特表2015-530921(P2015-530921A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-530921ゼオライトで活性化されるV/TiW触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-530921(P2015-530921A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(54)【発明の名称】ゼオライトで活性化されるV/TiW触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/48 20060101AFI20151002BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20151002BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20151002BHJP
   B01J 29/69 20060101ALI20151002BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20151002BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20151002BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20151002BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20151002BHJP
【FI】
   B01J29/48 AZAB
   B01J37/02 301C
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301N
   B01J37/02 301L
   B01J29/69 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
   F01N3/08 B
   F01N3/28 301E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-527027(P2015-527027)
(86)(22)【出願日】2013年8月16日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月6日
(86)【国際出願番号】GB2013052181
(87)【国際公開番号】WO2014027207
(87)【国際公開日】20140220
(31)【優先権主張番号】61/684,352
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ドッツェル, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨードラウク, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】レッペルト, ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミュンヒ, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ピラス, イレーネ
(72)【発明者】
【氏名】スメドラー, グドムント
【テーマコード(参考)】
3G091
4D048
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA11
3G091AA12
3G091AA18
3G091AA19
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3G091AB15
3G091BA14
3G091BA39
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3G091GB09X
3G091GB10W
3G091HA10
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4G169AA02
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4G169BA04A
4G169BA04B
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4G169CA13
4G169CA14
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4G169CA18
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4G169EA19
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4G169FB67
4G169ZA11A
4G169ZA11B
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4G169ZA13B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZA37A
4G169ZA37B
4G169ZD01
(57)【要約】
第1の成分と第2の成分のブレンドを含む排気ガスを処理するための触媒組成物を提供し、該第1の成分は、アルミノシリケート又はフェロシリケートのモレキュラーシーブ成分であり、該モレキュラーシーブは、H+型であるか又は一又は複数の遷移金属でイオン交換され、該第2の成分は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物上に担持するバナジウム酸化物である。また、このような触媒混合物を導入又は利用する、方法、システム、及び触媒体も提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成分と第2の成分のブレンドを含む排気ガスを処理するための触媒組成物であって、該第1の成分は、アルミノシリケート又はフェロシリケートのモレキュラーシーブ成分であり、該モレキュラーシーブは、H+型であるか又は一又は複数の遷移金属でイオン交換され、該第2の成分は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物上に担持されたバナジウム酸化物である、触媒組成物。
