特表2015-530904(P2015-530904A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-530904(P2015-530904A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(54)【発明の名称】薬物溶出外科用ねじ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/58 20060101AFI20151002BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20151002BHJP
【FI】
   A61B17/58
   A61L31/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-527529(P2015-527529)
(86)(22)【出願日】2013年8月13日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月3日
(86)【国際出願番号】US2013054671
(87)【国際公開番号】WO2014028449
(87)【国際公開日】20140220
(31)【優先権主張番号】61/683,262
(32)【優先日】2012年8月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】513164565
【氏名又は名称】シンセス・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Synthes GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アームブラスター・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】パンディ・アヌラグ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081BA14
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA08
4C081CA17
4C081CA18
4C081CE01
4C081CE11
4C081CF01
4C081CF03
4C081CF05
4C081CF13
4C081DB03
4C160LL42
4C160LL57
(57)【要約】
本発明は、薬物溶出外科用ねじ、及び薬物溶出外科用ねじの製造方法を提供する。この薬物溶出外科用ねじは、ねじ部を有する軸と;この軸の近位末端に配置された駆動凹部を有する頭部であって、この駆動凹部が収容容器領域及びドライバ係合領域を有する、頭部と;ドライバがこのドライバ係合領域内に動作可能に配置された場合、ドライバと外科用ねじとの接続を実質的に損なわない様式で、駆動凹部の収容容器領域内に配置された少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素と、を含んでよく、この少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちのそれぞれは、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に薬物溶出構成要素の少なくとも20重量%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物溶出外科用ねじであって、
ねじ部を有する軸と、
前記軸の近位末端に配置された駆動凹部を有する頭部であって、前記駆動凹部が収容容器領域及びドライバ係合領域を有する、頭部と、
ドライバが前記ドライバ係合領域内に動作可能に配置された場合、前記ドライバと前記外科用ねじとの間の接続を実質的に損なわない様式で、前記駆動凹部の前記収容容器領域内に配置された少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素と、を含み、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちのそれぞれが、
担体マトリックス及び治療薬を含み、前記治療薬が、前記薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、前記薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である、薬物溶出外科用ねじ。
【請求項2】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記治療薬の濃度が、前記薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの前記少なくとも1つの約20重量%〜約60重量%である、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項3】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記治療薬の濃度が、前記薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの前記少なくとも1つの約20重量%〜約40重量%である、請求項2に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項4】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つが、その治療薬の少なくとも約80%を、前記薬物溶出外科用ねじが動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項5】
前記収容容器領域が、収容容器容積を画定し、前記駆動凹部が、駆動凹部容積を画定し、前記収容容器容積が、前記駆動凹部容積の約10%〜約12%である、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項6】
前記駆動凹部の前記収容容器領域が、前記ドライバ係合領域と隣接しており、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が、前記ドライバ係合領域内に延出しない、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項7】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、生体吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項8】
