特表2015-529722(P2015-529722A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-529722(P2015-529722A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(54)【発明の名称】LAポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/02 20060101AFI20150911BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20150911BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20150911BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20150911BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20150911BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20150911BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20150911BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20150911BHJP
【FI】
   C08F283/02ZBP
   C08K5/20
   C08K5/09
   C08K3/36
   C08K3/34
   B32B27/36
   C08L51/08
   C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-525917(P2015-525917)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】FR2013051666
(87)【国際公開番号】WO2014023884
(87)【国際公開日】20140213
(31)【優先権主張番号】1257724
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クワインベシュ, セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フラット, ジャン−ジャック
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J026
4J200
【Fターム(参考)】
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4F100AH02A
4F100AH03A
4F100AK01B
4F100AK01C
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4F100BA10B
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4J002GG02
4J026AB10
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4J200AA09
4J200BA14
4J200CA01
4J200CA03
4J200DA03
4J200DA17
4J200DA25
4J200EA04
4J200EA05
(57)【要約】
本発明は、ポリマーがポリ乳酸からなる主鎖を有し、前記主鎖が複数の不飽和酸無水物グラフトを含む、ポリマー組成物であって、前記主鎖はまた活性化コモノマーグラフトを含むことを特徴とする、ポリマー組成物に関する。本発明はまた、前記ポリマー組成物に関連する製造方法及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーがポリ乳酸からなる主鎖を有し、前記主鎖が複数の不飽和酸無水物グラフトを含む、ポリマー組成物であって、前記主鎖はまた、活性化コモノマーグラフトを含むことを特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記不飽和酸無水物グラフトは、無水マレイン酸からなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性化コモノマーグラフトは、スチレンモノマーからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記スチレンモノマーは、スチレンからなることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の活性化コモノマーの量は、前記組成物において、前記活性化コモノマーが前記不飽和酸無水物の0.01モル当量から2モル当量に相当するように、0.011重量%から2.1重量%であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の活性化コモノマーの量は、前記組成物において、前記活性化コモノマーが前記不飽和酸無水物の1.1モル当量から1.8モル当量に相当するように、1.2重量%から1.9重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
