(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-530546(P2015-530546A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(54)【発明の名称】タービンピストンのスラスト力経路
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20150918BHJP
【FI】
F16H45/02 C
F16H45/02 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-534963(P2015-534963)
(86)(22)【出願日】2013年9月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2013070068
(87)【国際公開番号】WO2014053388
(87)【国際公開日】20140410
(31)【優先権主張番号】61/709,622
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】パトリック リンデマン
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュタインベアガー
(57)【要約】
トルクコンバーターは、各々シェルを有するインペラ及びタービンを有するトーラスと、カバーシェルと、第1のダンパープレートと、を有する。インペラシェルは、トーラスの半径方向外側に配置された半径方向壁部を有し、タービンシェルは、インペラシェルの半径方向壁部と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部を有する。カバーシェルは半径方向壁部を有し、第1のダンパープレートは、タービンシェルのスラスト力をカバーシェルの半径方向壁部に伝達するための半径方向壁部を有する。典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、タービンシェルの半径方向壁部又はインペラシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを有する。幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、カバーシェルの半径方向壁部又は第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラ及びタービンを有するトーラスと、
該トーラスの半径方向外側に配置された半径方向壁部を有するインペラシェルと、
該インペラシェルの半径方向壁部と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部を有するタービンシェルと、
半径方向壁部を有するカバーシェルと、
前記タービンシェルのスラスト力を、前記カバーシェルの半径方向壁部に伝達するための半径方向壁部を有する第1のダンパープレートと、
を備えるトルクコンバーター。
【請求項2】
前記タービンシェルの半径方向壁部又は前記インペラシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを更に備える、請求項1記載のトルクコンバーター。
【請求項3】
前記カバーシェルの半径方向壁部又は前記第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを更に備える、請求項1記載のトルクコンバーター。
【請求項4】
前記摩擦材リングは、前記第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられており、
前記第1のダンパープレートは、前記摩擦材リングの半径方向内側に配置されたオリフィスを有している、請求項3記載のトルクコンバーター。
【請求項5】
前記第1のダンパープレートは、変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部を有している、請求項1記載のトルクコンバーター。
【請求項6】
前記第1のダンパープレートはダンパーハブを有しており、
該ダンパーハブが前記スプライン部を有しており、
前記ダンパーハブは、前記タービンシェルからのスラスト力を受けるために設けられている、請求項5記載のトルクコンバーター。
【請求項7】
ブッシュを更に備え、
該ブッシュは、前記タービンシェルの周方向孔部内に配置された周方向部分と、前記タービンシェル及び前記ダンパーハブの間に配置された半径方向部分と、を有している、請求項6記載のトルクコンバーター。
【請求項8】
第1のダンパーばねを更に備え、
前記タービンシェルは、前記半径方向壁部から延在し且つ前記第1のダンパーばねと係合する、一体に形成された駆動タブを有している、請求項1記載のトルクコンバーター。
【請求項9】
第2のダンパープレートを更に備え、
該第2のダンパープレートは、前記第1のダンパープレートに固定されており、
前記第1及び第2のダンパープレートは、各々、一体に形成されたばね保持部を有しており、
前記第1のダンパーばねは、前記第1及び第2のダンパープレートのばね保持部内に配置されている、請求項8記載のトルクコンバーター。
【請求項10】
