(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532004(P2015-532004A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】フレキシブルガラス基板の処理
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20151009BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20151009BHJP
C03C 27/10 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/12 B
C03C27/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-528515(P2015-528515)
(86)(22)【出願日】2013年8月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月15日
(86)【国際出願番号】US2013054473
(87)【国際公開番号】WO2014031372
(87)【国際公開日】20140227
(31)【優先権主張番号】61/691,904
(32)【優先日】2012年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー,シーン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マンレイ,ロバート ジョージ
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061BA03
4G061CA02
4G061CB13
4G061CC03
(57)【要約】
フレキシブルガラス基板を処理する方法が提供される。この方法は、エネルギー入力を受けると構造変化を起こす無機結合層を用いてキャリア基板に結合された、フレキシブルガラス基板を含む、基板積層体を提供するステップを含む。構造変化を開始させるために、無機結合層にエネルギー入力が提供される。この構造変化は、フレキシブルガラス基板をキャリア基板から分離させるために、無機結合層の結合強度を低下させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルガラス基板を処理する方法であって、
エネルギー入力を受けると構造変化を起こす無機結合層を用いてキャリア基板に結合された、フレキシブルガラス基板を含む、基板積層体を提供するステップ、および、
前記フレキシブルガラス基板を前記キャリア基板から分離させるために前記無機結合層の結合強度を低下させる前記構造変化を開始させるよう、前記無機結合層に前記エネルギー入力を提供するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
フレキシブルガラス基板を処理する方法であって、
ガラス支持表面を有するキャリア基板を提供するステップ、
第1の幅広面および第2の幅広面を有する、前記フレキシブルガラス基板を提供するステップ、
前記フレキシブルガラス基板の前記第1の幅広面を前記キャリア基板の前記ガラス支持表面に、無機結合層を用いて結合させるステップ、および、
前記フレキシブルガラス基板を前記キャリア基板から取り外すために、前記無機結合層の構造を変化させて前記フレキシブルガラス基板と前記キャリア基板との間の結合強度を低下させるステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記無機結合層の前記構造を変化させて前記フレキシブルガラス基板と前記キャリア基板との間の前記結合強度を低下させるために、前記無機結合層にエネルギー入力を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー入力が、前記無機結合層に少なくとも250℃までの加熱をもたらす、熱エネルギーまたは光エネルギーであることを特徴とする請求項1または3記載の方法。
【請求項5】
前記無機結合層が、レーザまたはフラッシュランプを使用して局所的に加熱されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記無機結合層が、前記フレキシブルガラス基板の外周に沿って位置付けられた無機結合材料を含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記構造変化が、結晶化、前記無機結合層の空隙率の増加、または前記無機結合層の微小破壊の増加、を含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記無機結合層に前記エネルギー入力を提供した後に、前記フレキシブルガラス基板を前記キャリア基板から取り外すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1または3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記結合材料が、ガラス、ガラスセラミック、セラミック、炭素、およびシリコンのうちの1以上を含むことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記エネルギー入力が熱エネルギーまたは光エネルギーであり、かつ前記結合材料を、前記結合強度を低下させることなく少なくとも250℃の温度まで加熱するステップを含むことを特徴とする請求項1または3から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
基板積層体であって、
ガラス支持表面を有するキャリア基板、
前記キャリア基板の前記ガラス支持表面によって支持される、フレキシブルガラス基板、および、
前記フレキシブルガラス基板を前記キャリア基板に結合する無機結合層であって、前記フレキシブルガラス基板を前記キャリア基板から取り外すために、構造変化して前記フレキシブルガラス基板と前記キャリア基板との間の結合強度を低下させる結合材料を含む、無機結合層、
を備えていることを特徴とする基板積層体。
【請求項12】
前記結合材料が、ガラス、ガラスセラミック、およびセラミックのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項11記載の基板積層体。
【請求項13】
前記構造変化が、結晶化、前記無機結合層の空隙率の増加、または前記無機結合層の微小破壊の増加、を含むことを特徴とする請求項11または12記載の基板積層体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、その内容が引用されその全体が参照することにより本書に組み込まれる、2012年8月22日に出願された米国仮特許出願第61/691904号の優先権の利益を米国特許法第119条の下で主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、キャリア基板上の薄型基板を処理する装置および方法に関し、より具体的にはキャリア基板上のフレキシブルガラスの薄型基板に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、PV、OLED、LCD、タッチセンサ、フレキシブルエレクトロニクス、およびパターン形成薄膜トランジスタ(TFT)用途に関連するフレキシブル電子装置では、フレキシブルプラスチックフィルムが一般に使用されている。
【0004】
フレキシブルガラス基板には、フレキシブルプラスチック技術を上回るいくつかの技術的利点がある。1つの技術的利点は、OLEDディスプレイ、OLED照明、および有機太陽電池デバイスにおける主な劣化メカニズムである水分または空気のバリアとして働く、ガラスの能力である。第2の利点は、パッケージ基板の1以上の層の削減または排除による、パッケージ全体のサイズ(厚さ)および重量を減少させるその可能性にある。フレキシブルガラス基板の他の利点は、光の透過、寸法安定性、熱的能力、および表面品質における利益を含む。
【0005】
