(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
ここに述べる実施形態は、ある例では受信信号強度(RSS)に基づく1つ以上の移動装置の屋内ポジショニングに使用される動的な無線マップ作成のためのシステム、方法、及びコンピュータプログラムを提供する。ある態様において、動的なスキームを使用して、少数のフィンガープリントサンプルのみからRSS無線マップを学習する。ある実施形態では、圧縮センシングを適用して、グラフ構造体を構築し、そしてグラフの重みを計算する。ある規範的実施形態では、RSS無線マップを学習すると、移動装置が位置決めされ、位置に基づくサービスをユーザに提供することができる。移動装置の屋内学習及びポジショニングシステムを使用して、性能が評価される。ここに述べる実施形態は、多量のオフライン校正を要求せず、これは、フィンガープリントを収集する人件費を著しく減少しつつ、位置決め精度の満足なレベルを維持する。
前記データエレメントの各セットは、受信信号強度(RSS)読みのセットを表わし、該RSS読みは、1つ以上のビーコンから放射された1つ以上の信号からのものである、請求項1に記載の方法。
前記接続されたグラフにおける隣接ノードの各対に重みを関連させることを更に含み、前記重みは、負でない実数であり、そして前記重みは、データエレメントの類似性の尺度により決定される、請求項6に記載の方法。
前記接続されたグラフは、希薄な性質を有し、前記方法は、更に、前記圧縮センシングアルゴリズムを使用して各重みを希薄信号回復問題として決定することを含む、請求項7に記載の方法。
前記接続されたグラフのノードに対するデータエレメントのセットを、隣接ノードに対するデータエレメントのセットのほぼ直線的な組み合わせとして表現することを更に含む、請求項6に記載の方法。
実際の前測定された位置を、無線マップのために構成されたグラフ構造体に基づく断定位置と比較することにより、無線マップのために構成されたグラフ構造体を検証することを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記データエレメントのセットに対応する位置は、製品の位置、子供の位置、消費者の位置、医療患者の位置、及び医療ステーションの位置の少なくとも1つを表わす、請求項1に記載の方法。
前記無線マップは、画像の収集体のための画像ライブラリー、手書きサンプルの収集体のための手書きサンプルライブラリー、スピーチサンプルの収集体のための音声認識ライブラリー、画像の収集体のための画像ライブラリー、遺伝子情報レコードの収集体のための遺伝子情報分類ライブラリー、ゲームエレメントの収集体のためのゲームエレメントライブラリー、及びオーディオ/ビジュアルコンテンツエレメントの収集体のためのオーディオ/ビジュアルコンテンツライブラリー、の少なくとも1つを表わす、請求項1に記載の方法。
前記データエレメントの各セットは、受信信号強度(RSS)読みのセットを表わし、該RSS読みは、1つ以上のビーコンから放射された1つ以上の信号からのものである、請求項19に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0058】
添付図面には、本発明の実施形態が一例として示されている。説明及び図面は、例示のためのもの及び理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0059】
ここに開示する無線マップ作成及びポジショニング方法、アルゴリズム、プロセス、又は他の形式の位置ベースサービスは、移動装置のCPU/GPUプロセッサがここに開示するステップを実行するようにさせるインストラクションを記憶した非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体を備えたコンピュータプログラム製品又はアプリケーションとして実施できることが明らかである。
【0060】
以下の説明全体にわたり、サーバー、サービス、インターフェイス、ポータル、プラットホーム、又はコンピューティング装置で形成された他のシステムに関して多数の参照を行う。そのような用語の使用は、コンピュータ読み取り可能な有形の非一時的媒体に記憶されたソフトウェアインストラクションを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有する1つ以上のコンピューティング装置を表わすと考えられることが明らかである。例えば、サーバーは、ここに述べる役割、責任又は機能を満足するようにウェブサーバー、データベースサーバー、又は他の形式のコンピュータサーバーとして動作する1つ以上のコンピュータを含むことができる。ここに開示するコンピュータベースのアルゴリズム、プロセス、方法、又は他の形式のインストラクションセットは、ここに開示するステップをプロセッサに実行させるインストラクションを記憶する非一時的な有形のコンピュータ読み取り可能な媒体を含むコンピュータプログラム製品として実施できることも明らかである。又、ここに述べる実施形態は、画成された地域内の装置の物理的位置を表わす無線マップを効率的に且つ費用効果の高いやり方で動的に作成するのに使用できることが明らかである。動的な無線マップは、画成された地域内の装置の位置を追跡し及び位置決めするように更新され及び使用される。無線マップは、送信ビーコンからの信号を表わす受け取った読みに基づいて構成される。無線マップは、正確であり、位置的なエラーを減少する。
【0061】
以下の説明は、本発明の要旨の多数の規範的実施形態を提供する。各実施形態は、発明要素の1つの組み合わせを表わすが、本発明の要旨は、ここに開示する要素の考えられる全ての組み合わせを含むことが考えられる。従って、1つの実施形態が要素A、B及びCを含み、そして第2の実施形態が要素B及びDを含む場合には、本発明の要旨は、ここに明確に開示されなくても、A、B、C又はDの他の組み合わせも含むと考えられる。
【0062】
特に指示のない限り、ここで使用する用語「〜に結合(coupled to)」とは、直接的結合(互いに結合された2つの要素が互いに接触する)と、間接的な結合(少なくとも1つの付加的な要素が2つの要素間に配置される)との両方を含むことが意図される。それ故、用語「〜に結合(coupled to)」及び「〜と結合(coupled with)」は、同義語として使用される。
【0063】
ここに述べるシステム及び方法の実施形態は、ハードウェア又はソフトウェア或いはその両方の組み合わせで実施される。これらの実施形態は、プログラマブルコンピュータで実行されるコンピュータプログラムで実施され、各コンピュータは、少なくとも1つのプロセッサと、データストレージシステム(揮発性メモリ又は不揮発性メモリ又は他のデータストレージ要素或いはその組み合わせを含む)と、少なくとも1つの通信インターフェイスとを備えている。例えば、これに限定されないが、種々のプログラマブルコンピュータは、サーバー、ネットワーク機器、セットトップボックス、埋め込み型装置、コンピュータ拡張モジュール、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、パーソナルデータアシスタント、セルラー電話、スマートホン装置、UMPCタブレット及びワイヤレスハイパーメディア装置、或いはここに述べる方法を実施するように構成できる他のコンピューティング装置である。
【0064】
ここに述べる機能を遂行しそして出力情報を発生するために入力データにプログラムコードが適用される。出力情報は、1つ以上の出力装置に既知の仕方で適用される。ある実施形態では、通信インターフェイスは、ネットワーク通信インターフェイスである。本発明の要素が組み合わされる実施形態では、通信インターフェイスは、プロセス間通信(IPC)、等のためのソフトウェア通信インターフェイスである。更に別の実施形態では、ハードウェア及びソフトウェアとして実施される通信インターフェイス、並びにその組み合わせがある。
【0065】
各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高レベル手続き又はオブジェクト指向のプログラミング又はスクリプト言語或いはその両方で実施される。しかしながら、それとは別に、プログラムは、必要に応じて、アッセンブリ又はマシン言語で実施されてもよい。言語は、コンパイル言語又は解釈言語である。そのような各コンピュータプログラムは、汎用又は特殊目的のプログラマブルコンピュータにより読み取りできるストレージ媒体又は装置(例えば、ROM、磁気ディスク、光学的ディスク)に記憶され、ここに述べる手順を遂行するためにそのストレージ媒体又は装置がコンピュータによって読み取られたときにコンピュータを構成し及び動作する。又、システムの実施形態は、コンピュータプログラムで構成された非一時的コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体として具現化されると考えられ、そのように構成されたストレージ媒体は、ここに述べる機能を遂行するために特定の及び既定の仕方でコンピュータを動作させる。
【0066】
更に、ここに述べる実施形態のシステム及び方法は、1つ以上のプロセッサのためのコンピュータ使用可能なインストラクションを保持する物理的な非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体を含むコンピュータプログラム製品に分散させることができる。その媒体は、1つ以上のディスケット、コンパクトディスク、テープ、チップ、磁気及び電子ストレージ媒体、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等を含む種々の形態で提供される。非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体は、一時的な伝播信号を除いて、全てのコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。非一時的という語は、記憶されるデータが一時的に記憶されるだけである一次メモリ、揮発性メモリ、RAM、等のコンピュータ読み取り可能な媒体を除外するものではない。又、コンピュータ読み取り可能なインストラクションは、コンパイルコード及び非コンパイルコードを含めて種々の形態である。
【0067】
上述したように、本開示は、一般的に、1つ以上の移動装置、例えば、スマートホン、テーブル、医療カート、ロボット、及び他の着用型装置、例えば、RSS読み又はデータエレメントのセットに基づくGoogleメガネの、屋内ポジショニングのための動的な無線マップ作成システム、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【0068】
ある態様において、移動装置の位置は、1つ以上のビーコンからのRSSと、フィンガープリントのセット(例えば、データエレメント及び位置の既知の対)においてRSSを測定することにより作成されるネットワークの無線マップとに基づいて決定される。フィンガープリントのセットは、マップ作成されるネットワークエリア内の基準ポイントの限定セットである。ビーコンは、一方向性信号を移動装置へ送信するように構成され、そしてある例では、装置との間で両方向性データを交換するようにされる。ビーコンは、信号を放射する送信器である。又、ビーコンは、ある例では、トランシーバである。規範的なビーコンは、アクセスポイント(AP)である。APは、信号の受信もできる規範的ビーコンと考えられる。ビーコンの他の例は、IEEE802.11ワイヤレスアクセスポイント、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、WiGIG、WiFi Direct装置、又はスペクトルの非標準部分の独占的信号を利用する装置を含む。
【0069】
別の態様において、移動装置は、RSS読み(又は他のデータエレメント)を測定し、そしてその測定されたRSSをネットワークの無線マップと比較して、そのRSS測定値をサーバーや他の第三者に与えることなく、その位置を決定し、従って、匿名の位置追跡を可能にする。更に、無線マップを作成するか又は移動装置の位置を決定するのに、ビーコンの位置を知る必要はない。
【0070】
別の態様において、屋内ポジショニングシステムは、半スーパーバイズ学習及び圧縮センシングを通して少数の校正(例えば、データエレメント及び位置の既知の対)で無線マップを自動的及び動的に学習し及び作成する。例えば、単に移動装置を携帯しそして環境の周りで通常のコースを歩くユーザによりRSS測定値が大量に収集される。少数のフィンガープリントサンプル(例えば、RSSの読み及び位置の、既知の対)を伴う構成されたグラフから無線マップの対応する位置が学習される。RSS測定値からグラフを構成するのに非パラメータ解決策が提案される。
【0071】
別の態様において、少数のフィンガープリントサンプルからRSS無線マップを学習するのに動的なスキームが使用される。グラフ構造体を構築しそしてグラフ重みを計算するために圧縮センシングが適用される。RSS無線マップを学習すると、ワイヤレス電話を位置決めすることができ、そして位置ベースサービスをユーザに提供することができる。移動装置の屋内学習及びポジショニングシステムは、性能を評価するのに使用される。実験結果が示すように、ここに提案するシステムは、多量のオフライン校正を要求せず、満足な位置精度レベルを維持しながらフィンガープリントを収集する人件費を大幅に減少する。
【0072】
規範的実施形態において、グラフの重みを見出す問題がスパース信号回復問題へと体系化され、従って、圧縮センシングに従い、l1-最小化問題を解くことによりグラフ重みを推定することができる。ここに例示する実施形態では、移動装置(例えば、HTC Desirez又は他の製造者/メーク/モデルのようなスマートホン)において実施形態が具現化され、そして実験テストを行って、性能を評価する。実験結果が示すように、ここに提案する実施形態は、多量のオフライン校正を要求せず、満足な位置精度レベルを維持しながらフィンガープリント(例えば、既知の対)を収集する人件費を大幅に減少する。より一般的には、学習されたRSS無線マップは、フィンガープリントベースのポジショニングシステムにより、オフラインデータベースとして使用され、オンラインLBSは、ユーザに提供することができる。
