(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
本発明は、DNAおよびRNAとは異なる分析物を検出するための分析物検出システムに関する。前記システムは、互いに特異的にハイブリダイズし得る1セットのオリゴヌクレオチドを含み、その特異的ハイブリダイゼーションに基づいてシグナルを発生させることができる。前記システムは、シグナルの変化をもたらす、分析物(単数または複数)の存在下での前記オリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーション平衡の変化に依存する。一局面において、本発明は、DNAおよびRNAとは異なる分析物を検出するための分析物検出システムを提供し、ここで上記システムは、少なくとも第一のオリゴヌクレオチドA、第二のオリゴヌクレオチドBおよび第三のオリゴヌクレオチドSを含む。
オリゴヌクレオチドSが、1つより多くのハイブリダイゼーションドメインを含み、場合により、2つ以上のハイブリダイゼーションドメインが別々のヌクレオチド鎖上に位置する、請求項1に記載の分析物検出システム。
第一のオリゴヌクレオチド(1)、第二のオリゴヌクレオチド(3)および第三のオリゴヌクレオチド(5)を含む、請求項1に記載の分析物検出システムであって、ここで
●前記第一のオリゴヌクレオチドまたは前記第二のオリゴヌクレオチドが、シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)を含み;
●前記第三のヌクレオチドが、前記シグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)を含み;
●共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)が、前記第一のオリゴヌクレオチドまたは前記第二のオリゴヌクレオチド上に位置し;
前記第一のオリゴヌクレオチドまたは前記第二のオリゴヌクレオチドと前記第三のオリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションが、前記第一のオリゴヌクレオチドまたは前記第二のオリゴヌクレオチドと前記第三のオリゴヌクレオチドとがハイブリダイズされないときとは異なるシグナルを発生させるか、またはシグナルの発生を触媒することができ;かつ
前記分析物の存在が、前記検出システムの前記ハイブリダイゼーション平衡を変化させ、その結果、シグナルが変化することになる、
分析物検出システム。
前記第一の基(2)および前記第二の基(6)によって形成される前記シグナル伝達システムが、クエンチャー−フルオロフォアシグナル伝達システム、フルオロフォア−クエンチャーシグナル伝達システム、FRETシグナル伝達システム、DNAペルオキシダーゼ触媒シグナル伝達システム、またはクエンチャーおよび一重項酸素増感剤であり;ならびに場合により、前記シグナル伝達システムが、蛍光ナノ粒子を利用する、前記請求項のいずれかに記載の分析物検出システム。
前記共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)が、有機分子、抗体、抗原、アプタマー、ビオチンおよびハプテンから成る群より選択される、前記請求項のいずれかに記載の分析物検出システム。
前記共有結合で連結されている結合部分(4)が、150〜1500Da、例えば150〜1200Da、例えば150〜1000Da、例えば150〜800Da、例えば150〜600Da、例えば150〜400Da、例えば150〜300Da、例えば300〜1500Da、例えば400〜1500Da、例えば600〜1500Da、例えば800〜1500Da、例えば1000〜1500Da、または例えば1200〜1500Daの範囲内の分子量を有する有機分子である、前記請求項のいずれかに記載の分析物検出システム。
前記分析物が、150〜1500Da、例えば150〜1200Da、例えば150〜1000Da、例えば150〜800Da、例えば150〜600Da、例えば150〜400Da、例えば150〜300Da、例えば300〜1500Da、例えば400〜1500Da、例えば600〜1500Da、例えば800〜1500Da、例えば1000〜1500Da、または例えば1200〜1500Daの範囲内の分子量を有する有機分子である、前記請求項のいずれかに記載の分析物検出システム。
前記第一のオリゴヌクレオチド(1)が、前記第二のオリゴヌクレオチド(3)に共有結合で連結されており、かつ前記第二のオリゴヌクレオチド(3)が、前記第三のオリゴヌクレオチドに共有結合で連結されている、前記請求項のいずれかに記載の分析物検出システム。
前記第一のオリゴヌクレオチドと前記第三のオリゴヌクレオチド間、および前記第二のオリゴヌクレオチドと前記第三のオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーション平衡が、前記結合部分への分析物の結合に基づいて、および/または前記結合部分に対する結合パートナーの解離に基づいてシフトされる、請求項17に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、本発明を以下でより詳細に説明することにする。
【0024】
分析物検出システム
1つの態様において、本発明は、3つのオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーション平衡に基づく分析物検出システムであって、試料中の非核酸分析物を検出することができる分析物検出システムに関する。
【0025】
本発明のこの態様のある実施形態は、第一のオリゴヌクレオチド(1)、第二のオリゴヌクレオチド(3)および第三のオリゴヌクレオチド(5)を含む分析物検出システムであって、
●第一または第二のオリゴヌクレオチドが、シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)を含み;
●第三のヌクレオチドが、そのシグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)を含み;
●共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)が、第一または第二のオリゴヌクレオチド上に位置し;
第一または第二のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションが、前記第一または第二のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチドとがハイブリダイズされないときとは異なるシグナルを発生させるか、またはシグナルの発生を触媒することができ;ならびに
分析物の存在が、当該検出システムのハイブリダイゼーション平衡を変化させ、その結果、シグナルが変化することになる、分析物検出システムである。
【0026】
前記分析物検出システムは、例えば、
●第一のオリゴヌクレオチド(1)が、
〇分岐点移動領域(7)の5’側に位置する第一のトーホールド領域(8)
を含み;
●第二のオリゴヌクレオチド(3)が、
〇分岐点移動領域(7)の3’側に位置する第二のトーホールド領域(9)
を含み;および
●第三のオリゴヌクレオチド(5)が、
〇第一のトーホールド領域(8’)と、
〇第二のトーホールド領域(9’)と、
〇分岐点移動領域(7’)と
を含み;
●第一のオリゴヌクレオチド(1)中の第一のトーホールド領域(8)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第一のトーホールド領域(8’)とが、相補的配列を含み;
●第一のオリゴヌクレオチド(1)中の分岐点移動領域(7)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)とが、相補的ヌクレオチドのストレッチを含み;
●第二のオリゴヌクレオチド(3)中の第二のトーホールド領域(9)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第二のトーホールド領域(9’)とが、相補的ヌクレオチドのストレッチを含み;および
●第二のオリゴヌクレオチド(3)中の分岐点移動領域(7)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)とが、相補的ヌクレオチドのストレッチを含む
ものであってもよい。
【0027】
特定の実施形態において、本発明は、DNAおよびRNAとは異なる分析物を検出するための分析物検出システムであって、
− ■分岐点移動領域(7)の5’側に位置する第一のトーホールド領域(8)、
■場合により、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)、
■場合により、第一の基(2)(前記第一の基はシグナル伝達システムの第一の部分を形成する)
を含む、第一のオリゴヌクレオチド(1)と;
− ■分岐点移動領域(7)の3’側に位置する第二のトーホールド領域(9)、
■場合により、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)、
■場合により、第一の基(2)(前記第一の基はシグナル伝達システムの第一の部分を形成する)
を含む、第二のオリゴヌクレオチド(3)と;
− ■第一のトーホールド領域(8’)、
■第2のトーホールド領域(9’)、
■分岐点移動領域(7’)、
■場合により、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)、
■第二の基(6)(前記第二の基はシグナル伝達システムの第二の部分を形成する)
を含む、第三のオリゴヌクレオチド(5)と
を含み;
但し、シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)が、第一のオリゴヌクレオチド(1)および/または第二のオリゴヌクレオチド(3)のいずれかに含まれることを条件とし;
但し、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)が、第一のオリゴヌクレオチド(1)および/または第二のオリゴヌクレオチド(3)および/または第三のオリゴヌクレオチド(5)上に位置することを条件とし;
第一のオリゴヌクレオチド(1)中の第一のトーホールド領域(8)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第一のトーホールド領域(8’)とが、相補的配列を含み;
第一のオリゴヌクレオチド(1)中の分岐点移動領域(7)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)とが、相補的ヌクレオチドのストレッチを含み;
第二のオリゴヌクレオチド(3)中の分岐点移動領域(7)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)とが、相補的ヌクレオチドのストレッチを含み;
第二のオリゴヌクレオチド(3)中の第二のトーホールド領域(9)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第二のトーホールド領域(9’)とが、相補的ヌクレオチドのストレッチを含み;
第一のオリゴヌクレオチド(1)と第三のオリゴヌクレオチド(5)間のハイブリダイゼーションが、前記第一のオリゴヌクレオチド(1)と第三のオリゴヌクレオチド(5)がハイブリダイズされないときとは異なるシグナルを発生させるか、もしくはシグナルの発生を触媒することができるが、但し、シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)が第一のオリゴヌクレオチド(1)上に含まれることを条件とし;または
第二のオリゴヌクレオチド(3)と第三のオリゴヌクレオチド(5)間のハイブリダイゼーションが、前記第二のオリゴヌクレオチド(3)と第三のオリゴヌクレオチド(5)がハイブリダイズされないとき発生もしくは触媒されるシグナルとは異なるシグナルを発生させるか、もしくはシグナルの発生を触媒することができるが、但し、シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)が第二のオリゴヌクレオチド(3)上に含まれることを条件とする、
システムに関する。
【0028】
本明細書において用いる場合、用語「検出すること」は、分析物の存在または不在の定性的検出のみならず、本発明を用いる分析物の量の定量も包含することを意図したものである。
【0029】
本明細書において用いる場合の「分析物」への言及は、単一の分析物はもちろん、適用可能な場合には2つ以上の分析物の検出も含む。
【0030】
オリゴヌクレオチドA、BおよびSは、多くの場合、別々のヌクレオチド鎖上にあることになるが、共有結合によって部分的にまたは完全に接続されている2つ以上のオリゴヌクレオチドで本発明を行ってもよい。
【0031】
さらに、一般にA、BまたはSと呼ぶ3つのオリゴヌクレオチドを便宜上使用して本発明を本明細書において一般的に説明するが、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドAおよび/またはBと類似していてもよい追加のオリゴヌクレオチド、例えば、追加のオリゴヌクレオチドCまたは2つの追加のオリゴヌクレオチドCおよびDを使用して前記方法を行うことができることは明白であろう。あるいは、または加えて、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドSに類似している1つ以上のさらなるオリゴヌクレオチドを用いて本発明を行ってもよい。例として、第一の分析物の検出のための1セットのオリゴヌクレオチド(A、B、S)とともに第二の分析物の検出のための第二のセットのオリゴヌクレオチド(C、D、S’)を用いて本発明を行ってもよい。