より薄い/フレキシブルガラス基板(厚さ0.3mm未満)に対する需要は電子ディスプレイ産業内に及んでいるため、パネル製造業者は、より薄い/フレキシブルガラス基板の取扱いおよび適合に関するいくつかの課題に直面した。1つのオプションは、より厚いガラスのシートを処理し、次いでこのパネルをエッチングまたは研磨して全体の正味厚さをより薄くするものである。これによれば、厚さ0.3mm以上の基板に基づく既存のパネル製造インフラの使用が可能であるが、生産量が潜在的に減少すると共にプロセス終了までの仕上げコストが追加される。第2のアプローチは、より薄い基板のために既存のパネルプロセスを設計し直すものである。プロセスでのガラスのロスは大きな障害になり、また支持されていないフレキシブルガラス基板に基づくシート・トゥ・シートプロセスにおいてもハンドリングロスを最小限に抑えるために大幅な資本が必要になる。第3のアプローチは、薄型フレキシブルガラス基板に対して、ロール・トゥ・ロール処理技術またはローラハンドリングに基づく技術を利用するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
望まれているのは、厚さ0.3mm以上の剛性の基板に基づく製造者の既存の資本のインフラを利用して、薄型のフレキシブルガラス基板、すなわち厚さ約0.3mm以下のガラスの処理を可能にする運搬アプローチである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構想は、熱エネルギーなどのエネルギー入力を受けると構造変化する無機結合層を用いて、薄型シート、例えばフレキシブルガラス基板を、キャリア基板に結合させるものである。この構造変化は、フレキシブルガラス基板をキャリア基板から分離させるために、無機結合層の結合強度を低下させる。
【0008】
本アプローチの1つの商業上の利点は、製造者が処理設備において、既存の設備投資を利用することができると同時に、例えばPV、OLED、LCD、タッチセンサ、フレキシブルエレクトロニクス、およびパターン形成薄膜トランジスタ(TFT)エレクトロニクスのための薄型ガラスシートの利益が得られることである。
【0009】
第1の態様によれば、フレキシブルガラス基板を処理する方法は、
エネルギー入力を受けると構造変化を起こす無機結合層を用いてキャリア基板に結合された、フレキシブルガラス基板を含む、基板積層体を提供するステップ、および、
フレキシブルガラス基板をキャリア基板から分離させるために無機結合層の結合強度を低下させる構造変化を開始させるよう、無機結合層にエネルギー入力を提供するステップ、
を含む。
【0010】
第2の態様によれば、エネルギー入力が熱エネルギーであり、無機結合層を少なくとも約250℃の温度まで加熱するステップを含む、態様1の方法が提供される。
【0011】
第3の態様によれば、エネルギー入力が、無機結合層に少なくとも約250℃までの加熱をもたらす光エネルギーである態様1または2の方法が提供される。
【0012】
第4の態様によれば、無機結合層が、フレキシブルガラス基板の外周に沿って位置付けられた無機結合材料を含む態様1から3のいずれか1つの方法が提供される。
【0013】
第5の態様によれば、無機結合層がレーザを使用して局所的に加熱される態様1から4のいずれか1つの方法が提供される。
【0014】
第6の態様によれば、構造変化が結晶化を含む態様1から5のいずれか1つの方法が提供される。
【0015】
第7の態様によれば、構造変化が無機結合層の空隙率の増加を含む態様1から6のいずれか1つの方法が提供される。
【0016】
第8の態様によれば、構造変化が無機結合層の微小破壊の増加を含む態様1から7のいずれか1つの方法が提供される。
【0017】
第9の態様によれば、無機結合層にエネルギー入力を提供した後に、フレキシブルガラス基板をキャリア基板から取り外すステップをさらに含む、態様1から8のいずれか1つの方法が提供される。
【0018】
第10の態様によれば、フレキシブルガラス基板に電気部品を適用するステップをさらに含む態様1から9のいずれか1つの方法が提供される。
【0019】
第11の態様によれば、フレキシブルガラス基板の厚さが約0.3mm以下である、態様1から10のいずれか1つの方法が提供される。
【0020】
第12の態様によれば、キャリア基板がガラスを含む態様1から11のいずれか1つの方法が提供される。
【0021】
第13の態様によれば、結合材料が、ガラス、ガラスセラミック、およびセラミックのうちの1以上を含む、態様1から12のいずれか1つの方法が提供される。
【0022】
第14の態様によれば、結合材料が炭素を含む態様1から13のいずれか1つの方法が提供される。
【0023】
第15の態様によれば、結合材料がシリコンを含む態様1から14のいずれか1つの方法が提供される。
【0024】
第16の態様によれば、結合材料の構造を変化させたときにフレキシブルガラス基板とキャリア基板とを少なくとも部分的に剥離するステップを含む、態様1から15のいずれか1つの方法が提供される。
【0025】
第17の態様によれば、入力エネルギーが熱エネルギーあり、かつ結合材料を、結合強度を低下させることなく少なくとも約250℃の温度まで加熱するステップを含む、態様1から16のいずれか1つの方法が提供される。
【0026】
第18の態様によれば、入力エネルギーが光エネルギーあり、かつ結合材料を、結合強度を低下させることなく少なくとも約250℃の温度まで加熱するステップを含む、態様1から17のいずれか1つの方法が提供される。
【0027】
第19の態様によれば、フレキシブルガラス基板を処理する方法は、
ガラス支持表面を有するキャリア基板を提供するステップ、
第1の幅広面および第2の幅広面を有する、フレキシブルガラス基板を提供するステップ、
フレキシブルガラス基板の第1の幅広面をキャリア基板のガラス支持表面に、無機結合層を用いて結合させるステップ、および、
フレキシブルガラス基板をキャリア基板から取り外すために、無機結合層の構造を変化させてフレキシブルガラス基板とキャリア基板との間の結合強度を低下させるステップ、
を含む。
【0028】
第20の態様によれば、無機結合層の構造を変化させてフレキシブルガラス基板とキャリア基板との間の結合強度を低下させるために、無機結合層にエネルギー入力を提供するステップを含む、態様19の方法が提供される。
【0029】
第21の態様によれば、エネルギー入力が熱エネルギーであり、無機結合層を少なくとも約250℃の温度まで加熱するステップを含む、態様20の方法が提供される。
【0030】
第22の態様によれば、エネルギー入力が光エネルギーであり、無機結合層を少なくとも約250℃の温度まで加熱するステップを含む、態様20または21の方法が提供される。
【0031】
第23の態様によれば、無機結合層がレーザを使用して局所的に加熱される態様19から22のいずれか1つの方法が提供される。
【0032】
第24の態様によれば、無機結合層がフラッシュランプを使用して加熱される態様19から23のいずれか1つの方法が提供される。
【0033】
第25の態様によれば、フレキシブルガラス基板の厚さが約0.3mm以下である、態様19から24のいずれか1つの方法が提供される。
【0034】
第26の態様によれば、基板積層体が、
ガラス支持表面を有するキャリア基板、
キャリア基板のガラス支持表面によって支持される、フレキシブルガラス基板、および、
フレキシブルガラス基板をキャリア基板に結合する無機結合層であって、フレキシブルガラス基板をキャリア基板から取り外すために、構造変化してフレキシブルガラス基板とキャリア基板との間の結合強度を低下させる結合材料を含む、無機結合層、
を備えている。
【0035】
第27の態様によれば、結合材料が炭素を含む態様26の基板積層体が提供される。
【0036】
第28の態様によれば、結合材料がシリコンを含む態様26または27の基板積層体が提供される。
【0037】
第29の態様によれば、結合材料が、ガラス、ガラスセラミック、およびセラミックのうちの少なくとも1つを含む、態様26の基板積層体が提供される。
【0038】
第30の態様によれば、結合材料がアモルファスシリコンを含む態様26の基板積層体が提供される。
【0039】
第31の態様によれば、構造変化が結晶化を含む態様26から30のいずれか1つの基板積層体が提供される。
【0040】
第32の態様によれば、フレキシブルガラス基板の厚さが約0.3mm以下である、態様26から31のいずれか1つの基板積層体が提供される。
【0041】
さらなる特徴および利点は以下の詳細な説明の中に明記され、ある程度は、その説明から当業者には容易に明らかになるであろうし、あるいは書かれた説明および添付の図面で例示するように、また添付の請求項において画成するように、本発明を実施することにより認識されるであろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、また請求される本発明の本質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを意図したものであることを理解されたい。
