(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
本発明は、免疫原性を保持しながら微生物およびウイルスを不活化し、原核生物または真核生物から作製された封入体から、可溶性の、脱凝集化した、リフォールディングした、または活性な免疫原性タンパク質または治療用タンパク質を作り出し、作製するための高圧デバイスに関する。本発明は、病原性生物の高圧不活化方法、および不活化病原体を使用してワクチン組成物を作製するための方法を包含する。高圧不活化微生物は、化学不活化微生物より安全で、かつ、免疫原性が大きい。同様に、可溶化タンパク質は、凝集の程度が大きなタンパク質と比較して、非特異的免疫反応の低減を含む優れた特性を有する。
不活化をモニタリングする手段が、後続の生存率試験のために、パウチに無菌的に穿通して微生物の試料を採取できるニードルまたは他の適切なプローブを含む、請求項3に記載のデバイス。
ラム(5)を伸長させ、シール(6)およびプラグ(7)により、流体が高圧流体チャンバー(3)から流出しないようにし、加圧サイクルおよび減圧サイクルを完了させた後、排出口(4)を介して流体を放出させる、請求項6に記載のデバイス。
評価が、標的動物において防御的免疫応答を誘発する一因であることが公知であるかまたは推定される抗原に特異的なELISAを使用して実施される、請求項16に記載の方法。
ワクチン組成物を製造する方法であって、請求項24に記載の病原体を、アジュバントを含んでもよい適切な媒体または担体と混合して、ワクチン組成物を製造するステップを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、1)免疫原性を保持しながら微生物を不活化し、2)組換えタンパク質をリフォールディング/可溶化させるための高圧デバイスに関する。したがって、本開示の第1の目的は、免疫原性を保持しながら「微生物」(本明細書で使用される「微生物」とは、細菌、原虫、他のあらゆる単細胞真核生物、他のあらゆるモネラ界生物、およびウイルスと定義される)を不活化するための高圧デバイスを提供することである。本開示に係るデバイスは、温度を正確に制御するための手段および圧力を正確に制御するための手段を有しうる。
【0011】
一実施形態では、デバイスは、不活化しようとする微生物が充填されたバッグまたは他の適切な容器を受容するための手段を有する。デバイスは、微生物の不活化状態をサンプリングおよび決定するための様々な手段をその中に組み込みうる。デバイスの全ての機能は、適切なユーザーインターフェースおよびコンピュータ処理ユニットにより制御することができる。微生物を不活化することに加えて、高圧デバイスは、不適正なフォールディング、かつ/または封入体に封入された組換えタンパク質をリフォールディング/可溶化させるのにも効果的に使用することができる。開示されるデバイスは、一つには、タンパク質のリフォールディングおよび可溶化を同時に実施することを可能とするために、先行技術を凌ぐ顕著な利点を提供する。
【0012】
本開示はさらに、コンピュータモデルおよび高圧デバイス内の温度分布をモデル化する方法にも関する。温度の均等または均一な分布を維持することは、免疫原性保存型病原体の不活化やタンパク質のリフォールディング/可溶化などの用途における要望に不可欠である。既存の高圧デバイスの作動時に正確な温度測定値を測定し、これらのデータ点を使用して、温度分布モデルを開発し、これを、多様な温度条件下および圧力条件下における既存の機械の作動から測定される実際の測定値に照らして検証した。略述すると、そのモデルは既存の容器内の温度分布を正確に予測したので、そのモデルを温度分布の不均一性を最小化することが可能な高圧デバイスを設計するのに適用した。したがって、一実施形態では、開示されるデバイスは、許容できない温度の変動を含まない。
【0013】
温度分布モデルは、高圧チャンバー内の温度の変動を最小化することを目標として、チューブの長さ、厚さなどを含む、寸法のパラメータの選択を誘導した。先行技術による一定サイズの高圧チャンバーと異なり、本開示は、ラムプレスまたはピストンプレスの伸長および引き戻しにより、高圧チャンバーのサイズが一定ではない高圧ピストンプレスデバイスを提供する。したがって、圧力を増大させると、チャンバーのサイズは減少し、圧力を減少させると、チャンバーのサイズは増大する。
一実施形態では、本開示に係るデバイスは、水を含む流体への圧力を高圧チャンバーに連通する、ピストンおよびシールの配置を含有する。増大した圧力は、分子間斥力(例えば、H
2O間)に打ち勝ち、6000バールでは、水の容量を、周囲圧力条件と比べて約10パーセント低減する。本開示のデバイスは、高度に制御可能な温度および圧力を使用して、タンパク質をそれらの天然状態(すなわち、免疫原性を保存するのに良好な状態)に安定化させながら、病原体を非感染性とするのに十分な程度に長期間にわたり酵素活性を破壊/遮断しうるため、病原体を不活化するのに特に有用である。特定の実施形態では、微生物または病原体は、当初の高圧によって起こる分子損傷から決して回復しない。
同様に、圧力および温度の正確な調整を使用して、タンパク質のリフォールディング/可溶化を容易にすることもできる。タンパク質は、その固有のアミノ酸含量、その二次構造、ならびにファンデルワールス相互作用および静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ジスルフィド連結、温度、圧力などを含む多くの力が相互に作用した結果であるその三次元構造により決定される特異的な分子の容量を有する。タンパク質がミスフォールドすると、その特異的な容量は、典型的には同じタンパク質が適正にフォールドした場合より大きくなる。一実施形態では、タンパク質の特異的な容量の低減を結果としてもたらすタンパク質のフォールディングが容易になるように、圧力を正確に加える。
【0014】
本明細書で使用される「適正にフォールドした」とは、タンパク質がその天然の立体構成を有する状態を意味し、ここでこの天然の立体構成とは、その主要な構造的および/または機能的役割を果たす能力があるときのタンパク質と大部分が関連している立体構成か、またはそのようなタンパク質に大部分が基づいている立体構成である。例えば、細胞膜受容体がその認識リガンドと相互作用して、細胞のシグナル伝達活性に参加することが可能な場合、その細胞膜受容体は天然の立体構成を有する状態である。同様に、酵素がその認識基質と互作用し関連する反応を触媒することが可能な場合、その酵素は天然の立体構成を有する状態である。
【0015】
一実施形態では、タンパク質のリフォールディング/可溶化の制御は、まず、圧力を加えて、フォールドしていないタンパク質の運動(例えば、分子の振動および回転)の自由度を制限することにより達成される。しかし、圧力をあまりに急速に減少させると、運動をあまりにも大きく制限する可能性があるために、タンパク質はその天然の(適正にフォールドした)立体構成を取ることができなくなる。したがって、本開示に係るデバイスは、1)理想的/最適なリフォールディング/可溶化条件の初期決定;および2)その後の同等の試料への前記条件の実施が可能になるように、圧力および圧力が変更される(すなわち生物学的試料に加えられる)ときの速度を注意深く制限することが可能でなくてはならない。
【0016】
別の実施形態では、温度を上昇させ、運動およびエネルギー(例えば、ブラウン運動、分子内振動、または原子間運動)を増大させて、ミスフォールドしたタンパク質がその天然の立体構成を取るのに要する時間を短縮することができる。
好ましい実施形態では、各生物学的試料の種類に応じた、正確な温度と圧力との組合せ条件を決定して、適正にフォールドしたタンパク質の最大百分率をもたらすのに必要な時間の長さを最小化する。
【0017】
別の実施形態では、デバイスは、圧力の減少の制御および定圧における保持をもたらすという点で、既存の高圧デバイスを凌駕して有利である。これらの圧力条件の制御下にさらされたタンパク質は、急速かつ制御されない圧力の減少(すなわち、制御されない圧力の低減は、過剰なエネルギーをタンパク質に付与して、それらを、エネルギー的には安定であるがなお非天然の立体構成へと移行させたりまたは急激に変化させる)下にさらされたタンパク質と比較して効率的に、それらの天然の立体構成へとリフォールディングする可能性が高い。
いくつかの実施形態では、開示される高圧デバイスは、圧力の減少を正確に調整および制御することを可能とすることにより、望ましくない不適正なリフォールディング/可溶化の量を低減または減殺するピストンおよびシリンダーの配置を含む。
一実施形態では、デバイスは、簡便かつ迅速に汚染除去しうるという点で有利である。特定の実施形態では、デバイスは、GMPに十分に準拠したものであり、両側から開放が可能であり、これらに限定されないが蒸気洗浄などのあらゆる妥当な方法で洗浄することができる。
したがって、本開示は、タンパク質の最大のリフォールディング/可溶化、したがって収率が得られるような圧力および温度の最適なバランスを決定する(次いで、圧力および温度の最適なバランスをもたらす)ための、圧力および温度の正確な制御および管理を可能とするピストンプレス高圧デバイスを提供する。
これらの同じ特性はまた、デバイスが、免疫原性を保持しながら微生物/病原体を不活化するように、圧力と温度との有効な組合せを最適化および適用することも可能とする。いくつかの実施形態では、高圧デバイスは、それが不活化する微生物の免疫原性を改善する。
【0018】
一実施形態では、本開示は、高圧デバイスを収容するための筺体を提供する(
図1Aを参照されたい)。筺体は、高圧という制約と洗浄/汚染除去の容易さとの両方を考慮に入れて設計される。筺体は、これに限られないが最大4,000バール、最大5,000バール、最大6,000バール、最大7,000バール、最大8,000バール、最大9,000バール、または最大10,000バールを含むあらゆる商業的に有用な容量および圧力条件に対応しうる。有用な作動時の容量としては、例えば、50リットルまたはそれ以上が挙げられる。
一実施形態では、筺体内に収容される不活化デバイスは、金属フレーム内に封入された2つのシリンダーを含みうる。デバイスは、本開示に従ってあらゆる有用な立体構成を取ることが可能であり、
図2A、2B、3、および4に示される一般的形態を取りうる。
【0019】
図2Aに示される実施形態などの実施形態では、高圧デバイスは、試料に圧力を連通するためのプレス組立体(1)を含む。増圧器ラム(5)を引き戻しながら、注入口(4)を介して流体を高圧流体チャンバー(3)に流入させる。次いで、ラム(5)を示された位置に伸長させ、ラム高圧シール(6)および高圧プラグ(7)により、流体が高圧流体チャンバー(3)から流出しないようにする。加圧サイクルおよび減圧サイクルを完了させた後、排出口(2)を介して流体を放出させる。増圧器(9)の上部チャンバーを介して、圧力を一次流体チャンバー(8)に連通する。一次流体チャンバー(8)内の圧力を、ラム(5)を介して高圧流体チャンバー(3)に連通する。
一実施形態では、プレス組立体は、
図3〜5の拡大図で例示されている構成要素を含みうる。組立体は、シール保持プレート(20);メインラム保持ビス(22aおよびb);上部チャンバーホルダー取り外しデバイス(24aおよびb);上部チャンバー取り外しデバイス(25a);上部チャンバーシール(25b);一次流体注入口(26);下部チャンバーホルダー(27a);下部チャンバーホルダー取り外しデバイス;および下部チャンバー取り外しデバイス(29a)を含みうる。
【0020】
一実施形態では、ピストンチャンバーと増幅器とが、圧力によりもたらされる力に関わらず固定された状態を維持するように、金属フレームを装填してそれら2つの要素のスラストを吸収することができる。
【0021】
特定の実施形態では、小型の設計により、特に、独立した外部の圧力供給源群を必要とするより開放型の設計と比較して、破損が生じた場合の汚染の拡大が最小化される。加えて、小型の設計は、汚染可能領域内で望ましくない多数の弁の頻繁な交換を必須とする一連の高圧配管に対する必要性を回避する。
一実施形態では、汚染が生じた場合に筺体内部への容易なアクセスおよびピストンシールの容易な交換が可能になるように、増圧器およびピストンは、筺体から分離されていてもよい。圧力増幅器は、長時間の作動時間、例えば、最長約10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、もしくは約20時間またはそれ以上に対応しうることが好ましい。