変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部と、ばね窓部と、該ばね窓部の半径方向内側に配置されたオリフィスと、を有する第3のダンパープレートと、
前記第1、第2、及び第3のダンパープレートの各々のばね窓部内に配置された第2のダンパーばねと、を更に備え、
前記第3のダンパープレートは、前記第1及び第2のダンパープレートの間に配置されており、
前記第3のダンパープレートは、前記タービンシェルからのスラスト力を前記第1のダンパープレートに伝達するために設けられている、請求項9記載のトルクコンバーター。
【請求項11】
ブッシュを更に備え、
該ブッシュは、前記タービンシェルの周方向孔部内に配置された周方向部分と、前記タービンシェル及び前記第3のダンパープレートの間に配置された半径方向部分と、を有している、請求項10記載のトルクコンバーター。
【請求項12】
インペラ及びタービンを有するトーラスと、
該トーラスの半径方向外側に配置された半径方向壁部を有するインペラシェルと、
タービンシェルと、
該タービンシェルに固定され、前記インペラシェルの半径方向壁部と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部を有するクラッチプレートと、
半径方向壁部を有するカバーシェルと、
前記タービンシェルのスラスト力を、前記カバーシェルの半径方向壁部に伝達するための半径方向壁部を有する第1のダンパープレートと、を備えるトルクコンバーター。
【請求項13】
前記クラッチプレートの半径方向壁部又は前記インペラシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを更に備える、請求項12記載のトルクコンバーター。
【請求項14】
前記カバーシェルの半径方向壁部又は前記第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを更に備える、請求項12記載のトルクコンバーター。
【請求項15】
第1のダンパーばねを更に備え、
前記クラッチプレートは、前記第1のダンパーばねと半径方向に整列した周方向壁部を有している、請求項12記載のトルクコンバーター。
【請求項16】
前記クラッチプレートの半径方向壁部及び周方向壁部は、一体に形成されたばね保持部の少なくとも一部を形成しており、
前記第1のダンパーばねは、前記第1のダンパープレートのばね保持部内に配置されている、請求項15記載のトルクコンバーター。
【請求項17】
前記クラッチプレートに固定された第2のダンパープレートであって、前記クラッチプレートの半径方向壁部と少なくとも部分的に軸線方向に整列し、且つ前記第1のダンパーばねと係合する第1の駆動タブを有する第2のダンパープレートと、
前記第1のダンパープレートに固定された第3のダンパープレートであって、前記クラッチプレートの半径方向壁部と少なくとも部分的に軸線方向に整列し、且つ前記第1のダンパーばねと係合する第2の駆動タブを有する第3のダンパープレートと、を更に備える請求項16記載のトルクコンバーター。
【請求項18】
前記第1及び第3のダンパープレートの各々のばね窓部内に配置された第2のダンパーばねと、
前記第1及び第3のダンパープレートの間に配置され、前記タービンシェルからのスラスト力を前記第1のダンパープレートに伝達するために設けられた第4のダンパープレートと、を更に備える請求項17記載のトルクコンバーター。
【請求項19】
前記第4のダンパープレートは、ばね窓部を有しており、
前記第2のダンパーばねは、前記第4のダンパープレートのばね窓部内に配置されており、
前記第4のダンパープレートは、前記ばね窓部の半径方向内側に配置されたオリフィスを有している、請求項18記載のトルクコンバーター。
【請求項20】
ブッシュを更に備え、
該ブッシュは、前記タービンシェルの周方向孔部内に配置された周方向部分と、前記タービンシェル及び前記第4のダンパープレートの間に配置された半径方向部分と、を有している、請求項18記載のトルクコンバーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してトルクコンバーターに関し、より詳細には、タービンピストンのスラスト力経路を有するトルクコンバーターに関する。
【背景技術】
【0002】
ロックアップクラッチを有するトルクコンバーターのタービンは公知である。同一出願人による米国特許第7445099号明細書に、1つの典型例が示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
典型的な態様は、概してトルクコンバーターを備え、当該トルクコンバーターは、シェルを有するインペラ及びシェルを有するタービンを有するトーラスと、カバーシェルと、第1のダンパープレートとを有している。インペラシェルは、トーラスの半径方向外側に配置された半径方向壁部を有しており、タービンシェルは、インペラシェルの半径方向壁部と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部を有している。カバーシェルは半径方向壁部を有しており、第1のダンパープレートは、タービンシェルのスラスト力をカバーシェルの半径方向壁部に伝達するための半径方向壁部を有している。典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、タービンシェルの半径方向壁部又はインペラシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを有している。幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、カバーシェルの半径方向壁部又は第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを有している。典型的な実施形態において、摩擦材リングは、第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられており、第1のダンパープレートは、摩擦材リングの半径方向内側に配置されたオリフィスを有している。