【0032】
さらなる代替実施形態は、オリゴヌクレオチドSが1つより多くのハイブリダイゼーションドメインを含むものである。この代替実施形態の例を、1つ以上のヘアピンターンを有しており、それにより複数のハイブリダイゼーションドメインを形成するSを示す
図20で説明する。複数のハイブリダイゼーションドメインを
図20には単一のオリゴヌクレオチドSの一部であるように示すが、2つ以上のかかる結合ドメインが別々のヌクレオチド鎖上に位置する配置を使用することも可能であろう。
【0033】
前に述べたように、前記システムは、前記システム内のオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーション平衡の変化に基づく。したがって、ある実施形態において、分析物の存在は、その検出システムのハイブリダイゼーション平衡を変化させ、その結果、例えばその分析物が不在であるときと比較して、シグナルが変化することになる。それ故、本発明は、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA)間で起こるハイブリダイゼーション事象を利用して試料中の非DNA(または非RNA)の存在またはレベルを検出するユニークなシステムを提示する。このアッセイには、例えばELISA試験と比較していくつかの利点がある。
【0034】
− 「実地」作業を殆ど必要とせず、それがこのアッセイを迅速かつ安価にする。
【0036】
− 等温条件下でアッセイを行ってよく、それが必要装置を安価にする。
【0037】
− 分析物への1つの結合事象しか必要としないので、小さな分析物をより容易に検出し得る。これは、例えば、分析物上に2つの結合部位を通常必要とするELISAとは対照的である。
【0038】
− このアッセイは均一であり、したがって固定および洗浄プロセスをしなくて済み、ならびに非特異的吸着の問題も免れる。
【0039】
− このアッセイは、抗体標識またはタンパク質修飾しなくて済む。
【0040】
第一のオリゴヌクレオチド
第一のオリゴヌクレオチド(1)は、前記検出システムの一部を形成する。ある実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)の長さは、8〜100ヌクレオチド、例えば10〜100、例えば15〜100、例えば20〜100、例えば30〜100、例えば40〜100、例えば50〜100、例えば60〜100、例えば70〜100、例えば80〜100、例えば90〜100、例えば8〜90、例えば8〜80、例えば8〜70、例えば8〜60、例えば8〜50、例えば8〜40、例えば8〜30、例えば8〜20、または例えば8〜15ヌクレオチドの範囲内である。さらにもう1つの実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)は、配列番号1、4、7、10および13から成る群より選択される。特定の配列を提供するが、異なる配列の組み合わせを選択することができるので、本発明は、これらの配列に決して限定されない。分析物がそれらの配列とは無関係に検出されるということが、このことを明示している。試料中の1つより多くの分析物を検出するために多重アッセイを設計する場合、異なる配列が有用であることもある。実施例の節に、異なるオリゴヌクレオチドセットでの結果を提示する。
【0041】
本文脈において、用語「5’側」は、核酸分子内の特定のポイントまたは領域に対して5’である位置にある核酸配列を指す。同様に、用語「3’側」は、核酸分子内の特定のポイントまたは領域に対して3’である位置にある核酸配列を指す。
【0042】
第二のオリゴヌクレオチド
第二のオリゴヌクレオチド(3)は、前記検出システムの一部を形成する。ある実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)の長さは、8〜100ヌクレオチド、例えば10〜100、例えば15〜100、例えば20〜100、例えば30〜100、例えば40〜100、例えば50〜100、例えば60〜100、例えば70〜100、例えば80〜100、例えば90〜100、例えば8〜90、例えば8〜80、例えば8〜70、例えば8〜60、例えば8〜50、例えば8〜40、例えば8〜30、例えば8〜20、または例えば8〜15ヌクレオチドの範囲内である。さらにもう1つの実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)は、配列番号2、5、8、9、11および14から成る群より選択される。上で述べたように、本発明は、これらの配列に決して限定されない。
【0043】
第三のオリゴヌクレオチド
第三のオリゴヌクレオチド(5)は、前記検出システムの一部を形成する。ある実施形態において、第三のオリゴヌクレオチド(5)の長さは、8〜100ヌクレオチド、例えば10〜100、例えば15〜100、例えば20〜100、例えば30〜100、例えば40〜100、例えば50〜100、例えば60〜100、例えば70〜100、例えば80〜100、例えば90〜100、例えば8〜90、例えば8〜80、例えば8〜70、例えば8〜60、例えば8〜50、例えば8〜40、例えば8〜30、例えば8〜20、または例えば8〜15ヌクレオチドの範囲内である。さらにもう1つの実施形態において、第三のオリゴヌクレオチド(5)は、特定の配列番号3、6、12および15から成る群より選択される。上で述べたように、本発明は、これらの配列に決して限定されない。
【0044】
オリゴヌクレオチド(1、3、5)の各々は、天然および/または非天然ヌクレオチド両方を含んでよい。したがって、ある実施形態において、オリゴヌクレオチド(1、3、5)は、天然および/または非天然ヌクレオチドを含む。さらにもう1つの実施形態において、非天然ヌクレオチドは、PNA、LNA、キシロ−LNA−、ホスホロチオエート−、2’−メトキシ−、2’−メトキシエトキシ−、モルホリノ−およびホスホロアミデート−含有分子またはこれらの類するものから成る群より選択される。非天然ヌクレオチドの利点は、例えばヌクレアーゼによって分解されにくいので、より生体安定性であり得る点である。しかし、前記オリゴヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNAから成ることもある。したがって、さらなる実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、天然核酸、例えばDNAまたはRNA、好ましくはDNAから成る。
【0045】
本明細書において用いる場合の用語「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」または「核酸配列」は、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらのミミック/ミメティックのオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語は、天然に存在する核酸塩基、糖および共有結合性ヌクレオシド間(主鎖)ホスホジエステル結合手から成る分子、ならびに同様に機能する天然に存在しない核酸塩基、糖および共有結合性ヌクレオシド間(主鎖)結合を有する分子、またはこれらの組み合わせを含む。かかる修飾または置換された核酸は、例えば細胞内取り込み増進、核酸標的に対する親和性強化ならびにヌクレアーゼおよび他の酵素の存在下での安定性増加などの望ましい特性のためネイティブ形態より好ましいことが多く、本文脈では用語「核酸類似体」または「核酸ミミック」によって記述される。核酸ミミック/ミメティックの好ましい例は、ペプチド核酸(PNA−)、ロックド核酸(LNA−)、キシロ−LNA−、ホスホロチオエート−、2’−メトキシ−、2’−メトキシエトキシ−、モルホリノ−およびホスホロアミデート−含有分子またはこれらに類するものである。
【0046】
核酸、核酸分子または核酸配列は、例えば、もっぱらデオキシリボヌクレオチドから成ることもあり、もっぱらリボヌクレオチドから成ることもあり、もっぱら核酸ミミックもしくは類似体から成ることもあり、またはそれらのキメラ混合物から成ることもある。それらのモノマーは、典型的にはヌクレオチド間ホスホジエステル結合手によって連結されている。核酸のサイズは、典型的に、数モノマー単位、例えばそれらが一般にオリゴヌクレオチドと呼ばれるときには5〜40から、数千のモノマー単位にわたる。核酸または核酸配列が表示されているときには常に、別段の断り書きがない限り、ヌクレオチドが左から右へ5’から3’への順序であることならびに「A」がデオキシアデノシンを示し、「C」がデオキシシチジンを示し、「G」がデオキシグアノシンを示し、および「T」がチミジンを示すことは理解されるであろう。
【0047】
非天然ヌクレオチド
本明細書において用いる場合、「非天然ヌクレオチド」または「核酸類似体」または「人工ヌクレオチド」は、相補核酸配列(1)にハイブリダイズするように設計された、DNAまたはRNAの構造類似体を意味すると解される。ヌクレオチド間結合(単数または複数)、糖および/または核酸塩基の修飾により、核酸類似体は、次の望ましい特性のいずれかまたはすべてを獲得し得る:1)最適化されたハイブリダイゼーション特異性または親和性、2)ヌクレアーゼ耐性、3)化学的安定性、4)可溶性;5)膜透過性;ならびに6)合成および精製の容易さまたは低い合成および精製コスト。核酸類似体の例としては、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸「LNA」、2’−O−メチル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート、および金属ホスホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
トーホールド領域
本文脈において、「トーホールド領域」は、ワトソン・クリック塩基対合を形成することができる2つの相補オリゴヌクレオチド領域を指し、またはトーホールド領域は、オリゴヌクレオチド中に位置する一本鎖配列を指すこともある。したがって、一本鎖オリゴヌクレオチドに関して用語「トーホールド領域」を用いるとき、それは一本鎖トーホールド領域を指し、これに対して二本鎖のもの(2つの一本鎖トーホールド領域が互いにハイブリダイズしているとき)に関して用語「トーホールド領域」を用いるとき、それは二本鎖領域を指すと解されたい。本文脈では、二本鎖トーホールド領域の各相補配列をXおよびX’として識別することがある。
【0049】
トーホールド領域は、異なる位置を有してよい。ある実施形態において、第三のオリゴヌクレオチド(5)中に第一の(一本鎖)トーホールド領域(8’)および(一本鎖)第二のトーホールド領域(9’)は、分岐点移動領域(7’)の反対側に位置する。分岐点移動領域の反対側への一本鎖トーホールド領域8’および9’の配置は、アッセイを加速させ得る。
【0050】
異なるトーホールド領域間の交差ハイブリダイゼーションを最小限にするために、2つのトーホールド領域[8、8’]および[9、9’]は、異なる配列を有してもよい。したがって、ある実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)中の第一のトーホールド領域(7)および第二のオリゴヌクレオチド(1)中の第二のトーホールド領域(8)は似ていない。本文脈において、似ていないという表現は、異なる配列を有すると解してもよく、したがって100%同一ではない。
【0051】
2つの一本鎖トーホールド領域は、長さが互いに異なってもよい。このようにして、ハイブリダイゼーションのシフトをより容易に認識できることがある。したがって、もう1つの実施形態において、第一のトーホールド領域(8)の長さは、1〜10ヌクレオチド、例えば1〜8ヌクレオチド、例えば1〜6ヌクレオチド、例えば1〜4,ヌクレオチド、例えば2〜10ヌクレオチド、例えば3〜10ヌクレオチド、例えば4〜10ヌクレオチド、例えば5〜10ヌクレオチド、例えば7〜10ヌクレオチドの範囲内、例えば3ヌクレオチド、例えば4ヌクレオチド、例えば5ヌクレオチド、または例えば6ヌクレオチドである。
【0052】
本明細書において用いる場合、用語「ハイブリダイゼーション」または「アニーリング」は、二本鎖構造の1本の鎖の中のヌクレオチドが反対の鎖上のヌクレオチドとの特異的ワトソン・クリック塩基対合を被るような、二本鎖構造を形成するための一本鎖ヌクレオチドの会合を指す。この用語は、本発明によるオリゴヌクレオチドに組み込まれ得るヌクレオシド類似体、例えばデオキシイノシン、2つのアミノプリン塩基を有するヌクレオシド、およびこれらに類するもの、の対合も含む。
【0053】
さらなる実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)中の第一のトーホールド領域(8)および第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第一のトーホールド領域(8’)は、1〜10、例えば2〜10、例えば3〜10、例えば4〜10、例えば5〜10、例えば2〜8、例えば2〜7、例えば2〜6、例えば2〜5、例えば2〜4相補的ヌクレオチドのストレッチを含む。
【0054】
さらにもう1つの実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)中の第一のトーホールド領域(8)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第一のトーホールド領域(8’)とは、少なくとも70%相補的、例えば70〜100%相補的、例えば75〜100%相補的、例えば80〜100%相補的、例えば85〜100%相補的、例えば90〜100%相補的、例えば95〜100%相補的、例えば97〜100%相補的、例えば99〜100%相補的、または例えば100%相補的である。
