(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-531432(P2015-531432A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】銀の低温分散系合成及びそれによって製造される銀生成物
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20151006BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
B22F9/24 E
C22B11/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-530040(P2015-530040)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】US2013057293
(87)【国際公開番号】WO2014036261
(87)【国際公開日】20140306
(31)【優先権主張番号】61/695,428
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ベネディクト ヨーク
(72)【発明者】
【氏名】オウス,サミュエル オデイ
【テーマコード(参考)】
4K001
4K017
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001BA04
4K001BA05
4K001BA08
4K001DB17
4K001HA10
4K017AA03
4K017AA08
4K017BA02
4K017BB01
4K017BB10
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA01
4K017EJ01
4K017FB07
(57)【要約】
本明細書に金属すなわち元素銀を製造する方法が開示されている。これらの方法は、一般に、銀含有化合物、有機酸、およびアルコールを含む溶媒を含有する反応分散液を形成する工程と、続いて、銀含有化合物のカチオン銀種に由来する金属銀を含む反応生成物を形成するために効果的な時間および温度で反応分散液を混合する工程とを含む。また、これらの方法によって製造された金属すなわち元素銀が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属銀を製造する方法において、
銀含有化合物および有機酸を、アルコールを含む溶媒に加え、反応分散液を形成する工程であって、前記有機酸と前記アルコールの濃度が、前記銀含有化合物中のカチオン銀種の濃度に対して等モルまたは化学量論的に過剰であり、かつ、前記反応分散液中の前記溶媒の質量が前記銀含有化合物と前記有機酸の合計質量以下である工程と、
前記反応分散液を、前記銀含有化合物のカチオン銀種に由来する金属銀を含む反応生成物を生成するのに効果的な時間混合する工程と、
随意的な前記反応分散液を加熱する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
前記銀含有化合物が、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀、硫酸銀、リン酸銀、ハロゲン化銀、またはそれらの混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機酸が、乳酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、フマル酸、マレイン酸、またはそれらの混合物を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールが、一価アルコールである請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記加熱工程が前記混合工程中に行われ、前記反応分散液が前記一価アルコールの沸点以下の温度に加熱される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記アルコールが、多価アルコールである請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記加熱工程が前記混合工程中に行われ、前記反応分散液が前記多価アルコールの沸点以下の温度に加熱される請求項6記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記反応生成物から前記金属銀を回収する工程を含み、
該回収工程は、
前記反応生成物を溶媒に加え、前記金属銀は該溶媒中に分散し、かつ前記反応生成物の残りの部分は該溶媒中に溶解させる工程と、
前記反応生成物の残りの部分がその中に溶解している前記溶媒から前記金属銀を分離する工程と、
を含む請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から3いずれか1項記載の方法によって製造された金属銀生成物。
【請求項10】
前記金属銀生成物が、百万分率で20未満の非銀金属、および/または、1マイクロメートル以下の平均粒径を有する請求項9記載の金属銀生成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2012年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/695,428号の優先権の利益を主張し、以下にあたかも完全に記載されたかのように、その内容が依拠され、その全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、金属(すなわち、元素)銀の製造に関する。より詳しくは、本明細書に記載の種々の実施形態は、低温で最小限の溶媒の使用で金属銀を製造する方法、並びにその方法により製造された金属銀に関する。
【背景技術】
【0003】
