特表2015-531861(P2015-531861A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-531861分布ファイバセンサ及びシステムのための2コア光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-531861(P2015-531861A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】分布ファイバセンサ及びシステムのための2コア光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20151009BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20151009BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20151009BHJP
   G01D 21/02 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
   G01D5/353 B
   G02B6/02 A
   G02B6/02 461
   G02B6/036
   G01D21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-526585(P2015-526585)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月6日
(86)【国際出願番号】US2013053228
(87)【国際公開番号】WO2014025614
(87)【国際公開日】20140213
(31)【優先権主張番号】61/681,402
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/658,991
(32)【優先日】2012年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】フーヴァー,ブレット ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,シェンピン
【テーマコード(参考)】
2F076
2F103
2H150
【Fターム(参考)】
2F076BA01
2F076BA14
2F076BB07
2F076BD06
2F076BD07
2F076BD17
2F103BA37
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB11
2F103EC09
2F103EC12
2F103FA02
2H150AB05
2H150AC57
2H150AD04
2H150AD12
2H150AD16
2H150AD20
2H150AD26
2H150AD36
2H150AE25
2H150AE26
2H150AH38
2H150AH50
(57)【要約】
ブリルアン分布ファイバセンサ用途及びシステムに用いるための2コア光ファイバが提供される。2コアファイバは第1及び第2のコアを有する。それぞれのコアは他方のコアに対して30MHzより大きいブリルアン周波数シフトを示すように構成される。さらに、それぞれのコアは他方のコアとは異なる温度係数及び歪係数を有する。コアは相互に少なくとも30MHzのブリルアン周波数シフトレベルを生じるように構成することができる。シフトレベルのこれらの差はコアのそれぞれの、材料組成、ドーピング濃度及び/または屈折率プロファイルの調節によって生じさせることができる。これらの光ファイバは、BOTDR及びBOTDAに基づくセンサシステム及び装置に用いることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバセンサにおいて、
第1のコア、第2のコア及び、前記コアを囲む、クラッド層を有する光ファイバ、
を備え、
前記コアのそれぞれが他方のコアに対して少なくとも30MHzのブリルアン周波数シフトを示すように構成される、
ことを特徴とするファイバセンサ。
【請求項2】
前記コアのそれぞれがさらに、
(i)他方のコアの屈折率プロファイルとは異なる屈折率プロファイル、及び/または
(ii)他方のコアのドーピング濃度とは異なるドーピング濃度、
を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項3】
前記コアのそれぞれが他方のコアに対して少なくとも80MHzのブリルアン周波数シフトを示すように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のファイバセンサ。
【請求項4】
(i)前記光ファイバが、さらに前記コアの少なくとも一方を囲むように構成された屈折率リングを有する、
(ii)前記クラッド層に対する前記コアの相対屈折率が約0.2%から2%の間にあるように、前記コアが構成される、及び/または