【0055】
もう1つの実施形態において、第二のトーホールド領域(9、9’)の長さは、1〜10ヌクレオチド、例えば1〜8ヌクレオチド、例えば1〜6ヌクレオチド、例えば1〜4,ヌクレオチド、例えば2〜10ヌクレオチド、例えば3〜10ヌクレオチド、例えば4〜10ヌクレオチド、例えば5〜10ヌクレオチド、例えば7〜10ヌクレオチドの範囲内、例えば3ヌクレオチド、例えば4ヌクレオチド、例えば5ヌクレオチド、または例えば6ヌクレオチドである。
【0056】
ある実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)中の第二のトーホールド領域(9)および第三のオリゴヌクレオチド(5)中の第二のトーホールド領域(9’)は、1〜10、例えば2〜10、例えば3〜10、例えば4〜10、例えば5〜10、例えば2〜8、例えば2〜7、例えば2〜6、例えば2〜5、例えば2〜4相補的ヌクレオチドのストレッチを含む。
【0057】
分岐点移動領域
本文脈において、「分岐点移動」は、2つのトーホールド領域および分岐点移動領域内でのハイブリダイゼーションにより第一のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションの平衡が第二のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションの方におよびその逆にシフトする状況を指す。
図2は、分岐点移動、および分析物の結合により平衡状態がどのように変化するかを示す。
【0058】
分岐点移動領域は、その相補的領域のため、第一のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチド間および第二のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチド間の分岐移動を助長する。したがって、ある実施形態において、分岐点移動領域(7、7’)の長さは、3〜30ヌクレオチド、例えば4〜30、例えば5〜30、例えば7〜30、例えば9〜30、例えば11〜30、例えば15〜30、例えば20〜30、例えば25〜30、例えば3〜25、例えば3〜20、例えば3〜15、例えば3〜11、例えば3〜9、例えば3〜7、例えば3〜5、または例えば3〜4ヌクレオチドの範囲内である。所望の長さを異なる温度および特定の配列に適応させてよい。さらにもう1つの実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)中の分岐点移動領域(7)および第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)は、3〜30相補的ヌクレオチド、例えば、4〜30、例えば5〜30、例えば7〜30、例えば9〜30、例えば11〜30、例えば15〜30、例えば20〜30、例えば25〜30、例えば3〜25、例えば3〜20、例えば3〜15、例えば3〜11、例えば3〜9、例えば3〜7、例えば3〜5または例えば3〜4相補的ヌクレオチドのストレッチを含む。
【0059】
さらなる実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)中の分岐点移動領域(7)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)とは、少なくとも70%相補的、例えば70〜100%相補的、例えば75〜100%相補的、例えば80〜100%相補的、例えば85〜100%相補的、例えば90〜100%相補的、例えば95〜100%相補的、例えば97〜100%相補的、例えば99〜100%相補的、または例えば100%相補的である。さらにさらなる実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)中の分岐点移動領域(7)および第二のオリゴヌクレオチド(3)中の分岐点移動領域(7)は、3〜30相補的ヌクレオチド、例えば4〜30、例えば5〜30、例えば7〜30、例えば9〜30、例えば11〜30、例えば15〜30、例えば20〜30、例えば25〜30、例えば3〜25、例えば3〜20、例えば3〜15、例えば3〜11、例えば3〜9、例えば3〜7、例えば3〜5、または例えば3〜4相補的ヌクレオチドのストレッチを含む。
【0060】
もう1つの実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)中の分岐点移動領域(7)と第二のオリゴヌクレオチド(3)中の分岐点移動領域(7)とは、少なくとも70%同一、例えば70〜100%同一、例えば75〜100%同一、例えば80〜100%同一、例えば85〜100%同一、例えば90〜100%同一、例えば95〜100%同一、例えば97〜100%同一、例えば99〜100%同一、または例えば100%同一である。したがって、第一および第二のオリゴヌクレオチド中の2つの分岐点移動領域7は、完全に同一である必要はない。
【0061】
追加の実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)中の分岐点移動領域(7)および第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)は、3〜30相補的ヌクレオチド、例えば4〜30、例えば5〜30、例えば7〜30、例えば9〜30、例えば11〜30、例えば15〜30、例えば20〜30、例えば25〜30、例えば3〜25、例えば3〜20、例えば3〜15、例えば3〜11、例えば3〜9、例えば3〜7、例えば3〜5、または例えば3〜4相補的ヌクレオチドのストレッチを含む。さらなる実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)と第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7’)とは、少なくとも70%相補的、例えば70〜100%相補的、例えば75〜100%相補的、例えば80〜100%相補的、例えば85〜100%相補的、例えば90〜100%相補的、例えば95〜100%相補的、例えば97〜100%相補的、例えば99〜100%相補的、または例えば100%相補的である。
【0062】
用語「配列同一性」は、等しい長さの2つのアミノ酸配列間または2つの核酸配列間の相同度の定量的尺度である。比較すべき2つの配列が等しい長さでない場合、ギャップの挿入または、代替的に、ポリペプチド配列もしくはヌクレオチド配列の末端での短縮を許すことにより、可能なベストフィットが得られるようにそれらをアラインしなければならない。配列同一性は、
【0063】
【化2】
として算出することができ、
この式中、N
difは、アラインしたときの2つの配列中の非同一残基の総数であり、およびN
refは、それらの配列の一方における残基の数である。それ故、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列同一性を有することになる(N
dif=2およびN
ref=8)。ギャップは、特定の残基(単数または複数)の非同一性としてカウントする、すなわち、DNA配列AGTGTCは、DNA配列AGTCAGTCと75%の配列同一性を有することになる(N
dif=2およびN
ref=8)。
【0064】
本発明のポリペプチドまたはアミノ酸に基づく実施形態すべてにおいて、1つ以上の配列間の配列同一性の百分率は、clustalWソフトウェア(www.ebi.ac.uk/clustalW/index.html)によりそのプログラムのデフォルト設定を用いて実行したときのそれぞれの配列のアラインメントに基づく。本発明のヌクレオチドに基づく実施形態に関する1つ以上の配列間の配列同一性の百分率も、clustalWソフトウェアをデフォルト設定で使用するアラインメントに基づく。例えば、ヌクレオチド配列アラインメントのためのこれらの設定は、Alignment=3Dfull、Gap Open 10.00、Gap Ext.0.20、Gap separation Dist.4、DNA weight matrix:identity(IUB)である。
【0065】
同様に、例えば前記オリゴヌクレオチドの1つについての相補配列を使用することによって、相補度を算出することができることは理解されるはずである。
【0066】
ある実施形態において、分岐点移動領域7と分岐点移動領域7’間のハイブリダイゼーションは、分岐点移動領域内に1つ以上のヘアピン、例えば、1〜5ヘアピン、例えば1〜3ヘアピン、例えば1〜2ヘアピンまたは例えば1ヘアピンを含む。理論により拘束されないが、Sの中央に2つの隣接するヘアピンがあると、ASの複合体全体がホリデイジャンクション構造を有することになり、このホリデイジャンクションは、Mg
2+の存在下で特定の3D構造を拡張し、それ故、SとハイブリダイズするためにAと競合するタンパク質結合B鎖に対してより大きな立体障害をおそらくもたらすことになるという仮説が立てられる(
図20)。ある実施形態において、前記1つ以上のヘアピンは、1〜20ヌクレオチド、例えば、3〜20ヌクレオチド、例えば5〜20ヌクレオチド、例えば10〜20ヌクレオチド、例えば3〜15ヌクレオチド、例えば3〜10ヌクレオチド、または例えば5〜15ヌクレオチドの長さを有する。
【0067】
結合部分
本発明による結合部分(単数または複数)は、ワトソン・クリック塩基対合を形成しない分析物の前記アッセイによる検出を可能にする。同様に、DNA結合タンパク質などのDNAまたはRNAに結合しない分析物の検出を可能にする。
【0068】
前記1つ以上の結合部分は、原則的に、前記3つのオリゴヌクレオチドのいずれに位置してもよい。ある実施形態において、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)は、第一のオリゴヌクレオチド(1)上に位置する。もう1つの実施形態において、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)は、第二のオリゴヌクレオチド(3)上に位置する。第三の実施形態において、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)は、第三のオリゴヌクレオチド(5)上に位置する。ある実施形態において、前記結合検出システムは、1〜5、例えば1〜4、例えば1〜3、例えば1〜2、例えば1、例えば2〜5、または例えば3〜5の結合部分を含む。
【0069】
前記1つ以上の結合部分は、異なる位置にあってもよい。ある実施形態において、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)は、第一のオリゴヌクレオチド(1)、第二のオリゴヌクレオチド(3)または第三のオリゴヌクレオチド(5)中の分岐点移動領域(7)の一部に共有結合で連結されている。
【0070】
検出すべき具体的な分析物に依存して、異なるタイプの結合部分を利用してもよい。したがって、ある実施形態において、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)は、有機分子、抗体、抗原、アプタマー、ビオチンおよびハプテンから成る群より選択される。もう1つの実施形態において、前記抗原は、タンパク質抗原 ペプチド抗原または糖抗原である。一部の分析物は1つまたは少数のヌクレオチドと直接結合できることがあるので、場合によっては共有結合性接合を必要としない。これらの分析物としては、DNA結合タンパク質、一部のイオン(
図19b)または挿入分子、および小分子、例えばメラミン(
図19a)が挙げられる。ある実施形態において、前記結合部分は、共有結合で連結されている第一の部分が、その第一の部分に共有結合または非共有結合することができる第二の結合部分のためのハンドルとして機能するという意味で、サンドイッチ構造を有することもある。したがって、第二の結合部分は、二重機能I)第一の部分への結合およびII)分析物のための結合部位を有することがある。例えば、前記オリゴヌクレオチドの1つ以上についての部分を形成し、かつ分析物に結合することができるアプタマーの場合、共有結合で連結されている別の結合部分を必要としないこともある。
【0071】
小有機分子は、好ましい結合部分である。ある実施形態において、前記有機分子は、150〜1500Da(ダルトン)、例えば150〜1200Da、例えば150〜1000Da、例えば150〜800Da、例えば150〜600Da、例えば150〜400Da、例えば150〜300Da、例えば300〜1500Da、例えば400〜1500Da、例えば600〜1500Da、例えば800〜1500Da、例えば1000〜1500Da、または例えば1200〜1500Daの範囲内の分子量を有する。小有機分子もまた本発明のための好ましい分析物である。より具体的な実施形態において、共有結合で連結されている少なくとも1つの結合部分(4)は、ビタミンD、葉酸塩、エンロフロキサシン、ジゴキシゲニンから成る群より選択される。本発明による小有機分子および/または共有結合で連結されている結合部分のさらなる例は、次のものである:
毒素:ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、ドウモイ酸(DA)、アフラトキシン(AFB1、AFG1、AFB2、AFG2、AFM1)、デオキシニバレノール、オクラトキシンA(OTA)。
【0072】
薬物:モルフィン−3−グルクロニド(M3G)、経口抗凝固薬ワルファリン、インスリン。
【0073】
農薬:アトラジン、シマジン、クロルピリホス、カルバリル、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)。
【0074】
