(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-531026(P2015-531026A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(54)【発明の名称】電気コンタクト要素用の層、層構造、層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 7/00 20060101AFI20151002BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20151002BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20151002BHJP
C25D 5/12 20060101ALI20151002BHJP
【FI】
C25D7/00 H
H01R13/03 D
B32B15/01 Z
C25D5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-524722(P2015-524722)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】EP2013065606
(87)【国際公開番号】WO2014019909
(87)【国際公開日】20140206
(31)【優先権主張番号】102012213505.7
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】トス,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4F100
4K024
【Fターム(参考)】
4F100AB16
4F100AB16A
4F100AB16C
4F100AB17
4F100AB17A
4F100AB17B
4F100AB18
4F100AB18A
4F100AB23
4F100AB23A
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4F100AB24A
4F100AB40
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4F100BA07
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4F100JG01
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4K024AA01
4K024AA03
4K024AA14
4K024AB01
4K024AB02
4K024BA09
4K024BB10
4K024BC01
4K024GA16
(57)【要約】
本発明は、電気コンタクト要素(1)用の層(10、3)に関する。電気コンタクト要素は、一般に、コーティングされており、相手方コンタクト要素(7)と機械的および電気的に接触しており、そのため長期間にわたって、多かれ少なかれ強い機械的圧力(9)がコンタクト要素(1)の層(10、3)に加わる。一般に、この層(10、3)は、相手方コンタクト要素(7)がなくても機械的な内圧(9)も受ける。これらの圧負荷は、特に錫が使用されると、層(10、3)からウィスカとして知られる髪状構造の成長をもたらすことがあり、これにより短絡が引き起こされ得る。従前の解決手段では、コンタクト要素の他の特性に好ましくない影響を常に与える。本発明の目的は、機械的に安定しており、耐摩耗性を有するとともに非常に導電性が高く、同時にウィスカとして知られ髪状構造の成長を防ぐ、電気コンタクト要素(1)用の層(10、3)を提供することである。本発明によれば、これは、ビスマスを含有するとともに錫無しである層(10、3)により実現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コンタクト要素(1)用の層(10,3)、特に、電気接触のための動作中に機械的圧力を受けるコンタクト層(3)であって、ビスマスを含有するとともに錫無し(tin−free)であることを特徴とする層(10、3)。
【請求項2】
前記層(10,3)は、10%を超えるビスマス、詳細には50%を超えるビスマス、特に90%を超えるビスマスを含有することを特徴とする請求項1に記載の層(10、3)。
【請求項3】
前記層(10,3)は、不可避的不純物を除きビスマスのみを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の層(10、3)。
【請求項4】