【0004】
幾つかの典型的な実施形態において、第1のダンパープレートは、変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部を有している。幾つかの典型的な実施形態において、第1のダンパープレートはダンパーハブを有しており、当該ダンパーハブがスプライン部を有しており、当該ダンパーハブは、タービンシェルからのスラスト力を受けるために設けられている。典型的な実施形態において、トルクコンバーターはブッシュを有しており、当該ブッシュは、タービンシェルの周方向孔部内に配置される周方向部分と、タービンシェル及びダンパーハブの間に配置される半径方向部分とを有している。幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは第1のダンパーばねを有している。タービンシェルは、半径方向壁部から延在し且つ第1のダンパーばねと係合する、一体形成された駆動タブを有している。幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは第2のダンパープレートを有している。第2のダンパープレートは、第1のダンパープレートに固定されており、第1のダンパープレート及び第2のダンパープレートは、各々、一体に形成されたばね保持部を有しており、第1のダンパーばねは、第1及び第2のダンパープレートのばね保持部内に配置されている。
【0005】
幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、第3のダンパープレート及び第2のダンパーばねを有している。第3のダンパープレートは、変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部と、ばね窓部と、ばね窓部の半径方向内側に配置されたオリフィスとを有している。第2のダンパーばねは、第1のダンパープレート、第2のダンパープレート、及び第3のダンパープレート各々のばね窓部内に配置されている。第3のダンパープレートは、第1のダンパープレート及び第2のダンパープレートの間に配置されていて、第3のダンパープレートは、タービンシェルからのスラスト力を、第1のダンパープレートに伝達するために設けられている。典型的な実施形態において、トルクコンバーターはブッシュを有しており、当該ブッシュは、タービンシェルの周方向孔部内に配置される周方向部分と、タービンシェル及び第3のダンパープレートの間に配置される半径方向部分とを有している。
【0006】
別の典型的な態様は、概してトルクコンバーターを備え、当該トルクコンバーターは、シェルを有するインペラ及びシェルを有するタービンを有するトーラスと、クラッチプレートと、カバーシェルと、第1のダンパープレートとを有している。インペラシェルは、トーラスの半径方向外側に配置された半径方向壁部を有している。クラッチプレートは、タービンシェルに固定されており、且つインペラシェルの半径方向壁部と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部を有している。カバーシェルは半径方向壁部を有しており、第1のダンパープレートは、タービンシェルのスラスト力をカバーシェルの半径方向壁部に伝達するための半径方向壁部を有している。典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、クラッチプレートの半径方向壁部又はインペラシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを有している。典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、カバーシェルの半径方向壁部又は第1のダンパープレートの半径方向壁部に固定して取り付けられた摩擦材リングを有している。
【0007】
幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは第1のダンパーばねを有している。クラッチプレートは、第1のダンパーばねと半径方向に整列した周方向壁部を有している。幾つかの典型的な実施形態において、クラッチプレートの半径方向壁部及び周方向壁部は、一体形成されたばね保持部の少なくとも一部分を形成しており、第1のダンパーばねは、第1のダンパープレートのばね保持部内に配置されている。幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、第2及び第3のダンパープレートを有している。第2のダンパープレートは、クラッチプレートに固定されていて且つ第1の駆動タブを有しており、当該第1の駆動タブは、クラッチプレートの半径方向壁部と少なくとも部分的に軸線方向に整列していて、且つ第1のダンパーばねと係合している。第3のダンパープレートは、第1のダンパープレートに固定されていて且つ第2の駆動タブを有しており、当該第2の駆動タブは、クラッチプレートの半径方向壁部と少なくとも部分的に軸線方向に整列していて、且つ第1のダンパーばねと係合している。
