特表2015-532191(P2015-532191A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532191(P2015-532191A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】充填済みの使い捨て注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20151013BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20151013BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20151013BHJP
   A61M 5/34 20060101ALI20151013BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20151013BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   A61M5/32 510K
   A61M5/28
   A61M5/315 550X
   A61M5/32 500
   A61M5/34 500
   A61M5/00 518
   A61M5/32 540
   A61M5/31 500
   A61M5/315 550P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-538412(P2015-538412)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月12日
(86)【国際出願番号】EP2013072064
(87)【国際公開番号】WO2014064100
(87)【国際公開日】20140501
(31)【優先権主張番号】12189993.4
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/720,623
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】スティーファンスン, マス シェンストラム
(72)【発明者】
【氏名】アイレットセン, ラース
(72)【発明者】
【氏名】グロスコウ, ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】モーザー, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ビャーンスホルト, トマス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF06
4C066KK04
4C066KK19
4C066LL23
4C066NN06
4C066QQ21
(57)【要約】
本発明は、組み合わされている、充填済みの使い捨て注射装置と注射針カニューレとに関する。充填済みの使い捨て注射装置(1)は、何回かの注射に十分な液剤を格納するための交換不可のカートリッジ(10)を包含するハウジング(2)から作られる。充填済み注射装置(1)の近位端部は投与量設定ボタン(3)を担持し、遠位端部は、管状空洞部(21)を有する注射針カニューレ(20)を担持し、設定可能投与量は管状空洞部(21)を通じて排出される。注射針カニューレ(20)の遠位端部(23)は、縮納型針カバーシールド(30)によって覆われ、かかるシールド(30)は、注射針カニューレ(20)の先端部(24)を覆う第1位置と、注射の実行を可能にする第2収縮位置との間で、動作しうる。充填済み注射装置が、そのライフサイクル中に注射針カニューレ(20)を交換することなく使用されうるように、シールド(30)は、連続する注射と注射との間に注射針カニューレ(20)の少なくとも先端部(24)を浄化する、クリーナ(50)を担持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射針カニューレ(20)が装着された充填済みの使い捨て注射装置(1)であって、
複数回の注射に十分な液剤を格納する交換不可のカートリッジ(10)を包含するハウジング(2)と、
投与量設定ボタン(3)であって、それによってユーザが注射されるべき投与分量を設定しうる、投与量設定ボタンを有する、設定可能な投与量設定機構と、
前記ユーザの皮膚を貫通する先端部(24)を有する前部(23)、前記カートリッジに貫入する後部(22)、及び、連続する何回かの注射とそれに先行する初回注射とを通じての、前記交換不可のカートリッジ(10)内の前記液剤の通過に使用可能な、管状空洞部(21)を備える、前記注射針カニューレ(20)と、
第1位置と第2位置との間で動作可能であり、クリーナ(50)を遠位に担持する縮納型針カバーシールド(30)とを備え、
前記第1位置は、前記縮納型シールド(30)が前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の前記先端部(24)を覆う伸長位置にある位置であり、
前記第2位置は、注射を実行するために、前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の少なくとも前記先端部(24)が曝露されるように、前記シールド(30)が収縮している位置であり、
前記注射針カニューレ(20)の少なくとも前記管状空洞部(21)は、前記初回注射の前には、無菌状態に保たれ、前記初回注射の後にも、前記連続する注射のうちのいずれのものの後にも、前記シールド(30)をその第1位置に自動的に戻すために、弾性手段(31)が設けられ、かかる第1位置では、前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の少なくとも前記先端部(24)は、前記クリーナ(50)の中に包含される、充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項2】
前記注射針カニューレ(20)は前記ハウジング(2)に恒久的に装着されている、請求項1に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項3】
前記注射針カニューレ(20)は、前記ハウジング(2)に取り外し可能に接続されているハブ内に恒久的に装着されている、請求項1に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項4】
前記注射針カニューレ(20)が装着された前記充填済み注射装置は、無菌容器(40、41、42)内に梱包され、それによって、初回注射の前には、前記注射針カニューレ(20)の前記管状空洞部(21)を無菌に維持する、請求項1から3のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項5】