前記生体吸収性ポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項9】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項10】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、シリカ、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、バイオガラス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項11】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、疎水性生体吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項12】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、非吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項13】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、非吸収性ポリマー及び生体吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項14】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、浸食可能セラミック又は生体安定セラミックを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項15】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、非吸収性ポリマー及び可溶性添加剤を含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項16】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つが、濃度勾配を含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項17】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記治療薬が、ゲンタマイシンを含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項18】
前記収容容器領域が、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素を保持するように形作られ、そのような寸法にされる、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項19】
前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、前記薬物溶出構成要素を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁を更に含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【請求項20】
少なくとも2つの薬物溶出構成要素を更に含む、請求項1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年8月15日に出願された「Drug Eluting Surgical Screw」と題する米国仮特許出願第61/683,262号の利益を主張するものであり、当該出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
外科手術後の感染リスクについては、十分に記述されている。創傷部位中の骨折部固定プレート(例えば、整形外科用骨折部固定プレート)などの異物の存在は、細菌が接着及び増殖し、バイオフィルムを形成し、宿主の免疫系を回避するための基材を提供することになり、外科手術後の感染リスクを増大させ得る。感染リスクは、外科手術前の創傷の細菌汚染が一般的である開放骨折の場合に増大し得る。インプラント関連感染の結果は重大であることがあり、感染の再発は慢性骨髄炎、治癒障害、及びことによると四肢切断をもたらす。この問題に取り組むために抗生物質溶出インプラントが開発されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態は、薬物溶出外科用ねじであり、該薬物溶出外科用ねじは、ねじ部を有する軸と;この軸の近位末端に配置された駆動凹部を有する頭部であって、この駆動凹部が収容容器領域及びドライバ係合領域を有する、頭部と;ドライバがこのドライバ係合領域内に動作可能に配置された場合、ドライバと外科用ねじとの接続を実質的に損なわない様式で、駆動凹部の収容容器領域内に配置された少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素と;を含み、この少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちのそれぞれは、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である。
【0004】
一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つは、その治療薬の少なくとも約80%を、薬物溶出外科用ねじが動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される。
【0005】
一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬の濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの約20重量%〜約60重量%である。
【0006】
一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの約20重量%〜約40重量%である。
【0007】