銀は、その非常に優れた特性(例えば、高い導電性と熱伝導性、展性、延性、および耐腐食性)のために工業的目的で広く使用されている。説明すると、銀または銀化合物の一般的な用途、またはそれらを含む製品として、写真材料、電気めっき、電気導電体、歯科用合金、半田及びろう付け合金、塗料、宝石、硬貨、ミラー製品、抗菌剤、および浄水が挙げられる。
【0004】
金属銀を製造するために使用される方法の範囲には、化学技術、物理的技術(微粒子化および粉砕)、電気化学技術、および熱分解技術を含む。各タイプの方法は、一般的に、最終的にその機能的特性を支配する特徴的な形態構造および純度を有する粒子を生成する。様々な既存の技術の中で、化学的沈殿に基づくものは、粒子形態、製造コスト、および大量生産のための規模拡大効率の点で明確な利点を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶液中の金属銀の沈殿は、一般に、溶液中に溶解した銀塩種が還元剤により処理されて金属銀が生成し、その金属銀が溶液から沈殿するという化学的還元を伴う。既存の方法は、比較的簡単であり、迅速な還元反応を伴うが、そのような方法に用いられる還元剤は、しばしば毒性および/または発癌性であり、大量に用いると、安全衛生上の問題を引き起こす可能性がある。
【0006】
これらの問題に対処するため、アルコールまたはポリオールを使用する方法が開発されている。これらの方法は、一般に、還元剤および溶媒の両方として機能する加熱アルコールまたはポリオールを使用して、保護配位子の存在下で、銀塩種の還元を伴うものである。これらのアルコールまたはポリオール法の主な欠点は、金属塩を溶解するために大量の有機溶媒が使用され、その結果、化学廃棄物が大量に生成されることである。
【0007】
したがって、金属銀を製造するために使用することができる改良技術が依然として必要とされている。これらの方法が、より単純で、それほど化学薬品を多用せず、かつ安価であれば、また一方で、金属銀の商業規模の生産に適していれば、特に有用であろう。本開示が示すところは、そのような技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に、金属銀を製造する種々の方法、並びにその方法により製造される銀粒子を記載する。
【0009】
金属銀を製造する方法の1つのタイプは、銀含有化合物と有機酸を、アルコールを含む溶媒に入れ、反応分散液を形成する工程を含み、このとき有機酸とアルコールの濃度は銀含有化合物のカチオン銀種の濃度に対して等モルまたは化学量論的に過剰であり、かつ反応分散液中の溶媒質量は、銀含有化合物と有機酸の合計質量以下である。このタイプの方法はまた、銀含有化合物のカチオン銀種に由来する金属銀を含む反応生成物を形成するのに十分な時間、反応分散液を混合する工程を含む。このタイプの方法はまた、随意の、反応分散液を加熱する工程を含み、加熱工程は、実施される場合、混合工程の前、後、または同時に行われて差し支えない。
【0010】
このタイプの方法の一実施形態において、銀含有化合物は、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀、硫酸銀、リン酸銀、ハロゲン化銀、またはそれらの混合物を含むことができる。同様に、このタイプの方法の重複または重複しない一実施形態において、有機酸は、乳酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、フマル酸、マレイン酸、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0011】
このタイプの方法の一実施形態では、アルコールは一価アルコールである。アルコールが一価アルコールである場合、随意的な加熱工程が実施されないように、混合工程が室温で実施される場合がある。対照的に、アルコールが一価アルコールで、加熱工程が実施される場合、反応分散液は、一価アルコールの沸点以下の温度に加熱される。
【0012】
このタイプの方法の一実施形態では、アルコールは、多価アルコールである。アルコールが多価アルコールであるとき、そこに随意的な加熱工程が混合工程中に行われる場合があり、反応分散液は、多価アルコールの沸点以下の温度に加熱される。
【0013】
いくつかの状況では、随意的な加熱工程は混合工程の後に行われ、反応分散液はアルコールの沸点以下の温度に加熱される。
【0014】
混合工程の時間が約5分から約3時間であり得るこのタイプの方法の実施形態がある。
【0015】
一実施形態では、このタイプの方法は、反応生成物から金属銀を回収する工程を含むことができる。このような一実施形態では、その回収工程は、金属銀は溶媒中に分散させ、かつ反応生成物の残りの部分は溶媒中に溶解させるような溶媒中に反応生成物を加える工程と、続いて、反応生成物の残りの部分がその中に溶けている溶媒から金属銀を分離する工程とを伴う。
【0016】
随意の加熱工程と回収工程とが実施される場合、このタイプの方法は、回収工程の前に反応生成物を冷却する工程をさらに含むことができる。
【0017】
このタイプの方法のいくつかの実施形態で製造される金属銀は、90%超の分取収率で製造することができる。
【0018】
金属銀生成物の一つのタイプは、直上に記載のタイプの方法の1以上の実施形態に従って製造することができる。金属銀生成物は、百万分率で20未満の非銀金属を有することができる。加えて、またはその代わりに、金属銀生成物は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有することができる。
【0019】
金属銀の製造方法の別のタイプは、銀含有化合物と有機酸とをアルコール中に加えて、反応分散液を形成する工程を含み、このとき、有機酸とアルコールの濃度が、銀含有化合物中のカチオン銀種の濃度に対して等モルまたは化学量論的に過剰であり、かつ反応分散液中のアルコールの質量が、銀含有化合物と有機酸の合計質量以下となる。このタイプの方法はまた、銀含有化合物中のカチオン銀種に由来する金属銀を含む反応生成物を生成するのに十分な時間、反応分散液を混合する工程を含むことができる。このタイプの方法はまた、金属銀は溶媒に分散させ、かつ冷却された反応生成物の残りの部分は溶媒中に溶解させるような溶媒中に反応生成物を加える工程と、続いて、冷却された反応生成物の残りの部分がその中に溶解している溶媒から金属銀を分離する工程とを含むことができる。
