特表2015-532403(P2015-532403A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532403(P2015-532403A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20151013BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20151013BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20151013BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   F16K31/06 305Z
   F16K31/06 305J
   F16K31/06 305K
   F16K47/02 D
   F02M51/06 Z
   F02M51/06 H
   F02M61/16 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-536119(P2015-536119)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】EP2013071111
(87)【国際公開番号】WO2014057012
(87)【国際公開日】20140417
(31)【優先権主張番号】102012218667.0
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ブレーク
(72)【発明者】
【氏名】ベアント グーゲル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミュールバウアー
【テーマコード(参考)】
3G066
3H066
3H106
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066BA31
3G066BA38
3G066CC01
3G066CC66
3G066CE22
3G066CE23
3G066CE24
3G066CE25
3H066AA01
3H066BA03
3H066BA13
3H106DA07
3H106DA12
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DB37
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE31
3H106EE36
3H106GA20
3H106GB01
3H106KK18
(57)【要約】
本発明は、ハウジング(20)、弁操作装置(15,26)及び閉鎖エレメント(35)を備えた電磁弁(10)であって、ハウジング(20)は、中心軸線(30)を備えた内室(25)を有しており、弁操作装置は、内室(25)内において中心軸線(30)に沿って移動可能に配置されたアクチュエータ(15)を有しており、該アクチュエータ(15)は、中心軸線(30)に沿ったアクチュエータ(15)の移動に伴って電磁弁(10)を開閉できるように、閉鎖エレメント(35)に作用結合されており、アクチュエータ(15)はハウジング(20)と共に該ハウジング(20)の内室(25)において、流体、特に燃料によって満たすことができる漏れ室(65)を画定している電磁弁(10)において、漏れ室(65)内においてハウジング(20)及び/又はアクチュエータ(90)に、流体渦(156,165)を漏れ室(65)内において生ぜしめるように設計された少なくとも1つの渦流発生器(95)が配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(20)、弁操作装置(15,26)及び閉鎖エレメント(35)を備えた電磁弁(10)であって、
前記ハウジング(20)は、中心軸線(30)を備えた内室(25)を有しており、
前記弁操作装置は、前記内室(25)内において前記中心軸線(30)に沿って移動可能に配置されたアクチュエータ(15)を有しており、
該アクチュエータ(15)は、前記中心軸線(30)に沿った前記アクチュエータ(15)の移動に伴って電磁弁(10)を開閉できるように、前記閉鎖エレメント(35)に作用結合されており、
前記アクチュエータ(15)は前記ハウジング(20)と共に該ハウジング(20)の前記内室(25)において、流体、特に燃料によって満たすことができる漏れ室(65)を画定している電磁弁(10)において、