【0042】
添付の図面は、本発明の原理のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれかつその一部を構成する。図面は1以上の実施形態を示し、そしてその説明とともに、例を用いて本発明の原理および動作を説明する役割を果たす。本明細書および図面において開示される本発明の種々の特徴は、任意の組合せで、また全て組み合わせて、使用し得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】キャリア基板によって支持されたフレキシブルガラス基板を含む、基板積層体の一実施の形態の側面図
【
図3】
図1のフレキシブルガラス基板と基板積層体とを処理する方法の一実施の形態を示した図
【
図4】異なるサイズを有するフレキシブルガラス基板およびキャリア基板を含む、基板積層体の一実施の形態の上面図
【
図5】異なる形状を有するフレキシブルガラス基板およびキャリア基板を含む、基板積層体の別の実施形態の上面図
【
図6】キャリア基板のガラス支持表面上に適用された結合層を含む、基板積層体の一実施の形態の上面図
【
図7】キャリア基板のガラス支持表面上に適用された結合層を含む、基板積層体の別の実施形態の上面図
【
図8】キャリア基板のガラス支持表面上に適用された結合層を含む、基板積層体の別の実施形態の上面図
【
図9】結合層に対する室温でのX線回折データを示した図
【
図10】
図9の結合層に対する180℃でのX線回折データを示した図
【
図11】
図9の結合層に対する250℃でのX線回折データを示し、結合層の結晶化の増加を示している図
【
図13】アモルファスシリコン結合層を含む基板積層体を処理する方法の一実施の形態を示した図
【
図14A】フレキシブルガラス基板を通じて結合層に熱エネルギーを適用するプロセスを示した図
【
図14B】キャリア基板を通じて結合層に熱エネルギーを適用するプロセスを示した図
【
図15】アモルファスシリコン結合層を含む基板積層体を処理する方法の別の実施形態を示した図
【
図16】アモルファスシリコン結合層を含む基板積層体を処理する方法の別の実施形態を示した図
【
図17】キャリア基板のガラス支持表面上に適用された結合層を含む、基板積層体の一実施の形態の上面図
【
図18】複数の所望部分を形成するための、基板積層体の一実施の形態の上面図
【
図19】フレキシブルガラス基板をキャリア基板から解除する方法の一実施の形態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0044】
本書で説明する実施形態は、一般に、本書ではデバイス基板と称することもある、フレキシブルガラス基板の処理に関する。フレキシブルガラス基板は、キャリア基板とキャリア基板に無機結合層によって結合されたフレキシブルガラス基板とを概して含む、基板積層体の一部とすることができる。本書において「無機材料」という用語は、炭化水素ではない、あるいはその誘導体ではない、化合物を称する。以下でより詳細に説明するが、この結合層はエネルギー入力を受けると構造変化を起こす。結合層がエネルギー入力を受けると、エネルギー入力の前に比べてフレキシブルガラス基板をキャリア基板からより容易に分離させるために、この構造変化で結合層の結合強度を減少させ、あるいはそうでなくても変化させる。
【0045】
図1および2を参照すると、基板積層体10はキャリア基板12とフレキシブルガラス基板20とを含む。キャリア基板12は、ガラス支持表面14と、対向する支持表面16と、外縁18とを有する。フレキシブルガラス基板20は、第1の幅広面22と、対向する第2の幅広面24と、外縁26とを有する。フレキシブルガラス基板20の厚さ28は、限定するものではないが、例えば約0.01〜0.05mm、約0.05〜0.1mm、約0.1〜0.15mm、および約0.15〜0.3mmの厚さなど、約0.3mm以下の「極薄」でもよい。
【0046】
フレキシブルガラス基板20はその第1の幅広面22で、キャリア基板12のガラス支持表面14に結合層30を用いて結合される。結合層は、無機結合材料を含む無機結合層でもよい。キャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20が結合層30によって互いに結合されると、組み合わさった基板積層体10の厚さ25はフレキシブルガラス基板20単体の厚さに比べて厚さが厚い単一のガラス基板と同じになり得、これは既存のデバイス処理インフラでの使用に適し得る。例えば、デバイス処理インフラの処理設備が0.7mmシート用に設計され、かつフレキシブルガラス基板20の厚さ28が0.3mmである場合には、キャリア基板12の厚さ32は例えば結合層30の厚さに応じて0.4mm以下の何等かになるように選択され得る。
【0047】
キャリア基板12は、例としてガラス、ガラスセラミック、またはセラミックを含む、任意の適切な材料のものでもよく、また透明でもよいし、あるいは透明でなくてもよい。キャリア基板12は、ガラスから作製される場合、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩を含む、任意の適切な組成のものでもよく、またその最終的な用途に応じてアルカリ含有のものでもよいし、あるいはアルカリを含まないものでもよい。キャリア基板12の厚さ32は、約0.2から3mm、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.65、0.7、1.0、2.0、または3mmでもよく、また上記のようにフレキシブルガラス基板20の厚さ28次第になり得る。さらに、キャリア基板12は図示のように1つの層から作製されたものでもよいし、あるいは基板積層体10の一部を形成するように一緒に結合された、複数の層(複数の薄型シートを含む)から作製されたものでもよい。
【0048】
フレキシブルガラス基板20は、例としてガラス、ガラスセラミック、またはセラミックを含む、任意の適切な材料から形成され得、また透明でもよいし、あるいは透明でなくてもよい。フレキシブルガラス基板20は、ガラスから作製される場合、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩を含む、任意の適切な組成のものでもよく、またその最終的な用途に応じてアルカリ含有のものでもよいし、あるいはアルカリを含まないものでもよい。フレキシブルガラス基板20の厚さ28は、上記のように約0.2mm以下、約0.1mmなど、約0.3mm以下でもよい。本書で述べるように、フレキシブルガラス基板20はキャリア基板12と同じサイズおよび/または形状のものでもよいし、あるいは異なるサイズおよび/または形状のものでもよい。
【0049】
図3を参照すると、フレキシブルガラス基板20の処理の一部として解除可能な結合方法40が示されている。ステップ42ではキャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20が、例えばそのサイズ、厚さ、材料、および/または最終用途に基づいて選択される。キャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20が選択されると、ステップ44で、ガラス支持表面14とフレキシブルガラス基板20の第1の幅広面22との一方または両方に結合層30が適用され得る。結合層30の適用には、ノズルなどによる加圧塗布、展着、溶解、スピンキャスト法、吹付け、浸漬、真空または大気中での成膜などのうちの1以上など、任意の適切な方法を使用することができる。
【0050】
ステップ46では、フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12に結合層30を用いて、接着または他のやり方によって結合させる。フレキシブルガラス基板20とキャリア基板12との間で所望の結合強度を得るために、結合層30を形成する結合材料に対して加熱、冷却、乾燥、他の材料との混合、反応誘起、圧力印加などを行ってもよい。本書において「結合強度」とは、動的せん断強度、動的引き剥がし強度、静的せん断強度、静的引き剥がし強度、およびこれらの組合せのうちの任意の1以上を称する。引き剥がし強度とは、例えば、引き剥がしモードでフレキシブルガラス基板とキャリア基板とのうちの一方または両方に加えられる応力を用いて損傷を開始させる(静的)および/または特定の損傷速度を維持する(動的)のに必要な、単位幅当たりの力である。せん断強度とは、せん断モードでフレキシブルガラス基板とキャリア基板とのうちの一方または両方に加えられる応力を用いて損傷を開始させる(静的)および/または特定の損傷速度を維持する(動的)のに必要な、単位幅当たりの力である。結合強度の変化は結合層30への所望のエネルギー入力の前後に測定した結合強度の比較であるため、任意の適切な引き剥がし強度試験および/またはせん断強度試験を含む任意の適切な方法を用いて結合強度を判定することができる。