【0073】
一実施形態による例示的方法は、2つの段階、即ち無線マップを作成し又は再構成するオフライン段階と、位置決定のためのオンライン段階とを含む。移動装置にリンクされた無線マップユーティリティ(例えば、無線マップジェネレータ)は、オフライン段階を実施し、一方、移動装置にリンクされた位置決定エンジンは、オンライン段階を実施する。
【0074】
規範的な実施形態において、無線マップユーティリティは、アフィニティ伝播のようなクラスター技術を実施した後に、アウトライアー調整を実施してRSS変動の作用に対処することにより、無線マップを作成する。圧縮センシング(CS)アルゴリズムが無線マップユーティリティにより使用されて、フィンガープリントのサブセットにおけるRSS測定に基づいて無線マップを再構成し、測定の回数を著しく減少して、無線マップを時々更新する。
【0075】
他の実施形態では、位置決定エンジンが1つ以上のアルゴリズムを実施して、装置により測定されたRSSに基づいて移動装置の位置を決定する。そのような1つのアルゴリズムは、k最近傍(KNN)アルゴリズムであり、装置のオンラインRSS読みに関して最小のユークリッド距離を有するk最近傍の重心を計算することにより移動装置の位置を推定する。別のアルゴリズムは、異なるAPからのRSS読みが各々の瞬間に独立していると仮定し、ベイジアン理論及びカーネル関数を使用して各潜在的位置の確率が分析される統計学的方法である。これに対して、計算上あまり複雑でなく、それ故、リアルタイム又はほぼリアルタイムで実行できるアルゴリズムは、スパースであって、ある基礎のもとで圧縮可能である信号を、ナイキストサンプリング理論に必要なものより遥かにノイズの少ない測定値で回復するためのCSアルゴリズムである。スパースな信号は、l1-最小化問題を解くことにより高い確率で再構成することができる。空間ドメインにおける位置決定のスパース特性のために、直線的プログラミングを使用して決定論的回復を与えるCSアルゴリズムが好ましい。
【0076】
他の実施形態では、オンライン段階が2つのステージ、即ち(1)当該領域を減少するための粗い位置決定ステージ;及び(2)正確な位置を決定するための微細な位置決定ステージ;に分割される。2段階位置決定の使用は、処理要件を著しく緩和し、移動装置のリアルタイム又はほぼリアルタイムの位置決定を可能にする。位置決定エンジンは、粗い位置決定ステージではクラスターマッチングアルゴリズムを、そして微細な位置決定ステージでは圧縮センシングアルゴリズムを実施するのが好ましい。
【0077】
更に、粗い位置決定ステージでは当該領域をより正確に減少するために過去の推定位置及びモーションダイナミックスが使用される。モーションダイナミックスは、一般的なベイジアン追跡モデルによりモデリングされ、そして推定位置を洗練化するためにフィルタが導出される。ガウス追跡ノイズモデル及び直線的モーションダイナミックスを仮定することにより、一般的なフィルタは、カルマンフィルタとなり、その最適な解は、最小二乗平均エラー(MMSE)推定値である。ガウスRSS位置関係は、時々、仮定できないことがあるが、カルマンフィルタを後処理ステップとして適用することで、ポジショニングシステムの精度を改善することができる。推定の精度は、粒子フィルタを使用することにより更に改善することができる。このフィルタは、非ガウス及び非直線的モデルに適用することができると共に、マップ、加速度計、等の付加的な情報により洗練化することもできる。それ故、粗い位置決定ステージでは、以前の推定値を使用して、オンラインRSS読みに従って選択された基準ポイントのクラスターに加えて、近傍の基準ポイントを選択することができる。又、追跡システムは、カルマンフィルタを実施して推定値更新を円滑化することもできる。
【0078】
有意義なことに、ここに述べる実施形態の位置決定エンジンは、移動装置の位置を追跡するリモートサーバーからの情報を必要とせずに、移動装置のみから導出された無線情報に基づいて、移動装置に関連した比較的正確な位置データを与えるように動作する。
【0079】
以下、添付図面を参照して、ここに例示する実施形態を説明する。
【0080】
図1は、ここに述べる実施形態によるシステム10を示す。より一般的には、システム10は、1つ以上のビーコン12(例えば、信号を送信するネットワークAP又は他の装置)と、フィンガープリントデータベース16を管理するためにネットワーク18にアクセスするサーバー14とを備えている。一実施形態において、フィンガープリントデータベース16は、無線マップを与えるためにサーバー14にリンクされ、そして1つ以上の移動装置20が、ビーコン12により実施されるネットワークプロトコルに適合するネットワークアダプタ22に各々作動的にリンクされて、1つ以上のビーコン12から信号を受信する。例えば、ビーコン12は、IEEE802.11ワイヤレスアクセスポイントであり、そしてネットワークアダプタは、WLANアダプタである。これは、非限定例である。
【0081】
一実施形態において、ネットワークビーコン12は、既知又は未知の位置を有し、異なるネットワーク18に関連される。各ネットワークビーコン12は、信号を放射し、そして無線マップは、1つ以上の基準ポイントにおける1つ以上のネットワークビーコン12からのRSSに基づく。
【0082】
ここに例示する実施形態では、各移動装置20は、更に、位置決定エンジン24を備え、又はそれにリンクされる。位置決定エンジン24は、サーバー14から無線マップ又はそのサブセットを得、そしてその無線マップ及び1つ以上のビーコン12からのRSSに基づいて移動装置20の位置を決定するように動作する。1つ以上の移動装置20は、該移動装置20のユーザが初期設定を行いそしてユーザに経路ルート及び追跡更新を与えることを可能にするためにナビゲーションモジュール28にもリンクされる。移動装置20の1つ以上は、更に、無線マップユーティリティ26(例えば、無線マップジェネレータ)を備え、又はそれにリンクされる。或いは又、例えば、ある移動装置20が無線マップユーティリティ26にリンクされて無線マップの作成に使用される一方、他の移動装置20が位置決定エンジン24にリンクされてユーザにより使用されてもよい。
【0083】
簡単化のため、1つ以上の移動装置20は、以下、無線マップユーティリティ26及び位置決定エンジン24の両方にリンクされた単一の移動装置20と称する。しかしながら、それら実施形態は、複数の移動装置20の位置を決定するように拡張できることを理解されたい。
【0084】
移動装置20は、RSSの読みを得、そして無線マップユーティリティ26を使用して動的な無線マップを作成する。無線マップは、次いで、位置を決定するのに使用される。
【0085】
移動装置20は、ユーザにより動作できるもので、プロセッサ及びメモリを含むポータブルネットワーク化(ワイヤード又はワイヤレス)コンピューティング装置であり、且つ移動装置20の1つ以上のコンピューティングアプリケーション(例えば、ユーザ装置XXにインストールされ又はそこで実行されるコンピューティングアプリケーション)と、サーバー14のようなシステム10のコンポーネントとの間の通信を促進するのに適したものである。
【0086】
ある実施形態によれば、移動装置20は、他のコンピュータシステム及び装置と通信する能力を有する進歩型の通信能力を伴う両方向通信装置である。移動装置により与えられる機能に基づき、移動装置は、ポータブル電子装置、スマートホン、データメッセージング装置、両方向ページャー、データメッセージング能力を伴うセルラー電話、パーソナルデジタルアシスタント、ワイヤレスインターネット機器、ポータブルラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、医療機器、ロボット、着用型装置、メディアプレーヤ、電子読取装置、データ通信装置(電話能力のあるもの又はないもの)、又はそれらの組み合わせと称されるものである。
【0087】
移動装置20は、無線マップユーティリティ26のような種々のコンピューティングアプリケーションで構成されたプロセッサを備えている。コンピューティングアプリケーションは、種々の機能を遂行して識別可能な結果を得るために物理的ハードウェアを構成するコンピュータ実行可能なインストラクションを含むハードウェア及びソフトウェアモジュールに対応する。コンピューティングアプリケーションは、特定の機能を遂行する上でユーザを助けるように設計されたコンピュータソフトウェア又はハードウェアアプリケーションであり、そして移動装置20に存在し、そこで実行され、ランされ又はレンダリングされるアプリケーションプラグイン、ウィジェット、インスタントメッセージングアプリケーション、移動装置アプリケーション、e−メールアプリケーション、オンライン電話アプリケーション、Java(登録商標)アプリケーション、ウェブページ、又はウェブオブジェクトを含む。移動装置20は、異なる形式の装置でよく、1人のユーザ又は複数のユーザにサービスするものでよい。移動装置20は、キーボード、マウス、カメラ、タッチスクリーン及びマイクロホンのような1つ以上の入力装置を含み、又、ディスプレイスクリーン及びスピーカのような1つ以上の出力装置も含む。
【0088】
センサ14は、データベース又はファイルシステム(例えば、フィンガープリントデータベース16)で構成されたサーバー及びデータストレージ装置を使用して実施されるか、或いは広い地域にわたって分散されそしてネットワーク18を経て接続された複数のサーバー又はサーバーのグループを使用して実施される。サーバー14は、データストレージ装置(例えば、フィンガープリントデータベース16)に直接接続されるか、又はネットワーク18を経てクラウドベースのデータストレージ装置に接続される。サーバー14は、プロセッサ及びメモリを含むネットワーク構成のコンピューティング装置、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバー、ポータブルコンピュータ、移動装置、パーソナルデジタルアシスタント、ラップトップ、タブレット、スマートホン、WAPホン、双方向テレビ、ビデオディスプレイターミナル、ゲームコンソール、電子読取装置、ポータブル電子装置、又はそれらを組み合わせたものに存在する。サーバー14は、任意の形式のプロセッサである1つ以上のマイクロプロセッサ、例えば、任意の形式の汎用マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、デジタル信号処理(DSP)プロセッサ、集積回路、プログラマブルリードオンリメモリ(PROM)、又はその組み合わせを含む。サーバー14は、内部又は外部のいずれかに配置された任意の形式のコンピュータメモリ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CDROM)、電気−光学メモリ、磁気−光学メモリ、消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、等を含む。サーバー14は、1つ以上の入力装置、例えば、キーボード、マウス、カメラ、タッチスクリーン及びマイクロホンを含むと共に、1つ以上の出力装置、例えば、ディスプレイスクリーン及びスピーカも含む。サーバー14は、データを搬送できるネットワーク18(又は複数のネットワーク)に接続することにより、他のコンポーネントと通信し、あるアプリケーション及び他のアプリケーションにサービスし、そして他のコンピューティングアプリケーションを遂行するために、ネットワークインターフェイスを有し、ネットワーク18は、インターネット、イーサネット(登録商標)、基本電話サービス(plain old telephone service)(POTS)ライン、公衆交換電話ネットワーク(PSTN)、デジタル総合サービス網(ISDN)、デジタル加入者ライン(DSL)、同軸ケーブル、光ファイバ、衛星、移動、ワイヤレス(例えば、Wi−Fi、WiMAX)、SS7シグナリングネットワーク、固定ライン、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、及びそれらの組み合わせを含む他のものを含む。明瞭化のため、1つのサーバー14しか示されていないが、複数のサーバー14又はサーバー14のグループが広い地域にわたって分散されて、例えば、ネットワーク18を経て接続されてもよい。
【0089】
システム10は、多数の位置に対し多数の無線マップを管理するバックエンドサービス(図示せず)を備えている。このバックエンドサービスには、多数のフィンガープリントデータベース16が接続される。バックエンドサービスは、RSSベースの位置サービスインフラストラクチャーを提供する。バックエンドサービスは、無線マップユーティリティ26の異なるインスタンスにより作成されるもののような、多数の位置に対する多数の無線マップを維持し及び更新する。
【0090】
一実施形態において、移動装置20は、各ビーコン12(移動装置の無線範囲内にある)からオンラインRSSの読みを連続的に又は時間インターバルΔtで間欠的に収集し、この時間インターバルは、移動装置20のネットワークアダプタ22、及びr(t)=[r
1(t)、r
2(t)、・・・r
L(t)]、t=0、1、2、・・・で表わされたコンピューティング性能で制限されるか又はそれに依存する。移動装置20は、次いで、上付き文字Tが置換を表わすとすれば、次の式で表わされた推定位置を計算する。
【0091】
最初のオフライン段階30(
図2)の間に、移動装置20を異なる方向(例えば、北、南、東、西)に向けることにより複数の基準ポイントにおいてRSS読みの時間サンプル(例えば、データエレメントのセット)が収集される。向きoで基準ポイントjにおいてビーコン12iから収集されたRSS時間サンプルの生のセットは、収集された時間サンプルの全数をqとすれば、次のように表わされる。
ある実施形態では、これら時間サンプルの平均が計算されてデータベースに記憶され、これは、ここでは、「無線マップ」の例と称される。無線マップは、所与の当該領域における空間的RSSプロパティの充分な表現を与えるもので、Ψ
