特表2015-532439(P2015-532439A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表2015532439-空気質量計 図000003
  • 特表2015532439-空気質量計 図000004
  • 特表2015532439-空気質量計 図000005
  • 特表2015532439-空気質量計 図000006
  • 特表2015532439-空気質量計 図000007
  • 特表2015532439-空気質量計 図000008
  • 特表2015532439-空気質量計 図000009
  • 特表2015532439-空気質量計 図000010
  • 特表2015532439-空気質量計 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532439(P2015-532439A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】空気質量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/692 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   G01F1/692 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-538352(P2015-538352)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013069805
(87)【国際公開番号】WO2014063884
(87)【国際公開日】20140501
(31)【優先権主張番号】102012219304.9
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トアステン クニッテル
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン セテシャック
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA02
2F035EA05
2F035EA08
(57)【要約】
本発明は、空気質量計であって、該空気質量計が、マイクロマシニング型の構造形態で形成されたセンサエレメントを備えており、該センサエレメントが、加熱素子を有しており、センサエレメントに、加熱素子(12)を基準として上流側には第1の温度センサ素子が配置されていて、加熱素子を基準として下流側には第2の温度センサ素子が配置されており、第1の温度センサ素子が、第1の幅(BT1)と第1の長さ(LT1)とを有しており、第2の温度センサ素子が、第2の幅(BT2)と第2の長さ(LT2)とを有している空気質量計に関する。センサエレメントの汚染による測定結果の悪化を排除するかまたは少なくとも狭い範囲にとどめるために、第1の温度センサ素子の第1の幅(BT1)が、第2の温度センサ素子の第2の幅(BT2)よりも大きく寸法設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気質量計(2)であって、該空気質量計(2)が、マイクロマシニング型の構造形態で形成されたセンサエレメント(15)を備えており、該センサエレメント(15)が、加熱素子(12)を有しており、センサエレメント(15)に、加熱素子(12)を基準として上流側には第1の温度センサ素子(7)が配置されていて、加熱素子(12)を基準として下流側には第2の温度センサ素子(8)が配置されており、第1の温度センサ素子(7)が、第1の幅(BT1)と第1の長さ(LT1)とを有しており、第2の温度センサ素子(8)が、第2の幅(BT2)と第2の長さ(LT2)とを有している空気質量計において、
第1の温度センサ素子(7)の第1の幅(BT1)が、第2の温度センサ素子(8)の第2の幅(BT2)よりも大きく寸法設定されていることを特徴とする、空気質量計。
【請求項2】
第2の温度センサ素子(8)の第2の長さ(LT2)が、第1の温度センサ素子(7)の第1の長さ(LT1)よりも大きく寸法設定されている、請求項1記載の空気質量計。
【請求項3】
第1の温度センサ素子(7)の第1の幅(BT1)が、第2の温度センサ素子(8)の第2の幅(BT2)よりも少なくとも10%大きく寸法設定されている、請求項1または2記載の空気質量計。
【請求項4】
第2の温度センサ素子(8)の第2の長さ(LT2)が、第1の温度センサ素子(7)の第1の長さ(LT1)よりも少なくとも10%大きく寸法設定されている、請求項2または3記載の空気質量計。
【請求項5】
第1の温度センサ素子(7)の第1の幅(BT1)が、第2の温度センサ素子(8)の第2の幅(BT2)よりも少なくとも30%大きく寸法設定されている、請求項1または2記載の空気質量計。
【請求項6】
第2の温度センサ素子(8)の第2の長さ(LT2)が、第1の温度センサ素子(7)の第1の長さ(LT1)よりも少なくとも30%大きく寸法設定されている、請求項2または3記載の空気質量計。
【請求項7】
