特表2015-530009(P2015-530009A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-530009ノードスケールベクトリングのための圧縮係数に対するパラメータを選択するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-530009(P2015-530009A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(54)【発明の名称】ノードスケールベクトリングのための圧縮係数に対するパラメータを選択するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 7/40 20060101AFI20150911BHJP
   H04M 3/18 20060101ALI20150911BHJP
   H04M 11/06 20060101ALI20150911BHJP
   H04Q 3/42 20060101ALI20150911BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20150911BHJP
【FI】
   H03M7/40
   H04M3/18
   H04M11/06
   H04Q3/42 104
   H04J11/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-523256(P2015-523256)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】US2013051103
(87)【国際公開番号】WO2014015152
(87)【国際公開日】20140123
(31)【優先権主張番号】13/552,554
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】506009350
【氏名又は名称】イカノス・コミュニケーションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IKANOS COMMUNICATIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ、ステファニー・エフ.
【テーマコード(参考)】
5J064
5K050
5K201
【Fターム(参考)】
5J064AA02
5J064BA09
5J064BC16
5K050AA03
5K050BB06
5K050BB15
5K050DD21
5K050GG10
5K050HH03
5K201AA01
5K201CC07
5K201DB07
5K201DB09
5K201DB10
5K201EB03
5K201EE12
5K201EE13
5K201FA02
(57)【要約】
概して、ベクトル化DSLシステムにおける記憶装置および他の需要を低減させるために、プリコーダ係数圧縮パラメータを最適化する方法およびシステムに、本発明は関連する。係数の量子化や、周波数におけるデシメーションのような、さまざまな既存の係数圧縮技術とともに、発明の実施形態を実現できる。ある態様にしたがうと、任意の所定のチャネル条件に対するシステムの全体的なデータレートを最適化するように、マクロバンドのそれぞれに対して圧縮パラメータ(例えば、ゴロムモジュラスおよび量子化レベル)が選択される。さらなる態様にしたがうと、すべてのマクロバンドに対する圧縮された係数が、係数データを記憶させるために割り振られた利用可能なメモリを、確実に超えないように、圧縮パラメータは計算される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクトル化DSLシステムに対する係数データを最適化する方法において、
前記ベクトル化DSLシステム中の複数のマクロバンドを識別することと、
前記マクロバンドのそれぞれに対する、それぞれの係数データ圧縮パラメータを選択することと、
前記選択された係数データ圧縮パラメータにより、前記ベクトル化DSLシステムの性能を評価することと、
前記評価することによって決定された所望のシステム性能にしたがって、それぞれの係数データ圧縮パラメータの選択を最適化することとを含む方法。
【請求項2】
前記係数データの、利用可能な総サイズを識別することをさらに含み、
前記複数のマクロバンドのすべてに対する圧縮された係数データが、前記利用可能な総サイズを超えないように、係数データ圧縮パラメータを選択することを実行する請求項1記載の方法。
【請求項3】
性能を評価することは、対応するチャネル条件を識別することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記係数データ圧縮パラメータは、ゴロムモジュラスを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記係数データ圧縮パラメータは、量子化レベルを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
複数の異なるチャネル条件に対して、前記評価することと最適化することとを実行することと、
前記複数の異なるチャネル条件によってインデックス付けされたルックアップテーブル中に、最適な係数データ圧縮パラメータを記憶させることとをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
現在のチャネル条件を決定することをさらに含み、
選択することは、前記ルックアップテーブル中で前記現在のチャネル条件を調べることを含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記チャネル条件は、電気的な長さを含む請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記チャネル条件は、マッピングされた差の合計を含む請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記ルックアップテーブルに対する、利用可能な総サイズを識別することと、
前記利用可能な総サイズにしたがって、可能性ある係数データ圧縮パラメータと、チャネル条件とを、量子化することとをさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記所望のシステム性能は、前記ベクトル化DSLシステム中のアップストリームとダウンストリームとの両方の通信の全体的な最大データレートである請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記所望のシステム性能は、前記ベクトル化DSLシステム中のアップストリームとダウンストリームとの通信のうちの1つの全体的な最大データレートである請求項1記載の方法。
【請求項13】
現在のチャネル条件に対するFEXT係数を計算することと、
前記選択された係数データ圧縮パラメータを使用して、前記FEXT係数を圧縮することと、
前記圧縮されたFEXT係数を記憶させることとをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
圧縮することは、周波数デシメーションと差分コーディングを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
差分コーディングが、前記選択された係数データ圧縮パラメータから取得したゴロムモジュラスを使用する請求項14記載の方法。
【請求項16】
圧縮することは量子化を含む請求項13記載の方法。
【請求項17】
量子化が、前記選択された係数データ圧縮パラメータから取得した量子化レベルを使用する請求項16記載の方法。
【請求項18】
ベクトル化DSLシステムにおいて、
VCEと、
前記ベクトル化DSLシステムに対する係数データを最適化するように構成されている1つ以上のプロセッサとを具備し、
前記最適化することは、
前記ベクトル化DSLシステム中の複数のマクロバンドを識別することと、
前記マクロバンドのそれぞれに対する、それぞれの係数データ圧縮パラメータを選択することと、
前記選択された係数データ圧縮パラメータにより、前記ベクトル化DSLシステムの性能を評価することと、
前記評価することによって決定された所望のシステム性能にしたがって、それぞれの係数データ圧縮パラメータの選択を最適化することとを備えるベクトル化DSLシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]
本発明は、概して、ベクトル化DSL通信システムの分野に関連する。
【発明の背景】
【0002】
[0002]
デジタル加入者ライン(DSL)通信は、クロストークを含むさまざまな形態の干渉を受ける。この干渉と、ベクトル化DSLを含むデータ送信へのこの干渉の影響とを抑制するために、さまざまな技術が開発されている。ダウンストリームモデムとアップストリームモデムとの間で送信しなければならないベクトリングに関連するデータの量は、ベクトル化DSLシステムに対して重要である。ベクトリング制御エンティティおよび/または他のベクトリングモジュールのような、アップストリームデバイスによって、クロストークに関連するベクトリングデータも、記憶し、更新し、操作し、および/または、処理しなければならない。
【0003】
[0003]
同じ場所に配置されたトランシーバのベクトル化グループの信号におけるクロストーク(すなわち、FEXT)干渉を、消去または事前消去することによって、ツイストペアDSLネットワークにおいて固有であるクロストークを、ベクトリングは緩和させる。すべてのトランシーバからの、および、すべてのトランシーバへのクロストークは、個々のトランシーバにより使用されるすべてのトーン(周波数)に対する行列(チャネル行列)として記述される。消去を実行するためには、ベクトル化グループに参加している各トランシーバからの信号に、および、各トランシーバへの信号に、ベクトル処理システムがアクセスしなければならず、チャネル行列の逆(または、おおよそ逆)を記述する係数において、消去情報は具現化される。係数の数は、ベクトル化グループ中のDSLラインの数の二乗で増加するので、そして、以前のシステムは、固定されたサイズ数のすべてのユニットおよび周波数に対する係数を記憶しているので、ベクトル化システムにおけるメモリ要件は、ベクトル化グループがより大きくなるとともに急速に増加する。