(o)により表わされる。
ここで、
は、i=1、2、・・・L、j=1、2、・・・N、及びo∈O={0°、90°、180°、270°}とすれば、向きoで基準ポイントjにおいてビーコン12iからの時間ドメインにわたるRSS読みの平均(dBmスケール)である。Lは、検出できるビーコン12の全数であり、そしてNは、基準ポイントの数である。無線マップベクトルであるΨ
(o)の列は、特定の向きoで各基準ポイントにおけるRSS読みを表わし、これは、上付き文字Tが置換を表わすとすれば、次のように表わされる。
【0092】
更に、これら時間サンプルのバリアンスが記憶される。各基準ポイントのバリアンスベクトルは、次のように定義される。
ここで、
は、向きoで基準ポイントjにおいてAPiからのRSS読みの非偏移推定バリアンスである。
【0093】
無線マップは、次のようなテーブルであり、
但し、(x
j、y
j)は、j番目の基準ポイントの座標である。基準ポイントにおいてAPに対するRSSの読みが見つからない場合には、無線マップにおけるその対応RSSエンティティがその無効性を意味するように小さな値(dBmスケールで)にセットされる。この例では、各セットに対応する位置は、二次元位置である。他の例では、それが三次元位置又は四次元位置である(例えば、RSS平均は時間と共に変化するので、時間)。
【0094】
オフライン段階30で収集された基準ポイントは、クラスター化32の間に多数のクラスターに分割される。異なる向きのデータベースは、RSS読みの異なるセットを有するので、クラスター化32は、各向きで独立して遂行される。アフィニティ伝播アルゴリズムは、慣習的なKNNクラスター化アルゴリズムにおいて規範(exemplar)の初期化を要求しないので、クラスターを生成するのに使用される。むしろ、現在のアフィニティ伝播は、基準ポイントごとに好みとして知られている同じ実数を入力として指定することにより全ての基準ポイントを潜在的な規範として等しく考える。次いで、規範及びそれに対応するクラスターが生成されるまで、実数値(real-valued)メッセージが類似性の尺度に基づいて基準ポイントの対間で繰り返し送信される。対での類似性s(i、j)
(o)は、基準ポイントjが基準ポイントiに対する規範としてどれほど充分に適しているか示すもので、次のように定義される。
【0095】
自己類似値s(j、j)
(o)、j=1、2、・・・Nは、基準ポイントjが規範となる可能性を指示する。全ての基準ポイントが等しく規範であることが望ましいので、それらの好みは、共通の値にセットされる。適度な数のクラスターを生成するため、各向きの共通の好みは、次のように定義される。
但し、γ
(o)は、望ましい数のクラスターが生成されるように実験で決定される実数である。
【0096】
一実施形態において、アルゴリズムの中心的動作は、基準ポイントの対間で2種類の実数値メッセージを送信することである。基準ポイントiから候補規範の基準ポイントjに送られる責任メッセージr(i、j)
(o)は、次のように表わされる。
但し、i≠jであり、候補規範の基準ポイントjから基準ポイントiに送られる利用性メッセージα(i、j)
(o)は、次のように定義される。
【0097】
メッセージは、各無線マップ内の基準ポイントの対間に繰り返し通され、そして規範及び対応するクラスターの良好なセットが出現するまで、前記更新ルールに従う。オフライン段階30は、アウトライアー34を調整してRSS変動の作用に対処することを含む。
【0098】
前記プロセスは、オフライン段階30の間にフィンガープリントが収集された後に実行される。特定の向きoでの各無線マップに対して、H
(o)を規範のセットとし、そして各基準ポイントj∈H
(o)に対して、基準ポイントjが規範であるところの基準ポイントのセットをC
j(o)で表わすとする。C
j(o)のセットにあるが、マップ上の規範jから物理的に離れている基準ポイントと称される各アウトライアーは、そのすぐ近くにある新たな規範を指定することにより更に調整される。それ故、粗い位置決定ステージは、規範及びそれに対応する無線マップベクトルのセットを使用して、オンラインRSSの観察に一致するクラスターを選択するために設けられ、次いで、微細な位置決定ステージの間に、それら候補クラスターの基準ポイントを使用して、移動装置を位置決めする。
【0099】
移動装置の実際の位置決定は、オンライン段階36において行われる。オンライン段階36の間に、{Ψ
k,r、k=1、・・・L}とすれば、次式
で表わされるRSS測定ベクトルは、未知の位置において任意の方向を向いた移動装置により収集される。
図2に示すように、オンライン段階36には2つのステージ:(1)当該エリアを減少するためにクラスターマッチングを伴う粗い位置決定ステージ38;及び(2)位置推定を回復するために圧縮センシング(CS)を伴う微細な位置決定ステージ40がある。
【0100】
粗い位置決定ステージ38の目標は、全無線マップからそのサブセットへ当該領域を減少することである。従って、これは、アウトライアーを除去し、微細な位置決定ステージ40のための複雑さを減少する。というのは、僅かな基準ポイントしか考えられないからである。更に、最大位置決定エラーをこのサブセットのサイズに制限するが、このエラーは、粗い位置決定が実施されないときには、著しく大きなものとなる。
【0101】
一実施形態において、粗い位置決定ステージ38は、オンラインRSS測定ベクトルと各規範との間の類似性を比較して、オンライン読みが属するクラスターを識別することにより、動作される。1つのクラスターを選択するのではなく、移動装置の位置がクラスターの境界にあるときに不正確な推定を招くエッジ問題を回避するために、若干の最良一致の規範Sがそれに対応するクラスターメンバーセットCと共に選択される。一方、RSSの経時変化により、オンライン測定値がデータベースに記憶された値から逸脱する。
【0102】
粗い位置決定は、クラスターマッチングスキーム、例えば、規範ベースのクラスターマッチング、平均RSSベースのクラスターマッチング、重み付けクラスターマッチングを使用するか、或いはクラスターマッチングのための最強のビーコン12を使用して実施されて、適当な類似関数を定義する。次いで、最大の類似値を伴うクラスターが候補クラスターとして選択される。
【0103】
規範ベースのクラスターマッチングでは、前記式(4)と同様に、類似関数が、個々の規範のRSS無線マップベクトルへのオンライン測定ベクトルΨ
rのユークリッド距離の負として定義される。
【0104】
平均RSSベースのクラスターマッチングでは、各規範のRSS無線マップベクトルをクラスターマッチングのために使用するのではなく、全てのクラスターメンバーのRSS無線マップベクトルの平均を使用して、特定の規範から生じる考えられるRSS変動を平均化する。これは、クラスターのより包括的な且つ代表的な読みを与える。このケースでは、基準ポイントjをその規範としてもつクラスターへのオンライン測定ベクトルΨ
rのユークリッド距離は、次の式により計算することができる。
但し、
は、基準ポイントjが規範であるクラスターにおけるメンバーの数を表わす。
【0105】
重み付けクラスターマッチングでは、各基準ポイントにおける各ビーコン12からのRSS読みのバリアンスがオフライン段階30の間に記録されるので、あるクラスター内の特定のビーコン12からのRSS読みの安定性は、クラスターマッチングのための重みと考えられる。重み付けクラスターマッチングでは、各ビーコン12の前記類似関数に異なる重みが追加され、安定したRSS読みが大きな重みをもつようになる。それに対応する類似関数は、次のように定義される。
但し、
は、2つのベクトル間の要素ごとの乗算である。
但し、
は、向きoでクラスターjにおけるAPlからのRSS読みに対する重みを表わし、これは、対応するRSSバリアンスの逆数に比例し、即ち、次のようになる。
【0107】
クラスターマッチングのための最も強いビーコンを使用することを含む一実施形態では、最も強いビーコンが時間にわたるカバレージの最も高い確率を与えるので、最も高いオンラインRSSをもつビーコンのセットだけが選択される。従って、類似性は、それらの選択されたビーコンだけを考慮することにより前記スキームのいずれかを使用して計算される。
【0108】
前記クラスターマッチングスキームの全部が、最大位置決定エラーの主たる原因である誤ったクラスターを選択するおそれを減少するように試みた。
【0109】
最良一致クラスターは、前記スキームの1つ以上を使用することにより見出される。上述した類似関数を評価することにより、対応するクラスターメンバーセットCを伴う最良一致規範Sのセットは、次のように見出すことができる。
但し、αは、Sにおいて適度な数のクラスターを得るための予め定義されたスレッシュホールドである。Sには僅かな数のクラスターを含ませることしか望まれないので、αは、最大類似性のある割合にセットされる、即ち、
但し、α
1+α
2=1及びα
1=0.95は、そのような設定の考えられる例である。
【0110】
粗い位置決定の後に、当該セットは、セットCに減少することができる。部分無線マップマトリクス
は、
で、次のように得ることができる。
【0111】
マトリクス
は、次に続く微細な位置決定ステージ40により使用される。
における3つ以上の列は、向きは異なるが同じ基準ポイントを表わす可能性があることに注意されたい。というのは、クラスターマッチングには、異なる向きからの全てのクラスターが考えられるからである。
【0112】
位置決定問題は、移動装置20の位置がある時間に個別の空間ドメインにおいて独特であるので、スパースな性質を有する。理想的には、移動装置20が1つの向きに向けて厳密に1つの基準点に位置されると仮定すれば、装置の位置は、θとして表わされた1スパースベクトルとして公式化される(この仮定は、緩和することができる)。従って、θは、移動装置が位置する基準ポイントのインデックスをnとすれば、θ(n)=1を除いて全ての要素が0に等しい
ベクトルであり、即ち、次のようになる。
【0113】
移動装置により測定されるオンラインRSS読みは、次のように表わされる。
但し、
は、式(16)で定義された部分無線マップマトリクスであり、そしてεは、RSS逸脱から生じる未知の測定ノイズである。M×LマトリクスΦは、オンラインRSS測定ベクトルΨ
rに適用されるビーコン選択演算子であり、次のようになる。
【0114】
ビーコン12が広く配備されたここに例示する実施形態では、検出可能なビーコン12の合計数が、一般的に、ポジショニングに必要な数より著しく多く、冗長な計算を招く。更に、RSSバリアンスが大きい信頼性のないビーコン12も、偏った推定を招き、ポジショニングシステムの安定性に影響を及ぼす。これは、ビーコン選択42技術を使用してポジショニングに利用できるビーコン12のサブセットを選択する動機を与える。異なるビーコン選択42スキームを使用して、微細な位置決定ステージ40の精度を高めることができる。
【0115】
式(1)により、基準ポイントをカバーするビーコン12のセットは、Lとして、|L|=Lで表わすことができる。ビーコン選択42の目的は、|M|=M≦Lとなるように、セット
を決定することである。このプロセスは、ビーコン選択42マトリクスΦを使用することにより実行される。Φの各行は、ポジショニングのために選択されるビーコン12のインデックスをlとすれば、φ(l)=1を除いて、全ての要素が0に等しい1×Lベクトルである。
【0116】
最も強いビーコン12、フィッシャー基準、及びランダムな組み合わせを含めて、異なる解決策を使用して、マトリクスΦを決定することができる。
【0117】
最も強いビーコン12の解決策では、粗い位置決定と同様に、最も強いビーコン12が時間と共に最も高いカバレージ確率を与えるという推論に基づいて最も高いRSS読みをもつAPのセットが選択される。ここで、測定ベクトル(8)がRSS読みの減少順に分類され、そして最小のインデックスに対応するAPが使用される。Φは、現在のオンライン測定ベクトルに基づいて生成されるので、この基準は、位置更新ごとに異なるΦを生成する。
【0118】
一実施形態では、フィッシャー基準は、4つの方向に基準ポイントを横切る各ビーコン12に対して弁別能力を定量化するのに使用される。次のように定義されたメトリック
を比較する。
但し、
である。ξ
iの分母は、RSS値が時間と共に著しく変化せず、オフライン値とオンライン値が同様であることを保証し、一方、その分子は、基準ポイントを横切る平均RSSの変化の強度を評価することにより各ビーコン12の弁別能力を表わす。微細な位置決定に対してマトリクスΦを構成するために最も高いξ
iをもつビーコン12が選択される。
【0119】
ランダムな組み合わせでは、異なる基準に基づいて適当なビーコン12を選択しそして位置更新ごとにマトリクスΦを動的に生成する前記2つのスキームとは異なり、AP選択演算子Φは、i.i.dガウス入力を持つランダムなM×Lマトリクスとして定義される。ランダムな組み合わせスキームは、計算上あまり複雑ではない。というのは、マトリクスが異なる実行において固定であり、且つフィッシャー基準により要求されるバリアンスを計算するのに著しいRSS時間サンプルを要求しないからである。
【0120】
式(18)におけるスパース性に加えて、CS理論の使用を可能にするために満足しなければならない別の重要なプロパティは、インコヒレンスである。しかしながら、Φ(最も強いAP又はフィッシャー基準のいずれかにより生成される)及び
は、空間ドメインにおいて一般的にコヒレントであり、これは、CS理論のためのインコヒレンス要件に違反する。これに対処するために、以下の直交化前処理手順44がそのようなプロパティを回復させる。
【0121】
直交化演算子Tを次のように定義する。
但し、
及び
であり、ここで、orth(R)は、Rの範囲に対して直交に基づくものであり、そして
は、マトリクスRの擬似逆数である。
【0122】
直交化プロセス44は、次のように、測定ベクトルyに演算子Tを適用することにより実行される。
但し、ε’=Tεである。