【請求項2】
モレキュラーシーブが、MFI、BEA、及びFERから選択される骨格を有する請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
モレキュラーシーブが、H+/MFIアルミノシリケートである請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
モレキュラーシーブが、Feイオン交換されたMFI、BEA、又はFERアルミノシリケートである請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
モレキュラーシーブが、約1から約10重量パーセントのイオン交換したFeを含む請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
モレキュラーシーブが、BEAフェロシリケートである請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
金属酸化物の担体が、チタン酸化物である請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
第2の成分が、更にタングステン酸化物を含む請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
第2の成分が、更にバナジン酸鉄を含む請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
第1の成分と第2の成分が、ブレンド中にそれぞれ約5:95から約40:60の重量比で存在する請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項11】
ブレンドが、第1及び第2の成分の重量に基づいて約0.5から5重量パーセントのバナジウム酸化物を含む請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項12】
一又は複数の充填剤、結合剤、加工助剤、水、及びドープ剤を更に含む請求項1に記載の触媒を含む触媒のウォッシュコート。
【請求項13】
請求項1に記載の触媒で覆われた基材を含むか又は請求項1に記載の触媒を導入する触媒体であって、該基材が金属製フロースルー基材、セラミック製フロースルー基材、ウォールフロー型フィルター、焼結金属フィルター、パーシャルフィルター、及び押出成形触媒ハニカムから選択される、触媒体。
【請求項14】
選択的にNOを還元し、及び/又はNHを酸化するための第2の触媒組成物を有するウォッシュコートを更に含む、請求項13に記載の触媒体。
【請求項15】
前記第2の触媒組成物が、(a)請求項1に記載の触媒ブレンド、(b)遷移金属で活性化されたモレキュラーシーブ、(c)白金族金属触媒、又は(d)バナジウム系触媒から選択される、請求項14に記載の触媒体。
【請求項16】
基材は、アンモニアを酸化するための白金族金属を含有する第1層と、請求項1に記載の触媒を含む第2層とを含み、該第1層は、該基材上又は中に直接配され、該第2層は、該第1層を覆う、請求項13に記載の触媒体。
【請求項17】
アンモニアスリップ触媒(ASC)の上流に選択的接触還元(SCR)触媒を含む、排気ガスを処理するためのシステムであって、前記SCR及びASC触媒の少なくとも一つが請求項1に記載の触媒である、システム。
【請求項18】
前記選択的接触還元触媒の上流に配される白金族金属を有するディーゼル酸化触媒を更に含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
a.請求項1に記載の触媒存在下、NO及び/又はNHを含有する排気ガスと接触させる工程、及び
b.前記NOの少なくとも一部をNに転化する工程、及び/又はNHの少なくとも一部をN及びNOの少なくとも一種に転化する工程
を含む、排気ガスを処理するための方法。
【請求項20】
前記排気ガスが、体積で約4:1から約1:3までのNOとNOの比を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素燃料の燃焼の結果として生じる排気ガス、特に、ディーゼルエンジンによって産生される排気ガスのような窒素酸化物を含む排気ガスを処理するために有用である、触媒、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大抵の燃焼排気ガスの最も大きな部分は、比較的穏和な窒素(N)、水(HO)、及び二酸化炭素(CO)を含有するが、該排気ガスは、比較的小さな部分で、不完全燃焼からの一酸化炭素(CO)、未燃焼の燃料からの炭化水素(HC)、過度の燃焼温度からの窒素酸化物(NO)、及びパティキュレートマター(大部分はスート)のような有害及び/又は有毒な物質も含有する。大気中に放出される排気ガスの環境影響を軽減するために、これらの望ましくない成分の量を、別の有害又は有毒な物質を生じないプロセスにより、除去又は削減することは望まれる。
【0003】
車両の排気ガスから除去する最も負担となる成分の一つは、NOであり、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)及び/又は一酸化二窒素(NO)を含む。排気ガスが十分な酸素を含有し還元の代わりに酸化反応を好むので、ディーゼルエンジンにより生じるような、リーンバーン排気ガス中のNOのNへの還元は、特に問題である。しかし、選択的接触還元(SCR)として一般に知られるプロセスによりNOはディーゼル排気ガス中で還元され得る。SCRプロセスは、触媒の存在下で、還元剤の補助により、NOの単純な窒素(N)と水への転化を伴う。SCRプロセスにおいて、アンモニアのようなガス状の還元剤は、排気ガスをSCR触媒と接触させる前に、排気ガス流に添加される。該還元剤は該触媒上に配され、ガスが該触媒化された基材中又はその上を通過する間にNO還元反応は起こる。