【0004】
[0004]
ベクトル化システムにおけるこれらの需要を取り扱うための、ある従来のアプローチが存在する。1つのアプローチは、部分消去と呼ばれている。部分消去技術は、ライン選択(すなわち、主妨害DSLラインに対する係数のみを保持すること)およびトーン選択(すなわち、主妨害トーンに対する係数のみを保持すること)を含むが、これらの両方法は、消去されたトーンおよび/またはラインを監視するために、管理(例えば、ソフトウェア、ファームウェアを管理すること)を要求する。ネットワークの特性および動作条件は経時的に変化するので、これらの監視する機能は、条件が変化しても維持しなければならない。さらに、部分消去は、定義により、消去されていないチャネル上の性能を害する。
【0005】
[0005]
共通して所有している出願13/002,213および13/189,095の内容は、その全体が参照によってここに組み込まれ、これらの内容は、ベクトル化DSLシステムにおける、メモリ、転送、処理の需要を低減させる、さまざまな有用で貴重な技術を説明しており、すべての利用可能な犠牲、妨害およびトーン(すなわち、ノードスケールベクトリング)に対するプリコーダ係数を管理するために実現することができる。しかしながら、さらなる改善のための機会が残っている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]
概して、ベクトル化DSLシステムにおける記憶装置および他の需要を低減させるために、プリコーダ係数圧縮パラメータを最適化する方法およびシステムに、本発明は関連する。同時係属中の出願において開示されているさまざまな係数圧縮技術とともに、本発明の実施形態を実現できる。ある態様にしたがうと、任意の所定のチャネル条件に対するシステムの全体的なデータレートを最適化するように、各マクロバンドに対して圧縮パラメータ(例えば、ゴロムモジュラスおよび量子化レベル)が選択される。さらなる態様にしたがうと、すべてのマクロバンドに対する圧縮された係数が、係数データを記憶させるために割り振られた利用可能なメモリを、確実に超えないように、圧縮パラメータは計算される。発明の実施形態は、複数のチャネル条件に対する最適な圧縮パラメータを事前計算し、従来のVCEチップによって使用されるメモリ中に簡単に適合できるサイズのルックアップテーブル中に、パラメータを記憶させる方法を提供する。
【0007】
[0007]
これらおよび他の態様の増進において、本発明の実施形態にしたがったベクトル化DSLシステムに対する係数データを最適化する方法は、ベクトル化DSLシステム中の複数のマクロバンドを識別することと、マクロバンドのそれぞれに対する、それぞれの係数データ圧縮パラメータを選択することと、選択された係数データ圧縮パラメータにより、ベクトル化DSLシステムの性能を評価することと、評価することによって決定された所望のシステム性能にしたがって、それぞれの係数データ圧縮パラメータの選択を最適化することとを含む。
【0008】
[0008]
これらおよび他の態様の付加的な増進において、本発明の実施形態にしたがったベクトル化DSLシステムは、VCEと、ベクトル化DSLシステムに対する係数データを最適化するように構成された1つ以上のプロセッサとを含み、最適化することは、ベクトル化DSLシステム中の複数のマクロバンドを識別することと、マクロバンドのそれぞれに対する、それぞれの係数データ圧縮パラメータを選択することと、選択された係数データ圧縮パラメータにより、ベクトル化DSLシステムの性能を評価することと、評価することによって決定された所望のシステム性能にしたがって、それぞれの係数データ圧縮パラメータの選択を最適化することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[0009]
付随する図面とともに、発明の特定の実施形態についての以下の記述をレビューする際に、本発明のこれらおよび他の態様と特徴が、当業者に明白となろう。
図1】[0010] 図1は、本発明の実施形態が実現できる(MIMO)DSLシステムである。
図2】[0011] 図2は、電話会社のバインダケーブルからの、0から30MHzまでの典型的なFEXTチャネル応答である。
図3】[0012] 図3は、本発明の1つ以上の実施形態にしたがった、ベクトル化DSLシステムのブロックダイヤグラムである。
図4】[0013] 図4は、発明の実施形態にしたがった、ベクトル化DSLシステムに対する最適な圧縮パラメータを取得する例示的な方法論のフローチャートである。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0010】
[0014]
当業者が発明を実施できるように、発明の実例となる例として提供している図面を参照して、本発明をここで詳細に説明する。とりわけ、以下の図面および例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定することを意味しているのではなく、いくつかのまたはすべての、説明または図示した要素の交換を通して、他の実施形態が可能である。さらに、本発明のある要素は、既知のコンポーネントを使用して、部分的にまたは完全に実現できる場合、このような既知のコンポーネントのうち、本発明を理解するために必要とする部分のみを説明し、発明を曖昧にしないように、このような既知のコンポーネントのうちの他の部分の詳細な説明は省略する。ソフトウェア中で実現するとして説明する実施形態は、それに限定すべきではなく、ここで特定しない限り、当業者に明白となるように、ハードウェア中で、または、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで、および、その逆で実現する実施形態も含むことができる。本明細書において、単数のコンポーネントを示す実施形態は限定的であると見なされるべきでなく、むしろ、ここで明示的に示さない限り、複数の同じコンポーネントを含む他の実施形態を含むように、そして、その逆も発明は意図している。さらに、明細書または特許請求の範囲における任意の用語について、明示的にその様に述べていない限り、一般的でない、または、特別な意味に帰すると、出願人は意図していない。さらに、ここで実例的に言及している既知のコンポーネントに対する現在および将来の既知の均等物を、本発明は含んでいる。
【0011】
[0015]
概して、本発明の実施形態は、ベクトル化デジタル加入者ライン(DSL)システムにおける改善された性能を可能にする。
【0012】
[0016]
クロストークがないときは、離散マルチトーン(DMT)DSLモデム技術を使用して、おおよそ1,524メートル(5,000フィート)までの距離上を毎秒10から100メガビットで伝えるために、理論上は、既存の銅電話インフラストラクチャを利用することができる。DMTモデムは、利用可能な帯域幅を、多くの(「トーン」、「周波数」、および/または「ビン」とも呼ばれる)副搬送波に分割し、副搬送波は同期化され、デジタルQAMデータにより独立して変調されて、ネットワークと加入者との間の集約通信チャネルを形成する。DMTベースのDSLシステムは、典型的に、周波数分割多重化(FDM)を使用して、ダウンストリーム(すなわち、DSLAM/COからCPE/ユーザへの)方向またはアップストリーム(CPE/ユーザからDSLAM/COへの)方向のいずれかに、特定の副搬送波を割り当てる。このFDMストラテジーは、近端クロストーク(NEXT)を制限する。無線周波数干渉(RFI)、および、他のタイプの周波数選択ノイズ(または干渉)もしくはチャネル分散があるときに、DMTシステムは、典型的に非常にロバストである。なぜなら、システム要件と所望のビットエラーレートとを満たすために、適切な量のデータと電力により、各副搬送波を独立して変調できるからである。
【0013】
[0017]
典型的な電話バインダケーブルは、10から50本の間のシールドされていない銅ツイストペア線を、典型的に含んでいる(これらのバインダは、その後、より大きなケーブル中にバンドルされる)。当業者によく知られているように、製造における変動や、不完全なケーブルインストール(例えば、屈曲等)が原因で、バインダ内の(および近接バインダ間の)各ツイストペア線間に、かなりのレベルのFEXTが生じる。典型的なケーブル構成や、インストールや、配備技術の結果として、ケーブル中のかなりの距離の間、各ツイストペア線は、そのバインダの中(または外)で、他の多くのツイストペア線に物理的に隣接している。製造の変動の結果として、FEXTレベルにおける変動があるが、 正味の結果として、すべての銅ペア線は、ケーブル中の実質的に1つおきの銅ペア線上に、ある量のFEXTを伝える。多くの例において、FEXTは、ライン上の背景ノイズレベルと同じか、または、それよりも40dBより大きくなることがあり、クロストークは周波数とともに典型的に増加する。少なくとも、しばしば、5から10よりも多い、ラインの性能に影響する妨害を、それぞれ特定のラインが有していることを、ケーブル測定は示している。結果として、比較的短いループ上のDMT DSLシステムにおいて高いデータレートに到達する際に、FEXTは主障害である。
【0014】
[0018]
典型的なケーブル構成やインストールや配備技術の結果として、多くのループ上のDMT DSLシステムにおいて高いデータレートに到達する際に、FEXTは主障害である。「ベクトリング」と称される最新の信号処理は、部分的に、または、完全に、銅電話ケーブル内のツイストペア線間のFEXTを消去して、劇的に、より高いデータレートを可能にする。ベクトリングは、電話ケーブル中のDSLライン間の通信を調整し、通信は、DSLAM(DSLアクセスマルチプレクサ)として知られている中央位置において、すべて終端する。DSLモデムを有効にベクトリングするために、モデムは同一のDMTシンボルクロックに同期化されなければならず、予め配列されている(各モデムに対して一意的な)トレーニングデータパターンを持つ、同期化トレーニング/追跡期間を有し、妨害−犠牲モデムの特定のペア間のクロストーク特性を、犠牲モデムが識別するのを可能にする。DSLシステムに関係するさまざまな適用可能な標準規格と、それらのインプリメンテーションとにおいて説明されているかもしれない1つ以上の技術を含んでいる、このようなシステムにおけるクロストークを識別するためのさまざまな技術があることが、当業者によって正しく認識されるだろう。