前記注射針カニューレ(20)の前記管状空洞部(21)は、内側が無菌のカバー(44)又はキャップ(46)によって覆われた前記管状空洞部(21)への通路を有することによって、初回注射の前には無菌に保たれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項6】
前記クリーナ(50)は、液体浄化剤を包含する中空チャンバ(51)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項7】
前記クリーナ(50)は固形プラグ(55)から成る、請求項1から5のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項8】
更に、前記針シールド(30)がその第1位置にある時に、前記注射針カニューレ(20)の前記管状空洞部(21)を通る流通路を防ぐよう構成されているバルブを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項9】
前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)は、
前記管状空洞部(21)を通る前記液剤の流れを遮断するように、前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)が前記カートリッジ(10)から切り離されている、非流通位置と、
前記管状空洞部(21)を通って前記液剤が自由に流れうるように、前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)が前記カートリッジ(10)に接続されている、流通位置との間で、前記カートリッジ(10)に対して可動であり、
前記シールド(30)がその第1位置にある時に、前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)は前記非流通位置にあり、かつ、前記シールド(30)がその第2位置にある時に、前記注射針カニューレの前記後部(22)は前記流通位置にある、請求項1から8のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項10】
前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)は、
前記管状空洞部(21)を通る前記液剤の流れを遮断するように、前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)が前記カートリッジ(10)から切り離されている、非流通位置と、
前記管状空洞部(21)を通って前記液剤が流れうるように、前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)が前記カートリッジ(10)に接続されている、流通位置との間で、前記カートリッジ(10)に対して可動であり、
前記注射針カニューレ(20)の前記後部(22)は、初回注射中に、前記シールド(30)がその第1位置からその第2位置に移動する時に、前記非流通位置から前記流通位置へと移動し、かつ、前記後部(22)は、前記シールド(30)がその第1位置に戻る時に、前記流通位置に留まる、請求項1から8のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項11】
前記注射針カニューレ(20)は、軸方向可動ハブ(65)に固定されている、請求項9又は10に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項12】
前記シールドは、投与量がダイヤルされていない限り、前記シールドの前記第1位置から前記第2収縮位置への移動を防ぐロック機構によってロックされている、請求項1から11のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項13】
前記第2位置にある前記針シールド(30)を超えて延在する、前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の長さは、ユーザによって設定可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載の充填済みの使い捨て注射装置。
【請求項14】
ばね付勢のシールド(30)によってシールドされた単一の注射針カニューレ(20)を通じて、かつ、規定量の液剤を包含する充填済み注射装置(1)を使用して、複数の設定可能投与量の液剤を注射する方法であって、前記注射針カニューレ(20)はかかる充填済み注射装置(1)に取り付けられ、かかる充填済み注射装置(1)とシールドされた注射針カニューレ(20)とを組み合わせたものには、前記シールド(30)を再位置付けするための手段、及び、連続する注射と注射との間に前記シールドされた注射針カニューレ(20)の少なくとも先端部(24)を自動的に浄化するための、前記シールドによって担持された手段が設けられ、前記方法は、
(i)前記充填済み注射装置(1)と注射針カニューレ(20)とを組み合わせたものを使用に供するステップと、
(ii)前記充填済み注射装置(1)とシールドされた注射針カニューレ(20)とを組み合わせたものの遠位端部を、ユーザの皮膚に当接させて押し、その際に、前記ばね付勢のシールド(30)を収縮させて、前記シールドされた注射針カニューレ(20)の前記先端部(24)を前記ユーザの前記皮膚に挿入するステップと、
(iii)前記複数の設定可能投与量のうちの1つを放出するステップと、
(iv)前記充填済み注射装置(1)とシールドされた注射針カニューレ(20)とを組み合わせたものの前記遠位端部を前記皮膚から取り除き、その際に、前記シールド(30)を再位置付けするステップと、
(v)いずれの後続注射の前にも、クリーナ(50)を使用して、前記シールドされた注射針カニューレ(20)の少なくとも前記先端部(24)を浄化するステップと、
(vi)前記ステップ(ii)から(v)を、前記既定量の液剤が使用されるまで、経時的に繰り返し実行するステップと、
(vii)前記充填済み注射装置(1)とシールドされた注射針カニューレ(20)とを組み合わせたものを破棄するステップとを含む、方法。
【請求項15】
注射針カニューレ(20)が装着された充填済み注射装置(1)を使用する、糖尿病患者の自己治療のための方法であって、前記充填済み注射装置(1)は、
複数回の注射に十分な血糖値調整液剤を格納するための、交換不可のカートリッジ(10)を包含するハウジング(2)と、
投与量設定ボタン(3)であって、それによってユーザが注射されるべき投与分量を設定しうる、投与量設定ボタンを有する、設定可能な投与量設定機構と、