10ppmから50000ppmで存在する添加剤を含むことと、前記添加剤は、抗酸化剤、UV保護剤、例えば、脂肪酸アミド、ステアリン酸及びその塩などの加工助剤、フルオロポリマー、かぶり防止剤、例えば、シリカ又はタルクなどのブロッキング防止剤、静電気防止剤、核剤並びに着色剤を含むこととを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーはまた、ポリ乳酸からなる少なくとも一つの第二の鎖を含むことを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第二の鎖は、少なくとも一つの不飽和酸無水物グラフト、好ましくは無水マレイン酸、並びに/若しくは少なくとも一つの活性化コモノマーグラフト、好ましくはスチレンモノマー及び更に好ましくはスチレンを含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の前記ポリマー組成物の製造方法であって、ラジカル発生剤、不飽和酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、並びに活性化モノマー、好ましくはスチレンモノマー及びより好ましくはスチレンの存在下における、押出機を介した、前記ポリ乳酸(PLA)系ポリマーの押出し工程を含み;この押出し工程中の温度が、前記ポリ乳酸系ポリマーが溶解状態で存在し、前記ラジカル発生剤が前記工程中に完全に分解するように選択されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記ポリ乳酸(PLA)系ポリマー、前記ラジカル発生剤、前記不飽和酸無水物及び前記活性化モノマーは、これらの要素のすべて又は一部が均一混合物を形成するために予め混合された状態で、若しくはこれらの要素のすべて又は一部が押出機に同時に導入される状態で、押出機に同時に導入されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
排気の最終工程を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも三つの隣接するポリマー層を含む、例えば、フィルム又はシートなどの多層構造、即ち、中央の結合剤形成層が二つの周辺層間の接着を確実にするという主要な役割を有する多層構造であって、前記中央の層は、請求項1から9の何れか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、多層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸、より正確には、その物理的特性を損なうことなく、特定の有利な使用特性を付与することを目的とする特定の共グラフトを有するポリ乳酸に基づくポリマー組成物に関する。本発明はまた、前記組成物を含み、共押出で使用することができ、良好な接着性を有し、及び多層構造で使用することができる結合剤に関する。
【0002】
「環境にやさしいポリマー」(再生可能ポリマー及び/又は生分解性ポリマーに基づく)の市場は、特に食品包装において、大幅な拡大を経験している。このブームは、化石原料の代わりとなるものを見つけ、汚染を減らす必要性によるものである。生物学的再生可能ポリマー及び/又は生分解性ポリマーの将来性は見て明らかであり、これらのポリマーの最も一般的に使用されるものの一つは、ポリ乳酸系ポリマー組成物からなる。
【0003】
以下、用語「ポリマー組成物」は、ポリマー、コポリマー、ターポリマーなどから形成される組成物を意味すると解される。
【0004】
これらのポリマーは、非生分解性の化石資源から得られるポリマーと比較した場合、環境への影響は限定的である。生物学的再生可能ポリマーによって、化石原料の消費を制限でき、植物栽培から得られる資源を使用できる。生分解性ポリマーは、一部は、環境中に存在する植物によって全体又は一部として吸収することができる生成物に急速に転換される。
【0005】
しかしながら、これらの環境にやさしいポリマー自体は、業界で、具体的には包装において、又はより一般的にはポリマーが極めて優れた使用特性を持たなければならない場合に、概して、必要とされるすべての仕様を実現することができない。
【0006】
実際に、この分野において、使用される構造は、具体的には、良好な機械的及び化学的特性、水バリア性及びガスバリア性並びに/若しくは十分な溶接性を有している。
【背景技術】
【0007】
必要な特性(機械的特性、化学的特性等)のレベルに到達するために、多層構造でこれらの環境にやさしいポリマーを組み合わせることが提案されている。これらの材料は一般的に相溶性がないので、この種の組み合わせは、結合剤を使用しなければ実現することができない。機能性分子でグラフトすることによって修飾されるポリマーの結合剤での使用が、当業者に知られている。
【0008】
ポリ乳酸に基づくポリマー組成物は、例えば、D.Carlson、L.Nie、R.Narayan及びP.Duboisによって1998年に発表された論文「反応押出によるポリ乳酸(PLA)のマレイン化(Maleation of Polylactide(PLA)by Reactive Extrusion)」(「応用ポリマー科学雑誌(Journal of Applied Polymer Science)」、72巻、477−485頁(1999))に記載されている。
