(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-531745(P2015-531745A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】プラグの深さのばらつきが低減されたハニカム体を充填するための組成物と方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/85 20060101AFI20151009BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20151009BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20151009BHJP
B01D 46/00 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
C04B41/85 C
C04B38/00 304Z
B01D39/20 D
B01D46/00 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-530020(P2015-530020)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月21日
(86)【国際出願番号】US2013057222
(87)【国際公開番号】WO2014036221
(87)【国際公開日】20140306
(31)【優先権主張番号】13/599,584
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】オーディンウッド,コルビー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】チェチェ,アンソニー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】カルバートソン,トカ エム
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン,コートニー スペンサー
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4G019
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA37
4D058JB06
4D058SA08
4G019GA04
(57)【要約】
ハニカム体に施用するための組成物が、耐火性充填剤と、有機結合剤と、無機結合剤と、液状ビヒクルとを含有し、耐火性充填剤、耐火性充填剤の粒径分布、有機結合剤、および無機結合剤は、組成物を施用してハニカム体の複数の溝を塞ぐときにプラグの深さのばらつきが低減されるように選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径分布を有する耐火性充填剤と、
有機結合剤と、
無機結合剤と、
液状ビヒクルと、
を含む、複数の平行な溝を有するハネカム体に施用するための組成物において、
組成物を施用して前記ハネカム体の複数の溝を塞ぐとき、それから形成される複数のプラグが、所定の断面サイズの溝について、深さ範囲が平均プラグ深さの30%未満であるような平均プラグ深さおよび深さ範囲を有するように前記耐火性充填剤、該耐火性充填剤の前記粒径分布、前記有機結合剤、および前記無機結合剤が選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記平均プラグ深さが7ミリメートル未満であり、
前記耐火性充填剤が、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミン酸カルシウム、ベータ−ユークリプタイト、およびベータ−ユウ輝石からなる群から選択される少なくとも1つの無機粉末を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無機結合剤がゲル化無機結合剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が200℃未満の温度において硬化し、
前記無機粉末の中央粒径(D50)が25〜40マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
多孔性セラミック溝壁と境界を接する複数の平行な溝を含む多孔性セラミックハニカム体において、選択された溝が、前記溝壁に永久的に封止されるプラグを含有し、前記プラグが、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、多孔性セラミックハニカム体。
【請求項6】
粒径分布を有する耐火性充填剤と、
有機結合剤と、
無機結合剤と、
液状ビヒクルと、
を含む組成物を、複数の平行な溝を有するハネカム体に施用する工程を含む、充填組成物をハネカム体に施用するための方法において、