前記ユーザの皮膚を貫通する先端部(24)を有する前部(23)、前記カートリッジ(10)に貫入する後部(22)、及び、連続する何回かの後続注射とそれに先行する初回注射とを通じての前記交換不可のカートリッジ(10)内の前記薬剤の通過に使用可能な管状空洞部(21)を備える、前記注射針カニューレ(20)と、
第1位置と第2位置との間で動作可能であり、クリーナ(50)を遠位に担持する縮納型針カバーシールド(30)とを備え、
前記第1位置は、前記縮納型シールド(30)が前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の前記先端部(24)を覆う伸長位置にある位置であり、
前記第2位置は、注射を実行するために、前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の少なくとも前記先端部(24)が曝露されるように、前記シールド(30)が収縮している位置であり、
前記注射針カニューレ(20)の少なくとも前記管状空洞部(21)は、前記初回注射の前には、無菌状態に保たれ、前記初回注射の後にも、前記後続注射のうちのいずれのものの後にも、前記シールド(30)をその第1位置に自動的に戻すために、弾性手段(31)が設けられ、かかる第1位置では、前記注射針カニューレ(20)の前記前部(23)の少なくとも前記先端部(24)は、連続する複数回の注射間に前記クリーナ(50)の中に包含され、前記方法は、
(i)前記充填済み注射装置(1)を使用に供するステップと、
(ii)前記充填済み注射装置の遠位端部をユーザの皮膚に当接させて押し、その際に、前記縮納型針シールド(30)を前記第1位置から前記第2位置に移動させるステップと、
(iii)設定済投与量を放出するステップと、
(iv)前記充填済み注射装置の前記遠位端部を前記ユーザの前記皮膚から取り除き、その際に、前記縮納型針シールド(30)を前記第2位置から前記第1位置に軸方向に移動させ、それによって、前記注射針カニューレ(20)の前記先端部(24)を前記クリーナ(50)の内部に再位置付けするステップと、
(v)前記シールドされた注射針カニューレ(20)の少なくとも前記先端部(24)を、次の後続注射まで、前記クリーナ(50)の内部に維持するステップと、
(vi)前記ステップ(ii)から(v)を、前記カートリッジ(10)内に格納された前記血糖値調整液剤が使用されるまで、経時的に連続して実行するステップと、
(vii)充填済み注射装置(1)とシールドされた注射針カニューレ(20)とを組み合わせたものを廃棄するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空になると廃棄される、充填済みの使い捨て注射装置に関する。本発明は特に、シールドされた注射針カニューレであって、かかるシールドが、複数回の注射間に、取り付けられた注射針カニューレの少なくとも先端部を浄化するためのクリーナを担持する注射針カニューレを有する充填済み注射装置に関する。
【0002】
更に本発明は、特に糖尿病患者の自己治療中に、注射を実行する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
US7,641,637は、注射針を備えた注射装置を開示しており、かかる注射装置は、一定量のボツリヌス毒素が予備充填され、複数回の注射に利用される。
【0004】
そのような注射装置に伴う問題は、針が、複数回の注射間に保護されず、従って、損傷を受けやすいことである。更に、注射針カニューレで細菌が生育し、結果として感染症をもたらしうる。
【0005】
複数回使用するためのペン注射針が、WO2010/090747及びUS2012/0059333に記載されている。これらのペン注射針は、複数回の注射間に、注射針カニューレの注入部を浄化する浄化液を包含する区画を有する針容器に格納される。
【0006】
しかし、ユーザが、何らかの理由により、複数回の注射間に注射針カニューレの注入部を容器で再キャッピングしない場合、先端部が複数回の注射間に浄化されることはない。また、これらのペン注射針は、各注射後にユーザが容器を再位置付けする必要があるために、注射後に防護されず、より無防備ですらある。
【0007】
注射針カニューレの前部を覆うシールドを有するペン注射針が、WO2008/077706及びWO2010/079016に記載されている。
【0008】
そのようなペン注射針は通常、単一の容器が殺菌された一つのペン注射針を保持するように、殺菌された容器内に個別に梱包されて、ユーザに届く。容器が開梱されると、ペン注射針はもはや無菌ではなくなる。
【0009】
更に、浄化液を包含するチャンバを担持する縮納型シールドを備えた交換可能針シールドユニットを有することは、既知である。この様態では、注射針カニューレの先端部は、連続する複数回の注射間に、浄化液を包含するチャンバの内部に格納される。注射中に、注射針カニューレの先端部は、遠位チャンバ壁内に設けられた膜を貫通し、ゆえに、浄化液を包含するチャンバの外に移動する。そのような交換可能針シールド装置は、例えば、US4,416,663及びUS4,666,436で開示されている。
【0010】
この針シールド装置は一つの注射器から別の注射器へと移動させうることから、ユーザは、注射の前に毎回、チャンバ内に妥当な量の浄化液が存在していることを確認する必要がある。チャンバが空になると、注射針カニューレの先端部は、複数回の注射間に浄化されることはなくなる。
【0011】
従来技術が示すように、複数回の注射間の注射針の取扱いは、自己治療用注射装置のユーザにとって大きな問題である。それは、次のような数多くのリスクを伴う。
針刺し事故のリスク、
針先端部を損傷するリスク、
交換用の余分の注射針を忘れるリスク。
【0012】
これらのリスクを回避するために、ユーザは、同一の注射針を複数回の注射で再使用すると決めることがある。しかし、このこともいくつかのリスクを伴う。例えば、
針刺し事故のリスク、
皮膚感染症のリスク、
針詰まりのリスク、である。
【発明の概要】
【0013】
これらのリスクを排除し、又は、少なくとも劇的に減少させ、ゆえに、充填済み注射装置のより安全な取扱いを可能にすることが、本発明の目的である。
【0014】
具体的な目的は、針の物理的取扱いが大幅に低減され、好ましくは完全に排除される、充填済み注射装置を提供することである。
【0015】
本発明は、いくつかの実施形態に先行する、添付の請求項1において限定される。個々の請求項は、以下に詳しく説明される。
【0016】
従って、本発明の一態様では、組み合わされている充填済みの使い捨て注射装置と注射針カニューレとは、
何回かの注射に十分な液剤を格納する交換不可の薬剤カートリッジを包含するハウジングと、
投与量設定ボタンであって、それによってユーザが注射されるべき投与量の不規則な分量を設定又は選択しうる、投与量設定ボタンを有する、設定可能な投与量設定機構と、