(iii)前記コアが、
(1)異なる組成、及び/または
(2)複数の動作波長において異なるモードフィールド径、
を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項5】
前記光ファイバが、
(i)500μm以下の半径を有する、及び/または
(ii)前記コア間のクロストークが−20dB/km以下であるように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項6】
前記コアのそれぞれにゲルマニウムがドープされていることを特徴とする請求項2に記載のファイバセンサ。
【請求項7】
前記光ファイバが、さらに前記コアの少なくとも一方を囲むように構成された屈折率リング及び、前記コアの前記少なくとも一方から前記屈折率リングを隔てるトレンチを有することを特徴とする請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項8】
前記クラッド層に対する前記コアの相対屈折率が約0.2%から2%の間にあり、前記コアの中心間の距離が少なくとも25μmであるように、前記コアが構成されることを特徴とする請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項9】
ブリルアン分布ファイバセンサシステムにおいて、
第1のコア及び第2のコアであって、それぞれが他方のコアに対して少なくとも30MHzのブリルアン周波数シフトを示すように構成されたコアを有する光ファイバ、
検査光を前記光ファイバに打ち込むように構成された少なくとも1つのポンプレーザ、及び
前記コアのそれぞれから前記検査光のブリルアン散乱成分を受け取り、前記受け取られた検査光に少なくともある程度基づいて前記コアのそれぞれのブリルアン周波数シフトを評価するように構成された受信器要素、
を備えることを特徴とするブリルアン分布ファイバセンサシステム。
【請求項10】
前記ファイバの前記コアのそれぞれ内に前記検査光を導くように構成された少なくとも1つのビームスプリッタ素子をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のブリルアン分布ファイバセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2012年8月9日に出願された、名称を「分布ファイバセンサ及びシステムのための2コア光ファイバ(TWO-CORE OPTICAL FIBERS FOR DISTRIBUTED、 FIBER SENSORS AND SYSTEMS)」とする、米国仮特許出願第61/681402号及び、2012年10月24日に出願された、名称を「分布ファイバセンサ及びシステムのための2コア光ファイバ(TWO-CORE OPTICAL FIBERS FOR DISTRIBUTED FIBER SENSORS AND SYSTEMS)」とする、米国特許出願第13/658991号への優先権を主張する。これらの特許出願の明細書はそれぞれの全体が本明細書に参照として含められる。
【技術分野】
【0002】
本開示は全般にはセンシングシステム及び方法に関し、特に、2コア光ファイバを用いる分布ブリルアンセンシングシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分布ブリルアンファイバセンサは、構造物健常性監視(SHM)、地盤工学、送配電線、石油及びガスのパイプライン、及び石油掘削を含むがこれらには限定されない、多くの用途に急速に採用されつつある。ブリルアン準拠センサ技術は、
(a)誘導ブリルアン散乱(すなわち、ブリルアン光時間ドメイン解析、またはBOTDA)、及び
(b)自発ブリルアン散乱(すなわち、ブリルアン光時間ドメイン反射率測定、またはBOTDR)、
の2つの方式で動作する。BOTDA方式及びBOTDR方式はいずれもブリルアン周波数シフトの、検査されるコンポーネントの温度及び/または歪への、線形依存性を利用する。
【0004】
分布ブリルアンファイバセンサの実施にともなう一問題は、ブリルアン周波数シフト(BFS)が歪及び温度のいずれにも感度を有することである。この効果は測定に不確定性をもたらす。特に、従来の手法は、検査されるコンポーネントの、観測されるBFSにかかわる歪及び/または温度の変化を分離抽出することができない。
【0005】
この問題に対処するために用いられる一手法は、隣り合わせて配置された、一方のファイバがいかなる歪効果からも絶縁されている、2本のファイバの使用である。絶縁されたファイバは温度の監視に用いることができ、他方のファイバは歪と温度のいずれの効果も測定するであろう。しかし、この手法は少なくとも2つのタイプの測定誤差を免れない。第1に、絶縁されたファイバは全くの無歪ではなく、この結果、温度にかかわる測定誤差が生じる。第2に、2本のファイバの入力位置から測定位置までの長さの差の結果、異なる2つの位置で測定することになり、さらなる測定誤差を生じさせる。