前記漏れ室(65)内において前記ハウジング(20)及び/又は前記アクチュエータ(15)に、流体渦(156,165)を前記漏れ室(65)内において生ぜしめるように設計された少なくとも1つの渦流発生器(95)が配置されていることを特徴とする、電磁弁(10)。
【請求項2】
前記ハウジング(20)は、前記アクチュエータ(15)に向けられたハウジング端面(85)を有し、かつ前記アクチュエータ(15)は、前記ハウジング端面(85)に向けられたアクチュエータ端面(90)を有しており、前記漏れ室(65)は、前記アクチュエータ端面(90)と前記ハウジング端面(85)とによって画定されており、前記渦流発生器(95)は、アクチュエータ端面(90)及び/又は前記ハウジング端面(85)に配置されている、請求項1記載の電磁弁(10)。
【請求項3】
前記漏れ室(65)は、前記ハウジング(20)に配置された内周面(80)によって画定されており、前記渦流発生器(95)は、少なくとも1つの第1の案内面(110,125,130,180)を有しており、該第1の案内面(110,125,130,180)は、前記アクチュエータ端面(90)又は前記ハウジング端面(85)に対して傾けられかつ前記中心軸線(30)に向かう半径方向内側に向かって、前記内周面(80)に対して間隔をおいて配置されており、第1の案内面(110,125,130,180)は、流体の流れ方向を変向させるように構成されている、請求項1又は2記載の電磁弁(10)。
【請求項4】
第1の案内面(110,125,130,180)は、前記ハウジング端面(85)又はアクチュエータ端面(90)に対して、好ましくは90°〜160°、特に120°〜140°、特に132°〜138°の角度を有している、請求項2又は3記載の電磁弁(10)。
【請求項5】
第1の案内面(110,125,130,180)は、前記内室(25)の中心軸線(30)を中心にして回転対称に環状を成して前記渦流発生器(95)に配置されている、請求項3又は4記載の電磁弁(10)。
【請求項6】
前記渦流発生器(95)は、前記アクチュエータ端面(90)及び/又は前記ハウジング端面(85)から突出する少なくとも1つの凸部(100)を有している、請求項2から5までのいずれか1項記載の電磁弁(10)。
【請求項7】
第1の案内面(110)は、前記凸部(100)の周面に配置されている、請求項6記載の電磁弁(10)。
【請求項8】
前記渦流発生器(95)は少なくとも1つの凹部(105)を有していて、該凹部(105)は第2の案内面(125)を有しており、該第2の案内面(125)は、前記アクチュエータ端面(90)又は前記ハウジング端面(85)に対して傾けられ、かつ半径方向内側に前記中心軸線(30)に向かう方向で、前記内周面(80)に対して間隔をおいて配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁弁(10)。
【請求項9】
前記凹部(105)は、前記内室(25)の前記中心軸線(30)に対して半径方向で間隔をおいて配置されている、請求項8記載の電磁弁(10)。
【請求項10】
前記凹部(105)は溝状に形成されていて、前記内室(25)の前記中心軸線(30)を中心にして回転対称に環状に形成されている、請求項8又は9記載の電磁弁(10)。
【請求項11】
前記凸部(100)及び/又は凹部(105)は、ほぼ等脚台形の横断面を有している、請求項8から10までのいずれか1項記載の電磁弁(10)。
【請求項12】
前記凹部(105)の第2の案内面(125)は、前記凸部(100)の第1の案内面(110)に比べて、前記中心軸線(30)を基準として半径方向内側に位置するように配置されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の電磁弁(10)。
【請求項13】
前記凹部(105)は、第2の案内面(125)に向かい合って位置する第3の案内面(130)を有していて、第3の案内面(130)は、前記中心軸線(30)を基準として半径方向外側に位置するように第2の案内面(125)に対して間隔をおいて配置されており、第3の案内面(130)は、半径方向外側に前記漏れ室(65)の内周面(80)に向かって傾けられて配置されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の電磁弁(10)。
【請求項14】