【0008】
幾つかの典型的な実施形態において、トルクコンバーターは、第2のダンパーばね及び第4のダンパープレートを有しており、第2のダンパーばねは、第1及び第3のダンパープレートの各々のばね窓部内に配置されており、第4のダンパープレートは、第1及び第3のダンパープレートの間に配置されていて、タービンシェルからからのスラスト力を第1のダンパープレートに伝達するために設けられている。典型的な実施形態において、第4のダンパープレートはばね窓部を有しており、第2のダンパーばねは、第4のダンパープレートのばね窓部内に配置されており、第4のダンパープレートは、当該ばね窓部の半径方向内側に配置されたオリフィスを有している。典型的な実施形態において、トルクコンバーターはブッシュを有しており、当該ブッシュは、タービンシェルの周方向孔部内に配置される周方向部分と、タービンシェル及び第4のダンパープレートの間に配置される半径方向部分とを有している。
【0009】
本発明の作用特性及び実施方法は、添付図面を用いて下記の詳細な説明において十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本願で使用される空間的用語を表す円柱座標系の斜視図である。
【
図1B】本願で使用される空間的用語を表す、
図1Aの円柱座標系における物体の斜視図である。
【
図2】典型的な態様に基づく、タービンピストンのスラスト力経路を有するトルクコンバーターの断面図である。
【
図3】典型的な態様に基づく、タービンピストンのスラスト力経路を有するトルクコンバーターの断面図である。
【
図4】典型的な態様に基づく、タービンピストンのスラスト力経路を有するトルクコンバーターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、異なる図面において示す同一の図面番号は、同一の、又は機能的に類似する構造的要素を特定するものであると認識されるべきである。さらに、本発明は、本明細書において記載された、特定の実施形態、特定の方法、特定の材料、及び特定の変更にのみ限定されるものではなく、勿論、そのようなものとして変更してもよいと理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明することを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものと理解される。
【0012】
そうでないことが定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的な全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で説明されるものと類似又は同等の、あらゆる方法、装置、又は材料を、本発明の実施又は試験において使用することができるが、下記では、典型的な方法、装置、及び材料が記載される。
【0013】
図1Aは、本願において使用される空間的用語を表す円柱座標系80の斜視図である。本発明は、円柱座標系に関連して少なくとも部分的に説明される。座標系80は長手方向軸線81を有しており、この軸線81は、以下では、方向及び空間の用語のための基準として用いられている。「軸線方向」、「半径方向」、及び「円周方向」という形容詞は、それぞれ、軸線81、半径82(軸線81に対して垂直である)、及び円周83に対して平行な方向に関連している。また、「軸線方向」、「半径方向」、及び「円周方向」という形容詞は、個々の平面に対して平行な方向にも関連している。種々の平面の配置を明確にするため、物体84、85、及び86が用いられる。物体84の面87は、軸線方向平面を形成している。つまり、軸線81は、面87に沿う線を形成している。物体85の面88は、半径方向平面を形成する。つまり、半径82は、面88に沿う線を形成している。物体86の面89は、円周方向平面を形成している。つまり、円周83は、面89に沿う線を形成している。更なる例として、軸線方向移動又は配置は軸線81に対して平行であり、半径方向移動又は配置は半径82に対して平行であり、円周方向の移動又は配置は円周83に対して平行である。回転は、軸線81を中心にされる。
【0014】
「軸線方向に」、「半径方向に」、及び「円周方向に」という副詞は、それぞれ、軸線81、半径82、又は円周83に対して平行な方向に関連するものである。また、「軸線方向に」、「半径方向に」、及び「円周方向に」という副詞は、個々の平面に対して平行な方向にも関連している。
【0015】
図1Bは、本願で使用される空間的用語を表す、
図1Aの円柱座標系80における物体90の斜視図である。円柱形の物体90は、円柱座標系における円柱形の物体を表しており、あらゆる点で本発明を限定しようとするものではない。物体90は、軸線方向面91、半径方向面92、及び円周方向面93を有する。面91は軸線方向平面の一部であり、面92は半径方向平面の一部であり、面93は円周方向平面の一部である。