他の環境分析物:2−ヒドロキシビフェニル(HBP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)。フェノール(ビスフェノールA、アトラジン、ポリ塩素化ビフェニル、3,7,8−TCDD)、メラミンおよび関連化合物。
【0075】
獣医薬/抗生物質:ペニシリンおよびセファロスポリン、クロラムフェニコールおよびクロラムフェニコールグルクロニド、フェニコール抗生物質残留物、テトラサイクリン、タイロシン、エリスロマイシン、スルホンアミド抗生物質。
【0076】
化学的汚染物質:甲殻類における4−ノニルフェノール、乳牛におけるインスリン様成長因子−1(IGF−1)。
【0077】
ビタミン:ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB8(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(コバラミン)。
【0078】
ホルモン:プロゲステロン、ヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモン(hCG)、17β−エストラジオール、R−フェトプロテイン(AFP)、テストステロン、19−ノルテストステロン、メチルテストステロン、ボルデノンおよびメチルボルデノン。
【0079】
火薬:2,4,6−トリニトロトルエン(TNT)、2,4,6−トリニトロフェノール(TNP)、1,3,5−トリニトロベンゼン(TNB)、トリアセトントリフェノキシド(TATP)、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)、四硝酸ペンタエリトリトール(PETN)、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)。
【0080】
上記化合物リストも本発明に従って検出される分析物であり得ると解されたい。
【0081】
抗体および他のタンパク質分析物:
診断用抗体:Mycoplasma hypopneumoniae抗体、ブタコレラウイルス(CSFV)抗体。
【0082】
ウイルス病原体に対する抗体:G型肝炎に対する抗体、ヒトB型肝炎ウイルス(hHBV)に対する抗体、単純ヘルペスウイルス1型および2型(HSV−1、HSV−2)に対する抗体、エプスタイン・バーウイルスに対する抗体(抗EBNA)、ヒト呼吸器多核体ウイルス(RSV)に対する抗体、抗アデノウイルス抗体。
【0083】
薬物誘発性抗体:インスリンまたは顆粒球(insulin orgranulocyte)マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)に対する抗体、他の組換えまたは非組換えタンパク質または抗体薬に対する抗体。
【0084】
タンパク質:カゼイン、免疫グロブリンG、葉酸結合タンパク質、ラクトフェリン、およびラクトペルオキシダーゼ。
【0085】
アレルゲンまたはアレルギーマーカー:ピーナッツアレルゲン、パスタ中のコンアルブミン/トロポミオシン、ゴマ種子タンパク質、トロポミオシン、免疫グロブリンE(IgE)抗体、ヒスタミン(a−イミダゾールエチルアミン。
【0086】
癌マーカー:前立腺特異的抗原(PSA)、PSA−ACT複合体(α1−抗キモトリプシン)、炭水化物抗原(CA 19−9)、タンパク質血管内皮成長因子(VEGF)、インターロイキン−8(IL−8)、癌胎児抗原(CEA)、フィブロネクチン。
【0087】
他のマーカー:トロポニン(cTn I)、グルコース6−リン酸イソメラーゼ(GPI)に対する抗体、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体、c−反応性タンパク質(CRP)、シスタチンC、B型肝炎表面抗原(HBsAg)。
【0088】
前記結合部分は、前記結合部分に結合したその結合パートナーを有することがある。本文脈において、用語「結合パートナー」は、結合部分に非共有結合する(bind non−covalenty)ことがある分子を指すと解されたい。したがって、ある実施形態において、結合パートナーは、結合部分に非共有結合している。「結合部分」−「結合パートナー」カップルの非限定的な例は、抗体−抗原、ストレプトアビジン−ビオチン、葉酸受容体−葉酸である。したがって、ある実施形態において、前記結合部分は、前記結合部分に結合しているその結合パートナーを有する。
【0089】
検出される分析物のタイプに一部依存して3つの戦略を本検出システムに適用してよい。これらの戦略を下で概説し、例えばタンパク質もしくは抗体の検出(戦略1)または小分子分析物の検出(戦略2および3)に関して例示する。
【0090】
戦略1:直接アッセイ
1つの実施形態(戦略1)では、タンパク質または抗体が分析することとなる分析物である(
図5、戦略1)。この戦略を用いて、結合部分へのタンパク質または抗体(分析物)の結合がハイブリダイゼーション平衡をシフトさせ、その後、それを検出することができる。この戦略を
図3〜5ならびに対応する実施例1および2においてさらに詳細に概説する。
【0091】
戦略2:阻害アッセイ
もう1つの実施形態(戦略2)では、小分子分析物(標的分子)を含む(または含むと推測される)試料を先ず、結合部分に対する結合パートナー(例えば、抗体などのタンパク質)と混合し、その後、その混合物をその検出システムの残りの部分に添加する(
図5、戦略2)。試料中に含まれている標的小分子(分析物)がある場合、それらがタンパク質(結合パートナー)の結合部位を占有することになり、それ故、オリゴヌクレオチドB上に連結された共有結合で連結されている同じ小分子との相互作用によりハイブリダイゼーション平衡に干渉するためのそのタンパク質の結合能力は殆どまたは全くなくなる。したがって、試料中の分析物の存在は、結果として、その検出システムのオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーション平衡を変化させることになる。これを阻害アッセイと呼ぶ。
図4eは、ビオチン検出のためのかかるアッセイの結果を示す。
【0092】
戦略3:競合アッセイ
さらのもう1つの実施形態(戦略3)では、結合パートナー(タンパク質)を先ずアッセイに添加し、戦略1と同じ平衡シフトを生じさせ、その後、分析物(標的分子)を含むと推測される未知試料を添加する。遊離分析物分子が存在する場合、それらは、オリゴヌクレオチドB上の結合パートナー(タンパク質)に結合する、共有結合で連結されている結合部分と置き換わって、タンパク質と結合し、かくしてハイブリダイゼーション平衡を変化させ得る(
図5、戦略3)。したがって、この戦略は競合アッセイである。阻害的戦略および競合的戦略両方において、元のアッセイと比較してシグナル変化が大きいほど、試料中に存在する標的分子は少ない。
【0093】
分析物
様々な種類の分析物が本発明によって検出され得る。前述のように、分析物は、DNAまたはRNAでない。同様に、分析物は、DNA相互作用性分析物、例えば、DNA結合タンパク質またはRNA結合タンパク質でなくてよい。ワトソン・クリック塩基対合を形成せず、DNAに結合する分析物の例は、DNA結合タンパク質、例えばヒストンである。ある実施形態において、分析物は、非DNAおよび非RNA結合分析物である。
【0094】
ある実施形態において、分析物は、タンパク質、ペプチド、有機分子、抗体、抗原、糖、脂質およびハプテンから成る群より選択される。もう1つの実施形態において、分析物は、タンパク質抗原、ペプチド抗原、または糖抗原である。さらにもう1つの実施形態において、分析物は、150〜1500Da、例えば150〜1200Da、例えば150〜1000Da、例えば150〜800Da、例えば150〜600Da、例えば150〜400Da、例えばは150〜300Da、例えば300〜1500Da、例えば400〜1500Da、例えば600〜1500Da、例えば800〜1500Da、例えば1000〜1500Da、または例えば1200〜1500Daの範囲内の分子量を有する有機分子である。特定の実施形態において、分析物は、ビタミン、毒素、アレルゲン、火薬、薬物、例えばコカイン、抗生物質、例えばエンロフロキサシン、農薬、ホルモン、化学的汚染物質、バイオマーカーから成る群より選択される。さらに、上で述べたものが本発明による分析物のより広範なリストである。
【0095】
シグナル伝達システム
本発明による検出システムは、分析物を検出するときにシグナルまたはシグナルの変化をもたらすシグナル伝達システムを含む。シグナル伝達システムは、そのシグナル伝達システムの異なる部分を含むオリゴヌクレオチドがハイブリダイズされるとシグナルが発生または触媒されるという原理に基づく。例えば実施例1において例証するように、オリゴヌクレオチド1(A)とオリゴヌクレオチド5(S)のハイブリダイゼーションは、シグナル伝達システムの2つの部分が近接されると増加されたシグナルを発生させるが、オリゴヌクレオチド3とオリゴヌクレオチド5のハイブリダイゼーションは、シグナルを発生さる結果にならない。したがって、ある実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)は、第一の基(2)を含み、前記第一の基は、シグナル伝達システムの第一の部分を形成し、および第三のオリゴヌクレオチド(5)は、第二の基(6)を含み、前記第二の基は、シグナル伝達システムの第二の部分を形成する。
【0096】
同様に、シグナル伝達システムを第一のオリゴヌクレオチドと第三のオリゴヌクレオチドに分けてもよい。したがって、ある実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)は、第一の基(2)を含み、前記第一の基は、シグナル伝達システムの第一の部分を形成し、および第三のオリゴヌクレオチド(5)は、第二の基(6)を含み、前記第二の基は、シグナル伝達システムの第二の部分を形成する。
【0097】
シグナル伝達システムは、どのオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズするかに依存して、異なるシグナルをもたらす第三の部分を含んでもよく、これは、各オリゴヌクレオチドが、その検出システムの一部を構成することを意味する。したがって、ある実施形態において、
− 第一のオリゴヌクレオチド(1)は、第一の基(2)を含み、前記第一の基は、シグナル伝達システムの第一の部分を形成し;
− 第二のオリゴヌクレオチド(3)は、第三の基(10)を含み、前記第三の基(10)は、そのシグナル伝達システムの第三の部分を形成し;および
− 第三のオリゴヌクレオチド(5)は、第二の基(6)を含み、前記第二の基は、シグナル伝達システムの第二の部分を形成する。
【0098】
この構成を
図4および対応する実施例において例証する。
【0099】
様々なタイプのシグナル伝達システムを利用してよい。したがって、ある実施形態において、第一の基(2)および第二の基(6)によって形成されるシグナル伝達システムは、クエンチャー−フルオロフォアシグナル伝達システム、フルオロフォア−クエンチャーシグナル伝達システム、FRETシグナル伝達システム、DNAペルオキシダーゼ触媒シグナル伝達システム、またはクエンチャーおよび一重項酸素増感剤である。シグナル伝達システムは、特にFRETまたはクエンチャーシステムの場合、蛍光ナノ粒子を利用することがある。実施例の節は、本発明に従って利用され得る構成の様々な例を提供する。さらにもう1つの実施形態において、
I.シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)は、クエンチャーであり、およびシグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)は、フルオロフォアである、または
II.シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)は、フルオロフォアであり、およびシグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)は、クエンチャーである、または
III.シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)は、FRETドナーであり、およびシグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)は、FRETアクセプターである、または
IV.シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)は、FRETアクセプターであり、およびシグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)は、FRETドナーである、または
V.シグナル伝達システムの第一の部分を形成する第一の基(2)は、DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムの前半部であり、およびシグナル伝達システムの第二の部分を形成する第二の基(6)は、DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムの後半部である。
【0100】
DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムを使用するとき、その検出システムは、さらなる成分を含むことがある。したがって、さらなる実施形態において、前記検出システムは、ヘミンおよび/またはABTS
2−および/またはH
2O
2および/またはルミノールを含む。比色法、例えば金ナノ粒子(AuNP)または量子ドット(QD)、を本発明によるアッセイに組み込むことも可能である。
【0101】
シグナル伝達システムの異なる部分が前記オリゴヌクレオチドの異なる位置に共有結合で連結されていてもてよい。したがって、ある実施形態において、シグナル伝達システムの第一の部分および/またはシグナル伝達システムの第二の部分および/またはシグナル伝達システムの第三の部分は、それがカップリングされるオリゴヌクレオチド上の分岐点移動領域(7、7’)の一部に共有結合で連結されている。