前記アクチュエータ端面(90)又は前記ハウジング端面(85)と、第1〜第3の案内面(110,125,130,180)のうちの少なくとも1つとの間に、丸み部(185,190)が設けられている、請求項13記載の電磁弁(10)。
【請求項15】
前記ハウジング(20)の前記内周面(80)と前記アクチュエータ(15)との間に間隙が設けられていて、前記閉鎖エレメント(35)と前記アクチュエータ(15)との間において前記ハウジング(20)の内室(25)内に、制御室(75)が形成され、該制御室(75)は、流体によって満たすことができ、前記漏れ室(65)は、前記間隙を介して前記制御室(75)に接続されていて、前記渦流発生器(95)と前記間隙とが流体力学的に作用結合されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の電磁弁(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング、弁操作装置及び閉鎖エレメントを備えた電磁弁であって、ハウジングは、中心軸線を備えた内室を有しており、弁操作装置は、内室内において中心軸線に沿って移動可能に配置されたアクチュエータを有しており、該アクチュエータは、中心軸線に沿ったアクチュエータの移動に伴って電磁弁を開閉できるように、閉鎖エレメントに作用結合されており、アクチュエータはハウジングと共に該ハウジングの内室において、流体、特に燃料によって満たすことができる漏れ室を画定している電磁弁に関する。
【0002】
燃料流を制御する電磁弁が公知であり、このような電磁弁は、ハウジングを有していて、このハウジングは内室を有し、この内室内にはアクチュエータが配置されていて、このアクチュエータは、磁界によって内室内に移動可能である。アクチュエータはさらに弁体に連結されていて、この弁体は、アクチュエータの移動によって昇降させられて、ハウジングの出口開口を開閉することができる。またアクチュエータはハウジングの内室内に、運転中に燃料によって満たされている漏れ室を形成している。漏れ室内におけるアクチュエータの移動によって、漏れ室の容積は増減させられる。このとき容積の増大時には、漏れ室内において圧力降下が発生し、この圧力降下によって、漏れ室内においてキャビテーションつまり燃料ベーパの形成が引き起こされる。そしてキャビテーションがハウジングもしくはアクチュエータの表面に接触すると、キャビテーション侵食が生ぜしめられ、このキャビテーションは、ハウジングもしくはアクチュエータの表面を粗面化し、もしくは長期では、表面におけるキャビテーションの高い機械的な負荷によって表面を破壊してしまう。
【0003】
ゆえに本発明の課題は、キャビテーションによる、ハウジングもしくはアクチュエータの表面の破壊を防止する、改善された電磁弁を提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1の特徴的な構成によって解決される。好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明によれば、キャビテーションによる電磁弁の構成部材の破壊は、電磁弁がハウジング、弁操作装置及び閉鎖エレメントを有することによって回避することができる、という認識を得た。このときハウジングは、中心軸線を備えた内室を有している。そして弁操作装置は、内室において中心軸線に沿って移動可能に配置されたアクチュエータを有している。アクチュエータは、中心軸線に沿ったアクチュエータの移動に伴って電磁弁を開閉させることができるように、閉鎖エレメントに作用結合されている。さらにアクチュエータは、ハウジングと共に、ハウジングの内室内において、流体、特に燃料によって満たすことができる漏れ室を画定している。さらに漏れ室内においてハウジング及び/又はアクチュエータには、少なくとも1つの渦流発生器が配置されており、この渦流発生器は、漏れ室内において流体渦を生ぜしめるように設計されている。
【0006】
流体渦には次のような利点がある。すなわち、容積増大時、つまりアクチュエータの下降運動時に、ひいてはこれに起因して生じる漏れ室内における圧力降下時に、発生するキャビテーションもしくはこれに起因する燃料ベーパの発生が、燃料渦によってその渦流コア内に留められ、燃料渦流のサーキュレーションによって取り囲まれ、その結果ベーパと電磁弁との接触が、ひいては電磁弁におけるキャビテーション侵食が回避される。さらにベーパは、該ベーパが電磁弁の表面と接触するような場合でも、1つのポジションにおいて極めて短い滞在時間しか有しない。それというのは、ベーパは流体渦のサーキュレーションによってさらに引き離されるからである。