【0006】
別の2ファイバ手法においては、ブリルアン特性が異なる2本のファイバが温度及び歪のいずれをも検知するために用いられる。したがって、2本のファイバのBFSが測定される。2本のファイバの歪係数及び温度係数に基づいて温度及び歪のレベルが計算される。それにもかかわらず、この手法には、上述した第2のタイプにしたがう測定誤差、すなわち、2本のファイバの異なる位置における測定にともなう誤差が生じ得る。
【0007】
BFS関連測定誤差に対処するため、1ファイバ利用手法も試みられている。詳しくは、複数のブリルアンピークをもつファイバがセンシングファイバとして用いられる。この手法では、温度と歪を弁別するため、BFSピークの異なる依存性が用いられる。しかし、ファイバの複数のピークの評価に依存するこの方法では、空間分解能が劣り、センシング確度が制限され、センシング距離が短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、空間分解能が改善された、温度及び歪の正確な同時測定が可能なブリルアンファイバセンサシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態にしたがえば、ブリルアン分布ファイバセンサが提供される。ファイバセンサは、第1のコア、第2のコア及びコアを囲むクラッド層を有する光ファイバを含む。それぞれのコアは他方のコアに対して少なくとも30MHzのブリルアン周波数シフトを生じるように構成される。
【0010】
別の実施形態にしたがえば、分布ファイバセンサシステムが提供される。ファイバセンサシステムは第1及び第2のコアを有する光ファイバを備える。それぞれのコアは他方のコアに対して30MHzより大きいブリルアン周波数シフトを生じるように構成される。システムはさらに、光ファイバに検査光を打ち込むように構成された少なくとも1つのポンプレーザを備える。システムはさらに、それぞれのコアから検査光のブリルアン散乱成分を受け取り、受け取られた検査光に少なくともある程度基づいてそれぞれのコアのブリルアン周波数シフトを評価するように構成された受信器要素を備える。
【0011】
また別の実施形態にしたがえば、分布ファイバセンサシステムが提供される。ファイバセンサシステムは第1及び第2のコアを有する光ファイバを備える。それぞれのコアは他方のコアに対して少なくとも30MHzのブリルアン周波数シフトを生じるように構成される。システムはさらに、光ファイバにポンプ検査光を打ち込むように構成された少なくとも1つのポンプレーザ及び光ファイバにプローブ検査光を打ち込むように構成された少なくとも1つのプローブレーザを備える。システムはさらに、それぞれのコアからポンプ検査光及びプローブ検査光を受け取り、受け取られた検査光に少なくともある程度基づいてそれぞれのコアについてのブリルアン周波数シフトを評価するように構成された受信器要素を備える。
【0012】
さらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者には、その説明から容易に明らかであろうし、あるいは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を、また添付図面も、含む本明細書に説明されるように実施形態を実施することによって認められるであろう。
【0013】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも例示に過ぎず、特許請求の範囲の本質及び特質の理解への概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面はさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み込まれて本明細書の一部をなす。図面は1つ以上の実施形態を示し、記述とともに、様々な実施形態の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態にしたがう、2コア光ファイバの断面を示す。
図2A図2Aは、別の実施形態にしたがう、2コア光ファイバの一コアについてのステップ型屈折率プロファイルを示す。
図2B図2Bは、また別の実施形態にしたがう、2コア光ファイバの一コアについての分布屈折率プロファイルを示す。
図3A図3Aは、別の実施形態にしたがう、2コアファイバを用いるブリルアン光時間ドメイン反射率測定(BOTDR)ファイバセンサの略図を与える。
図3B図3Bは、また別の実施形態にしたがう、2コアファイバを用いるBOTDRファイバセンサの略図を与える。
図4A図4Aは、別の実施形態にしたがう、2コアファイバを用いるブリルアン光時間ドメイン解析(BOTDA)ファイバセンサの略図を与える。
図4B図4Bは、また別の実施形態にしたがう、2コアファイバを用いるBOTDAファイバセンサの略図を与える。