であることを示すのは簡単である。それ故、式(18)で公式化された位置決定問題は、次のように再公式化される。
【0123】
ここで、Qは、単位ノルムをもつ行直交マトリクスである。Qは、CSにより必要とされる限定等長プロパティ(RIP)に従うことが照明されている。θはスパース性があるから、圧縮センシングの理論によれば、ビーコン12の数Mが
程度である場合には、位置インジケータθは、l
1-最小化問題(例えば、最小化プロセス46)を解くことにより、非常に高い確率でzから充分に回復することができる。
但し、||・||
lは、ベクトルのl
1-ノルムである。
【0124】
特別の注意として、l
1-最小化アルゴリズムの複雑さは、潜在的な基準ポイントの数を表わすベクトルθの大きさに比例する。それ故、N個の全基準ポイントから
個の基準ポイント
のサブセットへ当該エリアを減少する粗い位置決定ステージ38は、l
1-最小化問題を解くための計算時間を短縮し、従って、リソース限定の移動装置20によってこの手順を実行できるようにする。
【0125】
移動装置20が、測定された方向の1つに向いて基準ポイントの1つに位置する場合には、回復される位置がほぼ正確である。しかしながら、更にあり得るシナリオにおいて、移動装置20は、ある方向を向いてある基準ポイントに厳密に位置しないことがある。そのようなケースでは、回復された位置
は、厳密な1−スパースベクトルではなく、若干の非ゼロ係数を含む。格子仮定で誘起されるエラーを補償するために、後処理手順が実行される。値があるスレッシュホールドλより上の優勢な係数を
において選択し、そして
における正規化された値を各潜在的な基準ポイントのための対応重みとして取り上げて、推定位置を計算するのが好ましい。Rを、次のように、
の要素の全てのインデックスのセットとする。
【0126】
移動装置20の位置は、それら候補ポイントの重み付けされた直線的組み合わせにより推定することができ、これは、次の通りである。
【0127】
ここに例示する実施形態では、周囲環境が著しく変化した場合に無線マップを更新する必要がある。これは、無線マップ更新手順をたどることにより行われる。より詳細には、ベクトルr
iは、実験エリアをカバーする基準ポイントにわたりAPiからのRSS読みを表わすものとし、それは、式(1)で定義されたRSS無線マップデータベースのi番目の行の置換でもある。Fは、r
iを空間的ドメインにおけるピクセル表現から周波数ドメインにおけるスパース表現へ変換する直線的演算子を表わし、即ち次の通りである。
【0128】
更に、サンプリングマトリクスG
MxNを定義する。Gの各行は、オフライン段階中に移動装置により無線マップにおいて測定される基準ポイントのインデックスをnとすれば、g(n)=1を除いて、全ての要素がゼロに等しい1×Nベクトルである。測定される基準ポイントは、ランダムに選択される。
【0129】
それ故、移動装置により測定されたあるAPからのオフラインRSSベクトルは、次のように表わすことができる。
【0130】
xは、スパース特徴を有し、式(23)における同様の直交化手順44を伴い、即ちz=Tmであるから、次のl
1-最小化問題を解くことにより無線マップを再構成することができる。ここで、l
1-最小化問題の特殊なケースである全変動最小化を使用して、スパース信号回復問題を解くことができる。というのは、それを2D画像回復に使用できるからである。
但し、xの全変動として定義される
は、各ポイントにおける勾配の大きさの和であり、そしてεは、測定ノイズである。
【0131】
最終的に、当該エリアにわたりビーコン12iから再構成されるRSS無線マップは、次の式により得られる。
【0132】
残りのビーコン12からの無線マップは、同じ解決策を使用して回復することができる。それ故、RSSは、少数の格子ポイントで測定され、そして式(30)を使用して、全格子において無線マップを再構成する。全基準ポイント数をNとし、信号xのスパースレベルをkとすれば、無線マップ回復に必要な測定の数(M)は、O(k log(N))に従うので、測定基準ポイント数の著しい減少を予想することができる。
【0133】
CSベースのポジショニングシステムは、移動装置20の位置を推定する精度を改善するトラッキングシステムとして拡張することができる。移動装置20の以前の推定位置を使用することにより、トラッキングシステムは、2つの仕方で現在推定値を洗練化することができる。1)粗い位置決定ステージで適当な基準ポイントを選択する;及び2)良好な位置推定のためにカルマンフィルタを適用する。位置を見出すためにカルマンフィルタをどのように更新するか決定するのにマップ情報が使用される。変更された粗い位置決定ステージ38は、2つの基準に基づいて関連基準ポイントを選択する。(1)オンラインRSS読み;及び(2)以前の推定値の物理的接近性。
【0134】
位置決定エンジン24は、先ず、オフラインステージで定義される基準ポイントのクラスターであって、オンラインRSSベクトルr(t)に対して同様のRSS読みパターンを有する基準ポイントのクラスターを選択する。このクラスターマッチングプロセス32は、上述した。位置決定エンジン24は、オンラインRSS読みを、同じクラスターからの基準ポイントの平均化されたRSS読みと比較して、基準ポイントの最良一致クラスターを選択し、これは、セットC
RSSとして表わされる。
【0135】
オンラインRSS読みを使用して関連基準ポイントを選択するのに加えて、以前の推定位置
に基づいて装置の現在位置の考えられる範囲を見出すことにより基準ポイントを選択することができる。位置決め型アプリケーションでは、個人が短い時間周期内に移動装置20と共に遠くに歩くことができないので、以前の推定位置が既知であって且つ信頼できる場合には、システムが当該領域をその以前の推定位置から、考えられる歩行範囲に制限することが合理的である。この考えられる歩行範囲を選択するために、非予想スキームと予想スキームの2つのスキームがある。
【0136】
非予想スキームは、以前の推定位置に対する特定の更新時間インターバル中に歩行距離内にある基準ポイントを選択する。即ち、
但し、βは、特定の更新時間インターバルΔt内の歩行距離である。
【0137】
予想スキームは、以前の推定位置を使用して、直線運動モデルに基づき現在考えられる位置を予想し、次いで、その予想位置の歩行範囲内にある基準ポイントを選択する。この直線的モデルの状態ベクトルは、移動装置の位置及び速度を含み、即ち、
であり、v
x(t)及びv
y(t)は、各々、時間tにおけるx及びy方向の速度である。次いで、そのモデルは、次のように定義される。
但し、
ここで、z(t)は、予想現在位置である。未知の速度v
x(t)及びv
y(t)の推定値は、ガウスノイズに加えて、同じ直線的モデル(33)に基づきカルマンフィルタの出力から得ることができ、これは、微細位置決定ステージ後に実施される。カルマンフィルタの実施は、上述した。
【0138】
次いで、位置決定エンジン24は、式(32)に基づいて、予想現在位置z(t)のすぐ近くの基準ポイントC
Distのセットを選択し、z(t)は、
に代わって使用される。
【0139】
RSS読みの類似性及び物理的接近性に基づいて当該基準ポイントのこれら2つのグループを選択した後、位置決定エンジン24は、減少領域のセットとして両グループに現れる共通の基準ポイントを含み、次いで、最終的な位置決定ステージが適用される。共通の基準ポイントは、セットCとして得られる。
【0140】
このセットは、オンラインRSS測定値に類似したRSS読みであることと、移動装置の以前の位置に対して接近した範囲内であることとの両方の条件を満足する基準ポイントを含む。従って、それらは、移動装置20があると考えられる位置である可能性が高い。物理的な範囲の制限を導入することにより、位置決定エンジンは、収集されたオンラインRSS読みが移動装置20の位置を見出すのに有用でないときを識別することができる。通常の動作では、移動装置20は、その以前の位置の周りの定義された範囲内にあると仮定される。C
RSSにおける基準ポイントの選択されたクラスターが以前の位置から遠く離れている場合には、オンラインRSS読みが無効とみなされる。というのは、オンライン読みとオフラインデータベースとの間に大きなずれがあって、RSS読みの類似性に基づくクラスターマッチングで基準ポイントの正しいクラスターを見出せないからである。このシナリオは、Cの空きセットを招き、微細位置決定ステージを停止する。そのようなことが生じると、位置決定エンジンは、このオンラインRSS測定ベクトルを破棄し、そして新たなものを得て、位置決定プロセスを再スタートする。
【0141】
連続する全てのオンラインRSS測定ベクトルがCの空きセットを招く可能性がある。これは、位置決定エンジンが新たなオンラインRSS測定を連続的に収集するようにさせ、それが、次いで、破棄されて、移動装置20の位置の真の推定値を計算するのを防止する。これが生じるのは、以前の位置推定が正確でなく、従って、そのような推定に基づく基準ポイントの選択が、オンラインRSS測定ベクトルに基づき選択された基準ポイントに一致しないからである。従って、位置決定エンジン24は、N
empty個の連続するオンラインRSS測定ベクトルが破棄されたときに、以前の位置推定が位置決定問題を小さな当該領域に減少するのにもはや有効でないことを主張して、オンラインRSS測定ベクトルのみを使用して基準ポイントを選択する。
【0142】
一実施形態では、微細な位置決定ステージで計算された位置推定にカルマンフィルタを適用して、追跡性能を向上させる。式(37)で示される直線運動モデルにガウスノイズを追加することにより、カルマン追跡モデルは、次のように公式化される。
【0143】
プロセスノイズω(t)〜N(0,P)及び測定ノイズv(t)〜N(0,U)は、それに対応するコバリアンスマトリクスP及びUとは独立していると仮定する。
【0144】
状態ベクトル
及びエラーコバリアンスP(t)の最終的推定値を得るステップは、予想及び更新を含む。
【0147】
式(42)における観察z(t)は、微細位置決定ステージにより計算された位置の推定、即ち、
であることに注意されたい。状態ベクトルの計算後に、移動装置の位置の最終的推定は、次のように見つけることができる。
【0148】
実世界状態のここに示す例では、カルマンフィルタは、移動装置を伴うユーザがビル内の廊下に沿って歩行するときに追跡性能を向上させることができる。というのは、フィルタによって仮定された直線運動がユーザの起動をモデリングするのに充分だからである。しかしながら、ユーザが交差点を転回するときには、方向の急激な変化を伴うこの振舞いに直線運動が適用されない。従って、カルマンフィルタは、ユーザの真の軌道を反映するのに多数のより多くの更新を要求し、従って、位置推定により多くのエラーを招く。
【0149】
マップ情報を使用することにより、カルマンフィルタは、ユーザの軌道をより厳密にたどるように変更される。カルマンフィルタは、移動装置20を伴うユーザが廊下に沿ってまっすぐに歩くときには最良に振舞うが、交差点では性能が低下するので、カルマンフィルタは、ユーザが交差点の領域にあるときには、リセットされる。マップに従い、交差点iの領域は、左下角及び右上角として
及び
を各々もつ非回転境界ボックスとして識別される。従って、ユーザは、次の2つの条件が満足される場合には、時間t
turnに交差領域内にいる。
【0150】
次いで、カルマンフィルタは、カルマンフィルタの初期条件
及びP(t
turn)=P(0) を再指定することによってリセットされ、そしてカルマンフィルタは、
を使用して次の推定に対して式(39)から(43)に基づき正常として更新される。これは、ユーザが転回するときにカルマンフィルタによる不正確な推定を除去する。
【0151】
移動装置20は、更に、移動ユーザを希望の行先に到着させるための誘導を与えるナビゲーションモジュール28にリンクされる。ナビゲーションモジュール28は、1)初期設定、2)経路ルーティング、及び3)追跡更新を可能にする。
【0152】
ナビゲーションモジュール28は、部屋、廊下及びエレベータ、等の異なる特徴のレイアウトを示す当該領域の無線マップに依存する。設定段階中に、異なるマップ特徴に関する情報がマップから抽出されて、周囲環境に関する実現可能な経路及び記述インストラクションをナビゲーションシステムが生成するようにさせる。
【0153】
先ず、マップのレイアウトは、廊下又は行先に沿った考えられる通過点のカルテシアン座標のセットであるノード、及び互いに物理的に到着できることを意味するノード間のエッジを伴うグラフとして解釈される。各エッジには、2つの接続されたノード間のユークリッド距離として定義された負でない重みが指定される。この接続されたグラフは、経路ルーティングのための希望の経路を発生するためにシステムにより使用される。この接続されたグラフの定義に加えて、マップ特徴のリストがそれらの位置と共に記録され、ナビゲーションシステムは、それらの特徴に基づいてインストラクションを生成することができる。
【0154】
ナビゲーションの始めに、移動装置20は、先ず、望ましい行先のユーザ入力及びユーザの現在位置を得、これは、ユーザにより指定されるか、又は位置決定エンジンを使用して装置により推定される。次いで、システムは、行先及びユーザの現在位置に各々最も近い、初期設定中に予め定義された接続型グラフ上の2つのノードを識別する。経路ルーティングは、接続型グラフ上のそれら2つのノード間の最短経路を見出すものとして解釈される。この問題は、ダイクストラアルゴリズムを適用することにより解決することができる。
【0155】
生成された経路は、異なる方向を向いた一連の線セグメントに分割される。生成された経路は、線セグメントの数をSとすれば、線セグメントのセットG={l
1、l
2、・・・l
S}として表わされ、そして各セグメントは、
として表わされ、ここで、
及び
は、各々、i番目の線セグメントの開始点及び終了点である。転回ポイントは、線セグメント間の終了点として識別され、即ち
である。それらの生成された線セグメントに基づいて、システムは、転回点、転回方向、及び各線セグメントにおける移動距離を決定することができる。更に、システムは、