【0007】
別の態様では、ハウジングは、アクチュエータに向けられたハウジング端面を有し、かつアクチュエータは、ハウジング端面に向けられたアクチュエータ端面を有しており、漏れ室は、アクチュエータ端面とハウジング端面とによって画定されており、渦流発生器は、アクチュエータ端面及び/又はハウジング端面に配置されている。このように構成されていると、軸方向においてアクチュエータの移動のために必要な行程を小さく保つことができる。
【0008】
別の態様では、漏れ室は、ハウジングに配置された内周面によって画定されており、渦流発生器は、少なくとも1つの第1の案内面を有しており、該第1の案内面は、アクチュエータ端面又はハウジング端面に対して傾けられかつ中心軸線に向かう半径方向内側に向かって、内周面に対して間隔をおいて配置されており、第1の案内面は、流体の流れ方向を変向させるように構成されている。このように構成されていると、第1の案内面を用いて、漏れ室内に流入した流体流を変向させて、流体渦が第1の案内面によって生ぜしめられ得ることを、保証することができる。
【0009】
このとき特に好適な態様では、第1の案内面は、ハウジング端面又はアクチュエータ端面に対して、好ましくは90°〜160°、特に120°〜140°、特に132°〜138°の角度を有している。このような構成によって、内部に大量の燃料もしくはキャビテーション気泡を閉じ込めることができる、特に大きな渦流コアを提供することができる。
【0010】
渦流発生器を特に簡単に製造できる態様では、第1の案内面は、内室の中心軸線を中心にして回転対称に環状を成して渦流発生器に配置されている。
【0011】
別の態様では、渦流発生器は、アクチュエータ端面及び/又はハウジング端面から突出する少なくとも1つの凸部を有している。このような構成には、アクチュエータが軸方向においてコンパクトに構成されているという利点がある。
【0012】
特に好適な態様では、第1の案内面は、凸部の周面に配置されている。
【0013】
特に好適な別の態様では、渦流発生器は少なくとも1つの凹部を有していて、該凹部は第2の案内面を有しており、該第2の案内面は、アクチュエータ端面又はハウジング端面に対して傾けられ、かつ半径方向内側に中心軸線に向かう方向で、内周面に対して間隔をおいて配置されている。
【0014】
さらに好適な態様では、凹部は、内室の中心軸線に対して半径方向で間隔をおいて配置されている。
【0015】
凹部をアクチュエータに形成する特に簡単な態様では、凹部は溝状に形成されていて、内室の中心軸線を中心にして回転対称に環状に形成されている。これによって凹部は、汎用の旋削加工又はフライス加工を用いて又は鋳造によって安価に、アクチュエータ端面及び/又はハウジング端面に形成することができる。
【0016】
特に好適な態様では、凸部及び/又は凹部は、ほぼ等脚台形の横断面を有している。
【0017】
別の態様では、凹部の第2の案内面は、凸部の第1の案内面に比べて、中心軸線を基準として半径方向内側に位置するように配置されている。このように構成されていると、凸部の第1の案内面によって導入された流体渦により、流体渦のサーキュレーションが凹部の第2の案内面に沿ってさらに案内され、流体渦の形成が第2の案内面によって促進されることになる。
【0018】
流体渦形成のために特に好適な態様では、凹部は、第2の案内面に向かい合って位置する第3の案内面を有していて、第3の案内面は、前記中心軸線を基準として半径方向外側に位置するように第2の案内面に対して間隔をおいて配置されており、第3の案内面は、半径方向外側に漏れ室の内周面に向かって傾けられて配置されている。
【0019】
特に強い流体渦を形成するための態様では、アクチュエータ端面又はハウジング端面と、第1〜第3の案内面のうちの少なくとも1つとの間に、丸み部が設けられている。
【0020】
さらに、アクチュエータ端面及び/又はハウジング端面と、第1〜第3の案内面のうちの少なくとも1つとの間に、丸み部が設けられていると、流れに対して特に好適である。
【0021】
渦形成を促進することができるさらに別の好適な態様では、ハウジングの内周面とアクチュエータとの間に間隙が設けられていて、閉鎖エレメントとアクチュエータとの間においてハウジングの内室内に、制御室が形成され、該制御室は、流体によって満たすことができ、漏れ室は、間隙を介して制御室に接続されていて、渦流発生器と間隙とが流体力学的に作用結合されている。このように構成されていると、流体を弁室から漏れ室内に搬送することができ、この際に漏れ室において流体渦形成を促進することができる。