図5図5は、別の実施形態にしたがう、2コア光ファイバにおけるそれぞれのコアについての測定されたブリルアン周波数シフトのプロットを与える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
それらの例が添付図面に示されている、現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、全図面を通して、同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。
【0016】
2コア光ファイバ利用手法は上述した問題及びBFS関連測定誤差を軽減するために開発された。ファイバプロファイルを適切に設計し、いくつかの材料組成を適切に選び、及び/または2つのファイバのドーピング濃度を適切に選ぶことにより、それぞれが非常に異なるブリルアン特性を有するコアを構成することができる。そのような改変により、コア間に少なくとも30MHzのブリルアン周波数シフトを生じさせることができる。2つのファイバコア間で異なる温度係数及び歪係数の結果、2つのファイバコアのBFSを測定することで温度及び歪の同時測定が可能になる。最終結果は、空間分解能及びセンシング確度が高い、歪及び温度の同時測定を可能にする手法である。
【0017】
以降の議論においては、以下の、技術上普通に用いられている定義及び術語が採用される。
【0018】
屈折率プロファイル:屈折率プロファイルは、ファイバの選ばれたセグメントにわたる相対屈折率パーセント(Δ%)と(光ファイバの中心線から測定されている)光ファイバ半径rの間の関係である。
【0019】
相対屈折率パーセントΔ(%)またはΔ:術語Δは式:Δ(%)=100×(n−n)/2nで定義される。ここで、nはiで指定される屈折率プロファイルセグメントの最大屈折率であり、nは基準屈折率である。セグメント内の全ての点は、基準屈折率に対して測定された、付随する相対屈折率を有する。
【0020】
単一モードファイバにおいて、ファイバが受ける熱膨張及び変形の結果として、BFS,νは温度及び歪に依存する。この結果、BFS,νは温度及び歪により変化する。歪変化(Δε)及び温度変化(ΔT)の関数としてのBFSの変化(Δν)は式(1):
【0021】
【数1】
【0022】
と書くことができる。ここで、Kε及びKはそれぞれファイバの歪係数及び温度係数である。したがって、温度(または歪)が固定されれば、異なる位置における歪(または温度)を、対応する位置におけるBFSの変化,Δνを測定することで評価することができる。しかし、式(1)に示されるように、センシング位置において温度及び歪のいずれもが変化すれば、BFSから温度または歪を弁別することは不可能である。これは、BFSの変化,Δνが歪及び温度のいずれにも依存するからである。
【0023】
一実施形態にしたがえば、2コア光ファイバ10がブリルアン効果利用分布ファイバセンサのセンシングファイバとして用いられる。ファイバ10内のそれぞれのファイバコア20,30はブリルアンセンサの動作波長において単一モードにあるように構成される。さらに、それぞれのコア20,30は単一のBSFピークを有する。しかし、2つのファイバコア20,30は異なるブリルアン周波数シフトを有する。これらのシフトは2つのファイバコア20,30の、ファイバ屈折率プロファイル、材料組成及び/またはドーピング濃度を改変することで生じさせることができる。特に、それぞれのファイバコアの歪変化(Δε)及び温度変化(ΔT)に対する依存性はそれぞれ、式(2):
【0024】
【数2】
【0025】
及び、式(3):
【0026】
【数3】
【0027】
と書くことができる。ここで、Kεc1及びKc1はそれぞれファイバコア1(例えばコア20)の歪係数及び温度係数であり、Kεc2及びKc2はそれぞれファイバコア2(例えばコア30)の歪係数及び温度係数である。
【0028】
式(2)及び(3)を解くことにより、歪変化及び温度変化は下式(4):
【0029】
【数4】
【0030】
で与えられる。
【0031】
一実施形態にしたがえば、2コアファイバ(例えばファイバ10)は、
【0032】
とするように設計することができる。したがって、そのようなファイバでは行列方程式(4)について解が存在する。したがって、このファイバにより、2つのファイバコア(例えば、コア20,30)のBFSをモニタすることによって歪及び温度の同時測定値を得ることが可能である。
【0033】
図1に示されるように、半径14をもつ2コア光ファイバ10の断面が与えられる。ファイバ10は、コア20及び30の、2つのコア、及びコア20及び30を囲むクラッド層36を有する。2つのコア20及び30は光ファイバ10内において距離16によって隔てられる。コア20及び30はそれぞれ、半径28a及び38aを有する低屈折率リング28及び38によって囲むこともできる。さらに、コア20及び30は、それぞれのコアのブリルアン周波数シフトが他方のブリルアン周波数シフトと異なるように屈折率プロファイルを変えて設計される。2つのコア20及び30のブリルアン周波数シフト間の差の絶対値は少なくとも30MHzであることが好ましい。この差は少なくとも80MHzであることがさらに好ましい。差は100MHz以上であることがさらに一層好ましい。