【0020】
このタイプの方法のいくつかの実施態様では、銀含有化合物は硝酸銀であってもよく、有機酸はアスコルビン酸であってもよく、アルコールは一価アルコールであってもよく、混合工程は室温で行われる。
【0021】
金属銀生成物の別のタイプは、金属銀生成物が、百万分率で20未満の非銀金属および約1マイクロメートル以下の平均粒径を含むように、直上に記載のタイプの方法の1以上の実施形態に従って製造することができる。
【0022】
上述の簡単な概要および以下の詳細な説明のいずれも、様々な実施形態を記載し、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図していることを理解するべきである。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれその一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を例示し、説明と共に、請求項の主題の原理及び作用を説明するのに役立つ。
【0023】
これらおよび他の態様、利点、及び顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例1に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図2】
図2は、実施例1に従って製造された銀生成物の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図3】
図3は、実施例2に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図4】
図4は、実施例2に従って製造された銀生成物の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図5】
図5は、実施例3に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図6】
図6は、実施例4に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図7】
図7は、実施例5に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図8】
図8は、実施例6に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図9】
図9は、実施例6に従って製造された銀生成物の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図10】
図10は、実施例7に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図11】
図11は、実施例7に従って製造された銀生成物の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図12】
図12は、実施例8に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図13】
図13は、実施例8に従って製造された銀生成物の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図14】
図14は、実施例9に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【
図15】
図15は、実施例10に従って製造された銀生成物の粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、図面を参照し、例示的な実施形態を詳細に説明する。それぞれの図面を通して、同様の参照番号は同様の部分を表す。この説明全体を通して、様々な構成要素は、特定の値またはパラメータによって識別され得る。しかしながら、これらの項目は、本開示の例示的なものとして提供される。実際に、その例示的な実施形態は、多くの、同等のパラメータ、サイズ、範囲、および/または値で実施することができるので、様々な特徴および概念を限定するものではない。同様に、用語「第1」、「第2」「一次的」、「二次的」、「上部」、「底部」、「端部」、「約」などは、いかなる順序、数量または重要性も意味せず、むしろある要素を別の要素から区別するために使用される。さらに、用語「単数」、および「その」は、量の限定を意味するものではなく、むしろ挙げられた用語が「少なくとも一つ」存在すること意味する。
【0026】
本明細書に記載する方法は、一般に、低温で固体銀含有化合物のカチオン銀種を金属(すなわち、元素)銀に還元するための、有機酸とアルコールとの組合せの使用に基づいている。これらの方法は、穏やかな反応条件、および、既存の技術より著しく少ない化学廃棄物を効果的に提供する。
【0027】
これらの方法は、銀含有化合物、有機酸、およびアルコールを含む溶媒を含有する反応分散液を形成する工程と、続いて、銀含有化合物のカチオン銀種に由来する金属銀を含む反応生成物を形成するのに効果的な時間および温度でその反応分散液を混合する工程とを含む。上述したように、有機酸は還元剤として作用して、それにより、加熱工程の間、カチオン銀種がその金属すなわち元素状態に還元される。
【0028】
一般に、反応分散液の形成は、アルコールを含む溶媒中に、銀含有化合物と有機酸を加える工程を含む。例えば、これは、銀含有化合物の粒子を有機酸の粒子と混ぜ合わせ、または混合し、溶媒中にその組合せを直接加えること、溶媒中に銀含有化合物と有機酸の粒子を順次(任意の順序で)加えること、その中に銀含有化合物の粒子が加えられた第一の量の溶媒と、その中に有機酸の粒子が加えられた第二の量の溶媒とを混合することなどにより達成することができる。これらの方法のいくつかの実施形態では、溶媒が非アルコール成分および/または二つ以上のアルコールを含む場合、銀含有化合物を終局のまたは最終溶媒の一つの成分に加え、有機酸を最終溶媒の別の成分に加え、そしてそれらの最終溶媒の成分を混ぜ合わせることにより、反応分散液を形成することができる。本開示が属する分野における当業者は、本明細書に記載の方法から逸脱することなく、反応分散液を形成するための他の技術が実施されるであろうことを理解するであろう。