第1の温度センサ素子(7)の第1の幅(BT1)が、第2の温度センサ素子(8)の第2の幅(BT2)よりも少なくとも50%大きく寸法設定されている、請求項1または2記載の空気質量計。
【請求項8】
第2の温度センサ素子(8)の第2の長さ(LT2)が、第1の温度センサ素子(7)の第1の長さ(LT1)よりも少なくとも50%大きく寸法設定されている、請求項2または3記載の空気質量計。
【請求項9】
第1の温度センサ素子(7)の第1の幅(BT1)と第1の長さ(LT1)との積が、第2の温度センサ素子(8)の第2の幅(BT2)と第2の長さ(LT2)との積と等しく設定されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の空気質量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロマシニング型の構造形態で形成されたセンサエレメントを備えた空気質量計に関する。
【0002】
空気質量計は、たとえば自動車において、内燃機関により吸い込まれる空気質量を検知するために使用される。吸い込まれる空気質量に関する可能な限り信頼のおける情報をベースとして、空気質量に正確に合わせて調整された燃料量が各燃焼室に供給されるように、内燃機関の電子的な制御装置によって燃焼を最適化することができる。これによって、結果的に、有害物質排出が低減されると同時にエネルギのより良好な利用が達成される。
【0003】
独国特許出願公開第4407209号明細書に基づき、空気質量計が公知である。この公知の空気質量計は、空気質量の測定のために、吸気通路内に差し込まれ、総流のうちの規定の割合量が、空気質量計を通流する。このためには、空気質量計が、差込み通路式空気質量計として形成されている。空気質量計は、測定通路内に配置されたセンサエレメントと、ハウジング内に配置されていて、センサエレメントの測定値を評価しかつ/または検出するための電子装置と、センサエレメントを越えた側の流出通路とを有している。スペースを節約した配置のために、上述した通路もしくは空気案内路は、U字形、S字形またはC字形に形成されており、これによって、差込エレメントとして形成された全体的にコンパクトな装置が形成される。
【0004】
国際公開第03/089884号の教示によりホットフィルム式アネモメータとして形成された空気質量計は、原理的に確証されている。
【0005】
MEMS(mikroelektromechanische Systeme)、つまり、マイクロマシニング技術により製造されたシステムとして形成されたセンサエレメントの根底のもと作業する現代の空気質量計の開発に際して、センサエレメントの測定結果に、特に汚染物によって不利な影響が与えられることが判った。たとえば空気質量流内の油滴により生じる汚染物によって、所定の期間を超えると、センサエレメントにおいて、空気質量流に対する測定値を悪化させる信号ドリフトが生じてしまう。しかしながら、MEMSとして形成されたセンサエレメントは、断念すべきでない多数の利点を有しており、したがって、本発明の課題は、センサエレメントの汚染による測定結果の悪化を排除するかまたは少なくとも狭い範囲にとどめることである。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0007】
この課題は、本発明によれば、第1のセンサエレメントの第1の幅が、第2のセンサエレメントの第2の幅よりも大きく寸法設定されていることによって解決される。本発明は、相対的に少ない幅を有する第2の温度センサ素子の縁領域に汚染物がほとんど堆積しないという利点を有している。
【0008】
本発明の改良態様では、第2の温度センサ素子の第2の長さが、第1の温度センサ素子の第1の長さよりも大きく寸法設定されている。この改良態様によって、両温度センサ素子相互の面積の適合が可能となる。これによって、空気質量計の信号品質を大幅に改善することができる。
【0009】
これに加えて、第1の温度センサ素子の第1の幅が、第2の温度センサ素子の第2の幅よりも少なくとも10%大きく寸法設定されており、第2の温度センサ素子の第2の長さが、第1の温度センサ素子の第1の長さよりも少なくとも10%大きく寸法設定されていると有利である。
【0010】
本発明の態様の範囲内では、第1の温度センサ素子の第1の幅が、第2の温度センサ素子の第2の幅よりも少なくとも30%大きく寸法設定されており、第2の温度センサ素子の第2の長さが、第1の温度センサ素子の第1の長さよりも少なくとも30%大きく寸法設定されている。
【0011】
更なる態様では、第1の温度センサ素子の第1の幅が、第2の温度センサ素子の第2の幅よりも少なくとも50%大きく寸法設定されており、第2の温度センサ素子の第2の長さが、第1の温度センサ素子の第1の長さよりも少なくとも50%大きく寸法設定されている。
【0012】
1つの改良態様では、第1の温度センサ素子の第1の幅と第1の長さとの積が、第2の温度センサ素子の第2の幅と第2の長さとの積と等しく設定されている。これによって、第1の温度センサ素子と第2の温度センサ素子との可能な限りむらのない信号強さを達成することができる。
【0013】