【0016】
以下の説明は、
図2を参照しながら行われる。
図2は、典型的な態様に基づく、タービンピストンのスラスト力経路を有するトルクコンバーター100の断面図である。トルクコンバーター100は、インペラ104及びタービン106を有するトーラス102を有している。インペラシェル108は、トーラス102の半径方向外側に配置された半径方向壁部110を有しており、タービンシェル112は、下述のように、インペラシェルの半径方向壁部110と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部114を有している。溶接部118でインペラシェル108に固定されたカバーシェル116は、半径方向壁部120を有している。ダンパープレート122は、下述のように、タービンシェルのスラスト力をカバーシェルの半径方向壁部120に伝達するための半径方向壁部124を有している。
【0017】
インペラシェル108は、溶接部128によってシェル108に固定されたハブ126を有している。ハブ126は、(図示されていない)変速機と相互作用するためのものである。カバーシェル116は、溶接部132によってシェル116に固定された突起部130と、一体に形成された案内領域134とを有している。突起部130及び案内部134は、(図示されていない)内燃機関と相互作用するためのものである。突起部130は、例えば内燃機関のクランクシャフトに取り付けられたフレキシブルプレートに固定され得る。案内部134は、例えば、コンバーター100をクランクシャフトに対して中心合わせし得る。ステータ136は、楔型の一方向クラッチアッセンブリ138を有しており、一方向クラッチアッセンブリ138は、(図示されていない)変速機のステータ軸と相互作用するためのインナーレース140と、タービン及び/又はステータのスラスト荷重をインペラに伝達するため、例えば接着によって固定して取り付けられた摩擦材リング141を有する側板139とを有している。
【0018】
摩擦材リング142は、例えば接着によって、タービンシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられている。リング142は半径方向壁部114に固定して示されているが、(図示されていない)別の実施形態において、リング142は半径方向壁部110に固定されてもよい。摩擦材リング144は、例えば接着によって、半径方向壁部124に固定して取り付けられている。リング144は半径方向壁部124に固定して示されているが、(図示されていない)別の実施形態において、リング144は半径方向壁部120に固定されてもよい。プレート122は、摩擦材リングの半径方向内側に配置されたオリフィス146を有している。プレート122は、(図示されていない)変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部150を有するダンパーハブ148を有している。ハブ148は、溶接部152によってプレート122に固定されて示されているが、(図示されていない)プレート122の別の実施形態においては、スプライン部を有する、一体に形成されたハブであってもよい。ハブ148は、下述するように、タービンシェル112からのスラスト力を受ける。
【0019】
コンバーター100はブッシュ154を有しており、当該ブッシュ154は、タービンシェル112の周方向孔部158内に配置される周方向部分156と、タービンシェル及びダンパーハブ148の間に配置される半径方向部分160とを有している。部分156は、(図示されていない)変速機の入力軸に対してシェル112をシールするためのものである。
【0020】
コンバーター100は、ダンパーばね162を有している。タービンシェル112は、一体形成された駆動タブ164を有している。タブ164は、半径方向壁部114から延在し且つダンパーばね162と係合する。ダンパープレート122は、一体形成されたばね保持部166を有している。ばね162は、ばね保持部166内に配置されている。又、プレート122は、(
図2の断面においては示されていない)ばね駆動部を有しており、これにより、シェル112からのトルクは、タブ164から、ばね162を介してプレート122のばね駆動部に伝達される。ばね162は、有利にコンバーター100に緩衝作用を提供し、これにより、内燃機関からのねじり振動は、変速機から少なくとも部分的に絶縁される。
【0021】
コンバーター100の運転中、タービン106は、カバーシェル116に向かって、方向168にスラスト力を生じる。タービンからのスラスト力は、シェル112から、ブッシュ154を介して、ハブ148、プレート122、リング144、シェル116の壁部120に伝達される。このスラスト力の経路は、有利に、シェル112の軸線方向移動を制限し、これによりリング142及びインペラシェル108の間における「持ち上がり」又は軸線方向間隙を制御し、ひいては半径方向壁部114、110間における摩擦接触面又はクラッチ部の係合特性を改善している。リング144は、有利に、プレート122及びシェル116間における、金属と金属(又は鋼と鋼)との接触を防止する。
【0022】