一実施形態では、収容容器領域は、収容容器容積を画定し、駆動凹部は、駆動凹部容積を画定し、収容容器容積は、駆動凹部容積の約10%〜約12%である。一実施形態では、駆動凹部の収容容器領域は、ドライバ係合領域と隣接しており、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素は、ドライバ係合領域内に延出しない。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、担体マトリックスは、生体吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、担体マトリックスは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む。別の実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、担体マトリックスは、シリカ、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、バイオガラス、又はこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、担体マトリックスは、疎水性生体吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、疎水性生体吸収性ポリマーは、水膨潤性添加剤を含み、これは体内への植え込み後、水で膨潤する。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、担体マトリックスは、非吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、非吸収性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、担体マトリックスは、非吸収性ポリマー及び生体吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、生体吸収性ポリマーは、浸食可能セラミックを含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、生体吸収性ポリマーは、生体安定セラミックを含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、生体吸収性ポリマーは、天然生体ポリマーを含む。一実施形態では、天然生体ポリマーは、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、又はヒアルロン酸塩を含む。
【0008】
一実施形態では、1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つは、非吸収性ポリマー及び可溶性添加剤を含む。別の実施形態では、非吸収性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)を含む。別の実施形態では、可溶性添加剤は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、濃度勾配を含む。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、ゲンタマイシンを含む。別の実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、ステロイドを含む。別の実施形態では、ステロイドは、血管新生抑制性ステロイドである。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、抗炎症薬を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、抗増殖性化合物を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、抗真菌化合物を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、抗有糸分裂性化合物を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、代謝拮抗性化合物を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、疼痛緩和薬を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、副腎皮質ホルモンを含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、非ステロイド性抗炎症薬を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、コドラッグを含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、増殖因子を含む。一実施形態では、増殖因子は、骨形態形成タンパク質2を含む。一実施形態では、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、治療薬は、局所麻酔薬を含む。一実施形態では、局所麻酔薬は、リドカインを含む。
【0011】
一実施形態では、収容容器領域は、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素を保持するように形作られ、そのような寸法にされる。
【0012】
一実施形態では、薬物溶出外科用ねじは、少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁を更に含む。
【0013】
一実施形態では、薬物溶出外科用ねじは、少なくとも2つの薬物溶出構成要素を更に含む。
【0014】
一実施形態では、本発明は、薬物溶出外科用ねじの製造方法であり、この方法は、薬物溶出構成要素を溶媒と混合して溶液を形成することであって、この薬物溶出構成要素が、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬が、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である、形成することと;この溶液を加熱して溶媒を蒸発させ、フィルムを形成することと;このフィルムの少なくとも一部を、外科用ねじの駆動凹部を補完するサイズ及び形状に設計することと;このフィルムの少なくとも一部を外科用ねじの駆動凹部に入れることと;このフィルムの少なくとも一部を加熱して駆動凹部の断面のサイズ及び形状と一致させることと;この加熱済みフィルムの少なくとも一部を形成ツールで駆動凹部に圧入することと、を含む。形成ツールは好ましくは、加熱済みフィルムに十分な圧力を適用して、フィルムと外科用ねじとの間に結合を生成するために使用される。
【0015】