として表わされたこの生成された経路に沿って現れる当該マップ特徴のリストも見出すことができ、ここで、
は、特徴jの位置であり、Feature
jは、特徴名であり、そしてCは、関連マップ特徴の合計数である。
【0156】
ユーザをそのターゲットに導くことのできる経路の生成後、ナビゲーションモジュール28は、ユーザの位置を追跡するために追跡更新を開始する。追跡更新のたびに、ナビゲーションモジュールは、推定位置を、ルーティングされた経路と比較し、ユーザが経路を適切にたどるかどうかチェックする。
図3のプロセス50に基づいて分析が行われる。
【0157】
52において、ナビゲーションモジュール28(追跡モジュールとも称される)は、先ず、ユーザの現在位置と範囲β
destination内のターゲットとの間のユークリッド距離をチェックすることによりユーザが行先に到着するかどうか決定する。さもなければ54において、ナビゲーションモジュール28は、ユーザの現在位置
と、生成された経路セットGにおける線セグメントの1つとのマッチングを試みる。この追跡更新が、
図4に示すように、線セグメントl
i内にある場合には、ナビゲーションモジュール28は、次の2つの方程式
を解くことにより、
をもつ線セグメントl
iへの追跡更新ポイント
の投影及び最小距離を見出すことができる。p
iは、共線状の
である投影ポイントであり、そしてμは、ポイントp
iが
からどれほど離れているか指示する
間の距離に関する比である。式(45)からμ
iに対する解は、次の通りである。
【0158】
計算されたμ
iが[0、1]の範囲内にある場合には、投影ポイントが線セグメントに入り、これは、更新推定値がこの線セグメントの範囲内にあることを意味する。式(47)を式(45)へ代入することにより、投影ポイントpを計算することができ、線セグメントに対する追跡更新ポイントの最短距離は、次のようにして得られる。
ここで、ナビゲーションモジュール28は、i)μ
i∈[0、1][0、1]、及びii)
である場合には、追跡推定値が線セグメントに一致することを決定する。連続するN
offpath個の追跡セグメントがGの線セグメントのいずれかに一致しない場合には、ナビゲーションモジュール28は、ユーザが(音声発生エンジン27及びルーティングモジュール29を経て)動きを停止するように促し、そしてユーザの現在位置をスタート点として使用して上述した同じ手順をたどり経路リルーティングを行うことができる。
【0159】
56において、ナビゲーションモジュールは、ユーザが誤った方向に歩行するかどうか決定する。
【0160】
更に、μの値が1に接近して、ユーザが線セグメントの端に接近している(58で決定される)ことを意味する場合、ナビゲーションモジュール28は、ユーザが転回を要求されることを識別し(60において)そして適当なインストラクションを与える(音声発生エンジン27を経て)。ユーザが経路を正しくたどる正常な状態では、μの値が各更新に対して同じ線セグメントに沿って増加し、そして最終的に、次のセグメントへ移動することに注意されたい。次いで、転回の方向が、現在及び次の線セグメントの方向に基づいて計算される。
【0161】
各追跡更新に対して移動ユーザの方向を決定するために、現在更新と以前の更新との間で方向ベクトルが計算され、次いで、現在一致した線セグメント方向と比較される。連続するN
Wrong direction個の追跡更新が線セグメントの逆方向である場合には、誤った方向の音声コマンドがユーザに発行される(音声発生エンジン27を経て)。
【0162】
最終的に、ナビゲーションモジュールは、ユーザの現在推定値
と、Fにおけるマップ特徴との間のユークリッド距離を計算する(62において)。その距離がβ
fより小さい場合には、モジュールは、この特定のマップ特徴に関する対応する音声コマンドをユーザへ発生する(音声発生エンジン27を経て)。
【0163】
使用ケース
ここに述べる実施形態は、複数の屋内及び屋外アプリケーションに適用することができる。
【0164】
例えば、ここに述べる実施形態は、(例えば、GPSの使用により)屋外で動作できるが、屋内では機能を失う現在位置ベースサービスを増加するのに使用できる。屋外位置ベースサービスの増加は、外部起点からビル内の経路ルーティングを受け取る能力をユーザに与えることにより効果的となる。更に、非常状態の正確な位置を与えることにより非常サービスを向上させるのにも使用される。又、広告主は、広告をより正確な位置へ拡張して、行動マーケティングを向上させることができる。
【0165】
ここに述べる実施形態の別のアプリケーションは、すぐ近くの移動装置20間でデータを共有できるようにすることである。潜在的なアプリケーションは、ファイル(写真及び他のメディア)共有、文書交換、及びソーシャルイントロダクションを含む。
【0166】
更に別のアプリケーションは、無線マップにより与えられるブループリント内のユーザの正確な位置決定を可能にすることを含む。例えば、ユーザは、ストアの位置、ストア内の部門の位置、部門を伴う区画、及び区画内の製品配置も含む位置情報が増加された無線マップを有するショッピングモールを、移動装置20を使用してナビゲーションすることができる。例えば、構成されるグラフは、ノードがストアの棚又は製品位置に結合されるように作成できる。逆に、ここに述べる実施形態は、ビジーモール設定で子供又は大人の位置を監視/追跡するように使用することができる。付加的なアプリケーションは、医療機器、教育的施設(例えば、美術館、ギャラリー、等)、社会的相互作用(接近検出)、旅行、ショッピング、ゲーム、スポーツイベント、等を含む。例えば、医療環境では、医療機器が無線マップを活用することができる。
【0167】
同様に、ここに述べる実施形態は、屋内駐車場にユーザの車を駐車した位置を表示及び思い出し;空港、会議場、テーマパーク、ホテル又は他の大きな又は不慣れな施設においてサービス(トイレ、レストラン、搭乗ゲート、等)を探し;及びアセット位置に指紋を入力することによりアセット位置を追跡する;のに使用できる。アセット位置追跡は、例えば、配送業者が配送地点を素早く正確に探索するのを可能にするために便利である。
【0168】
ここに述べる実施形態は、更に、位置をベースとする移動ユーティリティへの入力としても使用できる。例えば、所与の位置にコンテクストフィードバックを有する屋内位置では、本発明は、ユーザにフィードバックを与えるのに必要なプロンプトを提供することができる。特定例において、ユーザは、美術館の美術品に関する情報を提供する移動アプリケーションを有する美術館にいる。ユーザが美術品の付近にいるときに、それに対応する情報がユーザの移動装置を経てユーザに自動的に与えられる。又、これは、例えば、ユーザが販売品目の付近にいることに基づいてその販売品目に関する情報がユーザに提示されるサイトオークションにも使用できる。又、これは、不動産の特定部分(例えば、部屋、景観、等)について提示すべき情報を所有者が設定できる不動産販売にも使用できる。
【0169】
更に別のアプリケーションは、無線マップにより与えられたブループリント内のユーザの正確な位置決定を可能にすることを含む。例えば、ユーザは、ストアの位置、ストア内の部門の位置、部門を伴う区画、及び区画内の製品配置も含む位置情報が増加された無線マップを有するショッピングモールを、移動装置20を使用してナビゲーションすることができる。ユーザがストアに接近したときに、ストアの販売促進、クーポン、新製品記述のような位置ベースサービスを移動装置に配信することができる。逆に、本発明は、ビジーモール設定で子供又は大人の位置を監視/追跡するように使用することができる。
【0170】
例えば、ここに開示する解決策は、拡張現実ゲーム環境、おそらく、レーザタグの拡張現実形態内で使用することができる。競技場にビーコンを設けて、プレーヤを追跡することができる。技術に対する拡張は、プレーヤの位置決定を妨げる「妨害器(jammer)」を生成するか又は困惑する相手に対する位置エラーを増加させることを含む。
【0171】
例#1
オフィスビルから真のデータが得られた。より詳細には、8階建てビル(トロント大学のバッヘンセンター)の4階の30m×46mエリアで実験が行われた。全部で26個のビーコン12が当該エリア全体にわたって検出された。
【0172】
パーソナルデジタルアシスタント(PDA)又は移動装置(ウインドウズモバイル2003ポケットPCをもつHP iPAQ h×4700)を使用して、WLAN信号強度値を測定し、そして装置においてCSベースのポジショニングシステムを実施するためにビジュアルスタジオC#でソフトウェアが開発された。WLAN APのMACアドレス及びRSS値へのアクセスを与えるオープンソースライブラリOpenNetCFを使用することにより装置においてRSS値が収集された。オフライン段階中に、26個のビーコン12からのRSS観察が、平均格子間隔1.5mで72個の基準ポイントにわたり、50秒の期間中に(毎秒1サンプル)、記録された。各基準ポイントにおいて、4つの方向からRSS値が記録された。経時変化する環境のもとでシステムの実際の性能を評価するために、オンライン観察が、テストポイントとして未知の位置において装置により異なる日に収集された。各オンライン観察は、2つのRSS時間サンプルの平均であり、これは、装置においてWi−Fiスキャニングするのに2秒を要した。
【0173】
それに続いて、移動ユーザの推定位置と、テストポイントにわたる実際の位置との間のユークリッド距離を平均化することにより測定される位置決定エラーが、性能尺度として報告された。
【0174】
RSS変動を軽減すると共に、粗い位置決定のために潜在的なアウトライアーを除去するために、アフィニティ伝播が各無線マップに適用され、オフライン段階中にクラスター及びそれに対応する規範が生成される。
図5は、北方向の無線マップに対するPDAにおけるクラスター結果の一例を示す。各ポイントは、RSS読みが収集される1つの基準ポイントを表わし、そして各充填パターンは、1つのクラスターを表わしている。72個の基準ポイントは、13個のクラスターに分割され、そして同じクラスターに属するほとんどの基準ポイントは、地理的に互いに接近している。クラスターの数は、異なる方向において異なる。これは、非限定例に過ぎない。
【0175】
上述した粗い位置決定は、位置推定のための当該領域をサブセットCに減少するために使用されるので、CSアルゴリズムにおけるスパース信号の次元は、
に減少される。圧縮センシングの理論では、位置インジケータは、ビーコン12の数が
程度であるときに充分に回復することができる。これは、正確な位置回復に必要なビーコン12の数をシステムが減少できるようにする。
図6は、アフィニティ伝播により生成される異なる数のクラスターのもとで、アルゴリズムに使用されるビーコン12の数の関数として平均位置決定エラーを示す。
図6に示すように、4つの全方向に全部で58個のクラスターが生成されるときには約1.1mのエラー、及び29個のクラスターのもとでは1.9mのエラーとなるようにするには、8個のビーコン12があればよい。しかしながら、クラスター化スキームを適用しない場合には、1.8mのエラーとするのに、18個のビーコン12が必要である。
【0176】
更に、アフィニティ伝播によって生成されるクラスターの数は、実験的にセットされる好ましい値の入力により決定される。一方では、クラスターの数を増加すると、粗い位置決定の後に当該エリアを小さな領域に減少する上で役立ち、従って、平均位置決定精度を改善する上に、微細位置決定の複雑さを低減する。他方、これは、誤ったクラスターを選択する機会を増加し、ポジショニングシステムの大きな位置決定エラーを誘起する。それ故、誤ったクラスターを選択するおそれを低減するために、異なる粗い位置決定スキームが研究された。
図7は、10個のビーコン12が使用されるときの、前記異なる粗い位置決定スキームのもとでの位置決定エラーの累積分布関数(CDF)を示す。重み付けされたクラスターマッチングスキームは、異なるビーコン12からのRSS読みの安定性を考慮すると、実験にわたり最大位置決定エラーを9.2mから6.3mへ減少する。
【0177】
図8は、微細位置決定のための異なるビーコン選択スキームのもとでの平均位置決定エラーを示す。ランダム組み合わせスキームでは、式(19)により、x軸の値は、L個のビーコン12からのオンラインRSS値の直線的ランダム組み合わせの数を意味する。ここに提案する3つのスキームの中で、フィッシャー基準を使用するビーコンの選択は、特にビーコン12の数が5未満であるときに最良の性能を達成し、一方、最も強いビーコン12の選択は、最悪の性能となる。ここに提案するランダム選択スキームは、フィッシャー基準の場合に匹敵する位置決定エラーとなるが、バリアンスを計算するのに非常に多数のオフラインRSS時間サンプルを必要としない。更に、位置更新ごとにマトリクスΦを再使用して、微細位置決定のための計算時間を節約することができる。
【0178】
興味あることに、微細位置決定により多くのビーコン12を使用することで、不安定なビーコン12により発生される偏った推定のために必ずしも精度を上げなくてもよくなる。
図8に示すように、ビーコン12の数が約11であるときには、ポジショニングシステムの性能が低下する。これは、ビーコン12の選択の仕方により影響されない。というのは、3つのケースの全部について冗長なビーコン12が導入されるからである。
【0179】
ある実験において、本発明の位置決定システムは、10個のビーコン12が使用されたときに、累積エラー分布に関して、KNN及びカーネルベース方法として知られた慣習的なフィンガープリント解決策と比較された。ここに示す例として、ここに提案するポジショニングシステムは、オフライン段階中に4つの向きに全部で58個のクラスターを生成するようにアフィニティ伝播を使用し、次いで、重み付けされたクラスターマッチングにより粗い位置決定を行った後に、ランダムビーコン組み合わせ、l
1−最小化アルゴリズム及び後処理手順より成る微細位置決定段階を行った。公平のため、3つのポジショニングシステムは、粗い位置決定スキームは同じものを使用したが、微細位置決定段階は異なるものであった。