【0022】
本発明の上に述べた特性、特徴及び利点、並びにこれらの特性、特徴及び利点が得られる形態及び形式は、図面を参照しながら詳説する以下の実施の形態についての説明との関連において、さらに明瞭に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】上昇運動時における電磁弁を概略的に示す断面図である。
図2】電磁弁のアクチュエータを概略的に示す平面図である。
図3図1に示した電磁弁の下降運動時における状態を概略的に示す断面図である。
図4図1図3に示した電磁弁10とは別の実施の形態を概略的に示す断面図である。
【0024】
図1には、上昇運動時における電磁弁10が概略的に断面図で示されている。図2には、電磁弁10のアクチュエータ15が概略的に平面図で示されている。図3には、図1に示した電磁弁10の下降運動時における状態が概略的に断面図で示されている。以下においては図1図3を一緒に参照しながら説明する。図1図3において同一部材には同一の符号が使用されている。
【0025】
電磁弁10は、内室25を備えたハウジング20を有している。内室25内にはアクチュエータ15が配置されている。このアクチュエータ15は、ハウジング20の周囲に配置されたコイル26を用いて、内室25内で該内室の中心軸線30に沿って昇降運動することができる。そのためにコイル26は、図示されていない制御装置に接続されていて、コイル26には、電流が供給され得るようになっている。コイル26は、電流供給時に磁界を形成する。アクチュエータ15の下には磁極片27が配置されていて、この磁極片27は、ハウジング20の周囲に支持されている。磁極片27とハウジング20との間には、溝28が設けられている。アクチュエータ15は下側における第1の長手方向端部において、閉鎖エレメント35に結合されており、この閉鎖エレメント35は、閉鎖位置において弁座40に載置し、図1において下側に配置された入口45を、左側に配置された出口55から切り離す。閉鎖エレメント35と磁極片27との間には、磁極片27の収容部37内にばねエレメント36が配置されている。このばねエレメント36は閉鎖エレメント35をその周囲において取り囲んでいて、該ばねエレメント36の第1の長手方向端部でアクチュエータ15の第1の長手方向端部に支持されている。ばねエレメント36はその第2の長手方向端部で、磁極片27の収容部37を画定する段部38に支持されている。ばねエレメント36は圧縮コイルばねとして形成されていて、アクチュエータ15をばね力Fによって磁極片27から長手方向において離反する方向に、つまり図1及び図3において上方に向かって押圧する。さらに段部38は、閉鎖エレメント35をその周囲において取り囲み、かつ閉鎖エレメント35を上昇・下降運動時に案内するように設計されている。ばねエレメント36によって閉鎖エレメント35が持ち上げられると、閉鎖エレメント35の下における貫流部50が開放され、その結果入口45は電磁弁10の出口55に接続され、これにより燃料又はその他の流体は入口45から出口55に向かって流れることができる。入口45を閉鎖するために、コイル26には電流が供給され、これによりコイル26は磁界を形成する。この磁界はハウジング20を介して磁極片27に導入され、磁極片27はアクチュエータ15を引き付け、ひいてはばね力Fに対する反力Fを生ぜしめる。反力Fがばね力Fよりも大きいと、アクチュエータ15は磁極片27に向かって、アクチュエータ15がその端面で磁極片27に当接するまで、又は閉鎖エレメント35が弁座40に載置して入口45を閉鎖するまで、移動する。
【0026】
アクチュエータ15はこのとき内室25内で、第2の長手方向端部における背側で、つまり閉鎖エレメント35とは反対の側において、ハウジング20と一緒に、内室25内において漏れ室65を形成する。アクチュエータ15は、ハウジング20の内径Dよりも小さな直径Dを有しているので、アクチュエータ15とハウジング20との間には間隙70が設けられており、この間隙70を通して漏れ室65は、磁極片27の溝28を介して、内部に閉鎖エレメント35が配置されている制御室75に接続されている。このとき制御室75は、ハウジング20と磁極片27とによって画定される。このとき制御室75及び漏れ室65は、入口45を介して電磁弁10内に流入する流体によって満たされている。
【0027】