連続する何回かの後続注射とそれに先行する初回注射とを通じて、交換不可の薬剤カートリッジ内の薬剤の全内容物を通過させるために使用可能な管状空洞部を有する、注射針カニューレとを備え、注射針カニューレは、先端部を担持する前部、及び、カートリッジに入る後部を有し、
クリーナを遠位に担持し、かつ、第1位置と第2位置との間で動作可能である、縮納型針カバーシールドとを備え、
第1位置は、縮納型シールドが注射針カニューレの前部の先端部を覆う伸長位置にある位置として画定され、
第2位置は、注射を実行するために注射針カニューレの前部の少なくとも先端部が曝露されるように、縮納型シールドが収縮している位置として画定される。
【0017】
注射針カニューレの管状空洞部は初回注射の前には無菌状態に保たれ、初回注射の後にも、後続注射のうちのいずれのものの後にも、シールドがその第1位置に自動的に戻るよう、弾性手段が設けられる。更に、注射針カニューレの先端部は、複数回の注射間に、クリーナの内部に維持される。
【0018】
注射装置と注射針カニューレは共に、無菌のすぐに使用できる状態で届くことから、初回注射は常に、無菌の注射針カニューレを用いて、又は、少なくとも無菌の管状空洞部を通じて、実行される。その後、注射針カニューレは、注射装置に取り付けられたまま維持され、後続の複数回の注射間に浄化される。注射針カニューレと注射装置はすぐに使用できる状態で届くという事実、及び、注射針カニューレが、複数の注射間に注射装置に取り付けられたまま維持されるという事実により、針を取り扱う必要がなく、上記のリスクは相当程度低減する。同時に、注射針カニューレの少なくとも先端部は、ユーザが皮膚から装置を抜いた瞬間から次の注射まで、シールドによって自動的に保護される。更に、注射針カニューレの先端部は、連続する複数回の注射のうちいずれのものの間にも浄化され、それによって、注射針カニューレの先端部での細菌の形成が妨げられるか、又は、少なくとも軽減される。
【0019】
本発明の一態様では、ユーザがカートリッジの全内容物を注射するために同一の注射針カニューレを使用せざるをえないように、注射針カニューレはハウジングに恒久的に装着されており、注射装置から取り外すことはできない。
【0020】
本発明の全体コンセプトは、恒久的に若しくは予備装着されて注射装置に固定された注射針カニューレと、無菌状態で一連の連続的な注射に使用可能な注射針カニューレの管状空洞部とともに、充填済み注射装置がユーザに届けられることである。ゆえに、同一の注射針カニューレは、数回の注射に、必要ではないが好ましくは、充填済み注射装置で利用可能な回数の注射に使用されるよう専ら作られている。
【0021】
注射針カニューレがハウジングに恒久的に装着されている実施形態では、カートリッジの内容物が注射されてしまい、従って、いかなる針の取扱いも決定的に不要になると、注射装置全体は注射針カニューレと共に廃棄される。注射針カニューレは、ハウジングに、例えば接着されるか又は溶接され、或いは代替的には、ハウジングに成形される。しかし、注射針カニューレは、この実施形態では、ハブに恒久的に固定することができ、ハブはそのとき、ハウジングに恒久的に嵌め込まれる。注射針カニューレが、充填済み注射装置のライフサイクル、すなわち、充填済み注射装置の使用法に従う注射針カニューレの寿命に従うように、注射針カニューレが取り外し不可であることが、この実施形態における決定的な特徴である。
【0022】
一例としては、充填済み注射装置には、3.0mlのインシュリン液が充填されうる。何回かの連続する注射を通じてインシュリン内容物が注射されてしまうと、恒久的に取り付けられた注射針カニューレを備えた注射装置は廃棄される。しかし欠点は、カートリッジ内に包含されたインシュリンの全量が使用されてしまう前に注射針カニューレが損傷した場合、インシュリンの残量が、充填済み注射装置と恒久的に取り付けられた注射針カニューレと共に廃棄されねばならないことである。
【0023】
注射装置の寿命全体を通じて同一の注射針カニューレが使用されることから、針の取扱いは必要ない。ゆえに、注射針カニューレは、充填済み注射装置の寿命と同一の寿命であるように専ら作られ、かつ、そのような構造になっている。
【0024】
別の実施形態では、注射針カニューレはハブ内に装着されて、広く知られる針アセンブリ、例えばペン注射針を形成し、針アセンブリは、製造者によって注射装置に予備装着される。ハブには例えば、従来的な様態で、例えばネジ又はバヨネット結合を使用することによって、針アセンブリを注射装置に接続するための接続手段が設けられることがある。注射針アセンブリが予備装着されている充填済み注射装置は、ゆえに、すぐに使用できる状態でユーザに届き、注射針カニューレはここでも、充填済み注射装置の寿命と同一の寿命であるように専ら作られ、かつ、そのような構造になっている。しかし、注射針カニューレが使用中に損傷した場合、ユーザは、針アセンブリを、製造する必要なしに、交換するという選択肢を有する。ユーザは従って、たとえ単に事前装着された針アセンブリを交換することによって注射針カニューレが損傷しても、カートリッジ内の液剤の全内容物を使用することができる。
【0025】
両方の実施形態に関し、充填済み注射装置と取り付けられた注射針カニューレとは、無菌状態で、又は、少なくとも無菌の管状空洞部を備えてユーザに届く。それはつまり、注射針カニューレを備えた注射装置全体が無菌梱包内に梱包されるか、若しくは、注射針カニューレの少なくとも前部が無菌で梱包される、ということである。
【0026】
無菌バリアが破られ、初回注射が実行された後、注射針カニューレの先端部は、後続の複数回の注射間にクリーナ内に維持される。
【0027】
クリーナは、一実施形態では、浄化液を包含する中空チャンバでありうる。浄化液は、中空チャンバ内に位置するスポンジに密封されることもある。クリーナである中空チャンバ内に包含された浄化液は、エチルアルコールなどのような、任意の従来的な種類の適切な殺菌液又は消毒液であることがある。
【0028】
代替的には、クリーナは、複数回の注射間に注射針カニューレの外表面を物理的に拭き取る固体要素でありうる。そのような固体プラグは、抗菌材料を含有する高分子組成物から作られることがある。
【0029】
中空チャンバの手法では、チャンバは、好ましくは、適切な高分子化合物から作られた自己封止型隔膜によって、遠位及び近位で封止される。この高分子化合物は、抗菌材料を含有することもある。更に、両方の隔膜が自己封止型であるという事実は、少なくとも遠位の隔膜が、注射針カニューレの前部の外表面を物理的に拭き取るように、注射針カニューレの外表面が貫通点で各隔膜に当接して摺動するということを意味する。
【0030】
注射針カニューレが、複数回の注射間に、注射装置に取り付けられたまま維持される場合、管状空洞部の詰まりというリスクがある。しかし、複数回の注射間に、注射針カニューレの先端部を浄化液に浸したままにすれば、詰まりは防止される。更に、注射針カニューレの管状空洞部の詰まりを防ぐために、多種多様な他の手段が提供されうる。
【0031】