【0034】
図2A及び2Bは、2コア光ファイバ10内のコア20,30について、相対屈折率パーセント,Δ対半径,rを示す。コア20及び30は単純なステップ型屈折率プロファイル(図2Aを見よ)または分布屈折率プロファイル(図2Bを見よ)を有することができる。低屈折率リング28,38は、コア20および30のいずれかまたは両者における光閉じ込めを強めるため、クラッド層36内に配置することもできる。コア20,30の最大屈折率はクラッド層36の最大屈折率より大きい。クラッド層に対するコアの相対屈折率,Δは0.2%より大きいことが好ましい。相対屈折率,Δは0.3%より大きく、例えば、0.3%から2%の間であることがさらに好ましい。
【0035】
(コア20及び30についての)コア半径24及び34は3μmから10μmの範囲で選ばれる。これにより、コア20及び30が動作波長、例えば1550nmにおいて単一モードにあることが保証される。低屈折率リング28,38は、−0.7%から−0.1%の範囲にある相対屈折率,Δ、及び1μmから6μmの範囲にある幅28w、38wを有する。この低屈折率「トレンチ」はコア20及び/または30の外直径から距離28d,38dだけオフセットさせることができる。オフセットは0から5μmの間であることが好ましい。
【0036】
2つのコア20と30の間の距離16は、コア間のクロストークを最小限に抑えるため、25μmより大きい。距離26は30μmより大きいことがさらに好ましい。距離16は40μmをこえることがさらに一層好ましい。ファイバ10の直径は1000μm以下(すなわち、半径14が500μm以下)とすることができる。ファイバ10の直径は200μm以下(すなわち、半径14が100μm以下)であることが好ましい。ファイバ10の直径は150μm以下であることがさらに好ましい。例えば、ファイバ10の直径は125μmに設定することができる。
【0037】
実用センシング用途に対し、良好なシステム性能を保証するため、2つの隣り合うコア(例えばコア20及び30)の間の低クロストークが保証されることが望ましい。クロストークは−20dB/km以下とすることができる。クロストークは−30dB/kmより小さいことが好ましい。クロストークは−35dB/kmより小さいことがさらに好ましい。クロストークは−40dB/kmより小さいことがさらに一層好ましい。
【0038】
一実施形態にしたがう2コアファイバ10は2つのコア20及び30の光学特性及び音響特性を計算することで設計することができる。光学場及び縦音響場は同様のタイプのスカラー型波動方程式によって支配される。したがって、基本光学モード及び音響モードについて、方位角変化を含めずに、同じ形式で式(5):
【0039】
【数5】
【0040】
及び、式(6):
【0041】
【数6】
【0042】
を書くことができる。ここで、添字oは光学場を表し、添字aは音響場を表し、rはファイバ10の半径rに対応する。光学モードに対し、f(r)は光学場分布であり、n(r)は屈折率を径方向位置の関数として表し、kは、2π/λによって光の波長λと連関する、光波の波数である。音響モードに対し、f(r)は光学場分布であり、n(r)は屈折率を径方向位置,rの関数として表し、kは音響波の波数である。さらに、noeff及びnaeffはそれぞれ、光学実効屈折率及び縦音響実効屈折率である。
【0043】
音響屈折率は式(7):
【0044】
【数7】
【0045】
及び、式(8):
【0046】
【数8】
【0047】
によって定められる。ここで、λ'は音響波長である。式(7)において、Vcladはクラッド層内の縦音響速度であり、V(r)は縦音響速度を径方向位置,rの関数として表す。さらに、縦音響実効屈折率,naeffは下式(8a):
【0048】
【数8a】
【0049】
により、実効縦速度Veff及びクラッド層内の縦音響速度Vcladに関係付けられる。
【0050】
実際上(光学)屈折率プロファイル,n(r)は光学デルタプロファイル(光学屈折率デルタプロファイル),Δで表されることが多い。同様に、それぞれの光学屈折率プロファイル,n(r)が、縦音響場の音響挙動を表す、対応する音響デルタプロファイル,n(r)とも関連付けられるように、音響屈折率に対してデルタ(相対屈折率),Δを定義することが可能である。光波及び音響波に対する屈折率定義を用いれば、光学デルタプロファイル,Δ及び音響デルタプロファイル,Δはそれぞれ、式(9):
【0051】
【数9】
【0052】
及び、式(10):
【0053】
【数10】
【0054】
を用いて表すことができる。ここで、添字oは光波を表し、添字aは音響波を表し、添字cはクラッド層に対する屈折率を指す。
【0055】