【0015】
[0019]
「クロストークトポグラフィー」、または、マッピングは、典型的に、トレーニング、追跡、および、これらに類するものの間に決定される、DSLライン間のさまざまなインターラクティブ/クロストークの関係性の行列として表される。予め歪められたモデム信号が、そのカスタマー側のモデムに到達するとき、干渉FEXTが打ち消されて、干渉FEXTの影響をなくし、または、低減させるように、ダウンストリーム(例えば、DSLAMからカスタマーサイトへの)方向において、事前補償すること(例えば、プリコーディング)を使用して、他のモデム(すなわち、モデムのFEXTが所定のモデムの信号に影響するモデム)の送信波形を使用して、モデムの送信波形を予め歪める。アップストリーム(例えば、カスタマーサイトからDSLAM)方向において、DSLAMにおけるMIMO(複数入力複数出力)空間フィルタリングは、アップストリーム受信側において、アップストリームFEXTを消去する。よく知られているように、LMS(最小2乗平均)適応アルゴリズムまたは他の最小自乗タイプの方法を使用して、消去係数を識別し、更新できる。
【0016】
[0020]
ここで開示され、特許請求の範囲に記載されている低減されたメモリDSLの実施形態は、技術および装置を利用して、ベクトル化DSLシステムにおける「ベクトリングデータ」(または、「FEXTデータ」またはこれに類するもの)の記憶、転送および処理する(例えば、受信されたエラー信号、あるいは、所定のDSLライン上のFEXTの代わりである他の信号や、FEXT補償フィルタ係数や、FEXTチャネル推定または係数や、FEXT補償行列Gや、このような情報を伝えるバックチャネル通信信号等を、記憶させ、送信し、および/または処理する)需要を低減させる。初期化およびトレーニングの間、FEXT結合情報は、DSLモデムの測定から導出される。ここで記述するいくつかの実施形態において、FEXT結合はトーンのサブセットに対してのみ推定され、その後、係数を再構築することや推定すること等によって、すべての使用するトーンに対して、FEXTは消去される。いくつかの実施形態は情報損失を伴い、結果として、理想的な係数と再構築された係数との間の不一致となる。このような再構築のエラーは、消去されていないFEXT、または、残余のFEXTとして出現して、受信機において、背景ノイズと結合する。(典型的に、15ビット/トーンまでに制限される)ビット割り振りは、信頼性のある通信をサポートするために必要とされる信号対ノイズ比(SNR)を制限する。また、ツイストペア線中の回避できない信号減衰は、周波数とともに増加するので、許容可能な残余のFEXTレベル(すなわち、残余FEXTのさらなる抑制によって利益が得られない程度の、少ない劣化をさせるFEXTの量)はトーン周波数とともに変化する。したがって、ここでの実施形態における量子化の使用は、トーン周波数の関数として変化する。いくつかの実施形態において、完全なベクトル化DSLシステムに対する全体的なデータレートの目標を調べることによって、量子化間隔のセットが導出される。
【0017】
[0021]
所定の犠牲/妨害ペアに対して、FEXT結合は、周波数にわたって強く相関することを、本発明者は認識している。この相関は、線形の予想フィルタとして具現化することができるので、何らかの周波数におけるFEXT結合情報を使用して、他の周波数における結合を予想する。予想エラーが計算された場合、この予想エラーの分散は、FEXT結合自体の分散と比較して小さいので、トーンの大きなセットを通して予想エラーシーケンスとともに使用される、開始トーンにおけるFEXT結合情報は、トーンの大きなセットに対するFEXT結合を捕捉するのに十分である。このような情報に対して要求されるメモリ記憶、送信および処理の需要は、したがって、トーンのセットに対してFEXT結合に要求されるものよりも少ない。このような実施形態においてすべてのトーンにおけるFEXT係数を再構築するために、例えば、1階差分を使用する予想フィルタにおいて、開始状態とともに、線形の予想フィルタの反転を用いて、エラーシーケンスは処理され、1階差分において、前のトーンにおける係数値は現在のトーンにおける値から引かれる。他の実施形態において、離散コサイン変換のような線形変換は、FEXT結合の利用可能な推定のセットを変換する。FEXT結合の推定における強い相関は、変換された推定の多くの値が小さくなり、忠実度における最小限の損失とともに廃棄できることを意味している。調節可能なしきい値を使用して、保持すべき変換値を選択することができる。よって、ベクトル化DSLシステムでは、記憶させ、送信し、処理するために減る量は少ない。先行のアプローチのうちの1つ以上が適用された後、結果のシーケンスは、不均一な発生頻度を有するシンボル(数)からなる。いくつかの実施形態はその後、(損失のない)可変長エントロピーコーディングを適用して、メモリ記憶、送信および処理の需要をさらに低減させる(例えば、演算コーディング、ハフマンコーディング、および、ゴロムコーディング。これらは、シンボルの発生頻度と反比例する長さを有するコードワードにシンボルを割り当てることを伴う−より頻繁なシンボルが短いコードワードに割り当てられるので、メモリ、帯域幅および/または処理の利点が生じる。)。
【0018】
[0022]
効率的なFEXTキャンセラまたはプリコーダにするために、経時的に変化することがある物理的なループプラントの(モデムによって認識されるような)外見上の状態を、係数は反映すべきである。これを達成するために、特別なシンボルを使用して、チャネル測定を時々行い、係数に対する加法的な更新を計算する(更新は、前の係数に加えられて、所定の妨害/犠牲ペアおよびトーン周波数に対する新たな係数を生成させる)。予想フィルタと変換方法の両方は線形であるので、インプリメンテーションを簡単にするために、予想フィルタまたは変換が更新に適用され、その後、フィルタリングされた更新または変換された更新が、係数の前のセットに追加される。可変長コーディングの使用は、更新プロセスを複雑化する。なぜなら、更新の結果は、異なる記憶要件を有する(例えば、係数の新たなセットが大きすぎて、利用可能なメモリに適合しない)かもしれないからである。システムをオーバーフローから守るために、ここでの低減メモリベクトル化DSLの実施形態は、忠実度とメモリサイズとを制御する調節可能なパラメータを使用できるので、システムは、係数が利用可能なメモリ中に適合することを保証するパラメータの組み合わせを用いて開始し、予め決められた制限に到達するまで、後続する反復が、係数のセットをより良くするだろう。
【0019】
[0023]
よって、低減メモリベクトル化DSLの実施形態は、(1)CPE側のFEXTデータコレクタからDSLAMへのデータ送信に対して、低減された帯域幅負担を有するベクトル化DSLシステム、および/または、(2)(例えば、DSLAMまたはこれに類するものの内で処理するためのFEXTデータにアクセスするために)FEXT消去データに対して、低減されたDSLAMデータ記憶、送信および処理の要件を有するベクトル化DSLシステムをもたらす。
【0020】
[0024]
U人のユーザを持つベクトル化グループに対して、(すべての周波数上のすべての妨害に対する、すべてのFEXTを消去する)「フル」FEXT消去スキームは、DMTシンボル期間毎にUのオーダーの計算を要求する。ほぼ4,096トーンを有し、そして、10人のベクトル化ユーザのみを有するDSLシステムでは、「フル」FEXT消去に対する複雑性レベルは、毎秒の10億のオーダーの浮動小数点演算(すなわち、フロップス)であり、FEXT軽減デバイス中の電力消費は、FEXT軽減アルゴリズムの複雑性に比例する。任意のフルFEXT消去に伴うこのような程度の複雑性は、現在のところ実用的でないことを当業者は正しく認識するだろう。さらに、このようなシステムにおける完全な消去は、消去係数を発生させて更新する際の不完全さや、このようなシステムにおいて使用する処理技術における不完全さが原因ではなさそうである。
【0021】
[0025]
図1は、低減メモリベクトル化DSLの実施形態を実現できる例示的なベクトル化グループDSLシステム80(例えば、VDSL、VDSL2、ADSL等)を図示し、システム80は、アップストリーム端DSLデバイス(例えば、CO側DSLAM82)と、バインダ85中でバンドルされているツイストペア線84を介してDSLAM82に結合されている複数のUダウンストリーム端DSLデバイス(例えば、CPE83)とを備えている。DSLAM82は、ライン84に結合された、クロストークプリコーダ87とクロストークキャンセラ88とを含む。ベクトリング制御エンティティ(VCE)86は、プリコーダ87およびキャンセラ88に結合され、1つ以上のチャネル81を介してCPE83に結合されている(CPE83とVCE86との間のチャネル81は、CPE83からDSLAM82へのアップストリーム論理データパスであってもよく、ライン84とは物理的に別でないかもしれない)。キャンセラ88、プリコーダ87およびVCE86の他のコンフィギュレーションは既知であり、さまざまな実施形態において使用できる。CPE83は、チャネル81を介してDSLAM82へFEXT消去データ(例えば、エラー信号、量子化データ等)を送信し、DSLAM82は、エラーフィードバック信号を抽出して、VCE86に送信する。DSLAM82は、オプション的にネットワーク管理システム(NMS)89に結合してもよい。ネットワーク管理システム(NMS)89は、DSLAM82と交換したデータを処理するネットワーク管理構造とすることができる。他の実施形態では、スプリッタ、フィルタ、管理エンティティ、ならびに、他のさまざまなハードウェア、ソフトウェアおよび機能性を含むように、DSLAM82を修正することができる。DSLAM82は複数のDSLトランシーバ(例えば、VTU−O)を備え、複数のDSLトランシーバ(例えば、VTU−O)は、VCE86、キャンセラ88、プリコーダ87、NMS89、および/または、ライン84間の信号を交換する。DSLトランシーバを使用して、DSL信号が送受信され、DSLトランシーバは、モデムやモデムカードやラインカード等とすることができる。CPE83はそれぞれ、DSLトランシーバ(例えば、VTU−R)を備え、ライン84を介してデータをDSLAM82に送信する。当業者によって正しく認識されるように、他のさまざまなアップストリーム端とダウンストリーム端のコンフィギュレーションやDSLデバイスを使用でき、図1の例示的なコンフィギュレーションは限定的なものではない。