一実施形態では、全組立体は、約7.4メートルであり、高さが約1.6メートルで、幅は約2.2メートルである。一実施形態では、組立体の重量は、約12,700kgである。本開示において、他のあらゆる妥当な組立体の寸法および市販の妥当な組立体の寸法が想定され、したがって当業者は、通常の作業以上のことをせずともこれらの寸法を改変することができる。
一実施形態では、筺体は、塵埃の沈着が制限されるように、完全に覆われている。組立体は、例えば、過酸化水素の噴霧を筺体へと注入することにより滅菌することができる。カバーは、完全な洗浄を確保するために取り外すことができ、操作部材は、デバイス内へのアクセスを可能とし、特にシールの交換を可能とする。
【0022】
一実施形態では、筺体は、汚染除去可能な材料、特に、ステンレス鋼で作製される。4000バールという高圧の例では、鋼は、大きな機械的強度/完全性を保有することが理想的である。一実施形態では、材料は、INCONEL 718でありうる。
一実施形態では、チャンバーの内径は、150mmであってもよく、外径は、440mmであってもよい。したがって、この実施形態では、50リットルの内部容量により、約2.8メートルの自由な内部長がもたらされる。約4000バールでは、水の圧縮率は、約13%である。全体の圧縮率の計算に試料内の空洞部分を加えてもよい。一実施形態では、大気圧下における自由長は、20%圧縮された自由長、または約3.4メートルと計算される。これにより、約3.9メートルの全チャンバー長および約4900kgの質量がもたらされる。
【0023】
一実施形態では、組立体は、チャンバー内に含有される水を抜き取り、次いで、末端部を再シーリングすることにより、潜在的に汚染された水の放出を防止しうる。筺体の軸に垂直な穴により、注入口および排出口が提供される。特定の実施形態では、筺体は、単体である。
別の実施形態では、ピストン/シリンダーのシーリング手段が、一方の側では、圧力ピストンシール(6)により、他方の側では、プラグ(7)により提供される。いずれのシーリング手段も、大きな機械的強度を有するステンレス鋼でありうる。シーリング手段はまた、あらゆる適切な材料でコーティングされてもよいし、あらゆる適切な材料からなっていてもよい。
【0024】
一実施形態では、デバイスは、横方向に動いて、微生物、リフォールディングさせるタンパク質などを含有する、試料バッグのローディングおよびアンローディングを可能とする。試料バッグは、小型の貨車のように、デバイスへと連続的に駆動される容器で移送することができる。チャンバーは、レール上を走る車輪の上に置くことができ、全プロセスはピストンにより駆動される。
【0025】
一実施形態では、装置は、ステンレス鋼から作製されうる圧力ブースターを含む。しかし、圧力ブースターは、ピストン/シリンダー配置と同じ過酷条件にさらされるわけではないので、ブースターは、設計された鋼1.4418で作製してもよい。一実施形態では、ブースターは、外径620mmおよび長さ1750mmで、重量2200kgのシリンダーの形態を有する。内部にはピストンがある。主要部分の内径は、540mmである。ブースターは、最大160リットルの油を含有する。この容量は、流量を250リットル/時間とし、室外に設置される、310バールの静水圧ユニットにより供給される。主要回路内の圧力は、310バールである。
ピストンのストロークは、約940mmでありうる。引き戻された位置において、ピストンは、筺体から完全にリリースされうる。しかし、筐体が部分的にローディングされている/ローディングされていないとき、シャッターのシールのように、ハウジング内でシーリングするシールは、容易な交換または洗浄を可能とするようにアクセス可能である。
ピストンラム(5)の中心部は、中空であってもよく、連続的で正確な移動およびピストン位置の測定を可能とするように、磁石を含有していてもよい。シールが漏洩する場合も、漏洩を相殺し、不活化を確保するように、ピストンを適切に進行させることにより、圧力を維持することができる。シールは、次回のチャンバーの開放時に取り換えることができる。
一実施形態では、洗浄が容易になるように、アクチュエーターにより、増幅器の横方向の移動を可能とする。
【0026】
別の実施形態では、検証システムのレーザーを装備して、チャンバーと増幅器シリンダーとの適正な整列を確認することができる。
別の実施形態では、金属フレームは、増幅器が筺体内に4000バールの圧力を施すときに、チャンバーおよび増幅器を定位に維持するように設計する。フレームは、いくつかの構造鋼で穿孔されたプレートからなりうる。溶接仕上げを使用して、液体形態または噴霧形態が、プレートの間を透過するのを防止することができる。組立体は、保護的塗装または他の適切な保護的コーティングでコーティングすることができる。
【0027】
一実施形態では、フレームの外側の長さは、約6.8メートルであり、その高さは、約1.3メートルであり、その重量は、約5600kgである。
別の実施形態では、配管は、静水圧ユニットからの静水圧エネルギーと連通する。配管は、固定することができるが、メンテナンスのために増幅器を移動させるときは、取り外すことができる。
一実施形態では、筺体には、配管または適切な導管を介して脱塩水を供給する。配管は、可撓性および/または伸展可能でありうるので、筺体をローディング/アンローディング位置へと並進移動させるときに取り外す必要はない。また、チャンバーを開放する前に乾燥させるため、圧縮空気を注入することを可能とする第2の配管または導管も存在させることができる。また、筺体近傍の排出用配管部分も、筺体作動時の移動範囲に応じるように、可撓性でありうる。
【0028】
筺体の排水は、施設の水処理システムに向けられる。ポケットが破損した場合であっても、4000バールでの保持が満たされているので、水は、さらなる処理を伴わずに放出することができる。
しかし保持時間に到達できないかまたは滞留時間が短い場合は、水をタンクへと独立して放出し、汚染がポケットの破損である可能性があるのかどうかを決定する解析および特殊な処理を可能とする。筺体をすすぐのに使用される水についても同様であると予想される。
【0029】
第1の目的の実施形態では、高圧デバイスを、
図1Aに図式化した通りの一般的なレイアウトを有するハウジング内に置くことができる。高圧デバイスは、
図1Bで例示されている試料保持デバイスを収容および受容するように設計することができる。デバイスの重要な特色のうちの1つは、高圧にさらされる試料となる微生物が、温度変化および静水圧に「直接曝露」(例えば、濃縮された微生物のスラリーとして)されているのではなく、弾力性のあるパウチ内に含有されていることである。その代わりに、濃縮された微生物のスラリーは、
図1Bに示されるパウチホルダーまたはレセプタクルと同様のパウチホルダーまたはレセプタクルへと適合するように設計された試料パウチ内に密閉して封入することができる。微生物の高圧不活化のためのこの手法は、試料加工の不変性、装置の汚染除去の容易さ(パウチの破裂が生じた場合)、およびバッチ汚染の可能性の低減(例えば、1つのパウチが汚染された場合でもなお、残りのバッチは、清浄を維持しうる)を含む複数の利益を有する。
第1の目的の別の実施形態では、デバイスは、
図2Aに示されるデバイスなどのピストンプレスデバイスを含む。高圧デバイス(1)は、制御された量の圧力を試料に連通する。増圧デバイスから高圧の空気/流体を受容する増圧チャンバー(9)を介して、まず圧力を一次流体チャンバー(8)に連通する。一次流体チャンバー(8)内の圧力を、ラム(5)を介して高圧流体チャンバー(3)に連通する。ラム(5)を伸長させる前、圧力ラム(5)を引き戻しながら、注入口(2)を介して流体を高圧流体チャンバー(3)に流入させる。次いで、ラム(5)を
図2Aに示される位置に伸長させ、シール(6)およびプラグ(7)により、流体が高圧流体チャンバー(3)から流出しないようにする。加圧サイクルおよび減圧サイクルを完了させた後、排出口(4)を介して流体を放出させる。一実施形態では、高圧デバイスは、
図3、4、5、および6に示される構成要素を含む。
【0030】
特定の実施形態では、試料は、
図7に概説されるスキームに従い、高圧デバイスにより処理することができる。したがって、本開示は、タンパク質をリフォールディング/可溶化もしくは脱凝集させるか、または免疫原性を保持しながら病原体を不活化するための方法であって、
1)試料を、ローディングチャンバーに入れるステップと、
2)チャージングシリンダーを伸長させるステップと、
3)試料をローディングチャンバーから除去するステップと、
4)チャージングシリンダーを引き戻すステップと、
5)試料を高圧チャンバーに入れるステップと、
6)右シリンダーを伸長させて、シールを施すように進行させ、圧力増幅器への流体の充填を可能とするステップと、
7)左シリンダーを伸長させるステップと、
8)左シリンダーを伸長させて、高圧チャンバーをさらにシーリングさせるステップと、
9)圧力を加えたときに左シリンダーが引き戻されることを防止するブロックを配置するステップと、
10)右シリンダーをさらに左に伸長させて、圧力を増大させるステップと、
11)圧力を解放するステップと、
12)ブロックを引き戻すステップと、
13)左シリンダーを引き戻して、流体の排出を可能とするステップと、
14)圧力増幅器をその開始位置へと戻すステップと、
15)本体を伸長させて、試料をアンロードするステップと、
16)チャージングシリンダーを伸長させるステップと
を含む方法を提供する。
【0031】
したがって、一実施形態では、デバイスは、パウチホルダーを受容し、それらを、等方圧プレス/ピストン組立体の動作により作り出される高静水圧(HHP)へと曝露させるように送達または配置するための手段を包含する。デバイスは、パウチを、特定の時間にわたり特定の温度および圧力にさらす手段を含む。デバイスは、デバイス筺体の温度を正確に制御する局所的循環水の供給を有しうる。表1に示される通り、筺体の温度および循環水の供給は、変更が可能である。デバイスは、最大で、例えば、7000バール、8000バール、9000バール、または10000バールの、広範にわたる圧力を適用しうる。デバイスは、必要な圧力および温度を達成するためのあらゆる数の構成要素を含みうる。
【0033】
第1の目的の別の実施形態では、デバイスは、汚染除去手段をさらに含む。汚染除去手段は、医薬グレードの生物学的製剤を生産するのに使用されるあらゆるデバイスに必要とされるような一般的な洗浄を提供することも可能であり、かつ/または試料パウチの破裂が生じた場合に、デバイスを滅菌するのに使用することも可能である。
【0034】
さらに別の実施形態では、デバイスは、試料の不活化状態をモニタリングする手段(SISM:sample inactivation status monitoring means)をさらに含む。SISM手段は、高圧不活化プロセスを通した適切な時点で規定された分量の試料が無菌的に(試料パウチから)採取されるように適合されたニードルまたは他の適切なプロービングデバイスを含みうる。したがって、SISM手段は、完全な微生物の不活化がいつ達成されたのかを決定するときに、デバイスユーザーの一助となりうる。SISM手段はさらに、微生物の不活化状態を決定するのに有用なあらゆる数の自動式生存率アッセイも含みうる。デバイスは、温度および時間の条件を、SISM手段によりもたらされるデータに基づき、自動で調整するように設計することができる。
【0035】
SISM手段を採用しない実施形態では、不活化反応速度を、個別に決定し、必要に応じて保存し、再使用する。不活化後QCの評価時において、試料は不活化が不十分であると決定し、さらなる不活化試行にかける場合もある。QCデータは、微生物の所与の種類および濃度に応じて不活化反応速度を調整するように保存することができる。
【0036】
デバイスは、少なくとも1つの、ユーザーにプログラム可能なコンピュータインターフェースを有することが必然的である。コンピュータインターフェースは、デバイスのユーザーが、全てのデバイスの機能を制御することを可能とする。インターフェースは、これらに限定されないが筺体温度、水温、および試料の不活化状態を含む不活化サイクルにわたりもたらされた全てのデータを記録する、少なくとも1つのデータ保存手段を制御する。インターフェースは、表示手段へと出力されるグラフの形態で情報を表示する場合もあり、かつ/またはユーザーに簡便なスプレッドシートまたは他の適切なデータ処理ソフトウェアアプリケーションへとデータを出力する場合もある。
本開示の第2の目的は、免疫原性を保持しながら微生物を不活化するための方法を提供することである。一実施形態では、方法は、微生物を、制御された温度下で指定された時間にわたり高圧条件にさらすステップを含む。方法はまた、高圧と低圧とを、指定された時間にわたり指定された温度で交互に施すステップも含む。広範なパラメータのモデル化を実施したが、これについては、下記の「発明を実施するための形態」でさらに記載する。一般に、室温は、15℃〜26℃とし、デバイスの水温は、15℃〜27℃とした。