本実施の形態において制御室75は、溝28と間隙70とを用いて漏れ室65に接続されている。択一的に、閉鎖エレメント35と段部38との間における別の間隙又は溝も可能である。
【0028】
アクチュエータ15及びハウジング20の内周面80は、本実施の形態では中心軸線30に対して回転対称に形成されている。もちろん、アクチュエータ15もしくはハウジング20が円形横断面とは異なる横断面、例えば多角形、楕円形又は矩形の横断面を有することも可能である。漏れ室65は、内周面80の他にも、長手方向において、つまり中心軸線30の方向において、アクチュエータ15に向けられたハウジング端面85と、ハウジング端面85に向けられていてアクチュエータ15の第2の長手方向端部に配置されたアクチュエータ端面90とによって画定されている。ハウジング端面85及びアクチュエータ端面90はそれぞれ平らに形成されていて、中心軸線30に対して垂直に方向付けられている。もちろんハウジング端面85もしくはアクチュエータ端面90の湾曲した構成も可能である。また、ハウジング端面85もしくはアクチュエータ端面90が中心軸線30に対して斜めに配置されているような構成も可能である。
【0029】
漏れ室65内には、さらに渦流発生器95が設けられている。この渦流発生器95は、凸部(Ausbuchtung)100を有しており、この凸部100は、ハウジング端面85に配置されている。さらに渦流発生器95は、アクチュエータ端面90に配置された凹部105を有している。もちろん、凹部105がハウジング端面85に配置され、凸部100がアクチュエータ端面90に配置されるような構成も可能である。さらに凹部105及び凸部100が、同じ端面に、例えばアクチュエータ端面90又はハウジング端面85に配置されているような構成も可能である。さらにまた、ハウジング端面85及び/又はアクチュエータ端面90にそれぞれ単数又は複数の凹部105又は択一的に単数又は複数の凸部100が設けられているような構成も可能である。
【0030】
凸部100は、中心軸線30に対して斜めに配置された第1の案内面110を有している。さらにこの第1の案内面110は、半径方向でハウジング端面85から離反するように、内方に長手方向軸線30に向かって傾けられているので、凸部100は、長手方向においてアクチュエータ端面90に向かって先細になっている。第1の案内面110は、中心軸線30を中心にして回転対称に環状に配置されているので、凸部100は、漏れ室65内に進入する円錐台形状の形態を有している。第1の案内面110の回転対称の構成によって、凸部100は、横断面で見て等脚台形の形をしている。このとき第1の案内面110は凸部100の頂面115に対して、該頂面115が第1の案内面110と一緒に第1の剥離縁(Abrisskante)120を形成するように、方向付けられている。このとき頂面115は、内室25の中心軸線30に対して垂直に、ひいてはハウジング端面85に対して平行に方向付けられているので、剥離縁120は中心軸線30を中心にして該中心軸線30を円形に取り囲むように形成されている。
【0031】
もちろん、凸部100を、中心軸線30に対して横方向にずらしてハウジング端面85に配置するような構成も可能である。このとき凸部100は、非回転対称の構成を有することもできる。
【0032】
凹部105は、第2の案内面125と第3の案内面130とを有している。このとき凹部105は、溝状に形成されているので、第2の案内面125及び第3の案内面130は、溝の側面を形成している。第2の案内面125は、凹部底135を介して第3の案内面130に接続されている。第2の案内面125は、凸部100の第1の案内面110に対して半径方向内側に位置するように配置されている。第3の案内面130は、第1の案内面110及び第2の案内面125に対して半径方向外側に位置するように配置されている。第2の案内面125及び第3の案内面130は、共に中心軸線30に対して斜めに方向付けられており、このとき第2の案内面125は第3の案内面130に対して、次のように、すなわちこの場合凹部105が、ハウジング端面85に向かって開いていて、これにより凹部105が、該凹部105の、ハウジング端面85に向いた端部において、凹部底135におけるよりも広幅に形成され、ひいては横断面において等脚台形の形状を有するように、配置されている。凹部底135は、中心軸線30に対して横方向に方向付けられていて、中心軸線30を取り囲むようにリング状に該中心軸線30を中心にして回転対称に延びている。
【0033】