一実施形態では、本発明は、薬物溶出外科用ねじの製造方法であり、この方法は、薬物溶出構成要素を調合することであって、この薬物溶出構成要素が、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬が、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である、調合することと;この調合した薬物溶出構成要素を押し出して、フィルムを形成することと;このフィルムの少なくとも一部を、外科用ねじの駆動凹部を補完するサイズ及び形状に設計することと;このフィルムの少なくとも一部を外科用ねじの駆動凹部に入れることと;このフィルムの少なくとも一部を加熱して駆動凹部の断面のサイズ及び形状と一致させることと;この加熱済みフィルムの少なくとも一部を形成ツールで駆動凹部に圧入することと、を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、薬物溶出外科用ねじの製造方法であり、この方法は、薬物溶出構成要素を調合することであって、この薬物溶出構成要素が、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬が、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である、調合することと;この調合した薬物溶出構成要素を圧縮成形して、フィルムを形成することと;このフィルムの少なくとも一部を、外科用ねじの駆動凹部を補完するサイズ及び形状に設計することと;このフィルムの少なくとも一部を外科用ねじの駆動凹部に入れることと;このフィルムの少なくとも一部を加熱して駆動凹部の断面のサイズ及び形状と一致させることと;この加熱済みフィルムの少なくとも一部を形成ツールで駆動凹部に圧入することと、を含む。
【0017】
一実施形態では、各工程は、追加の薬物溶出構成要素を外科用ねじの駆動凹部に付加するために、連続的に繰り返される。
【0018】
一実施形態では、薬物溶出構成要素は、治療薬の少なくとも約80%を、薬物溶出外科用ねじが動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される。
【0019】
一実施形態では、治療薬の濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約60重量%である。
【0020】
一実施形態では、治療薬の濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約40重量%である。
【0021】
一実施形態では、担体マトリックスは、生体吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、担体マトリックスは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む。一実施形態では、担体マトリックスは、シリカ、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、バイオグラス、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、担体マトリックスは、疎水性生体吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、疎水性生体吸収性ポリマーは、水膨潤性添加剤を含み、これは体内への植え込み後、水で膨潤する。一実施形態では、担体マトリックスは、非吸収性ポリマーを含む。別の実施形態では、非吸収性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)を含む。一実施形態では、担体マトリックスは、非吸収性ポリマー及び生体吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、浸食可能セラミックを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、生体安定セラミックを含む。一実施形態では、生体吸収性ポリマーは、天然生体ポリマーを含む。別の実施形態では、天然生体ポリマーは、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、又はヒアルロン酸塩を含む。
【0022】
一実施形態では、薬物溶出構成要素は、非吸収性ポリマー及び可溶性添加剤を含む。一実施形態では、非吸収性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)を含む。一実施形態では、可溶性添加剤は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む。
【0023】
一実施形態では、薬物溶出構成要素は、濃度勾配を含む。
【0024】
一実施形態では、治療薬は、ゲンタマイシンを含む。別の実施形態では、治療薬は、ステロイドを含む。一実施形態では、ステロイドは、血管新生抑制性ステロイドである。一実施形態では、治療薬は、抗炎症薬を含む。一実施形態では、治療薬は、抗増殖性化合物を含む。一実施形態では、治療薬は、抗真菌化合物を含む。一実施形態では、治療薬は、抗有糸分裂性化合物を含む。一実施形態では、治療薬は、代謝拮抗性化合物を含む。一実施形態では、治療薬は、疼痛緩和薬を含む。一実施形態では、治療薬は、副腎皮質ホルモンを含む。一実施形態では、治療薬は、非ステロイド性抗炎症薬を含む。一実施形態では、治療薬は、コドラッグを含む。一実施形態では、治療薬は、増殖因子を含む。一実施形態では、増殖因子は、骨形態形成タンパク質2を含む。別の実施形態では、治療薬は、局所麻酔薬を含む。一実施形態では、局所麻酔薬は、リドカインを含む。
【0025】
本発明の一実施形態は、薬物溶出外科用ねじであり、該薬物溶出外科用ねじは、ねじ部を有する軸と;この軸の近位末端に配置された駆動凹部を有する頭部であって、この駆動凹部が収容容器領域及びドライバ係合領域を有する、頭部と;ドライバがこのドライバ係合領域内に動作可能に配置された場合、ドライバと外科用ねじとの間の接続を実質的に損なわない様式で、駆動凹部の収容容器領域内に配置された薬物溶出構成要素と、を含み、この薬物溶出構成要素は、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である。
【0026】
一実施形態では、薬物溶出構成要素は、治療薬の少なくとも約80%を、薬物溶出外科用ねじが動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される。別の実施形態では、治療薬の濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約60重量%である。別の実施形態では、治療薬の濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約40重量%である。
【0027】
一実施形態では、収容容器領域は、収容容器容積を画定し、駆動凹部は、駆動凹部容積を画定し、収容容器容積は、駆動凹部容積の約10%〜約12%である。
【0028】
別の実施形態では、駆動凹部の収容容器領域は、ドライバ係合領域と隣接しており、薬物溶出構成要素は、ドライバ係合領域内に延出しない。
【0029】
ある実施形態では、担体マトリックスは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。