【0029】
銀含有化合物の選択は、本明細書に記載の方法は、種々の材料から任意に選択されるものを使用して金属銀を生成するので、特定の組成に限定されるものではない。例えば、銀含有化合物は、二元化合物(例えば、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀、硫酸銀、リン酸銀、ハロゲン化銀など)、カチオン銀種および異なるカチオン種を含む三元または多元化合物、それらの混合物、または前述の銀含有化合物および銀非含有化合物の1種以上の組合せであっても良い。
【0030】
同様に、有機酸の選択は、本明細書に記載の方法は、種々の材料から任意に選択されるものを使用して金属銀を生成するので、特定の組成に限定されるものではない。有機酸の唯一の要件は、アルコールに不溶性あるいは難溶性であること、および混合工程の間曝される状況下で融解しないことである。例えば、有機酸は、乳酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、フマル酸、マレイン酸など、またはそれらの混合物であり得る。
【0031】
溶媒は、特定の組成に限定されるものではないが、アルコールを含まなければならない。これは、一価アルコールおよび多価アルコール(すなわち、2以上のヒドロキシ基を有する)を含む。好適な一価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。一方、好適な多価アルコールの例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エリスリトールなどが挙げられる。
【0032】
アルコールに加えて、溶媒はまた、銀含有化合物と有機酸がそれに不溶性または難溶性である他の液体を含むことができる。
【0033】
反応分散液を調製する際に、それらの成分比または相対量は特に限定されない。しかしながら、銀含有化合物中のカチオン銀種の全てまたは実質的に全てが金属銀に確実に還元されるようにするために、銀含有化合物中のカチオン銀種に対する有機酸とアルコールとの合計モル比は、約1以上であるべきである。すなわち、有機酸とアルコールの濃度は、銀含有化合物中のカチオンの銀種の濃度に対してほぼ等モルまたは化学量論的に過剰であるべきである。
【0034】
さらに、反応分散液が実際に分散液であることを確実にするために、溶媒の質量は、銀含有化合物と有機酸との合計質量以下であるべきである。このように、反応分散液は、ペースト状稠度からスラリー状稠度までの範囲になるであろう。
【0035】
銀含有化合物、有機酸、およびアルコールを含む溶媒を含有する反応分散液が形成されたら、混合工程に供することができる。一般に、銀含有化合物のカチオン銀種から還元された金属銀を含む反応生成物を生成するのに十分な時間と温度で、反応分散液を混合することを含む。
【0036】
反応分散液の物理的な混合は、いくつかの技術によって行うことができる。これは、撹拌、機械的剪断、振とう、超音波処理などの使用を含む。混合工程の間に、実際の混合は、連続様式で、または周期的な不連続様式で行うことができる。混合の程度または強度は、弱攪拌から強撹拌もしくは激変までに及んで差し支えない。
【0037】
多くの実施形態では、混合工程は、室温で実施することができる。しかしながら、ある実施形態では、反応分散液を加熱する随意の工程を含んでもよい。還元反応は、混合工程によって誘発されるため発熱反応である。よって、混合工程が、随意的な加熱工程を伴う場合、有機酸の潜在的な分解および/またはアルコールの沸騰(還元反応の効率を低下させるであろう)を避けるために、反応分散液が加熱される温度は、アルコールの沸点程度以下であるべきである。したがって、いずれの混合工程でも、混合工程中の反応分散液の温度は室温からアルコールの沸点程度までの範囲にあるであろう。
【0038】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、随意の加熱工程は、混合工程の後に実施され得ることに留意するべきである。すなわち、反応分散液は室温で混合することができ、続いて、いかなる反応分散液の混合も伴わない加熱工程が行われる。上記で提供された温度パラメータは、これらの実施形態に適用可能である。
【0039】
より具体的には、一価アルコールを含む実施形態では、混合工程および/または随意加熱工程中の反応分散液の温度は、室温から一価アルコールの沸点程度の範囲となる。より一般的に、これらの実施形態では、混合工程および/または随意的な加熱工程中の反応分散液の温度は、室温から摂氏約75度(℃)であろう。対照的に、多価アルコールを含む実施形態では、混合工程および/または随意的な加熱工程中の反応分散液の温度は、約50℃から多価アルコールの沸点程度の範囲となる。より一般的に、これらの実施形態では、混合工程および/または随意的な加熱工程中の反応分散液は、約90℃から約200℃であろう。
【0040】
混合工程の持続時間は、一般に、反応液分散液が混合される程度、および随意の加熱工程が実施されるかどうかに依存する。この時間の上限は、所望の量カチオン銀種を金属銀に化学的に還元するのに必要なものであろう。一般に、混合工程の持続時間は約1分から約24時間であろう。しかしながら、ほとんどの実施形態では、混合工程の持続時間は約5分から約3時間であろう。
【0041】