凹部105によって、アクチュエータ端面90への移行部で第2の案内面125の半径方向内側に位置して、第2の剥離縁145が形成されている。第2の剥離縁145に対して半径方向内側に位置して、アクチュエータ端面90の第1の部分140が設けられている。中心軸線30に対してアクチュエータ端面90が垂直に配置されていることに基づいて、中心軸線30に対して同心的に配置された第2の剥離縁145は、円形に形成されている。半径方向外側において、アクチュエータ端面90と第3の案内面130との間には第3の剥離縁155が形成されている。第3の剥離縁155もまた同様に円形に形成されていて、中心軸線30に対して同心的に配置されている。半径方向外側で第3の剥離縁155と内周面80との間に、アクチュエータ端面90の第2の部分150が配置されている。アクチュエータ端面90の第1の部分140及び第2の部分150は、同一平面において中心軸線30に対して垂直に配置されている。もちろん、第1の部分140が軸方向で中心軸線30の方向において第2の部分150に対して間隔をおいて配置されているような構成も可能である。
【0034】
ハウジング20の内室25内におけるアクチュエータ15の上昇運動時に燃料が押し出されると、燃料は漏れ室65から間隙70及び溝28を通って制御室75内に押し込まれる。このとき渦流発生器95によってもしくは凸部100及び凹部105によって、燃料流(図面の矢印参照)は漏れ室65内において、サーキュレーション160と、該サーキュレーション160の内部に位置する燃料渦流コア(Kraftstoffwirbelkern)165とを有する渦流156が漏れ室65内において生ぜしめられるように案内される。サーキュレーション160は図1及び図3において概略的に矢印によって象徴的に示されている。燃料渦流コア165は、破線を用いてマーキングされている。このときハウジング端面85に位置している燃料は、半径方向内側に向かって流れ、第1の案内面110によってアクチュエータ端面90に向かって変向される。漏れ室65を軸方向において縦断した後で、燃料流は第2の案内面125に衝突し、この第2の案内面125によって半径方向外側に向かって変向される。凹部底135を擦過して流れた後で、燃料流は第3の案内面130によってハウジング端面85に向かって変向され、その後で間隙70を通って制御室75内に流入する。燃料の連続的な伴流(ウェーク)と渦流発生器95の構成とによって、渦流156は、中心軸線が内室25の中心軸線30に位置する円環形状を有している。渦流156のサーキュレーション160は、上昇運動時にも下降運動時にも、凸部100と第1の部分140もしくは第2の案内面125との間において凸部100から凹部105に向かって回転する。燃料渦流156のサーキュレーション160によって、燃料渦流コア165においては負圧領域が形成されることになる。
【0035】
図3に示すように、アクチュエータ15が電磁弁10を閉鎖するために下降運動において案内され、これによって閉鎖エレメント35が弁座40に向かって移動すると、漏れ室65の容積は増大させられる。電磁弁10もしくはアクチュエータ15の移動が極めて迅速にかつ高いサイクルで行われることによって、漏れ室65内においては、下降運動時に形成される負圧に基づいて、ベーパ170もしくはキャビテーションが形成される。このようなベーパ170は、アクチュエータ15もしくは内周面80もしくはハウジング端面85の材料との接触時に、アクチュエータ15もしくはハウジング20の表面をキャビテーション侵食もしくは粗面化する。
【0036】
下降運動時には、間隙70及び溝28を通して燃料が制御室75から吸い込まれ、漏れ室65内に搬送される。このとき燃料は、内周面80に沿って内室25の中心軸線30に対して平行に、ハウジング端面85に向かって流れる。以下においては、図3において右側に示した燃料流について説明する。中心軸線30に対して平行に流入した燃料は、ハウジング端面85から半径方向内側に向かって凸部100へと変向され、これにより燃料はハウジング端面85に対して平行に案内される。第1の案内面110は燃料をアクチュエータ端面90に向かって変向するので、燃料は第1の案内面110から第2の案内面125に向かって流れる。第2の案内面125は燃料流を凹部底135に向かって導くので、これにより燃料流は、ほぼ中心軸線30に対して垂直に半径方向外側に向かって流れる。第3の案内面130は燃料流を再び変向させ、このとき燃料流はハウジング端面85に向かって流れ、間隙70を通って流れる追従する燃料と一つになる。これによって、円環形状の回転する渦流156がハウジング端面85とアクチュエータ端面90との間において形成される。