第2の目的の別の実施形態では、微生物は、完全に不活化され、感染を引き起こすことは不可能となるが、それに対する感受性のある動物における免疫応答を誘発することは可能である。一実施形態では、免疫応答は、防御的免疫応答である。別の実施形態では、微生物は、化学不活化された同じ微生物よりなお免疫原性が大きい。さらに別の実施形態では、微生物は、高圧処理により免疫原性エピトープが露出されるため、免疫原性が大きい。
本開示の第3の目的は、高圧不活化法の実施中および実施後における微生物の不活化状態を決定するための方法を提供することである。不活化状態は、あらゆる数の生存率アッセイにより決定し、高圧不活化パラメータ(すなわち、圧力、温度、時間)を調整および最適化するのに使用することができる。また、エピトープの完全性および/または利用可能性もモニタリングおよび評価して、最適の不活化パラメータを決定することができる。
【0037】
本開示の第4の目的は、高圧不活化微生物を含む免疫原性組成物を提供することである。一実施形態では、免疫原性組成物は、動物におけるin vivoの防御的免疫応答を誘発するワクチン組成物である。組成物は、化学不活化微生物を使用して作製された同等な組成物より安全かつ有効でありうる。一実施形態では、ワクチンは、高圧不活化されたレプトスピラ菌またはブタ丹毒菌を含む。
開示される高圧デバイスを使用して、多種多様な微生物を不活化しうるので、本開示では、このようにして不活化されたあらゆる微生物を含む組成物が想定される。
【0038】
本開示の第5の目的は、高圧デバイスを使用して、多様な分子生物学的適用のために、タンパク質をリフォールディング/可溶化させるステップを含む方法を提供することである。一実施形態では、本開示は、原核生物または真核生物で発現する、可溶性の、脱凝集化した、リフォールディングした、または活性なタンパク質を作製するための方法であって、(i)尿素を含有しないかまたは低濃度の尿素を含有する緩衝液中で封入体を調製して、封入体懸濁液を形成するステップと、(ii)封入体懸濁液を、所定時間にわたり高圧にさらすステップとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本開示は、原核生物または真核生物で発現する、可溶性の、脱凝集化した、リフォールディングした、または活性なタンパク質を作製する方法であって、(i)尿素を含有しないかまたは低濃度の尿素を含有する緩衝液中で封入体を調製して、封入体懸濁液を形成するステップと、(ii)封入体懸濁液を、所定時間にわたり段階的に増大させた圧力にさらすステップと、(iii)封入体に加えられた高圧を、所定時間にわたり維持するステップとを含む方法を提供する。
【0039】
一態様では、緩衝液は、ジチオトレイトール(DTT:dithiothreitol)を含有しうる。別の態様では、DTT濃度は、約1mM〜約100mM、約1mM〜約90mM、約1mM〜約70mM、約1mM〜約60mM、約1mM〜約50mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mMの範囲でありうる。一態様では、尿素は、緩衝液中に存在させない場合もある。別の態様では、尿素は、約1M、約2M、約3M、約4M、約5M、約6M、約7M、約8M、約9M、および約10Mの濃度で緩衝液中に存在させることができる。
【0040】
別の態様では、高圧は、約1000バール〜約5000バール、約2000バール〜約4000バールの範囲でありうる。高圧は、例えば、2000バール、2100バール、2200バール、2300バール、2400バール、2500バール、2600バール、2700バール、2800バール、2900バール、3000バール、3100バール、3200バール、3300バール、3400バール、3500バール、3600バール、3700バール、3800バール、3900バール、および4000バールであるがこれらに限定されない、約2000バール〜約4000バールの範囲のあらゆる圧力でありうる。
別の態様では、段階的な圧力の増大は、連続的に行うこともでき、段階的に行うこともできる。一態様では、所望の最終高圧に到達するように、圧力を、一定の速度で、所定時間にわたり連続的に増大させることにより、封入体懸濁液に段階的に増大させた圧力を加える。例えば、圧力は、2000バールに到達するように、約200バール/分〜1000バール/分の速度で、約2分間〜10分間にわたり連続的に、3000バールに到達するように、約200バール/分〜1000バール/分の速度で、約3分間〜15分間にわたり連続的に、4000バールに到達するように、約200バール/分〜1000バール/分の速度で、約4分間〜20分間にわたり連続的に、5000バールに到達するように、約200バール/分〜1000バール/分の速度で、約5分間〜25分間にわたり連続的に増大させる。別の態様では、段階的に増大させた圧力は、段階的に加えられる。例えば、圧力は、1000バールに到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり増大させ、次いで、1000バールの圧力を1時間にわたり維持して、タンパク質を緩和させ、緩和時間の後、圧力を、2000バールの最終的な所望の高圧に到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり再度増大させる。
【0041】
3000バール、4000バール、および5000バールの最終的な所望の高圧に到達させるためにも、間に1時間にわたるタンパク質の緩和を伴って、1000バール/分で、1分間にわたる、同じ段階的な圧力の増大を採用することができる。例えば、圧力は、1000バールに到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり増大させ、次いで、1000バールの圧力を1時間にわたり維持して、タンパク質を緩和させ、圧力を、2000バールの圧力に到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり再度増大させ、次いで、2000バールの圧力を1時間にわたり維持して、タンパク質を再度緩和させ、圧力を、3000バールの最終的な所望の圧力に到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり再度増大させる。4000バールの最終的な所望の圧力に到達させるためには、圧力は、1000バールに到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり増大させ、次いで、1000バールの圧力を1時間にわたり維持して、タンパク質を緩和させ、圧力を、2000バールの圧力に到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり再度増大させ、次いで、2000バールの圧力を1時間にわたり維持して、タンパク質を再度緩和させ、圧力を、3000バールの最終的な所望の圧力に到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり再度増大させ、次いで、3000バールの圧力を1時間にわたり維持して、タンパク質を三度緩和させ、圧力を、4000バールの最終的な所望の圧力に到達するように、1000バール/分で、1分間にわたり再度増大させる。
【0042】
封入体懸濁液は、約10時間〜約100時間、約20時間〜約100時間にわたり高圧下で処理することができる。高圧処理は、24時間超、例えば、約25時間〜約100時間、約25時間〜約80時間、約25時間〜約60時間、約25時間〜約50時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、約40時間、約41時間、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間、約48時間、約49時間、約50時間であることが好ましい。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、原核生物または真核生物で発現する、可溶性の、脱凝集化した、リフォールディングした、または活性なタンパク質を作製するための方法であって、(i)尿素を含有しないかまたは低濃度の尿素を含有する緩衝液中で封入体を調製して、封入体懸濁液を形成するステップと、(ii)封入体懸濁液を、所定時間にわたり段階的に増大させた圧力にさらすステップと、(iii)封入体に加えられた高圧を、所定時間にわたり維持するステップと、(iv)減圧によりタンパク質を回収するステップとを含む方法を提供する。
タンパク質は、これらに限定されないがレプトスピラ菌の膜タンパク質およびBordetella属の表面タンパク質などの、膜タンパク質、表面抗原、または抗原として対象となるあらゆるタンパク質から選択することができる。
【0044】
減圧は、約83バール/分〜200バール/分の速度で実施することができる。本発明で想定される原核生物としては、アビバクテリウム属(Avibacterium)、ブルセラ属、大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス属(例えば、Haemophilus suis)、サルモネラ属(例えば、腸炎菌(Salmonella enteritis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、Salmonella infantis)、赤痢菌属、パスツレラ属、およびリメイレラ属(Rimeirella)が挙げられる。
原核生物系では、多数の発現ベクターを選択することができる。このようなベクターは、pBLUESCRIPT(Stratagene)、piNベクター(Van Heeke and Schuster, J. Biol. Chem. 264:5503 5509 (1989))など、PGEX Vectors(Promega、Madison、Wis.)などの多機能性大腸菌クローニング発現ベクターを含むがこれらに限定されない。真核生物系では、細胞系は、酵母(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiaeなど)、ピキア酵母(Pichia pastoris))、バキュロウイルス細胞、哺乳動物細胞、植物細胞でありうる。真核生物系の発現ベクターは、pVR1020ベクターまたはpVT1012(Vical Inc.、San Diego、CA)、PichiaPink Vector(Invitrogen、CA、USA)、pFasBac TOPOベクター(Invitrogen)を含むがこれらに限定されない。
【0045】
本発明で提供される、原核生物または真核生物で発現する、可溶性の、脱凝集化した、リフォールディングした、または活性なタンパク質を作製するための方法を使用して、あらゆるタンパク質を可溶化することができる。タンパク質としては、抗体およびインスリンが挙げられる。タンパク質としてはまた、凝血因子、ペプチドホルモンなどを含む、あらゆる治療用タンパク質も挙げられる。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、ウイルスを含む高圧不活化微生物を含む組成物またはワクチンを提供する。微生物は、例えば、原虫(例えば、ジアルジア属原虫、トリパノソーマ原虫、アメーバ原虫、熱帯熱マラリア原虫など)、ウイルス(例えば、PCV2、ロタウイルス、西ナイルウイルス、FMD、ジステンパーウイルス、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ウシ下痢症ウイルス、感染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、感染性鼻炎ウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルスなど)、または細菌(ブタ丹毒菌、大腸菌、ブドウ球菌、コクシジウム、連鎖球菌、Mycoplasma hyopneumoniae、ヘリコバクター属など)であってもよく、さらに薬学的または獣医学的に許容される担体、賦形剤、媒体、またはアジュバントも挙げられる。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、百日咳菌の細胞懸濁液の高圧不活化方法であって、
(a)百日咳菌の細胞懸濁液を培養培地中で作製するステップと、
