを同期化する。本発明に係る方法は、光学アッセンブリ(3)が定置に装着され、方法中に動かされる必要がないので、従来技術において公知の方法と比較して高速の加工を可能にする。これにより、本発明に係る方法によるレーザ加工は、スパッタリングによるガラス基板(7)のコーティングに好ましくは直接続いて、搬送ベルト(5)の速度を絞る必要なく実施可能である。次の工程において、ガラス基板(7)を搬送ベルト(5)上に載置する。コーティング設備と本発明に係るレーザ装置(1)とがインライン式に配置されている場合は、ガラス基板(7)は、コーティング設備の前で既に搬送ベルト(5)上に載置される。その後、搬送ベルト(5)上のガラス基板(7)を、ブリッジ(4)を通して移動させ、光学アッセンブリ(3)により自動的に加工する。
【0045】
以下に、本発明について、本発明に係る方法の一例と比較例とを参照しながら詳細に説明する。
【0046】
一連の2つの実験において、本発明に係るレーザ装置(1)を使用した場合と、従来技術において公知のレーザ装置を使用した場合とで、搬送ベルト(5)の最大で達成可能な速度及び大面積のガラス基板(7)のレーザ加工時のすべての光学部品のコストを比較した。使用したガラス基板(7)の寸法は、すべての実験において幅3m、長さ6mである。ガラス基板(7)は、長辺が搬送ベルト(5)の搬送方向(6)に対して平行になるように搬送ベルト(5)に載置した。本発明に係るレーザ装置(1)及び従来技術におけるレーザ装置をそれぞれコーティング設備とともにインライン式で設置し、ガラス基板(7)をコーティングの析出に直接続いてレーザ装置により加工した。コーティング設備としてマグネトロン−スパッタリング−設備を使用し、マグネトロン−スパッタリング−設備において、30nm厚のSi
3N
4−層、10nm厚の銀層、1nm厚のニッケル−クロム−層、40nm厚のZnO−層及び4nm厚のTiO
2−層の順に基板表面に被着した。銀層は、析出直後には非晶質の構造を呈する。コーティングの熱処理により、非晶質の構造から結晶質の構造への移行がなされ、これによりコーティングの透明性は改善される。この種の温度処理のために、レーザ法が特に好適であることが判っている。すべての一連の実験において、コーティングを熱処理するレーザ装置をコーティング設備に直接隣接配置したので、ガラス基板の直接的な後処理がなされた。レーザプロセスは、一般に、方法の最も速度の遅い工程である。これによりレーザ法の加速は、生産プロセス全体の加速と、これに関連するコスト削減とを伴う。他方、レーザアッセンブリに要するコストは、可及的低く維持されることが望ましい。本発明に係るレーザ装置を用いたガラス基板の加工時と、従来技術におけるレーザ装置を用いたガラス基板の加工時とで、搬送ベルトの最大で可能な速度及びレーザ装置の光学部品の調達コストを、一連の実験を基に比較した。
a)例1:本発明に係るレーザ装置(1)を用いた大面積のガラス基板(7)の加工
搬送ベルト(5)の上方に2つのブリッジ(4)を50cm間隔で取り付け、搬送ベルト(5)上に載置されたガラス基板(7)の短辺に対して平行に搬送ベルト(5)上に架け渡されているようにした。第1のブリッジ(4.1)に5つの光学アッセンブリ(3)を装着する一方、第2のブリッジ(4.2)には、第1のブリッジ(4.1)の光学アッセンブリ(3)に対して交互に、6つのさらなる光学アッセンブリ(3)を取り付けた。レーザライン(12)が出射する絞り(10)がガラス基板(7)の方向を向いているように、光学アッセンブリ(3)を調整した。ブリッジ(4)の縁部にそれぞれ1つのレーザ源(2)を位置決めし、レーザ源(2)のレーザビーム(11)をライトガイド(14)を通して光学アッセンブリ(3)に導いた。レーザビーム(11)を、側面の開口を通して光学アッセンブリ(3)に入射させ、光学アッセンブリ(3)においてレンズ(9)によりポリゴンスキャナ(8.1)に向けて変向させた。ポリゴンスキャナ(8.1)を10,000rpmで回転させ、ポリゴンスキャナ(8.1)により、ガラス基板(7)に向けて反射される連続的なレーザライン(12)を発生させた。使用されるポリゴンスキャナ(8.1)のスキャン速度は、10m毎秒とした。レーザライン(12)の端は、レーザライン(12)が絞り(10)を通過する際に切り取られるようにした。横方向で隣り合う光学アッセンブリ(3)の加工領域(15)がガラス基板(7)上でそれぞれ0.2cmの分だけオーバラップするように、光学アッセンブリ(3)を調整した。レーザ源(2)として、ネオジウムをドープしたイットリウム−アルミニウム−ガーネット−レーザ(Nd:YAG−レーザ)を使用した。
b)比較例2:従来技術において公知のレーザ装置を用いた大面積のガラス基板(7)の加工
比較例2では、大面積のガラス基板(7)の加工を、Innovavent社の「Volcano Line Beam 750 Laser Optics」なる名称で販売されているレーザ装置を用いて実施した。このレーザ装置では、532nmの波長を有するNd:YAG−レーザ(Starlase 400G US)が使用されている。
【0047】
表1は、本発明に係るレーザ装置(例1)及び従来技術において公知のレーザ装置(比較例2)それぞれの、搬送ベルト(5)の最大で可能な速度及びすべての光学部品のコストを示している。
【0048】
【表1】
【0049】
本発明に係るレーザ装置(1)は、搬送ベルト(5)の大幅な速度上昇を可能にする。レーザ加工とインライン式になされるスパッタリングプロセスでは、毎分10mの搬送速度が達成される。従来技術において公知のレーザ装置を用いたガラス基板(7)の後続の加工時、スパッタリングプロセスと同じ速度は達成されない。これにより基板は、一時貯蔵されねばならず、直接インライン式に後加工されることはできない。本発明に係るレーザ装置(1)は、一時貯蔵なしのガラス基板(7)の直接的な後加工が可能である程にレーザ加工を加速する。生産プロセス全体は、これにより加速される。このことは、生産コストの低下につながる。さらに本発明に係るレーザ装置(1)は、従来技術において公知のレーザ装置の複雑な光学アッセンブリと比較して大幅に単純な構造を有している。表1に看取可能であるように、光学部品の調達コストは、公知のレーザ装置と比較して全体として50%以下に削減可能である。さらに本発明に係るレーザ装置(1)は、光学アッセンブリ(3)が互い違いにブリッジ(4)に装着されており、これにより干渉し合わず、互いに独立的に移動可能であるので、光学アッセンブリ(3)の簡単な調整を可能にする。
【符号の説明】
【0050】
1 レーザ装置
2 レーザ源
3 光学アッセンブリ
4 ブリッジ
4.1 第1のブリッジ
4.2 第2のブリッジ
4.3 第3のブリッジ
5 搬送ベルト
6 搬送方向
7 ガラス基板
8 レーザスキャナ
8.1 ポリゴンスキャナ
8.2 ガルバノメータスキャナ
9 レンズ
10 絞り
11 レーザビーム
12 レーザライン
13 ミラー
14 ライトガイド
15 加工領域
15.1 第1のブリッジの加工領域
15.2 第2のブリッジの加工領域
【国際調査報告】