漏れ室65における圧力低下によって形成されるベーパ170もしくはキャビテーションは、燃料渦流コア165における負圧領域によって捕捉され、サーキュレーション160によって、ベーパ170が電磁弁10の材料と接触すること、ひいてはこれにより電磁弁10が損傷することが防止される。渦流156の円環形状には次のような利点がある。すなわちこの場合、特に高くかつ大きく形成された燃料渦流コア165が、中心軸線30を中心にしてリング状に漏れ室65内において形成されることによって、漏れ室65において特に多くのベーパ170を捕捉することができる。さらに円環形状の渦流156は、特に高い安定性を有している。さらに渦流発生器95の構成によって、渦流156には、アクチュエータ15の上昇運動時にも下降運動時にも、エネルギが供給されるので、渦流156は漏れ室65内において安定して回転し、かつ特に高いサーキュレーション160を有している。このとき安定した燃料渦流コア165は、燃料流が案内面110,125,130とカバー面115,140,150との間に配置された各剥離縁120,145,155において剥離するように、案内面110,125,130がハウジング端面85もしくはアクチュエータ端面90に対して配置されている場合にしか、形成されない。
【0037】
図4には、図1図3に示した電磁弁10に対する択一的な実施の形態が、概略的に断面図で示されている。電磁弁10は、図1図3に示した電磁弁10とほぼ同じに形成されている。図1図3に示した電磁弁10とは異なり、案内面110,125,130は、中心軸線30に対して平行に、つまりハウジング端面85もしくはアクチュエータ端面90に対して垂直に配置されている。燃料渦流156のサーキュレーション160を改善するために、図4において例えば中心軸線30の右側に示すように、案内面110,125,130と対応するハウジング端面85もしくはアクチュエータ端面90との間において、各剥離縁120,145,155には丸み部185が設けられている。同様に第2もしくは第3の案内面125,130と凹部底135との間には、別の丸み部190が設けられている。しかしながら択一的に、剥離縁185,190を、図1図3及び図4において中心軸線30の左側に示されているように、鋭い縁部をもって形成することも可能である。これによって剥離縁185,190における燃料の流れの確実な剥離が保証される。
【0038】
本発明は、細部にわたって好適な実施の形態によって詳しく図示されかつ説明されたにもかかわらず、本発明は、開示された実施の形態に制限されるものではなく、本発明の保護範囲を逸脱することなしに、当業者が他の変化態様を導くことも可能である。
【0039】
例えば、角隅領域に、つまりハウジング端面85とハウジング20の内周面80との間の移行領域に、第4の案内面180(図4の点線参照)を配置することも可能である。このように構成されていると、間隙70を通って既に流入した燃料流を、第4の案内面180によって凸部100に向かって変向させ、これによって高められたサーキュレーション160を得ることができる。
【0040】
また、凸部100もしくは凹部105を、図示の構成に比べて広幅又は狭幅に構成することも可能である。もちろんまた、2つ以上の凹部105を設けることも可能である。凹部105に向かい合って位置する凸部100の配置形態の代わりに、ハウジング端面85もしくはアクチュエータ端面90に各1つの凸部100もしくは各1つの凹部105を配置することも可能である。
【0041】
電磁弁10は、図1図4において動力用燃料(Kraftstoff)によって満たされる。もちろん、特に水、動力用燃料以外の燃料(Brennstoff)又はオイルのような別の流体によって、電磁弁10を満たすこともまた可能である。しかしながら渦流発生器95は、流体の粘度に関連して構成されねばならない。
【0042】
第1の案内面110は、ハウジング端面85に対して第1の角度αを成している。第2の案内面125もしくは第3の案内面130は、アクチュエータ端面90に対して第2の角度βもしくは第3の角度δを成している。これらの角度α,β,δは、好ましくは90°〜160°、特に120°〜140°、特に132°〜138°である。角度α,β,δは、図示の実施の形態では等しい大きさに選択されている。もちろんこれらの角度α,β,δを互いに異なった値に選択することも可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】