【0051】
ステップ48および50は、フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から取り外すことができるようにフレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から解除または剥離するステップに関する。フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から解除する前および/または解除した後に、フレキシブルガラス基板20は例えば、LCD、OLED、またはTFTエレクトロニクスなどのディスプレイ装置、あるいはタッチセンサまたは太陽電池などの他の電子装置の形成過程で処理され得る。例えば、電気部品またはカラーフィルタをフレキシブルガラス基板20の第2の幅広面24(
図1および2)に適用してもよい。さらに、フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から解除する前に、最終の電子部品をフレキシブルガラス基板20と組み立てまたは組み合わせてもよい。例えば、追加のフィルムまたはガラス基板をフレキシブルガラス基板20の表面に積層させてもよいし、あるいはフレックス回路またはICなどの電気部品を結合させてもよい。フレキシブルガラス基板が処理されると、結合層30の構造を変化させるエネルギー入力47をステップ48で結合層30に適用してもよい。以下で説明するように、この構造変化は結合層30の結合強度を減少させ、ステップ48でのエネルギー入力の前に比べてフレキシブルガラス基板20のキャリア基板12からの分離を促進する。ステップ50で、フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から取り外す。例えば、フレキシブルガラス基板20またはフレキシブルガラス基板20の一部分をキャリア基板12から引き剥がすことによって、この取り出しを達成することができる。引き剥がし力は、結合層30を通って延在する平面Pに対してある角度で、これらの基板の一方または両方に力Fを加えることによって生成される。
【0052】
キャリア基板およびフレキシブルガラスシートの選択
キャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20は、同じ材料、または類似材料、あるいは異なる材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、キャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20は、ガラス、ガラスセラミック、またはセラミック材料から形成される。キャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20は、同じ成形プロセス、または類似の成形プロセス、あるいは異なる成形プロセスを用いて形成され得る。例えばフュージョンプロセス(ダウンドロープロセスなど)は、フラットパネルディスプレイなどの様々な機器に使用可能な高品質の薄型ガラスシートを形成する。異なる材料が使用される場合、熱膨張係数の値は一致することが望ましいであろう。フュージョンプロセスで生成されるガラスシートの表面は、他の方法によって生成されるガラスシートに比べて優れた平坦度および平滑度を有する。このフュージョンプロセスは、米国特許第3,338,696号明細書および同第3,682,609号明細書に記載されている。他の適切なガラスシート形成方法としては、フロートプロセス、リドロープロセス、およびスロットドロー法が挙げられる。フレキシブルガラス基板20(および/またはキャリア基板12)は、その第1の幅広面22と第2の幅広面24とのうちの一方または両方に、一時的または恒久的な保護層、あるいは他の種類のコーティング層をさらに含み得る。
【0053】
キャリア基板12およびフレキシブルガラス基板20の寸法および/または形状の1以上は、略同じでもよいし、および/または異なっていてもよい。例えば
図4を簡単に参照すると、図示のキャリア基板12はフレキシブルガラス基板20と実質的に同じ形状を有しているが、フレキシブルガラス基板20よりも大きい1以上の寸法を有している。こういった配置によると、キャリア基板12の周縁エリア52をフレキシブルガラス基板20の外縁26の全体または少なくとも一部の周りで、フレキシブルガラス基板20を超えて外側に延在させることができる。別の例として
図5は、フレキシブルガラス基板20がキャリア基板12とは異なる形状であり異なる寸法を有している実施形態を示している。こういった配置によると、キャリア基板12の外縁18のいくつかの部分54のみを、フレキシブルガラス基板20の外縁26を超えて外側に延在させることができる。矩形と円形の形状が図示されているが、不規則な形状を含む任意の適切な形状を所望の積層体構成に応じて使用することができる。さらにキャリア基板12のエッジは、衝撃に耐えるように、またハンドリングを助けるように、丸くしたもの、仕上げしたもの、および/または研削したものでもよい。溝および/または孔などの表面特性を、キャリア基板12にさらに提供してもよい。溝、孔、および/または他の表面特性は、結合材料の位置付けおよび/または接着を、促進および/または抑制し得る。
【0054】
結合層の選択および適用
結合層30は、エネルギー入力を受けて構造変化を起こす1以上の結合材料を含み得る。例えば結合層30は無機材料を含み得、またガラス、ガラスセラミック、セラミック、および炭素含有材料などの材料を含み得る。いくつかの実施形態において結合層30は炭素から成り、炭素結合層を形成し得る。いくつかの実施形態において結合層30はシリコンから成り、シリコン結合層を形成し得る。種々の例示的な結合材料を以下で説明する。結合層30の適用には、ノズルなどによる加圧塗布、展着、溶解、スピンキャスト法、吹付け、浸漬、真空または大気中での成膜などのうちの1以上など、任意の適切な方法を使用することができる。
【0055】
結合層30は任意の適切なパターンおよび/または形状で適用してもよい。
図6を参照すると、結合層30はガラス支持表面14のエリアA
1上に適用され、これはフレキシブルガラス基板20によってカバーされるエリアA
2の実質的に全てなど、エリアA
2の少なくとも約50パーセントである。いくつかの実施形態において、A
1はA
2の約25パーセント以下など、A
2の約50パーセント未満でもよい。結合層30はフレキシブルガラス基板20の外周を越えて延在してもよいし、あるいはフレキシブルガラス基板20の外周の内側に含まれるものでもよい。
図7を参照すると、A
2の外縁の周りに延在するエリアA
3などの既定の経路に沿って結合層30を連続的に適用し(すなわち、連続した外周結合)、結合層30によって囲まれる結合されていない領域Rを残してもよい。
図8を参照すると、結合層30を、互いに間隔を空けた不連続の結合セグメント60から形成してもよい。
図8の実施形態において、不連続の結合セグメントは個別のラインの形を成している。円形、点、ランダム形状、および種々の形状の組合せなど、任意の他の適切な形状を使用してもよい。
【0056】
結合層の構造の変化
結合層30の構造を変化させる、または結合層30の構造を変化させるために使用される、エネルギー入力が結合層30に与えられる。この構造変化が結合層30の結合強度をエネルギー入力の前に比べて減少させ、フレキシブルガラス基板20のキャリア基板12からの分離を助ける。結合強度は、結合層30自体の凝集強度、および/または、結合層30および/またはフレキシブルガラス基板20とキャリア基板12との間の接着強度を低下させることによって、減少させることができる。エネルギー入力の種類は、結合層30に使用される結合材料に少なくともある程度依存する。結合層30の生成に使用される結合材料と入力エネルギーとの非限定的な例を以下に記載するが、これらは限定することを意図したものではない。最初のいくつかの例は、エネルギーの入力で結合層30を結晶化するものを示し、これで結合層30の結合強度を低下させる。こういった結合強度の低下は、フレキシブルガラス基板20を損傷することなくフレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から分離するのを助ける。