(b)最終容量の25%(容量/容量)を超えない生理食塩液(0.9%のNaCl)または緩衝液が補充されていてもよい前記培養培地中で作製された細胞懸濁液を、濃縮するステップと、
(c)濃縮された細胞懸濁液を、50℃〜54℃で構成される温度で加熱するステップと、
(d)熱処理された濃縮された細胞懸濁液を高圧処理により不活化するステップであり、高圧が、2000バールを超えるが6000バール未満であるステップと
を含む方法を提供する。
【0048】
百日咳菌の培養に好都合なあらゆる液体培地を使用することができる。液体培地は、特に、コーエンウィラー培地(American Journal of Public health, 1946, 36, 371-376)、Verwey培地(J. Bacterid. 1949;58: 127-134)、またはStainer D.W. et al. (Journal of General Microbiology 1971, 63, 211-220)により記載されている既知組成培地でありうる。液体培地は、Horni−brooksによる元の流体培地に由来するコーエンウィラー培地であることが好ましく、百日咳菌の大スケールの培養にとりわけ適切であることが示されている。コーエンウィラー培地の組成は、カザミノ酸またはカゼイン加水分解物などの窒素供給源、無機塩(リン酸一カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸銅)、可溶性デンプン、酵母抽出物、ならびにシステイン、塩酸システインなど、システインの塩からなる群から選択されるシステイン誘導体、シスチン、および塩酸グルタチオンの混合物を含む。コーエンウィラーの組成は、アミノ酸および/または塩化ナトリウムなど、いくつかのさらなる成分を含有する場合もある。通常、酵母抽出物は、加水分解された酵母抽出物または自己消化された酵母抽出物の形態であり、透析または限外濾過されている。
【0049】
例えば、最終細胞濃度が通常、10
9〜10
13CFU/mlとなるように、細胞ペレットを遠心分離し、最終容量の25%(容量/容量)を超えない生理食塩液(0.9%のNaCl)またはリン酸緩衝液などの緩衝液が補充されていてもよい、容量を低減した培養物上清と共に再懸濁させることにより、または接線流濾過により、作製された百日咳菌の懸濁液を採取および濃縮する。通常、濃縮された細胞懸濁液の最終容量は、採取物の容量の10〜20分の1である。次いで、百日咳菌の濃縮懸濁液を、50℃〜54℃の制御された温度(上下限値を含む)で、所定時間にわたり加熱し、これにより、タンパク質の熱変性を防止しながら、細胞の生存能力および百日咳毒素の毒性を約10
4〜10
6分の1に(CFU/ml単位で測定する)低減する。この効果は、濃縮懸濁液を、50℃〜54℃の制御された温度(上下限値を含む)で、30分間にわたり加熱することにより達成することができる。濃縮懸濁液の加熱において、温度を38℃〜54℃とする時間を考慮に入れることも好ましい。例えば、濃縮懸濁液を38℃〜54℃で加熱するときに、その間に温度を50〜54℃とする時間が30分間含まれる場合、上記加熱する時間は、40〜90分、または50〜80分、なおまたは55〜70分(上下限値を含む)にわたり持続させることができる。これらの温度パラメータの設定は、それに従い濃縮された細胞懸濁液の温度を、規定された時間(例えば、10〜20分間)にわたり、38℃から50℃へと段階的に増大させた後、温度を50〜54℃(上下限値を含む)で維持する30分間を後続させ、最後に、濃縮された細胞懸濁液の温度を50℃から38℃へと段階的に低下させる規定された時間(例えば、10〜20分間)を後続させる、自動制御型加熱プログラムにより容易にモニタリングすることができる。
【0050】
熱処理され濃縮された百日咳菌の細胞懸濁液は最終的に、完全不活化細菌の免疫原性を保存する条件における高圧処理により完全に不活化される。この効果は、特に、本発明の高圧デバイスを使用して、熱処理され濃縮された細胞懸濁液を、2000バールを超えるが6000バール未満である高圧にさらすことにより達成される。高圧は、例えば、2500バール、3000バール、3500バール、4000バール、4500バール、5000バール、5500バールであってもよいがこれらに限定されない。圧力が高いほど、高圧処理を必要とする時間は短い。より特定すると、高圧は、例えば、3000バール、3100バール、3200バール、3300バール、3400バール、3500バール、3600バール、3700バール、3800バール、3900バール、4000バール、4100バール、4200バール、4300バール、4400バール、4500バール、4600バール、4700バール、4800バール、4900バール、5000バールであるがこれらに限定されない、3000バール〜5000バールの範囲(上下限値を含む)のあらゆる圧力でありうる。この範囲の高圧では、高圧処理は、少なくとも15分間の長さであるが、通常、持続時間は、15分間〜180分間の範囲内であり、熱処理され濃縮された細胞懸濁液に加えられる高圧の強さに従い調整する。加えられる高圧が、3000バールである場合、高圧処理は、30分間、例えば、90分間、100分間、110分間、120分間、130分間、140分間、150分間、160分間、170分間、または180分間を超えて続けるものとする。他方、加えられる高圧が、4000バール〜5000バールの範囲(上下限値を含む)である場合、高圧処理の持続時間を短縮してもよく、例えば、30分であってもよいし、なおまたはそれより短くてもよいが、念のために30分間〜180分間にわたり処理することが推奨される。持続時間は、これらに限定されないが、例えば、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、90分間、100分間、110分間、120分間、130分間、140分間、150分間、160分間、170分間、または180分間であってもよく、例えば、4000バールで90分間の処理であってもよい。この範囲の高圧および時間では、回復現象の欠如が観察されており、休眠期間後に生存可能な細菌は存在しないので、これは、細菌の不活化が不可逆的かつ決定的であることを意味する。
【0051】
本発明のプロセスに従う熱処理と高圧処理との組合せにより得られる、完全に不活化された百日咳菌の濃縮懸濁液は、その効力が十分に保存され、国際的な規制機関により承認された百日咳ワクチンまたは同等の基準ワクチンの国際基準に照らして較正された基準ワクチンの効力と同等であるので、良好な免疫原特性を保持する。マウスの体重増加試験は、良好な結果をもたらしているので、調製物中の毒素は、十分に中和されている。走査電子顕微鏡による観察は、熱処理および高圧処理の後における不活化細菌の集団では、目視可能な形態的変化が見られないことを明らかにしている。それは本質的に、著明な比率の溶解性細菌を伴わない完全不活化細菌からなり、マーシオレートでの化学的処理により不活化された細菌集団と同様の外見を呈している。さらに、本発明の高圧デバイスは、大容量の生物学的材料(50リットル以上)を処理するように設計されているので、本発明のプロセスは、産業スケールでも容易に実行することができる。本発明のプロセスは、マーシオレートによる百日咳菌の従来の化学不活化に対する良好な代替法を表し、不活化された全細胞百日咳ワクチンを製造するための新たな可能性を表す。したがって、本発明のさらなる目的は、全細胞百日咳ワクチンを製造するためのプロセスであって、1)濃縮された百日咳菌の細胞懸濁液を、本発明に記載の熱処理および高圧処理により不活化するステップと、2)百日咳菌の不活化された濃縮された細胞懸濁液を、パッケージングデバイスへと分注する前に、薬学的に許容される賦形剤中で希釈するステップとを含むプロセスにも関している。
【0052】
当業者には、薬学的または獣医学的に許容される担体またはアジュバントまたは媒体または賦形剤が周知である。本発明の方法のために使用しうる薬学的または獣医学的に許容される担体またはアジュバントまたは媒体または賦形剤は、0.9%のNaCl(例えば、生理食塩液)溶液またはリン酸緩衝液、ポリ(L−グルタミン酸)またはポリビニルピロリドンを含むがこれらに限定されない。薬学的または獣医学的に許容される担体または媒体または賦形剤は、ベクター(またはin vitroにおいて本発明のベクターから発現するタンパク質)の投与を容易にするか、またはトランスフェクションもしくは感染を容易にするか、かつ/またはベクター(またはタンパク質)の保存を改善する、あらゆる化合物または化合物の組合せでありうる。本明細書の一般的記載では、用量および投与容量が論じられており、当業者はまた、不要な実験を伴わずに、当技術分野における知見と共に本開示を読むことによってもこれを決定することができる。
【0053】
サブユニット(タンパク質)ワクチンを、鉱物油および/または植物油ならびにブロックコポリマー、TWEEN(登録商標)、SPAN(登録商標)などの非イオン性界面活性剤に基づく水中油エマルジョン、水中油中水エマルジョンなどのアジュバントと組み合わせることができる。このようなエマルジョンはとりわけ、"Vaccine Design - The Subunit and Adjuvant Approach", Pharmaceutical Biotechnology, 1995の147頁に記載されるエマルジョン、またはTSエマルジョン、とりわけ、TS6エマルジョン、およびLFエマルジョン、とりわけ、LF2エマルジョン(TSエマルジョンおよびLFエマルジョンのいずれについても、国際特許公開第WO04/024027号を参照されたい)である。他の適切なアジュバントは、例えば、ビタミンE、サポニン、およびCarbopol(登録商標)(Noveon;国際特許公開第WO99/51269号、国際特許公開第WO99/44633号を参照されたい)、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム("Vaccine Design, The subunit and adjuvant approach," Pharmaceutical Biotechnology, vol. 6, 1995)、生物学的アジュバント(すなわち、C4b、とりわけ、マウスC4b(Ogata R Tら)またはウマ科C4b、GM−CSF、とりわけ、ウマ科GM−CSF(米国特許第6,645,740号))、毒素(すなわち、コレラ毒素であるCTAまたはCTB、大腸菌易熱性毒素であるLTAまたはLTB(Olsen C W et al.;Fingerut Eら;Zurbriggen R et al. Peppoloni S et al.)、およびCpG(すなわち、CpG#2395(Jurk Mらを参照されたい)、CpG#2142(欧州特許第1,221,955号における配列番号890を参照されたい)である。他のアジュバントは、ポリA−ポリU、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)("Vaccine Design The Subunit and Adjuvant Approach", edited by Powell and Newman, Pharm. Biotech., 6: p.03, p.157);N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(アブリジン(登録商標)など)(上記文献、148頁);ならびにカルボマー、キトサン(例えば、米国特許第5,980,912号を参照されたい);アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸、およびアルケニル誘導体ポリマー、四級アンモニウム塩を含有するカチオン性脂質、サイトカインを含む。また、アジュバントのあらゆる組合せも使用することができる。
【0054】
一実施形態では、とりわけ、カルボマーのアジュバント溶液(Pharmeuropa, vol. 8, No.2, June 1996)は、塩化ナトリウムの存在下にある蒸留水中で調製すると有利であり、得られる溶液のpHは酸性である。この原液を、NaClを含む水、有利には生理学的生理食塩液(9g/lのNaCl)の所望の量(所望の最終濃度を得るための)またはその大部分に、一度にまたは数回に分けて添加することにより希釈し、それと同時に、またはその後に有利にはNaOHで中和する(pH7.3〜7.4)。この生理学的pHの溶液を使用してワクチンと混合し、これを、とりわけ、凍結乾燥形態、液体形態、または凍結形態で保存することができる。最終ワクチン組成物中のポリマー濃度は、単位容量当たりの重量で0.01%〜2%、単位容量当たりの重量で0.06%〜1%、または単位容量当たりの重量で0.1%〜0.6%でありうる。