【0009】
したがって、具体的には先述の論文で、PLAに反応単位(reactive unit)を提供するために、溶解状態のラジカル経路によって、無水マレイン酸からなる官能基をグラフトすることが既に提案されている。
【0010】
それにもかかわらず、ラジカル経路によってPLAへ無水マレイン酸グラフトを加えることには、多数の欠点がある。
【0011】
まず、無水マレイン酸グラフトを加えると、この組成物が極めて流動性を持つように、PLAのMFI(メルトフローインデックス)の著しい増加を引き起こす。ここで、フィルムの押出しを必要とする、多層構造を有する包装材などのいくつかの適用について、ポリマー組成物のMFIは、2.16キログラム未満、190℃で、理想的には、1グラム/10分から6グラム/10分(10分毎グラム)とされるべきである。
【0012】
更に、ラジカル経路によってPLAに無水マレイン酸グラフトを加えると、プラスチックの多くの領域での使用時に、さらに完全な透明性、即ち、透明フィルムの無着色又は最小限の着色が求められている場合に、PLAに、適合性のない(incompatible)非常に鮮やかなオレンジ色が与えられる。したがって、組成物は、黄色度試験(ASTM E313−96)で、65未満の値、好ましくは35未満の値、より好ましくは20未満の値を有することが望ましい。
【0013】
最後に、PLAに無水マレイン酸グラフトを加えると、溶解状態での熱安定性が低下する。
【0014】
PLAベースのポリマーは、特にポリヒドロキシアルカノエート若しくはPHAホモポリマー又はコポリマー、ポリ(アルキレンコハク酸エステル)若しくはPASs、ポリ(ブチレンコハク酸アジパート)若しくはPBSA、ポリ(ブチレンアジパートテレフタレート)若しくはPBAT、ポリ(カプロラクトン)若しくはPCL、ポリ(トリメチレンテレフタレート)若しくはPTT、熱可塑性デンプン若しくはTPS、ポリエチレンコハク酸若しくはPES、ポリブチレンコハク酸若しくはPBS、ポリ(ヒドロキシ酪酸)若しくはPHBs、例えば、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)−ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)などのヒドロキシ酪酸−吉草酸のコポリマー若しくはPHBVs、ヒドロキシ酪酸 −ヘキサン酸のコポリマー若しくはPHBHx並びにヒドロキシ酪酸− オクタン酸のコポリマー若しくはPHBOsを含む、環境にやさしいポリマーの大きな群でそれらを区別する特定の化学構造を有することに留意すべきである。
【0015】
これに関連して、PLA群から除外される、ポリカプロラクトン(PCL)、より正確には、カプロラクトン−スチレン無水マレイン酸コポリマーを含む組成物の一例を開示する、文献JP3134011が知られている。更に、これらの組成物を得るために、本文献は、約10時間にわたる約70℃での溶媒の使用を提供するが、本発明の製造方法は、根本的に異なる。最後に、この文献は、ここで生じる特定の技術的な問題を本発明によって解決することを目的とするものでない。
【0016】
したがって、無水マレイン酸グラフトを含むPLAベースのポリマー組成物は、特にそれらの機能性の点で大きな関心の対象である熱可塑性材料であるが、現在まで、従来技術は、先ほど列挙した欠点を解決できる、そのような組成物を含んでいない。
【発明の概要】
【0017】
驚くべきことに、多くの試験の後に、出願人は、無水マレイン酸グラフトを含むPLAポリマー組成物に関する上記3つの主な欠点が、非常に特殊な種類のグラフトを加えることによって、著しく低減され又は回避さえされることを発見した。
【0018】
したがって、本発明は、ポリマーがポリ乳酸からなる主鎖を有し、前記主鎖が複数の不飽和酸無水物グラフトを含む、ポリマー組成物であって、前記主鎖はまた、活性化コモノマーグラフトを含むことを特徴とする、ポリマー組成物に関する。
【0019】
本発明は、とりわけ以下の利点:
−産業転換要件を満たすレオロジー、
−より従来型の、製品の様々な用途にふさわしい透明性、即ち、まったく着色されていないこと又はごくわずかに着色されていること、並びに
−溶解状態での改善された熱安定性
を有する。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点が、以下に提示される。
−有利には、不飽和酸無水物グラフトは、好ましくは、無水マレイン酸からなり、
−有利には、活性化コモノマーグラフトは、スチレンモノマーからなり、
−好ましくは、スチレンモノマーは、スチレンからなり、
−本発明の特定の特徴によれば、前記組成物の活性化コモノマーの量は、前記組成物において、前記活性化コモノマーが前記不飽和酸無水物の0.01モル当量から2モル当量に相当するように、0.011重量%から2.1重量%であり、
−好ましくは、前記組成物の活性化コモノマーの量は、前記組成物において、前記活性化コモノマーが前記不飽和酸無水物の1.1モル当量から1.8モル当量に相当するように、1.2重量%から1.9重量%であり、
−本発明によって提供される一つの可能性によれば、前記組成物はまた、10ppmから50000ppmで存在する添加剤を含むことがあり、前記添加剤は、抗酸化剤、UV保護剤、例えば、脂肪酸アミド、ステアリン酸及びその塩などの加工助剤、フルオロポリマー、かぶり防止剤、例えば、シリカ又はタルクなどのブロッキング防止剤、静電気防止剤、核剤並びに着色剤を含み、