カバー116及びタービンシェル112間に配置されたチャンバー170内の圧力は、トーラス102における圧力を超えて増大され、これによりクラッチを係合するとともに、トーラスの流体回路を迂回する。即ち、カバー116からトーラス108に伝達されたトルクは、流体回路の作用を受けることなく、タービンシェル112に直接伝達される。クラッチの係合を試みる前のコンバーター100の運転状態にもよるが、正確でない持ち上がりの制御は、コンバーター内での流体力学的な力に起因するクラッチ係合を防止する。
【0023】
以下の説明は、
図3を参照して行われる。
図3は、典型的な態様に基づく、タービンピストンのスラスト力経路を有するトルクコンバーター200の断面図である。トルクコンバーター200は、インペラ204及びタービン206を有するトーラス202を有している。インペラシェル208は、トーラス202の半径方向外側に配置された半径方向壁部210を有しており、タービンシェル212は、上述した壁部110、114に類似する手段で、インペラシェルの半径方向壁部210と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部214を有している。溶接部218でインペラシェル208に固定されたカバーシェル216は、半径方向壁部220を有している。ダンパープレート222は、上述した壁部124、120に類似して、タービンシェルのスラスト力をカバーシェルの半径方向壁部220に伝達するための半径方向壁部224を有している。
【0024】
インペラシェル208は、溶接部228によってシェル208に固定されたハブ226を有している。ハブ226は、(図示されていない)変速機と相互作用するためのものである。カバーシェル216は、例えばプロジェクション溶接によってシェル216に固定されたスタッド部230と、一体に形成された案内領域234とを有している。スタッド部230及び案内部234は、(図示されていない)内燃機関と相互作用するためのものである。スタッド部230は、例えば内燃機関のクランクシャフトに取り付けられたフレキシブルプレートに固定され得る。案内部234は、例えば、コンバーター200をクランクシャフトに対して中心合わせし得る。ステータ236は、(図示されていない)変速機のステータ軸と相互作用するためのインナーレース240を有する一方向クラッチアッセンブリ238を有している。ステータ236は、タービン及び/又はステータのスラスト荷重をインペラに伝達するため、例えば接着によって固定して取り付けられた摩擦材リング241を有する半径方向壁部239を有している。
【0025】
摩擦材リング242は、例えば接着によって、タービンシェルの半径方向壁部に固定して取り付けられている。リング242は半径方向壁部214に固定して示されているが、(図示されていない)別の実施形態において、リング242は半径方向壁部210に固定されてもよい。摩擦材リング244は、例えば接着によって、半径方向壁部224に固定して取り付けられている。リング244は、半径方向壁部224に固定して示されているが、(図示されていない)別の実施形態において、リング244は半径方向壁部220に固定されてもよい。
【0026】
コンバーター200は、ダンパーばね262を有している。タービンシェル212は、一体形成された駆動タブ264を有している。タブ264は、半径方向壁部214から延在し且つダンパーばね262と係合する。コンバーター200は、一体形成されたばね保持部274を有するダンパープレート272を有している。プレート272は、薄板金属のリベット276によってプレート222に固定されている。プレート222、272はリベットによって一体に固定されて示されているが、例えば溶接などの別の方法が、プレートを一体に固定するために使用されてもよい。ばね262は、ばね保持部266内に配置されている。又、プレート272は、(
図3の断面においては示されていない)ばね駆動部を有しており、これにより、シェル212からのトルクは、タブ264から、ばね262を介してプレート222のばね駆動部に伝達される。
【0027】
プレート222、272は、各々、ばね窓部278、280を有している。ばね282は、窓部278、280内に少なくとも部分的に配置されている。つまり、ばねは、窓部内に少なくとも部分的に保持されている。コンバーター200は、プレート222、272間に配置されたダンパープレート284を有している。プレート284は、下述のように、タービンシェルからのスラスト力をダンパープレート222に伝達するために設けられている。プレート284は、ばね窓部286を有している。ばね282は、窓部286内に少なくとも部分的に配置されている。ばね262、282は、有利に緩衝作用を提供し、これにより、内燃機関からのねじり振動は、変速機から少なくとも部分的に絶縁される。
【0028】
プレート284は、ばね窓部の半径方向内側に配置されたオリフィス288と、変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部290とを有している。コンバーター200はブッシュ254を有しており、当該ブッシュ254は、タービンシェル212の周方向孔部258内に配置される周方向部分256と、タービンシェル及びダンパープレート284の間に配置される半径方向部分260とを有している。部分256は、(図示されていない)変速機の入力軸に対してシェル212をシールするためのものである。
【0029】