【実施例1】
【0057】
ビスマス亜鉛ホウ酸塩(BZB)ガラスを形成し、かつ平均粒子サイズ20μ未満まで粉砕した。BZBガラス粒子を350メッシュスクリーンに通し、かつヘリコーンミキサ(helicone mixer)内において100℃で、75質量%で結合剤と混合した。熱的に加熱されたペーストをピペットでキャリア基板上に分注し、ドクターブレードを用いてキャリア基板上に結合層を形成した。結合層を評価のために、おおよその厚さ25μm、75μm、および125μmで形成した。より小さいガラス粒子サイズを用いることによって、あるいは結合層を形成する成膜方法によって、厚さをより薄くすることができる。結合層を形成した後、以下の熱プロファイルを施した:
a.5℃/分で室温から200℃へ;
b.結合剤を焼き飛ばすために200℃で1時間保持;
c.5℃/分で200℃から400℃へ;
d.400℃で1時間保持;
e.冷却。
熱傾斜およびBZBガラス粒子の粒子サイズに少なくともある程度起因する、結合層の酸化ビスマス、ホウ酸ビスマス、酸化亜鉛、および酸化ホウ素の結晶化がX線回折により示された。この結晶化が、結合層によって与えられる結合強度を低下させる。
【実施例2】
【0058】
リン酸塩ガラス粉末を、粉砕および325メッシュスクリーンに通して準備した。次いでリン酸塩ガラス粉末を、83質量%でC18結合剤と混合した。加熱したペーストを、ドクターブレードを用いて基板に適用し、おおよその評価厚さ25μmおよび75μmを生成した。より小さいガラス粒子サイズを用いることによって、あるいは結合層を形成する成膜方法によって、厚さをより薄くすることができる。結合層を形成した後、以下の熱プロファイルを施した:
a.1℃/分で室温から200℃へ;
b.200℃で1時間保持;
c.1℃/分で200℃から400℃へ;
d.400℃で1時間保持;
e.冷却。
熱プロファイルおよびリン酸塩ガラス粒子の粒子サイズに少なくともある程度起因する、結合層の酸化バリウム、リン酸亜鉛、リン化亜鉛、酸化亜鉛、およびバリウム亜鉛リン化物(barium zinc phosphide)の結晶化がX線回折により示された。この結晶化が、結合層によって与えられる結合強度を低下させる。
【実施例3】
【0059】
スズフルオロリン酸塩ガラス(tin fluorophosphate glass)の小さい塊状片を、ニューヨーク州コーニング所在のコーニング社(Corning Incorporated)から市販されている厚さ0.7mmの2つのEAGLE2000(登録商標)ブランド(無アルカリのアルミノホウケイ酸塩ガラス)基板間に置いた。この積層体を、結合力を与えるために上におもりを設けてオーブン内に置いた。6つの異なる熱プロファイルを用いて、これらの基板の一時的な結合と剥離を判定した。より高温への昇温は、全て5℃/分で行った:
1.積層体を最高温度150℃まで加熱した。リン酸塩ガラスの溶解または結合の視認できる兆候は認められなかった;
2.積層体を最高温度160℃まで加熱した。リン酸塩ガラスの溶解または結合の視認できる兆候は認められなかった;
3.積層体を最高温度170℃まで加熱した。EAGLE2000−リン酸塩ガラス−EAGLE2000の基板間の結合が認められ、結合層に明らかな結晶化の兆候はなかった;
4.積層体を最高温度200℃まで加熱した。結合層に結晶化の兆候の可能性が認められた;
5.積層体を最高温度180℃まで加熱すると、EAGLE2000−リン酸塩ガラス−EAGLE2000の基板間の結合が認められ、結合層に視認できる結晶化の兆候はなかった。次いでこの積層体を最高温度400℃まで加熱すると、結合層の機械的性質および密度の変化と共に、結合層全体に亘って結晶化の兆候が認められた;
6.積層体を最高温度180℃まで加熱すると、EAGLE2000−リン酸塩ガラス−EAGLE2000の基板間の結合が認められ、結合層に視認できる結晶化の兆候はなかった。次いでこの積層体を最高温度250℃まで加熱すると、結晶化の兆候は認められたが、400℃で認められた結晶化よりも少なかった。その後EAGLE2000基板を分離させた。
【0060】
上の複数の例は、無機材料の結合層を用いてガラス基板を一緒に結合できることを示している。ある予定される製造ステップの後に、結合層をさらにより高い温度に加熱して、結合層に結晶化および/または他の構造変化を誘起することができる。この構造変化によって、結合層に構造変化が生じる前よりも、ガラス基板をより小さい力で分離させることができる
図9、10、および11は、より高温に暴露した実施例3の結合層30の結晶化を示している。
図9は形成時点でのリン酸塩ガラス結合層を示し、
図10は180℃でのリン酸塩ガラス結合層を示し、さらに
図11は250℃でのリン酸塩ガラス結合層を示す。
図9と10を比較すると、形成時および180℃でリン酸塩ガラスに若干の結晶化が存在していたことが分かる。
図11は、250℃でリン酸塩ガラスに大幅に高いレベルの結晶化が存在していることを示し、これが結合強度を低下させ、また分離力を加えた際のフレキシブルガラス基板の層間剥離を向上させる。これは、2つの基板が一緒に結合され、かつこれらが熱プロセスに耐え得ることを示している。フレキシブルガラス基板20をその後、結合層30の結晶化後に、キャリア基板12から剥離することができる。
【0061】
結合材料の最適化は、使用される具体的な機器製造プロセスに対して成されるべきであることに留意されたい。例えば製造温度が約250℃以上の、例えば約350℃以上、約250℃から約600℃の間などの、a−Siまたはp−SiTFTプロセスでは、意図されていない剥離のいかなる可能性も低減するために、剥離の際の熱暴露が250℃以上を上回る、例えば350℃以上、600℃以上などの結合材料が選択され得る。しかしながら、製造されるデバイスまたは他の構成要素に対する熱暴露は、いずれのデバイス電子機器または他の構成要素を損傷し得るものも下回るように選択されるべきである。いくつかの実施形態において結合層30の結合強度は、ターゲットの剥離熱暴露に至るまで実質的に減少しない、あるいはほとんど減少しない(例えば、約25パーセント未満、約10パーセント未満、約5パーセント未満、約1パーセントなどの、例えば約50パーセント未満)ものとし得る。従って剥離材料は、様々な機器の製造状況に対して最適化され得る。さらにエネルギー47の適用は、結合層30自体に対して局所的に行ってもよい。例えば結合層30がエネルギー47のほとんどを吸収し、それによりフレキシブル基板20、キャリア基板12、またはフレキシブル基板20上の任意のデバイス層への熱的影響がより低くなるように、エネルギー源を最適化することができる。
【実施例4】
【0062】
この例では、80モル%のSnOおよび20モル%のP
2O
5の、ガラス結合材料組成を使用した。複数のこのガラス片を、5cm×5cmの2つのEAGLE XG(登録商標)(ニューヨーク州コーニング所在のコーニング社から入手可能な無アルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス)サンプル間に置いた。その後、種々のサンプルに熱サイクルを施し、ガラスがEAGLE XGに結合する温度と、ABRガラスが結晶化する温度とを判定した。
【0063】
第1の試験として、EAGLE XGと結合材料との積層体を、上に375gのおもりを設けて炉内に置いた。炉を5℃/分で320℃まで加熱し、1時間保持し、その後冷却した。結合材料が溶解し、EAGLE XG基板に対して結合したことが認められた。結合材料は光学的に透明なままであった。ただし結合材料は、恐らく熱膨張の不一致に起因して、2つのEAGLE XG基板のうちの一方のみに接着した。実際の実装では、ディスプレイガラス基板にCTEが一致するように結合材料を調節してもよい。
【0064】
第2の試験として、上記の例に類似したサンプル積層体を組み立て、次いで350℃に至るまで熱サイクルを施した。これにより結合材料は結晶化し、かつ光学的に散乱するものとなった。この場合、結合材料はその中で凝集して機能しなくなり、EAGLE XGガラスは容易に分離した。
【0065】
結合材料を対象にしたこれらの試験は、無機接着剤をディスプレイガラスに接着させて、その後、より高温で結晶化を生じさせることが可能であることを明示している。1つの予測的な状況の例として、以下が考えられる:
A.デバイスを組み立てる温度を上回る温度で、ディスプレイガラス基板を処理用キャリアに結合させる(例えば320℃);