Ge及びFがドープされたシリカガラスの光学屈折率,n(wGe,w)は、Ge及びFのドーピング濃度の関数として、式(11):
【0056】
【数11】
【0057】
で表される。ここで、wGeはGeOドーパントのモル%であり、wはFドーパントのモル%である。GeOドーパントは屈折率を純シリカより高めるに寄与し、Fドーパンとは屈折率を純シリカより低めるに寄与する。
【0058】
同様に、音響屈折率,n(wGe,w)へのGeドーピング及びFドーピングの役割は、式(12):
【0059】
【数12】
【0060】
で表すことができる。したがって、式(11)及び(12)はGeドーパントがファイバ10のコア20及び30において光学屈折率及び音響屈折率のいずれも高めることを示す。例えば、この効果を生じさせるため、1〜10モル%のGeOをコア20及び30にドープすることができる。他方で、Fドーパントは光学屈折率を低めるが、音響屈折率は高める。
【0061】
所与のドーパントプロファイルに対し、導波光学モードの実効屈折率noeff及び導波音響モードの実効縦速度Veffは式(5)から(8a)を解くことによって得ることができる。実効縦音響屈折率naeffと実効縦速度Veffの間の関係は先に説明してある。したがって、ブリルアン周波数シフト,νは式(13):
【0062】
【数13】
【0063】
によって計算される。
【0064】
5つの設計例における2コアファイバ10についての様々なモデルパラメータの概略を下の表1に示してある。これらの2つの2コアファイバ設計例について、上で論じた式を用いてブリルアン周波数シフト値を計算し、表1に挙げてある。例1は、それぞれがステップ型屈折率(例えば、図2Aを見よ)の2つのコアを有し、コア間隔が50μmである。2つのコア(コア1及び2)にはそれぞれ3.41モル%及び4.6モル%のGeOがドープされている。いずれのコアも1550nmにおいて単一モードである。コア1及び2に対するモードフィールド径(MFD)はそれぞれ10.3μm及び9.2μmである。これらのコアに対するブリルアン周波数シフトの差は、72.5MHzである。
【0065】
例2において、コア1は例1のコア1と同じである。しかし、例2のコア2はより高い5.5モル%のGeOドーピングレベルを有する。この結果、これらのコアの間のブリルアン周波数シフトの差は111.8MHzであり、例1で評価された差より大きい。例2においてはコア間のコアデルタ差(すなわち、相対屈折率の差)が大きくなっているため、コアをより近づけて配置することができる。
【0066】
例3及び4においてシミュレートされている2コアファイバは分布屈折率プロファイル(例えば、図2を見よ)を有する。分布屈折率設計により、MFDは同じコアデルタレベルに対して大きくなっている。しかし、これらの2コアファイバ設計に対して、ブリルアン周波数シフトは小さくなっている。
【0067】
表1の例5に概略が示される2コアファイバは、例1で示されたファイバのコアと同等のステップ型屈折率プロファイルを有する。しかし、例5の2コアファイバはコアを被包する低屈折率リング28,28もクラッド層に有する。低屈折率リングは光閉じ込めを改善し、よって曲げ損失を低減する。さらに、コアをファイバ内でさらに近づけて配置することが可能になる。例5において、コア間隔は40μmまで短縮されている。最後に、全ての例においてコア間のブリルアン周波数シフトの差が少なくとも30MHzであることに留意すべきである。
【0068】
【表1】
【0069】
上述した2コア光ファイバは、温度効果と歪効果の同時測定の目的のための様々なブリルアンファイバセンサシステムに用いることができる。図3A,3B,4A及び4Bに構成例が示されている。そのような実施形態の1つが、図3Aに示されるような、BOTDRファイバセンサシステム100aである。システム100aは2つのコア120及び130を有する2コアファイバ110及びレーザ116(例えば、ポンプ光レーザ)を備える。レーザ116はポンプ光をビームスプリッタ114に打ち込み、よって入射光は2本のビームに分割される。2本の分割されたビームは次いでミラー112(例えば、マジックミラー)を通してファイバ110の一端に、さらに詳しくは、コア120内及び130内に、導かれる。コア120内及び130内からのブリルアン散乱光は入射光とは逆の方向からミラー112に入射し、次いで光検出器要素118(または、コア120及び130に付随する光検出器要素118の対)によって検出される。光検出器要素118はブリルアン散乱されたビームに信号処理を施し、解析して、コア120及び130にともなうブリルアン周波数シフトを決定する。
【0070】