−本発明の特定の特徴によれば、ポリマーはまた、ポリ乳酸からなる少なくとも一つの第二の鎖を含む。
【0021】
したがって、従来、末端のポリマー(end polymer)は、一又は複数のポリ乳酸鎖が要件調製/要件の方法の間にそれ自体を固定する主鎖を有しており、これらのポリ乳酸鎖は、任意選択的に、主鎖と同一のグラフト、即ち、不飽和酸無水物グラフト及び活性化コモノマーグラフトを含み得る。本発明によるポリマーの調製中に、鎖開裂は、分岐事象(この第二の鎖を発生させる)と同時に発生することがあり、これら二つの付随する事象(開裂及び分岐)が、着手された試験において以下で提示されるように、最終的なレオロジーをもたらし、
−したがって、第二の鎖は、少なくとも一つの不飽和酸無水物グラフト、好ましくは無水マレイン酸、並びに/若しくは少なくとも一つの活性化コモノマーグラフト、好ましくはスチレンモノマー及び更に好ましくはスチレンを含むということに留意されたい。
【0022】
本発明はまた、請求項1から9の何れか一項に記載の前記ポリマー組成物の製造方法であって、前記方法は、ラジカル発生剤、不飽和酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、並びに活性化モノマー、好ましくはスチレンモノマー及びより好ましくはスチレンの存在下における、押出機を介した、前記ポリ乳酸(PLA)系ポリマーの押出し工程を含み;この押出し工程中の温度は、前記ポリ乳酸系ポリマーが溶解状態で存在し、前記ラジカル発生剤が前記工程中に完全に分解するように、選択されることを特徴とする方法に関する。
【0023】
本発明の特定の態様によれば、前記ポリ乳酸(PLA)系ポリマー、前記ラジカル発生剤、前記不飽和酸無水物及び前記活性化モノマーは、これらの要素のすべて又は一部が均一混合物を形成するために予め混合された状態で、若しくはこれらの要素のすべて又は一部が押出機に同時に導入される状態で、押出機に同時に導入される。
【0024】
有利には、本発明による前記製造方法は、排気の最終工程を含む。
【0025】
最後に、本発明はまた、少なくとも三つの隣接するポリマー層を含む、例えば、フィルム又はシートなどの多層構造、即ち、中央の結合剤形成層は二つの周辺層間の接着を確実にする主要な役割を有する多層構造であって、前記中央の層は、前述の組成物を含むことを特徴とする多層構造に関する。
【0026】
五つの隣接する重畳層を含む多層構造の従来の例では、構造は、二つの周辺層(層1及び5)を中央の層(層3)に接着するために、レベル2及びレベル4に位置する二つの結合剤形成層を含むだろう。
【0027】
本発明による組成物を含む結合剤形成層は、他の機械的/物理的/化学的特性を前記層に付与することを目的とした他の成分を含み得るということに留意されたい。
【0028】
二つの隣接する層は、特に共押出によって、当業者に周知の技術に応じた、先述の本発明による組成物を含む層と組み合わせて配置される。
【0029】
これらの二つの隣接する層のいずれか一方(又は両方)を構成し得る層の非限定的な例として、以下の文献:EP 1 136 536、EP 802 207、WO 97/27259、EP 1 022 310、EP 742 236、EP 1 400 566、FR 2 850 975、WO 01/34389、EP 2 029 672、EP 629 678、EP 1 375 594、FR 2 915 203及び FR 2 916 203に開示された層又は塗料組成物について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
用語「ポリラクチドポリマー」は、例えば、乳酸系ポリマー(PLA)又はコポリマー、若しくはグリコール酸ポリマー(PGA)又はコポリマーを意味すると解される。
【0031】
本発明の文脈では、PLAポリマーは、不飽和酸無水物及び少なくとも一つの活性化コモノマーによって共グラフトされる。
【0032】
グラフト率は、実施例に示されるように、ポリマー組成物の特性にかなりの影響を及ぼすことに留意されたい。グラフトされるモノマーの量は、例えば、不飽和酸無水物に対する、電位差測定を伴う赤外分光法又は酸塩基滴定の技術によって、及び活性化コモノマーに対する赤外分光法又はNMR(核磁気共鳴)分光法の技術によって、当業者が容易に決定し得る。
【0033】
活性化コモノマーは、不飽和の任意のモノマーを意味すると解され、この例2.25では、無水マレイン酸に対するパラメータ「e」の値よりも低いパラメータ「e」によって特徴付けられる。
【0034】
パラメータ「e」及び「Q」(このパラメータ「Q」は、パラメータ「e」と共にしばしば提示される事実を考慮して、ここでは単に指示として与えられる)は、Alfrey−Priceスキームの二つのパラメータとして当業者に知られている。より詳細に関しては、有利には、以下の出版物を参照されたい:T.Alfrey Jr.及びC.C.Price,J. Polym.Sci.,2,101(1947)。
【0035】
実際、通常のラジカル共重合では、接近するモノマーに対する成長するラジカル連鎖の極性効果は、Alfrey−Priceスキーム並びにその2つのパラメータ「Q」及び「e」によって説明される。
【0036】
二つのコモノマー間の共重合の性質は、二つのコモノマーの増加に対する値「e」間の差として増加傾向にあることがよく知られている。