【0022】
[0026]
プリコーダ87は、部分的なクロストーク消去を使用して、ダウンストリームDSL送信におけるクロストークを事前消去して、ダウンストリーム信号クロストークノイズを低減させる。これは例えば、ここでの低減メモリベクトル化DSLの実施形態とともに使用できる多数のダウンストリーム帯域およびアップストリーム帯域を有する典型的なDSLシステム帯域プランを使用する。システムの各入力から各出力へのシステム(またはチャネル)応答によって、図1のようなMIMOシステムは特徴付けられる。線形のシステムに対して、システム応答は線形関数である。例えば、入力1ないしUおよび出力1ないしUは、システム応答Hij(i≠jに対して、FEXTチャネル応答/係数、および、i=jに対して、ダイレクトチャネル応答/係数)、すなわち、H11、H12、・・・、H1U、H21、・・・、HU1、HU2、・・・、HUUを有している。したがって、任意の所定の出力は、(1からUまでの)すべての入力からその出力までの集約応答である。(i,j=1:U)を有するシステム応答Hijを識別するために、テスト信号入力データ(例えば、パイロットおよび/または直交トレーニングまたは追跡シーケンス)と、CPEモデム(すなわち、ダウンストリーム端DSLデバイス)によって受信され、観測され、測定され、および/または、収集された、システムのテスト信号出力データとを用いて、入力を刺激することができる。受信モデムによって受信されたデータ、または、計算されたデータは、典型的に、エラー信号である。クロストークが存在していない場合、各モデムは、何がトレーニング/追跡データ入力であり、何がモデムが受信すべき出力信号であるかを知っている。受信モデムは、予期される送信出力と、実際の(FEXTが混乱させた)送信出力との間の差を表しているエラー信号を計算する。所定のDSLラインのFEXT干渉の表示として、DSLAMに、または、これに類するものに、これらのエラー信号を送信できる。DSLAMは、すべての関連するCPEモデムからこれらのエラー信号を収集して、データを相関させて、関連するDSLラインにおけるクロストークの影響を表わすHij(k)係数を決定する。
【0023】
[0027]
したがって、各サブチャネルは、独立したMIMOシステムになり、MIMOシステムのチャネル応答は、独立して(そして同時に)識別することができる。ダイレクトシステム応答Hiiは、各モデム自身のツイストペア線からの単一サブチャネルに対する、所望のモデム応答信号に対応し、残りの項Hijはここでi≠j、同一のケーブルまたは異なるケーブルにおける他のラインからのFEXTに対応する。トーングループがいずれの送信方向にも割り当てられている場合、このようなシステムは、アップストリーム方向とダウンストリーム方向の両方において存在する。多数のCPEモデムに結合されたDSLAMに関連して、低減メモリベクトル化DSLのさまざまな実施形態を、ここで記述する。しかしながら、当業者によって正しく認識されているように、他のDSL送信およびベクトリングの設定および構造において、他の実施形態が使用できる。例えば、光ネットワーキング終端(ONT)や単一の中継器等のような、中間DSLラインデバイスに、DSLラインはDSLAMを結合するかもしれない。同様に、DSLラインのアップストリーム端は、DSLAM以外の、デバイスまたは装置を用いて終端するかもしれない。すなわち、DSLラインがダウンストリームトランシーバとアップストリームトランシーバとを用いて終端する、さまざまなDSL設定において、本発明の実施形態は使用できる。
【0024】
[0028]
以前のDSLAM側のベクトリングシステムは、(例えば、電話会社側のデバイスから送信されたトレーニングデータに基づいて、)DMTシステム中のすべてのトーンに対して、各CPEモデムがFEXT応答を測定/収集することによって、送信プリコーディングを実行し、チャネル推定とさらなる処理のために、各トーンの収集された測定を電話会社/DSLAM側のデバイスに(バックチャネルを通して)送っていた。当業者に知られているように、Hijの値自体ではなく、クロストークトレーニングの後に、CPEによってDSLAMに送られた各値が、Hijの代わりになることがある(一般的に使用される既知である表記または量におけるこのような変形は、詳細に議論しない)。代替的に、CPEは必要とされるFEXTチャネル推定処理を実行することができ、チャネル推定を電話会社/DSLAM側に、バックチャネルを通して送ることができる。FEXTチャネル特性は、経時的に変化するので、これらのチャネル推定は、典型的に、時間にわたって定期的に、追跡され、更新される。ベクトル化DSLシステムにおいて、FEXTデータのアップストリームバックチャネル通信は、かなりのボトルネックとなることがあり、FEXTデータの後続の記憶は、相当なメモリ負担となることがある。(フルモデムトレーニングおよび初期化より前の)この予備的なスタートアップ期間の間には、低いビットレートの制御チャネルのみが利用可能であるので、FEXTチャネル測定またはこれに類するもののバックチャネル通信は、特に問題となる。この通信ボトルネックは、システムトレーニング時間を遅くし、有用なシステム動作を先送りにすることがある。普通のシステム動作の間でも、バックチャネル通信は問題である。なぜなら、より低いアップストリームレートの犠牲の下、より高いダウンストリームレートのために(例えば、10:1の比によって)、ほとんどのDSL周波数帯域スキームが偏るからである。したがって、バックチャネル通信は、利用可能な総アップストリームデータレートのかなりの部分であるかもしれない。FEXTデータ測定を更新するために、十分な帯域幅が割り振られていない場合には、更新は低速となり、チャネル変動のタイムリーな追跡を妨げるかもしれない。FEXTチャネルデータの記憶は、関連した問題である。一般的に、U人のユーザを持つシステムは、各DMTトーンに対して計算および記憶するU個の総チャネル応答(U個の所望ダイレクトチャネル応答およびU*(U−1)FEXTチャネル応答)を有している。いくつかの最適化技術は負担を低減させるが、記憶要件は依然として非常に大きく、厄介であることがある。
【0025】
[0029]
上記で着目したように、近接トーンのFEXT係数間のインクリメントな変化が小さいことを、DSLケーブル上の測定は示している。これは、すべてのトーンを通してFEXTがほぼ一定であることを意味しているのではなく、むしろ、FEXTが、1つのトーンから次のトーンに比較的スムーズに変化することを意味している。例えば、図2は、電話会社のバインダケーブルからの、0から30MHzまでの例示的なFEXTチャネル応答曲線を示している。DMTベースのDSLシステムにおけるサブチャネル間隔は、典型的に4から8kHzのオーダーにある。見られるように、完全な0から30MHzまでの帯域を通して大きな変動があったとしても、近くのサブチャネル間のFEXTにおけるインクリメントな変化は比較的小さい。ほとんどのFEXT消去スキームにおいて、ゴールは、システム入力xとシステム出力yとの間の関連性がダウンストリームベクトリングに対してy=HGx+nとして定義されている組み合わされたシステムである。ここで、Gは入力データに事前適用され、行列積HGは対角行列を近似していて、Hは上記で議論したMIMOシステム送信データ値Hijを含む行列であり、Gはシステムによって導出されたFEXT事前キャンセラ係数Gijの行列であり、nはノイズ(あるいは、チャネルまたはエレクトロニクスにおける他の相関のない歪みソース)である。アップストリームベクトリングに対して、FEXT補償は、事後キャンセラおよびy=G(Hx+n)として実現される。ダウンストリームまたはアップストリームベクトリングのいずれかに対して、最大限の正確さでGを導出する(すなわち、Gijの最大限に正確な各係数値を計算するための)1つの方法は、逆行列を利用するので、トーンkにおける、ユーザiとユーザjとの間のFEXT係数がHij(k)である場合、事前キャンセラまたは事後キャンセラ係数はGij(k)=Hij−1(k)である。当業者によって正しく認識されるように、これらのクロストーク消去係数を計算する他の方法がある。しかしながら、Hij(k)からHij(k+1)へのインクリメントな変化は小さく、ここでのいくつかの低減メモリベクトル化DSL実施形態は、連続するトーンにおいて、Gij(k)のマイナーなインクリメントな変動を活用する。ダウンストリームベクトリングと、CPEが提供するダウンストリームFEXTデータ(すなわち、CPEによって収集されて、処理のためにDSLAMにアップストリーム送信されたエラー信号)とに関連して提供した例示的な実施形態は、アップストリームベクトリングに等しく適用でき、所定のグループのCPEは、テスト信号入力データアップストリームをDSLAM(アップストリーム端デバイス)に送信して、アップストリーム送信に関連するFEXTデータを発生させる。唯一の重要な差は、アップストリーム帯域幅使用量を低減させるための低減メモリ送信の利益が、余り適切でないことである。なぜなら、CPEモデムによってよりもむしろ、DSLAM(または他のアップストリーム端デバイス)によって、FEXTエラー信号が受信され、観測され、測定され、および/または、収集されるからである。
【0026】
[0030]
