特表2015-532376(P2015-532376A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スネクマの特許一覧 ▶ エルクレスの特許一覧

特表2015-532376球状根元部を有する複合材料製タービンエンジンブレード
<>
  • 特表2015532376-球状根元部を有する複合材料製タービンエンジンブレード 図000003
  • 特表2015532376-球状根元部を有する複合材料製タービンエンジンブレード 図000004
  • 特表2015532376-球状根元部を有する複合材料製タービンエンジンブレード 図000005
  • 特表2015532376-球状根元部を有する複合材料製タービンエンジンブレード 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532376(P2015-532376A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】球状根元部を有する複合材料製タービンエンジンブレード
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/30 20060101AFI20151013BHJP
   F01D 5/02 20060101ALI20151013BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20151013BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20151013BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   F01D5/30
   F01D5/02
   F01D5/28
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
   C04B35/80 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-533662(P2015-533662)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月20日
(86)【国際出願番号】FR2013052123
(87)【国際公開番号】WO2014049225
(87)【国際公開日】20140403
(31)【優先権主張番号】1259014
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(71)【出願人】
【識別番号】512227328
【氏名又は名称】エルクレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル・オン,ソン
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202AA12
3G202AB09
3G202BA09
3G202CA14
3G202EA09
3G202FA04
3G202FA11
(57)【要約】
本発明は、糸の三次元織りによって作成され、マトリックスで緻密化された繊維強化材を備えた複合材料製タービンエンジンブレード(10)であり、タービンエンジンブレードは一体部品を形成するエアフォイル(12)とブレード根元部(14)とを備え、ブレード根元部は、略平面であって複合材料製の2つの別個のパッド(24)間に締め付けられる両側に側方フランクを有し、パッドは、球状のブレード根元部を形成するようにブレード根元部の側方フランクに固定される、タービンエンジンブレードに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸の三次元織りによって作成され、マトリックスで緻密化された繊維強化材を備えた複合材料製タービンエンジンブレード(10)にして、タービンエンジンブレードは一体部品を形成するエアフォイル(12)とブレード根元部(14)とを備え、ブレード根元部は両側に略平面の側方フランク(22)を有するタービンエンジンブレードであって、ブレード根元部は複合材料製の2つの別個のパッド(24)間に締め付けられ、パッドは球状のブレード根元部を形成するようにブレード根元部の側方フランクに固定されることを特徴とする、タービンエンジンブレード。
【請求項2】
それぞれのパッド(24)が、ブレード根元部の側方フランクと接触する略平面の側方フランク(26)と、ブレード根元部支承面を再現する異なる輪郭を有する反対側の側方フランク(28)とを備える、請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
パッド(24)が、繊維プリフォームを成形して、成形プリフォームを緻密化することによって形成される、請求項2に記載のブレード。
【請求項4】
パッド(24)が、ろう付けによって、共緻密化によって、もしくはマトリックス付着によって、ブレード根元部の側方フランクに固定される、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載のブレード。
【請求項5】
エアフォイルおよびブレード根元部と一体形成されるプラットフォーム(18)をさらに含む、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載のブレード。
【請求項6】
ブレード根元部(14)およびパッド(24)が、セラミックマトリックス複合材料製である、請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載のブレード。
【請求項7】
パッド(24)が、SiC系繊維の繊維強化材で作成される、請求項6に記載のブレード。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項に記載の複数のブレード(10)を含む、タービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料製であり、ダブテール式接続によってロータディスクに取り付けるための球状の根元部を有するタービンエンジンブレードの一般的な分野に関する。
【背景技術】
【0002】