混合工程の完了後、金属銀は、反応生成物から回収または単離することができる。回収または単離工程は、金属銀粒子は分散し、かつ反応生成物の残りの部分(すなわち、いずれの未反応物および/または反応副生成物も)はその中に溶けている溶媒を使用し、その後、反応生成物の残りの部分がその中に溶けている溶媒から金属銀を分離する工程(例えば、ろ過、デカンテーションなどによる)を含むことができる。この工程に好適な溶媒は、金属銀はそれに不溶であり、金属銀と反応しないものであろう。このような溶媒の一つは水である。金属銀が一旦単離されたら、溶媒は、必要に応じて、その中に溶解している反応生成物の成分(未反応物質および/または反応副生成物)を回収するために処理することができる。
【0042】
回収工程は、混合工程の直後に実施することができるが、反応分散液が加熱される本明細書に記載の方法の実施形態では、回収工程は、反応生成物がより低い温度(例えば、室温)まで冷却した後に行うことができる。
【0043】
それらの様々な実施形態での上記の方法は、非常に効率的であり得る。つまり、90パーセント(%)を超える反応生成物中の銀の分取収率が、容易に達成可能である。多くの実施形態では、特に化学量論的に過剰量の有機酸が使用される場合、100%の分取収率を達成することができる。
【0044】
さらに、上記の方法を用いて製造された金属銀生成物は、高純度であることが可能である。すなわち、回収または単離された金属銀は、一般に、例えば誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)などの技術によって定量化して、20ppm未満の非銀金属を有するであろう。多くの実施形態のでは、特に、反応温度及び時間がより長い実施形態、およびその回収工程がより十分に行われる実施形態において、回収された金属銀は、10ppm未満の非銀金属を有するであろう。
【0045】
高純度に加えて、金属銀は、高い結晶化度を示す(例えば、粉末X線回折(PXRD)によって示されるように)。
【0046】
これらの方法を用いて製造された金属銀粒子は、一般に微粒子の凝集体の形である。凝集は、回収または分離工程で使用される溶媒からのより容易な分離を可能にすることができるが、凝集物を砕く二次処理工程(例えば、粉砕、機械的摩耗等)を必要とすることがある。
【0047】
金属銀の平均粒径(非凝集微粒子の平均最長断面寸法であると考えられている)は、一般に、約1マイクロメートル以下である。本明細書で使用する用語「最長断面寸法」は、粒子の最長断面寸法を指す。したがって、明確にするために、粒子が円形である場合、最長断面寸法はその直径であり、粒子が楕円形状である場合、最長断面寸法は、楕円の長径であり、粒子が不規則な形状である場合には、最長断面寸法は、粒子の外周の2つの最も遠い対向点の間の線である。多くの実施形態では、金属銀の平均粒径は、約50ナノメートル(nm)から約500nmである。
【0048】
本明細書に記載の方法の中で環境に優しい応用形態では、銀含有化合物の供給源は、工業的過程から得られる。具体的には、銀含有化合物は、ガラスや他の材料表面に抗菌機能を付与する際に使用されるように、「使用済」または「消耗された」銀イオン交換浴であり得る。初期の銀イオン交換浴(すなわち、ガラスまたは他の材料に抗菌特性を付与するために使用される前)は、溶融硝酸銀から形成することができる。ある状況下では、初期の銀イオン交換浴は、溶融硝酸銀およびアルカリ金属塩(例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム等)から形成することができる。一度使用されると、イオン交換浴は、非銀イオン種(すなわち、銀イオンと交換されて、ガラスまたは他の材料から出たイオン)で汚染される。最終的に、イオン交換浴は、余りにも汚染されて、効率的な銀イオン交換のために有用でなくなる。これらの状況下で、銀イオン交換浴は、「使用済」または「消耗された」と呼ばれる。
【0049】
本明細書に記載のそのような応用形態の方法では、固体モノリシック体(その融解温度未満で)である使用済銀イオン交換浴は、粉末に粉砕することができる。有機酸は、粉末状態で、その使用済銀イオン交換浴の粉末と混合することができる。粉末混合物(使用済銀イオン交換浴の粉末と有機酸の粉末とを含む)は、アルコール溶媒中に加えることができる。有機酸とアルコールの濃度は、合計で、銀イオン交換浴の粉末中のカチオン銀種の濃度に対してほぼ等モルまたは化学量論的に過剰であるべきであり、アルコールの質量は、銀イオン交換浴の粉末と有機酸の合計質量以下であるべきである。この時点で、反応分散物が形成され、混合工程のための準備ができている。
【0050】
アルコールが一価アルコールである場合、混合工程は、室温から約70℃で行うことができる。アルコールが多価アルコールである場合、混合工程は、約110℃から約170℃で行うことができる。
【0051】
反応分散液の温度が混合工程中に上昇した場合は、反応生成物を室温に冷却することができる。一旦冷却されたら、または既に室温であれば、反応生成物は、反応生成物の残りの部分から金属銀を分離するために水中に加えることができる。これらの条件下では、金属銀は水溶液内に分散され、反応生成物の残りはその中に溶解する。反応生成物の残りの部分から金属銀生成物の分離を容易にするために、溶液を激しく混合することができる。この時点で、金属銀を濾過によって溶液から回収することができる。これらの条件下では、銀の分取収率は約97%よりも大きいことがある。
【0052】
本明細書に記載する方法のこれらの応用では、金属銀生成物は、高結晶質であり得る。使用済銀イオン交換浴中の非銀カチオンのレベルに応じて、金属銀生成物は、約200ppm未満の非銀金属を有することができる。多くの状況では、金属銀生成物は、約50ppm未満の非銀金属を有することができる。さらに、この金属銀生成物の平均(非凝集)粒径は約120nmから400nmであり得る。
【0053】
本開示の様々な実施形態は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0054】
実施例1
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、溶媒としてエタノールを用いて、金属銀粉末を作製した。
【0055】