【0030】
一実施形態では、治療薬は、ゲンタマイシンを含む。
【0031】
他の実施形態では、収容容器領域は、薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素を保持するように形作られ、そのような寸法にされる。
【0032】
別の実施形態では、薬物溶出外科用ねじは、薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁を更に含む。
【0033】
一実施形態では、本発明は、薬物溶出外科用ねじの製造方法を目的とし、この方法は、薬物溶出構成要素を溶媒と混合して溶液を形成することであって、この薬物溶出構成要素が、担体マトリックス及び治療薬を含み、この治療薬が、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である、形成することと;この溶液を加熱して溶媒を蒸発させ、フィルムを形成することと;このフィルムの少なくとも一部を、外科用ねじの駆動凹部を補完するサイズ及び形状に設計することと;このフィルムの少なくとも一部を外科用ねじの駆動凹部に入れることと;このフィルムの少なくとも一部を加熱して駆動凹部の断面のサイズ及び形状と一致させることと;この加熱済みフィルムの少なくとも一部を駆動凹部に圧入することと、を含む。形成ツールは好ましくは、加熱済みフィルムに十分な圧力を適用して、フィルムと外科用ねじとの間の結合を生成するために使用される。
【0034】
一実施形態では、薬物溶出構成要素は、治療薬の少なくとも約80%を、薬物溶出外科用ねじが動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される。別の実施形態では、治療薬は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約60重量%である。別の実施形態では、治療薬の濃度は、薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約40重量%である。
【0035】
一実施形態では、担体マトリックスは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。
【0036】
ある実施形態では、治療薬は、ゲンタマイシンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
前述の発明の概要並びに本発明の実施形態の以下の詳細な説明は、例示的な実施形態の添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。しかしながら、本発明は、図示された精密な配置及び手段に限定されるものでないことを理解すべきである。
【0038】
図面は以下の通りである。
図1A】一実施形態に従う外科用ねじの上面図である。
図1B】一実施形態に従う外科用ねじの側面透視部分的断面図である。
図2A】駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の上面図である。
図2B】駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の側面透視部分的断面図である。
図3A】拡散障壁層を伴う駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の上面図である。
図3B】拡散障壁層を伴う駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の側面透視部分的断面図である。
図4A】2種類の異なる薬物を含有する、駆動凹部内に2層の薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の上面図である。
図4B】2種類の異なる薬物を含有する、駆動凹部内に2層の薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の側面透視部分的断面図である。
図5A】勾配状薬物濃度で、駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の上面図である。
図5B】勾配状薬物濃度で、駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の側面透視部分的断面図である。
図6A】駆動凹部の底に付加された追加の収容容器を有し、かつ駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の上面図である。
図6B】駆動凹部の底に付加された追加の収容容器を有し、かつ駆動凹部内に薬物溶出マトリックスを有する外科用ねじの実施形態の側面透視部分的断面図である。
図7A】薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁を有する外科用ねじの実施形態の上面図である。
図7B】薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁を有する外科用ねじの実施形態の側面透視部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付の図面を参照して、本発明の様々な実施形態が以下により完全に説明される。全てではないがいくつかの本発明の実施形態が示される。実際に、本発明の様々な実施形態は、多くの異なる形態で実施可能であり、明示的に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきでない。同様の数字は、全体を通して同様の要素を指す。単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容的に明らかに示されていないかぎり、単数及び複数を含む。
【0040】
概ね図1A〜7Bに示されるように、本発明の実施形態は、外科用ねじ100を目的とする。いくつかの実施形態では、外科用ねじは、軸110を有する。一実施形態では、軸110は、ねじ部120を有する。ある実施形態では、外科用ねじ100は、軸110の近位末端130に配置された頭部140を含む。一実施形態では、頭部140は、駆動凹部150を有する。一実施形態では、駆動凹部150は、六角形に形作られる。六角形に形作られることが例示されているが、駆動凹部150の形状は、ねじ全体に挿入力を分配するために好適な任意の様式、例えば、他の多角形若しくは概ね多角形の形状、半円形、スロット型、十字穴型、六角星型、又は多丸穴に設計されてよいことが想定される。
【0041】