【0004】
を還元剤として用いる選択的接触還元(SCR)システムにおいて、いくつかの化学反応は起こり、これらの全ては、NOを還元して単純な窒素にする望ましい反応を示す。主要な反応機構は式(1)に示される。
4NO + 4NH + O → 4N + 6HO (1)
【0005】
競争的な、酸素との非選択的な反応は、二次的な排出を生じ得るか、又は非生産的にNHを消費し得る。このような非選択的な反応の一つは、NHの完全な酸化であり、式(2)に示される。
4NH + 5O → 4NO + 6HO (2)
【0006】
更に、NO中に存在するNOのNHとの反応は、反応(3)により進行すると考えられる。
3NO + 4NH → (7/2)N + 6HO (3)
【0007】
更に、NHとNOとNOの間の反応は、反応(4)により示される。
NO + NO + 2NH → 2N + 3HO (4)
【0008】
反応(1)、(3)、及び(4)の反応速度は、反応温度及び使用した触媒の種類に依存して大きく変わり、一般に、反応(4)の反応速度は、反応(1)及び(3)の2から10倍である。
【0009】
車両のICエンジンからNO排出を処理するSCR技術の応用、特にリーンバーンICエンジンは、よく知られている。この目的のために開示された典型的な従来技術のSCR触媒は、TiO上に担持されるV/WOを含む(国際公開第99/39809号参照)。しかし、いくつかの応用において、バナジウム系触媒の熱耐久性及び熱性能は、容認できない。
【0010】
内燃機関の排気ガスからNOを処理するために研究されてきたSCR触媒の一分類は、遷移金属で交換されたゼオライトである(国際公開第99/39809号及び米国特許第4961917号参照)。しかし、使用中に、ZSM−5のような特定のアルミノシリケートのゼオライト及びベータゼオライトは、多くの欠点を有する。これらは、特にCu/ベータ及びCu/ZSM−5触媒を用いると、高温水熱熟成の間に脱アルミニウム化を受けやすくなり酸性度の低下をもたらし、ベータ系及びZSM−5系の両方の触媒は、比較的低い温度で触媒に吸着される炭化水素によっても影響を受け、そして、触媒システムの温度が重要な発熱物の生成を増進されるように酸化され、熱的に触媒を損傷し得る。この問題は、車両ディーゼルの応用において特に深刻であり、炭化水素のかなりの量は、コールドスタートの間触媒に吸着され得る。ベータ及びZSM−5の両方のゼオライトは、炭化水素によりコークス化する傾向があり、それは触媒性能を低下させる。従って、選択的接触還元プロセスに対し改善される触媒の必要が残る。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、バナジウム系SCR又はASC触媒を特定のモレキュラーシーブとブレンドすることは、これらの成分のそれぞれが単独であるとみなされる場合にみられない触媒性能を改善することを発見した。特に、本発明の触媒は、既知のSCR触媒及びASC触媒と比べ、改善される高温性能、改善される水熱安定性、高い耐硫黄性、及び改善される耐NO性を達成する。このようなブレンドは、好ましくはH+型又はFe等の遷移金属でイオン交換される中で好ましくは特定のアルミノシリケート又はフェロシリケートのモレキュラーシーブを含有する。好ましくは、該モレキュラーシーブは、MFI、BEA、又はFERから選択される骨格を有する。
【0012】
従って、第1の成分と第2の成分のブレンドを含む排気ガスを処理するための触媒組成物が提供され、該第1の成分は、アルミノシリケート又はフェロシリケートのモレキュラーシーブ成分であり、該モレキュラーシーブは、H+型であるか又は一又は複数の遷移金属でイオン交換され、該第2の成分は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物上に担持するバナジウム酸化物である。
【0013】
発明のもう一つの態様によると、ここに記載されるような触媒ブレンドを含む触媒のウォッシュコートが提供される。
【0014】
発明のもう一つの態様によると、ここに記載されるような触媒ブレンドを含む触媒体、好ましくはフロースルーモノリスが提供される。
【0015】
発明の更にもう一つの態様によると、ディーゼル内燃機関により発生される排気ガスのような排気ガス中でNO又はNHを処理するための方法が提供され、ここで該方法は、排気ガスをここに記載されるような触媒のブレンドと接触させることを伴い、それにより排気ガス中のNO又はNHの濃度が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に記載のフレッシュ触媒についてのNO転化率のデータ、及び従来技術で知られている触媒についての比較例のデータを示すグラフである。
図2】本発明の実施例に記載のフレッシュ触媒についてのNO転化率のデータ、及び従来技術で知られている触媒についての比較例のデータを示すグラフである。
図3】本発明の実施例に記載のフレッシュ触媒についてのNO転化率のデータ、及び従来技術で知られている触媒についての比較例のデータを示すグラフである。
図4】本発明の実施例に記載の熟成触媒についてのNO転化率のデータ、及び従来技術で知られている熟成触媒についての比較例のデータを示すグラフである。
図5】本発明の実施例に記載の二種の異なる触媒についてのNO転化率のデータ、及び従来技術で知られている触媒についての比較例のデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施態様において、本発明は、環境大気質を改善するための触媒、特にディーゼル及び他のリーンバーンエンジンにより生じる排気ガス排出を改善するための触媒に向けられる。排気ガス排出は、少なくとも一部には、リーンバーン排気ガス中、幅広い操作上の温度範囲を超えて、NO及び/又はNHスリップ濃度により改善される。有用な触媒は、選択的にNOを還元し、及び/又は酸化雰囲気でアンモニアを酸化する(アンモニアスリップ)触媒(すなわち、SCR触媒、及び/又はASC触媒)である。