前記層(10,3)は、鉛、亜鉛、インジウム、アンチモン、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、および/またはルテニウムを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の層(10、3)。
【請求項5】
ビスマスが主成分であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の層(10、3)。
【請求項6】
前記層(10,3)は、銅基板(2)に直接形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の層(10、3)。
【請求項7】
前記層(10,3)は、ニッケルのプレコーティングに形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の層(10、3)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項により少なくとも1つの層(10、3、6)を含むことを特徴とする複数の層(10、3、6)を備えた電気コンタクト要素(1)用の層構造(5)。
【請求項9】
前記層(10、3)および/または前記層構造(5)の少なくとも一部が、電気めっきにより製造されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の層(10、3)または請求項8に記載の層構造(5)を製造する方法。
【請求項10】
動作中に機械的圧力(9)を受ける電気コンタクト要素(1)用の層(10、3、6)、特に、コンタクト層(3)におけるビスマスの使用。
【請求項11】
ビスマスが、銅に直接施されることを特徴とする請求項10に記載のビスマスの使用。
【請求項12】
ビスマスが、銅を覆うニッケル層に直接施されることを特徴とする請求項10に記載のビスマスの使用。
【請求項13】
ビスマスが、プラグ型コネクタコンタクトの挿入領域用のコンタクト層として使用されることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載のビスマスの使用。
【請求項14】
ビスマスが、プラグ型コネクタコンタクトの接続領域用のコンタクト層として使用されることを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載のビスマスの使用。
【請求項15】
ビスマスが、プラグ型コネクタコンタクトの押圧領域用のコンタクト層として使用されることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載のビスマスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コンタクト要素用の層に関する。
【背景技術】
【0002】
電気コンタクト要素は、コンタクトにより電気接続をもたらす役割を果たす。コンタクト要素は、相手方コンタクト要素と機械的および電気的に接触する。これにより、多かれ少なかれ強い機械的圧力が、コンタクト要素、特にコンタクト要素の表面にさらに加わることが多い。このコンタクト要素は、長期間にわたり相手方コンタクト要素に接続されることが多いので、大抵の場合、この圧力は長期間にわたり存在する。例えば、押圧コンタクトは、長期間にわたり相手方要素の中に配置される可能性があるとともに、高いレベルの機械的応力をいつまでも受ける可能性がある。コンタクト面上での弾性力補強コンタクトとの接触は、より長期間の荷重を生じさせる。
【0003】
接続の特性を改善するとともに、多数の接続サイクルの安定した接続を確実なものとするために、一般的に、コンタクト要素はコーティングされている。このようなコーティングは、例えば、境界抵抗を低下させ、耐摩耗性を増大させ、または化学変化、例えば層より下に配置される基板の酸化を遅らせ、または防ぐ。基板および層の結晶構造は大なり小なり互いにずれるため、層が存在するだけで層内に機械的な内部張力がすでに生じている可能性がある。コーティングの方法次第で、様々な特性、例えば、様々な配向または結晶体の形態を有する層材料からなる異なるサイズの領域がさらに生じる可能性があり、それにより層内における内部張力が増大する。機械的な外圧がなくても、この層は、機械的な内圧をすでに受けている可能性がある。層に一般的な材料、特に錫を用いた場合、大抵の場合、大なり小なり層から髪状または針状の構造の際立った成長がもたらされる。これらは、時間を経て非常に長くなり他の電気部品と接触する可能性があり、その結果、短絡を引き起こすか、または、別の位置で断絶を生じて短絡を引き起こす。
【0004】