【0055】
本発明の別の態様は、動物における1種もしく複数の抗原に対する免疫応答または動物における1種もしく複数の病原体に対する防御的応答を誘導するための方法であって、動物に、少なくとも1回、本発明のワクチン組成物または医薬組成物を接種するステップを含む方法に関する。本発明のさらに別の態様は、動物における1もしく複数の抗原に対する免疫応答または動物における1種もしく複数のリーシュマニア属病原体に対する防御的応答を、少なくとも1つの共通のポリペプチド、抗原、エピトープ、または免疫原を使用する少なくとも1回のプライム投与および少なくとも1つのブースター投与を含むプライム−ブースト投与レジメンで誘導するための方法に関する。プライム投与で使用される免疫組成物またはワクチンは、ブースターとして使用される免疫組成物またはワクチンと、本質的に同じでもよいし、異なっていてもよい。プライム投与は、1回または複数回の投与を含みうる。同様に、ブースト投与も、1回または複数回の投与を含みうる。プライム−ブースト投与は、2〜6週間の間隔で、例えば約3週間の間隔で実行することができる。一実施形態によればまた、有利にはサブユニット(タンパク質)ワクチンを使用する半年ごとのブースターまたは1年ごとのブースターも想定される。
皮下経路または筋内経路に加えて、皮内経路または経皮経路など、様々な投与経路を使用することができる。
本発明に係る組成物またはワクチンは、本明細書で論じられる1種または複数のポリペプチドの治療的応答を誘発するのに有効な量を含むか、本質的にこの有効量からなるか、またはこの有効量からなり、有効量は、本明細書に組み込まれる文献および当技術分野における知見を含む本開示から、不要な実験を伴わずに決定することができる。
【0056】
本発明の発現されたタンパク質を含む組成物またはワクチンの場合、用量は、約1μg〜約2000μg、約5μg〜約1000μg、約10μg〜約100μg、約20μg〜約1000μg、約30μg〜約500μg、または約50μg〜約500μgを含みうる。投与容量は、約0.1ml〜約10ml、または約0.2ml〜約5mlでありうる。
【0057】
「抗原」または「免疫原」とは、宿主動物において特異的な免疫応答を誘導する物質を意味する。抗原は、死滅させた生物全体、弱毒化させた生物全体、または生存生物全体;生物のサブユニットまたは一部;免疫原特性を有するインサートを含有する組換えベクター;宿主動物に提示されると免疫応答を誘導することが可能なDNAの小片または断片;ポリペプチド、エピトープ、ハプテン、またはこれらのあらゆる組合せを含みうる。あるいは、免疫原または抗原は、毒素または抗毒素を含みうる。
【0058】
本明細書では、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「ポリペプチド断片」という用語は、あらゆる長さのアミノ酸残基のポリマーを指すように同じ意味で使用される。ポリマーは、直鎖状の場合もあり、分岐状の場合もあり、修飾アミノ酸を含む場合もあり、アミノ酸類似体を含む場合もあり、アミノ酸以外の化学的部分が介在する場合もある。「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「ポリペプチド断片」という用語はまた、天然にまたは介入により修飾されたアミノ酸ポリマー;例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識もしくは生体活性要素とのコンジュゲーションなど他のあらゆる操作または修飾も包含する。
【0059】
本明細書で使用される「免疫原性ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチド」という用語は、宿主に投与されるとタンパク質を指向する体液型および/または細胞型の免疫応答を引き起こすことが可能であるという意味で免疫的に活性なポリペプチドを含む。タンパク質断片は、全タンパク質と実質的に同じ免疫活性を有するようなタンパク質断片であることが好ましい。したがって、本発明に係るタンパク質断片は、少なくとも1つのエピトープもしくは抗原決定基を含むか、本質的に少なくとも1つのエピトープもしくは抗原決定基からなるか、または少なくとも1つのエピトープもしくは抗原決定基からなる。本明細書で使用される「免疫原性」タンパク質または「免疫原性」ポリペプチドは、タンパク質の全長配列、その類似体、またはその免疫原性断片を含む。「免疫原性断片」とは、1種または複数のエピトープを含むことにより上述した免疫応答を誘発するタンパク質の断片を意味する。このような断片は、当技術分野で周知のあらゆる数のエピトープマッピング法を使用して同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996)を参照されたい。例えば、直鎖状エピトープは、例えば、タンパク質分子の一部に対応する多数のペプチドを固体支持体上で同時に合成し、ペプチドが支持体上に付着した状態のままで抗体と反応させることにより決定することができる。当技術分野では、このような技法が公知であり、例えば米国特許第4,708,871号;Geysen et al., 1984; Geysen et al., 1986で記載されている。同様に、コンフォメーショナルエピトープも、例えばx線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴などでアミノ酸の空間的コンフォメーションを決定することにより、たやすく同定される。例えば、上記のEpitope Mapping Protocolsを参照されたい。とりわけ、T.parvaのタンパク質に適用可能な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT/米国特許出願公開第2004/022605号で詳細に説明されている。
【0060】
本明細書で論じられる通り、本発明は、抗原性ポリペプチドの活性の断片および変異体を包含する。したがって、「免疫原性ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドが、本明細書で規定される免疫応答をもたらすように機能しさえすれば、配列への欠失、付加、および置換もさらに想定される。「保存的変異」という用語は、コードされるアミノ酸残基が変化しないかもしくは生物学的に類似の別の残基になるような、別の生物学的に類似の残基によるアミノ酸残基の交換、または核酸配列内のヌクレオチドの交換を示す。この点で、特に好ましい置換は一般に、本質的に保存的な置換、すなわちアミノ酸のファミリー内で生じる置換と予想される。例えば、アミノ酸は一般に、4つのファミリー:(1)酸性のファミリー:アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性のファミリー:リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性のファミリー:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非帯電極性のファミリー:グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは場合によって、芳香族アミノ酸として分類される。保存的変異の例は、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンなどのある疎水性残基から別の疎水性残基への置換;またはアルギニンからリシンへの置換、グルタミン酸からアスパラギン酸への置換、もしくはグルタミンからアスパラギンへの置換などのある極性残基から別の極性残基への置換;または構造的に関連するが生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないアミノ酸での、アミノ酸の類似の保存的交換を含む。したがって、基準分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさない少数のアミノ酸置換を保有するタンパク質も、基準ポリペプチドの定義に含まれる。これらの修飾により作り出されるポリペプチドは全て本明細書に含まれる。「保存的変異」という用語はまた、置換ポリペプチドに対する抗体が非置換ポリペプチドとも免疫反応するという条件で、非置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも含む。
【0061】
「エピトープ」という用語は、特異的なB細胞および/またはT細胞が応答する抗原またはハプテン上の部位を指す。「エピトープ」という用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と同じ意味で使用される。同じエピトープを認識する抗体は、別の抗体の標的抗原への結合を遮断するある抗体の能力を示す簡単なイムノアッセイで同定することができる。
【0062】
組成物またはワクチンに対する「免疫応答」とは、宿主における、対象の組成物またはワクチンに対する細胞性免疫応答および/または抗体介在性免疫応答の発生である。通常、「免疫応答」は、以下の効果:対象の組成物中またはワクチン中に含まれる1種または複数の抗原を特異的に指向する抗体の産生、B細胞の産生、ヘルパーT細胞の産生、および/または細胞傷害性T細胞の産生のうちの1つまたは複数を含むがこれらに限定されない。宿主は、新たな感染に対する抵抗性が増強され、かつ/または疾患の臨床的重症度が軽減されるような治療的免疫応答または防御的免疫応答を示すことが好ましい。このような防御は、感染した宿主が通常示す症状および/または疾患の臨床的徴候の軽減または欠如、感染宿主における回復時間の短縮および/またはウイルス力価の低下により実証されると予想される。
「動物」とは、哺乳動物、鳥類などであることが意図される。本明細書で使用される動物または宿主は、哺乳動物およびヒトを含む。動物は、ウマ科動物(例えば、ウマ)、イヌ科動物(例えば、イヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科動物(例えば、ライオン、トラ、飼いネコ、ヤマネコ、他の大型ネコ、ならびにチーターおよびヒョウを含む他のネコ科動物)、ヒツジ科動物(例えば、ヒツジ)、ウシ科動物(例えば、畜牛)、ブタ科動物(例えば、ブタ)、鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、およびヒクイドリ)、霊長動物(例えば、原猿、メガネザル、サル、テナガザル、類人猿)、フェレット、アザラシ、および魚類からなる群から選択することができる。「動物」という用語はまた、新生仔段階、胚段階、および胎仔段階を含む、全ての発生段階にある個々の動物も含む。
【0063】
特に他の説明がなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。単数形の用語「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、文脈中そうではないことが明確に示されない限り、複数形の指示対象を含む。同様に「または」という語は、文脈中そうではないことが明確に示されない限り、「および」を含むことが意図される。
【0064】
組成物
本発明は、高圧不活化微生物と薬学的もしくは獣医学的に許容される担体、賦形剤、または媒体とを含みうる、動物における応答を誘発、誘導、または刺激する高圧不活化微生物ワクチンもしくは組成物に関する。
【0065】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖もしくは分岐鎖、一本鎖もしくは二本鎖のRNAまたはDNA、またはこれらのハイブリッド体を指す。「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語はまた、RNA/DNAハイブリッド体も包含する。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、以下:遺伝子または遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離DNA、あらゆる配列の単離RNA、核酸プローブ、および核酸プライマーである。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチド、ウラシル、フルオロリボースおよびチオレートなど、他の糖基および連結基、ならびにヌクレオチド分岐鎖を含みうる。ヌクレオチドの配列は、重合後に、例えばコンジュゲーションによって標識要素でさらに修飾されてもよい。この定義に含まれる他の種類の修飾は、キャップ、自然発生のヌクレオチドのうちの1つまたは複数の類似体による置換、およびポリヌクレオチドをタンパク質、金属イオン、標識要素、他のポリヌクレオチド、または固体支持体に付着させる手段の導入である。ポリヌクレオチドは、化学合成により得ることもでき、微生物から得てもよい。