【0018】
好ましい実施態様において、(a)鉄で活性化されたアルミノシリケートのモレキュラーシーブ又はMFI、BEA、及びFERからなる群から選択される骨格を有するフェロシリケートのモレキュラーシーブ(アモルファスの鉄のモレキュラーシーブとしても知られる)を含むモレキュラーシーブ成分と、(b)酸化チタンを含む金属酸化物担体上に担持される一又は複数のバナジウムの酸化物を含むバナジウム成分とのブレンドを含む触媒組成物は提供される。
【0019】
ここで用いられるように、「ブレンド」という用語は、各成分がブレンドとして同じ目的のために単独で使用され得る二種又はそれ以上の触媒成分の本質的に均一な組み合わせを意味する。ブレンド中で組み合わされる時、個々の触媒成分は容易に分離されない。そして、少なくとも一部には、組み合わせの相乗作用の性質のため、構成部分の触媒効果は、互いに区別がつかない。
【0020】
好ましい実施態様において、触媒組成物は、重量に基づきモレキュラーシーブ成分(鉄を含めて)と比較して、大部分のバナジウム成分(金属酸化物の担体を含めて)を含む。特定の実施態様において、該触媒組成物は、バナジウム成分とモレキュラーシーブ成分を約1:1から約99:1の重量比で含む。好ましくは、該バナジウム成分とモレキュラーシーブ成分は、約2:1から約4:1、約5:1から約10:1、又は約10:1から約50:1の重量比で存在する。ここで、該バナジウム成分は、酸化チタンの酸化物(類)、バナジウムの酸化物(類)、及び任意にブレンド中に存在し、もし存在するのであれば別の非触媒金属酸化物を含まないタングステンに対する酸化物(類)の量に基づく重量比のために計算される。該組成物中に存在するかもしれない非触媒金属酸化物の非限定の例は、結合剤並びにアルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、アルミナ又はセリアの混合物、アルミナ上に覆われるセリア、及び(非ゼオライト)シリカ−アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナクロミア、及びアルミナセリア等の混合酸化物のような他種の添加剤を含む。結合剤は、SCRプロセス用の触媒的に活性な金属で活性化されず、及び/又は触媒金属酸化物と比較して更により大きい粒径を有するので、該組成物中の触媒金属酸化物とは異なる。当業者は、該比がブレンド中の触媒的に活性な成分の相対比率を示し、フィラー、繊維状補強剤、加工助剤、水、及びスラリー、ウォッシュコート、及び押出可能なペースト等の触媒組成物の種々の形態中に存在するかもしれないもののような他の成分を示さないことも認識するであろう。
【0021】
もう一つの実施態様において、触媒組成物は、ブレンド中の触媒的に活性な成分の全重量に基づき、約60から約99重量パーセントのバナジウム成分と、約1から約40重量パーセントのモレキュラーシーブ成分を含む。特定の実施態様において、該触媒組成物は、約60から約70、約75から約85、又は約90から約97重量パーセントのバナジウム成分と約30から約40、約15から約25、又は約3から約10重量パーセントのモレキュラーシーブ成分を含む。
【0022】
好ましいバナジウム成分は、チタンの酸化物と任意にタングステンの酸化物を含む担体上にバナジウムの酸化物を含む。特定の実施態様において、チタンの酸化物とバナジウムの酸化物は、約30:1から約2:1、より好ましくは約20:1から約5:1、及び更により好ましくは約15:1から約7:1の重量比で存在する。特定の実施態様において、触媒組成物は、バナジウム成分の全重量に基づき、約25重量パーセントまで、好ましくは約1から約25重量パーセントまで、より好ましくは約5から約20重量パーセントまで、及び更により好ましくは約7から約15重量パーセントまでのタングステンの酸化物を含む。
【0023】
チタンの好ましい酸化物は、チタニア又は酸化チタン(IV)としても知られている二酸化チタン(TiO)であり、好ましくはアナターゼ形である。特定の実施態様において、TiOは、ルチル形と比較してアナターゼ形が、少なくとも90重量パーセント、及びより好ましくは少なくとも95重量パーセントである。特定の実施態様において、TiOは、例えば硫酸処理の最終製品として、化学的に安定化され及び/又は予備か焼される。このような化学的に安定化されるTiOは、X線回折法でTiO格子に特有であるX線反射を示す。
【0024】
典型的には、TiOは、バナジウムの酸化物(類)のための高表面積担体として用いられ、好ましい実施態様は五酸化バナジウム(V)であり、バナジウム(V)酸化物又はバナジアとしても知られている。特定の実施態様において、バナジウムの酸化物(類)は、一又は複数の五酸化バナジウム、三酸化バナジウム、二酸化バナジウム、又はバナジン酸鉄のようなバナジン酸の遷移金属塩若しくは希土類金属塩である。担体は、タングステンの酸化物(類)、好ましくは、タングステン(IV)酸化物としても知られる三酸化タングステン(WO)も含む。このように、V−TiO又はV−TiO/WOは、自己担持触媒粒子である。種々の実施態様において、触媒金属酸化物は、約10から約300m/g又はより大きい表面積(BET)を有するであろう。特定の実施態様において、TiO又はTiO/WOは、約10から約250ナノメートル(nm)、好ましくは約10から約100nmの平均粒径を有するであろう。
【0025】
好ましくは、モレキュラーシーブは、アルミノシリケートであり、好ましくは骨格中に置換された金属がなく、あるいはフェロシリケートである。好ましい骨格は、FER、MFI、及びBEAを含む。特定の実施態様において、モレキュラーシーブは、微細孔モレキュラーシーブではない。モレキュラーシーブ、特にアルミノシリケートは、H+型又は遷移金属でイオン交換される。好ましくは、アルミノシリケートには、実質的にアルカリ又はアルカリ土類金属はない。H+型のモレキュラーシーブには、好ましくは、非骨格金属はない。有用な遷移金属の例は、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、及びNiを含み、Fe及びCuは好ましく、Feは特に好ましい。特定の実施態様において、モレキュラーシーブは、本質的にFe以外のいかなる非骨格金属もない。好ましくは、モレキュラーシーブの合成の後にイオン交換が起こる。