このような構造の成長を防止するために、錫を主材料としても合金パートナとしても使用しないことが目指されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機械的安定性および耐摩耗性を有するとともに極めて導電性が高く、同時にウィスカとして知られる髪状構造の成長を防止する、電気コンタクト要素の層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、これは、層がビスマスを含有するとともに錫無し(tin−free)であることで実現される。
【0007】
ビスマスが使用されると、層は、良好な電気伝導性および低い接触境界抵抗を有する。同時に、ビスマスは、大気環境および任意の他の層成分とごくわずかしか反応しないため、長年にわたり安定的である。層が錫無しであるので、ウィスカの成長が防止される。錫無しという用語は、例えば、錫が最も少量で不純物として含有されているように理解すべきことが意図されている。しかし、存在している錫は、錫が層の特性に影響を及ぼす量で存在していることは特に意図されていない。
【0008】
互いに自由に組み合わせることができる本発明の有利な発展形態を、以下に説明する。
【0009】
この層は、10%を超えるビスマス、詳細には50%を超えるビスマス、特に90%を超えるビスマスを含有することができる。このパーセンテージは、いずれの場合も質量に対するものである。層の残りの成分に応じて、ビスマスの割合を増加させることが必要となりうる。詳細には、ビスマスは、入手および/または処理のコスト効率がより良く、より簡単でもありうる。ビスマスの物理的特性および/または化学的特性もまた、残りの成分よりもそれぞれの用途に適している可能性があるため、高い割合のビスマスが有利である。
【0010】
層は、不可避的不純物を除きビスマスのみを含有する場合に、製造および/または配設がとりわけ簡素となりうる。そのような層の製造では、追加の混合工程または合金化工程は不要である。
【0011】
別の有利な実施形態では、層は鉛を含有しない。鉛は、人間にとって有害であり、身体に蓄積されうる。さらに、鉛は、環境被害をもたらしうる。したがって、鉛が完全になしで済まされることが有利である。とりわけ、鉛の使用は、法律の規定の対象となる可能性もある。とはいえ、層の成分として鉛を有することが必要であるか、または、望ましい場合もある。
【0012】
この層は他の成分を有してもよく、詳細にはそのような材料は元素であってもよい。例えば、鉛、亜鉛、インジウム、アンチモン、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、および/またはルテニウムが、この層に適している。これらの各材料は、特定の物理的特性および/または化学的特性を有しており、実現されるべき層の特性に応じて、これらの材料の1種類または複数種類が、異なる割合の層の成分でありうるようになっている。例えば、銀および/または金を加えることにより、特に良好な電気伝導特性を実現することができる。しかし、これは、一般に、機械的安定性の低下に関連づけられる。他の材料により、機械的安定性の向上、特に、層の耐摩耗性の向上がもたらされうる。他の材料の添加により、複数の材料の組み合わせは、対応するサイズの純粋な線形補間で予期されうるものよりも好ましい特性を有する可能性がある。例えば、電子効果による電気伝導性は、層の個々の材料ごとの電気伝導性より高い可能性がある。
【0013】
具体的には、層の別の成分は、この層の大部分、特に質量の大部分を構成することもできる。例えば、別の材料は、50%を超える層の質量を構成することができる。しかし、添加される材料は、一般に高価であり、その結果、それぞれの割合は、できるだけ低くなるように意図される。そこで、典型的には、他の成分は、質量の約1%〜約10%を構成する。他の材料の割合がごくわずかであっても、良い効果を得るのにすでに十分であることが多い。例えば、少量添加(doping)、すなわち1%またはこれよりもより少ない添加でも、すでに十分であり得る。
【0014】
ビスマスが他の材料とともに層を形成する場合、ビスマスが主成分であること、すなわち、ビスマスの割合を、質量パーセントとして、全ての割合の中で最も高くすることが、有利である。したがって、例えば、ビスマスに加えて、さらに10種の追加の元素が使用される場合、それぞれが9パーセントの質量パーセントであるとき、10%の割合のビスマスはすでに主成分でありうる。これにより、層の特性がビスマスの割合に係る特性によって主に決定されることが確実となる。
【0015】
電気コンタクト要素用の層の厚さは、一原子から厚さ約1mmの比較的厚い層まで及ぶことができる。典型的には、電気コンタクト要素用の層の厚さは、約2μmである。しかし、特に、この層が機械的に安定であり、かつ耐摩耗性を有していることが確実である場合は、層の厚さは1μm以下でも十分でありうる。
【0016】