実用的な例示的ベクトル化DSLシステムは、2,500トーンを使用して、128人のユーザを有することができ、ユーザ毎に32個の消去係数(各ユーザに対して、32の上位のFEXTソース)を導く。逆行列Gを計算して実現するために、最大限の正確さで動作するこのようなシステムは、1000万の係数の記憶を要求し、各係数はおおよそ20〜32ビットを要求する。当業者によって正しく認識されるように、このようなシステムにおいて係数を記憶させ、送信し、そして、処理するための帯域幅およびメモリを著しく低減させることは、かなりの利益を表す。DSLAM側の機器における総メモリ記憶容量/サイズは関心事であるが、係数メモリ帯域幅は、より大きな関心事になるかもしれない。このシステムが4kHz DMTシンボルレートを使用する場合、40ギガワードのメモリ帯域幅が要求される(各DMTシンボルに対して各係数をロードしなければならない)。2つの記憶オプション−オンチップとオフチップのメモリ−両方は、性能に否定的な影響を与える欠点を有している。40MBの例示的なメモリ要件に対して、ASICまたはFPGAのインプリメンテーションのためのオンチップメモリは、ダイサイズにおいて非常に高価である(ASIC)か、単に利用可能でない(EPGA)かである。この例示的なメモリ量は、オフチップの汎用DRAMを用いて可能であるが、しかしながら、メモリとベクトルプロセッサとの間のチャネルの帯域幅は、低速過ぎて、(各DMTシンボルの250マイクロ秒期間において、メモリのコンテンツ全体を読み取らなくてはならない)ベクトリングをサポートできない。
【0027】
[0031]
ある態様にしたがうと、(1)CPEクロストークデータコレクタからDSLAMへのデータ送信に対して、より小さい帯域幅負担を課すベクトル化DSLシステム、ならびに/あるいは、(2)クロストーク消去係数および/または他のFEXT消去データに対して、DSLAM側における改善されたデータ記憶、送信および処理の要件を有するベクトル化DSLシステムを、発明の実施形態はもたらす。
【0028】
[0032]
いくつかの実施形態において、DSLトーンの「フルセット」(例えば、DSLシステムにおいて使用されるすべてのトーンや、使用されるすべてのダウンストリームトーンや、使用されるすべてのアップストリームトーンや、(それぞれが、トーンのフルセットを有している)多数のダウンストリームまたはアップストリーム周波数帯域等)内で、1つ以上のマイクロバンドが定義されている。ここで「すべてのトーン」について言及するとき、このフレーズは、「実質的にすべてのトーン」として解釈すべきである。なぜなら、所定の範囲、特に広い周波数範囲において、最小数のトーンがデータ送信において伴われないかもしれないからである。各マイクロバンドは、等しい数のトーンを有することができるか、または、できない(例えば、マイクロバンド中のトーンの数または間隔が、周波数帯域位置に基づいて変化するかもしれない)。より高い周波数は、より低い周波数とは異なるFEXT問題を受けるので、高い周波数範囲では、より小さいマイクロバンドサイズが使用されるかもしれない。他の変形は、当業者にとって明白となろう。単純な例において、いくつかの実施形態は、DSLトーンのフルセット(例えば、システム全体において256または4,094トーン、あるいは、所定の周波数帯域においてすべてのトーン)を、それぞれが同じ数のトーンを含んでいるマイクロバンドに分割する。各マイクロバンド中のGij(k)に対して、少数の最大限に正確な値を使用して、残っているトーンに対して、Gij(k)値を近似することができる。よって、近似モデルの入念な選択が、このようなベクトル化DSLシステムにおける、バックチャネル通信とメモリ記憶の需要を低減させる。最大限に正確な値と近似値とを決定するための例示的な量として、Gij(k)を使用する一方、他のFEXTに関連する量/値(例えば、Hij(k)、モデムにおけるDSLライン出力エラー信号)を使用してもよい。
【0029】
[0033]
ベクトリングモデムは、ベクトル化グループ中の他のモデム(同一または複数のシャーシユニット)とリアルタイムのFEXT情報を交換する。待ち時間の問題を防ぐために、4kHzから8kHzの範囲における典型的なDMTシンボルレートを使用して、数個の(またはより少ない)DMTシンボルのオーダーでの処理遅延で、ベクトル化帯域幅にわたって、DMTシンボル毎に一回、FEXT消去を行わなければならず、各ラインカードが、モデムのそれぞれからのリアルタイムのFEXT情報を、(例えば、他のラインカード上や他のシャーシ上、等の)他のシステムモデルのそれぞれと共有する複合データネットワークを生成させる。典型的なDSLAMシステムにおいて、ベクトリングデータの転送は、毎秒数十ギガビットになることがある。現在のDSLAMバックプレーンは、この付加的な転送負荷を取り扱うことができず、将来のDSLAMバックプレーンは、適度な複雑性と動作性能を有するこのデータ転送フローを管理する実用的な方法を必要とする。近接するバインダから、かなりのFEXT結合が生じることがあり、あるいは、「クロスボックス」の使用または電話会社ノード中のパッチパネルの使用によって同一の電話会社ノード中で終端する異なるケーブルからさえ、かなりのFEXT結合が生じることがある。(おそらくは、異なるバインダまたは電話会社ケーブルからの)個々の銅ペア線を、DSLAMラインカード上の特定のモデムポートにマッピングするのに、これらのパッチパネルを使用する。また、単一のモデムポートが所望のデータレートを提供できないとき、複数のモデムポートをともにボンディングすることで、カスタマーデータレートを増加させることができる(第2のポートは付加的なサービスを提供するように追加され−マルチポートDSLサービスは、より多くのデータを運び、より速いスピードで動作する、等の潜在能力を有する)。いくつかのシステムは、同一のラインカードに接続されることになる、ボンディングされたモデムポートを要求する。これは、バインダグループ管理が非実用的であるという同じ理由により、いくつかの電話会社にとって非実用的である。最後に、DSLベクトリング−特に、ユーザデータ信号を用いたリアルタイムのクロストークデータ処理−の計算需要は、データ送信ボトルネックと処理問題を生成させる。(待ち時間/遅延を低減させるために)大量のデータを素早く処理する必要があり、そして、効率よく送信して処理しなければならない。ベクトル化されるDSLラインの待ち時間および/または性能に、わずかに否定的な影響を与えるだけで、これらの大量のデータを効率よく取り扱って処理するシステム、装置、方法等を、実施形態は提供する。
【0030】
[0034]
ベクトル化DSLシステムと測定は、ここにおいて、固有のノイズを受け、推定されたFEXTデータ中のエラーはシステム性能を低下させる。ノイズの影響は、時間平均(同じ量で行われる多くの測定)によって軽減できる。ノイズが損なう測定が統計的に静的である場合、より長い時間をとることを通して、測定はより正確にすることができる。データをスムーズにする(例えば、ノイズを除去する)技術の集まりは、ノイズ平均のための余分な時間を要求することなく、ノイズの影響を取り除く。チャネル測定を収集するための制限された時間も、送信のために使用されるトーンの制限されたサブセットにのみ推定が利用可能である(例えば、4トーン中の1つにおける推定を使用する)ことを意味している。使用するすべてのトーンに対して設定された完全なプリコーダ/消去係数は、この制限された測定セットから導出しなければならない。推定された結合関数のサブサンプリング(またはデシメーション)は、それらをプリコーダ/消去装置と互換性のあるレートにすることができる。FEXTデータの高い精度の知識が望ましいが、これらの利益には制限があり、実際は、より高い精度のデータは、より大きな記憶メモリを要求する。あるしきい値より下の量子化エラーを得て、適切なシステム性能と可能な限り最小のメモリとを提供するのに必要とされるだけの正確さを保持することが有益である。ノイズ(背景の、熱の、または、他の回避できないシステムノイズ)に対する信号対量子化エラー比における損失を制御するために、トーン周波数に、または、マイクロバンドにしたがって変化する量子化間隔を使用する均一に間隔をあけた量子化を、いくつかの実施形態において使用する。
【0031】
[0035]
FEXT結合(またはプリコーダ/消去係数)を表している整数の平均絶対値を低減させる方法として、FEXT結合(または、例えば、プリコーダ/消去係数)における相関を、および、予想フィルタ出力と実際のFEXT結合または推定したFEXT結合との間のエラーシーケンスの計算を、線形の予想フィルタは抽出または定義できる。代替的に、1つの妨害/犠牲ペア線に対して量子化されたFEXTデータは、離散コサイン変換を使用して変換することができる。変換されたシーケンスの絶対値はしきい値と比較され、変換されたシーケンスの値は、それらの絶対値がしきい値よりも小さい場合には廃棄され、そうでなければ保持される。
【0032】
[0036]
可変長エントロピーコーディング(例えば、演算、ハフマンまたはゴロムコーディング)はさらに、FEXTデータを圧縮でき、サブサンプリング、量子化および予想とともに使用できる。圧縮したFEXTデータを、利用可能なメモリ中に確実に適合させるように、情報損失を制御するための調節可能なパラメータは、より大きな損失で初期化でき、その後、メモリ利用が予め決められたしきい値に到達するまで、推定は連続的により良くなって、エラーを低減させる。前のセットの圧縮されていないFEXTデータに対する加法的な更新を使用して予測エラーを計算するとき、圧縮されたFEXTデータは更新でき、結果はその後、新たなセットのFEXTデータとしてエンコードされて記憶される。これらのアプローチや技術等のうちの1つ以上を、単独で、またはともに使用することで、そうしなければベクトル化DSLシステムに直面する通信ボトルネックを低減させることができ、または、通信ボトルネックを取り除くことができる。このような実施形態は、小さなポートカウントシステム(例えば、単一のラインカードシステム)から、はるかに大きなシステム(例えば、複数のラインカードおよび/またはシャーシにわたって広げられた数千のポート)までスケーリング可能である。(複数のシャーシシステムのケースにおいて、または、レガシーシャーシ機器へのラインカード更新のケースにおいて)光相互接続技術とともに、また、銅バックプレーン上の単一のDSLAM内で、または、高帯域幅銅相互接続を使用する単一のDSLAM内で、すべての通信が流れる、将来の銅相互接続技術の両方で、このような実施形態は働く。複数のラインカードおよび/または複数のシャーシにわたって、電話会社に仮想的にモデムポートをボンディング可能にさせる「仮想ボンディング」も、実施形態は許容する。