【0026】
好ましいブレンドは、鉄で活性化されたモレキュラーシーブ又はMFI、BEA、及びFERから選択される少なくとも一つの骨格を有するフェロシリケートのモレキュラーシーブを含む。該モレキュラーシーブは、ゼオライト及び非ゼオライト材料から選択され得る。ゼオライトは、一般にアルミノシリケートであると考えられるが、非ゼオライトモレキュラーシーブは、特定のゼオライト結晶構造(例えば、IZA Framework Type)を有するモレキュラーシーブであり、しかし、アルミノシリケートの代わりに非ゼオライトモレキュラーシーブは、その結晶格子中に存在する一又は複数の非アルミニウム/非シリコンカチオン、例えば、リン、鉄等、を有する。非ゼオライトモレキュラーシーブの有用な型は、シリコアルミノリン酸塩(SAPOs)及びフェロシリケートを含む。Fe含有MFI、BEA、及びFER等の鉄含有アルミノシリケートモレキュラーシーブは、特に好ましく、MFIを用いるのが好ましい。
【0027】
有用なMFIのアイソタイプは、ZSM−5、[Fe−Si−O]−MFI、AMS−1B、AZ−1、Bor−C、ボラライト、エンシライト、FZ−1、LZ−105、ムティーナ沸石、NU−4、NU−5、シリカライト、TS−1、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBH、ZKQ−1B、及びZMQ−TBを含み、ZSM−5が特に好ましい。有用なFERのアイソタイプは、フェリエライト、[Si−O]−FER、FU−9、ISI−6、単斜晶系フェリエライト、NU−23、Sr−D、及びZSM−35を含む。有用なBEAのアイソタイプは、ベータ、[Ti−Si−O]−BEA、CIT−6、及びツァーニック沸石を含む。このような材料に対する典型的なSiO/Alのモル比は、30から100であり、典型的なSiO/Feのモル比は、20から300、20から100等である。
【0028】
好ましくは、BEA骨格は、鉄で交換されるか又は鉄と同型のBEA分子構造(BEA型フェロシリケートとしても参照される)を含み、鉄と同型のBEA分子構造が特に好ましい。特定の好ましい実施態様において、BEA型フェロシリケート分子構造は、(1)約20から約300のモル比のSiO/Feを有する鉄含有BEA骨格構造、及び/又は(2)フレッシュ状態で孤立鉄イオン、Fe3+として少なくとも80%含有される鉄、を有する結晶性シリケートである。本発明において有用な好ましいBEA型フェロシリケートは、次の組成式により表される組成を有する。
(x+y)M(2/n)O・xFe・yAl・zSiO・wH
式中、nはカチオンMの原子価であり、x、y、及びzはそれぞれFe、Al、及びSiOのモル分率を表し、x+y+z=1、wは少なくとも0の数であり、z/xは20から300であり、yは0であってもよく、任意にz/yは少なくとも100である。
【0029】
好ましくは、鉄含有BEA骨格構造は、SiO/Feのモル比が約25から約300、約20から約150、約24から約150、約25から約100、又は約50から約80である。モルを単位にしたlog(SiO/Al)の上限は、特に制限されず、該モルを単位にしたlog(SiO/Al)は、少なくとも2であることを提供される(すなわち、SiO/Alのモル比は、少なくとも100である)。該モルを単位にしたlog(SiO/Al)は、好ましくは少なくとも2.5(すなわち、SiO/Alのモル比は、少なくとも310である)、より好ましくは少なくとも3である(すなわち、SiO/Alのモル比は、少なくとも1000である)。該モルを単位にしたlog(SiO/Al)が4を超える場合は、すなわち、SiO/Alのモル比は、少なくとも10000になる。
【0030】
特定の実施態様において、Fe−BEAアルミノシリケートモレキュラーシーブは、予備熟成される。予備熟成されるFe−BEAアルミノシリケートは、一般的なFe−BEAよりもかなり良い結果を生じ得る。従って、より一般的な処理である500℃1時間の熟成の代わりに、該Fe−BEAアルミノシリケートは、好ましくは600−900℃、好ましくは650−850℃、より好ましくは700−800℃、及び更により好ましくは725−775℃で熟成され、3−8時間、好ましくは4−6時間、より好ましくは4.5−5.5時間、更により好ましくは4.75−5.25時間熟成される。予備熟成されるFe−BEAアルミノシリケートを用いる実施態様は、NOの生成が望ましくない応用において有利である。
【0031】
特定の実施態様において、鉄は、モレキュラーシーブの全重量に基づき約0.1から約10重量パーセント(wt%)の濃度で、モ例えば、約0.5wt%から約5wt%まで、約0.5から約1wt%まで、約1wt%から約5wt%まで、約2wt%から約4wt%まで、及び約2wt%から約3wt%まで、レキュラーシーブ材料中に存在する。従来からよく知られている技術を使用する、液相交換若しくは固体のイオン交換を含む、又はインシピエントウェットネスプロセスによる本発明における使用のために、鉄は、モレキュラーシーブ中に導入され得る。このような材料は、ここでは鉄含有又は鉄で活性化されるモレキュラーシーブと呼ばれる。鉄含有アルミノシリケートゼオライトの製造のために、Journal of Catalysis 232(2)318−334 (2005)、欧州特許出願公開第2072128号、国際公開第2009/023202号を参照し、これらは出典明示によりここに援用される。
【0032】
本発明の触媒組成物は、バナジウム成分とモレキュラーシーブ成分をブレンドすることにより調製され得る。ブレンド技術の様式は、特に限定されない。特定の実施態様において、TiO/WOの懸濁液は、V粉末と鉄で活性化されるモレキュラーシーブの粉末が加えられて調製される。得られた懸濁液は、ウォッシュコートとして処方され得るか、又は乾燥され粉末の形状でか焼され得て、その後、ウォッシュコート又は押出成形可能な材料を調製するために使用される。
【0033】