別の実施形態において、図3Bは、図3Aに示されるシステム100aと同様の態様で動作する、BOTDRファイバセンサシステム100bを示す。図3Bに示されるように、レーザ116からのポンプ光はミラー112(例えば、マジックミラー)を通してファイバ110の一端からコア120に打ち込まれる。コア120と130はファイバ110の他端において別のミラー,ミラー112aによって結合される。あるいは、ミラー112aは既知の他のタイプの外部ループデバイスで置き換えることができる。したがって、レーザ116からの光はコア120を通って進み、次いでループして、コア130を通って進む。コア120及び130の両者内からのブリルアン散乱光はコア120を通って戻り、ミラー112に入射し、次いで光検出器要素118によって検出される。コア130を通って進む光はミラー112に入射しないことに注意されたい。光検出器要素118は次いでブリルアン散乱されたビームに信号処理を施し、解析して、コア120及び130にともなうブリルアン周波数シフトを決定する。
【0071】
別の実施形態において、図4AにBOTDAファイバセンサシステム200aが示されている。ここでは、レーザ116aからのプローブ光がミラー112(例えばマジックミラー)を通してファイバ110の一端からファイバコア及び130のいずれにも打ち込まれる。同時に、レーザ116bからのポンプ光がファイバ10の他端からファイバコア120及び130のいずれにも打ち込まれる。図4Aに示されるように、レーザ116a及び116bからの光はビームスプリッタ素子114によってコア120及び130に対応する2本のビームに分割される。これらの分割されたビームは次いでファイバ110の両端からコア120及び130に導き入れられる。コア120内及び130内を透過した光は次いでミラー112に当たって反射され、光検出器要素118(または、コア120及び130に対応する光検出器要素118の対)がビームを検出するために用いられる。
【0072】
また別の実施形態がBOTDAファイバセンサシステム200bについて図4Bに示される。レーザ116a及び116bからのプローブ光がそれぞれ、ミラー112(例えば、マジックミラー)を通して、ファイバ110の一端からファイバコア120及び130のいずれにも打ち込まれる。さらに詳しくは、レーザ116aからコア130を通って送られたプローブ光はファイバ110の他端から出て、ミラー素子112aによって反射され、コア130を通って戻る。同様に、レーザ116bからコア130を通って送られたポンプ光はファイバ110の他端から出て、反射されてコア120を通って戻る。コア120及び130内を送られた光はコア120を通って戻り、次いでミラー112に当たって反射されて、構成100a,100b及び200aと同様に、光検出器要素118が反射されたビームを検出するために用いられる。この場合も、コア130を通って進んでいる光はミラー112に入射しないことに注意されたい。光検出器要素118はデータを解析して、コア120及び130にともなうブリルアン周波数シフトを決定する。
【0073】
以下で表2に概略が示されているように、それぞれの半径の測定値が4.65μmの2つのコアをもち、ファイバ直径が125μmの、2コアファイバ10を作製した。いずれのコアもステップ型屈折率プロファイル(例えば、図2Aを見よ)を有し、コア間隔の測定値は55.5μmであった。2つのコア1及び2にはそれぞれ5.0モル%及び3.4モル%のGeOをドープした。これらのコアについてMFDの計算値はそれぞれ9.3μm及び10.4μmであった。コア1及び2についてブリルアン周波数シフトの測定値はそれぞれ10.73GHz及び10.85GHzであった。図5は、特に、これらの周波数シフトの源泉を示す、(表2に挙げられたような)ファイバ10のそれぞれのコアについてのブリルアンスペクトルを示す。したがって、この2コアファイバについての測定されたBFSの変化,Δνは、118MHzである(図5も見よ)。さらに、BFSの変化,Δνの測定された118MHzの変化は、同様の構造につくられた、例2及び例5のそれぞれについての計算値、111.8MHz及び111.9MHzと同等である、
【0074】
【表2】
【0075】
すなわち、2コアファイバ手法は、BOTDA方式及びBOTDR方式のいずれにおいても歪及び温度の同時測定の確度を改善するために用いることができる。利点のなかでもとりわけ、2コアファイバ手法では分布ブリルアンファイバセンサの設置費用の低減が期待される。さらに、当業者には、特許請求の範囲の精神及び範囲を逸脱することなく様々な改変及び変形がなされ得ることが明らかであろう。
【符号の説明】
【0076】
10,110 2コア光ファイバ
14 光ファイバ半径
16 コア間距離
20,30,120,130 ファイバコア
24,34 コア半径
28,38 低屈折率リング
28a,38a 低屈折率リング半径
28d.38d 低屈折率リングオフセット距離
28w,38w 低屈折率リング幅
36 クラッド層
100a,100b BOTDRファイバセンサシステム
200a,200b BOTDAファイバセンサシステム
112,112a ミラー
114 ビームスプリッタ
116,116a,116b レーザ
118 光検出器要素
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】