B.ディスプレイデバイスを、結合温度を下回る温度(<320℃)で組み立てる;
C.結合材料を結晶化させて、基板ガラスとキャリアとの間での接着を低減させる。例えばこれは、結合温度を超える温度(例えば350℃)で起こるであろう。製造されたデバイスがこの温度を耐えることができない場合、局所的なレーザ暴露または他の吸収エネルギーを用いて差別的に結合ガラスを加熱してもよい;
D.さらに、ディスプレイガラス基板を処理用キャリアから分離させる。
【実施例5】
【0066】
薄型のSiO
2結合層を、ダウコーニング(Dow Corning)から入手可能なFox−25などの水素シルセスキオキサン溶液を用いて形成した。積層体を製造するための手順は以下を含むものであった:
a.ガラスキャリア基板(EAGLE2000)として、5cm×5cm、厚さ0.7mmのものを使用した;
b.水素シルセスキオキサン溶液をキャリア基板上に300rpmで15秒間スピンキャスティングし結合層を形成した。より大規模な適用では、他の液体分注および膜形成方法が可能になり得る;
c.結合層が乾燥する前に、デバイス基板を結合層に適用した。デバイス基板はキャリア基板と同じ構成であった;
d.積層体を、100kPaの最大結合圧力を与えるために上におもりを設けて室温でホットプレート上に置いた;
e.ホットプレートを175℃に加熱して5〜15分間保持し、さらにその後250℃に至るまで5〜15分間加熱した;
f.ホットプレートの温度を175℃まで下げて5分間保持した。溶剤を取り去るために使用されるこの最初の熱サイクルが、結合強度に大きく影響を与えることが認められた。
【0067】
実施例5のプロセスは、キャリア基板とデバイス基板との間に高せん断強度の結合を生成することができる。2片のテープをキャリア基板とデバイス基板の夫々で使用してせん断力を加えることによりキャリア基板からデバイス基板を分離させることは、比較的困難であることが認められた。しかしながら、引き剥がし力を加えることによってキャリア基板からデバイス基板を分離するのは比較的容易であった。結合層を350℃超まで加熱することで、さらなる強度の低下も実現された。
【0068】
結合層の構造の変化は、結晶化以外の変化、例えば結合材料の容積変化を誘起するもの、結合材料の密度の変化を誘起するもの、結合層内での微小破壊を誘起するもの、結合材料内の凝集破壊を誘起するもの、および結合材料のエッチング感度を増加させるものなどをもたらし得る。1以上の上記の結合材料は結合層の結晶化および/または他の構造変化を示すが、他の材料を使用して結合層を形成することもできる。例えば炭素を含む結合層を使用すると、フレキシブルガラス基板およびキャリア基板を解除可能に結合することができる。
【実施例6】
【0069】
炭素を含む結合層を、フェノール樹脂溶液から形成した。このプロセスではフェノールホルムアルデヒドコポリマーを利用し、スピンキャスト法および熱硬化プロセスでサンプルを生成した。プロセスステップは以下を含むものであった:
a.樹脂70質量%およびDI水30質量%の希釈したフェノール樹脂溶液を、3krpmで30秒間キャリア基板上にスピンキャスティングし、厚さ10μm以下の結合層を得た;
b.結合層を備えたキャリア基板と、この上に置かれたデバイス基板とを、室温でホットプレート上に置いた。100kPaを超える最大結合圧力を生じさせるおもりを適用した;
c.ホットプレートを150℃まで加熱して約10分間保持し、その後室温まで冷却した;
d.積層体を炉内の空気中で400℃に至るまで1時間循環させ、その後冷却した。
【0070】
このプロセスを用いてデバイス基板をキャリア基板に結合させた。これはせん断引張試験に耐えたが、加熱後に残された炭素結合層と加熱中に結合層内に形成された空隙率の増加に少なくともある程度起因して、引き剥がし力が加えられると分離することがあった。デバイス基板およびキャリア基板の両方を、厚さ0.7mmのEAGLE2000(8cm×12cm)基板から形成した。
【0071】
実施例6により形成された積層体で、さらなるスクリーニング試験を行った。これらの積層体を500℃の炉内の空気中で1時間循環させ、結合層に激しい酸化を生じさせた。炭素結合層のこの酸化を利用して、デバイス基板をキャリア基板から剥離することができる。酸化された炭素は蒸発するため、炭素結合層を容易に取り除いてキャリア基板を再利用のために清浄にすることができる。
【0072】
フレキシブルガラス基板20とキャリア基板12との間の結合強度は、炭素ベースの結合層を酸化させることによって低下させることができる。実施例5などのように、酸素の存在下で結合層30を約500℃の温度まで加熱すると炭素を酸化させることができる。オゾンの存在下では、炭素結合層の酸化は500℃未満の温度で生じ得る。完全に組み立てられたデバイス基板を500℃に至るまで加熱することは、いくつかの実施形態では許容され得ないが、結合層を局所的にレーザで酸化を要する温度まで加熱してもよい。
【0073】
図12を参照すると、炭素ベース結合層30の吸収度が示されている。レーザを使用して、炭素ベース結合層30(または本書において説明される任意の1以上の結合材料)を局所的に加熱および酸化してもよい。レーザによる炭素ベース結合層30の局所的加熱を助けるために、炭素ベース結合層30を外周接合(
図7)として適用してもよく、炭素ベース結合層30がフレキシブルガラス基板20の外周に近接していることで、より炭素ベース結合層30に接近することができる。
図12は、上の実施例6において説明したフェノール樹脂から得られる炭素ベース結合層30に対する、吸収スペクトルを示している。図から分かるように、吸収度は可視およびUVスペクトルで増加して、熱酸化に有用な結合材料の加熱を可能にする。結合層にドーパントを加えて、吸収される放射の量を増加させてもよい。
【0074】
主に結合層30におけるエネルギー吸収をターゲットにしたレーザ加熱または他の加熱方法では、エネルギー源は結合層の吸収スペクトルに対して調整されるべきである。この場合レーザまたは他のエネルギーは、フレキシブルガラス基板20またはキャリア基板12を通して適用される。フレキシブルガラス基板20またはキャリア基板12は、このエネルギーを少なくとも部分的に透過することができる。エネルギーの大部分はフレキシブルガラス基板20またはキャリア基板12を通過し、次いで結合層30に吸収される。
図12に示されている炭素ベース膜のスペクトルの場合には、赤色、緑色、青色、またはUV光源を用いることによってこれを実現することができる。レーザ、LED、およびフラッシュランプが光源の例である。
図12のスペクトルは、700nm未満の波長で強い吸収を示している。典型的なガラスキャリアと炭素ベース膜の吸収を比較すると、400nmから550nmの範囲の露光波長が最も効率的になり得る。
【0075】
上で示したように、結合層30の形成に使用される結合材料は、特定のデバイス製造状況に基づいて選択され得る。SiTFT製造プロセスでの結合層30の適合性を明示するために、実施例4で説明したように結合されたEAGLE2000基板から形成された、8cm×12cmのキャリア基板とデバイス基板とで以下のステップを行った。各ステップの後、デバイス基板をキャリア基板から結合層の平面内において引っ張るよう試みることによって、せん断強度を試験した。全ての積層体サンプルがせん断応力試験に耐え、また最後の400℃の炉サイクルの後に、これらのサンプルをより容易に引き剥がすことができた。この評価を行うために、基板の結合されていない部分でせん断試験および引き剥がし試験を助けることができるよう、基板をずらした構成で一緒に結合した。スクリーニングプロセスは以下を含むものであった:
1.室温でDI水に浸漬、N
2ガンブロー乾燥、100℃のホットプレートで5分間完全に乾燥;
2.濃縮されたフォトレジスト現像液に5分間浸漬、DI水によりすすぎ、N
2ガンブロー乾燥、および100℃のホットプレートで5分間乾燥;
3.クロムエッチング液に5分間浸漬、DI水によりすすぎ、N
2ガンブロー乾燥、および100℃のホットプレートで5分間乾燥;
4.金エッチング液に5分間浸漬、DI水によりすすぎ、N
2ガンブロー乾燥、および100℃のホットプレートで5分間乾燥;
5.DI水に95〜100℃で15分間浸漬、N
2ガンブロー乾燥、および100℃のホットプレートで5分間乾燥;
6.炉サイクル、400℃で空気中に1時間保持。
【0076】