【0102】
もう1つの実施形態において、シグナル伝達システムの第一の部分および/またはシグナル伝達システムの第二の部分および/またはシグナル伝達システムの第三の部分は、それがカップリングされるオリゴヌクレオチド上のトーホールド領域(7、8)の一部に共有結合で連結されている。
【0103】
例えば、FRET対が近接するとシグナルが発生または増加されるようにFRET対を設計する方法は、当業者には公知である。同様に、フルオロフォア−クエンチャー対が近接するとシグナルが消失または弱化するようにフルオロフォア−クエンチャー対を設計する方法は、当業者には公知である。実施例3およびその対応する図に、DNAペルオキシダーゼアッセイが、DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムの一部を含むオリゴヌクレオチドの各々が近接されたときにシグナルの発生を触媒するように設計され得る方法を示す。DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムの1つの利点は、それが、極少量の分析物の検出を可能にし得る増幅反応を構成する点である。もう1つの利点は、オリゴヌクレオチドが、より少ない修飾しか必要としないのでより容易に合成される点である。すべての上の例では、シグナル伝達システムの各部分を含む2つのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに起因して異なる対が近接される。上で説明したように、前記アッセイは、平衡反応に基づき、それ故シグナルは、例えば前記共有結合で連結されている結合部分に対する結合パートナーの結合または解離に起因する、ハイブリダイゼーション平衡の変化によって強化されることもあり、または弱化されることもある。
【0104】
特殊な実施形態では、分析物が核酸分子、例えばDNAまたはRNAであってもよいが、但し、シグナル伝達システムがDNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムであることを条件とする。
【0105】
もう1つの特殊な実施形態において、分析物は、オリゴヌクレオチド(1)、(3)および/または(5)のいずれかの中の1、2または3個のチミン塩基と相互作用することができる、メラミンおよび構造的に関連がある化合物であってもよい。
【0106】
共有結合で連結されたオリゴヌクレオチド
場合によっては、検出システムがいくつかのオリゴヌクレオチドで構成されることは、ハイブリダイゼーション平衡に達するまでの時間を増加することがあるので、不利であることがある。本発明によるオリゴヌクレオチドは、互いに共有結合で連結されていてもよく、これは、その検出システムが、3つの個別のオリゴヌクレオチドで作られているのではなく、1つまたは2つの個別のオリゴヌクレオチドでもっぱら構成されていることを意味する。この原理を実施例12ならびに対応する
図17および18において例証する。したがって、ある実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド、第二のオリゴヌクレオチドおよび第三のオリゴヌクレオチドは、共有結合で連結されている。
【0107】
したがって、ある実施形態において、前記第一のオリゴヌクレオチド(1)は、第二のオリゴヌクレオチド(3)に共有結合で連結されている。もう1つの実施形態において、第三のオリゴヌクレオチド(5)は、第一のオリゴヌクレオチド(1)に共有結合で連結されている。さらなる実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)は、第三のオリゴヌクレオチド(5)に共有結合で連結されている。さらなる実施形態において、前記第一のオリゴヌクレオチド(1)は、第二のオリゴヌクレオチド(3)に共有結合で連結されており、および第二のオリゴヌクレオチド(3)は、第三のオリゴヌクレオチドに共有結合で連結されている。さらにもう1つの実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)の3’末端は、第二のオリゴヌクレオチド(3)の5’末端に共有結合で連結されている。さらなる実施形態において、第二のオリゴヌクレオチド(3)の3’末端は、第三のオリゴヌクレオチド(5)の5’末端に共有結合で連結されている。
【0108】
前記オリゴヌクレオチドの2つ以上が互いに共有結合で連結されているとき、その検出システムが本発明による第一、第二および第三のオリゴヌクレオチドをなお含むことは理解されるはずである。
【0109】
特殊な実施形態において、分析物は、核酸分子、例えばDNAまたはRNAであってもよいが、但し、前記オリゴヌクレオチドの2つ以上が上で説明したように共有結合で連結されていることを条件とする。
【0110】
さらにもう1つの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、リンカーによって共有結合で連結されている。追加の実施形態において、前記リンカーは、ホスホジエステル結合手、ヌクレオチド、例えば1〜20、例えば1〜10、1〜5、3〜10ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、C−リンカー、例えばC1−C20リンカー、PEGリンカー、ジスルフィドリンカー、およびスルフィドリンカーから成る群より選択される。当業者が他の適するリンカーを見つけてもよい。
【0111】
部品からなるキット
前記検出システムを部品からなるキットの形態で提供してもよい。したがって、本発明のある態様は、本発明による分析物検出システムを含む部品からなるキットに関する。
【0112】
もう1つの態様において、本発明は、本発明による第一のオリゴヌクレオチド1、第二のオリゴヌクレオチド3および第三のオリゴヌクレオチド5を含む部品からなるキットに関する。
【0113】
前記キットは、さらなる成分を含んでもよい。したがって、ある実施形態において、前記キットは、ヘミンおよび/またはABTS
2−および/またはH
2O
2をさらに含む。これらの成分は、DNAペルオキシダーゼアッセイを用いるときの前記キットのパーツであり得る。前に説明したように、前記結合部分に対する結合パートナーを前記キットに含めることが有利であることもある。したがって、さらなる実施形態において、前記キットは、前記結合部分に対する結合パートナーを含む。さらにもう1つの実施形態において、前記結合パートナーは、1つ以上の結合部分に非共有結合でカップリングされている。さらにもう1つの実施形態において、前記結合パートナーは、共有結合で連結されている結合部分を含むオリゴヌクレオチドとは別のそのキットの区画内にある。
【0114】
試料中の分析物の存在またはレベルの検出方法
本発明は、試料中の分析物の存在の検出方法も提供する。したがって、本発明のある態様は、試料中のDNAおよびRNAとは異なる分析物の存在またはレベル検出方法であって、
a)目的の分析物を含むまたは含むと推測される試料を提供するステップ;
b)本発明による分析物検出システムを提供するステップ;
c)前記試料を前記分析物検出システムとともにインキュベートするステップ;
d)分析物の検出レベルを基準レベルと比較するステップ;および
e)前記試料中の分析物の存在またはレベルを決定するステップ
を含む方法に関する。
【0115】
前記試料が、その試料を含むことが判っていることもあり、または分析物がその試料中に存在するかどうか判らないこともあることは理解されるはずである。第一の事例では定量が目的であることがあるのに対して、第二の事例については存在を検出するだけで十分であることがある。
【0116】
さらにもう1つの実施形態において、DNAおよびRNAとは異なる分析物は、核酸分子ではない。
【0117】
好ましくは、ハイブリダイゼーション平衡に達するまでインキュベーションステップを継続する。したがって、ある実施形態では、平衡に達するまでインキュベーションステップC)を継続する。しかし、そのアッセイを実時間でモニターしてもよい。ハイブリダイゼーション平衡は、結合部分への分析物の結合によって変化し得る。したがって、ある実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)と第三のオリゴヌクレオチド(5)間および第二のオリゴヌクレオチド(3)と第三のオリゴヌクレオチド(5)間のハイブリダイゼーション平衡は、結合部分への分析物の結合によってシフトされる。
【0118】
結合部分に対する結合パートナーがアッセイに含まれる場合、そのハイブリダイゼーション平衡は、異なる様式で変化される。したがって、もう1つの実施形態において、第一のオリゴヌクレオチド(1)と第三のオリゴヌクレオチド(5)間および第二のオリゴヌクレオチド(3)と第三のオリゴヌクレオチド(5)間のハイブリダイゼーション平衡は、結合部分(4)に対する結合パートナーの前記結合部分からの解離によってシフトされる。
【0119】
結合部分に対する結合パートナーを様々な時点でアッセイに含めてよい。さらにもう1つの実施形態では、試料をその検出システムのオリゴヌクレオチドとともにインキュベートする前に、結合部分に対する結合パートナーをその試料とともにインキュベートする。もう1つの実施形態では、試料をその検出システムのオリゴヌクレオチドとともにインキュベートした後、結合部分に対する結合パートナーをその試料とともにインキュベートする。さらにもう1つの実施形態では、結合部分に対する結合パートナーを、試料とのインキュベーション前に、その検出システムのオリゴヌクレオチドとともにインキュベートする。結合親和性に依存して、上記溶液の各々が最適なものであり得る。さらなる詳細については、
図13も参照されたい。
【0120】
さらなる実施形態において、結合部分からの結合パートナーの解離は、その結合パートナーへの分析物の結合によって生ずる。
【0121】
インキュベーション時間は、用いられる試料のタイプ、分析物および正確なオリゴヌクレオチドに依存して、アッセイごとに異なってよい。したがって、ある実施形態において、インキュベーションステップc)は、1分〜24時間、例えば1分〜12時間、例えば1分6時間、例えば1分〜2時間、例えば1〜60分、例えば1〜30分、例えば1〜15分、例えば1〜5分、例えば5〜60分、例えば10〜60分、例えば15〜60分、例えば30〜60分、例えば1〜6時間、例えば2〜6時間または例えば4〜6時間の期間、行われる。
【0122】
本アッセイの利点は、アッセイ中に温度を変える必要がないことがある点である。したがって、さらなる実施形態では、前記方法を等温条件下で行う。これは、加熱室または加熱板のみを使用してアッセイを行うことを意味する。同様に、室温の作業場でアッセイを行ってもよい。その場合、その後、必要な装置を使用してアッセイを分析することができる。DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムを使用する場合、目視検査によって結果を決定してもよい。さらにもう1つの実施形態では、前記方法を4〜50℃、例えば10〜50℃、例えば20〜50℃、例えば25〜50℃、例えば30〜50℃、例えば35〜50℃、例えば40〜50℃、例えば4〜40℃、例えば4〜35℃、例えば4〜30℃、例えば4〜25℃、または例えば4〜20℃の範囲内の温度で行う。さらにもう1つの実施形態では、等温条件下でアッセイを行う。
【0123】
試料
試料は、様々な起源からのものであってよい。ある実施形態において、試料は、環境から得られる試料、例えば水試料である。もう1つの実施形態において、試料は、生物学的試料である。さらなる実施形態において、試料は、食品試料、またはプラスチックである。プラスチックを、毒性であり得る軟化剤の存在について試験してもよい。
【0124】
さらにもう1つの実施形態では、生物学的試料を哺乳動物、例えばヒトから得た。さらなる実施形態において、生物学的試料は、血液試料、例えば血清もしくは血漿、尿試料、糞便試料、生検試料、または唾液試料である。アッセイに最適な条件をもたらすために、試料を本発明によるアッセイで用いる前に精製または実質的に精製してもよい。したがって、さらにもう1つの実施形態において、試料は、精製された試料である。試料を精製することの利点は、反応条件をより容易に制御できる点である。
【0125】
前記アッセイを様々な方法によって読み取ってよい。したがって、ある実施形態では、分析物の存在またはレベルを目視検査、光学密度、分光法、吸光分光法、蛍光分光法、電気化学、QCM、SPR、または顕微鏡法によって判定する。
【0126】
レベルまたは存在を決定することができるように、試料を基準レベルと比較することを必要とすることがある。したがって、さらにもう1つの実施形態において、基準レベルは、所定の値、標準曲線、または陰性対照である。基準レベルを様々な基準に基づいて、例えば、ROC曲線の使用によって設定してもよく、前記ROC曲線は、例えば診断試験において使用されることが多い。
【0127】
診断試験の精度を受信者動作特性曲線(「ROC曲線」)によって特性評価してもよい。ROCは、診断試験の様々な可能なカットオフポイントについての偽陽性率に対する真陽性率のプロットである。ROC曲線は、感度と特異度の間の関係を示す。すなわち、感度の増加は、特異性の減少を伴うことになる。曲線が左軸の近くそしてまたROC空間の上端の近くをたどるほど、試験の精度は高い。逆に、曲線がROCグラフの45度対角線に近くなるほど、試験の精度は低い。ROC下面積は、試験精度の尺度である。試験の精度は、その試験が、どれ程よく被験群を問題の疾患への罹患者と非罹患者に分けるかに依存する。1の曲線下面積(「AUC」と呼ばれる)は、完璧な試験を表し、その一方で0.5の面積は、あまり有用でない試験を表す。したがって、本発明のバイオマーカーおよび診断法は、0.50より大きいAUCを有し、より好ましい試験は、0.60より大きいAUCを有し、さらにいっそう好ましい試験は、0.70より大きいAUCを有する。