図9は、実施結果を示す。観察されるように、90%の時間では、ここに提案するCSベースの方法は、生じるエラーが2.7m以内であり、そしてKNN及びカーネルベース方法より性能的に各々25%及び28%優れている。
【0180】
フィンガープリント解決策の基準ポイントの数を減少するために、同じCSスキームをオフライン段階に使用して、少数の基準ポイントのみでRSS測定に基づいて無線マップを再構成することもできる。シミュレーションでは、36個の基準ポイントだけがランダムに取り上げられ、全部で72個の基準ポイントにおける無線マップを、それら72個の基準ポイントで実際に測定された値に比して充分に回復できることが示された。
【0181】
図10は、実験エリアにわたり72個の基準ポイントにおいてビーコン12 1からの実際に測定されたRSS無線マップの一例70を、同じPDAを使用して36個のランダムに取り上げられたFPからのサンプルに基づき再構成/回復された対応する無線マップ72と共に示している。残りのビーコン12からのRSS読みを回復するのに同じ技術が使用される。
【0182】
再構成されたRSS無線マップは、実際に測定された無線マップを使用する位置決定と比較して、位置決定に使用された。
図11は、10個のビーコン12が使用されるとき、ここに提案するスキームが、再構成された無線マップを使用することにより、1.6mの平均エラーを達成できることを示す。しかしながら、慣習的な補間解決策により回復される無線マップを使用すると、10個のビーコン12が使用されるとき、平均位置決定エラーが2.6mに減少される。
【0183】
例#2
ここに提案する屋内追跡及びナビゲーションシステムを実施するためにウインドウズモバイルプラットホームがインストールされた移動装置20においてソフトウェアアプリケーション(例えば、屋内位置リソース)が開発された。ソフトウェアは、Microsoft .Net Compact Frameworkバージョン3.5を使用してC#において開発された。更に、2つのオープンソースライブラリ:OpenNetCF及びDotNetMatrixを使用して、RSSスキャニング機能及びマトリクス演算をプログラムに与えた。HP、hp iPAQ hx2750により製造された移動装置20(例えば、PDA)においてソフトウェアがテストされた。ソフトウェア及び構成されたハードウェアの概略が
図12に示されている。
【0184】
予想機能をもつ位置決定システムが、18m×36mの面積をもつカナディアン・ナショナル・インスティテュート・フォア・ザ・ブラインド(CNIB)の2階でテストされた。オフライン段階中に、その開発されたソフトウェアは、1.5mの平均格子間隔でサイトに均一に分布された128個の基準ポイント(N=128)にわたり(1サンプル/秒のサンプリングレートで)東西南北の4つの方向の各々について100個のRSS時間サンプルを収集するためにPDAにおいて実行された。この実験では、各方向のRSSデータベースに対して約15個のクラスターが生成され、同じクラスター内の基準ポイントは、地理的に互いに接近し、そして変更の必要があるのは2又は3個のアウトライアーだけであった。
【0185】
予想機能をもつ位置決定システムの性能を評価するために多数のトレースが収集された。テーブルAに要約された4つの異なるトレースに沿って一定速度で歩行し、1サンプル/秒で同じPDAを使用して目に見えるビーコン12からRSS読みが収集された。
テーブルA トレースの概要
【0186】
例えば、
図13は、位置決定システムの4つの異なるバージョンを比較している。「CSベースのポジショニング」と称されるスキームでは、ユーザの推定位置のみが使用される。「CSベース+カルマンフィルタ」では、ローカライザによって得られた位置推定がカルマンフィルタに入力され、位置推定を更に精錬化する。又、位置決定システムは、予想を行わないもの及び直線的予想を行うもの、の2つのバージョンで使用される。それらバージョンは、上述した。
【0187】
これらシステムの平均エラーは、使用するビーコン12の数が10を越えると、ほぼ同じであり、最小の境界が要求されるというCS理論のプロパティを反映する。いずれかのスキームを使用する予想型の位置決定システムは、無予想の位置決定システムを改善することができ、又、カルマンフィルタを直接適用するものより優れた精度を得ることができる。10個のビーコン12が使用されるときには、非予想型(unpredicted)スキームを使用する位置決定システムは、無予想(non-prediction)の位置決定システム及びカルマンフィルタに勝る各々0.98m(37%)及び0.45m(21%)の平均エラー改善を導く。
【0188】
非予想型スキームをもつこの規範的追跡システムは、無予想の位置決定システム、及びカルマンフィルタをKNN方法及び無予想の位置決定システムに直接適用したものと比較される。
図14は、累積エラー分布に関する比較結果を示し、そしてテーブルBは、それら4つのシステムに対する位置エラー統計値を示す。位置決定システムは、他の3つのシステムと比較したときに、最小平均エラー、90thパーセンタイルエラー及びバリアンスを有するので、他のシステムより優れている。
テーブルB 位置エラー統計値
【0189】
ある実験において、移動装置20の開発されたソフトウェアを使用して同じ実験サイトでナビゲーションモジュールがテストされた。
図15は、希望の行先への経路を発生しそしてユーザに適切な案内を与えるためにナビゲーションモジュールにより使用される適切に定義されたノードを伴うマップを示す。
【0190】
図16は、一実施形態によるコンピュータプログラムのスクリーンショットを示すもので、移動装置20の位置の実際の追跡を示している。線は、ナビゲーションモジュールにより生成されるルート経路を示す。丸は、装置の位置を示し、そして五角形は、行先を示す。
【0191】
ナビゲーションは、先ず、移動装置20において希望の行先を選択するようにユーザに求めることによりスタートし、次いで、ソフトウェアがユーザの位置を見出して、既定の接続型グラフにおいてダイクストラ最短経路アルゴリズムを実行し、歩行路を発生する。次いで、ユーザの現在位置を2秒ごとに更新する(更新ごとに2つのRSS時間サンプルを使用して)追跡システムがスタートする。ユーザがマップ上の部屋207からスタートして部屋218Eに向かって歩行する規範的なスクリーンショットが
図16に示されている。
【0192】
視覚障害のある多数の人々がこの実験サイトでナビゲーション装置を試みるように求められ、装置は、ユーザを希望の行先に到着するように有用な案内を与えることができた。更に、移動装置20は、ユーザの計算された位置に基づき関連インストラクションを発生することができた。特に、装置は、湧水源(spring water fountain)、即ち参加者がしばしば気付き難い小さな壁掛物体、に到着するように参加者を導くことができた。
【0193】
例#3
無線マップを動的に作成するここに述べる実施形態は、ここに開示する技術を実施するコンピュータシステムとして具現化される。
【0194】
ここに述べる実施形態は、更に、この開示で与えられる無線マップ予想メカニズムを利用する多数の実際的なシステムに適用される。
【0195】
例えば、屋内環境において個人の位置を素早く監視して優れたセキュリティ及び保護サービスを提供するように構成されたここに述べる実施形態の無線マップ予想メカニズムを使用してシステム及び方法が構築される。そのようなシステムは、例えば、幼稚園における子供の位置、病院における患者の位置、屋内のオープンエリアにおける年配者の位置、等を監視するのに使用される。
【0196】
ここに開示するシステム及び方法の別の考えられるアプリケーションでは、コンピュータシステムは、1つ以上のスマートTVに関連した屋内又は屋外エリアをカバーする無線マップを動的に発生するように構成される。コンピュータシステムは、例えば、集合住宅の複数の住戸をカバーする無線マップを効率的に作成するのに使用される。無線マップは、例えば、無線マップを使用する異なる住戸の定義に基づき同じTV番組を見ながらビル内の隣戸が互いに対話できるようにする。又、無線マップは、住人のプライバシーを維持しながら、位置ベース又は行動ベースの広告で住人をターゲットにできるようにもする。
【0197】
ここに述べる動的な無線マップメカニズムを使用するワイヤレス装置の位置決めを使用して、中央サーバーを使用するワイヤレス装置の位置の監視を要求する位置決めを必要とせずに、位置情報に基づき、ソーシャルネットワーキングプラットホームを通してユーザが対話できるようにする。例えば、無線マップの動的な作成について述べたメカニズムは、ショッピングモールの友人発見コンピュータシステム又はショッピングモールの買物客をターゲットとするクーポンシステムをその現在位置に基づいてサポートするのに使用される。クーポンは、ユーザの現在位置の近くの商人又は予想経路に沿った商人に関連している。
【0198】
又、無線マップを動的に作成するのに使用される本発明の技術は、複数のタイプのデータエレメントを受け取るように構成されたマップの作成を自動化する必要のある他のアプリケーションにも利用される。RSS測定値からグラフを構成するために開示された非パラメータ解決策は、例えば、次のような他のアプリケーションに使用される。(i)容易な位置ベース検索のために画像情報をグラフノード又はRSSシグネチャーに結合することにより画像の大きな集合体から画像ライブラリーを動的に構成し;(ii)手書き認識システムに使用するために手書きサンプルライブラリーを動的に構成し、次いで、位置ベースサービスを利用して、RSSシグネチャーに基づいてシグネチャーを認証又は確認し;(iii)ボイス又はスピーチサンプルを位置にリンクし、次いで、位置をグラフノードとして表わし;(iv)遺伝子又はゲノム情報分類ライブラリーを遺伝子情報レコードから動的に発生し;(v)ゲーム要素をグラフのノードに結合することによりゲームジェネレータに使用するためのゲーム要素ライブラリーを動的に発生し;(vi)オーディオ/ビジュアルコンテンツライブラリーのオーディオ/ビジュアルコンテンツ要素を動的に発生する。
【0199】
RSS無線マップの自動及び動的作成
移動ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)や移動ワイヤレス装置が広く配備されるのに伴い、グローバルポジショニングシステム(GPS)が利用できない屋内環境においてナビゲーションや人及びアセット追跡のような位置ベースのサービス(LBS)を提供することに関心が高まっている。事前に収集されたRSS無線マップ、即ちマップ上の定義された格子ポイントにおけるRSS読みの完全なテーブル、が要求されるウォードライビング(wardriving)のようなRSSベースの位置決めアルゴリズムを研究するために、ある努力が向けられている。しかしながら、環境特有の無線マップを手で作成し維持するには、多大な人件費を伴い、サービスサイトを制限する。ここに述べる実施形態は、半スーパーバイズ型学習及び圧縮センシングを通して少数の校正(例えば、既知の対、フィンガープリントサンプル)だけでRSS無線マップを自動的に及び動的に学習し作成する屋内ポジショニングシステムを提供する。
【0200】
RSS無線マップを作成する際の重要なポイントは、RSS読みと位置との間の包括的関係を構築することである。多大な人件費は、各格子ポイントにRSS読みを手でラベリングすることから生じる。それ故、多量の校正を回避するため、RSS読みは、環境内の各ユーザが自分の移動装置から全く気付かずにRSSスキャニング結果に貢献する仕方で収集される(例えば、クラウドソーシング)。各RSSスキャニング結果の関連位置は、次いで、接続型グラフにノードとして表現され、そして少数のラベルでグラフ構造体から学習される。圧縮センシングは、l
1−最小化プログラムを通して少数のノイズ性測定値からスパース信号を回復して、報告されたRSSスキャニング結果からグラフを構築する方法である。これを可能にするため、ここに述べる実施形態は、グラフにおける2つの仮定、即ち物理的に近傍のノードが同様のRSS読みを有することを直感的に意味するスムースさ、及び各ノードが少数の近傍部しか有していないことを意味するスパースさ、に依存する。
【0201】
一実施形態において、ここに提案する屋内ポジショニングシステムは、性能を評価するためにアンドロイド移動装置(例えば、HTC Desire z、又は他の製造者/モデル/製造)において実施された。無線マップ作成の精度は、予想無線マップを、環境から手動で収集された実際のフィンガープリントと比較することにより評価される。ここに提案する全体的ポジショニングシステムの精度は、本発明者により予想無線マップを使用して以前の研究において評価された。実験結果が示すように、ここに提案するシステムは、多量のオフライン校正を要求せず、フィンガープリントを収集する人件費を著しく減少する一方、満足な位置決め精度レベルを維持する。実際に、作成されたRSS無線マップは、フィンガープリントベースのポジショニングシステムにより、オンライン位置推定を適用できるオフラインデータベースとして使用される。
【0202】
無線チャンネルの動的で且つ予想不能な性質、例えば、シャドー、多経路、ワイヤレス装置の向き、等によるRSSの変動から、高精度ポジショニングシステムに対する主たる挑戦が生じる。それ故、RSS位置関係を解釈するための無線伝播モデルの使用は、大きなエラーを招き易い。ここでは、ユーザの位置を推定するために、フィンガープリントがしばしば使用される。この方法は、次の2つの段階を含む。即ちi)オフライン段階中に基準ポイント(RP)と称する既知の格子ポイントにおいてRSS読みを収集して、フィンガープリントデータベースを生成し、及びii)決定論的解決策又は確率的解決策のいずれかを使用して、オンラインRSS読みをデータベースと比較し、ユーザの位置を推定する。
【0203】
ここに述べる実施形態は、ここに述べるように、移動装置20において実施できる新規なRSSベースの屋内ポジショニングシステムを提供する。位置決めの問題は、スパース特性の問題へと再公式化され、そして圧縮センシングの理論を使用して、移動装置により測定された信号強度をフィンガープリントデータベースにマッチングさせることができる。位置推定も、2つの段階より成る。オフライン段階では、RSS読みが基準ポイントの格子に収集される。RSS読みは、次いで、アフィニティ伝播アルゴリズムを使用して、多数のクラスターへと分解される。オンライン段階は、移動装置が、粗いローカライザを使用してRSSを測定して、それが属するクラスターを見出し、及び微細なローカライザを使用して、l