【0037】
これらの活性化コモノマーの例によって、この列挙が実際は網羅的でないにせよ、スチレンモノマーが理解される。本明細書において、スチレンモノマーは、スチレンの化学構造を有する任意のモノマー又はモノマーの組み合わせを意味すると解されるべきである。スチレンモノマーの例として、以下のものが挙げられ得る:スチレン、αメチルスチレン、オルト−メチルスチレン、メタメチルスチレン、パラ−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルビフェニル、ジメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、アセトキシスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸、桂皮酸或いはアルキルシンナメート。
【0038】
活性化コモノマーはまた、1,1−ジフェニルエチレン、スチルベン、フェニルアセチレン、ビニルピリジン、2−イソプロペニルナフタレン、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、シクロペンテン、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルスルフィド、フェニルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、フラン、インドール、ビニルインドール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール及び塩化ビニルを意味すると解される。
【0039】
スチレンモノマーは、好ましくは活性化コモノマーを表し、さらにより好ましくはスチレンである。
【0040】
グラフトモノマーについて言えば、グラフトモノマーは、不飽和酸無水物グラフトと比較すると、不飽和カルボン酸又はその機能的誘導体から選択され得る。
【0041】
不飽和カルボン酸の例は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などの2個から20個の炭素原子を有するものである。
【0042】
これらの不飽和カルボン酸の機能的誘導体は、無水物、エステル、アミド及びイミド誘導体、並びにこれらの不飽和カルボン酸の金属塩(例えば、アルカリ金属塩)を含む。
【0043】
特に好ましいグラフトモノマーは、4個から10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸及びその機能的誘導体、特にその無水物である。
【0044】
これらのグラフトモノマーは、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハクシクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン及びXメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸及びその機能的誘導体、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク、シクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸及びXメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,2−ジカルボン酸無水物を含む。
【0045】
無水マレイン酸(MAHと略される)が好ましい。
【0046】
この技術分野で知られる他の成分もまた、最終的な材料の特性を高めるために、本発明のグラフトポリマーに追加され得る。これらの成分の中では、例えば、抗酸化剤、UV保護剤、脂肪アミドなどの加工助剤、ステアリン酸及びその塩、押出欠陥を防止するための薬剤として知られているフルオロポリマー、例えば、シリカ及びタルクなどのかぶり防止剤やブロッキング防止剤など、例えば、10ppmから50000ppmの含有量で、ポリマーの処理中に通例使用される添加剤が挙げられ得る。他の種類の添加剤がまた、特定の所望の特性を提供するために包含されてもよい。例えば、静電気防止剤、核剤及び着色剤を挙げることができるだろう。
【0047】
本発明による組成物の調製
無水マレイン酸によってグラフトされるPLAに基づく組成物を得るために、様々な既知の方法(反応押出法、溶液における方法、照射による方法又は固体状態における方法)は、無水マレイン酸などの機能性モノマーをPLAポリマーにグラフトするために使用され得る。一例として、無水マレイン酸のPLAポリマーへのグラフトは、ラジカル発生剤の存在下で、押出機における溶解状態で実行され得る。使用され得る適切なラジカル発生剤は、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、OO−t−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、OO−t−アミルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、アセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシドを含む。
【0048】