ここで記載される触媒ゼオライトは、酸素とアンモニアの競争反応に対して、還元剤の、好ましくはアンモニアの、窒素酸化物との反応を促進し、選択的に単純な窒素(N)と水(HO)を生成し得る。一実施態様において、該触媒は、窒素酸化物のアンモニアとの反応に有利になるように処方され得る(すなわち、SCR触媒)。もう一つの実施態様において、該触媒は、SCR触媒反応中に消費されないアンモニアを処理するために処方され得る(すなわち、アンモニアスリップ)。ここで、アンモニアスリップ触媒(ASC)は、アンモニアの酸素との反応に有利になるように処方される。更にもう一つの実施態様において、SCR触媒とASC触媒は、連続して使用され、両方の触媒は、ここで記載される触媒ブレンドを含み、SCR触媒は、ASC触媒の上流にある。
【0034】
特定の実施態様において、ASC触媒は、酸化下層上の最上層として配され、該下層は、白金族金属(PGM)触媒又は非PGM触媒を含む。特定の実施態様において、ASC触媒は、押出成形されたハニカムレンガ状の塊であるか又は基材、好ましくはフロースルー金属製又はコーディエライト製のハニカムのような、最小の背圧で、大きな接触面を提供するために計画される基材に塗布される。例えば、好ましい基材は、低背圧を保証するために約25から約300平方インチ当たりのセル数(CPSI)を有する。低背圧を達成することは、低圧のEGR性能に対してASC触媒の効果を最小化するために特に重要である。ASC触媒は、ウォッシュコートとして基材に塗布され得、好ましくは約0.3から3.5g/inの担持を達成するために塗布され得る。更なるNO転化を提供するために、基材の前方部分は、まさにSCRコーティングで覆われ得て、後方は、アルミナ担体上にPt又はPt/Pdを更に含み得るSCR及びASC触媒で覆われる。
【0035】
本発明のもう一つの態様によると、排気ガス中のNO化合物の選択的接触還元及びNHの選択的接触酸化のための方法が提供され、その方法は、排気ガス中のNO及び/又はNH化合物の濃度を減少するのに十分な時間、排気ガスをここに記載する触媒ブレンドに接触することを含む。特定の実施態様において、窒素酸化物は、還元剤とともに触媒ブレンドの存在下、少なくとも約100℃の温度で、還元される。特定の実施態様において、NO化合物は、約200℃から約650℃の温度で還元される。450℃よりも高い温度を利用する実施態様は、例えば、炭化水素をフィルターの上流の排気システムに注入することにより、活発に再生される(任意に触媒化される)ディーゼルパティキュレートフィルターを含む排気システムを備える大型及び軽量ディーゼルエンジンからの排気ガスを処理するために特に有用であり、本発明の使用のための該ゼオライト触媒は、フィルターの下流に配置される。別の実施態様において、モレキュラーシーブSCR触媒は、フィルター基材上に導入される。本発明の方法は、一又は複数の次の工程、(a)触媒フィルターの入口と接触しているスートを蓄積及び/又は燃焼する工程、(b)触媒フィルターと接触する前に、好ましくはNOと該還元剤の処理を必要とする触媒化工程の介在なく、窒素系還元剤を排気ガス流中に導入する工程、(c)NO吸着触媒上でNHを生成する工程、及び好ましくは下流のSCR反応で還元剤としてNHを使用する工程、(d)排気ガス流をDOCと接触し、可溶性有機成分(SOF)に基づく炭化水素及び/又はCO中の一酸化炭素を酸化し、及び/又はNO中のNOを酸化する工程、同様に、パティキュレートフィルター中のパティキュレートマターを酸化するために使用されてもよく、及び/又は排気ガス中のパティキュレートマター(PM)を還元する工程、(e)排気ガスを還元剤の存在下、一又は複数のフロースルーSCR触媒装置(類)と接触し、排気ガス中のNO濃度を減少させる工程、(f)排気ガスを大気中に放出する前に、排気ガスをASC触媒と、好ましくはSCR触媒の下流で、接触し、全てではないが、ほとんどのアンモニアを酸化する工程、又は排気ガスがエンジンに入る/再入する前に、排気ガスを再循環ループに通す工程、を含み得る。
【0036】
SCR過程のための還元剤(還元試薬としても知られている)は、排気ガス中でNOの還元を促進するいかなる化合物も広く意味する。本発明において有用な還元剤の例は、アンモニア、ヒドラジン又は尿素((NHCO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム若しくはぎ酸アンモニウムのようないかなる適切なアンモニア前駆体、及びディーゼル燃料のような炭化水素などを含む。特に好ましい還元剤は、窒素に基づき、特に好ましくはアンモニアを伴う。特定の実施態様において、還元剤は、メタン、ディーゼル燃料等の炭化水素であり得る。
【0037】
特定の実施態様において、全て又は少なくとも一部の窒素系還元剤、特にNHは、SCR触媒、例えば、ウォールフロー型フィルター上に配される本発明のSCR触媒、の上流に配されるNO吸収触媒(NAC)、リーンNOトラップ(LNT)、又はNO吸蔵/還元触媒(NSRC)により供給され得る。本発明に有用なNAC成分は、塩基性材料(アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びこれらの組み合わせを含むアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属など)及び貴金属(白金等)、及び任意にロジウムのような還元性触媒成分を含む。NACにおいて有用な塩基性材料の具体的な種類は、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、及びこれらの組み合わせを含む。貴金属は、好ましくは約10から約200g/ft、例えば、20から60g/ft存在する。あるいは、触媒の貴金属は、約40から約100グラム/ftまでであり得る平均濃度により特徴づけられる。
【0038】
特定の条件下、周期的にリッチな再生現象の間、NHは、NO吸収触媒上で生成され得る。NO吸収触媒の下流のSCR触媒は、NO還元効率のシステム全体を改善し得る。該複合システムにおいて、SCR触媒は、NAC触媒から放出されるNHを吸蔵することが可能であり、通常のリーン操作条件中、NAC触媒をすり抜けるNOのいくらか又は全てを選択的に還元するために吸蔵されたNHを利用する。