さらに他の実施形態では、結合層30をアモルファスシリコンから形成してもよく、また陽極接合を利用してフレキシブルガラス基板12をキャリア基板20に結合させてもよい。アモルファスシリコンは、フレキシブルガラス基板12およびキャリア基板20の一方または両方に成膜され得る。電気的バイアスを基板積層体(
図1)に亘って印加してもよく、その結果、結合層30とフレキシブルガラス基板12およびキャリア基板20との間の接触面に濃縮酸素層が生じ、これがシリカと反応してフレキシブルガラス基板12とキャリア基板20とを結合させるアモルファスシリカ結合層が形成され得る。結合のために、熱および/または圧力を使用してもよいし、または使用しなくてもよい。例えば印加される圧力がない場合には、圧力が印加される場合の温度(例えば、700℃超)よりも低い温度(例えば、500℃未満)で、フレキシブルガラス基板12をキャリア基板12にアモルファスシリコンを用いて結合することができる。いくつかの実施形態では、より高い温度でフレキシブルガラス基板20に生じる可能性のある任意の反りまたは他の潜在的な欠陥を、比較的低い温度を用いることで抑制することが望ましいであろう。
【0077】
上記と同様に、アモルファスシリコンから形成された結合層30の結合強度はエネルギー入力によって低下させることができる。結合層30に与えられるエネルギーが、アモルファスシリコンを多結晶シリコンまたは溶融構造に変化させることができ、この材料の変化の特性を利用してフレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から剥離することができる。
【0078】
図13を参照すると、フレキシブルガラス基板12とキャリア基板20とを結合するアモルファスシリコンから形成された結合層30の加熱に使用されるレーザビーム202を、レーザ200が提供することができる。高強度レーザパルスを利用し得るレーザ結晶化を用いて、溶融点を上回るまでアモルファスシリコンを加熱してもよい。いくつかの事例において結合層30の溶融は、部分的にのみ、例えば結合層30とフレキシブルガラス基板20および/またはキャリア基板20との間の接触面で必要になり得る。次いで溶融シリコンは、冷却されると結晶化し、結合層30のトポグラフィ204を変形させてフレキシブルガラス基板12の剥離を助けることができる。いくつかの実施形態において、結合層30のトポグラフィ204は結合層30に、力が加わる領域と膨張する領域を生じさせることができ、これによりフレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から分離させることができる。
【0079】
シリコンの溶解および/または除去のために、任意の適切なレーザエネルギーが利用され得る。一例としてHeNeレーザ633nmでは、0.8J/cm
2未満のフルエンスでシリコン表面を溶解させることはできないが、2J/cm
2を上回る高いフルエンスではシリコンのレーザアブレーションが生じ得る。持続時間20nsおよびフルエンス1.6J/cm
2のレーザパルスは、アブレーションなしでシリコン表面を十分に溶解する。他の適切なレーザとしては、シリコンの高吸収によりUVレーザが挙げられる。例えばXeClレーザ308nmでは、フルエンスが約2から52J/cm
2の間の30nsのパルスを用いてシリコンを除去することができる。別の例としてArFレーザでは、フルエンスが1J/cm
2を上回る12nsのパルスを用いてシリコンを除去することができる。レーザビームは、キャリア基板12を通して(
図14A)、フレキシブルガラス基板20を通して(
図14B)、および/またはキャリア基板12とフレキシブルガラス基板20との間で(すなわち側面から)、結合層30に提供してもよい。
【0080】
図15を参照すると、結合層30のアモルファスシリコンを除去するために使用されるレーザビーム202を、レーザ200が提供することができる。シリコンのアブレーション閾値を超えるフルエンスを利用することによって、結合層30または少なくともその一部を粉末残留物205に変形させることができ、それによりフレキシブルガラス基板12をキャリア基板20から取り外すのを助けることができる。シリコンを除去してフレキシブルガラス基板12を取り外すことができる速さは、レーザのフルエンス、パルス周波数、およびスキャン速度に少なくともある程度依存する。スキャン速度をより速くするために、パルス周波数の他、フルエンスを増加させてもよい。レーザの焦点をシリコンとフレキシブルガラス基板12との接触面近くに合わせると、フレキシブルガラス基板12をより効果的に取り外すのを助けることができる。
【0081】
図16を参照すると、いくつかの実施形態では、結合層30のアモルファスシリコンが溶融されると(
図13で示したように、多結晶シリコン構造が形成された後とは対照的に)、フレキシブルガラス基板12をキャリア基板20から分離してもよい。アモルファスシリコン構造が溶融すると、レーザ202およびレーザビーム204を用いて結合強度を局所的に低下させ、これによりフレキシブルガラス基板12を溶融位置206で引き剥がして分離させることができる。シリコンが冷えると、多結晶層208が残る。
【0082】
フレキシブルガラス基板の解除
フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から解除するには、任意の適切な方法を利用することができる。一例として、このフレキシブルガラス基板20を利用する最終的な装置を形成する際の全体的な引張‐圧縮中立軸のずれに起因して、層間剥離のための応力が生じ得る。例えば、フレキシブルガラス基板20とキャリア基板12とを一緒に結合すると、結合面は最初に応力中立軸近くに置かれ得る。結合が中立軸に近い場合、機械的引張応力は最小になり得る。キャリア基板12に結合されたフレキシブルガラス基板20を用いて、すなわち潜在的にカバーガラスを用いて、機器を完全に組み立てた後、応力中立軸がずれる可能性があり、これが結合平面に沿った引張応力および曲げ応力を大幅に増加させ、少なくともいくらかの層間剥離に繋がり得る。層間剥離は例えば、てこ板(pry plate)、レーザ、ナイフ、罫書きホイール、エッチング液などの、任意の数の器具を用いて開始および/または完成させることも可能であるし、および/または手動でフレキシブルガラス基板を取り外してもよい。
【0083】
図17を参照すると、例示的な結合層30の適用パターンが図示されており、ここでフレキシブルガラス基板20は、デバイスユニットと称されることもある複数のセグメントに分割またはダイスカットされる。
図17は、上述したようにキャリア基板12に結合されたフレキシブルガラス基板20を含む、積層体100の平面図を示している。結合層(エリアA
1で表されている)は、キャリア基板12のガラス支持表面14上の、フレキシブルガラス基板20の設置面積全体(あるいは全体に満たない)に亘って適用され得る。図示の実施形態では、フレキシブルガラス基板20は、さらなる処理のために外周104を有するデバイスユニット102(さらにエリアA
2で表されている)にさらに分割される。結合層A
1をデバイスユニット102の下に適用することによって、続くプロセスを汚染し得る、あるいはフレキシブルガラス基板20(または少なくともその一部)をキャリア基板12から時期尚早に分離させ得る、デバイスユニット102で画成される領域内へのプロセス流体の漏れを最小限に抑え、または防止することができる。
【0084】
図ではキャリア基板12に1つのフレキシブルガラス基板20を結合して備えるように示されているが、複数のフレキシブルガラス基板20を1つのキャリア基板12または複数のキャリア基板12に結合させてもよい。こういった場合にはキャリア基板12を複数のフレキシブルガラス基板20から、同時に分離させてもよいし、または何らかの適切な連続した形で分離させてもよい。
【0085】
任意の数のデバイスユニット102を任意の数の他のデバイスユニット102から、外周104に沿って切断することによって分離させることができる。フレキシブルガラス基板20の任意の膨らみ、またはフレキシブルガラス基板20への他の望まれていない影響を低減するために、通気を設けてもよい。レーザまたは他の切断機器を、フレキシブルガラス基板20から個別のデバイスユニット102を切断するために使用してもよい。さらにキャリア基板12の再利用を可能にするために、この切断を行う際には、フレキシブルガラス基板20のみに対して切断または罫書きを行い、キャリア基板12には行わないようにしてもよい。エッチングおよび/または任意の他の洗浄プロセスを使用して、結合層30によって残された任意の残留物を取り除くことができる。エッチングを使用すると、キャリア基板12からフレキシブルガラス基板20を取り外すのも助けることができる。