層は、銅基板に形成することができる。銅は、コンタクト要素について幅広く使用されているとともにコスト効率が良い。さらに、銅は、十分に良好な機械的特性、熱的特性、および電気的特性を有する。
【0017】
基板(例えば、銅基板)と本発明による層との間に、他の層を設けることができる。例えば、ニッケルのプレコーティングとして知られるニッケル層が、銅基板と本発明による層との間に設けられてもよい。このニッケル層は、例えば、バリア機能を担うことができ、層の中への銅原子の拡散を防止することができる。このような拡散は、層の特性に悪影響を与えることがある。
【0018】
特に、この層は、銅基板に直接形成することができる。具体的には、高い割合のビスマス、特に純粋なビスマス層が使用されるとき、このビスマスと直接接触する銅による層の悪影響は予期されない。したがって、そうでない場合の従来のニッケルバリア層をなしで済ませてもよい。
【0019】
ビスマスは高い反磁性を有しているため、ビスマスを含有する層は、追加の正の電気特性および/または磁気特性をさらに有することができる。例えば、それは、電磁シールドに、または導波路として用いることができる。とりわけ、層がコンタクト要素を完全にまたはほぼ完全に囲むとき、伝送特性またはシールド効果の選択的な影響が生じる。
【0020】
本発明による層は、複数の層を備えた層構造の一部とすることもできる。詳細には、このような層は、最外層、具体的にはさらにコンタクト層とすることができ、これが、相手方要素および/または環境と接触する。しかし、それは、中間層として機能することもできる。
【0021】
本発明による層または本発明による層構造は、電気めっきにより製造することができる。詳細には、層の一部または層構造の一部のみを、電気めっきにより製造することもできる。この方法は、広く使用されているコーティング法であり、その結果、この点において既存の機器および動作方法に関する幅広い知識ベースが存在する。電気めっきは、大抵の場合、簡単でコスト効率も良い。これにより製造された層は、一般に、有利な特性、例えば、製造される領域に適したサイズ、良好な表面構造、および均一な分布、を有する。電気めっき法は、連続してまたはバッチ生産で行うことができる。
【0022】
特に、非常に薄い層または層構造については、層または層構造は、物理蒸着により製造することができる。この方法では、より広い範囲の合金パートナが可能である。さらに、この方法により、複数の層成分を、非常に幅広い混合比で順次および/または同時に形成することが可能であり、または非常に純粋な層の製造が可能である。
【0023】
本発明による層は、プラグ型コネクタコンタクトにおけるコンタクト層として使用することができる。具体的には、この層は、プラグ型コネクタコンタクトの挿入領域用、接続領域用、および/または押圧領域用のコンタクト層として使用することができる。
【0024】
好ましくは、これは純粋なビスマス層であり、ビスマスが、プラグ型コネクタコンタクトの挿入領域用、接続領域用、および/または押圧領域用のコンタクト層として使用される。
【0025】
本発明を例示的な実施形態を参照して以下に説明する。本明細書に記載の特徴および実施形態は、それぞれの応用にこれがどの程度有利であるかに応じて、互いに自由に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】基板上の本発明による層の概略断面図である。
【
図2】本発明による層を中間層および基板とともに示す概略断面図である。
【
図3】本発明による層を有するコンタクト要素の概略断面図である。
【
図4】本発明による層構造を有するコンタクト要素を相手方コンタクト要素とともに示す概略断面図である。
【
図5】本発明によるコンタクト層を有する押圧コンタクト要素の概略断面図である。
【
図7】電着製造された(galvanically produced)ビスマス層のEDX(エネルギー分散型X線分光法)解析の概略的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、基板2と、基板2に形成された本発明によるコンタクト層3と、を備えたコンタクト要素1を示す。コンタクト層3は、基板2と環境4との間に配置され、コンタクト層3が環境4と基板2を互いからシールドしている。コンタクト層3は、相手方コンタクト要素(図示せず)との接触を生じさせる。
【0028】
この例に示したコンタクト層3は、電気めっきにより基板2に形成された。この例では、コンタクト層3は、厚さDKに達するまで基板の表面2aから成長方向Gに外側へ成長した。次いで、コーティング作業は中断された。このようなコンタクト層3の典型的な厚さDKは、1μmから10μmの間である。しかし、より安定した層を実現するために、この厚さは、より大きくなるように選択することもできる。特に、選択したコーティング法は、より厚い層だけの製造を可能にすることもできる。他方、より薄い層でも、大抵は十分である。例えば、10μm未満の厚さ、特にさらに1μm未満の厚さを有する層でも、すでに十分でありうる。