本発明の更なる特徴および利点は、図面に関連した以下の実施の形態の説明に記載してある。以下、それぞれ異なる図面を通じて、同じ概念および符号が同一の構成エレメントに使用してある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】空気質量計を示す図である。
図2】MEMSとして形成されたセンサエレメントを示す図である。
図3】空気質量計の補助管内に配置された、MEMSとして形成されたセンサエレメントを示す図である。
図4】空気質量流が流入開口を通って空気質量計の補助管内に流入している状況を示す図である。
図5】差込みフィンガとして吸気管内に組み込まれた空気質量計に設けられた、MEMSとして形成されたセンサエレメントを示す図である。
図6】第1の温度センサ素子と第2の温度センサ素子とを有するセンサエレメントを示す図である。
図7】熱電対列を備えた空気質量計のセンサエレメントを示す図である。
図8】前図に基づき公知のセンサエレメントを示す図である。
図9】第1の温度センサ素子と第2の温度センサ素子との非対称的な構成を示す図である。
【0015】
図1には、質量流量センサが示してある。この質量流量センサは、本実施の形態では空気質量計2として形成されている。この空気質量計2は、本実施の形態では差込みフィンガとして図示してある。この差込みフィンガは吸気管1内に差し込まれ、この吸気管1に固く結合されている。この吸気管1は、本実施の形態では空気質量流10である質量流を内燃機関のシリンダに向かって案内する。燃料を内燃機関のシリンダ内で効率よく燃焼させるためには、提供される空気質量に関する正確な情報を得ることが必要となる。提供される空気質量に基づき、シリンダ内に噴射された燃料を燃焼させるために必要となる利用可能な酸素量を推測することができる。さらに、図1に示した空気質量計2は、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とを有している。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とは、互いに異なる箇所に配置されている。温度センサ素子7,8は、通常、各温度センサ素子7,8に発生させられた温度に相応して、互いに異なる抵抗値をとる抵抗体または熱電対列から形成されている。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間には、加熱素子12が形成されている。空気質量計2のハウジング3内に流入開口4を通って流入した空気質量流10の部分は、まず、第1の温度センサ素子7、その後、加熱素子12を越えて流れる。次いで、空気質量流10は第2の温度センサ素子8に達し、補助管5に沿って空気質量計2の流出開口6に案内される。空気質量流10は、第1の温度センサ素子7に、規定の温度を伴って達する。この温度は、第1の温度センサ素子7により絶対温度として検出される。その後、空気質量流10が加熱素子12を擦過する。このとき、空気質量流10が、通過する質量に応じて多少なりとも加熱される。加熱された空気質量流10が第2の温度センサ素子8に達すると、空気質量流10の目下の温度が、第2の温度センサ素子8により絶対温度として測定される。第1の温度センサ素子7により測定された絶対温度と、第2の温度センサ素子8により測定された絶対温度との差から、通過する空気質量を算定することができる。このためには、空気質量計2自体が、第1の温度センサ素子7の測定信号と第2の温度センサ素子8の測定信号とを評価する評価電子装置13を有していてよい。このようにして得られた空気質量流10に関する情報は、エンジン制御装置(図示せず)に伝送される。
【0016】
念のために付言しておくと、本発明は空気質量計に基づき例説してあるが、このことは、本発明を空気質量流量の測定に限定することを意味するものではない。本発明による装置によって、別種の質量流量をも有利に検出しかつ測定することができる。たとえば、本発明による装置によって、炭化水素タンクのパージ管路内の炭化水素化合物の質量流量を測定することも可能である。
【0017】
図2には、空気質量計2に用いられるセンサエレメント15が示してある。このセンサエレメント15は、ただ1つのシリコンチップにMEMSとして形成されている。センサエレメント15は差温度法により作業する。これによって、通過する空気量の質量10が算定される。このためには、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とが、肉薄のダイヤフラム17に形成される。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とは、ダイヤフラム17の表面16の互いに異なる箇所に位置している。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間には、加熱素子12が配置されている。さらに、MEMSとして形成されたセンサエレメント15には、評価電子装置13が組み込まれている。この評価電子装置13は、温度センサ素子7,8の測定信号を即座に評価し、この測定信号を、空気質量流10に比例した信号に変換することができる。しかしながら、評価電子装置13は、後続接続された電子的な機器に良好に組み込まれていてもよい。その後、空気質量流10に関する情報が、接続パッド19と接続ワイヤ18とを介して後続の電子的なエンジン制御装置(図示せず)に伝送される。