【0033】
[0037]
図3は、ツイストペア線114上の通信を制御するDSLモデム112(例えば、マルチポートデバイス)をラインカード110が含んでいる、ベクトリングデータ通信システム100を図示している。例えば、XAULライン108、または、図3中のこれに類するもののような高速通信装置を介して、(例えば、ベクトリングカードであり得る)集中化されたベクトリングモジュール120となり得るベクトリング制御エンティティ(VCE)に、または、集中化されたベクトリングモジュール120を含むベクトリング制御エンティティ(VCE)に、複数のラインカード110は接続されている。高速データ通信ライン116は、モデム112をラインカードベクトルルータコンポーネント(VRC−L)118に接続する。モデム112が1つのVRC−L118にのみ接続する必要があるとき、VRC−L118は、モデム112のためのアブストラクションレイヤを形成し、よって、特定のベクトリング配置(例えば、ポート、ラインカード等の数)の複雑性は、各モデム112から隠される。
【0034】
[0038]
ダウンストリーム通信とアップストリーム通信のための周波数ドメインサンプル−すなわち、ダウンストリームベクトリングに対するIFFT入力送信(TX)データ、および/または、アップストリームベクトリングに対するFFT出力受信(RX)データである−を、各モデム112からモデムのそれぞれのVRC−L118へのベクトリングデータフローは含んでいる。ベクトリングモジュール120から、VRC−L118を介して各モデム112に戻されたデータは、モデムのクロストーク調節された(ベクトル化)、IFFT入力および/またはFFT出力データであり、これらは、クロストーク干渉を他のvddgラインから防ぐ、および/または、取り除くために、調整されおよび/または処理されている。各ラインカード110中のVRC−L118は、ラインカードのモデム112とベクトリングモジュール120との間のインターフェースとして機能する。高速ライン108は、各ラインカード110上のVRC−L118を、ベクトリングモジュール120上のコンパニオンVRC−V122にネットワーク接続する。システム要件によって定義されるように、ベクトリングモジュール120上のVRC−V122は、1つ以上のベクトルプロセッサ(VPC)124中の、後続するクロストーク消去のためのマイクロバンドに、モデムベクトリングデータストリームを細分化する。ベクトルプロセッサは、「ベクトルプロセッサコンポーネント」、「計算デバイス」、および/または、これに類するものとしても言及するかもしれない。すなわち、周波数ベース(例えば、トーン毎、トーンのグループ等)でデータをクロストーク処理するように、各モデム中の通常の(すなわち、ベクトル化されていない)データストリームからデータを取り除き、周波数特性によって定義されたデータバンドル中にデータを再編成する。いったん処理されると、クロストーク除去処理のために使用する周波数ベースのバンドルから、再びデータを再編成して、モデムによる送信/使用のためにデータを再組み立てする。
【0035】
[0039]
例えば、アップストリームおよびダウンストリームの帯域は、1つ以上のVRC(例えば、VRC−L/VRC−Vペア)によって、個々のVPCにベクトルルーティングすることができる。ベクトルルータは、特殊化されたデータネットワーキングデバイス、または、特殊化された「プライベート」データネットワークを実現するサブシステムであり、これは、処理またはデータ送信のボトルネックを防ぐために、モデムとベクトルプロセッサとの間でベクトリングデータを効果的に移動させる目的で、イーサネット(登録商標)ネットワークと類似するものとすることができる。各モデムとベクトルプロセッサデバイス間に専用リンクを必要とすることなく、データネットワークを通して、ベクトリングデータの効果的なルーティングを可能にするヘッダおよび/または他の状態情報を、ベクトリングデータのパケットは含むことがある。この目的のために、ベクトルルータはまた、ベクトルデータパケットを、モデムによって容易に供給されるフォーマットから、ベクトルプロセッサに自然に利用されるフォーマットに変換して、その後、ベクトリングを実行した後に、再び変換して戻す(例えば、モデムベクトリングデータストリームをインターリーブすること、および、インターリーブしないこと)。このタスクは、コンフィギュレーションに依存して、VRC−LとVRC−Vとの間で分けられるか、あるいは、1つまたはもう1つにおいてのみ実行されるかもしれない。代替的に、VPC割り当ては(アップストリームとダウンストリーム帯域割り振りから独立して)、均等に間隔をあけたマイクロバンドに基づくことができる。ベクトリングモジュール120上のVRC−V122とVPC124との間のデータ送信は、高速の相互接続ライン126を使用して実行することができる。
【0036】
[0040]
同時係属中の出願において開示されているさまざまな係数圧縮技術とともに、本発明の実施形態を実現できる。例えば、トーンによって係数をデシメーションすることや、ゴロムコーディングのような差分コーディング技術を使用して補間を実行することを、これらの圧縮技術は含んでいる。これらの圧縮技術は、係数の量子化をさらに含んでいる。
【0037】
[0041]
同時係属中の出願の技術を使用してプリコーダ係数を圧縮する際に、さまざまな周波数帯域に対するゴロムと量子化パラメータの選択は、性能に重要な影響を与えることがあると、発明者は認識している。発明の実施形態は、各マクロバンドiに対して、ゴロムモジュラスパラメータMと量子化レベルパラメータkとの一意的なセットを使用する。同時係属中の出願のマイクロバンドとは対照的に、そして、当業者によって正しく認識されているように、マクロバンドは、アップストリームとダウンストリームの送信のために使用するトーンの隣接するグループ(例えば、アップストリームまたはダウンストリームいずれかの送信のために、すべてが一般的に使用される約500〜800の隣接するトーン)であり、典型的にオペレータによってマクロバンドは設定される。全体的な制約は、すべてのマクロバンドに対する圧縮された係数が、係数データを記憶させるために割り振られた利用可能なメモリを超えることができないことである。
【0038】
[0042]
係数記憶のために割り振られた利用可能な総メモリはTである。1つの限定的でない例において、単一の犠牲、127の妨害、および、1024トーンに対して、128個の1024ビットワードとして、T=217ビットが編成される。このメモリが、すべてのマクロバンドに対する圧縮係数を記憶できる必要があることに着目されたい。
【0039】
[0043]
所定のマクロバンドiに割り振られたTビットの利用可能な量のメモリがあるとすれば、マクロバンドに対して圧縮パラメータを選択するための1つの可能性あるアプローチは、単純に最小限の量子化パラメータkで開始して、その量子化に対する最良のゴロムパラメータMを見つけることである。その後、量子化レベルは必要に応じて増加されて、圧縮係数のために必要とされる記憶の量をTまで低減させる。しかしながら、所定のマクロバンドiに対するkとMを選択するための、この単純なアプローチを用いてさえ、所定のマクロバンドに対するTを選択する方法は明確でない。1つの例において、全体的なメモリサイズTは、簡潔にするために、マクロバンド間でちょうど等しく分割される。この単純なアプローチは機能するが、必ずしもシステムデータレート全体に関する最良の解ではないことを、本発明者は認識した。
【0040】
[0044]
ある態様にしたがうと、発明の実施形態は、圧縮パラメータを選択し、所定のチャネル条件に対して送信スペクトル全体(アップストリーム(US)とダウンストリーム(DS)両方)を通して送信されるデータレートを最適化する。すなわち、マクロバンドに対するTのそれぞれの値は、アプリオリに固定されていない。むしろ、(各マクロバンドに対する係数圧縮パラメータによって特定されるような)各マクロバンドに割り振られたメモリの量Tが選択されて、現在のチャネル条件に対するデータレートを最大化する。それにもかかわらず、発明の実施形態は通常、総メモリ制約:ΣT<Tに関する。
【0041】
[0045]
もちろん、このアプローチはより複雑さを伴い、実際、非常に複雑な最適化の問題を解決することを伴っている。しかしながら、この問題は非常に複雑であり得るが、数学的に凸であり、よって扱いやすいことを、本発明者は認識している。したがって、おそらく、オフラインで(すなわち、ベクトル化DSL通信を実行するものとは異なる計算システムにおいて)実行される処理を含む問題を解決するための方法を、発明の実施形態は提供する。このようなオフラインの実施形態において、結果はルックアップテーブル中に記憶することができ、そのサイズは、従来のVCEチップによって使用されるメモリ(例えば、KrakenおよびマイクロVCEチップに対してDDRメモリ)に簡単に適合させることができる。したがって、管理可能な複雑性で、発明の実施形態は、スループット利益を達成する。
【0042】
[0046]
発明の実施形態にしたがって圧縮パラメータを選択する例示的な方法を、図4において図示している。
【0043】
[0047]
第1のステップS402において、係数記憶に対して利用可能なメモリのサイズ(T)を決定する。図4において示すようなオフライン実施形態において、圧縮パラメータルックアップテーブルに対して利用可能なメモリの利用可能なサイズも識別する。このステップは発明の明確さのために示されるが、使用するベクトリング機器、および/または、ベクトリングのために使用する特定のコンフィギュレーション(例えば、ライン毎のチップ等)に依存して、メモリサイズ(S)は既知であるか、または、固定であってもよい。
【0044】
[0048]
ステップS404において、使用するマクロバンドの数iとともに、それぞれに含まれるトーンのセットを識別する。このステップは明確さのために示されているが、これらのマクロバンドは固定でアプリオリに知られていてもよい(例えば、5つのマクロバンドDS1、US1、DS2、US2およびDS3)。例えば、業界標準機構によってバンドプランが規定されているので、特定の配置に対して、マクロバンド定義が予め決められるだろう。
【0045】