前記組成物を施用して前記ハネカム体の複数の溝を塞ぐとき、それから形成される複数のプラグが、所定の断面サイズの溝について、深さ範囲が平均プラグ深さの30%未満であるような平均プラグ深さおよび深さ範囲を有するように前記耐火性充填剤、該耐火性充填剤の前記粒径分布、前記有機結合剤、および前記無機結合剤が選択されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2012年8月30日に出願された、米国特許出願第13/599,584号明細書(その内容に依拠し、その全体を参照によって本明細書に組込む)の米国法典第35編第120条の下の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、多孔性ハニカムセラミックに関し、より詳しくは、多孔性ハニカムセラミックに施用され得る改良された組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミック壁面流フィルターは、ディーゼルまたは他の燃焼エンジン排気流からの粒状汚染物質の除去ための用途が拡大している。多孔性セラミックから形成される溝付きハニカム構造物からこのようなフィルターを製造する多数の異なった方法が公知である。最も普及した方法は、封止材料の硬化プラグをこのような構造物の交互の溝の端部に置くことであり、これは、溝を通る直接的な流体流を阻むことができ、流体流を、フィルターを出る前にハニカムの多孔性溝壁に通すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハニカム構造物を充填する重要な態様には、プラグの深さおよびプラグの特質などが含まれる。プラグの特質はしばしば、プラグ内のボイドの存在と相関関係にある。一般的には、ボイドの存在は、充填組成物中の水の量を低減することおよび/または充填組成物中の特定のバッチ成分の粒径を増加させることによって低減され得る。しかしながら、このような改良形態は、深さが不十分で、したがって、機械的(または「押し出し」)強度が不十分な充填することにつながり得る。
【0005】
他方、プラグを短くすると背圧が小さくなり、同じ外形に対してフィルター体積が大きくなり、したがって再生頻度が低減され、燃料節減が改善される。さらに、プラグを短くすると材料の利用度が良くなり、それによってフィルターの製造費が低減される。したがって、十分な機械的(または「押し出し」)強度を提供するために必要な深さを有したまま可能な限り短いプラグを提供することが望ましい。
【0006】
これらの問題点の全てに同時に応えることにおける課題には、プラグの深さのばらつきが含まれる。プラグの深さのばらつきは典型的に、異なったフィルター溝内の充填組成物の流量の差によって引き起こされる。比較的大きい流れ抵抗がある溝内のプラグは短くなる傾向があるが、比較的小さい流れ抵抗がある溝内のプラグは長くなる傾向がある。このようなばらつきは、少なくとも一部の比較的短いプラグが必要な機械的強度を提供できない原因となり得る。したがって、より短いプラグを提供する必要性がますます大きくなっているとすれば、必要な機械的強度を提供できないプラグの出現率を最小にするためにプラグの深さのばらつきを低減する必要も同時にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、複数の平行な溝を有するハニカム体に施用するための組成物に関する。組成物は、粒径分布を有する耐火性充填剤を含有する。また、組成物は、有機結合剤、無機結合剤、および液状ビヒクルを含有する。組成物を施用してハニカム体の複数の溝を塞ぐとき、それから形成される複数のプラグが、所定の断面サイズの溝について、深さ範囲が平均プラグ深さの30%未満であるような平均プラグ深さおよび深さ範囲を有するように耐火性充填剤、耐火性充填剤の粒径分布、有機結合剤、および無機結合剤が選択される。
【0008】
本開示の別の実施形態は、多孔性セラミック溝壁と境界を接する複数の平行な溝を含む多孔性セラミックハニカム体に関する。選択された溝が、溝壁に永久的に封止されるプラグを含有する。プラグは、粒径分布を有する耐火性充填剤と無機結合剤とを含有する。耐火性充填剤、耐火性充填剤の粒径分布、および無機結合剤は、プラグが、所定の断面サイズの溝について、深さ範囲が平均プラグ深さの30%未満であるような平均プラグ深さおよび深さ範囲を有するように選択される。
【0009】
本開示のさらに別の実施形態は、充填組成物を複数の平行な溝を有するハニカム体に施用するための方法に関する。この方法は、組成物をハニカム体に施用する工程を包含する。組成物は、粒径分布を有する耐火性充填剤を含有する。また、組成物は、有機結合剤、無機結合剤、および液状ビヒクルを含有する。組成物を施用してハニカム体の複数の溝を塞ぐとき、それから形成される複数のプラグが、所定の断面サイズの溝について、深さ範囲が平均プラグ深さの30%未満であるような平均プラグ深さおよび深さ範囲を有するように耐火性充填剤、耐火性充填剤の粒径分布、有機結合剤、および無機結合剤が選択される。
【0010】
さらに別の特徴および利点は以下の詳細な説明に示され、部分的に、当業者にはその説明からすぐに明らかであり、または記載された説明およびその特許請求の範囲、ならびに添付された図面において説明される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0011】
前述の概要および以下の詳細な説明は典型的な例にすぎず、請求の範囲の性質と特徴を理解するための概要または枠組を提供することを意図するものであることは理解されるはずである。
【0012】
添付した図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組込まれ、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、説明と共に、様々な実施形態の原理および作用を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】比較用の充填組成物によってハニカム構造物に施用されたプラグについて平均プラグ深さおよびプラグの深さ範囲をプロットする。