【0128】
試験の有用性の他の有用な尺度は、陽性的中率および陰性的中率である。陽性的中率は、実際に陽性である試験陽性者の百分率である。陰性的中率は、実際に陰性である試験陰性者の百分率である。したがって、当業者は、特定の必要基準に基づいて基準レベルを決定することができることになる。
【0129】
本発明の態様の1つについての文脈の中で説明した実施形態および特徴が、本発明の他の態様にもあてはまることに留意されたい。図面への参照により本発明を例示するために参照番号を本明細書およびクレームにおいて用いる場合、これらが単に説明のためのものであり、本発明を限定と解釈すべきでないことにも留意されたい。
【0130】
本出願において引用するすべての特許および非特許文献は、それら全体が参照により本明細書に援用されている。
【0131】
ここで、以下の非限定的実施例で本発明をさらに詳細に説明することにする。
【実施例】
【0132】
(実施例1)
タンパク質:ストレプトアビジン(STV)の検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをAlexaフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用し、その一方でBは、内部ビオチン修飾を有する。それらの配列を下に与える(下線付けは、トーホールド領域を示す):
【0133】
【表1】
【0134】
すべてのオリゴヌクレオチドは、デンマークのDNA Technology A/Sから購入した。その会社が合成直後にRP−HPLC精製を行った。
【0135】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0136】
ストレプトアビジンを含めて、すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0137】
図3は、オリゴヌクレオチドが互いにどのようにハイブリダイズし得るのかを示す。
【0138】
方法
フルオロフォア接合
標識手順は、Invitrogenによって与えられたプロトコルを参照するが、少し変更を加える。より具体的には、アミン修飾DNA(16μL、100μM)をリン酸緩衝液(10μL、0.4M、pH8.5)と混合し、その後、DMSOに溶解した活性化色素−エステル(100μg、約80nmol)を添加した。この混合物において、DNAの最終濃度は約40μMであり、エステルとアミンのモル比は50:1であった。28℃で一晩のインキュベーション後、その混合物をエタノール沈殿、続いてAgilent 1200シリーズでの逆相HPLC精製(15分にわたって0.1M TEAA中5〜40%MeCN)によって処理した。260nmでの吸収最大値がある対応するピーク内の試料を回収し、凍結乾燥させ、200μL H
2Oに再溶解した。使用前にNanoDrop 1000分光光度計によって到達濃度を決定した。
【0139】
STV検出のためのアッセイおよびその機能の構築
典型的なアッセイでは、1:1:1の正確な化学量論比を有する鎖A、BおよびSを、1×[TAE−Mg
2+]緩衝液(40mM Tris−HAc(pH8)、1mM EDTA、12.5mM Mg(Ac)
2)に混ぜ入れ、加えて標的タンパク質としてのSTVも混ぜ入れた。典型的最終濃度は、各DNA成分について20nM、およびSTVについて250nMであった。実際のセンシングには必要でないが、一価結合を確実なものにするために過剰なSTVを使用した。反応速度データは、システムがほぼ平衡に達するために3時間で十分であることを示した(データを示さない)が、便宜上、その混合物を測定前に一晩、室温(RT)でインキュベートした。
【0140】
分光蛍光計によるFRET測定
70μLのアッセイ混合物を石英キュベットにピペットで移し、異なる試料間で2回、1×[TAE−Mg
2+]によって洗浄した。走査型分光蛍光計(Fluoro−Max−3、HORIBA Jobin Yvon Inc.)で蛍光測定を行った。Alexa555については530nmで励起が果たされた。FRET効率をE=I
A/(I
A+I
D)として算出した。この式中、I
Aは、アクセプターピーク蛍光強度(Alexa647については667nm)であり、およびI
Dは、ドナーピーク蛍光強度(Alexa555については566nm)である。
【0141】
ゲル実験およびTyphoonスキャン
バルクFRET測定に使用した15μLの各試料を、3μLの6×ゲル負荷色素(NEB)と混合した後、6%非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ゲル(アクリルアミド/ビスアクリルアミド;19:1)のウェルに負荷し、冷蔵庫の中で溶離した(70V、1.5時間)。ゲル自体および泳動用緩衝液の両方を作るために1×TBE−Mg
2+([Mg
2+]=12.5mM)を使用した。
【0142】
電気泳動後、染色なしで、蛍光モードでTyphoon 9400(Amersham Biosciences)を使用してゲルをスキャンした。赤色レーザー(633nm)と670nmバンドパスフィルター(655nmと685nmの間の光を透過させ、670nmに中心を置く透過ピークを有する)を、それぞれ、Alexa647色素の励起および発光のための組み合わせとして選んだ。8.3×7.3cmミニゲルについての典型的スキャン時間は、200μmの画素サイズを使用したとき3分であった。その後、そのゲルをImageQuant TL 7.0(GE Healthcare)によって分析した。レーン作成およびバンド検出は、手作業で行った。
【0143】
結果
STVがなければ、3本のDNA鎖間のハイブリダイゼーション事象は平衡に達することになり、その場合、BはSと結合するための4ntトーホールドを有するが、Aは3ntトーホールドしか有さないので、AS二重鎖より長いBS二重鎖が存在するはずである。ビオチン−STV相互作用によってBと結合することができるSTVがあると、STVの嵩高さが高感度の分岐点移動プロセスを妨げるので元の平衡はシフトされることになり、前記分岐点移動プロセスによってしかBはAと置き換わってSとハイブリダイズすることができないため、その試料にはより短いBS二重鎖とより長いAS二重鎖が存在するはずである。
【0144】
FRET(フォルスター共鳴エネルギー移動)対を形成する2つのフルオロフォアを、溶液中のAS二重鎖の分布数を表すFRETシグナルを発するように、それぞれAおよびS上に付ける(
図3も参照されたい)。正規化FRET効率のほぼ倍増がSTV添加後に明示された(
図4a)。それらの多岐にわたる代表生蛍光データも示す(
図4b)。加えて、滴定曲線を作成した。それを
図4cに示す。この図は、定量検出の可能性およびサブナノモルの感度を示す。溶液中の各成分をそれぞれ観察することができる非変性PAGEゲルからさらなる証拠が得られる(
図4d)。選択励起および発光波長が、ここではバンド強度のみがAの量を表わすことが保証することは、注目に値する。結果は、STVの存在下ではずっと短い一本鎖A(ssA)が残され、同時により長いAS二重鎖が形成されるという予想に完全に従う(
図4d、1ビオチン)。
【0145】
この実施例では、2つのビオチンを1本のB鎖上にも付けた。これは、STVが四価結合能力を有し、そのためビオチン標識されたBが2部位相互作用によって巻き上がり、STVに巻き付くことになるという事実(
図4d挿入図)を利用する。かくしてトーホールドは全く機能することができず、したがって、よりいっそう短いBSおよび長いASが予想される。実際、STV添加後の変化は、1ビオチンシステムより印象的である(
図4c、2ビオチン)。
【0146】
補足説明
上の結果に加えて、以下の観測を行った(データは示さない):
1.フルオロフォア−クエンチャー対をFRETの代わりに代替レポーターシステムとして試した。これも安定な結果をもたらした。
【0147】
2.2つの陰性対照を試験した:ビオチンを有さないシステムに添加したSTV、ビオチン標識されたシステムに添加した他のタンパク質(トロンビンまたは他の抗体)。いずれも有意なFRET変化を呈示しない。
【0148】
3.このセンシングアッセイの感度は、FRET値の測定に使用される計器の感度に依存する。これまでに行った研究では、標的タンパク質として1nMほどもの低さのSTVを、最終濃度として1nM DNAを有するアッセイを使用することにより首尾よく検出した。
【0149】
結論
本発明者らは、ビオチン−STV相互作用をモデルシステムとしてうまく利用して、3本のDNA鎖の平衡に基づくアッセイには特異的標的タンパク質はもちろん小分子も検出する大きな可能性があることを証明した。バルクFRETデータとTyhpoonスキャンゲル実験の両方で本発明者らの設計の有効性を確認し、STV添加後、シグナルを倍増(または設計しだいで半減)させることができる。
【0150】
(実施例2)
小分子:ビオチンの検出
実施例1において説明したシステムにおいて阻害戦略(
図5;戦略2)を適用することにより、ビオチンを検出することができる。この実験では、検出される標的としてのビオチンを先ず所定量のSTVと混合し、その後、その混合物全体を標準アッセイに添加する。遊離ビオチンの存在下では、STV上のすべての活性結合部位が占有されることになり、それ故、それは、DNA平衡に効果を及ぼすことができない。このシグナルオフ検出法を、14nMのDNA、20nMのSTV、および一連の濃度のビオチンを使用することによって試験した。滴定曲線を
図4eに示す。ビオチンとSTV間のモル比は、STVの四価特性と一致する。
【0151】
方法
ストレプトアビジン添加前の実施例1におけるアッセイと同一のアッセイ構成を、14nM DNAを使用して用いた。様々な濃度のビオチンを先ずストレプトアビジン(20nM)と予混した。室温で3時間のインキュベーション後、その混合物を正規のアッセイに添加し、室温で一晩、暗所でインキュベートした。
【0152】
結果
標的分子としてのビオチンの不在下、STVは、平衡に対して前と同じ効果を示す。試料がビオチンを含有する場合、これらの遊離ビオチンがSTVの結合部位を塞ぐことになり、その結果、STVはこのアッセイで機能できなくなる。このシグナルオフ検出法は、ビオチンの検出のための滑らかな校正曲線をもたらした。結果は、四価のSTVを表す(
図4e)。
【0153】
(実施例3)
ビオチン検出アッセイの特異性
対照システムは、2つのFRET対を有するが、標識された結合部分を一切有さない、3本のDNA鎖から成り得る。このシステムへの標的ストレプトアビジン、IgG、トロンビンまたはATPのいずれの添加も、検出可能なシグナル変化をもたらすことにならず(
図6a)、これは、平衡をシフトさせる結合事象である設計の有効性を確認するばかりでなく、このシステムの良好な特異性の証拠としても役立つ。
【0154】
実施例1において説明したビオチンシステムに様々な標的を添加することにより特異性も試験し、それらのいずれも非特異的検出可能効果を示さなかった(
図6b)。リガンドを有さない対照システムにSTVを添加することによってもこのアッセイの有効性を確認し、FRETシグナル変化は観察されなかった。
【0155】
(実施例4)
緩衝液中の抗ジゴキシゲニン(aD)検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをAlexaフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用し、その一方でBは、内部ジゴキシゲニン修飾を有する。それらの配列を下に与える(下線付けは、トーホールド領域を示す):
【0156】
【表2】
【0157】
A、BおよびSについてのオリゴヌクレオチドすべてを、BioautomationからのMerMade−12オリゴヌクレオチド合成装置を用いて社内で合成した。合成後、DNA鎖をTOPカートリッジ精製し、エタノール沈殿した。
【0158】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0159】
5−アミノアリル−dUホスホロアミダイトは、Berry & Associatesから購入した。
【0160】
抗ジゴキシゲニンは、Rocheから購入した。
【0161】
すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0162】
図8Aは、オリゴヌクレオチドが互いにどのようにハイブリダイズし得るのかを示す。
【0163】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0164】
ジゴキシゲニン接合
アミン修飾DNA(100μL、50μM)をDMF(100μL、150nmol)中の活性化ジゴキシゲニンエステル(DIG−NHS)に添加し、その後、トリエチルアミン(2μL)をこれに添加した。この混合物において、DNAの最終濃度は25μMであり、エステルとアミンのモル比は30:1である。25℃で1時間のインキュベーション後、その混合物をエタノール沈殿、続いてAgilent 1200シリーズでの逆相HPLC精製(15分にわたって0.1M TEAA中5〜40%MeCN)によって処理した。260nmでの吸収最大値がある対応するピークを有する試料を回収し、凍結乾燥させ、200μL H
2Oに再溶解した。使用前にNanoDrop 1000分光光度計によって到達濃度を決定した。
【0165】
aD検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例1と同じだが、標的タンパク質としてSTVの代わりにaDを用い、2倍過剰の抗ジゴキシゲニン(20nMの各DNA成分、および40nMのaD)を用いた。