1−最小化問題を解くことにより位置推定を精錬化する、ことより成る。このシステムは、他のフィンガープリントベースの方法より優れた精度をもつことが示された。前記他の方法は、推定値をk個の最近傍の重心として計算し、そのRSS読みがオンラインRSS読みに対して最短のユークリッド距離を有するようなk最近傍方法;並びにベイズの理論及びカーネル関数を使用することにより位置の事後確率を推定するカーネルベース方法である。しかしながら、オフライン段階は、常に多大な人件費を伴い、そしてLBSは、フィンガープリントが事前に収集されるコントロールされた環境でしか与えられない。
【0204】
本発明者は、フィンガープリントベースのポジショニングシステムの多大な人件費は、RSS読みを各基準ポイントに手でラベリングすることから生じると分かった。RPiにおけるRSS位置対を(r
i、p
i)とする。但し、r
i=[r
1,i、・・・r
L,i]は、L個のアクセスポイントからのパワーの読みであり、
は、RP
i,i=1、・・・Nの対応座標であり、そしてNは、RPの合計数である。クラウドソースを通して多数のr
iを収集して、環境内の各ユーザが全く気付かずに自分の移動装置からRSSスキャニング結果に貢献することができる。更に、r
iは、移動装置を携帯して環境の通常のコースを歩き回るだけで収集することができる。それ故、r
iは、多量に入手でき、且つ収集し易い一方、p
iを手で得ることは、労力がかかる。この問題を解決するために、ラベルのないr
iごとに、本システム及び方法は、できるだけ少ないラベルのあるサンプルからそれに対応するp
iを自動的に学習するようにされる。EZモデルは、遺伝学的アルゴリズム(GA)を使用して無線伝播モデルにおいて未知のパラメータを推定することによりこの問題を解決する。しかしながら、このアルゴリズムは、無線伝播モデルにおける厳密な仮定に基づいている。一方、GAの高度な複雑さのために、学習手順が非常に低速となる。ここに述べる実施形態は、半スーパーバイズ型学習の観点から問題に対処し、これは、少数のラベル付きサンプル(例えば、データエレメント、次元データの既知の対)のみから、高次元データ(RSS読み)を低次元表現(即ち、2D位置)へマップするものである。グラフは、次元減少中に保存する必要のあるデータ構造を見出すためのパワフルなツールである。
【0205】
グラフは、k最近傍グラフ及びQバーグラフ等の異なる解決策を使用して構成される。これらの慣習的なグラフ構成アルゴリズムは、手動でのセットを必要とするある数のパラメータを要求し、それらパラメータは、グラフ構造に多大な影響を及ぼし得る。それ故、学習結果は、グラフパラメータに敏感であり、システムの頑健さを低減する。圧縮センシングは、例えば、ナイキストサンプリング原理により必要とされるものより遥かに少ないノイズ測定値からスパース又は圧縮性信号を回復するための新規なフレームワークを与える。スパース信号は、l
1−最小化問題を解くことにより高い確率で厳密に再構成することができる。ここに述べる実施形態は、グラフを構築するための非パラメータ解決策を提案する。グラフ近傍接続問題は、スパース信号回復問題へと公式化され、CSが適用される。ある実施形態では、ここに提案する解決策は、グラフにおける次の2つの仮定、即ち、物理的に近傍のノードが同様のRSS読みを有することを直感的に意味するスムースさ、及び各ノードが少数の近傍部しか有していないことを意味するスパースさ、に依存する。
【0206】
規範的な問題設定及びシステムアーキテクチャー
典型的なWLANポジショニングシナリオでは、各ユーザは、屋内環境の利用可能なAPからRSS測定値を報告するWLANアダプタが装備された移動装置を携帯する。これらの形式のRSS読みは、その環境の各ユーザが全く気付かずに自分の移動装置20からのRSSスキャニング結果に貢献するので、クラウドソース型の動的な仕方で多量に収集される。しかしながら、それに対応する位置情報はシステムに対して見つからない。一方、少数のRSS位置データ対が事前に収集されてサーバーにセーブされる。又、利用可能なAPの位置もシステムに対して未知である。ポジショニングシステムの主たるタスクは、i)全てのRSS位置情報を含む完全なRSS無線マップを発生し;及びii)各ユーザの現在位置を装置に描くことである。
【0207】
RSS無線マップは、
図17に示すように、レポートされるRSSベクトル及びそれらの位置の完全なテーブルである。このテーブルが充分に濃密である場合には、新たに到来する移動ユーザの位置は、現在RSS読みを、事前に記憶された無線マップと比較することにより推定できる。表現(r
i、p
i)は、ラベル付きデータとして定義される少数の収集されたRSS位置データ対を表わすのに使用され、ここで、各r
i=[r
1,i、・・・r
L,i]は、L個の利用可能なアクセスポイントからのパワーの読みであり、そして
は、q個の時間サンプル(q>0)にわたるアクセスポイントIからの平均パワーの読みである。
は、RP
i,i=1、・・・lの対応座標である。表現(r
j)は、既知の位置をもたずにユーザからレポートされた多数のRSS読みを表わすのに使用され、ここで、j=l+1、・・・l+μである。l<<μであることに注意されたい。次いで、ラベル付き及びラベルなしRSSを含む無線マップのRSSの平均は、Ψにより表わすことができる。
ここで、各列、即ちRSSベクトルは、各RPにおけるRSS読みを表わす。RPにおいてビーコン12に対するRSS読みが見つからない場合には、無線マップにおけるその対応RSSエンティティが、その無効性を意味する小さな値(例えば、この実施形態では、−110dBm)にセットされる。学習システムの目的は、予測子f:r→pを見出し、RSSベクトルごとに、それに対応する位置p
kを得られるようにすることであり、ここで、テーブルIに示すように、k=1、・・・l+μである。
テーブルI:学習システムの入力及び出力
【0208】
半スーパーバイズ型学習による目的関数
この解決策では、前記問題を述べるのに重み付けグラフG=(V、E)が使用され、ここで、V={p
l、・・・p
l、p
l+1、・・・p
l+μ}は、各ノードが1つのRPの位置を表わす頂点セットであり、そしてEは、頂点の対間のエッジセットである。各ノードに関連するのは、RSSベクトルである。各エッジe
ij∈Eに関連するのは、負でない実数w
ijで、重み∀
ij∈{1、・・・l+μ}と称され、但し、l<<μである。グラフの重みは、RPの対におけるRSS読みからの類似性の尺度により決定され、従って、グラフの構造は、予測子fにより高次元データ(RSS読み)から低次元表現(例えば、2D位置)へ保存される。グラフの構造及びグラフの重みの計算は、以下に詳細に述べる。Vにおける第1のl個のノードの位置は、システムに知られているから、グラフの構造が決定されると、全てのノードの位置を予測することができる。良好な予測子f:r→pは、2つのファクタに依存し、その1つは、測定されたラベルと一貫したものであり、そしてもう1つは、大きさの減少中にグラフ構造を保存するものである。直感的に、物理的近傍ノードは、同様のRSS読みを有していなければならない。この特徴は、グラフのスムースさとして定義される。それ故、fは、次の式から学習することができる。
但し、第1項は、ラベル付きデータ対から生じるフィッティングエラーである。これらのラベル付きRPにおけるRSS読みから予想される位置は、実際に測定された位置と一貫したものでなければならない。第2項は、グラフのスムースさを強いる。大きな重みに接続されたノードは、物理的に、互いに接近しなければならず、そしてその逆もあることに注意されたい。γは、固定のスムースさ係数である(この実施形態では、γ=0.01)。マトリクス表現を使用することにより、式(49)が次の式に等しいことを容易に示すことができる。
但し、fは、各行がグラフ上の1つのノードの予測2D位置を表わす(l+μ)(I + u)×2マトリクスである。Tr(.)は、方形マトリクスのトレースであり、上付き文字Tは、置換を表わす。Lは、グラフ重みから次のように計算できるグラフラプラシアンである。
L=D−W (51)
但し、W
(l+μ)(l+μ)は、wiとして示された各列がノードiに対するグラフ上の全てのノードの重みを表わすグラフ重みマトリクスである。D=diag(d
1、・・・d
l+μ)及びdiは、Wのi番目の行の和であり、即ち、
である。
【0209】
圧縮センシングによるグラフ構造
ある実施形態によれば、この半スーパーバイズ型の学習解決策の重要な態様は、グラフ構造及びグラフ重み計算である。各ノードが最大の類似性を有するトップk個のノードに接続するk最近傍グラフ、及び各ノードが
のユークリッド距離内の近傍に入る全てのノードに接続する
ボールグラフのようなグラフ構造に対して異なる解決策がある。しかしながら、これら2つの方法によって定義されたグラフは、対称的であると共に、
ボールグラフは、グラフの接続を保証するものではなく、分離されたサブグラフを導く。一方、近傍構造が、手動でセットされたパラメータ(k又はε)により予め決定され及び固定されるので、これらの方法は、ノード間の真の幾何学的関係を特徴付けることができない。異なるパラメータ設定は、異なるグラフ構造をもたらし、かなり異なる学習出力を生じる。
【0210】
ここに述べる実施形態は、以下に説明するように、グラフを構成し、そしてRSS読み(例えば、データエレメント)のみからグラフ重みを計算するために非パラメータ解決策をとる。各ノードは、ある数の物理的近傍ノードにしか接続しないので、グラフ接続は、スパース特性を有する。より詳細には、各ノードの重み発見(wi)は、圧縮センシングを適用できるスパース信号回復問題として公式化される。
【0211】
i番目の列を除外する式(1)で定義されるRSS無線マップを
で表わすことにする。無線マップが充分に濃密である場合には、グラフのノードiにおけるRSS読みは、その近傍ノードにおけるRSS読みの直線的な組み合わせとしてほぼ表わすことができる。重みベクトルwiは、ノードiへの各ノードの貢献を表わし、そのRSSシグネチャーi=1、・・・l+μを表わす。
【0212】
M×LマトリクスΦは、RDDベクトルriに適用されるビーコン選択演算子として次のように定義される。
y
i=Φr
i (52)
但し、Φの各行は、φ(l)=1を除いて全てのエレメントがゼロに等しい1×Lベクトルであり、lは、選択されたビーコン12のインデックスである。
φ
m=[0、・・・0、1、0、・・・0]、∀
m∈{1、2、・・・M} (53)
【0213】
信頼性のないビーコン12は、偏った推定を招き、ポジショニングシステムの安定性に影響を及ぼすので、AP選択手順の目的は、更に正確な計算のために信頼性のあるビーコン12のサブセットを選択することである。異なるビーコン選択解決策を使用することができる。簡単化のために、最も強いビーコンの選択が使用される。各ノードに対して、最も高いRSS読みをもつビーコン12のセットが選択され、最も強いビーコン12が時間と共にカバレージの最も高い確率を与えることを主張する。より詳細には、RSSベクトルriは、RSS読みの減少順に分類され、そして最も小さいインデックスに対応するビーコン12が使用される。Φは、各riに基づいて生成されるので、この基準は、ノードごとに異なるΦを生成する。
【0214】
前記定義に基づき、ノードiにおける選択されたRSS読みは、次のように表わすことができる。
但し、θ
iは、(I+μ−1)×1の大きさをもつスパースベクトルで、ノードiに対するグラフの他の全てのノードの重みを表わし、そしてεは、未知の推定エラーである。それ故、目標は、y
i、Φ、及び
が与えられると、各ノードの重みベクトルを見出すことである。
【0215】
式(54)のスパース性に加えて、Φと
との間のインコヒレンス性は、少数の測定値からのスパース信号回復に対してCS理論を使用可能にするために満足しなければならない別の重要な特性である。それ故、そのような特性を誘起するために直交化手順を使用しなければならない。
【0216】
直交化演算子Tは、次のように定義される。
T=QR
T (55)
但し、
であり、且つQ=
orth(R
T)
Tであり、ここで、
orth(R)は、Rの範囲に対する直交ベースであり、そして
は、マトリクスRの擬似逆数である。
【0217】
直交化プロセスは、RSSベクトルyiに演算子Tを適用することにより、次のように行われる。
但し、ε’=Tεである。
を示すことは簡単である。それ故、式(54)で公式化されるノードiに対するグラフ重み計算問題は、次のように公式化することができる。
z
i=Qθ
i+ε’ (57)
【0218】
ここで、Qは、単位ノルムをもつ直交同様マトリクスであり、CS[18][19]により必要とされる「限定等長写像プロパティ」(RIP)に従う。θ
iは、スパース性を有するので、圧縮センシング[5][6]の理論によれば、選択されたビーコン12の数Mがほぼlog(I+μ)である場合に、スパースベクトルθ
iは、次のl1−最小化問題を解くことによりziから高い確率で充分に回復することができる。
但し、||・||
lは、ベクトルのl
1-ノルムである。
【0219】
特別の注意として、ビーコン12の数(M)が少な過ぎる場合には、アフィニティ伝播又はk手段[20]のようなクラスター化アルゴリズムを使用してサブグラフを作成することができると共に、各クラスター内に前記アルゴリズムを適用することができる。最終的に、
に全て正の値を保持し、そして(l+μ)×1重みベクトルw
iを、次の式により
に関連させる。
【0220】
重みマトリクスWは、グラフの各ノードに同じ解決策を適用することにより得られる。
【0221】