約4.0グラム(g)の硝酸銀および約4.15gのアスコルビン酸をガラスビーカーの中でよく十分に混合した。その後、約4.0gのエタノールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーを換気炉内に配置し、連続的に攪拌しながら、約70℃で約1時間加熱保持した。約1時間後、分散液は室温まで冷却された。灰色の反応生成物を、脱イオン(DI)水の中で約10分間攪拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、DI水で数回洗浄し、続いて、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥粉末を、粉末X線回折(PXRD)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)、および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて特徴付けて、生成物の結晶化度、純度、および粒子形態を決定した。
【0056】
図1は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図1に示されるパターンは、高結晶質の金属銀試料を示す。ICP−MSより、試料は、銀以外に、それぞれ百万分率で1(ppm)未満のアルミニウムおよびカルシウム、それぞれ約2ppm未満のナトリウムおよびカリウムを含有することが明らかになった。したがって、本実施例では、高純度の金属銀を作製することができた。
図2は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のSEM画像である。
図2のSEM画像により、試料中の粒子の凝集はかなりの程度であったことが明らかになった。
【0057】
実施例2
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、溶媒としてエタノールを用いて、金属銀粉末を作製した。
【0058】
約4.0グラムの酸銀および約4.15gのアスコルビン酸をガラスビーカー中で十分混合した。その後、約4.0gのエタノールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーの内容物を約15分間室温で撹拌した。灰色の反応生成物を、脱イオン水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、DI水で数回洗浄し、その後、約110℃約2時間乾燥した。乾燥粉末をPXRD、ICP−MS、SEMを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度、純度、および粒子形態をそれぞれ決定した。
【0059】
図3は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図3に示されるパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSから、試料は、銀以外に、それぞれ1ppm未満のアルミニウムおよびカルシウム、それぞれ約3ppmのナトリウムおよびカリウムを含有していることが明らかになった。したがって、本実施例で、高純度の金属銀を作製することができた。
図4は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のSEM画像である。
図4のSEM画像により、試料中の粒子の凝集はかなりの程度であったことが明らかになったが、実施例1の試料で現れたよりも低いものであった。
【0060】
実施例3
この例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、溶媒としてメタノールを用いて、金属銀粉末を作製した。
【0061】
約4.0gの硝酸銀および約4.15gのアスコルビン酸をガラスビーカー中で十分に混合した。続いて、約4.0gのメタノールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーの内容物を約15分間室温で撹拌した。灰色の反応生成物を、脱イオン水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、DI水で数回洗浄し、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥した沈殿物をPXRDおよびICP−MSを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度および純度をそれぞれ決定した。
【0062】
図5は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図5に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSにより、試料は、銀以外では、それぞれ1ppm未満のアルミニウムおよびカルシウム、それぞれ約2ppmのナトリウムおよびカリウムを含有していることが明らかになった。したがって、本実施例では、高純度の金属銀を作製することができた。
【0063】
実施例4
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、および溶媒としてエタノールを用いて、金属銀粉末を作製した。さらに、硝酸ナトリウム粉末を、硝酸銀の質量に基づく10質量パーセント(質量%)の量で、硝酸銀粉末に加えて、銀の還元反応に対するナトリウムの不純物の影響を評価した。
【0064】
約6.0gの硝酸銀、約0.6gの硝酸ナトリウム、および約6.22gのアスコルビン酸をガラスビーカー中で十分に混合した。その後、約6.0gのエタノールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーの内容物を約15分間室温で撹拌した。灰色の反応生成物を、DI水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、DI水で数回洗浄し、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥した沈殿物をPXRDおよびICP−MSを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度および純度をそれぞれ決定した。