【
図2】典型的な充填組成物によってハニカム構造物に施用されたプラグについて平均プラグ深さおよびプラグの深さ範囲をプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の様々な実施形態は、存在する場合は図面を参照して詳細に説明される。
【0015】
本明細書中で用いられるとき、用語「平均プラグ深さ」は、所定の領域の(例えばハニカム体の1つ以上の端面上の)全てのプラグの全深さ(または長さ)をその領域のプラグの数で割った値を指す。
【0016】
本明細書中で用いられるとき、用語「深さ範囲」は、所定の領域の(例えばハニカム体の1つ以上の端面上の)最も深い(または最も長い)プラグとその領域の最も浅い(または最も短い)プラグとの間の深さの差を指す。
【0017】
本明細書中で用いられるとき、用語「所定の断面サイズの溝」は、ほぼ同じ断面寸法を有するハニカム体の溝を指す。例えば、米国特許第6,696,132号明細書に記載されるようなACTセル形状を有するハニカム体について、所定の断面サイズの溝は、比較的大きな水力直径を有する集入口セル溝(その特許の
図3に14として示される)を指すかまたは比較的小さな水力直径を有する集出口セル溝(その特許の
図3に16として示される)を指すことができる。
【0018】
本明細書中で用いられるとき、用語「押し出し強度」は、所定の溝から所定のプラグを押し出すために必要とされる圧力(別記しない限り、バール(0.1Mpa)単位)を指す。プラグ押し出し強度は、プラグを頂部(すなわち、部品端面に最も近い面)または底部(すなわち、部品端面から最も遠い面)から押すことによって決定され得る。どちらの場合も、ロードセルを利用してピンをプラグ内に押し込むが、そこでピンの断面積は、塞がれるセルの断面の約70%であるのが最適である。頂部から押されるとき、道具0.2インチ(5.08ミリメートル)をプラグ内に押し込むために必要とされる力が記録される。底部から押されるとき、プラグを突破してそれを端面から除去するために必要とされる力が記録される。頂部から押すとき、道具は、3つのピンを備え、1つはプラグを押すためのもので、2つは位置合せのためのものである。底部から押すとき、セル壁が誘導し、押しピンだけが必要とされる。
【0019】
本明細書中で用いられるとき、用語D
10は、分布中の粒子の90%がそれより大きい粒径を有し、分布中の粒子の10%がそれより小さい粒径を有する粒径を指す。
【0020】
本明細書中で用いられるとき、用語D
90は、分布中の粒子の90%がそれより小さい粒径を有し、分布中の粒子の10%がそれより大きい粒径を有する粒径を指す。
【0021】
本明細書中で用いられるとき、用語D
50は、分布中の粒子の50%がそれより小さい粒径を有し、分布中の粒子の50%がそれより大きい粒径を有する粒径を指す。
【0022】
本明細書中で用いられるとき、用語「D係数」(D
f)=(D
50−D
10)/D
50である。
【0023】
本明細書中で用いられるとき、用語「D幅」(D
幅)=(D
90−D
10)/D
50である。
【0024】
本明細書に開示された実施形態には、複数の平行な溝を有するハニカム体に施用するための組成物、例えば複数の平行な溝を有するハニカム体の1つ以上の溝を塞ぐための組成物が含まれる。この組成物は、粒径分布を有する耐火性充填剤、有機結合剤、無機結合剤、および液状ビヒクルを含有する。組成物を施用してハニカム体の複数の溝を塞ぐとき、それから形成される複数のプラグが、所定の断面サイズの溝について、深さ範囲が平均プラグ深さの30%未満、例えば平均プラグ深さの25%未満、さらに例を挙げれば平均プラグ深さの20%未満、例えば平均プラグ深さの10%〜30%の間およびさらに、例えば平均プラグ深さの15%〜25%の間などであるような平均プラグ深さおよび深さ範囲を有するように耐火性充填剤、耐火性充填剤の粒径分布、有機結合剤、および無機結合剤が選択される。
【0025】
特定の典型的な実施形態において、平均プラグ深さは7ミリメートル未満、例えば6ミリメートル未満、さらに例を挙げれば5ミリメートル未満であり、例えば4〜7ミリメートル、さらに、例えば4〜6ミリメートル、さらにまた例を挙げれば4〜5ミリメートルなどを含む。このような実施形態において、プラグの深さの範囲は2.1ミリメートル未満、例えば1.8ミリメートル未満、さらに例を挙げれば1.5ミリメートル未満、さらに例を挙げれば1.2ミリメートル未満、およびさらに例を挙げれば1.0ミリメートル未満であり、例えば0.5〜2.1ミリメートル、さらに、例えば0.5〜1.5ミリメートル、さらに例を挙げれば0.5ミリメートル〜1.0ミリメートルなどを含む。
【0026】
本明細書に開示された実施形態は、先に開示された平均プラグ深さおよび深さ範囲のパラメーターを満たすプラグを可能にし、溝内の複数のプラグ全ての押し出し強度が、少なくとも10バール(1MPa)、例えば少なくとも15バール(1.5MPa)、さらに例を挙げれば少なくとも20バール(2MPa)、さらに例を挙げれば少なくとも25バール(2.5MPa)である。このようなプラグは、平均押し出し強度が少なくとも50バール(5MPa)、例えば少なくとも60バール(6MPa)、さらに例を挙げれば少なくとも70バール(7MPa)、さらにまた例を挙げれば少なくとも80バール(8MPa)であり得る。
【0027】