一実施形態では、詰まりを防ぐための手段は、注射針カニューレの管状空洞部を通る流通路を防ぐためのものでありうる。注射針カニューレの管状空洞部内に薬剤が存在しなければ、詰まりは発生しようがない。この流通の防止は、薬剤カートリッジから注射針カニューレを切り離す任意の種類のバルブによって、又は、単に注射針カニューレをプラグで止栓することによって、行われうる。そのようなプラグは、必要ではないが好ましくは、前記の実施形態におけるような、シールドによって担持される。
【0032】
一実施形態では、注射針カニューレが縮納型針シールドの軸方向移動に従うことから、シールドがその第1伸長位置にある時に注射針カニューレの後部がカートリッジから切り離されている一方で、シールドがその第2位置に移動する時には、注射針カニューレは、注射針カニューレの後部がカートリッジに接続するように、この移動に従う。注射後に、シールドがその第1位置に再位置付けされる時に、注射針カニューレの後部はカートリッジから分離し、それによって、詰まりを妨げる。
【0033】
注射針カニューレは、好ましくは、ハウジングと可動ハブとの間に挿入されたハブばねによって好ましくは前方に推進される、軸方向可動ハブに装着される。注射中に、この軸方向可動ハブは、近位に移動して、注射針カニューレの後部をカートリッジの内側に接続する。充填済み注射装置と注射針カニューレとが、注射後にユーザの皮膚から取り除かれると、ハブばねは自動的に、可動ハブを遠位に移動させて、注射針カニューレの後部をカートリッジから切り離す。
【0034】
更なる実施形態では、連続する注射のために注射針カニューレの後部がカートリッジの中に挿入されたままであるように、シールドが最初にその第2位置に移動した時に、注射針カニューレと可動ハブはロックされる。
【0035】
初回注射の前に注射針カニューレの後部がカートリッジの内側から切り離されている場合、この後部は、可動ハブに封止されているゴム又はラテックスのバッグ内に密封されて無菌であることが可能であり、かかるバッグは、注射針カニューレの後部がカートリッジ内に入ると、注射針カニューレの後部によって貫通される。
【0036】
縮納型針シールドが注射針カニューレの前部を覆うその第1伸長位置にある場合、シールドは、好ましくは、ロック機構によってロックされる。このロック機構は、シールドがその第2収縮位置へと移動することを防ぐ。ロックは、好ましくは、針シールドの近位移動を防ぐロック要素によって行われ、かかるロック要素は、回転若しくは軸方向移動によって、縮納型針シールドの収縮を可能にする、新たな位置に移動しうる。
【0037】
充填済み注射装置に相対的な、針シールドが収縮しうる長さを設定する可能性をユーザに提供する更なる機構が設けられうる。このことにより、ユーザは、注射針カニューレの前部がユーザの体に貫入する長さを選択することが可能になる。
【0038】
本発明は更に、ばね付勢のシールドによってシールドされ、かつ、既定量の液剤を包含する充填済み注射装置に取り付けられた単一の注射針カニューレを通じて、複数の設定可能投与量の液剤を注射する方法に関連する。
【0039】
充填済み注射装置とシールドされた注射針カニューレとを組み合わせたものには、シールドを再位置付けするための、ばねのような弾性手段、及び、連続する複数回の注射間にシールドされた注射針カニューレの少なくとも先端部を自動的に浄化するための手段が設けられる。
【0040】
クリーナは、注射針カニューレの先端部に対して軸方向に可動であるように、シールドによって担持される。
【0041】
当該方法は、
(i)充填済み注射装置と注射針カニューレとを組み合わせたものを使用に供するステップと、
(ii)充填済み注射装置とシールドされた注射針カニューレとを組み合わせたものの遠位端部をユーザの皮膚に当接させて押し、それによって、ばね付勢のシールドを収縮させて、シールドされた注射針カニューレの先端部をユーザの皮膚内へと挿入するステップと、
(iii)複数の設定可能投与量のうちの1つを放出するステップと、
(iv)充填済み注射装置とシールドされた注射針カニューレとを組み合わせたものの遠位端部を皮膚から取り除き、それによって、注射針カニューレの先端部を覆うようにシールドを再位置付けするステップと、
(v)いずれの後続注射の前にも、クリーナを使用して、シールドされた注射針カニューレの少なくとも先端部を浄化するステップと、
(vi)ステップ(ii)から(v)を、既定量の液剤が使用されるまで、経時的に繰り返し実行するステップと、
(vii)充填済み注射装置(1)とシールドされた注射針カニューレとを組み合わせたものを破棄するステップとを含む。
【0042】
異なる一実施形態では、本発明は、注射針カニューレが装着された充填済み注射装置を使用する、糖尿病患者の自己治療のための方法に関する。
【0043】
充填済み注射装置と注射針カニューレとを組み合わせたものは、
何回かの注射に十分な血糖値調整液剤を格納するための、交換不可のカートリッジを包含するハウジングと、
投与量設定ボタンであって、それによってユーザが注射されるべき投与量の不規則な分量を設定又は選択しうる、投与量設定ボタンを有する、設定可能な投与量設定機構と、
ユーザの皮膚を貫通する先端部を有する前部、カートリッジに貫入する後部、及び、連続する何回かの後続注射とそれに先行する初回注射とを通じての、交換不可のカートリッジ内の薬剤の通過に使用可能な管状空洞部、を備える、注射針カニューレと、
第1位置と第2位置との間で動作可能であり、クリーナを遠位に担持する縮納型針カバーシールドとを備え、
第1位置は、縮納型シールドが注射針カニューレの前部の先端部を覆う伸長位置にある位置であり、
第2位置は、注射を実行するために、注射針カニューレの前部の少なくとも先端部が曝露されるように、シールドが収縮している位置であり、
注射針カニューレの少なくとも管状空洞部は、初回注射の前には無菌状態に保たれ、初回注射の後にも、後続注射のうちのいずれのものの後にも、シールドをその第1位置に自動的に戻すために、弾性手段が設けられ、かかる第1位置では、注射針カニューレの前部の少なくとも先端部は、連続する複数回の注射間にクリーナの中に包含され、当該方法は、
(i)好ましくは注射針カニューレの少なくとも管状空洞部をその無菌密封から取り出すことによって、充填済み注射装置を使用に供するステップと、
(ii)充填済み注射装置の遠位端部をユーザの皮膚に当接させて押し、それによって、縮納型針シールドを第1位置から第2位置に移動させるステップと、
(iii)設定済投与量を放出するステップと、
(iv)縮納型針シールドが、第2位置から第1位置に軸方向に移動し、それによって、注射針カニューレの先端部をクリーナの内部に再位置付けするように、充填済み注射装置の遠位端部をユーザの皮膚から取り除くステップと、
(v)シールドされた注射針カニューレの少なくとも先端部を、次の後続注射まで、クリーナ(50)の内部に維持するステップと、