対象となる分野は、航空機エンジンもしくは工業用タービンのガスタービンブレードの分野である。
【0003】
複合材料からタービンエンジンブレードを製造する技術はすでに提案されている。例えば、出願人SnecmaおよびSnecma Propulsion Solideにより共同で出願された国際公開第2010/061140号パンフレットには、三次元織りで繊維プリフォームを作成し、プリフォームをマトリックスで緻密化することによってタービンエンジンブレードを製造する技術について記載されている。
【0004】
さらに、そのブレードをロータディスクに取り付けるために、ブレード根元部を球状にすることが周知である。球状のブレード根元部は、ロータディスクの周囲に形成された相補的形状のスロットと協働して、ダブテール式接続によりブレードをディスク上で半径方向に保持することができる。
【0005】
ブレードは複合材料製であるので、球状のブレード根元部は、一般に、ブレードとなる繊維ブランクを織る際に、ブレード根元部に肉厚部を形成し、その後、この肉厚部が最終の球状に機械加工されることによって作成される。実際に、肉厚部は、通常、繊維ブランクを織る際に、インサートを追加することで形成される。
【0006】
しかし、このような球状根元部を有する複合材料製ブレードの製造方法には、多くの欠点がある。具体的には、ブレード用の繊維ブランクを織る際に、インサートを作成してインサートを所定位置に取り付けるのは、非常に難しい作業となる。また、上記方法では、ブレード根元部の肉厚部が最終形状になるように機械加工される必要があるので、特に、ブレード根元部の支承面で繊維を切断してしまうことにより、複合材料の固有の特性を損なう結果となる。このことは、機械的強度の点で、ブレードの接続部の劣化をもたらす。
【0007】
さらに、仏国特許出願公開第2941487号明細書から周知であるのは、複合材料製ブレードをロータディスクに取り付ける方法である。この場合、ブレード根元部は、溶接ペグを使用して固定された金属板間に締め付けられる。この方法では、ブレードをロータディスク上で保持する主な力は、せん断力によってペグ内に吸収され、また孔に対する圧迫力によって複合材料内に吸収されてしまう。しかし、金属板の金属と根元部の複合材料との膨張差により、強固に固定されている場合、熱せん断応力が生じる、または緩く固定されている場合、支承面の位置決めが不確実になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/061140号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2941487号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、上述の欠点がなく、ダブテール式接続によってロータディスクに取り付けられる複合材料製ブレードを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、糸の三次元織りによって作成され、マトリックスで緻密化された繊維強化材を備えた複合材料製タービンエンジンブレードにして、ブレードは一体部品を形成するエアフォイルとブレード根元部とを備え、ブレード根元部は両側に略平面の側方フランクを有するブレードであって、本発明によれば、ブレード根元部は複合材料製の2つの別個のパッド間に締め付けられ、パッドは球状のブレード根元部を形成するようにブレード根元部の側方フランクに固定されるブレードによって達成される。
【0011】
したがって、本発明のブレード根元部は、複合材料製の3つの部分、すなわち、平板状根元部(平面側方フランクを有する)と球状輪郭を再現する2つのパッドとを有する。このブレードには、多くの利点がある。
【0012】
本発明のブレードは、製造の点で、ブレード根元部の平板状部分は球状より製造しやすいことから、簡略設計のブレードである。このことにより、ブレード根元部の品質が向上し、ブレード根元部の製造コストが低減される。さらに、ブレード根元部の種々の部分間の接合は、平面であって、(製造および検査に関して)正確に製造しやすい接触面で行われる。
【0013】
該ブレードの接続部の機械的強度の点では、ブレード根元部のパッドは、根元部が受ける非常に高いレベルの機械的応力に十分に適応した複合材料で製造されてもよい。特に、横糸に対する経糸の比率が最も高い材料、または一方向(すなわち、100%経糸であり、経糸方向はブレードの長手方向に伸びる)材料を使用するのが好ましい。このような材料の許容可能な応力レベルは、従来の形で織られたブレード根元部の材料の許容可能な応力レベルより大幅に高い。さらに、パッドは、外側に「網目」状の面、すなわち、最も大きい機械的応力を受けるゾーンに切断繊維が全くない面を形成するように作成される。最後に、ブレード根元部の種々の部分は複合材料製であるので、部品間の膨張差がなく、ひいては、これらの部分間の接触面に熱せん断応力が生じない。
【0014】
好ましくは、それぞれのパッドは、ブレード根元部の側方フランクと接触する略平面の側方フランクと、ブレード根元部支承面を再現する異なる輪郭を有する反対側の側方フランクとを備える。このような状況で、パッドは、繊維プリフォームを成形して、成形プリフォームを緻密化することによって形成される。
【0015】
パッドは、ろう付けによって、共緻密化によって、もしくはマトリックス付着によって、ブレード根元部の側方フランクに固定されてもよい。
【0016】
ブレード根元部およびパッドは、セラミックマトリックス複合材料(CMC)製としてもよい。パッドは、SiC系繊維の繊維強化材で作られるのが好ましい。
【0017】
本発明はさらに、上述の複数のブレードを含むタービンエンジンを提供する。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、非制限的な特徴を有する実施形態を示した添付図面を参照しながら説明される以下の記述から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のタービンエンジンブレードの組立方法を示した図である。
図2】組み立てられた図1のブレードの斜視図である。
図3図2のブレードの輪郭図である。