耐火性充填剤は、少なくとも1つの無機粉末を含有することができる。無機粉末は、例えば、セラミックの、すなわち、予備反応されるかまたはセラミック化された耐火性粉末を含有してもよい。他の実施形態において、粉末は、耐火性ガラス粉末、またはガラス−セラミック粉末であり得る。またさらに、他の実施形態において無機粉末バッチ混合物は、前述の耐火性粉末の2種以上の任意の組合せを含むことができる。典型的な耐火性粉末は、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミン酸カルシウム、ベータ−ユークリプタイト、およびベータ−ユウ輝石を含有してもよい。
【0028】
耐火性充填剤の粒径分布は、予め決められた明記した範囲内に含まれ得る。その点に関して、驚くべきことに、有機結合剤および無機結合剤の明記した組合せと併せて、耐火性充填剤の粒径分布を明記した範囲内に維持することによって、プラグの深さのばらつきの低減を可能にする充填組成物をもたらすことができることを出願人らは見出した。特に、有機結合剤および無機結合剤の明記した組合せと併せて、耐火性充填剤の粒径分布を明記した範囲内に維持することによって、ハニカム体の溝を得られた組成物で塞ぐことができ、溝内への組成物の流入はシネレシスのために制限されることを出願人らは見出した。組成物がさらに溝内に浸透するにつれて、流れの速度が低下して最終的に止まる。これによって、より緩慢に流れる溝内の充填組成物が、初期により速く流れる溝内の充填組成物に追いつくことができる。したがって、この現象は、プラグの深さのばらつきを低減する。
【0029】
したがって、特定の典型的な実施形態において、耐火性充填剤は、中央粒径(D
50)が少なくとも15マイクロメートル、例えば中央粒径(D
50)が15〜50マイクロメートル、さらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が30〜40マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が30〜35マイクロメートルである少なくとも1つの無機粉末を含有する。
【0030】
特定の典型的な実施形態において、有機粉末のD
10が少なくとも4マイクロメートル、例えば少なくとも6マイクロメートル、さらに例を挙げれば少なくとも8マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば少なくとも10マイクロメートルであり、例えば4〜16マイクロメートル、さらに、例えば8〜14マイクロメートル、およびさらに、例えば10〜12マイクロメートルである。
【0031】
特定の典型的な実施形態において、有機粉末のD
90が少なくとも55マイクロメートル、例えば少なくとも65マイクロメートル、さらに例を挙げれば少なくとも75マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば少なくとも85マイクロメートルであり、例えば55〜120マイクロメートル、さらに、例えば75〜110マイクロメートル、およびさらに、例えば85〜100マイクロメートルである。
【0032】
特定の典型的な実施形態において、有機粉末の、中央粒径(D
50)が15〜50マイクロメートル、さらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が20〜45マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が25〜40マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が30〜35マイクロメートルであり、D
10が4〜16マイクロメートル、さらに、例えば8〜14マイクロメートル、およびさらに、例えば10〜12マイクロメートルであり、およびD
90が55〜120マイクロメートル、さらに、例えば75〜110マイクロメートル、およびさらに、例えば85〜100マイクロメートルである。
【0033】
例えば、一組の典型的な実施形態において、耐火性充填剤は、中央粒径(D
50)が少なくとも15マイクロメートル、例えば中央粒径(D
50)が15〜50マイクロメートル、さらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が20〜45マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が25〜40マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が30〜35マイクロメートルであるチタン酸アルミニウム粉末を含む。一組の典型的な実施形態において、耐火性充填剤は、中央粒径(D
50)が少なくとも10マイクロメートル、例えば中央粒径(D
50)が15〜50マイクロメートル、さらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が15〜40マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が20〜30マイクロメートルであるコージエライト粉末を含む。一組の典型的な実施形態において、耐火性充填剤は、中央粒径(D
50)が少なくとも15マイクロメートル、例えば中央粒径(D
50)が15〜50マイクロメートル、さらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が25〜40マイクロメートル、およびさらに例を挙げれば中央粒径(D
50)が30〜35マイクロメートルであるムライト粉末を含む。
【0034】