(vi)ステップ(ii)から(v)を、カートリッジ内に格納された血糖値調整液剤が実質的に使用されるまで、経時的に連続して実行するステップと、
(vii)充填済み注射装置とシールドされた注射針カニューレとを組み合わせたものを廃棄するステップとを含む。
【0044】
定義
「注射ペン」は、典型的には、書くためのペンのような縦長の、又は細長い形状を有する注射器具であるそのようなペンは通常管状断面を有するが、それらは、三角形、長方形又は正方形、或いはこれらの幾何形状の任意の変形例などの、異なる断面を容易に有することがある。
【0045】
「注射針カニューレ」という用語は、注射中に皮膚の貫通を実行する実際の導管を説明するために使用される。注射針カニューレは通常、例えば、ステンレス鋼などの金属材料から作られ、「針アセンブリ」と称されることも多い、完成した注射針を形成するために、ハブに接続される。しかし、注射針カニューレは、高分子材料又はガラス物質から作られることもある。ハブはまた、針アセンブリを注射器具に接続するための接続手段を担持し、通常、適切な熱可塑性材料から成形される。「接続手段」は、例として、ルアー結合、バヨネット結合、ねじ接続、又は、例えばEP1,536,854で説明されている組み合わせのような、それらの任意の組み合わせであることが可能である。
【0046】
「注射針ユニット」という用語は、容器内に担持された単一の針アセンブリを説明するために使用される。そのような容器は、通常、遠位閉端部と、取り外し可能な封止材によって封止されている近位開端部とを有する。そのような容器の内側は、通常、針アセンブリがすぐに使用できるように、無菌である。ペン注射システムのために特に設計された注射針ユニットは、ISO規格番号11608のパート2内で定義されており、「ペン注射針」と称されることが多い。ペン注射針は、ユーザに貫入する前部と、薬剤を包含するカートリッジに貫入する後部とを有する。
【0047】
本書で使用する際、「薬剤(drug)」という用語は、制御された様態で中空針などの送達手段を通過することが可能な、液体、溶液、ジェル又は微細懸濁液といった、任意の薬剤含有流動可能薬物を含むことが意図されている。代表的な薬剤は、ペプチド、タンパク質(例えば、インシュリン、インシュリン類似体、及びCペプチド)、及びホルモン、生物学的な由来の又は生物学的に活性な化学物質、ホルモン剤、及び遺伝子に基づく化学物質、栄養処方物、並びに固体(調剤されたもの)或いは液体の両方の形態をとる他の物質などの調剤を含む。
【0048】
「カートリッジ」は、薬剤を包含する容器を説明するために使用される用語である。カートリッジは通常、ガラスから作られるが、任意の適切な高分子化合物から成形されることもある。カートリッジ又はアンプルは、好ましくは、「隔膜」と称される突き通し可能な膜によって一端部で封止され、「隔膜」は、例えば、注射針カニューレの患者側ではない端部によって、突き通されうる。そのような隔膜は通常、自己封止型であり、このことはつまり、貫通時に創出された開口が、注射針カニューレが隔膜から取り除かれると、内在弾性によって自動的に封止されることを意味する。対向する端部は、典型的には、ゴム又は適切な高分子化合物から作られるプランジャ或いはピストンによって閉ざされる。プランジャ又はピストンは、カートリッジの内部で摺動可能に移動しうる。突き通し可能な膜と可動プランジャとの間の空間は薬剤を保持し、薬剤は、それを保持する空間の容積をプランジャが減少させるにつれて、押し出される。しかし、任意の種類の容器が、硬性でも可撓性でも、薬剤を包含するために使用されうる。
【0049】
カートリッジは通常、より狭い遠位首部を有し、プランジャはその中へ移動し得ないことから、カートリッジの内部に包含された液剤の全てが実際に排出されうるわけではない。従って、「初期量」又は「実質的に使用された」という用語は、カートリッジ内に包含された注射可能な内容物を表し、ゆえに、必ずしも全内容物を表す訳ではない。
【0050】
「充填済み」注射装置という用語により、注射装置を恒久的に破壊することなくカートリッジを取り外すことが不可能であるように、液剤を包含するカートリッジが恒久的に埋設されている注射装置が意図されている。カートリッジ内に充填された液剤の総量が使用されると、ユーザは普通、注射装置全体を廃棄する。これは、ユーザが自分で、液剤を包含するカートリッジを、それが空になった時にはいつでも、替えることができる、「長期使用」注射装置と逆である。充填済み注射装置は通常、2つ以上の注射装置を包含する梱包で販売される一方、長期使用注射装置は通常、1つずつ販売される。充填済み注射装置を使用する場合、平均的なユーザは、1年につき50個から100個にも達する注射装置を求めることがある一方、長期使用注射装置を使用する場合は、単一の注射装置が、数年間耐久しうるが、平均的なユーザは、1年につき50個から100個の新しいカートリッジを求めることになる。
【0051】
「自動」という用語の注射装置と併せての使用は、注射装置のユーザが投与時の薬剤の排出に必要な力を送達することなく、注射装置が注射を実行できることを意味する。力は、典型的には、電動モータ又はばね駆動によって、自動的に送達される。ばね駆動のばねには、通常、投与量設定中にユーザによって張力が印加されるが、そのようなばねには通常、ごく少ない投与量を送達するという問題を回避するために、予備張力がかかっている。代替的には、ばねには、何回かの投与を通じて薬剤カートリッジ全体を空にするに十分な予荷重をもって、製造者により十分な予荷重が印加されうる。典型的には、ユーザは、注射を実施する時に、ばね内に蓄積された力を、全体的に又は部分的に放出するよう、注射装置の近位端部などにある、例えばボタンの形態のラッチ機構を作動させる。
【0052】
公報、特許出願、及び特許を含む、本書において挙げられている全ての参照は、それら全体で参照によって組み合わされ、各参照が個別にかつ具体的に参照によって組み合わされることが示され、本書においてその全体が記載されているかのような場合と同程度まで組み合わされる。
【0053】
全ての表題及び副題は、本書において便宜のためにのみ使用され、いかなる様態においても発明を限定するものとして構成されるべきではない。
【0054】
任意の及び全ての実施例の使用、又は本書において提供される例示的な文言(例えば「など」「のような」)の使用は、単に発明の理解を容易にすることを企図するものであり、特許請求の範囲で主張されない限り、発明の範囲に限定を課するものではない。明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない任意の要素が、発明の実施にとって不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0055】
本書における特許文献の引用及び組み合わせは、便宜のためにのみ行われるものであり、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使可能性についてのいかなる見解も反映しない。