図2Bを参照すると、ある実施形態では、駆動凹部150は、収容容器領域160及びドライバ係合領域170を有する。図2Bと6Bとを比較することにより分かるように、ある実施形態では、収容容器領域160は、様々な形状及び深さのものであってよい。収容容器領域160は、ドライバがドライバ係合領域170内に動作可能に配置された場合、ドライバと外科用ねじ100との間の接続を実質的に損なわないであろう様式で薬物溶出構成要素200でコーティングされ得る、ねじ100の頭部140の任意の領域であってよい。ドライバ係合領域170は、ドライバが頭部140内に動作可能に配置された場合、ドライバと係合可能である、薬物溶出構成要素200でコーティングされた又はコーティングされていない、ねじ100の頭部140の任意の領域であってよい。収容容器領域160及びドライバ係合領域170は、排他的である必要はなく、重なり合ってよい。
【0042】
一実施形態では、収容容器領域160は、収容容器容積210を画定し、駆動凹部150は、ドライバ凹部容積220を画定し、収容容器容積210は、ドライバ凹部容積の約10%〜約12%である。他の実施形態では、収容容器容積210は、ドライバ凹部容積220の約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%、約12%、約12.5%、約13%、約13.5%、約14%、又は上記割合から決定可能な任意の範囲(例えば、約8%〜約9.5%、又は約8.5%〜約13%)である。
【0043】
ある実施形態では、多層の薬物溶出構成要素が、駆動凹部150の収容容器領域160内に層化され、多数の治療薬が様々な速度で、連続的に、又は同時に、様々な濃度で放出されるのを可能にし得る。これらの層のうちの1層は、治療薬を含有しないが薬物の拡散を阻害するための障壁層として働いてもよい。障壁層としての機能を果たすことができる例示的な材料としては、生体吸収性ポリマー、例えばポリカプロラクトン又はポリグリコリド、天然脂肪酸、例えばパルミチン酸又はステアリン酸、及び天然生体ポリマー、例えばコラーゲン又はアルギン酸塩が挙げられる。
【0044】
図3Bで示されるように、一実施形態では、拡散障壁層300及び薬物溶出構成要素200の両方が、駆動凹部150の収容容器領域160内に配置される。
【0045】
更に、図4Bは、2つの薬物溶出構成要素ある薬物溶出構成要素200及び薬物溶出構成要素400が、駆動凹部150の収容容器領域160内に配置された、外科用ねじの例示的な図を示す。いくつかの実施形態では、薬物溶出構成要素200及び薬物溶出構成要素400は、異なる治療薬を含む。他の実施形態では、薬物溶出構成要素200及び薬物溶出構成要素400は、異なる放出速度で治療薬を溶出するように設計される。
【0046】
図5Bは、勾配状濃度の薬物溶出構成要素500を有する、本発明の例示的な実施形態を示し、例えば、治療薬は表面ではより低い濃度であり、深さがより深くなるにつれて徐々に濃度がより高くなり、又はあるいは、治療薬は表面ではより高い濃度であり、深さがより深くなるにつれて徐々に濃度がより低くなる。
【0047】
図2Bで概ね示されるように、本発明の一実施形態は、駆動凹部150の収容容器領域160内に配置された薬物溶出構成要素200を含む。ある実施形態では、薬物溶出構成要素200は、ドライバがドライバ係合領域170内に動作可能に配置された場合、薬物溶出構成要素200がドライバと外科用ねじ100との間の接続を実質的に損なわないような様式で位置付けられる。例えば、図2Bで示されるように、薬物溶出構成要素200は、頭部140の基部230に位置付けられよい。他の実施形態では、駆動凹部150の収容容器領域160は、ドライバ係合領域170と隣接しており、薬物溶出構成要素200は、ドライバ係合領域170内に延出しない。
【0048】
一実施形態では、収容容器領域160は、薬物溶出構成要素200が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素200を保持するように形作られ、そのような寸法にされる。例えば、図7A及び7Bで示されるように、外科用ねじ100は、薬物溶出構成要素200が硬化状態にある場合、薬物溶出構成要素200を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁700を含む。
【0049】
一実施形態では、薬物溶出構成要素200は、治療薬を含有する担体マトリックスを含む。ある実施形態では、担体マトリックスは、治療薬の体内への放出速度を促進する材料、例えば、ポリマー、セラミック、又はハイドロゲルを含む。一実施形態では、担体マトリックスは、生体吸収性ポリマー、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む。
【0050】
他の実施形態では、担体マトリックスは、制御された速度で溶解し、治療薬がそこを通って溶出できる孔を生成する、可溶性添加剤を含む。可溶性添加剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体が挙げられる。可溶性添加剤の量を変化させることにより、治療薬の溶出速度を変更することができる。様々な放出速度を有するある実施形態は、多数の薬物溶出構成要素を有することにより達成することができ、それぞれは、様々な可溶性添加剤を有する様々な生体吸収性マトリックスを有する。
【0051】
別の実施形態では、担体マトリックスは、体内への植え込み後に水で膨潤し、治療薬が速い速度で放出されるのを可能にする、水膨潤性添加剤を含有する、疎水性生体吸収性ポリマーを含む。水膨潤性添加剤の量を変化させることにより、治療薬の溶出速度を変更することができる。
【0052】
一実施形態では、担体マトリックスは、非吸収性ポリマー、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)を含む。
【0053】
別の実施形態では、担体マトリックスは、非吸収性ポリマー及び可溶性添加剤、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む。可溶性添加剤は、制御された速度で溶解し、非吸収性マトリックス中に、治療薬がそこを通って溶出できる孔を生成する。
【0054】
ある実施形態では、担体マトリックスは、生体吸収性ポリマー及び非吸収性ポリマーの配合物を含む。
【0055】
他の実施形態では、担体マトリックスは、浸食可能又は生体安定セラミック、例えば、シリカ、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、バイオガラス、又はこれらの組み合わせを含む。
【0056】
一実施形態では、担体マトリックスは、天然生体ポリマー、例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、又はヒアルロン酸塩を含む。
【0057】
一実施形態では、治療薬は、抗生物質、又は複数の抗生物質の組み合わせを含む。一実施形態では、治療薬は、ゲンタマイシンを含む。