【0039】
別の実施態様において、窒素系還元剤又はこの前駆体は、排気ガス流中に導入され、好ましくはSCR触媒の上流でディーゼル酸化触媒の下流に導入される。この還元剤の導入は、注入装置、噴射ノズル、又は類似の装置により達成され得る。
【0040】
本発明の方法は、燃焼過程由来、例えば、内燃機関(移動式又は固定式)、ガスタービン、及び石炭又は石油火力発電所から、の排気ガスに対して実施され得る。該方法は、精錬することのような工業的過程から、精錬所のヒーター及びボイラー、燃焼炉、化学プロセス工業、コークス炉、都市廃棄物プラント、及び焼却炉などから、ガスを処理するためにも使用され得る。特定の実施態様において、該方法は、車両のリーンバーン内燃機関、例えば、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスにより駆動されるエンジン、から排気ガスを処理するために使用される。
【0041】
更なる態様によると、本発明は、車両のリーンバーン内燃機関のための排気システムを提供し、該システムは、排気ガス流れ、窒素系還元剤、及びここで記載される触媒ブレンドを運ぶための導管を含む。触媒ブレンドは、望まれる効果以上で、例えば、100℃より高く、150℃より高く、又は175℃より高く、NOの還元を触媒することが可能であることが決定される時にのみ、該システムは、窒素系還元剤を排気ガス流れ中で測定するための制御装置を含み得る。該制御方法による決定は、排気ガスの温度、触媒床の温度、アクセル開度、該システム中の排気ガスの質量流量、吸気負圧、点火時期、エンジン回転速度、排気ガスのラムダ値、エンジン中に注入される燃料の量、排気ガス再循環(EGR)バルブの位置、及びそれによるEGRの量とブースト圧からなる群から選択されるエンジンの状態の一又は複数の適切な入力により補助され得る。
【0042】
特定の実施態様において、測定は、直接的に(適切なNOセンサーを用いて)又は間接的に排気ガス中の窒素酸化物の量に応じて制御され、例えば、あらかじめ関連する探索表又は図を用いること、すなわち、制御装置に保存され、排気ガスの予測されるNO含有量でエンジンの状態を示すいずれか一又は複数の上述の入力を相関させることで制御される。窒素系還元剤の測定は、60%から200%の理論的なアンモニアが、1:1のNH/NO及び4:3のNH/NOと見積もられるSCR触媒に入る排気ガス中に存在するように準備され得る。該制御方法は、電子制御ユニット(EDU)のようなあらかじめプログラムされた処理装置を含み得る。
【0043】
更なる実施態様において、排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するディーゼル酸化触媒は、窒素系還元剤を排気ガス中で測定する地点の上流に設置され得る。一つの実施態様において、該ディーゼル酸化触媒は、例えば、250℃から450℃の酸化触媒の入口での排気ガス温度で、NOに対するNOの体積比が約4:1から約1:3であるSCRゼオライト触媒に入るガス流を生じるために適合される。もう一つの実施態様において、NOに対するNOは、約1:2から約1:5の体積比で維持される。ディーゼル酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上に覆われる少なくとも一種の白金族金属(又はこれらのある組合せ)、例えば、白金、パラジウム、又はロジウムを含み得る。一つの実施態様において、少なくとも一種の白金族金属は、白金、パラジウム、又は白金とパラジウム両方の組合せである。白金族金属は、高表面積ウォッシュコート成分上、例えば、アルミナ、アルミノシリケートゼオライトのようなゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、又はセリアとジルコニア両方を含有する混合若しくは複合酸化物、に担持され得る。
【0044】
更なる実施態様において、適切なフィルター基材は、ディーゼル酸化触媒とSCR触媒の間に設置される。フィルター基材は、上記のどれからでも、例えば、ウォールフロー型フィルターから、選択され得る。例えば、上述の種類の酸化触媒を用いて、フィルターが触媒化される場所、好ましくは窒素系還元剤を測定する地点は、フィルターとSCR触媒ブレンドの間に設置される。あるいは、フィルターが触媒化されない場合、窒素系還元剤を測定するための方法は、ディーゼル酸化触媒とフィルターの間に配置され得る。
【0045】
更なる実施態様において、本発明で使用するための触媒ブレンドは、酸化触媒の下流に配置されるフィルター上に覆われる。フィルターが触媒ブレンドを含む場所で、窒素系還元剤を測定する地点は、好ましくは酸化触媒とフィルターの間に配置される。
【0046】
更なる態様において、本発明による排気システムを含む車両のリーンバーンエンジンが提供される。車両のリーンバーン内燃機関は、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスにより駆動されるエンジンであり得る。
【0047】
ここに用いられるように、「本質的にからなる」という用語は、触媒組成物に関して、該組成物が指定される触媒成分を含有するが、請求される発明の基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼす付加的成分を含有しないことを意味する。すなわち、触媒組成物は、所望の反応のための触媒として別の方法で役立つか又は請求する触媒の基本的な触媒の性質を高めるために役立つ付加的成分を含まない。
【実施例】
【0048】
実施例1:触媒の調製
触媒組成物は、鉄交換されたMFIアルミノシリケートをV−TiO/WO懸濁液とブレンドすることによって調製された。得られた組成物は、鉄交換されたMFIアルミノシリケートとV−TiO/WO固体の組み合わされた重量に基づき、約20パーセントの鉄交換されたMFIアルミノシリケートを含有した。5重量パーセントの鉄交換されたMFIアルミノシリケートを含有する触媒、20重量パーセントの鉄交換されたFERアルミノシリケートを含有する触媒、5重量パーセントの鉄交換されたFERアルミノシリケートを含有する触媒、20重量パーセントのBEAフェロシリケートを含有する触媒、及び10重量パーセントのBEAフェロシリケートを含有する触媒を調製するために、類似の方法が続く。