「遺伝子」という用語は、生物学的機能と関連するポリヌクレオチドのあらゆるセグメントを指すものとして広義に使用される。したがって、遺伝子は、ゲノム配列でみられるようにイントロンおよびエクソンを含むか、またはcDNAおよび/もしくはそれらの発現に必要な調節配列でみられるようにコード配列だけを含む。例えば、遺伝子はまた、mRNAもしくは機能的RNAを発現する核酸断片、または特定のタンパク質をコードし、調節配列を含む核酸断片も指す。
【0066】
「単離」された生物学的要素(核酸もしくはタンパク質または細胞小器官など)とは、それが自然発生する生物の細胞内の他の生物学的成分から実質的に分離または精製された、例えば他の染色体DNAおよびRNAならびに染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、ならびに細胞小器官である要素を指す。「単離」された核酸およびタンパク質は、標準的な精製法により精製された核酸およびタンパク質を含む。「単離」という用語はまた、組換え技術のほか、化学合成により調製された核酸およびタンパク質も包含する。
「保存的変異」という用語は、コードされるアミノ酸残基が変化しないかもしくは生物学的に類似の別の残基になるような、別の生物学的に類似の残基によるアミノ酸残基の交換、または核酸配列内のヌクレオチドの交換を示す。この点で、特に好ましい置換は一般に、上記で記載した保存的性質の置換と予想される。
「組換え」という用語とは、天然では発生しないか、または天然では見出されない配置で別のポリヌクレオチドに連結された、半合成由来または合成由来のポリヌクレオチドを意味する。
【0067】
「異種」とは、比較されている実体以外のところとは遺伝子的に異なる実体に由来することを意味する。例えば、ポリヌクレオチドが、異なる供給源に由来するプラスミドまたはベクターに遺伝子操作によって配置されることがあるが、これが、異種ポリヌクレオチドである。その天然のコード配列から取り出され、天然の配列以外のコード配列に作動的に連結されたプロモーターは、異種プロモーターである。
本発明のポリヌクレオチドは、同じ転写単位内のさらなるコード配列、プロモーター、リボソーム結合部位、5’UTR、3’UTR、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、同一または異なるプロモーターの制御下にあるさらなる転写単位、クローニング、発現、相同組換え、および宿主細胞の形質転換を可能とする配列などの制御要素などのさらなる配列、ならびに本発明の実施形態を提供するのに望ましい可能性があるあらゆるこのような構築物を含んでいてもよい。
【0068】
使用法および生成物
本発明は、以下の方法実施形態を含む。一実施形態では、動物に接種する方法であって、高圧不活化微生物および薬学的または獣医学的に許容される担体、賦形剤、または媒体を含む組成物を動物に投与するステップを含む方法が開示される。この実施形態の一態様では、動物は、ブタ科動物である。
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの共通のポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を使用する少なくとも1回のプライム投与および少なくとも1回のブースター投与を含む、プライム−ブーストレジメンを採用することができる。典型的に、プライム投与で使用される免疫組成物またはワクチンは、ブースターとして使用される免疫組成物またはワクチンと本質的に異なる。しかし、プライム投与およびブースター投与として同じ組成物を使用しうることに留意されたい。この投与プロトコールを、「プライム−ブースト」と称する。
【0069】
プライム−ブーストレジメンは、少なくとも1つの共通のポリペプチドおよび/またはその変異体もしくは断片を使用する少なくとも1回のプライム投与および少なくとも1回のブースト投与を含む。プライム投与で使用されるワクチンは、後段のブースターワクチンとして使用されるワクチンと性質が異なりうる。プライム投与は、1回または複数回の投与を含みうる。同様に、ブースト投与も、1回または複数回の投与を含みうる。
細菌抗原に基づく、哺乳動物である標的種のための組成物の投与容量、例えば、ブタ(pigまたはswine)用組成物の投与容量は一般に、約0.1〜約2.0ml、約0.1〜約1.0ml、および約0.5ml〜約1.0mlである。
【0070】
ワクチンの有効性は、最後の免疫化の約2〜4週間後に、ブタ科動物などの動物をブタ丹毒菌の毒性株で感作することにより調べることができる。同種株および異種株の両方を感作に使用して、ワクチンの有効性を調べる。動物は、IM注射またはSC注射、スプレー、鼻腔内感作、眼内感作、髄腔内感作、および/または経口感作により感作することができる。関節、肺、脳、および/または口腔からの試料を、感作前および感作後に回収し、ブタ丹毒菌特異的抗体存在について解析することができる。
プライム−ブーストプロトコールで使用される本発明の不活化微生物を含む組成物は、薬学的または獣医学的に許容される媒体、希釈剤、または賦形剤中に含有される。本発明のプロトコールは、動物を微生物の毒性形態から保護し、かつ/または感染した動物における疾患の進行を防止する。
それぞれの投与は、1〜6週間の間隔で実行することが好ましい。好ましい時間間隔は、3〜5週間であり、一実施形態によれば4週間であることが最適であり、1年ごとのブースターもまた想定される。動物、例えばブタは、初回投与時に少なくとも3〜4週齢でありうる。
【0071】
当業者であれば、本明細書の開示は例示のために示されたものであり、本発明はそれに限定されないことを理解しているものと予想される。本明細書の開示および当技術分野における知見から、当業者は、不要な実験を行うことなく投与回数、投与経路、および各注射プロトコールに使用される用量を決定することができる。
本発明の別の実施形態は、高圧不活化された免疫組成物またはワクチンと、動物において免疫応答を誘発するための有効量で送達する方法を実施するための指示書とを含む、動物において微生物に対する免疫応答または防御応答を誘発または誘導する方法を実施するためのキットである。
【0072】
本発明の別の実施形態は、高圧不活化された本発明の微生物と、動物において免疫応答を誘発するための有効量で送達する方法を実施するための指示書とを含む、動物において毒性微生物に対する免疫応答または防御応答を誘導する方法を実施するためのキットである。
本発明のさらに別の態様は、上記で記載した本発明に係るプライム−ブースト接種のためのキットに関する。キットは、少なくとも2つのバイアル:本発明に係るプライム接種のためのワクチンまたは組成物を含有する第1のバイアルと、本発明に係るブースト接種のためのワクチンまたは組成物を含有する第2のバイアルとを含みうる。キットは、さらなるプライム接種またはさらなるブースト接種のためのさらなる第1のバイアルまたは第2のバイアルを含有することが有利な場合がある。
【0073】
一実施形態では、アジュバントは、内粘膜を介する吸収の改善を促進するアジュバントを含む。いくつかの例としては、MPL、LTK63、毒素、PLG微粒子、および他のいくつかのアジュバントが挙げられる(Vajdy, M. Immunology and Cell Biology (2004) 82, 617-627)。一実施形態では、アジュバントは、キトサンでありうる(Van der Lubben et al. 2001; Patel et al. 2005; Majithiya et al. 2008;米国特許第5,980,912号)。一実施形態では、アジュバントは、不活化細菌、不活化されたウイルス、不活化細菌の一部、細菌リポ多糖、細菌毒素、または誘導体もしくは組合せでありうる。
一実施形態では、アジュバントは、H.parasuis、クロストリジウム属、ブタ免疫不全ウイルス(SIV)、ブタサーコウイルス(PCV)、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、マンヘミア属(Mannheimia)、パスツレラ属、ヒストフィルス属(Histophious)、サルモネラ属、大腸菌、またはこれらの組合せおよび/もしくは変種を含む、全細菌および/または全ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、アジュバントは、動物によるIgM、IgG、IgA、および/またはこれらの組合せの産生を増大させる。
ここで本発明を以下の非限定的な例によりさらに説明する。
【実施例】
【0074】
(例1)
デバイスパラメータの開発
本開示は部分的に、1)微生物を完全に不活化し(それらを非感染性とし)、2)微生物の免疫原性(免疫原性)を保持および/または改善する高圧デバイスを提供する。食品中(例えば、ジュース)または生物学的薬剤(例えば、血液製剤または組換え因子VIII)中の微生物負荷量を軽減するように設計された以前のデバイスは、安全で有効な高圧不活化されたワクチン成分を作製するのに極めて重要な特色を有していなかった。微生物の不活化反応速度を確立する間に、温度および圧力の極限値ならびに圧力勾配の極限値を含む境界条件を評価した。また、高圧不活化微生物の抗原性および免疫原性も評価して、デバイスの加熱/冷却機構と同様、デバイスの要件を規定する一助とした。また、デバイス作動温度の均一性もモデル化して、最適な高圧不活化条件も開発した。モデル化によるデバイス内の温度極限値を決定することにより、不活化パラメータ(圧力、時間、および温度)の検証が可能となった。
【0075】
パラメータのモデル化:計算コードであるCats3Mを使用する有限要素法を開発し、ウイルスおよび/または細菌を不活化するための高圧(数百MPa)チャンバー内の熱交換を評価するのに使用した。筺体の機械的構成の、筺体の熱応答に対する効果をよりよく理解するために、いくつかの二次元軸対称性の筺体形状についての計算を実施した。研究の目的は、温度の不均一性を制限する目標を伴って、大きい筺体容量(約100L)を設計し、生物学的不活化機構の制約を満たすことであった。高圧プロセスを開発し、高圧下で圧力をゼロとする緩和時間を伴う複数の加圧−減圧サイクルで研究した。
開発されたアルゴリズムは、プロセスを通した等温線の可視化を可能とした。これらの計算から、平均温度および時間と対比した温度の不均一性を抽出した。アルゴリズムの妥当性は、いくつかの実験的研究との比較により検証した。本発明者らは、圧力を伝える様々な流体について調べ、加圧速度および減圧速度、圧力伝導流体の初期温度、到達する最大圧力などの要因の影響を評価した。
【0076】
結果は、実験測定値との良好な一致を示し、実験プロトコールの概略を決定し、その設計を誘導するアルゴリズム(容量が4分の1リットルのピストンモードの等方圧プレス上の、実験による温度プロファイルとモデル化による温度プロファイルとの比較)を使用して、筺体の形状を定めることを可能とする。いずれの計量値も、温度を13℃とするときのCpに対する約0.16%の値(4236Jg
-1K
-1および4243Jg
-1K
-1)へと収束する。これにより、この温度における熱容量として4240±0.004Jg
-1K
-1が得られる。20℃における水の比熱は、4.1813Jg
-1K
-1[4]であり、加圧法により処理された生物学的製剤について得られた測定値と1.4%の差違を示す。生物学的流体と水との物理的特性のわずかな差違を踏まえると、これらの結果は極めて整合的であり、微生物の高圧不活化へモデルの適用可能性もまた確認された。このようにして加圧および減圧の速度、圧力伝導流体の初期温度、最大圧力を変化させることにより水について示されたサイクルのモデル化が達成され、これは生物学的流体を処理する実際の場合の代表例とした。
ここで本発明者らは本開示を示したが、当業者であれば、本明細書で論じられたパラメータの通常の最適化により、あらゆる数の微生物をうまく不活化にできると予想される。
【0077】
(例2)
高圧不活化されたブタ丹毒菌のブタ科動物における有効性
本開示のデバイスを使用して、ブタ丹毒菌を不活化した。驚くべきことに、ブタ丹毒菌を高圧不活化しようとする取り組みの中で、室温で保存した数日後、細菌がそれらの酵素系を修復する能力を呈示する「回復現象」が存在することが判明した。したがって、高圧デバイスの圧力パラメータ、温度パラメータ、および時間パラメータは、この現象を相殺するように調整しなければならなかった。37℃、4000バールで90分間にわたる不活化を含む、複数の不活化条件を探索した。