組成物はさらに、無機結合剤からなる結合剤成分を含む。いくつかの実施形態において、無機結合剤は、例えばゲル化コロイドシリカなどのゲル化無機結合剤である。無機結合剤の他の実施形態は、ゲル化されていないコロイドシリカ、粉末化されたシリカ、または低温ガラスを含むことができる。実施形態によって、ゲル化無機結合剤の混入により、上に組成物が施用されるハニカム体の微小亀裂内への無機結合剤粒子の移動を最小にするかまたはさらに防止する場合もある。したがって、本明細書中で用いられるとき、用語「ゲル化無機結合剤」は、固体無機粒子が連続した流体相と共に相互結合網または母材を形成し、粘性半硬質材料をもたらす固体無機粒子のコロイド分散体を指す。さらに、相対的なレベルまたは度合のゲル化があり得ることは理解されるはずである。そのために、コロイド分散体は、粒径径100nm未満、例えば50nm未満、さらに例を挙げれば25nm未満、およびさらに例を挙げれば15nm未満のより小さな固体粒子を含むことができるので、本明細書で使用されるゲル化無機結合剤は、無機結合剤粒子の少なくとも一部が、その上にゲル化無機結合剤を含有する組成物が施用されたハニカム構造物の微小亀裂内に移動するのを防ぐために十分である分散された無機粒子の相互結合網を含む。
【0035】
ゲル化無機結合剤は、無機結合剤を粉末組成物に導入する前に予備ゲル化されてもよい。あるいは、他の実施形態において、無機結合剤は、開示された組成物の1つ以上の他の成分と組合せられた後にゲル化され得る。例えば、本開示の実施形態において、組成物の無機結合剤成分は、ゲル化されていないコロイドシリカを最初に含むことができ、それはその後、粉末化されたバッチ組成物に混入された後にゲル化される。そのために、コロイド中の分散相無機粒子は大部分、コロイド中に存在している表面化学によって影響を及ぼされる可能性があり、それ故、実施形態においてコロイドのゲル化は、コロイド内の表面化学を変えることによって達成され得る。
【0036】
したがって、ゲル化されていないコロイドシリカはその後、1つ以上のゲル化剤を組成物に添加することによってゲル化され得る。実施形態において、コロイドシリカは、組成物のイオン濃度を増加させることによってゲル化されてもよい。他の実施形態において、コロイドシリカは、組成物のpHを変えることによってゲル化され得る。さらに別の実施形態は、イオン濃度を増加させることと組成物のpHを変えることの両方を含むことができる。ゲル化剤は、本明細書に記載されたゲル化無機結合剤を提供するために有効な任意の量において使用され得ることは理解されるはずである。
【0037】
開示された組成物のイオン濃度を増加させるように作用する典型的なゲル化剤、すなわち、イオン増加ゲル化剤には、1つ以上の水溶性塩が含まれる。そのために、適したゲル化剤である典型的な水溶性塩には、例えば塩化マグネシウム、または酢酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、例えば塩化カルシウムなどのカルシウム塩、またはさらに例えば塩化ナトリウムなどのナトリウム塩などが含まれる。またさらに、本明細書に記載の実施形態において、例えばMgおよびCaなどの2
+陽イオンを含む塩の使用は、比較的低い塩濃度において無機結合剤成分をゲル化するために特に有効であり得る。
【0038】
上記のように、コロイドシリカなどの無機結合剤はまた、組成物のpHを変えることによってゲル化され得る。そのために、開示された組成物のpHは、酸、塩基を含むpH調節ゲル化剤の使用によって、または酸と塩基との組合せによって増加または減少され得る。典型的なpH調節ゲル化剤は、限定されないが、塩酸、硫酸、および硝酸などの酸ゲル化剤である。さらに別の典型的な実施形態において、酸ゲル化剤は、例えばクエン酸、および酢酸などの有機酸を含めてもよい。塩基ゲル化剤を含む典型的なpH調節ゲル化剤には、限定されないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、およびトリエタノールアミン(以下、「TEA」)などが含まれる。
【0039】
実施形態に従って、塩または塩溶液の添加によって組成物のイオン濃度を増加させることにより、組成物の全体にわたっておよび特にイオン増加ゲル化剤が導入された領域においてまたはその付近での均一でない塩濃度のために均一でないゲル化をもたらし得る。これらの実施形態に従って、より均一な且つ制御されたゲル化は、1つ以上のイオン増加ゲル化剤と1つ以上のpH調節ゲル化剤との組合せによって達成されてもよい。例えば、組成物のイオン濃度を初期に、比較的長いゲル化時間を有する第1のpH範囲内で増加させることができる。次に、組成物のpHを、比較的短いゲル化時間を示す第2のpH範囲に調節することができる。したがって、いくつかのコロイドシリカ溶液は、pHの関数として最小ゲル化時間を示すので、pHの局所的な偏りは、実質的に均一でないゲル化を全く生じない。
【0040】
本開示の実施形態において、イオン増加ゲル化剤とpH調節ゲル化剤との1つの典型的な組合せは、比較的高いpHにおいて比較的高い安定性を有するコロイドシリカ溶液中の塩基および塩の両方としてTEAの使用を含む。典型的なコロイドシリカには、W.R.Grace&Companyから入手可能なLudox(登録商標)HS、AS、SK、PW50、およびPZ50などを含むことができ、塩を添加することによりイオン濃度を増加させることによっておよび/またはpHを変化させることによってゲル化することができる。この実施形態に従って、最初に、TEAをコロイドシリカに添加することができ、比較的安定なコロイドシリカ溶液を供給することができる。次に、溶液のpHは、例えばクエン酸などの酸を添加した後、完全な混合とゲルの形成とによって低下されてもよい。