各ノードのRSS読みは、その近傍のRSS読みの直線的組み合わせとしてほぼ表現できると仮定する。1つのケースとして、RSS読みに直接的なシフトがあるときに2つのノードが大きな重みに接続される。直線的な仮定により導入されるエラーを補償するために、熱核関数を使用して、誤ったエッジをフィルタ除去し、従って、グラフ構造を修正する。熱核関数は、2つのノード間の類似性を、それらの絶対的なRSS距離を使用することで定義する。それ故、グラフの重みマトリクスWは、次の式により更新される。
W:=W.*K、但し、K(i,j)=exp(−||r
i−r
j||
2)/4 (60)
但し、.*は、2つのマトリクス間の要素ごとの乗算である。熱核関数は、2つのノード間のRSS差を小さくして大きな重みを保持する一方、前記ケースを排除する。テーブルIIは、グラフ構造及び重み計算のための詳細なステップを示す。
テーブルII:グラフ構造及び重み学習手順
【0222】
閉じた形態の解
圧縮センシングを使用してRSS読みからグラフを構築した後、グラフのラプラシアンLは、式(4)により計算することができる。最終的に、式(50)における目的関数に対する閉じた形態の解は、[21]により与えられる。
f
r=(J+γL)
-1JP (61)
但し、J=diag(δ
1、・・・δ
l+μ)及び識別子δ
iは、ラベル付きの位置において値1をとり、そしてラベルなしの位置において0となる。即ち、
【0223】
Pは、全てのノードに対する初期化位置マトリクスであり、
但し、
【0224】
学習結果f
rは、各行がグラフ上の1つのノードの予想2D位置を表わす(l+μ)×2マトリクスである。
【0225】
テスト設定及びソフトウェアの概略
RSS無線マップ学習及びポジショニングソフトウェアは、
図18に示すように、開発されて、アンドロイドプラットホームにインストールされた。このソフトウェアは、アンドロイドSDKを使用してJava(登録商標)で開発され、そしてスマートホンにインストールされた(アンドロイド2.2を伴うHTC Desire z)。更に、Google APIアドオン及びJamaパッケージが外部ライブラリーとしてインストールされた。
【0226】
システムの性能を評価するために、カナディアン・ナショナル・インスティテュート・フォア・ブラインド(BNIB)の2階において約18m×36mのエリアで完全なRSS無線マップデータベースが収集された。当該エリアの良好なカバレージを確保するために、サイトで見られた8個のビーコン12に加えて、15個の既製のビーコン12(リンクシスワイヤレスGブロードバンドルーターWTR54G2)が配備された。128個のRP(l+μ=128)の各々に対して50RSS時間サンプルが収集された。RPは、
図19に示すように、1.5mの平均格子間隔でサイトに均一に分布された。
【0227】
性能メトリック
RSS無線マップ予想の性能、及び予想される無線マップを使用する位置決めの性能が各々評価される。無線マップ予想では、少数の収集されたRSS位置データ対が取り上げられて、ラベルとして示される。データベースにおけるRSS読みの残りは、ラベルなしデータと考えられる。それに対応する位置は、ここに提案するアルゴリズムにより学習され、そして事前に測定された実際の位置と比較されて、予想精度を評価する。
【0228】
予想される無線マップを使用することによる全ポジショニングシステムの性能は、異なる日に異なるトレースに沿って0.34m/sのほぼ一定のスピードで歩いた2人の対象者によって評価される。トレースは、異なる長さのもので、異なる数の転回を必要とし、階床の異なる位置へ至るものであった。各オンラインRSS読みは、2つの時間サンプルの平均である。トレースの特性をテーブルIIIに要約する。
テーブルIII:トレースの概略
【0229】
移動ユーザの推定位置と、合計672個のテストポイントにわたる実際の位置との間のユークリッド距離を平均化することにより測定される位置決めエラーが、性能尺度としてレポートされている。次の4つのポジショニングアルゴリズムが分析され比較される。
【0230】
RADAR:フィンガープリントベースのRADARに対する解決策は、最小のユークリッド距離を有するk個の最近傍の重心をオンラインRSS読みに関して計算することにより移動ユーザの位置を推定するk−最近傍アルゴリズムである。[1]において、k=3、4のときに最良の性能が達成され、従って、評価にはk=3が使用されることが示唆される。
【0231】
Horus:Horusは、各潜在的な位置の確率をベイジアン理論に基づいて分析する統計学的方法を使用することによりRADARポジショニングを改善する。ガウス分布のようなパラメータ分布を使用してRPごとに信号強度ヒストグラムを近似する。次いで、トップ候補位置の質量中心が推定位置として計算される。計算の必要量を減少するために、同じアクセスポイントを共有するRPのセットとして定義されたクラスターが、Horusシステムにおける粗い位置決めに使用される。
【0232】
カーネルベースのポジショニング:カーネルベースのアルゴリズムは、信号強度分布の近似にカーネル関数が使用される確率解決策でもある。トップ候補位置の質量中心が最終的推定位置として計算される。
【0233】
CSベースのポジショニング:CSベースのポジショニングアルゴリズムは、クラスターマッチングを使用する粗い位置決め段階と、圧縮センシングを使用する微細な位置決め段階とで構成される。
【0234】
RSS無線マップ予想の性能
RSS無線マップ予想の性能をテストするために、ビーコン12の数に対する基準ポイントの位置予想エラーを調査することができる。実験において、RPごとに1つの時間サンプルで、合計128のRSS読みが得られ、そのうちの20が、それらの位置をマークしたラベル付きデータとして取り上げられる一方、それらのうちの108は、未知の位置情報を伴うラベルなしデータである。RSS読みに基づいてグラフが構成され、そして圧縮センシングを使用してグラフ重みが計算される。学習システムは、128のRPに対する予想位置を出力し、それらは、更に、実際の測定位置と比較される。RPごとに50の時間サンプルが収集されるので、実験結果は、平均50回のランであった。
【0235】
図20に示すように、平均予想エラーは、使用するビーコン12の数と共に変化する。最強ビーコン選択のスキームを使用して、式(53)で定義されたΦマトリクスを生成する。圧縮センシングの理論に基づき、合理的な回復に必要なビーコン12の数(M)は、log(l+μ)=log(128)=7にほぼ従う。それ故、ビーコン12の数がCS理論に合致するときには、学習システムは、予想精度に関して高い性能を得ることができる。一方、
図20に示すように、位置予想に19以上のビーコン12を使用すると、信頼性のないビーコン12により発生される偏った推定が導入されるので、精度が低下する。
【0236】
図21は、異なる数のビーコン12のもとでの学習システムの予想エラーの累積分布関数(CDF)を示す。学習システムの性能は、CS理論で必要とされるものに対してビーコン12の数を増加することにより改善することが明らかである。ビーコン12の数が充分なときには、ここに提案する学習システムは、3.1mという安定な90thパーセンタイルエラーを発する。
【0237】
基準ポイントの位置予想エラーは、ラベルの数に関して研究される。実験では、RPごとに1つの時間サンプルで、合計128のRSS読みが考えられる。第1の実験においてラベルを選択するのに代わって、各繰り返しにおいてラベルがランダムに取り上げられ、そしてラベルの数は、5から125まで変化する。全部で23個の利用可能なビーコン12が使用される。ある数のラベルについて、結果は、平均10回の繰り返しである。
【0238】
予想されるように、学習システムは、ラベルが多いほど、より正確な位置を予想する。
図22に示すように、20個のランダムなラベル(16%)では、システムは、位置予想において平均2.5mのエラーを生じる。
図20と比較すると、同じ状態のもとで、重要なノード(例えば、ターニングポイント)をラベルとして選択することにより、予想エラーを1.6mに減少することができる。
【0239】
位置決めの性能
位置決めシステムの性能は、予想される無線マップに基づいて評価され、そして手動で収集されたフィンガープリントデータベースに対して働くシステムと比較される。シミュレーション及び具現化の両結果が与えられる。シミュレーションにおいて、各々128のRPをもつ50のトレースがある。1つのトレースは、学習する必要のあるデータベースとしてランダムに取り上げられ、そして128のRPをもつ残りの49個のトレースは、各々、ポジショニングシステムのオンラインテストポイントとして取り上げられる。学習手順の間に、20個のRPは、ラベル付きデータとして取り上げられ、そして108個のRPは、それらの位置を知らずに、ラベルなしデータと考えられる。それ故、単一トレース上の128個のRP全部に対して完全なRSS無線マップを学習することができ、予想データベースと称される。一方、事前に収集されたRSS位置対は、測定データベースと称される。具現化において、オンラインRSS読みは、テーブルIIIに示すように、全部で672個のテストポイントを含めて、異なる日に4つの異なるトレースに沿って歩く2人の対象者によりオンラインRSS読みが収集される。
【0240】
位置決めは、2つの仕方で行うことができる。その一方は、慣習的なフィンガープリントベースのポジショニングアルゴリズムを予想データベースに適用するもので、2段階の解決策と称される。他方は、テストポイントにおいてオンラインRSS読みを新たなラベルなしデータとして取り上げ、そして予想データベースをラベル付きデータとして取り上げ、学習システムを通してテストポイントの位置を予想するもので、1段階の解決策と称される。
【0241】
図23は、前記シミュレーションシナリオの位置決めエラーのCDFを示す。結果は、平均49回のランである。ここに提案する学習手順は、ランごとの位置決めアルゴリズムでもあるから、128のテスト位置におけるオンラインRSS読みが新たなラベルなしデータと考えられ、そして前記の1段階解決策がポジショニング精度の評価のために適用される。シミュレーション中に、23の使用可能なビーコン12の全部が使用される。システムには、より多くのラベルなしデータが追加されるので、システムは、1.6mの平均エラーを伴う2.8mの90thパーセンタイルエラーとすることができる。
【0242】
図24は、使用するビーコン12の数に対する平均位置決めエラーの実施結果を示す。異なるシナリオが考慮され、比較される。測定されたデータベースに基づく4つの異なるポジショニングシステムがベンチマークとして示されている。2段階解決策は、予想データベースに圧縮センシングベースのポジショニング解決策を適用し、一方、1段階解決策は、オンラインRSS読みを新たなラベルなしデータとして取り上げ、そして半スーパーバイズ型学習解決策を使用して、位置を予想する。最強ビーコン12選択スキームが全てのテストにわたって使用される。
【0243】
本発明者の以前の発見と一貫して、CSポジショニングシステムは、測定データベースが設けられる4つのベンチマークポジショニングシステムにわたって最小限の位置決めエラーしか生じない。予想データベースを使用する2つのポジショニングシステムは、両方とも、測定データベースを伴うCSシステムより性能が低い。しかしながら、学習システムの主たる効果は、クラウドソースの仕方でRSSを収集し、そして少数のラベルだけでデータベースを自動的に及び動的に学習することである。更に、1段階解決策は、多大な人件費を伴うそれらのベンチマークシステムに匹敵する位置決め精度を与える。
【0244】
図25は、前記シナリオで得られる位置決めエラーのCDFを示し、そしてテーブルIVは、位置エラー統計値をリストしたものである。測定データベースを伴うCSシステムは、3.2mの90thパーセンタイルエラーで最良に機能する。1段階解決策は、3.7mの90thパーセンタイルエラーを与え、その後、2段階解決策は、5.2mの値である。
テーブルIV:位置エラー統計値(14のAPを使用)
【0245】
比較
EZモデルは、遺伝学的アルゴリズムを使用して無線伝播モデルにおいて未知のパラメータを推定することにより人件費問題を解消する。しかしながら、このアルゴリズムは、無線伝播モデルの良好な仮定に基づくものである。無線チャンネルが動的で且つ予想不能の性質であるために、この解決策は、大きなエラーを生じ易い。一方、GAが非常に複雑であるために、学習手順は、非常に低速である。EZモデルとは異なり、この開示で提案される学習システムは、l
1−最小化問題を通してRSS無線マップ(フィンガープリントデータベース)を直接予想する。無線マップは、オンライン位置推定のためのデータベースとして使用することができる。
テーブルV:実施シナリオ及びシステム性能比較
*:2段階解決策、**:1段階解決策
【0246】
2つの解決策は、異なる仮定に基づく異なるシナリオで実施される。テーブルVは、実験のシナリオと、予想精度及び位置決め精度に関する対応システム性能とをリストしたものである。テーブルIVは、2つの学習手順に対する消費時間を示している。ここに提案する学習アルゴリズムは、直線的プログラミング及びマトリクス操作しか含まないので、GAが使用されるEZモデルより著しく高速である。これは、データベースを高速のペースで自動的に且つ動的に更新する上で役立つ。更に、複雑さの制約なしに、一度に多くのラベルなしデータを学習することができる。しかしながら、このシステムの欠点は、CSが正確な位置予想のために、ある数のビーコン12を要求することである。
テーブルVI:消費時間
【0247】
以上の実施形態の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。これは、余すところのないものでも、ここに開示した正確な形態に限定されるものでもなく、前記教示に鑑み、修正や変更が考えられるし、又、本発明を実施することからも得られる。それら実施形態は、種々の実施形態及び意図された特定の用途に適するようにされた種々の変更における発明を当業者が利用できるように、本発明の原理及びその実際の応用を説明するために選択されたものである。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその等効物によって限定されることが意図される。