【0078】
主要活性物質(PA)を作製する3つの異なる方法:1)チメロサール;2)ホルムアルデヒドナトリウム;および3)高圧(4000バール、90分間、37℃)により、100リットルのブタ丹毒菌細菌培養物を不活化した。不活化画分の各々に由来する試料を特徴づけ、高圧不活化された画分を含む3つの画分全てにおいて、ブタ丹毒菌の防御的抗原であることが公知のタンパク質であるSpaAタンパク質(表面タンパク質抗原A:surface protein antigen A)を検出した(モノクローナルAb、ウェスタンブロット法、データ示さず)。PAで免疫化されたマウスに由来する血清は、このタンパク質に対する3種のポリクローナル抗体を含有する。さらに、組換えタンパク質であるSpaAを接種したブタに由来する血清は、マーシオレート不活化PA中および高圧不活化PA中に、タンパク質であるSpaAを認識する抗体を有する。最後に、3種のPAを蛍光SpaAモノクローナル抗体で染色したところ、マークされた細菌集団/マークされていない細菌集団の分布は、不活化方式に応じて変化した:高圧不活化細菌のうちの95%がマークされ、平均蛍光強度は24任意単位であったのに対し、マーシオレート不活化細菌のうちでマークされたのは79%に過ぎず、平均強度は7単位に過ぎなかった(
図18)。この結果は、化学不活化により、細菌中に存在する抗原性タンパク質が損傷されたことを示唆する。
【0079】
実験動物に対する接種試験:マウスに3種の不活化(マーシオレート不活化、ホルムアルデヒド不活化、および高圧不活化)ブタ丹毒菌の各々を接種し、次いで、IP注射を介する生/毒性ブタ丹毒菌で感作した。高圧不活化菌を接種したマウスの100パーセントが感作後も生存した(
図20)。
標的動物であるブタへの接種:ブタ7匹ずつの群に、化学不活化細菌もしくは高圧不活化細菌、または組換えSpaAタンパク質を接種し、次いで、生細菌を皮内注射することにより感作した(血清学的データを
図23に示す)。皮膚病変の外見をモニタリングし、病変形成に対して完全に防御されれば、ワクチンを有効であると判断した。接種を受けた全ての動物は、2種のブタ丹毒菌株(血清型1および2)に対して完全に防御された。
【0080】
高圧不活化ブタ丹毒菌により誘導されるT細胞応答。3種のブタ丹毒菌から希釈率を増大させて希釈液をつくり、それらを組換えタンパク質を接種したブタの末梢血単核細胞(PBMC)の存在下に置き、細菌SpaA抗原に対するT細胞応答をエリスポットアッセイを用いて定量化したところ、IFNが示された。この研究は、試験された全ての希釈率において、高圧不活化抗原に特異的なT細胞応答のex vitroにおける再活性化の増大を示した。加えて、特異的T細胞の頻度が減衰する接種の42日後に、この効果がなおより顕著となったことから、抗原の良好な品質(高圧不活化された画分について)が明確に示唆された。
【0081】
T細胞エピトープのマッピング:タンパク質の重複ペプチドのバンクであるLOGを使用して、多様な不活化細菌(主要活性物質:PA)により、どのT細胞エピトープが活性化されたのかを決定した。この研究は、高圧不活化されたPAを接種した動物が、いくつかのエピトープを、化学不活化PAを接種した動物よりはるかに良好に認識することを示した。
最後に、異なるワクチン調製物を接種したブタに由来する血清を、ブタ丹毒菌に対して特異的な抗体のレベルについてアッセイした。IgG1およびIgG2が誘導され、3つの不活化法のうち、高圧不活化細菌を接種した動物のIgG1力価およびIgG2力価が、化学不活化細菌を接種した動物のIgG1力価およびIgG2力価と比較して高かった。
【0082】
(例3)
レプトスピラ菌の高圧不活化
レプトスピラ菌の3つのワクチン株:Leptospira canicola、Leptospira grippotyphosa、およびLeptospira icterohaemorrhagiaeを、高圧不活化について評価した。予備試験は、3つの試験された不活化温度(10℃、20℃、および30℃)について、2500バールの圧力でレプトスピラ菌を不活化することに成功することを示した。これらの結果は、2000年にCarla Silvaにより得られた結果(C. Silva et al, 2001)を裏付けている。多数の刊行物が、レプトスピラ菌の異なる株における防御的抗原:抗原試験および凝集試験の一因である細菌表面の主要な成分であるリポ多糖またはLPS;膜貫通タンパク質であるOmpL1;およびそれらのN末端により膜内に固定され、実験動物において部分的な保護をもたらすリポタンパク質:LipL32、LipL36、およびLipL41の探索および同定に焦点を当てている(P. Cullen et al, Infection And Immunity, 2005)。
【0083】
近年では、免疫グロブリンに相似する90アミノ酸のリピートを含む表面タンパク質(LigBおよびLigA)により、実験動物の、試験された相対物に対する部分的な保護が付与されている(W. Yan et al、Microbes and Infections、2009)。
図9は、レプトスピラ菌において防御的と推定される抗原についての概略表示を示す。高圧不活化の後における、異なる細菌懸濁液の抗原性を特徴付けるために、3つのレプトスピラ菌血清型の培養物に対して、LPS、外膜に固定されたリポタンパク質(LipL32/41/46)、および毒性因子(LigA/B)についての研究を実施した。処理条件は、表2に従って、非不活化、ナトリウムマーシオレート(0.1g/l、24℃〜29℃)による化学不活化、および20℃における高圧不活化を含んでいた。
【0084】
【表2】
【0085】
全ての試験された不活化条件は、レプトスピラ菌の不活化をもたらした。不活化対照は、日常的に使用される不活化条件であり、それらの検出閾値は、数ミリリットル中の生きた細菌を検出するのに十分な程度に高感度であることが公知である。略述すると、試料を遠心分離して、その産物を制御してペレット中に不活化細菌が回収されるようにし、上清中のできるだけ多くの不活化薬剤を除去し、次いでペレット培養物を新鮮な培地中に入れる。同じ培地を、生存率試験により検証し、10個という少数のレプトスピラ細菌を播種することにより成長を同定する。不活化の後、3種類の血清:1)異なる血清型間で交差しない抗LPSモノクローナル血清;2)リポタンパク質(LIPL)に対する単一特異的ポリクローナル抗体;および3)LigA/B以外の特異的な(共通のエピトープを認識する)ポリクローナル抗体を使用して、抗原性研究を実行した。表3では、異なる抗体の性質について詳述する。
【0086】
【表3】
【0087】
ある刊行物は、高圧処理の後におけるある種の膜タンパク質の消失について述べており(M. Ritz et al, International Journal Of Food Microbiology, 2000)、それによればこれらの抗原は、遠心分離の後、不活化の前、および不活化の後に、全細菌懸濁液(またはBrutes Crops;RB)中、これらの細菌懸濁液のペレットまたは上清中で探索される。3つの株について、これらの抗原のウェスタンブロットを、
図10〜13に示す。ポリクローナル抗体は、3つの処理全てについて、抗原であるLipL32、LipL41、およびLipL46(
図10および12)を認識した。高圧不活化は、抗原性を変化させなかったが、高圧処理の後では、非不活化群または化学不活化群と比較して、LipL32抗原およびLipL46抗原のある程度の分解が記録された(とりわけ、L.grippotyphosaについて;
図12)。
【0088】
3つの処理全てについて、ポリクローナル抗体は、抗原であるLigBおよびLigA(
図11および13)を認識した。高圧不活化は、これらの抗原の抗原性を変化させず、ここで全ての考察された処理について上清分画/ペレットは変更されていない。最後に、L.icterohaemorrhagiaeおよびL.grippotyphosaについてのLPS解析の結果を、
図14AおよびBに示す。高圧不活化の後において、LPSは認識され、不活化の前および後において、検出される量は、同一である。結論として述べると、レプトスピラ菌の高圧不活化は効果的であり、それらの抗原性の変化をもたらさない。
【0089】
(例4)
百日咳菌の熱不活化および高圧不活化
1)濃縮百日咳菌懸濁液の調製
Boston Public Health Department(Massachusetts、USA)の生物学実験室により提供された百日咳菌株(参照番号:214873M1)から作製した凍結乾燥試料を、Verwey培地(J. Bacteriol. 1949;58: 127-34)中に溶解させ、25%の脱フィブリン処理したヒツジ血液を補充したボルダー−ジャング固体培地に播種するのに使用した。次いで、インキュベーション(36℃で72時間にわたる)後、細菌を1g/lの限外濾過した自己溶解性酵母抽出物(参照番号:springer 0701)を補充したVerwey液体培地に移し、36℃で約24時間にわたり培養した。次いで、細菌を、初期pH=7.3とする1g/lの限外濾過した自己溶解性酵母抽出物を補充した4.5lのコーエンウィラー培地で満たしたバイオリアクター(American Journal of Public health, 1946, 36, 371-376)に移し、35℃で、pO2の設定ポイントを26%にして培養した。650nmにおける細胞懸濁液の光学濃度が0.4に到達したら、この培養物の画分を使用して、第2のバイオリアクターに接種した。この生産用バイオリアクターを、1g/lの限外濾過した自己溶解性酵母抽出物を補充した4.5lのコーエンウィラー培地で満たした。この培養物を、35℃で、溶存酸素を26%に設定し、初期pHを7.3としてインキュベートし、接種の約20時間後に停止させる。細胞懸濁液は、1)+5℃、約21000gで約30分間にわたる培養容量の遠心分離、および2)細胞ペレットの、約14分の1の培養物上清容量中の再懸濁により濃縮した。
2)濃縮百日咳菌懸濁液の熱処理
水浴の温度を、38℃〜50℃で15分間にわたり段階的に上昇させた後に、温度を50℃〜54℃で30分間にわたり維持し、最終的に、温度を50℃から38℃へと15分間にわたり段階的に低下させるように、培養物上清中の濃縮された細胞懸濁液の熱処理を、温度パラメータの状況をモニタリングする温度モニタリングシステムを有する水浴中で実施した。
熱処理の前および後において、0.5mlのアリコートを、25%のヒツジ血液(BioMerieux;参照番号:55822)を補充した、ボルダー−ジャング固体培地を含有する3枚のペトリディッシュ(Merck;参照番号:AX029167)上に伸展させることにより、濃縮された細胞懸濁液の生存率を決定した。細菌は、ペトリディッシュの36.5℃で5日間にわたるインキュベーションの後においてカウントした(表4)。
【0090】
【表4】
【0091】
また、38℃〜50℃の温度の段階的な上昇および段階的な低下に当てられる時間に関する他の温度パラメータ設定、特に、5分〜30分で変動する時間にわたる他の温度パラメータ設定も決定した。これらの変動は、不活化プロセスに対して影響を及ぼさないことが示された。
3)熱処理された百日咳菌の濃縮物の高圧処理
高圧処理の異なる条件:30分間にわたる2000バールの条件、30または90分間にわたる3000バールの条件、30または90分間にわたる4000バールの条件、ならびに30および90分間にわたる5000バールの条件について調べた。いくつかの条件を何回か繰り返した。
前出の節に記載したプロトコールと同じプロトコールを使用して高圧処理した後、濃縮された細胞懸濁液の生存率を確認した。結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
これらの結果は、30分超にわたる3000バールの高圧処理を適用したところ、熱処理および高圧処理された濃縮物は、完全に不活化された(残存する細菌成長がない)ことを示す。3000バールを超える(例えば、4000バールまたは5000バールの)高圧処理を適用したところ、30分以下で、熱処理および高圧処理された濃縮物を完全に不活化するのに十分であった。