【0058】
他の実施形態では、治療薬は、ステロイド、抗炎症薬、抗増殖性化合物、抗真菌化合物、抗有糸分裂性化合物、代謝拮抗性化合物、疼痛緩和薬、副腎皮質ホルモン、血管新生抑制性ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、及び/又はコドラッグを含む。
【0059】
ある実施形態では、治療薬は、増殖因子、例えば、骨形態形成タンパク質2(BMP−2)を含む。他の実施形態では、治療薬は、局所麻酔薬、例えば、リドカインを含む。
【0060】
ある実施形態では、治療薬は、体内へのその放出を促進する材料中に完全に溶解されるか、又はその材料内で分離性の粒子のままであり得る。
【0061】
一実施形態では、治療薬は、薬物溶出外科用ねじ100の任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%を構成する。一実施形態では、治療薬は、薬物溶出外科用ねじ100の任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約60重量%を構成する。一実施形態では、治療薬は、薬物溶出外科用ねじ100の任意の植え込み前に、薬物溶出構成要素の約20重量%〜約40重量%を構成する。他の実施形態では、治療薬は、薬物溶出外科用ねじ100の任意の植えこみ前に、薬物溶出構成要素の約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、又は上記の重量割合から決定可能な任意の範囲(例えば、約51重量%〜約55重量%、又は約30重量%〜約52重量%)を構成する。
【0062】
一実施形態では、薬物溶出構成要素200は、治療薬の少なくとも約80%を、薬物溶出外科用ねじ100が動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される。他の実施形態では、薬物溶出構成要素200は、治療薬の約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又は上記割合から決定可能な任意の範囲(例えば、約50%〜約77%、又は約85%〜約94%)を、薬物溶出外科用ねじ100が動物に植え込まれたときから1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日間、又は上記日数から決定可能な任意の範囲(例えば、1〜3日間、又は3〜4日間)の期間にわたり、溶出するように設計される。
【0063】
一実施形態では、本発明は、薬物溶出外科用ねじ100の製造方法を含む。一実施形態では、この方法は、薬物溶出構成要素に由来するフィルムを形成することを含む。一実施形態では、フィルムは、薬物溶出構成要素を溶媒と混合して溶液を形成し、この溶液を加熱して溶媒を蒸発させ、フィルムを形成することにより形成される。別の実施形態では、フィルムは、薬物溶出構成要素を、例えば、調合を含むプロセスによる融解プロセスに供し、次にこの融解した薬物溶出構成要素を押出し成形又は圧縮成形に供することにより形成される。一実施形態では、フィルムが形成された後、本方法は、フィルムの少なくとも一部を外科用ねじの駆動凹部を補完するサイズ及び形状に設計することを含む。一実施形態では、本方法は、フィルムの少なくとも一部を外科用ねじ100の駆動凹部150に入れることを更に含む。一実施形態では、フィルムの少なくとも一部を駆動凹部150に入れた後、駆動凹部の断面のサイズ及び形状と一致させるために、フィルムの少なくとも一部を加熱する。一実施形態では、フィルムの少なくとも一部を加熱した後、本方法は、加熱済みフィルムの少なくとも一部を駆動凹部150に圧入することを含む。一実施形態では、形成ツール、例えば、駆動凹部内に嵌合するように形作られた末端を有するねじ回しが使用され、例えば、加熱済みフィルムを駆動凹部150に圧入することにより使用されて、加熱済みフィルムの少なくとも一部と駆動凹部側壁との間の十分な結合を形成する。
【0064】
一実施形態では、例えば、図4A及び4Bで示されるように、上記で説明される薬物溶出外科用ねじ100の製造方法は、多層の薬物溶出構成要素を有する薬物溶出外科用ねじ100を作製するために繰り返される。
【0065】
一実施形態では、本発明は、インプラント、例えば、固定プレートを固定するための、薬物溶出外科用ねじ100の使用方法を含む。一実施形態では、本方法は、例えば、穿孔により、薬物溶出ねじ100を受容するための骨内の腔を形成することを含む。本方法は、開口部を有するインプラントを、開口部が腔と整列した状態で骨に対して置くことを更に含み得る。本方法は、薬物溶出ねじ100を骨に固定するためにドライバを用いることを更に含んでよく、これにより、インプラントは、骨とねじの頭部との間に保持される。
【0066】
一実施形態では、本発明は、外科手術後の感染リスクを減少させる方法を含む。一実施形態では、本方法は、薬物溶出外科用ねじ100を用いて、外科手術後に動物内にインプラントを固定することを含む。ある実施形態では、薬物溶出構成要素200は、インプラントの表面で局所的に抗生物質、例えば、ゲンタマイシンを溶出し、これにより感染リスクを減少させることになる。
【0067】
本明細書の広義の発明概念から逸脱せずに、上に示されかつ記載された例示的な実施形態に対して変更を行うことができることが当業者により認識されるであろう。従って、本発明は図示されかつ記載された例示的な実施形態に限定されないが、特許請求の範囲により規定される本発明の趣旨及び範囲内の修正を網羅するように意図されることが理解される。例えば、例示的な実施形態の具体的な特徴は本願発明の一部であってもよいしそうでなくてもよく、また開示された実施形態の特徴は組み合わされてもよい。
【0068】
本発明の図面及び説明の少なくともいくつかは、本発明の明確な理解のために適切である要素に焦点を合わせるように簡略化されてきたことは理解されるべきであるが、一方明確にするために、当業者が認める他の要素を取り除くことはまた本発明の一部分を構成してもよい。しかしながら、このような要素が当該技術分野において周知であるため、及びそれらが本発明のよりよい理解を必ずしも容易にするわけでないため、このような要素の記載は本明細書に提供されない。
【0069】
更に、方法が本明細書に明記されている工程の特定の順序に依拠しないことの範囲内において、工程の特定の順序は特許請求の範囲に対する制限と解釈されるべきでない。本発明の方法を対象とした特許請求の範囲は、書かれた順序での工程の実施に限定されるべきでなく、また当業者は、工程が変わり得るものであり、かつ本発明の趣旨及び範囲内に依然留まり得ることを容易に認識できる。
【0070】
〔実施の態様〕
(1) 薬物溶出外科用ねじであって、
ねじ部を有する軸と、
前記軸の近位末端に配置された駆動凹部を有する頭部であって、前記駆動凹部が収容容器領域及びドライバ係合領域を有する、頭部と、