【0041】
本明細書に開示された典型的な組成物はさらに、有機結合剤を含んでもよい。有機結合剤成分の添加はさらに、焼成の前に組成物の凝集および可塑性に寄与することができる。この改良された凝集および可塑性は、例えば、組成物を造形する能力を改良することができる。これは、組成物を利用して外皮コーティングを形成するときまたはハニカム構造体の選択された部分(例えば端部)を充填するときに有利であり得る。典型的な有機結合剤には、セルロース材料が含まれる。典型的なセルロース材料には、セルロースエーテル結合剤、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース誘導体、および/またはそれらの任意の組合せなどが含まれる。特に好ましい例には、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれる。好ましくは、有機結合剤は、無機粉末バッチ組成物の0.1重量パーセント〜5.0重量パーセントの範囲の量、またはさらに無機粉末バッチ組成物の0.5重量パーセント〜2.0重量パーセントの範囲の量の過剰添加として組成物中に存在し得る。
【0042】
流動性またはペースト状稠度を開示された組成物に与えるための典型的な液状ビヒクルは水であるが、他の液状ビヒクルを使用することができる。このために、液状ビヒクル成分の量は、最適な取扱適性およびバッチ混合物中の他の成分との相溶性をもたらすために変化し得る。いくつかの実施形態によって、液状ビヒクル含有量は、無機粉末バッチ組成物の15重量%〜60重量%の範囲の量の過剰添加として存在し、またはさらにいくつかの実施形態によって無機粉末バッチ組成物の20重量%〜50重量%の範囲であり得る。また、組成物中の液体成分を最小にすることによって、乾燥プロセスの間の組成物の乾燥収縮をさらに低減することができる。
【0043】
本明細書に開示された典型的な組成物は、任意選択により、例えば可塑剤、滑剤、界面活性剤、焼結助剤、レオロジー改質剤、チキソトロープ剤、分散助剤、または細孔形成剤などの1つ以上の加工助剤を含むことができる。充填組成物の調製に使用するための典型的な可塑剤はグリセリンである。典型的な滑剤は、炭化水素油またはタル油であり得る。典型的な市販の潤滑剤には、Peter Greven Fett−Chemieから入手可能なLiga GSおよびInnoveneから入手可能なDurasyn(登録商標)162炭化水素油などがある。市販のチキソトロープ剤は、Rheox,Inc.から入手可能なBenaqua 1000である。また、細孔形成剤は、得られたセラミック化組成物の所望の多孔度を生じるために任意選択により使用されてもよい。典型的且つ非限定的な細孔形成剤には、黒鉛、澱粉、ポリエチレンビード、および/または小麦粉などが含まれ得る。使用することができる典型的な分散助剤には、Elementisから入手可能なNuoSperse(登録商標)2000およびAir Products and Chemicals,Inc.から入手可能なZetaSperse(登録商標)1200などがある。
【0044】
開示された組成物のさらに他の実施形態において、コロイドシリカのゲル化は、さらなる改良から利益を得る場合があるレオロジー性質を有する組成物をもたらすことができる。例えば、組成物が使用目的のために濃すぎる場合があるかまたは低い固形分配合量を有する場合があり、乾燥する間に微小な孔の形成または収縮をもたらす場合がある。このようなレオロジーはいくつかの用途において望ましくまた有利であり得るが、上述したレオロジー改質剤の添加によって組成物のレオロジーをさらに制御することができる。そのために、いくつかの実施形態において、典型的なレオロジー改質剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)である。冷水および熱水の両方に可溶性のポリビニルアルコールを用いてもよい。ポリビニルアルコールを含む組成物は、コロイド粒子が、上に組成物が施用されるハニカム体の微小亀裂に移動しないようにしたまま比較的高い固形分配合量において比較的低い粘度を示すことができる。ポリビニルアルコールは、使用されるとき、ゲル化剤を添加する前に最初にコロイドシリカ、および任意選択によりセラミック化耐火性粉末と混合され得る。ポリビニルアルコールレオロジー改質剤を含む組成物は、ゲルの形成を可能にするが、組成物の全体にわたって完全な三次元ゲル化結合性を形成せず、比較的容易に流動するゲル化状態をもたらす。
【0045】
本明細書に開示された典型的な組成物を調製するために、上に記載された無機粉末バッチ混合物を有機結合剤と一緒に混合し、その後に、液状ビヒクルと無機結合剤成分とを混入することができる。上述のように、無機結合剤は、組成物中に導入される前または後のどちらかにゲル化され得る。無機結合剤が組成物への添加前にゲル化される場合、1つ以上のゲル化剤を例えばコロイドシリカなどの無機結合剤に添加することができる。あるいは、無機結合剤が粉末組成物への添加後にゲル化される場合、1つ以上のゲル化剤を組成物中に直接に導入することができる。また、いずれかの任意選択の加工助剤を、液体の添加の間または後に組成物中に導入することができる。しかしながら、上述したように、必要ならば例えばポリビニルアルコールなどのレオロジー改質剤を最初に、無機結合剤および任意選択により耐火性粉末と混合することができる。所望の成分が配合されると、組成物を十分に混合して、流動性ペースト状稠度を組成物に与えることができる。典型的な実施形態において、上に記載された混合をLittlefordミキサーまたはTurbulaミキサーを使用して行なうことができる。