【0056】
この発明は、適用法令によって認められるように、本書に付随する特許請求の範囲の中で挙げられている主題の、全ての変形例及び等価物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明は、好ましい実施形態に関連して、また以下の図面を参照して、下記により十分に説明される。
図1a】充填済み注射装置の断面図を示す。
図1b】充填済み注射装置の断面図を示す。
図2】無菌梱包の種々の実施例を示す。
図3】無菌梱包の種々の実施例を示す。
図4】無菌のキャップ又はカバーの種々の実施例を示す。
図5】無菌のキャップ又はカバーの種々の実施例を示す。
図6】充填済み注射装置の遠位端部の断面図を示す。
図7】充填済み注射装置の遠位端部の断面図を示す。
図8】充填済み注射装置の遠位端部の断面図を示す。
図9】バルブ機構を示す。
図10】バルブ機構を示す。
図11】軸方向に可動な注射針カニューレを有する一実施形態を示す。
図12】軸方向に可動な注射針カニューレを有する一実施形態を示す。
図13】軸方向に可動な注射針カニューレを有する一実施形態を示す。
図14】接続可能な注射針カニューレを有する一実施形態を示す。
図15】接続可能な注射針カニューレを有する一実施形態を示す。
図16】接続可能な注射針カニューレを有する一実施形態を示す。
図17】針シールド向けのロック機構を示す。
図18】針シールド向けのロック機構を示す。
図19】個別の注射深度を設定するための機構を示す。
図20】個別の注射深度を設定するための機構を示す。
【0058】
図面は、明瞭化のために概略的に単純化されており、それらは発明の理解にとって必要不可欠な詳細のみを示しているが、他の詳細部分は除外されている。全体を通して、同一の参照番号は、全く等しい又は対応する部分に対して使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下において、「上部」と「下部」、「右」と「左」、「水平」と「垂直」、「時計回り」と「反時計回り」という用語、又は類似の関連表現が使用される場合、これらは添付の図面にのみ言及するものであり、実際の使用状況に言及するものではない。示された図面は概略表現であり、そのため、種々の構造体の構成並びにそれらの相対寸法は、例示目的のみを意図している。
【0060】
その文脈において、図1aから図1bに図示したように、添付図面における「遠位端部」という用語は、注射装置の通常注射針カニューレを担持する端部を表すことが意図される一方で、「近位端部」という用語は、注射針から離れた方向を向いており、注入ボタン3を担持する、対向する端部を表すよう意図されると定義することは都合がよいかもしれない。
【0061】
図1aから図1bは、カートリッジ10がハウジング2に恒久的に埋設されている充填済み注射装置1を開示している。近位端部には、不規則な投与分量を設定するための投与量設定ボタン3が設けられる。遠位端部は、開示されている実施形態ではハウジング2に恒久的に固定されている注射針カニューレ20を担持する。ハウジング2の遠位端部は、注射針カニューレ20及び針シールド30と共に、好ましくは、一例が図8に図示されているキャップ4によって覆われる。
【0062】
注射針カニューレ20は、カートリッジ10の隔膜11を貫通する近位端部22を有する。プランジャ12が、カートリッジ10の内部で遠位方向に移動する時はいつでも、カートリッジ10に包含された液剤の総量は、注射針カニューレ20の管状空洞部21を通って押し出され(例えば図6から図7を参照)、それによって、注射針カニューレ20の遠位端部23から排出される。
【0063】
注射針カニューレ20の遠位端部23、及びその尖った先端部24は、縮納型可動針シールド30によって、物理的に防護される。このシールド30は、ハウジング2とシールド30との間に内包されたばね31によって、遠位方向に付勢される。ばね31は、代替的には、ハウジング2の一部として又はシールド30の一部として成形されることがある。
【0064】
シールド30には、クリーナ50が装着されうる保持位置33が設けられる。クリーナ50は、後述するように、注射を実行する前に注射針カニューレ20の尖った先端部24を浄化するに適する、任意の種類のクリーナ50でありうる。
【0065】
一般に既知であるように、投与量設定ボタン3を回転することによって、ユーザは、注射装置1から排出されるべき不規則な投与分量を設定しうる。設定済投与量を排出する機構は、手動若しくは自動の任意の既知の機構でありうる。ユーザが、皮膚に当接させて注射装置1の遠位端部を押すと、シールド30は、ばね31の付勢に抗して、近位方向に縮納されるよう移動する(図7の矢印「A」で示す)。
【0066】
保持位置33に装着されたクリーナ50、及び、注射針カニューレ20を備えた充填済み注射装置1は、無菌密封され、すぐに使用できる状態でユーザに届く。
【0067】
図2は、注射針カニューレ20を備えた注射装置1が、無菌バッグ40内に梱包されて届く、一実施形態を開示している。
【0068】
図3は、注射針カニューレ20を備えた注射装置1が、剥離可能リボン43によってまとめて固定された無菌二部分容器41、42内に梱包されて届く、一実施形態を開示している。
【0069】
図4は、キャップ44の内側が無菌に保たれるように、封止45を介して注射装置1に接続されているキャップ44によって注射針カニューレ20が覆われている一実施形態を開示している。
【0070】
図5は、内キャップ46の内側を無菌に維持するために、注射装置1に封止されている内キャップ46によって、注射針カニューレ20の遠位端部23が覆われている、一実施形態を開示している。
【0071】
ユーザが充填済み注射装置の使用を開始する時に、ユーザは無菌バリアを破壊する、すなわち、最初の注射が実行される時には、注射針カニューレの管状空洞部は無菌である。
【0072】
図6図7は、縮納型可動針シールド30が、適切な量の液体浄化剤を保持するチャンバ51を有するクリーナ50を担持する一実施形態を開示している。クリーナ50の近位部分52とクリーナ50の遠位部分53は、注射針カニューレ20が容易に貫通しうる材料から形成される。2つの部分52、53は、任意の既知の様態で1つに接続された、別個の部分52、53でありうる。使用される材料は、好ましくは、任意の既知の薬剤容器の隔膜部分により既知であるような、ゴム組成物である。近位端部52と遠位端部53とは、好ましくは、自己封止型である、すなわち、それらは、注射針カニューレ20が貫通点から取り除かれると、内在弾性によって閉じる。
【0073】
図6に図示するように複数回の注射間では、ばね31が遠位方向にシールド30を付勢する時、注射針カニューレ20の尖った先端部24は、チャンバ51の内部にある位置に移動し、ゆえに浄化される。
【0074】