コンバーター200の運転中、タービン206は、カバーシェル216に向かって、方向268にスラスト力を生じる。タービンからのスラスト力は、シェル212から、ブッシュ254を介して、プレート284、プレート222、リング244、シェル216の壁部220に伝達される。このスラスト力の経路は、有利に、シェル212の軸線方向移動を制限し、これにより上述のような「持ち上がり」を制御する。
【0030】
カバー216及びタービンシェル212間に配置されたチャンバー270内の圧力は、トーラス202における圧力を超えて増大され、これによりクラッチを係合するとともに、トーラスの流体回路を迂回する。即ち、カバー216からトーラス208に伝達されたトルクは、流体回路の作用を受けることなく、タービンシェル212に直接伝達される。クラッチの係合を試みる前のコンバーター200の運転状態にもよるが、正確でない持ち上がりの制御は、コンバーター内での流体力学的な力に起因するクラッチ係合を防止する。
【0031】
トルクコンバーター300は、インペラ304及びタービン306を有するトーラス302を有している。インペラシェル308は、トーラスの半径方向外側に配置された半径方向壁部310を有している。クラッチプレート312は、例えば溶接部316においてタービンシェル314に固定されており、インペラシェルの半径方向壁部と摩擦係合するために設けられた半径方向壁部318を有している。カバーシェル320は半径方向壁部322を有しており、ダンパープレート324は、タービンシェルのスラスト力をカバーシェルの半径方向壁部に伝達するための半径方向壁部326を有している。摩擦材リング328は、例えば接着によって、クラッチプレートの半径方向壁部318に固定して取り付けられている。(図示されていない)別の実施形態において、リング328は、インペラシェルの半径方向壁部310に固定され得る。摩擦材リング330は、ダンパープレートの半径方向壁部326に固定して取り付けられている。(図示されていない)別の実施形態において、リング330は、カバーシェルの半径方向壁部322に固定されている。
【0032】
コンバーター300は、ダンパーばね332を有しており、クラッチプレート312は、第1のダンパーばねと半径方向に整列した周方向壁部334を有している。典型的な実施形態において、壁部318、334は、一体形成されたばね保持部336の少なくとも一部を形成しており、ダンパーばね332は保持部336内に配置されている。コンバーター300は、ダンパープレート338、340を有している。プレート338は、例えばリベット339でクラッチプレート312に固定されており、且つクラッチプレートの半径方向壁部318と少なくとも部分的に軸線方向に整列した駆動タブ342を有している。タブ342は、ダンパーばね332と係合している。プレート340は、例えば薄板金属のリベット343によってプレート324に固定されており、クラッチプレートの半径方向壁部と少なくとも部分的に軸線方向に整列するとともに、ダンパーばね332と係合する駆動タブ344を有している。
【0033】
コンバーター300は、ダンパープレート324、340の各々のばね窓部348、350内に少なくとも部分的に配置されたダンパーばね346を有している。プレート324、340の間に配置されたダンパープレート352は、上述したプレート284に類似する手段で、タービンシェルからのスラスト力をダンパープレート324に伝達するために設けられている。プレート352は、ばね窓部354と、窓部354の半径方向内側に配置されたオリフィス356と、変速機の入力軸に接続するために設けられたスプライン部358とを有している。ばね346は、窓部354内に少なくとも部分的に配置されている。典型的な実施形態において、コンバーター300は、本技術分野において公知である、ダンパープレート324に固定された振り子ダンパー360を有している。
【0034】
ブッシュ362は、タービンシェルの周方向孔部366内に配置された周方向部分364と、タービンシェル及びダンパープレート352の間に配置された半径方向部分368とを有している。コンバーター300の運転中、タービン306は、カバーシェル320に向かって、方向370にスラスト力を生じる。タービンからのスラスト力は、シェル314から、ブッシュ362を介して、プレート352、プレート324、リング330、シェル320の壁部322に伝達される。このスラスト力の経路は、有利には、シェル314及びクラッチプレート312の軸線方向移動を制限し、これにより上述のような「持ち上がり」を制御する。
【0035】
カバー320及びクラッチプレート312間に配置されたチャンバー372内の圧力は、トーラス302における圧力を超えて増大され、これによりクラッチを係合するとともに、トーラスの流体回路を迂回する。即ち、カバー320からインペラ308に伝達されたトルクは、流体回路の作用を受けることなく、プレート312を介してタービンシェル314に直接伝達される。クラッチの係合を試みる前のコンバーター300の運転状態にもよるが、正確でない持ち上がりの制御は、コンバーター内での流体力学的な力に起因するクラッチ係合を防止する。
【0036】
勿論、特許請求の範囲における発明の精神又は範囲を逸脱することのない、本発明における上述の実施例に対する変更及び修正は、当業者にとって明白である。本発明は、特定の好ましい及び/又は典型的な実施形態を参照して説明されているが、特許請求の範囲における発明の範囲又は精神を逸脱することなく、変更がされ得ることは明らかである。
【国際調査報告】