【0046】
本明細書に開示された組成物は、形成されると、セル溝壁と境界を接する複数のセル溝を画定するハニカム体または構造物に施用され得る。典型的な実施形態において、基材の各々のセル壁の壁厚は、例えば、約0.002〜約0.010インチ(約51〜約254μm)の間であり得る。セル密度は、例えば、約100〜約900セル/平方インチ(cpsi)(約100〜約900セル/6.4516平方センチメートル)であり得る。特定の典型的な実施において、セルハニカム構造物は、ハニカム構造物に形成された略四角形断面の複数の平行なセル溝からなり得る。あるいは、矩形、円形、長い形、三角形、八角形、六角形、またはそれらの組合せなどの他の断面形状もハニカム構造物において使用されてもよい。本明細書中で用いられるとき、「ハニカム」は、その中に一般に反復パターンを有するセル壁から形成される長さ方向に延在するセルの連続構造物を指す。
【0047】
ハニカム体は、ハニカム体を形成するために適した任意の従来の材料から形成され得る。例えば、一実施形態において、ハニカム体は、可塑化セラミック形成組成物から形成され得る。典型的なセラミック形成組成物には、コージエライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニア、マグネシウム、安定化ジルコニア、ジルコニア安定化アルミナ、イットリウム安定化ジルコニア、カルシウム安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシウム安定化アルミナ、カルシウム安定化アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、ニオビア、セリア、バナジア、窒化物、炭化物、またはそれらの任意の組合せを形成するために慣例的に公知の組成物が含まれ得る。
【0048】
ハニカム体は、ハニカムモノリス体を形成するために適した任意の従来の方法によって形成することができる。例えば、一実施形態において可塑化セラミック形成バッチ組成物を例えば、押し出し、射出成形、スリップキャスティング、遠心注型、圧力注型、乾燥加圧等の任意の公知の従来のセラミック形成方法によって未焼成体に造形することができる。典型的に、セラミック前駆バッチ組成物は、例えば、上に記載されたセラミック組成物の1つ以上、液状ビヒクル、結合剤の他、例えば、界面活性剤、焼結助剤、可塑剤、潤滑剤、および/または細孔形成剤などの1つ以上の任意選択の加工助剤を形成し得る無機セラミック形成バッチ成分を含む。典型的な実施形態において、押し出しは、油圧ラム押し出しプレス、または二段階脱気一軸オーガー押し出し機、または集成ダイが排出端に取り付けられた二軸スクリューミキサーを使用して実施することができる。後者において、バッチ材料をダイに圧入するために十分な圧力を増加させるために適切なスクリュー要素が材料およびその他の作業条件に従って選択される。未焼成体は、形成されると、セラミック形成バッチ組成物をセラミック組成物に転化させるために有効な条件下で焼成され得る。ハニカム未焼成体を焼成するための最適な焼成条件は、少なくとも部分的には、ハニカム未焼成体を形成するために使用される特定のセラミック形成バッチ組成物に依存する。
【0049】
典型的な実施形態において、本明細書に開示された組成物は、壁面流フィルターを形成するために、ハニカム体の選択された溝を塞ぐための充填材料として使用することができる。例えば、多孔性セル溝壁と境界を接する複数のセル溝を有するハニカム体において、複数のセル溝の少なくとも一部がプラグを含むことができ、プラグは、本明細書に開示された組成物から形成される。いくつかの実施形態において、複数のセル溝の第1の部分は、入口セル溝を形成するために、下流出口端にまたはその付近においてそれぞれの溝壁に封止されたプラグを含むことができる。また、複数のセル溝の第2の部分は、出口セル溝を形成するために、上流入口端にまたはその付近においてそれぞれの溝壁に封止されたプラグを含むことができる。一方の端部だけが充填された他の形状、ならびに部分的に充填された形状(特定の充填されない溝を有する)もまた考えられる。
【0050】
他の実施形態において、開示された組成物は、ハニカム体または構造物の外周領域上に後で施用された表面コーティングまたは外皮を形成するのに使用するために適している。さらに他の実施形態において、開示された組成物は、2つ以上のハニカム体またはハニカム体のセグメントを一緒に接合するために、セグメントセメントとして施用され得る。
【0051】
組成物が本明細書に記載された方法でハニカム構造物に施用されると、組成物を任意選択により乾燥および/または焼成することができる。任意選択の乾燥工程は、組成物中に存在している場合がある一切の液状ビヒクルを少なくとも実質的に除去するために十分な温度および時間において組成物を最初に加熱する工程を含むことができる。本明細書中で用いられるとき、一切の液状ビヒクルを少なくとも実質的に除去することは、焼成前に組成物中に存在している液状ビヒクルの少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに少なくとも99.9%を除去することを包含する。液状ビヒクルを除去するために適した典型的な且つ非限定的な乾燥条件は、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、またはさらに少なくとも150℃の温度に組成物を加熱することを包含する。一実施形態において、液状ビヒクルを少なくとも実質的に除去するために有効な条件は、組成物を60℃〜120℃の範囲の温度に加熱することを含む。さらに、加熱は、例えば、熱空気乾燥、RFおよび/またはマイクロ波乾燥などの任意の慣例的に公知の方法によって提供され得る。