【0065】
図6は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図6に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSより、試料は、銀以外には、それぞれ1ppm未満のアルミニウムおよびカルシウム、約15ppmのナトリウム、約4ppmのカリウムを含有していることが明らかになった。したがって、本実施例で、高純度の金属銀を作製することができた。
【0066】
実施例5
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、溶媒としてエタノールを用いて、金属銀粉末を作製した。しかしながら、硝酸銀が市販の粉末であった上記実施例1から4とは対照的に、本実施例では、硝酸銀の供給源は、約50質量%の硝酸銀および約50質量%のリン酸カリウムの初期組成を有した使用済固形銀イオン交換浴であった。
【0067】
まず、固体試料を破砕し、粉末状に粉砕した。次に、約12gの粉末試料および約6.22gのアスコルビン酸をガラスビーカー中で十分に混合した。その後、約12.0gのエタノールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーの内容物を約15分間室温で撹拌した。灰色の反応生成物を、DI水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、脱イオン水で数回洗浄し、その後、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥した沈殿物をPXRDおよびICP−MSを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度および純度をそれぞれ決定した。
【0068】
図7は、この実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図7に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSは、試料は、銀以外では、それぞれ1ppm未満のアルミニウムおよびカルシウム、約2ppmのナトリウム、約39ppmのカリウムを含有することが明らかになった。したがって、本実施例で高純度の金属銀を作製することができた。
【0069】
実施例6
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてシュウ酸を用い、溶媒としてグリセロールを用いて、金属銀粉末を作製した。
【0070】
約4.0gの硝酸銀および約1.06gのシュウ酸をガラスビーカー中で十分に混合した。続いて、約2.0gのグリセロールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーを換気炉内に配置し、約170℃で約1時間加熱保持した。約1時間後、分散液は室温まで冷却された。灰色の反応生成物を、DI水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、脱イオン水で数回洗浄した後、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥粉末を、PXRD、ICP−MS、SEMを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度、純度、および粒子形態をそれぞれ決定した。
【0071】
図8は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図8に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSにより、試料は、銀以外に、1ppm未満のカルシウム、それぞれ2ppm未満のナトリウム、カリウム、およびアルミニウムを含有することが明らかになった。したがって、本実施例で高純度の金属銀を作製することができた。
図9は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のSEM画像である。
図9のSEM画像から、試料中の粒子凝集がかなりの程度であったことが明らかである。
【0072】
実施例7
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてシュウ酸を用い、溶媒としてグリセロールを用いて、金属銀粉末を作製した。
【0073】
約4.0gの硝酸銀および約1.06gのシュウ酸をガラスビーカー中で十分に混合した。続いて、約2.0gのグリセロールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーを換気炉内に配置し、約150℃で約1時間に加熱保持した。約1時間後、分散液は室温まで冷却された。灰色の反応生成物を、脱イオン水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、DI水で数回洗浄し、その後、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥粉末を、PXRD、ICP−MS、SEMを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度、純度、および粒子形態をそれぞれ決定した。
【0074】
図10は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図10に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSにより、試料は、銀以外に、1ppm未満のカルシウム、それぞれ2ppm未満のナトリウム、カリウム、およびアルミニウムを含有することが明らかになった。したがって、本実施例で、高純度の金属銀を作製することができた。