【0049】
これらの触媒ブレンドは、押出可能な塊に成形され、混練され、引張られ、そして押出されて1インチ径×140mmのハニカムレンガ状の塊に形成された。
【0050】
更に、20重量パーセントの鉄交換されたMFIアルミノシリケートを含有する触媒材料は、押出可能な塊に成形され、混練され、引張られ、そして押出されて10.5インチ径×5.0インチ400/11のハニカム状レンガ及び10.5インチ径×7.0インチ400/11のハニカムレンガ状の塊に形成された。
【0051】
実施例2:触媒性能(NOレベルの変化)
鉄交換されたMFIアルミノシリケートとV−TiO/WOのブレンド(20wt% Fe−MFI)を含有する押出された1インチ径×140mmのハニカムレンガ状の塊は、模擬ディーゼルエンジン排気ガスに約60000/時間の空間速度でさらされた。該模擬排気ガスは、約9.3wt%のO、約7.0wt%のHO、約100ppmのNO(NOのみ)、約100ppmのNH、及び残りのNを含有した。NO転化率に対する該触媒の能力は、180、215、250、300、400、及び500℃の温度で測定された。
【0052】
比較例のために、類似する触媒のレンガ状の塊は、V−TiO/WOのみ使用して調製された。該比較例の試料は、類似する条件下でNO転化率のためにも試験された。
【0053】
これらのフレッシュな試料(すなわち、非熟成)についてのNO転化率のデータは、図1に示される。ここで、該データは、0%のNOで、Fe−MFIとV−TiO/WOのブレンドに基づく触媒が、V−TiO/WOのみ含有する触媒と比較して高い温度でより良いNO転化率の結果となることを示す。
【0054】
この試験は、NO流が35重量パーセントのNOを含有するために調整されること以外、繰り返された。これらのフレッシュな試料についての該NO転化率のデータは、図2に示される。ここで、該データは、35%のNOで、Fe−MFIとV−TiO/WOのブレンドに基づく触媒が、V−TiO/WOのみ含有する触媒と比較して広範囲の温度にわたりより良いNO転化率の結果となることを示す。
【0055】
この試験は、NO流が65重量パーセントのNOを含有するために調整されること以外、繰り返された。これらのフレッシュな試料についての該NO転化率のデータは、図3に示される。ここで、該データは、65%のNOで、Fe−MFIとV−TiO/WOのブレンドに基づく触媒が、V−TiO/WOのみ含有する触媒と比較して広範囲の温度にわたりより良いNO転化率の結果となることを示す。
【0056】
実施例3:触媒性能(水熱熟成後)
鉄交換されたMFIアルミノシリケートとV−TiO/WOのブレンド(20重量パーセントのFe−MFI)を含有する押出された1インチ径×140mmのハニカムレンガ状の塊は、100時間580℃で熟成された。三種のフレッシュなレンガ状の塊も各々次の条件の一つ、すなわち、100時間580℃と10%のHO、100時間650℃、及び100時間650℃と10%のHOで熟成された。
【0057】
比較例のために、二種の類似する触媒のレンガ状の塊は、V−TiO/WOのみ使用して調製された。各比較例の試料は、次の条件の一つ、すなわち、100時間580℃、及び100時間650℃で熟成された。
【0058】
全てのレンガ状の塊は、模擬ディーゼルエンジン排気ガスに約60000/時間の空間速度でさらされた。該模擬排気ガスは、約9.3wt%のO、約7.0wt%のHO、約100ppmのNO(NOのみ)、約100ppmのNH、及び残りのNを含有した。NO転化率に対する該触媒の能力は、180、215、250、300、400、及び500℃の温度で測定された。
【0059】
これらの熟成された試料についての該NO転化率のデータは、図4に示される。ここで、該データは、Fe−MFIとV−TiO/WOのブレンドに基づく触媒が、V−TiO/WOのみ含有する触媒と比較して更により水熱的に安定であり、特に厳しい熟成条件下で安定であったことを示す。
【0060】
実施例4:触媒性能の比較
鉄交換されたMFIアルミノシリケートとV−TiO/WOのブレンド(20重量パーセントのFe−MFI)を含有する押出された1インチ径×140mmのハニカムレンガ状の塊は、模擬ディーゼルエンジン排気ガスに約60000/時間の空間速度でさらされた。該模擬排気ガスは、約9.3wt%のO、約7.0wt%のHO、約100ppmのNO(65重量パーセントのNO)、約100ppmのNH、及び残りのNを含有した。NO転化率に対する該触媒の能力は、180、215、250、300、400、及び500℃の温度で測定された。
【0061】
別の押出された1インチ径×140mmのハニカムレンガ状の塊であるが、鉄交換されたFERアルミノシリケートとV−TiO/WOのブレンド(20重量パーセントのFe−FER)を含有するハニカムレンガ状の塊は、模擬ディーゼルエンジン排気ガスに約60000/時間の空間速度でさらされた。該模擬排気ガスは、約9.3wt%のO、約7.0wt%のHO、約100ppmのNO(65重量パーセントのNO)、約100ppmのNH、及び残りのNを含有した。NO転化率に対する該触媒の能力は、180、215、250、300、400、及び500℃の温度で測定された。
【0062】
比較のために、類似する触媒のレンガ状の塊は、V−TiO/WOのみ使用して調製された。該比較例の試料は、類似する条件下でNO転化率のためにも試験された。
【0063】
これらの試料についての該NO転化率のデータは、図5に示される。ここで、該データは、65%のNOで、Fe−MFIとV−TiO/WOのブレンドに基づく触媒が、Fe−FERとV−TiO/WOを含有する触媒と比較して高い温度でより良いNO転化率の結果となることを示し、Fe−MFIとV−TiO/WOのブレンドに基づく触媒が、V−TiO/WOのみ含有する触媒と比較して高い温度でより良いNO転化率の結果となることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】