【0086】
図18を参照すると、例えば電気デバイス145または他の所望の構造を形成して備えているフレキシブルガラス基板20のデバイスユニット140を、キャリア基板12から取り外す方法の一実施の形態が示されている。任意の数のデバイスユニット140を、フレキシブルガラス基板20のサイズとデバイスユニット140のサイズとに応じて、キャリア基板に結合されたフレキシブルガラス基板20から作製することができる。例えば、フレキシブルガラス基板は第2世代のサイズ以上のものでもよく、例えば、第3世代、第4世代、第5世代、第8世代以上(例えば、シートサイズが100mm×100mmから3m×3m以上)でもよい。キャリア基板12に結合された1つのフレキシブルガラス基板20から生成したいデバイスユニット140の配置−例えばデバイスユニット140のサイズ、数、および形状に関して−を、ユーザが決定することができるようにするために、フレキシブルガラス基板20は
図18に示したように提供され得る。より具体的には、フレキシブルガラス基板20とキャリア基板12とを有する基板積層体10が提供される。フレキシブルガラス基板20は、非結合エリア144を包囲する結合エリア142でキャリア基板12に結合される。
【0087】
結合エリア142はフレキシブルガラス基板20の外周に配置され、非結合エリア144を完全に包囲する。フレキシブルガラス基板20とキャリア基板12との間の任意の間隙にプロセス流体が閉じ込められると、基板積層体10が搬送される続くプロセスをこの閉じ込められたプロセス流体が汚染してしまう可能性があるため、プロセス流体が閉じ込められないように連続した結合エリア142を用いて、この任意の間隙をフレキシブルガラス基板20の外周でシールすることができる。ただし他の実施形態では、不連続の結合エリアを使用してもよい。
【0088】
CO
2レーザビームを使用して、所望の部分140の外周146を切断してもよい。CO
2レーザはフレキシブルガラス基板20のフルボディ切断(厚さの100パーセント)が可能である。CO
2レーザ切断では、フレキシブルガラス基板20の表面24上にレーザビームの焦点を合わせて小さい直径の円形ビーム形状とし、これを要求される軌道に沿って動かし、さらに冷却剤のノズルがこれに続くようにしてもよい。冷却剤のノズルは、例えば圧縮空気流を小さい直径のオリフィスを通じて薄型シートの表面上に送出するエアノズルでもよい。水または空気−液体のミストを活用して利用することもできる。デバイスユニット140の外周146が切断されると、デバイスユニット140を残りのフレキシブルガラス基板20から取り外すことができる。次いで、結合層30の構造を変化させるエネルギー入力を結合層30に適用してもよい。この構造変化が結合層30の結合強度を低下させ、残りのフレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から分離させるのを助ける。
【0089】
図19を参照すると、フレキシブルガラス基板20をキャリア基板12から解除する方法の一実施の形態が示されている。フレキシブルガラス基板20が所望のデバイス150(例えば、LCD、OLED、またはTFTエレクトロニクス)を含むように処理され、かつ例えばデバイスユニット140が取り外されると、残りのフレキシブルガラス基板20(またはフレキシブルガラス基板20全体)がキャリア基板12から解除される。この実施形態において結合層130は、結合エリア154と非結合エリア156とを形成する、外周結合152として形成され得る。レーザ158は、レーザビーム160(例えば、約400nmと750nmとの間の波長を有する)をフレキシブルガラス基板20とキャリア基板12との間に向けて結合層30のいくつかの部分を局所的に加熱する。結合層30の吸収に対して調整されたLEDおよびフラッシュランプ光源も可能である。例えばレーザ158を使用して、炭素ベースの結合層30を局所的に加熱および酸化させることができる。外周結合152がフレキシブルガラス基板20の外周に近接しかつその断面積が比較的小さい(例えば、フレキシブルガラス基板20の全幅に亘る結合に比べて)ことで、より炭素ベースの結合層30に接近することが可能になるため、外周結合152はレーザ158による炭素ベース結合層30の局所的な加熱を助けることができる。
【0090】
上述の結合層は、既存の設備および製造条件内での薄型フレキシブルガラス基板の使用を可能にする、無機接着アプローチを提供し得る。キャリア基板は様々なフレキシブルガラス基板で再利用することができる。キャリア基板とフレキシブルガラス基板と結合層とを含む積層体を組み立てて、その後さらなる処理のために輸送してもよい。あるいは、輸送の前にいくつかの積層体を組み立ててもよいし、または輸送の前に積層体を組み立てなくてもよい。キャリア基板は、キャリア基板として使用するために新品同様である必要はない。例えばキャリア基板は、これをディスプレイ装置として使用するのに適さない状態にする、過度のコードまたは筋を受けたものでもよい。キャリア基板を使用すると、真空孔周りでの窪み形成や増加する静電気の問題など、薄型基板を直接使用した場合の問題を回避することができる。結合層の高さは薄くてもよく(例えば、約10μm以下、あるいは約1から100μmの間)、これにより撓みなどの平坦度の問題を最小限に抑えることができ、またキャリア基板全体に亘って、または外周の周りなどに局所的に、連続して適用される膜としての使用を助けることができる。
【0091】
上述の詳細な説明においては、説明のためであって限定するものではなく、具体的詳細を開示する実施形態例を明記して本発明の種々の原理の完全な理解を提供する。しかしながら、本開示の利益を得たことのある通常の当業者には、本発明をここで開示される具体的詳細とは異なる他の実施形態で実施し得ることは明らかであろう。さらに、周知の装置、方法、および材料に関する説明は、本発明の種々の原理の説明を不明瞭にしないよう省略されることがある。最後に、適用できる限り、同じ参照番号は類似の要素を示す。
【0092】
本書では、範囲を、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現することがある。範囲がこのように表現されるとき、別の実施形態が、そのある特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値で表されるとき、その特定の値は別の実施形態を形成することを理解されたい。各範囲の端点は、他方の端点との関連で、また他方の端点とは無関係に、重要であることをさらに理解されたい。
【0093】
本書で使用される、例えば、上、下、右、左、前、後、上部、下部などの方向を示す用語は、単に描かれた図に関連したものであって、絶対的な向きを意味することを意図したものではない。
【0094】
他に明確に述べられていなければ、本書に明記されるいずれの方法も、そのステップを特定の順序で実行する必要があると解釈されることを全く意図していない。したがって、方法の請求項においてこれらのステップが行われる順序が実際に述べられていない場合、あるいは請求項または説明の中でこれらのステップが特定の順序に限定されるべきであると具体的に述べられていない場合には、順序が推測されることはどの点においても全く意図されていない。これは、ステップまたは動作フローの配置に関する論理の問題、文法構成または句読点から導かれる明白な意味、本明細書内で説明される実施形態の数または種類を含めた、全ての可能性のある明示されていない解釈の原則として適用される。
【0095】
本書では、文脈が明らかに他に指示していなければ、単数形は複数の指示対象を含む。すなわち例えば、ある「構成要素」に言及したときには、文脈が明らかに他に指示していなければ、2以上のこの構成要素を有する態様を含む。上述した本発明の実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は、単に実施可能な例であって、本発明の種々の原理を明確に理解するための単なる説明であることを強調したい。本発明の精神および種々の原理から実質的に逸脱することなく、上述の本発明の実施形態に対して多くの変形および改変を作製することができる。全てのこのような改変および変形は、本書において本開示および以下の請求項の範囲内に含まれると意図されている。
【符号の説明】
【0096】
10 基板積層体
12 キャリア基板
14 ガラス支持表面
20 フレキシブルガラス基板
22 第1の幅広面
24 第2の幅広面
30 結合層
47 エネルギー入力
200 レーザ
202 レーザビーム
【国際調査報告】