図11は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のSEM画像である。
図11のSEM画像から、試料中の粒子凝集の程度がかなりの程度であることが明らかである。
【0075】
実施例8
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてシュウ酸を用い、溶媒としてグリセロールを用いて金属銀粉末を作製した。
【0076】
約4.0gの硝酸銀と約1.06gのシュウ酸を十分にガラスビーカー中で混合した。続いて、約2.0gのグリセロールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーを換気炉内に配置し、約110℃で約1時間加熱保持した。約1時間、分散液は室温まで冷却された。灰色の反応生成物を、脱イオン水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、脱イオン水で数回洗浄し、その後、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥粉末を、PXRD、ICP−MS、SEMを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度、純度、および粒子形態をそれぞれ決定した。
【0077】
図12は、この実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図12に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSは、試料が、銀以外に、1ppm未満のカルシウム、それぞれ2ppm未満のナトリウム、カリウム、およびアルミニウムを含有することが明らかになった。したがって、本実施例で、高純度の金属銀を作製することができた。
図13は、本実施例に従って製造された乾燥した沈殿生成物のSEM画像である。
図13のSEM画像から、試料中の粒子凝集はかなりの程度であったことが明らかである。
【0078】
実施例9
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、溶媒としてグリセロールを用いて、金属銀粉末を作製した。さらに、銀の還元反応に対するナトリウム不純物の影響を評価するために、硝酸ナトリウム粉末を、硝酸銀の質量に基づく10質量%の量で、硝酸銀粉末に加えた。
【0079】
約6.0gの硝酸銀、約0.6gの硝酸ナトリウム、および約6.08gのアスコルビン酸を完全にガラスビーカー中で混合した。続いて、約4.0gのグリセロールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーを換気炉内に配置し、約110℃約90分間で加熱保持した。約90分後、分散液は室温まで冷却された。灰色の反応生成物を、脱イオン水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、脱イオン水で数回洗浄した後、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥沈殿物をPXRDおよびICP−MSを用いて特徴付けて、生成物の結晶化度および純度それぞれ決定した。
【0080】
図14は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図14に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSより、試料が、銀以外に、1ppm未満のカルシウム、2ppm未満のアルミニウム、それぞれ約4ppmのナトリウムおよびカリウムを含有していることが明らかになった。したがって、本実施例で、高純度の金属銀を作製することができた。
【0081】
実施例10
本実施例では、銀含有化合物として硝酸銀を用い、有機酸としてアスコルビン酸を用い、溶媒としてグリセロールを用いて、金属銀粉末を作製した。硝酸銀が市販の粉末であった上記実施例6から9とは対照的に、本実施例では、硝酸銀の供給源は約50重量%の硝酸銀および約50重量%のリン酸カリウムの初期組成を有した使用済固体銀イオン交換浴であった。
【0082】
まず、固体試料を破砕し、粉末状に粉砕した。次に、約12gの粉末試料および約6.08gのアスコルビン酸を、ガラスビーカー中で十分に混合した。続いて、約6.0gのグリセロールをビーカーに加え、ビーカーの内容物をよく混合した。ビーカーを換気炉内に配置し、約110℃約60分間加熱保持した。約1時間後、分散液は室温まで冷却された。灰色の反応生成物を脱イオン水の中で約10分間撹拌して洗浄した。残った固体をデカンテーションにより溶液から分離し、DI水で数回洗浄した後、約110℃で約2時間乾燥した。乾燥沈殿物をPXRDおよびICP−MSを用いて特徴付け、生成物の結晶化度および純度をそれぞれ決定した。
【0083】
図15は、本実施例に従って製造された乾燥沈殿生成物のPXRDパターンである。
図15に示すパターンは、高結晶質の金属銀の試料を示す。ICP−MSにより、試料は、銀以外に、1ppm未満のカルシウム、約5ppmのアルミニウム、約2ppmのナトリウム、約160ppmのカリウムを含有することを明らかになった。したがって、本実施例で高純度の金属銀を作製することができた。
【0084】
上記説明及び実施例から分かるように、本明細書に記載の方法は、その単純さ、経済的特徴、および工業的規模拡大能力を受けて、特に粉末冶金の分野で有用である。
【0085】
本明細書に開示された実施形態は、例示の目的で記載してきたが、前述の説明は、開示または添付の請求項の範囲を限定するものとみなされるできではない。従って、当業者は、本開示または添付の特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、付加、および代替が可能である。
【国際調査報告】