【0029】
本明細書に示したコンタクト層3は、ビスマスを含有するが、錫を含有しない。このコンタクト層3は、純粋なビスマス層であってもよい。しかし、この層は、ビスマスの割合を減少させるべく他の元素を含有することもできる。ある状況下では、ビスマスの割合を10%超とすると、望ましくないウィスカの形成を排除するのに十分でありうる。好ましくは、この層は、50%を超えるビスマス、特に90%を超えるビスマスを含有する。いずれの場合も、パーセンテージは、本文章の残りの部分にあるように、質量に関連している。ビスマスの割合が高くなるにつれて、層の特性は、主にビスマスにより決定されうるようになる。結晶構造、形態的特性、電気的特性、物理的特性、および/または化学的特性は、単に例によりそのような特性として言及される。コンタクト層においては、電気伝導性および耐摩耗性が最も重要である。
【0030】
コンタクト層3の本例に示した例は、基板2上に直接配置されている。したがって、詳細には、基板2とコンタクト層3の間に中間層は存在しない。この基板は、特に銅とすることができる。本発明によるコンタクト層3は、銅に直接形成することができ、このコンタクト層3は、他のコンタクト層、例えば、錫層を伴うことはあり得ない。なぜなら、錫層の中への銅原子の拡散が起こり、これがコンタクト層3の特性に悪影響を与えるためである。本発明によるコンタクト層の場合、そのような中間層またはバリア層を省くことができる。それにも関わらず、この場合に、そのようなニッケル層を存在させることもできる。
【0031】
基板2は、ビスマスの反磁性特性によりシールド効果を生じ得るコンタクト層3により、表面領域上で少なくとも完全に覆われる。
図1は、切断図のみを示す。コンタクト要素1は、例えば、正方形の断面を有するピンコンタクトとすることができる。コンタクト層3は、このコンタクト層3がトンネル状の形で基板2を囲むように断面の周囲に完全に広がることができる。ビスマスの反磁性特性のため、それにより、ほとんど損失のないようにして、特定の各周波数または特定の周波数範囲を伝達する導波路を作り出すことができる。
【0032】
図2は、本発明によるコンタクト層3の第2の実施形態の概略図である。コンタクト層3は層構造5の一部であり、この層構造5は、コンタクト層3に加えて中間層6をさらに含むともに基板2上に配置されている。そのような中間層6は、例えば、望ましいように基板2と中間層6の間の境界抵抗に影響を及ぼし得る。詳細には、中間層6は、構造全体の電気伝導性が低くなるように境界抵抗を低下させることができる。
【0033】
中間層6は、例えば、基板2上のコンタクト層3の成長が中間層なしには可能でないときに、中間層6bとして働くこともできる。したがって、そのような中間層6bは、基板2に十分に接続することができるとともに、コンタクト層3に十分に接続することができる。これは、個々の原子間の格子定数をさらに有することができ、それは、基板の格子定数の値とコンタクト層の格子定数の値の間にある。これにより、コンタクト層3を基板2に直接形成する場合にあるような、機械的な内圧もしくは張力および/または欠陥の発生の増加を防止することができる。
【0034】
中間層6は、単に、コンタクト層3の中への基板2の成分の拡散をまたはその逆を防ぐバリア層6cとすることもできる。
【0035】
中間層6の厚さDZおよびコンタクト層3の厚さDKは、用途に応じて異なるサイズとするように選択することができる。例えば、中間層6はごくわずかな厚さDZを有するものとすることができる一方、コンタクト層3の厚さDKはむしろ大きいものである。一方、コンタクト層3の厚さDKを小さくすることもでき、中間層6の厚さDZを大きくすることができる。
【0036】
詳細には、中間層6は、基板2の成分とコンタクト層3の成分とを含む合金層とすることもできる。これは、意図的に実現されても、偶然に生じるものであってもよい。
【0037】
他の実施形態と同様に、本例に示したコンタクト層3は、ビスマスに加えて、他の材料、詳細には元素材料を含有することもできる。具体的には、コンタクト層3は、亜鉛、インジウム、アンチモン、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、および/またはルテニウムを含有することもできる。これは、用途と実現される所望の特性とに応じて変わり得る。ビスマスが特性について決定する要素のままであるように、詳細には、それは主成分でなければならず、すなわち、ビスマスの割合は、任意の他の要素のみの割合より大きい。鉛を加えることもできるが、鉛は人間にとって有害であるとともに環境を害しうるので、コンタクト層3が鉛を含有しないことが有利である。