【0052】
任意選択の焼成工程は、組成物が施用されたハニカムを800℃超、900℃、およびさらに1000℃超のピーク温度に加熱することなど、組成物を一次結晶相セラミック組成物に転化させるために適した条件を包含することができる。加熱する間に約120℃/hrの傾斜率を使用することができ、その後に、約3時間の温度の間ピーク温度に保持し、その後に、約240℃/hrで冷却してもよい。
【0053】
本明細書に開示された組成物は、200℃未満の温度、例えば100℃未満の温度、さらに例を挙げれば50℃未満の温度において硬化する組成物、例えば「常温硬化」プラグを使用する充填プロセスにおいて使用され得る組成物を包含することができる。常温硬化充填において、プラグとハニカムの溝壁との間に封止を形成するために充填混合物の乾燥だけが必要とされる。常温硬化充填プロセスが使用されるとき、充填されたハニカムを35〜110℃の範囲の温度に加熱することが、乾燥を促進するために有用であり得る。いくつかの常温硬化充填プロセスにおいて、残留した一時的な結合剤副産物の除去および封止の強化など、プラグの最終的な固化は後続の加工工程の間に(例えば、触媒作用またはキャンニングの間に)または(例えば、排気装置においての)最初の使用の間に生じ得ることが予想される。
【0054】
例えば、常温硬化充填が使用されてもよい典型的な組成物には、少なくとも1つの無機粉末、例えばチタン酸アルミニウムおよびコージエライトの少なくとも1つ、中央粒径(D
50)が15〜50マイクロメートル、例えば30〜40マイクロメートルである無機粉末、およびゲル化無機結合剤、例えばゲル化コロイドシリカを含む耐火性充填剤を含む組成物などが含まれる。少なくとも1つのゲル化剤、例えば塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、および酢酸、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、ならびにトリエタノールアミン(以下、「TEA」)の少なくとも1つが、無機結合剤をゲル化するために回分処理の前に(例えば、ゲル化無機結合剤との予備混合として)または回分処理の間のどちらかで添加されてもよい。このような組成物は、200℃未満、例えば100℃未満、さらに、例えば50℃未満、例えば約25℃などの温度において多孔性セラミックハニカム体内で硬化するプラグを提供することができる(およびそれによって溝壁に永久的に封止され得る)。このようなプラグは各々、少なくとも10バール(1MPa)の押し出し強度を有することができる。
【0055】
本開示および添付された請求の範囲は、以下の実施例によってさらに明らかにされよう。
【実施例】
【0056】
本明細書に開示された実施形態による充填組成物(E1)ならびに比較用の充填組成物(C1)を調製してハニカム体の出口溝に施用したが、それは300セル/平方インチ(300セル/6.4516平方センチメートル)、厚さ12ミル(0.3ミリメートル)の壁、および非対称セル技術(ACT)を有するCorning(登録商標)DuraTrap(登録商標)チタン酸アルミニウム(AT)フィルターを製造するために使用されるものと同じハニカム体であり、このハニカム体は、約6.4インチ(16.256センチメートル)の直径および約5.5インチ(13.97センチメートル)の軸方向長さを有した。施用後に、プラグを乾燥させ、次に、約1,000℃において約3時間にわたって焼成した。充填組成物の成分を以下の表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
図1は、C1からハニカムに施用されたプラグの平均プラグ深さおよび深さ範囲を示し、
図2は、E1からハニカムに施用されたプラグの平均プラグ深さおよび深さ範囲を示す。
図1および2から見ることができるように、E1から施用されたプラグは、C1から施用されたプラグ(7.600ミリメートル)よりも短い平均プラグ深さ(5.811ミリメートル)を有した。また、E1から施用されたプラグは、C1から施用されたプラグ(2.46ミリメートル)よりも小さい深さ範囲(1.07ミリメートル)を有した。したがって、E1から施用されたプラグは、それらの平均プラグ深さの18.4%である深さ範囲を有したが、他方、C1から施用されたプラグは、それらの平均プラグ深さの32.4%である深さ範囲を有した。
【0059】
特にことわらない限り、本明細書に示されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実施されることを必要とすると解釈されないものとする。したがって、方法のクレームがその工程が続く順序を実際に記載しないかまたは工程が特定の順序に限定されなければならないことが特許請求の範囲または説明において特に具体的に記載されない場合、いかなる特定の順序も意味しないものとする。
【0060】
添付された請求の範囲に示される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、様々な改良形態および変形形態を成し得ることは当業者には明らかであろう。本開示の精神および本質を組込む開示された実施形態の改良形態、組合せ形態、部分的組合せ形態および変形形態を当業者は考えることができるので、本開示は、添付された請求の範囲内の全ておよびそれらの均等物を包含すると解釈されるべきである。
【国際調査報告】