【0166】
分光蛍光計によるFRET測定
試料調製およびFRET測定は、実施例1と同じである。
【0167】
ゲル実験およびTyphoonスキャン
実施例1と同じ。
【0168】
結果
得られた結果を
図7に示す。aDの存在下でASの30%分布数増加を表すFRET値が観察される。様々なaD濃度での滴定を
図8Dに示す。電気泳動によるaDの補足的検出法を
図8Eに示す。
【0169】
(実施例5)
ヒト血漿中の抗ジゴキシゲニン(aD)の検出。
【0170】
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをAlexaフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用し、その一方でBは、内部ジゴキシゲニン(DIG)修飾を有する。それらの配列を下に与える(下線付けは、トーホールド領域を示す):
【0171】
【表3】
【0172】
A、BおよびSについてのオリゴヌクレオチドすべてを、BioautomationからのMerMade−12オリゴヌクレオチド合成装置を用いて社内で合成した。合成後、DNA鎖をTOPカートリッジ精製し、エタノール沈殿した。
【0173】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0174】
5−アミノアリル−dUホスホロアミダイトは、Berry & Associatesから購入した。
【0175】
抗ジゴキシゲニンは、Rocheから購入した。
【0176】
ヒト全血は、デンマーク、スカイビュー(Skejby)にあるオーフス大学病院(Aarhus University Hospital)の血液バンクによって寄付された。
【0177】
すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0178】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0179】
ジゴキシゲニン接合
実施例4と同じ。
【0180】
ヒト血漿調製
ヒト全血は、ドナーから採血され次第、前記病院によってEDTA緩衝剤で処理され、その採血から30分以内にその全血試料から血漿が分離された。これは、3000gで15分間の20℃での遠心分離によって行われた。血漿を構成する最上層がピペットで注意深く取り出され、直ちにより小さいアリコートで冷凍された。
【0181】
aD検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例5と同じ。しかし、一晩のインキュベーションの前に、目的の抗体(aD)と予混された15% v/v 純粋血漿に試料を添加した。
【0182】
分光蛍光計によるFRET測定
試料調製およびFRET測定は、実施例4と同じである。しかし、ヒト血漿を含有するスペクトルを、TAE−Mg緩衝液中のヒト血漿のみを含有する試料(60μL 1×[TAE−Mg
2+]中の10μL 血漿)をリファレンスとして使用するリファレンスサブトラクションに付した。
【0183】
結果
3回の独立した実験からの得た結果を
図9に示す。観察することができるように、緩衝液へのaDの添加前のAS百分率と血漿へのaDの添加前のAS百分率は、同一である(B中の試料1および2)。2当量のaDを添加すると、Fret増加は、緩衝液中(試料3)と比較して血漿中(試料5)でのほうがほんの少しずつ低い。緩衝液中(試料4)および血漿中(試料6)での戦略3によるジゴキシゲニン(DIG)の検出についての結果も含める;これは、実施例8においてさらに詳細に説明することにする。
【0184】
(実施例6)
ヒト唾液中での抗ジゴキシゲニン(aD)の検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをAlexaフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用し、その一方でBは、内部ジゴキシゲニン(DIG)修飾を有する。それらの配列を下に与える(下線付けは、トーホールド領域を示す):
【0185】
【表4】
【0186】
A、BおよびSについてのオリゴヌクレオチドすべてを、BioautomationからのMerMade−12オリゴヌクレオチド合成装置を用いて社内で合成した。合成後、DNA鎖をTOPカートリッジ精製し、エタノール沈殿した。
【0187】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0188】
5−アミノアリル−dUホスホロアミダイトは、Berry & Associatesから購入した。
【0189】
抗ジゴキシゲニンは、Rocheから購入した。
【0190】
ヒト唾液は、1時間絶食していたヒトドナーから採集した。
【0191】
すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0192】
図10は、オリゴヌクレオチドが互いにどのようにハイブリダイズし得るのかを示す。
【0193】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0194】
ジゴキシゲニン接合
実施例4と同じ。
【0195】
ヒト唾液調製
1時間絶食していた男性ヒトから1時間にわたってファルコンチューブに唾液を採集した。その唾液を1分間、徹底的にボルテックスし、その後、4℃、10,000gで10分間、遠心分離した。液体を固体から分離し、唾液を100k Amicon Ultra−0.5mL遠心濾過器によって濾過した。
【0196】
aD検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例5と同じ。しかし、一晩のインキュベーションの前に、目的の抗体(aD)と予混された15% v/v 濾過唾液に試料を添加した。
【0197】
分光蛍光計によるFRET測定
試料調製およびFRET測定は、実施例7と同じである。しかし、ヒト血漿を含有するスペクトルを、TAE−Mg緩衝液中の濾過唾液のみを含有する試料(60μL 1×[TAE−Mg
2+]中の10μL 血漿)をリファレンスとして使用するリファレンスサブトラクションに付した。
【0198】
結果
結果は、実施例7に匹敵し、FRET値は、ヒト唾液中、aDの存在下でASの28%分布数増加を表す。結果を
図10にも示す。
【0199】
(実施例7)
DNAに対する複数のDIG修飾を用いるaDの検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをAlexaフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用し、その一方でBは、4つの内部ジゴキシゲニン修飾(しかし4つの内部ジゴキシゲニン修飾に限定されない)を有する。それらの配列を下に与える(下線付けは、トーホールド領域を示す):
【0200】
【表5】
【0201】
A、BおよびSについてのオリゴヌクレオチドすべてを、BioautomationからのMerMade−12オリゴヌクレオチド合成装置を用いて社内で合成した。合成後、DNA鎖をTOPカートリッジ精製し、エタノール沈殿した。
【0202】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0203】
5−アミノアリル−dUホスホロアミダイトは、Berry & Associatesから購入した。
【0204】
抗ジゴキシゲニンは、Rocheから購入した。
【0205】
すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0206】
図11は、オリゴヌクレオチドが互いにどのようにハイブリダイズし得るのかを示す。
【0207】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0208】
ジゴキシゲニン接合
実施例4と同じ。
【0209】
aD検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例1と同じだが、標的タンパク質としてSTVの代わりにaDを用い、および8倍過剰の抗ジゴキシゲニン(20nMの各DNA成分、および160nMのaD)を用いる。
【0210】
分光蛍光計によるFRET測定
試料調製およびFRET測定は、実施例1と同じである。
【0211】
ゲル実験およびTyphoonスキャン
実施例1と同じ。
【0212】
結果
結果は、実施例4に匹敵し、FRET値は、aDの存在下でASの33%分布数増加を表す。
【0213】
(実施例8)
戦略2および3によるジゴキシゲニン(DIG)の検出。
【0214】
図12は、オリゴヌクレオチドが互いにどのようにハイブリダイズし得るのかを示す。
【0215】
材料
Sigma−Aldrichからのジゴキシゲニンを加えて、実施例4、5および6のとおり。
【0216】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0217】
ジゴキシゲニン接合
実施例4と同じ。
【0218】
DIG検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例4、5および6と同じだが、競合アッセイのために遊離DIGを様々な濃度で試料にさらに添加する。
【0219】
分光蛍光計によるFRET測定
試料調製およびFRET測定は、実施例7、9および10と同じであるが、ヒト血漿および唾液を添加して、またはせずに、それぞれのシグナル調整を行う。
【0220】
結果
結果は、実施例4、5および6に匹敵し、FRET値は、DIGが存在しない正規30%増加と比較して、320nM DIGの存在下でASのほんの0.5%の分布数増加、および40nM DIGの存在下で11%AS分布数増加を表す。40nM DIGを含有するヒト血漿および唾液の場合、AS分布数増加は、DIGなしでの26%および28%増加と比較して、それぞれ5%および2%である。結果を
図12にも示す。
【0221】
(実施例9)
ビタミンD結合タンパク質(DBP)およびビタミンD(VD)の検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをAlexaフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用し、その一方でBは、内部ビタミンD修飾を有する。それらの配列を下に与える(下線付けは、トーホールド領域を示す):
【0222】
【表6】
【0223】
A、BおよびSについてのオリゴヌクレオチドすべてを、BioautomationからのMerMade−12オリゴヌクレオチド合成装置を用いて社内で合成した。合成後、DNA鎖をTOPカートリッジ精製し、エタノール沈殿した。
【0224】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0225】
5−アミノアリル−dUホスホロアミダイトは、Berry & Associatesから購入した。
【0226】
活性化ビタミンDエステルは、社内でコレカルシフェロールから2段階で合成した。
【0227】
すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0228】
図14は、オリゴヌクレオチドが互いにどのようにハイブリダイズし得るのかを示す。
【0229】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0230】
ビタミンD接合
実施例4におけるDIG−NHSと同じだが、DIG−NHSの代わりに活性化ビタミンDエステルを用いる。
【0231】
DBP検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例4と同じだが、標的タンパク質としてaDの代わりにDBPを用いる。
【0232】
分光蛍光計によるFRET測定
試料調製およびFRET測定は、実施例1と同じである。
【0233】
ゲル実験およびTyphoonスキャン
実施例1と同じ。
【0234】
結果
結果は、実施例1に匹敵するが、FRET値は、DBPの存在下でASの20%分布数増加を表す。結果を
図14にも示す。
【0235】
さらに、阻害的戦略および競合的戦略両方をビタミンDの検出に用いた。様々な濃度のビタミンDを、DBPタンパク質の添加前(阻害的戦略2)または後(競合的戦略3)に、アッセイ混合物に添加した。
図14中の校正曲線から明白であるように、両方の方法がビタミンDの検出に成功した。
【0236】
(実施例10)
アプタマーシステムの例としてのATP検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実験では使用する。AおよびSは、内部アミン修飾を伴い、これをフルオロフォア標識のためのハンドルとして使用する。Bは、3’末端にATPアプタマーの配列を含むが、追加の修飾を一切有さない。それらの配列を下に与える(イタリック体は、トーホールド領域を示し;下線付けは、アプタマー領域を示す):
【0237】
【表7】
【0238】
すべてのオリゴヌクレオチドをデンマークのDNA Technology A/Sから購入した。その会社が合成直後にRP−HPLC精製を行った。
【0239】
Alexa Fluor(登録商標)647スクシンイミジルエステルおよびAlexa Fluor(登録商標)555スクシンイミジルエステルは、Invitrogenから購入した。
【0240】
すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0241】
方法
フルオロフォア接合
実施例1と同じ。
【0242】
aF検出のためのアッセイおよびその機能の構築
実施例1と同じだが、STVの代わりに様々な濃度のATP分子を用いた。
【0243】
分光蛍光計によるFRET測定