【0038】
この層は錫を含まないので、望ましくないウィスカの成長が防止される。
図3では、本発明による層10は、再びコンタクト層3である。このとき、基板2の表面2aは、直線的に延びていないが、しかし代わりに湾曲した形で延び、その上に配置されるコンタクト層3は、基板2を取り囲む。コンタクト層3の本例に示した例は、成長方向Gに、一定である厚さDKを有する。コンタクト要素1は、例えば、平らな表面と接触するピン状コンタクト要素1aとすることができる。このようなコンタクト層3は、例えば、浸漬コーティング法により製造することができる。
【0039】
図4は、本発明による層10の別の例を示す。層10は、このときコンタクト層3を形成しておらず、代わりに別個のコンタクト層3aにより覆われている。層10と基板2の間に、さらに別の中間層6、例えば
図2にすでに示したような中間層6が存在する。層10へ成長方向Gに形成されているコンタクト層3は、例えば、境界抵抗を減少させる役割を果たすことができる。このコンタクト層3は、層10を相手方要素7にはんだ付けまたは溶接するのを防止するために必要でもあり得る。さらに、別個のコンタクト層3aは、層10が相手方要素7または環境4と化学反応(例えば、空気中で酸化)するのを防止することもできる。
【0040】
相手方コンタクト要素7は、コンタクト方向Cにコンタクト要素1を押圧し、層構造5が、相手方コンタクト要素の先端7aから及ぼされる機械的圧力9を受けるようになっている。機械的圧力9は、特に相手方コンタクト要素7の先端7aの近傍で、コンタクト方向Cと平行な成分9aを有する。先端7aからの距離が大きくなるほど、コンタクト方向Cに対して直交しかつ層と平行に延びる成分9bはより大きくなる。この機械的圧力9は、通常、例えば、層10から成長方向Gに成長する錫のウィスカを形成する傾向を増大させる。しかし、これは、本発明による層10の場合、それがビスマスを含有し錫の無いようにして製造されたため、生じない。追加の別個のコンタクト層3aは、ウィスカのこのような成長をさらに防止することもできるが、必ずしもビスマスを含有する必要はない。
【0041】
中間層6の密度DZ、層10の厚さDS、およびコンタクト層3の厚さDKは、それぞれの用途に適合することができる。詳細には、個々の厚さは、他の厚さよりもさらにより小さくてもよく、またはさらにより大きくてもよい。
【0042】
この例では、単一の別個のコンタクト層3aのみを示している。層10に向けた成長方向に他の層を存在させることもできる。
【0043】
図5は、コンタクト層3として機能するとともに基板2の周囲に延びる本発明による層10を示す。
図5は、コンタクト要素1として機能するとともに相手方コンタクト要素7、例えば、コーティングされたプレート穴において押圧されるフォーク状のピン1bを示す。本発明によらないコンタクト層3を有する通常のコンタクト要素1の場合、これは、時間をかけてコンタクト層3から成長する髪状金属を生じさせ、この髪状金属は、断絶および/または電気的短絡を引き起こしうる。コンタクト層3として使用される本例に示した本発明による層10では、層10がビスマスを含有するためこの現象は生じない。
【0044】
図6は、コンタクト層3の形態で本発明による別の層10を示す。しかし、本例に示したコンタクト層3bは、基板の部分領域2b上のみであって中間層6の部分領域6f上のみに広がる。このような空間的選択は、例えば、層10または中間層6の電着製造(galvanic production)の場合に基板を覆うことにより実現することができる。例えば機械的加工またはエッチングによる実際の製造プロセスの後に、層の不要な部分領域を除去することによっても、そのような構成とされる。
【0045】
図7は、電着製造された試料(a galvanically produced sample)のEDXスペクトル(エネルギー分散型X線分光法)を示す。この基板は、銅合金である。ビスマス層は、銅基板に直接、すなわち中間層なしで、無添加のビスマス電解質を用いて形成された。
【符号の説明】
【0046】
1 コンタクト要素
1a ピン状コンタクト要素
1b ピン
2 基板
2a 基板の表面
2b 基板の部分表面
3 コンタクト層
3a 別個のコンタクト層
4 環境
5 層構造
6 中間層
6b 中間層
6c バリア層
6f 中間層の部分領域
7 相手方コンタクト要素
7a 相手方コンタクト要素の先端
9 機械的圧力
9a 接触方向の機械的圧力の成分
9b コンタクト方向に対して直交した機械的圧力の成分
10 層
C コンタクト方向
DZ 中間層の厚さ
DS 層の厚さ
DK コンタクト層の厚さ
G 成長方向
【国際調査報告】