[0049]
ステップS406において、メモリのサイズTが与えられた場合、各マクロバンドに対するメモリの量Tを規定して、送信スペクトル全体を通してシステムデータレートを最適化する圧縮パラメータを見つけることによって、各マクロバンドiに対する圧縮パラメータのセットが見つけられる。代替的な実施形態において、アップストリームとダウンストリームのマクロバンドに対するデータレートは、別々に最適化される。以下の、より詳細に説明する1つの可能性ある例において、各マクロバンドiに対する圧縮パラメータは、ゴロムコーディングパラメータMと、量子化レベルパラメータkとを含んでいる。しかしながら、発明はこの特定の例に限定されず、当業者は、付加的または代替的な圧縮パラメータを使用することによって、本発明の態様を実現する方法を理解するだろう。
【0046】
[0050]
図4に示されているオフライン実施形態に対して、各マクロバンドに対する最適な圧縮パラメータが、さまざまな可能性あるチャネル条件に対して計算され、ステップS408において、ルックアップテーブル中に記憶される。ステップS402において決定されたような、予め決められたサイズのメモリ中に、ルックアップテーブルが適合されるように、チャネル条件と圧縮パラメータを量子化することも、このステップS408は含んでいる。いくつかの実施形態において、システムを配置する前にステップS402からS408までをオフラインで行うことができるか、または、システムを更新することが必要とされるとき、そしてその後、以下のステップに対してルックアップテーブルが固定されることに着目すべきである。
【0047】
[0051]
ステップ410において、係数を計算する必要がある、および/または、ロードする必要がある適切な時間に(例えば、以下に詳述するように、システムのスタートアップにおいて、そして、更新のためにその後周期的に)、現在のチャネル条件が決定される。1つの例示的なオフライン実施形態において、ルックアップテーブルに対して使用するチャネル条件は、2つのパラメータによって表される。チャネル係数における電気的長さと変動である。アップストリーム電力バックオフのために要求される情報から、電気的長さは推定することができる。事前処理の間にすべてのマクロバンド中の、1つの犠牲、すべての妨害、および、すべてのトーンに対して、マッピングされた差の和として、チャネル係数における変動を計算することができる。発明が、チャネル条件パラメータのこの特定の例に限定されるものではなく、付加的なまたは代替的なチャネル条件パラメータを使用して、発明の態様を実現する方法を当業者が理解するだろうことに着目されたい。
【0048】
[0052]
効果的なFEXTキャンセラまたはプリコーダとするために、時とともに変化することがある物理的なループプラントの(モデムによって認識されるような)外見上の状態を、係数は反映すべきである。これを達成するために、チャネル測定は時々、特別なシンボルを使用して行われ、係数に対する加法的な更新が計算される(所定の妨害/犠牲ペアおよびトーン周波数に対して、前の係数に更新が追加されて、新たな係数を作成する)。例えば、データシンボルのセットの間に、同期化シンボルが周期的に送信されることを、ある工業標準規格は特定している。これらのシンボルが使用されて、チャネル推定を、それゆえ、プリコーダ/キャンセラ係数を更新する。
【0049】
[0053]
ステップS412において、決定された現在のチャネル条件を使用して、ルックアップテーブルにおいて、現在のチャネル条件に対する圧縮パラメータの最適なセットを調べる。
【0050】
[0054]
ステップS414において、ルックアップテーブルからの各マクロバンドに対する圧縮パラメータを使用して、係数を圧縮してメモリ中にロードする。圧縮パラメータのセットは記憶されて、ダウンストリームデータが送信するために準備されているか、または、アップストリームデータが受信されるとき、これらのパラメータを再度使用して、メモリから取り出されたデータを伸張するので、ベクトリングが起こることがある。
【0051】
[0055]
図4に示されていないオンライン実施形態において、現在既知であるチャネル条件に対して、リアルタイムで、最適な圧縮パラメータを計算することができるので、図4中のステップS408からS412まではスキップできることに着目されたい。
【0052】
[0056]
図4において図示されている方法の、さまざまな可能性あるインプリメンテーションの詳細を、ここでより詳細に説明しよう。
【0053】
[0057]
上述したように、発明のオフライン実施形態において、使用するための圧縮パラメータを含んでいるルックアップテーブルが構築されている。テーブルは、ケーブルの電気的長さによってパラメータにより表示され、チャネル係数における変動を特徴付けている単純な関数でもある。可能性あるチャネル条件の仮定の数が与えられると、このルックアップテーブルは巨大になることがある。しかしながら、発明の実施形態は、解の精度への実質的な妥協なく、典型的なVCEチップの利用可能なメモリにルックアップテーブルを適合させることができる。実施形態において、非常に入念な方法で電気的長さとチャネル変動パラメータを量子化することによって、これがなされる。すなわち、可能性あるパラメータの組み合わせのサブセットのみを使用するが、境界付けられた程度の精度内で、依然としてシステムのネットスループットを最適化させる。同様に、アップストリームとダウンストリームのスループットを個々に最適化するために、テーブルを構築する方法を適応させることができる。
【0054】
[0058]
さらに上述したように、単一の犠牲、すべての妨害、および、すべてのトーンに対する、圧縮された係数が、Tビットサイズのメモリに適合するとの制約に関するが、送信スペクトル(DSおよびUS)全体を通して送信されるデータレートが最適化されるように、各マクロバンドに対するゴロムモジュラスMと、量子化するためのビット数kとを見つけることに関して、オフラインプロセスによって解決すべき最適化の問題が表わされている。
【0055】
[0059]
SINRが、所定のチャネル条件に対するルックアップテーブルによって提供されるゴロムパラメータを用いて量子化およびベクトリングした後のマクロバンドに対する予測された性能である場合、最適化解の1つのコンポーネントは、各マクロバンドに対する最適なSINRを見つけることである。最大のビットローディングはギャップを含めて15b/s/Hzであるので、15のスペクトル効率をもたらす値よりも大きなSINRを達成することに利益はないことを、本発明者は認識している。この値は、情報理論上の引数を通して要求される57dBと、情報理論から実用的な通信システムへの遷移のために使用される付加的な3dBのギャップとによって決定される。よって、SINRは60dBにおいて上限とすることができる。以下に説明するインプリメンテーションにおいて、これは、SINRキャップΓ、つまりΓ=60dBである。
【0056】
[0060]
上述したように、ルックアップテーブルは、さまざまなチャネル条件に対する圧縮パラメータを提供するように構築されている。したがって、さまざまな可能性あるチャネル条件(例えば、所定のオペレータの各マクロバンドに対するSNR)は、最適化アルゴリズムへの入力として提供する必要がある。発明の実施形態は、マクロバンド毎に1つの代表的なSNRを使用する。例えば、単に、マクロバンド中のトーンにわたって測定された平均をとることによって、または、それの推定によって、この代表的なSNRは取得できる。したがって、各ラインに対する各トーンに適用される(例えば、事前計算テーブルからの)パワーマスクを知る必要がある。
【0057】
[0061]
最適化アルゴリズムはCOにおいて実行できるので、すべてのUS SNRが既知であることを仮定することは合理的である。同様に、DS SNRを知る方法があることを、本発明者は認識している。例えば、関心のある周波数に対して、−ほぼ一定である−電気的長さと、パワーマーク(事前計算テーブル)によって、チャネル応答はうまく決定される。US SNRは、電気的長さを意味するので、US SNRから、そして、パワーマスクから、DS SNRは推論できる。
【0058】
[0062]
最適化アルゴリズムの1つの目標は、圧縮係数をメモリのサイズT中に適合させるだろう圧縮パラメータを見つけることである。量子化パラメータk(すなわち、量子化すべき最下位ビットの数)および(Mがゴロムモジュラスである場合、2**(k+logM)として定義される)DによりゴロムエンコーディングのN個のマッピングされた差(m)では、圧縮された係数によって占められるメモリは、
【数1】
【0059】
である。
【0060】
[0063]
2k<Dに注目し、β=log2Dを代入すると、
【数2】
【0061】
をもたらす。
【0062】
[0064]
したがって、1つのマクロバンドiにおいて、1つの犠牲、1つの妨害、すべてのサンプリングされたトーンに対して、ゴロムエンコードされた係数データは、
【数3】
【0063】
によって、上限の境界とされる。
【0064】
[0065]
ここで、Siは、マクロバンドiにおけるトーンの数であり、fsub,rはダウンサンプリングレートである。例えば、係数が4つ目のトーン毎に更新されるとき、fsub,rは4に等しい。
【0065】
[0066]
マクロバンドi中の、1つの犠牲、すべての妨害、および、すべてのサンプリングされたトーンに対して、長さを見つけるために、差分データの単一のストリングに対応するマッピングされた差を、上記の境界が保つことを発明の実施形態は保証する。複数の妨害があるとき、それらのデータは互いに独立して、周波数にわたって差分がとられる。よって、残余量子化エラーから生じる1/2項は、妨害にわたって累算され、そして、以下の式が適用される。
【数4】
【0066】
[0067]
ここで、(Nが妨害の数である場合、2S/fsub,rと等しい)Vは、マクロバンドi中の、1つの犠牲、すべての妨害、および、すべてのトーンに対して、エンコードすべき値の数である。
【0067】
[0068]
よって、すべてのマクロバンドにわたって圧縮された係数の総長(ここで、Nはマクロバンドの数であり、そして、Σは、すべての値Vに対してマッピングされた差mの合計である)は、
【数5】
【0068】
のように、Cである。