実施例1と同じ。
【0244】
結果
この実施例の設計は、DNA二重鎖とアプタマー−標的複合体との間の標的誘発性スイッチングを典型的に被る、いわゆる構造スイッチングアプタマーにヒントを得ている。ここでは、アプタマーの一部(8nt)がB上のトーホールドとして役立ち、このトーホールドは、Aのほうが短いトーホルド(4nt)を有するので、S上のトーホールドとハイブリダイズすることができ、その結果、溶液中で二重鎖が優位を占めることになる。標的(ATP)が存在する場合、アプタマー−標的結合は、二重鎖中の水素結合との競争に勝つほど強く、したがってB上に機能性トーホールドは残らない。それ故、AS二重鎖が大部分を占めることになる。このスキームを
図15aに示す。
【0245】
滴定曲線をマイクロモルスケールで作成した(
図15b)。AS二重鎖についてのFRETの60%までの増加を1mM ATPの存在下で観察することができる。ここで使用した各DNA成分の濃度は、20nMであった。
【0246】
結論
この実施例において、本発明者らは、トーホールド交換反応システムと構造スイッチングアプタマー設計を併用して、アプタマー−標的結合により標的の検出を果たした。増幅せずとも、既にFRETシグナル変化は観察できるほど有意になっており、定量さえ可能である。このアプタマーシステムが、5’末端または3’末端いずれかに位置するアプタマー領域を用いて機能し得ることに注目される。
【0247】
(実施例11)
DNAペルオキシダーゼシグナル伝達システムを使用するストレプトアビジン(STV)検出
材料
A、BおよびSとそれぞれ名付けた3本のDNA鎖をこの実施例において使用し、それらのうちのBのみが修飾を有する。それらの配列を下に与える(イタリック体は、トーホールド領域を示し;下線付けは、DNAペルオキシダーゼのGリッチ領域を示す):
【0248】
【表8】
【0249】
すべてのオリゴヌクレオチドは、デンマークのDNA Technology A/Sから購入した。その会社が合成直後にRP−HPLC精製を行った。
【0250】
すべての試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0251】
方法
STV検出のためのアッセイおよびその機能の構築
典型的なアッセイでは、1:1:1の正確な化学量論比を有する鎖A、BおよびSを、1×[TAE−Mg
2+]緩衝液(40mM Tris−HAc(pH7)、1mM EDTA、12.5mM Mg(Ac)
2)に混ぜ入れ、加えて標的タンパク質としてのSTVも混ぜ入れた。その混合物を室温(RT)で3時間インキュベートし、その後、それにヘミン(フェリプロトポルフィリンIXクロリド)、ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))およびH
2O
2(過酸化水素)を添加した。典型的最終濃度は、ビオチン標識DNAについて200nM、STVについて400nM、ヘミンについては2μM、ならびにABTSおよびH
2O
2については2mMであった。
【0252】
Nanodropによる吸光度測定
室温での半時間のインキュベーション後、1.5μLの各アッセイ混合物をNanodrop 1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc.)の受け台にピペットで移し、紫外・可視モードで測定した。420nmでの吸光度を記録した。
【0253】
結果
この実施例において、本発明者らは、AとS間のハイブリダイゼーションによってそれらが一緒にされるとその触媒能力を回復することができる分割型DNAザイムのAとS両方の末端への組み込みの例を与える。2ビオチンシステムのスキームを
図16に示す。
【0254】
STVがなければ、Bのほうが長いトーホールドを有するので、SはBと結合する傾向がある。別々のグアニン四重鎖部分のため、低いペルオキシダーゼ活性を見いだすことができる。STVがあると、鎖Bはそのトーホールドを失い、そのタンパク質の表面にはめ込まれるので、AS二重鎖の形成は、十分に機能性のグアニン四重鎖をもたらす。必要反応物、例えばH
2O
2、ABTS
2−およびヘミンの添加後、緑色が見えてくることとなり、420nmでの最大吸光度を記録することができる。
【0255】
有意な吸光度変化を
図16において観察することができ、その差は、裸眼でも区別可能である。1ビオチンシステムの変化も明白であるが、より強いバックグラウンドのため直接視覚化によりに識別することは難しいことに留意されたい。
【0256】
結論
本発明者らは、本発明者らのアッセイに光シグナルを備えさせるために新たなレポーターシステムを利用した。このシステムの利点は、共有結合標識の代わりに純粋なDNAの伸長しか必要としない点、ならびに触媒的および比色定量的特徴が結果を直接目視ででも検出できるようにさせる点である。この方法を、実施例3で説明したような一本鎖システムにおいても利用してよい。
【0257】
(実施例12)
ストレプトアビジン(STV)検出のためのDNAグアニン四重鎖ペルオキシダーゼを併用した一本鎖システム
材料
Lと名付けた1本のDNA鎖のみをこの実験において使用する。特定の位置の内部アミン基を修飾し、それをさらなる標識のためのハンドルとして使用する。その配列を下に与える(イタリック体は、トーホールド領域を示し;下線付けは、DNAペルオキシダーゼのGリッチ領域を示す):
【0258】
【表9】
【0259】
このオリゴヌクレオチドは、デンマークのDNA Technology A/Sから購入した。その会社が合成直後にRP−HPLC精製を行った。
【0260】
ストレプトアビジンを含めて、すべての他の試薬は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0261】
図17は、分析物の存在に依存してオリゴヌクレオチドがどのように自己ハイブリダイズし得るのかを示す。
【0262】
位置(ヌクレオチド)1〜5(2)は、G4−DNA(DNAペルオキシダーゼ)の4分の1である。位置6〜7(8)は、第一のトーホールドである。位置8〜17(7またはA)は、第一の分岐点移動領域である。位置18〜27(7またはB)は、第二の分岐点移動領域であり、これは第一の分岐点移動領域と同じ配列を有するが、小分子修飾をもたらす。位置28〜31(9)は、第二のトーホールドである。位置32〜37(11)は、柔軟性をもたらすループ領域である。位置38〜41(9’)は、第三のトーホールド領域であり、これは第二のトーホールド領域と相補的である。位置42〜51(7’またはS)は、第三の分岐点移動領域であり、これは第一または第二の分岐点移動領域と相補的である。位置52〜53(8’)は、第四のトーホールドであり、これは第一のトーホールドと相補的である。位置54〜66(6)は、DNAペルオキシダーゼの残りの4分の3である。
【0263】
方法
ビオチン接合
この手順は、実施例1におけるフルオロフォア接合手順と同じであるが、色素−NHSエステルの代わりにビオチン−NHSエステルを用いる。
【0264】
STV検出のためのアッセイおよびその機能の構築
典型的なアッセイでは、鎖Lを1×[TAE−Mg
2+]緩衝液(40mM Tris−HAc(pH7)、1mM EDTA、12.5mM Mg(Ac)
2)に混ぜ入れ、加えて標的タンパク質としてのSTVも混ぜ入れた。その混合物を室温(RT)で3時間インキュベートし、その後、ヘミン(フェリプロトポルフィリンIXクロリド)、ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))およびH
2O
2(過酸化水素)を添加した。典型的最終濃度は、ビオチン標識DNAについて200nM、STVについて400nM、ヘミンについては2μM、ならびにABTSおよびH
2O
2については2mMであった。
【0265】
Nanodrop分光光度計による吸光度測定
室温での1時間のインキュベーション後、1.5μLの各アッセイ混合物をNanodrop 1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc.)の受け台にピペットで移し、紫外・可視モードで測定した。420nmでの吸光度を記録した。
【0266】
結果
この設計の観念は、3つのオリゴヌクレオチドすべてを1本の長いDNA鎖に単純に組み込むことであり、これは、化学量論の問題を免れるばかりでなく、分子内反応のために鎖置換の反応速度を加速させる可能性も有する。1本のDNA鎖に対して3つの修飾を施す困難を回避するために、分割型DNAペルオキシダーゼと呼ばれる別のレポーターシステムを選んで、前の設計で使用したFRETシステムの代わりに用いた。DNAペルオキシダーゼの正確な配列およびその分割方法は、Shimron,S.;Wang,F.;Orbach、R.;Willner,I.、Amplified detection of DNA through the enzyme−free autonomous assembly of hemin/G−quadruplex DNAzyme nanowires、Anal Chem 2012、84、1042−1048に記載されている。満足なことに、このシグナル伝達システムは、オリゴヌクレオチドが共有結合で連結されている場合でさえ、ハイブリダイゼーション平衡に基づく本発明による検出システムのために機能し得る。
【0267】
この実施形態における長いDNA鎖は、いくつかの領域から成る(
図18)。配列中の5’から3’は、次のとおりである:グアニン四重鎖の4分の1、領域a+領域b(これは元の鎖Aを表す)、領域b+領域d(これは、元の鎖Bを表し、したがってその鎖上にビオチンを有する)、柔軟なヒンジとしてのループe、領域d
*+領域b
*+領域a
*(これはS鎖に由来する)、そして最後に、グアニン四重鎖の4分の3。
【0268】
STVがなければ、トーホールドdのほうがトーホールドaより長いので、d
*b
*は、優先的にbdとハイブリダイズすることになる。この状態では、エネルギー的に好適でないバルジへの第一の領域bの押し込みを行わない限り、2つのグアニン四重鎖部分を合体させることはできない。第二の領域bのビオチンの上にSTVが結合すると、そのタンパク質塊が局所ハイブリダイゼーションまたは分岐点移動を妨げて、領域b
*にその好適なパートナーとして第一の領域bを選ぶように強いることになる。その結果、前記グアニン四重鎖の2つの成分は、ヘミンの助けで、ABTS
●−へのABTS
2−のH
2O
2媒介酸化を触媒する能力があることが判っている完全なGテトラッドを形成するためのまさに正しい位置を占有する。生成物ABTS
●−は緑色を有するので、この反応の動態を目視でまたは分光光度計によって検出することができる。その配座変化過程を
図18aに示す。
【0269】
ペルオキシダーゼ基質としてABTSを添加した1時間後のSTVを有するまたは有さない試料の吸光度を
図18bに与える。50%より大きい増加をSTV添加後に観察することができる。これは、STV結合がGテトラッドの再構成およびより大きな構成体をもたらすという概念を証明する。同じ配列を有するが、その鎖上にビオチンがないDNA鎖とSTVを混合することによる対照実験も行い、この場合、シグナル変化は見いだせなかった。
【0270】
結論
この実施例では、標的タンパク質検出を果たすためにリガンドで標識した1本だけのDNA鎖を使用することにより、前記検出システムをさらに単純化した。さらに、新たな触媒法をレポーターおよび増幅アプローチとして利用する。この実施例におけるSTVの結合は、鎖置換交換反応の分子内平衡を乱し、これは過酸化生成物の吸光度に反映された。本発明者らは、タンパク質または小分子(それぞれ、抗体および抗原)も標的にし、かつ指標として変色を用いるこのシステムは、ELISA(酵素免疫測定法(Enzyme−linked immunosorbent assay))の代替法になる可能性があると考える。
【0271】
(実施例13)
トーホールド長および結合部分の位置の効果
アッセイの性能を最適化するために、様々な試験を行った(データを示さない)。
【0272】
AおよびBの融解温度が近いことは、平衡の感度にとって重要であると考えられる。AとBは同じ分岐点移動領域を共有するので、トーホールド領域がこのシステムにおける標的結合事象の効果の大きさの点での決定因子になる。本発明者らは、STVの存在と不在のより良好な区別のためにA上のトーホールド長を調整した。結果は、Aが2ntまたは3ntトーホールドを有するとき、STVの効果、すなわち相対FRET変化、が最大であることを示した。Aについての4ntトーホールドが最適でない理由は、このシステムのBに対する2つの修飾が平衡を変化させるからであり得る。本発明者らは、標準構成(実施例1)においてAには3ntトーホールドを使用した。その構成ではAも修飾を有するからである。
【0273】
熱力学に加えて、本発明者らは、トーホールド長もこのシステムの動態に効果を及ぼすことを見いだす。より長いトーホールドは、反応速度を有意に増加させて、平衡への到達をはるかに速くさせる。これは、トーホールドが長いほど、結果として、全プロセス中の律速段階であるトーホールドハイブリダイゼーションが速くなるという事実と一致する。
【0274】
ビオチンの位置の効果もこの実施例において調査した。B上の3つの代表位置:トーホールド領域(TH)、分岐点移動領域(BM)および3’末端(T3)、のうちの1つをビオチンで標識した。FRETシグナル変化の点から見て、トーホールド上のビオチンがSTV結合に対して最も高感度であり、続いてBMの上のビオチンが高感度であったことが判明した。Bの3’末端におけるビオチンは、無視できるSTV効果しか示さなかった。これは、尤もなことである。DNA分岐点移動は、マグネシウムの存在下で異種構造に対して非常に敏感であり、そのため小さな局所環境変化がかなりの障害となり得ることは公知であったからである。しかし、単純なハイブリダイゼーションは、この特質を有さない。