熱処理および高圧処理された、完全に不活化された濃縮物はまた、「回復試験」においても調べた。この試験を使用して、高圧処理ステップの直後において観察される不活化結果が、15日間の休眠期間後にも確認されるのかどうかを決定した。不活化されていることが見出された熱処理および高圧処理された濃縮物を、室温で15日間にわたり保存した。次いで、0.5mlずつの3つの試料を濃縮物から取り出し、25%のヒツジ血液を補充した、ボルダー−ジャング固体培地を含有する3枚のペトリディッシュ上に播種した。ペトリディッシュを、36.5℃で6日間にわたりインキュベートし、コロニーの存在について対照した。コロニーは検出されなかったが、試験された完全に不活化された濃縮物中、特に、熱処理および高圧処理された濃縮物であって、90分間にわたる4000バールの条件にさらした濃縮物中では、もはや生存可能な細菌が観察されなかったので、これは、回復現象が見られなかったことを意味する。
【0094】
4)百日咳菌の熱高圧不活化濃縮物の特徴付け
熱高圧不活化濃縮物、特に、90分間にわたり4000バールにさらされた細胞濃縮物の生物学的特色および解析的特色を、全細胞百日咳ワクチンを製造するための一価のバルクとして一般に使用されるマーシオレート不活化百日咳菌濃縮物の生物学的特色および解析的特色と比較した。マーシオレート処理により不活化された百日咳菌の濃縮物を、節1)に記載したプロトコールに従い調製した。
【0095】
4.1)走査電子顕微鏡
走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscopy)により、熱高圧不活化濃縮物および対照としてのマーシオレート不活化濃縮物の形態的特色について検討した。細胞濃縮物を、PBS中に2.5%のグルタルアルデヒドにより固定した後で、1%四酸化オスミウム水溶液中で後固定した。次いで、材料をエタノール中で脱水し、次いで、ヘキサメチルジシラザン中で脱水した。次いで、後続の異なる倍率でのSEM(Hitachi S4700、8KV)による観察のために、2つの試料をマイカプレート上に置いた。90分間にわたり4000バールにさらされた熱高圧不活化濃縮物(右側)およびマーシオレート不活化濃縮物(左側)の電子顕微鏡写真(倍率:30000倍)を、図に示す。2つの不活化プロセスに由来する2つの試料間では、形態の著明な変異が観察されなかった。特に、熱高圧不活化濃縮物に由来する試料中では、細菌細胞壁の細菌溶解または変形が観察されなかった。
【0096】
4.2)熱高圧不活化濃縮物の効力
脳内投与された致死用量の百日咳菌株の効果に対してマウスのうちの50%を防御する用量(ED50)を決定することにより、90分間にわたり4000バールにさらされた熱高圧不活化濃縮物の効力を決定した。この用量を、国際単位で較正された基準百日咳ワクチンのED50と比較した。効力試験は、WHO TRS第941号において言及されているWHOによる推奨に従い実行した。得られた結果は良好であり、これは、熱処理と高圧処理との併合により、不活化される調製物の効力が低下しないことを意味する。
【0097】
4.3)比毒性
WHO TRS第941号において言及されているWHOによる推奨に従い、マウスの体重増加試験を使用して、90分間にわたり4000バールにさらされた熱高圧処理濃縮物の毒性を調べた。得られた結果は良好であり、毒性の徴候を伴わなかった。
4.4)内毒素含量
全細胞百日咳ワクチンは、リムルス変形細胞溶解物アッセイ(LAL)アッセイにより定量化されたリポオリゴ糖内毒素を含有する。熱高圧不活化濃縮物の内毒素含量は、百日咳菌のマーシオレート不活化濃縮物中の内毒素含量と同じ桁数内である。
【0098】
(例4)
大腸菌封入体内で発現させたKSACタンパク質の可溶化
以下の3つの緩衝液:1)20mMのトリス、50mMのDTT、pH8;2)20mMのトリス、50mMのDTT、pH8、1Mの尿素;3)20mMのトリス、50mMのDTT、pH8、2Mの尿素中で、KSAC(USSN61/694,968からなされた出願を参照されたい)封入体を調製した。全処理時間にわたり、室温で、同じ緩衝液中で圧力を伴わずに調製されたKSAC封入体を対照として使用した。
標的圧力での加圧を48時間にわたり加え、次いで、24時間にわたり試料を減圧した。
図25は、3000バールで処理されたKSAC試料のSDS−PAGEを示す。
図26は、3000バールの圧力で処理されたKSAC試料の上清と、従来のリフォールディング/可溶化プロセスにより得られたKSACタンパク質とのHPLCクロマトグラムとを重ね合せて示す。結果は、ピークが同様であり、高圧処理により得られる可溶性タンパク質が三量体に組織化されていることを示す。
【0099】
【表6】
【0100】
可溶化タンパク質の量は、約800μg/mlであり、これは、封入体としての初期KSACタンパク質の推定量(1000μg/ml)と極めて近かった。したがって、収率は極めて高かった(75〜100%)。
図27は、尿素非含有緩衝液中の3000バールで加圧されたタンパク質により得られるDLSデータ(明色線)と、従来のリフォールディング/可溶化プロセスにより得られるタンパク質(暗色線)との重ね合せを示す。サイズ(上パネル)の全範囲は、加圧試料中で検出されるサイズの大きな対象物が少ないことを示す。数による分布(下パネル)は、圧力によりリフォールディングさせた集団の大半が、従来のプロセスによりリフォールディングさせた集団と同様のサイズであり、フォールディングも酷似することを示す。
【0101】
図28は、使用された3種全ての緩衝液について、3000バールで得られるタンパク質サイズが、従来のクロマトグラフィーによるリフォールディング/可溶化から得られるタンパク質サイズと同一であることを示す。緩衝液中に尿素を使用して、2000バールで処理する場合、タンパク質サイズは、従来のクロマトグラフィーによるリフォールディング/可溶化から得られるタンパク質サイズと同一である。尿素を使用しない場合の3000バールを超える圧力では、高圧による凝集物が出現する。尿素を緩衝液中に存在させると、タンパク質は崩壊する(10nmのサイズ)と考えられ、これは、変性が生じたことを示す。
図29は、HPLCにより決定されるKSAC可溶性タンパク質含量とQdot−blotにより決定されるKSAC可溶性タンパク質含量との比較を示す。結果は、可溶化タンパク質の最大濃度が、3000バールで処理された試料により得られることを示し、HPLC技術とQdot−blot技術との間でよく符合することを示す。2000バールで処理された試料では、尿素の存在が、可溶化収率を増大させる一助となる。4000バールで処理された試料については、HPLCが、Qdot−blotより高い収率をもたらすことから、抗原の認識の喪失が示される。
【0102】
(例3)
異なる高圧可溶化プロセスの比較:KSACタンパク質
本研究の目的は、封入体に由来するタンパク質を、異なるプロセスにより可溶化する効率を比較することである。
【0103】
大腸菌から作製されたKSAC封入体を、以下の緩衝液:a)20mMのトリス緩衝液、50mMのジチオトレイトール(DTT)、pH=8.0、b)20mMのトリス緩衝液、pH=8.0中で調製して、封入体懸濁液を形成した。
封入体懸濁液は、下記で記載される高圧処理のために、Quick Sealチューブ内に保存する。プロセスAでは、段階的な加圧を封入体懸濁液へと適用して、圧力を、1000バール/分で、0バールから3000バールへと増大させ、500バールごとに1時間にわたるプラトーを伴った(5時間後に3000バールの標的圧力に到達した)。3000バールの圧力を、48時間にわたり維持した。次いで、試料を、125バール/時間の一定速度で、24時間にわたり、3000バールから0バールへと減圧した。プロセスBでは、封入体懸濁液を、米国特許第6,489,450号に記載の方法に従い処理した。試料を、1時間で一定速度で2500バールまで加圧した。2500バールの圧力を、6時間にわたり維持した。一定速度で、1時間にわたり、圧力を2500バールから0バールへと低減する減圧を実施した。以下の表7において示される通りに試料を調製した。
【0104】
【表7】
【0105】
SDS−PAGE解析
高圧処理の後、試料を遠心分離して、上清とペレットとを分離し、SDS−PAGEでのタンパク質解析のために処理した。SDS−PAGE解析を、
図18Aおよび18Bに示す。各ウェルに、トリス緩衝液中に再懸濁させた5μlの試料(粗試料)、5μlの上清、5μlのペレットをローディングした。
SDS−PAGE上のバンド強度から計算したKSACタンパク質量を、以下の表8に示した。
【0106】
【表8】
【0107】
結果は、DTTを含有しない緩衝液を使用したところ、対照またはプロセスAで処理された試料およびプロセスBで処理された試料の上清中では、著明量のKSACが検出されないことを示す。DTTを含有する緩衝液を使用したところ、高圧(プロセスAおよびBの両方)で処理された試料上清中では、可溶性のKSACタンパク質が見出された。驚くべきことに、SAS−PAGEに由来するタンパク質定量化の結果はまた、プロセスAが、プロセスBと比較して良好な可溶化をもたらしたことも示す。この驚くべき結果は、Q−Dot BlotおよびHPLCを使用する、各高圧プロセスの可溶化収率についてのより正確な計算によりさらに確認された。
Q−Dot Blot解析
Q−Dot Blotにより試料の上清を解析して、処理により可溶化させたKSACタンパク質の量を推定した。結果を、
図30A〜30Dおよび表11に示す。
【0108】
【表9】
【0109】
DTT含有および非含有の対照試料(高圧処理なし)間では、著明な差違が観察されなかった。上清中では、可溶性KSACが見いだされなかった。Q−Dot Blotの結果により、SDS−PAGEの結果が確認された。
DTTありのプロセスAを使用して実施される処理は、KSACタンパク質の可溶化およびリフォールディング(Q−Dot Blotにより検出される)を可能とした。プロセスAを使用して、可溶性KSACタンパク質の濃度は、632μg/mLであることが見出されたが、プロセスBを使用して得られるKSACタンパク質の濃度は、約369g/mLに過ぎなかった。得られる可溶化収率は、プロセスAでは63%であり、プロセスBでは37%である。Q−Dot Blotの結果により、プロセスAは、可溶性でリフォールディングさせたタンパク質を作製するのにより効果的であることがさらに裏付けられる。
HPLC解析
図20は、対照の上清についてのHPLCクロマトグラムとプロセスAで処理された試料の上清についてのHPLCクロマトグラムとの重ね合せを示す。プロセスAで処理された試料について得られた保持時間、保持容量、および推定純度を、以下の表11に示す。
【0110】
【表10】
図21は、プロセスAで処理された試料の上清についてのHPLCクロマトグラムとプロセスBで処理された試料の上清についてのHPLCクロマトグラムとの重ね合せを示す。プロセスAで処理された試料について得られた保持時間、保持容量、および推定純度を、以下の表12に示す。
【0111】
【表11】
図22は、プロセスAで処理された試料の上清についてのHPLCクロマトグラムと、プロセスBで処理された試料の上清についてのHPLCクロマトグラムと、従来のプロセスで処理された試料(尿素処理およびDTT処理により得られる変性およびリフォールディング)の上清についてのHPLCクロマトグラムとの重ね合せを示す。プロセスAで処理された試料について得られた保持時間、保持容量、および推定純度を、以下の表13に示す。
【0112】
【表12】
【0113】
ピーク面積(プロセスAについての25251mAu対プロセスBについての10506mAU)から判断して、HPLCの結果により、プロセスAは、プロセスBより良好なKSACタンパク質の可溶化をもたらすことがさらに確認された。プロセスAおよびBのいずれも、従来のプロセス(尿素+DTT処理を使用する可溶化およびSECクロマトグラフィーによるリフォールディング)を使用して得られるKSACタンパク質のリフォールディングと極めて近接した、KSACタンパク質のリフォールディングを得ることを可能とする。
【0114】
DTTの非存在下では、プロセスAおよびBのいずれにより実施される試験も、著明な可溶性KSACタンパク質をもたらさなかった。結果は、高圧処理時において、ジスルフィド結合を切断するために、還元剤が必要とされることを確認した。しかし、予測外の驚くべき発見は、タンパク質の正確なリフォールディングを得るために、DTTを除去する必要はないことである。タンパク質を適正にリフォールディングさせるためには、DTTを緩衝液から除去しなければならないという一般的な知見とは対照的に、本出願人らは、驚くべきことに、DTTの存在が、本発明の高圧処理におけるリフォールディングプロセスに干渉しないことを発見した。本発明の高圧プロセスから得られるKSAC可溶性タンパク質は、DTTの存在下で適正にリフォールディングして三量体を形成した。
【0115】
参考文献
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