図7で開示されるようにユーザが注射を実行する時、シールド30は、ばね31の付勢に抗して近位方向に(矢印「A」)移動し、注射針カニューレ20の尖った先端部24はクリーナ50の遠位部分53を貫通する。そうすることで、注射針カニューレ20の前部23が、遠位部分53によって物理的に拭き取られる。
【0075】
使用されていない時、注射装置1の遠位端部は、図8に図示するように、キャップ4によって覆われうる。図8には、矢印「B」で示されるように、装着される過程のキャップ4が図示されている。図8に図示されるように、キャップ4の遠位には、抗菌物質で処理されたスポンジ56などが設けられ、それにより、スポンジ56がクリーナ50の遠位端部又は遠位部分53に当接して押される時に、クリーナの遠位端部53の外表面が浄化される。
【0076】
代替的な一実施形態では、図11から図13に図示されるように、クリーナ50が一固形プラグ55であるように、チャンバ51は固形体でありうる。ゆえに、浄化は、注射針カニューレ20の外側と固形プラグ55の材料との間の物理的接触部に限定され、かかる材料は、抗菌粒子を含有しうる。
【0077】
図9図10は、注射針カニューレ20の近位端部22と遠位端部23とが可撓性チューブ25によって接続される一実施形態を開示している。複数回の注射間に、複数の圧迫アーム61を備えるバルブ機構60は、注射針カニューレ20を通る流通路を防ぐように、可撓性チューブ25を圧迫する。
【0078】
注射中、図10に図示されるように、液剤が注射針カニューレ20の管状空洞部21を通って流れうるように、針シールド30の近位に設けられた複数のアーム32が、バルブ機構60を解放する。
【0079】
図11図12及び図13は、注射針カニューレ20の管状空洞部21を通る流通路を防ぐ、代替的な様態を開示している。注射針カニューレ20は、伸長位置(図11)と収縮位置(図13)との間で軸方向に移動可能な可動ハブ65内に固定される。ハブばね66は、ハウジング2と可動ハブ65との間に設けられ、可動ハブ65をその伸長位置へと付勢する。この伸長位置において、注射針カニューレ20の近位部分22は、カートリッジ10の隔膜11の外側であって遠位側の手前に位置する。
【0080】
注射中に、ユーザは、シールド30をユーザの皮膚に当接させて押し(矢印「C」)、それによって、図12に図示されるように、注射針カニューレ20の遠位端部23は、シールド30を超えて突出する。これは、ばね31の付勢に抗して行われる。図14に図示されるように、更なる圧力がハブばね66の付勢に抗して、可動ハブ65を近位方向に移動させ、それによって、注射針カニューレ20の近位端部22が、隔膜11を貫通することで、設定済投与量に従ってカートリッジ10の内部に包含された液剤がユーザに流入しうるように、ユーザと薬剤カートリッジ10の内側との間の液体連通を創出する。
【0081】
圧力(矢印C)が印加されると、シールド30とハブ65のいずれが先に移動するかが、ばね31とハブばね66との間の力の分散により決定される。
【0082】
図14から図16は、類似の一実施形態を開示している。図14は、注射の前のデフォルト位置にあるシールド30を図示しており、その位置で、近位端部22は、例えば可動ハブ65に封止されたラテックスバッグでありうる無菌バリア26によって保護される。ユーザが、シールド30を皮膚に当接させて押すことによって圧力(図15の矢印「D」)を印加する時、シールド30を可動ハブ65に結合させる中間部品67は、近位方向に移動する。この近位移動は、可動ハブ65に、ゆえに注射針カニューレ20に伝達される。最終的に、図15に図示されるように、注射針カニューレ20の近位端部22は、その無菌バリア26、及び、隔膜11を貫通する。図16に図示されるように、この位置において、中間部品67及び/又は可動ハブ65は、近位端部22が隔膜11を通って挿入されたままであるように、ロックされる。圧力(矢印D)が取り除かれると(図16)、ばね31はシールド30をその伸長位置へと戻すよう付勢する一方で、中間部品67と可動ハブ65とは、そのロック位置に留まる。
【0083】
中間部品67には、好ましくは、シールド30をその伸長位置に留め置くためにシールド30に設けられた類似の停止部34と協働する、停止部68が設けられる。
【0084】
図17図18は、シールド70をロックすることによってシールド30の近位方向の移動が防止される一実施形態を開示している。シールド70のこのロックは、以下の様態で投与量設定ボタン3と協働する。
【0085】
投与量がまだ設定されていない時、ロックシールド70は、シールド30の近位移動を防ぐ。ユーザが投与量を設定する、すなわち、図示されていないスケールドラムがゼロ位置から離れるように回転される時、ロックシールド70は、シールド30が近位に移動することを可能にする位置に、回転移動、若しくは近位移動する。
【0086】
注射の後、ユーザが注射針カニューレ20を皮膚から取り除いた後に、スケールドラムは自動的にそのゼロ位置に戻る。力がシールド30の遠位端部に印加されていない時、それは、注射針カニューレ20の尖った先端部24を覆うその初期位置に戻り、そこで、ロックシールド70は、シールド30が次回まで近位に移動することを防ぐその阻止位置に戻った後に、ユーザは、注射されるべき新たな投与量をダイヤルする。
【0087】
図19図20は、注射装置1の一実施形態の、ハウジング2の遠位端部を開示している。ハウジング2の遠位部分には、複数の長手方向隆起5が設けられる。図20に図示されるように、これらの隆起5は、針シールド30がハウジングに関連して軸方向に摺動しうるように、シールド30に設けられた可撓性アーム34をガイドする。
【0088】
各隆起5は、複数の軸方向の停止部6の位置によって決定される、特定の軸方向長さを有する。これらの停止部6は各々、針シールド30の更なる軸方向移動を防ぐ。ユーザが針シールドを、それが停止位置にある時に回転させる場合、針シールド30は、各停止部6と回転方向に整列して設けられた隙間7により、その収縮位置に滞留しうる。
【0089】
各注射の前に、ユーザは、シールド30を、ハウジング2に対して回転させ、それによって、シールド30が移動しうる軸方向長さを決定しうるが、それは、注射中に注射針カニューレ20の遠位部分23が貫通する、ユーザの皮下組織への深度を決定するものとなる。各位置で利用可能な軸方向長さは、例えばシールド30に印刷されることもある。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態が上述のように示されてきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の中で定義される主題の範囲内で他の様態によっても具現化されうることが、強調されるべきである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図20
【国際調査報告】