本発明による組成物の製造方法は、より具体的には、スチレンモノマー及び無水マレイン酸のPLAへの共グラフトに関係している。製造方法は、ラジカル発生剤、無水マレイン酸及びスチレンモノマーの存在下で、共回転二軸押出機でPLAポリマーを押し出すことにある。反応がポリマーの溶解状態で起こり、ラジカル発生剤が押出しに割り当てられる時間で完全に分解するように、温度が選択される。ラジカル発生剤分解生成物及び未反応モノマーをPLAポリマーから除去するために、排気が押出機の末端で実行されることに留意されたい。
【0049】
本発明による組成物の例示的実施形態
無水マレイン酸及びスチレンモノマーによってグラフトされたPLAに基づく組成物が、Haake PTW16/25共回転二軸押出機の中に調製された。使用されるPLAは、NatureWorksのIngeo(登録商標)2003D、使用されるスチレンモノマーは、Aldrich(登録商標)により供給されるスチレン、無水マレイン酸は、CristalMan(登録商標)、ラジカル発生剤は、アルケマにより供給されるLuperox(登録商標)101である。重量計量装置は、押出機を供給するために使用された。組成的に均一な供給を確保するために、製剤の様々な構成成分は、計量装置に充填する前に袋の中で混合された。この目的のために、PLAは、粉末形態で使用され、液体構成成分(スチレン及びLuperox(登録商標)101)が、PLA粉末に含浸された。押出条件は、流量=1kg/時間、温度=180℃、スクリュー回転数=100rpmであった。押出機には、回転ベーンポンプ(排気壁においてP=−0.95バール)を活用して、押し出し機の末端で残余の脱揮発を可能にする排気壁が装備される。押出機から出る無水マレイン酸及びスチレンによってグラフトされるPLAポリマーは、コンベアベルトで空気と接触して冷却され、次に、ペレタイザーを使用してペレット化される。導入される無水マレイン酸の量は、種々の構成成分の合計質量に対して1質量%である。導入されるLuperox(登録商標)101の量は、0.4質量%である。導入されるスチレンの量は、導入されるスチレンの量が、導入される無水マレイン酸の0モル当量から1.7モル当量を表すように、0質量%から1.8質量%である。
【0050】
組成物で実行される試験
試験される組成物は、以下のとおりである。
−第1の組成物:無水マレイン酸によって(スチレンモノマーを含まず)グラフトされるPLAに基づく組成物
−第2の組成物:無水マレイン酸及びスチレンモノマー0.5当量によって共グラフトされるPLAに基づく組成物
−第3の組成物:無水マレイン酸及びスチレンモノマー1当量によって共グラフトされるPLAに基づく組成物
−第4の組成物:無水マレイン酸及びスチレンモノマー1.2当量によって共グラフトされるPLAに基づく組成物
−第5の組成物:無水マレイン酸及びスチレンモノマー1.5当量によって共グラフトされるPLAに基づく組成物
−第6の組成物:無水マレイン酸及びスチレンモノマー1.7当量によって共グラフトされるPLAに基づく組成物
−PLA2003D組成物:NatureWorksのポリ乳酸Ingeo(登録商標)2003Dにより(無水マレイン酸グラフト及びスチレングラフトを含まず)形成される組成物
【0051】
「無水マレイン酸及びスチレンモノマーX当量によって共グラフトされる」という表現は、当該PLAにおいて、無水マレイン酸の1つの分子に対して、グラフト反応中に存在するスチレンモノマーの分子がX個あることを意味すると解される。
【0052】
無水マレイン酸又はスチレンモノマーの「グラフト」という用語は、PLA鎖に直接又は間接的にグラフトされる無水マレイン酸若しくはスチレンモノマーの任意の配列を意味すると解される。したがって、グラフトは、前記PLA鎖にグラフトされた独立した単位からなるとしてもよく、この場合、前記グラフトは、1つの無水マレイン酸単位又は1つのスチレンモノマー単位と見なされる。しかしながら、「グラフト」という用語はまた、PLA鎖にグラフトされた分岐からなるとしてもよく、前記分岐は、一又は複数の無水マレイン酸単位並びに/若しくはスチレンモノマー単位を含み、この場合、当該分岐に存在する無水マレイン酸単位の数は、無水マレイン酸「グラフト」と見なされなければならず、当該分岐に存在するスチレンモノマー単位の数は、スチレンモノマー「グラフト」と見なされなければならない。
【0053】
MFI試験
組成物で実行される第1の試験は、規格ISO1133による、2.16キログラム未満、190℃(セ氏)でのMFI(メルトフローインデックス)の測定である。
【0054】
着色試験
組成物で実行される第2の試験は、規格ASTM E313−96による、黄色度の測定である。
【0055】
熱安定度試験
組成物で実行される第3の最後の試験は、窒素気流下における、180℃での熱安定性の測定である(PHYSICA MCR301レオメーター、直径が平行平面25mm、1 rad・s−1で10分)。この熱安定性度の測定は、時間の関数として、180℃及び1 rad・s−1での粘度の%変化で表される。
【0056】
本発明による組成物の試験は、無水マレイン酸及びスチレンモノマーの共グラフトによって実行されるが、出願人は、その結果を一般化することができ、その結果には、先ほど列挙されたすべての不飽和酸無水物及び活性化コモノマーに関して、この特定の共グラフトによって取得される利点に対してわずかに劣る又は不十分な利点がおそらく含まれるということに留意されたい。
【国際調査報告】