【0069】
[0069]
最適化アルゴリズムの別のコンポーネントは、SINRに対する方式を作り出すことを含んでいる。アルゴリズムのこの部分に関して、特定のトーン上で、各ライン上の受信された信号はベクトルYによって表され、送信された信号はベクトルXによって表される。ラインiのダイレクトチャネルの利得を示しているエントリを有する対角行列(i,i)は、Hによって示されている。行列Cによって示されたクロストークの影響を含めて、全体的な移行は、H(I+C)である。ここで、Hが対角で、Cがその対角に沿ってゼロを有する。よって、プリコーダは、1−C^として示され、受信機におけるノイズは、Nパワーを有するi.i.d.ベクトルNである。
【0070】
[0070]
事前計算テーブル中の値:電力スペクトルマスクAと、ユニットパワーを保つ配列スケーリングファクタM´とにより乗算された、i.i.d.ユニットパワーベクトルRから、送信された信号Xはなる。AおよびM´は、これらのエントリがそのラインに対するスケーリングを表わしている対角行列である。Aの対角エントリは、αによって示される。V=M´Rは、ユニットパワーi.i.d.であるが、X=AVは違う。
【0071】
[0071]
SINR式を導出するために、受信した信号Yは、
【数6】
【0072】
によって表される。
【0073】
[0072]
i番目の犠牲とj番目の妨害とに対する、真のチャネル係数と量子化されたチャネル係数との間の差を、δcijが表し、エントリがδcijである行列としてΔCを定義すると、
【数7】
【0074】
をもたらす。
【0075】
[0073]
Vはi.i.d.ユニットパワーであるので、以下の式:
【数8】
【0076】
が結果となる。
【0077】
[0074]
ここで、hは、ラインiに対するチャネル伝達関数である。
【0078】
[0075]
最後に、量子化の量への依存性を捕捉する式、すなわち│δcij≒2−(30−2ki)によって、アルゴリズムの実施形態はチャネルエラーを近似するので、上の式は、以下のように単純化できる。
【数9】
【0079】
[0076]
ここで、最後のラインは、以下の代入を含んでいる。
【数10】
【0080】
[0077]
SNRと│αの値が、すべてのラインに対して知られている必要があることに着目されたい。テーブルの構築に対して、マクロバンド毎のSNRの良好な近似値は、ケーブルの電気的長さから決定できるとの仮定を発明の実施形態は行う。
【0081】
[0078]
アルゴリズムの実施形態は、SINRを得るようにマクロバンド毎にSNRを近似することを含むが、これは最適化を単純化するので、トーン毎のSNRを使用して結果レートを評価することも可能であることに、着目すべきである。トーン毎のSNRは、電気的長さから推定できる。
【0082】
[0079]
言及したように、エンコードされた係数データの総長は、利用可能な総メモリTよりも小さくなければならないという制約で、最適化アルゴリズムを実行する。さらに、あるハードウェア制約は、η=k−β<4およびk≦16を要求する。最後に、0≦k≦16およびη≧0、ならびに、ki、ηおよびβは、すべて整数であるという、明らかな制約がある。
【0083】
[0080]
さらに、上述したように、Γを超えるSINRを達成することにとって利益はないので、発明の実施形態は制約
【数11】
【0084】
を追加し、
[0081]
これはSNR>Γに対するものであり、これは、
【数12】
【0085】
に再編成される。
【0086】
[0082]
この制約は、
【数13】
【0087】
に単純化できる。
【0088】
[0083]
アルゴリズムの実施形態は、リアルのセットを通して問題を解決し、その後、kとηの結果の値を、最も近い有効な整数に丸める。メモリ制約がη=0とともに考慮されるように、十分アグレッシブに量子化する(すなわち、許容範囲内でkを増加させる)ことは常に可能であるので、これらの制約にしたがう解が常に存在することを示すことができる。言い換えると、常に、実行可能な領域において少なくとも1つの点がある。
【0089】
[0084]
最適化アルゴリズムの目標は、
【数14】
【0090】
を解決することである。
【0091】
[0085]
【数15】
【0092】
になるように目標が修正された場合、同じ解が得られる。
【0093】
[0086]
アルゴリズムの実施形態は、問題を数的に解決する障壁方法を使用する。収束を確実にするために、アルゴリズムは余分な制約を追加して、確実に問題が強く凸となるようにする。これらの制約が、元の問題の解を変更しないだろうことは、明確である。特に、例示的な実施形態は制約(1)
【数16】
【0094】
を追加する。
【0095】
[0087]
当業者にとって、最適なkおよびβの値が制約されたセット内にあることは明確であるはずである。
【0096】
[0088]
対数の障壁関数を使用して制約を強いることによって、障壁方法の使用は、制約された(すなわち、探索スペース上に制約がある)最適化から、制約されていない最適化に問題を変化させる。二次導関数が、いくつかの負でない定数よりも大きくなるように強制するので、付加的な制約(1)は、収束を確実にする。一般的に、S.Boyd and L.Vandenberg,“Convex Optimization,”Cambridge University Press, 2004.を参照されたい。
【0097】
[0089]
障壁の感度は、パラメータtbarによって、以下のように要約される。
【数17】
【0098】
を、方法は最適化する。
【0099】
[0090]
アルゴリズムの実施形態は、tbarの任意の値とともに開始して、tolbarの許容範囲まで、解を数的に近似する。その後、tbarは増加されて、元の問題を有する解の精度を改善する。しかしながら、最適性へのある境界に基づいて、tbar=1は、適度に正確である。
【0100】
[0091]
特定の値tbarに対して、バックトラッキングライン探索を用いた勾配降下法を使用して、アルゴリズムの実施形態は問題を解決する。すなわち、探索方向は、目標の負の勾配であり、ステップサイズは、バックトラッキングライン探索を使用して決定される。
【0101】
[0092]
探索方向が目標の勾配に依存する場合、tbar、tback、αおよびβを固定された値に設定し、反復探索を実行することによって、発明の実施形態は、最適化を解決する。勾配は、以下のように表すことができる。
【数18】
【0102】
[0093]
実行可能な点で、アルゴリズムを初期化することが好ましい。すべてのiに対して、k=15、β=18と設定することは、(最適でない可能性があっても)実行可能であることが分かる。
【0103】
[0094]
ベクトリングハードウェア上で、リアルタイムで、所定のセットアップ(すなわち、ループのセット、パワーマスク)に対して、上述した最適化解を計算することが、常に可能ではないことを、本発明者は認識している。したがって、上述したように、(例えば、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ上で実行されるMatlab(登録商標)コードを使用して、)実施形態は、最適化オフラインを解決して、解をVCEチップにロードできるルックアップテーブル中に記憶させる。Mは(3ビットにエンコードできる)5つの可能性ある値を有し、kは(4ビットにエンコードできる)16の可能性ある値を有しているので、それら両方は8ビットを使用してエンコードできる。したがって、5つのマクロバンドに対して、例えば、ルックアップテーブルは、解を記憶させるために、テーブルエントリ毎に5バイトを必要とするだろう。
【0104】
[0095]
上で着目したように、各マクロバンドは、ループの長さとパワーマスクに基づいて異なるγiを有することがあるので、そして、解は、マクロバンドのSNRに依存し、各マクロバンドに対するΣiの値にも依存しているので、テーブルは潜在的に巨大になることがある。したがって、発明の実施形態は、マクロバンドのそれぞれに対して、各γi値を量子化するためにN個の値を使用し、そして、各Σiを量子化するためにM個の値を使用する。よって、5つのマクロバンドがある場合、(MN)×5を要求するテーブルエントリがある。テーブル中の各エントリは、マクロバンドiに対する圧縮パラメータ値{k,M}を有する。
【0105】
[0096]
パワーマスクは一般的に、配置ごとに固定されていることに着目すべきである。したがって、さまざまなループの電気的長さのみにSNRは依存していて、これは、マクロバンドにわたって一定であると仮定できる。したがって、発明の実施形態は、SNRのグループによるよりもむしろ、単一の電気的長さによって、テーブルをパラメータ表示する。標準のパワーマスクを仮定して、γiへの電気的長さの影響をシミュレートした後、発明の実施形態は、ルックアップテーブルのエントリを設定するとき、電気的長さをたった14個の値のセットに制限する。また、解へのΣiの影響を調べることで、この値は、解に大きな影響を与えることなく、むしろ粗く量子化できることが分かる。いくつかの典型的なインプリメンテーションは、電気的長さとシグマのおよそ250k個の値を使用するが、発明の実施形態は、実際、ルックアップテーブルのエントリを設定するとき、たった7個の値しか使用しない。
【0106】
[0097]
発明の実施形態によって、どのくらいの性能利得が達成できるかを知るために、本発明者は広範囲なシミュレーションを行った。シミュレーションは、1)マクロバンド間でメモリを等しく分割すること、2)そのマクロバンドのサイズに比例するメモリの量をマクロバンドへ割り振ることの別の合理的な選択と、発明の実施形態を比較した。これらの2つのスキームのいずれよりも、本発明はより高いデータレートを達成した。さまざまな状況に対して、これは、他のスキームよりも30%より大きく性能がすぐれている。
【0107】
[0098]
ここで、特に、好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において、変更および修正がなされてもよいことは、当業者にとって明白であるはずである。添付された特許請求の範囲は、このような変更および修正を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】