ドライバが前記ドライバ係合領域内に動作可能に配置された場合、前記ドライバと前記外科用ねじとの間の接続を実質的に損なわない様式で、前記駆動凹部の前記収容容器領域内に配置された少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素と、を含み、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちのそれぞれが、
担体マトリックス及び治療薬を含み、前記治療薬が、前記薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、前記薬物溶出構成要素の少なくとも約20重量%である、薬物溶出外科用ねじ。
(2) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記治療薬の濃度が、前記薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの前記少なくとも1つの約20重量%〜約60重量%である、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(3) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記治療薬の濃度が、前記薬物溶出外科用ねじの任意の植え込み前に、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの前記少なくとも1つの約20重量%〜約40重量%である、実施態様2に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(4) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つが、その治療薬の少なくとも約80%を、前記薬物溶出外科用ねじが動物に植え込まれたときから3日間の期間にわたり、溶出するように設計される、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(5) 前記収容容器領域が、収容容器容積を画定し、前記駆動凹部が、駆動凹部容積を画定し、前記収容容器容積が、前記駆動凹部容積の約10%〜約12%である、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【0071】
(6) 前記駆動凹部の前記収容容器領域が、前記ドライバ係合領域と隣接しており、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が、前記ドライバ係合領域内に延出しない、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(7) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(8) 前記生体吸収性ポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、実施態様7に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(9) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、塩、又は水溶性結晶固体を含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(10) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、シリカ、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、バイオガラス、又はこれらの組み合わせを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【0072】
(11) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、疎水性生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(12) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、非吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(13) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、非吸収性ポリマー及び生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(14) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、浸食可能セラミック又は生体安定セラミックを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(15) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記担体マトリックスが、非吸収性ポリマー及び可溶性添加剤を含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
【0073】
(16) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つが、濃度勾配を含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(17) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素のうちの少なくとも1つの、前記治療薬が、ゲンタマイシンを含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(18) 前記収容容器領域が、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素を保持するように形作られ、そのような寸法にされる、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(19) 前記少なくとも1つ又は2つ以上の薬物溶出構成要素が硬化状態にある場合、前記薬物溶出構成要素を保持するように設計され、そのような寸法にされた縁を更に含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
(20) 少なくとも2つの薬物溶出構成要素を更に含む、実施態様1に記載の薬物溶出外科用ねじ。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【国際調査報告】