図4】本発明のブレード根元部をロータディスクに取り付けた時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、複合材料製の種々のタービンエンジンブレードに適用可能であり、特に、ガスタービンエンジンの圧縮機ブレードおよび種々のスプールのタービンブレード、例えば、図1図4に示されているような低圧タービンブレードに適用可能である。
【0021】
周知の形では、図1図4に示されているブレード10は、エアフォイル12と、タング16によって伸ばされた根元部14と、タング16とエアフォイル12との間に位置するプラットフォーム18とを備える。ブレードはさらに、自由端20(もしくは先端)の近くに外側プラットフォーム(図示せず)を有する場合もある。
【0022】
ブレードのエアフォイル12は、プラットフォーム18から先端20に(長手方向に)伸びる湾曲した空気力学的輪郭を有する。この輪郭は、異なる厚さを有する輪郭であり、前縁12cと後縁12dとによって横方向に接続される圧力側面12aと吸引側面12bとから成る。
【0023】
この例のブレードの根元部14は、球状であり、ロータディスクの周囲に形成されたスロット内にダブテール式接続によって取り付けるための部分である。
【0024】
ブレード10は、複合材料製であり、好ましくは、セラミックマトリックス複合材料(CMC)製である。例えば、国際公開第2010/061140号パンフレットには、三次元織りで繊維プリフォームを作成し、プリフォームをマトリックスで緻密化することによってタービンエンジンブレードを製造する例が記載されている。
【0025】
より詳細には、上記方法は、三次元織りで一体部品として繊維ブランクを作成するステップと、繊維ブランクを成形して、ブレードのエアフォイルおよび根元部用のプリフォームを形成する第1の部分と、ブレードの内側もしくは外側プラットフォーム用のプリフォームを形成する少なくとも1つの第2の部分とを有する一体部品としての繊維プリフォームを形成するステップと、その後、プリフォームをマトリックスで緻密化するステップとを含む。したがって、上記方法により、プリフォームで構成されマトリックスで緻密化された繊維強化材を有し、(内側および/または外側)プラットフォームが組み込まれた一体部品を形成する複合材料製ブレードを製造することができる。
【0026】
この特別な製造方法により、ブレード根元部14は、両側に側方フランク22を有する平板(すなわち、直方体)の形状を有し、側方フランク22は、略平面であり、エアフォイル12の圧力側面12aと吸引側面12bとがそれぞれ伸びるように形成される。
【0027】
本発明によれば、ブレード10の根元部14は、複合材料製の2つの別個のパッド24間で締め付けられ、パッドは球状のブレード根元部を形成するようにブレード根元部の側方フランク22に固定される。
【0028】
複合材料パッド24それぞれは、ブレード根元部14の側方フランク22と平面接触する略平面の側方フランク26(以降、「平面側方フランク」とする)と、ブレード根元部支承面を再現する異なる輪郭を有する反対側の側方フランク28(以降、「輪郭側方フランク」とする)とを有する。
【0029】
パッド24は、好ましくは、繊維ブランクを三次元織りした後、繊維ブランクを成形して所望の幾何学的形状を有する箇所の繊維プリフォームを形成し、その後、繊維プリフォームをマトリックスで緻密化することで形成される。特に、パッドの輪郭側方フランクに対応する繊維ブランクの側面は、ブレード根元部支承面の輪郭になるように成形される。
【0030】
繊維ブランクは、好ましくは、横糸に対する経糸の比率ができる限り高くなるように織られ、もしくは縦方向(縦方向とは製造されるブレードの長手方向に相当する)の糸のみで織られる。そのことにより、この材料の許容可能な応力は、ブレード根元部を製造するのに使用される材料の応力より大幅に大きくなる。
【0031】
さらに、パッドは、成形されるので、「網目」状の輪郭側方フランク28、すなわち、全く切断繊維のない面になるように作成することができる。パッドは最も高いレベルの機械的応力を受ける根元部の領域であるので、この網目状にする方法は、ロータディスクに対するブレード根元部の機械的強度を大幅に改善する。
【0032】
複合材料には、(ブレードの製造に関して)セラミックマトリックス複合材料を選択するのが好ましい。有利には、繊維強化材は、日本カーボン株式会社により「ハイニカロン(R)タイプS」の品名で販売されている炭化ケイ素系繊維で作られたものである。このような繊維は、ブレード根元部に優れた機械的強度を局所的に付与することができるという利点がある。
【0033】
さらに、パッドの摩擦挙動を改善するために、パッド24の輪郭側方フランク28に特定の表面コーティングを施すことができる。このコーティングは、任意でブレードのエアフォイルに施されるコーティングと異なってもよい。例えば、グラファイト、CoCrAlYSi、もしくはMoS2などの潤滑機能を有するコーティングを施すこともできる。
【0034】
パッド24は、複合材料製部品を固定するのに周知の方法によってブレード根元部14の側方フランク22に固定される。つまり、ろう付け、共緻密化、マトリックス付着、もしくは任意の他の同等の方法を使用することができる。この固定は、略平面の2つの表面間で行われるので、固定しやすい。
【0035】
当然、根元部を球状にするパッドを固定するのに使用されるのと同様の方法で、ブレード根元部に追加の要素を固定することが可能である。これらの要素は、ブレードに封止および/または傾斜防止機能を付与することによって、ブレードプラットフォームの設置を容易にすることができる。あるいは、これらの要素は、パッドに直接組み込まれてもよい。
【0036】
図4は、ロータディスク32の周囲に形成されたスロット30(もしくはソケット)に取り付けられた上記ブレード10を示した図である。一般に、このスロットは、ロータディスクの2つの側面間で軸方向に伸び、それぞれ球状のブレード根元部と相補的な形状のスロットである。
【0037】
図4では、ブレードの繊維ブランクおよびパッドの繊維ブランクの織物の経糸と横糸とが示されている。特に、ブレード根元部14の織物と比べて、パッド24の繊維ブランクは、有利には、縦方向の糸のみで織られているので、これらパッドが受けることができる応力を大幅に増加させることができることがわかる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】