【0018】
図3には、空気質量計2に用いられる、MEMSとして形成されたセンサエレメント15が示してある。このセンサエレメント15は、ただ1つの基板に形成されている。この基板は、空気質量計2の補助管5内に配置されている。図3では、空気質量流10が流入開口4を通って流れていない。これは、たとえば内燃機関が停止されている形態に該当する。この状態は、「ゼロ質量流」と呼ばれる。センサエレメント15に設けられた加熱素子12に電気的なエネルギが供給されると、この加熱素子12の周りに、図3に示した対称的な温度分布20が形成される。これによって、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とが、互いに等しい絶対温度を測定し、評価電子装置13によって、温度センサ素子7,8の温度測定信号の差形成により、空気質量計2の補助管5内に空気質量流10が存在していないことが認識される。しかしながら、ゼロ質量流の際の温度測定信号のこの理想的な一致は、たとえばセンサエレメント15における不純物によって妨害されてしまう。
【0019】
図4には、空気質量流10が流入開口4を通って空気質量計2の補助管5内に流入している状況が示してある。加熱素子12の周りの温度分布20は、明確に認めることができるように、第2の温度センサ素子8の方向に変位させられている。これによって、第2の温度センサ素子8が、第1の温度センサ素子7よりも著しく高い温度を測定している。評価電子装置13での両温度センサ素子7,8の差温度の確定によって、空気質量流量10を算定することができる。しかしながら、センサエレメント15上の汚染物による影響が相変わらず有効であり、測定結果に重ねられてしまう恐れがある。温度の和は、質量流10にも同様に反応する。しかしながら、さらに、温度の和は、空気質量の熱的な特性、たとえば通過する空気質量流10の熱容量および/または熱伝導率にも反応する。たとえば、等しい空気質量流10のまま、空気質量の熱伝導率が高められると、システムが冷却され、温度の和は著しく小さくなる。しかしながら、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との差温度は、ほぼ不変のままである。したがって、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間の和信号によって、空気質量の熱的な特性、たとえば熱容量または熱伝導率の変化を測定することができる。こうして、差温度信号が和温度信号によって相殺される場合に、通過する空気質量の熱伝導率および/または熱容量の変化を推測することができる。
【0020】
図5には、吸気管1内に差込みフィンガとして組み込まれたMEMSとして形成された空気質量計2内のセンサエレメント15が示してある。この実施の形態でも、空気質量流10は流入開口4に達して、補助管5内に流入する。ダイヤフラム17の表面16には、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とを認めることができる。この第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間には、加熱素子12が配置されている。空気質量流10は、まず、第1の温度センサ素子7に達し、次いで、加熱素子12を擦過し、その後、第2の温度センサ素子8に達する。
【0021】
図5には、空気質量流10が汚染物9も含んでいることを認めることができる。空気質量流10によって、たとえば水滴26、油滴11および/またはダスト粒子14が、空気質量計2に向かって搬送される。汚染物9は、空気質量計2の流入開口4を通ってセンサエレメント15にまで達する。汚染物9が、第1の温度センサ素子7および第2の温度センサ素子8の領域に堆積すると、時間が経つにつれ、空気質量流10に対する測定値が大幅に悪化してしまう。センサエレメント15への汚染物9の蓄積によるこの悪化は、長い期間にわたってますます増大させられるので、これに相俟って、空気質量計2の信号ドリフトについても言及しておく。この信号ドリフトは所望されておらず、抑圧かつ/または相殺されることが望ましい。
【0022】
図6には、第1の温度センサ素子7と、第2の温度センサ素子8と、両温度センサ素子7,8の間に配置された加熱素子12とを備えたセンサエレメント15が示してある。矢印によって、空気質量流10の方向が図示してある。これによって、この空気質量流10の流れ方向で見て、加熱素子12の上流側に第1の温度センサ素子7が位置しており、加熱素子12の下流側に第2の温度センサ素子8が位置している。第1の温度センサ素子7も第2の温度センサ素子8も、この実施の形態では、1つの測定抵抗体22と、少なくとも2つの比較抵抗体21とから、電気的な直列回路として形成されている。認めることができるように、測定抵抗体22は、肉薄のダイヤフラム17の内寄りの領域に配置されており、比較抵抗体21は、ダイヤフラム17の縁領域に配置されている。
【0023】
さらに、図6には、汚染物9、この実施の形態では特に油滴11が、空気質量流10によってセンサエレメント15に搬送されることが示してある。特に油滴11は、センサエレメント15に堆積する。明確に認めることができるように、センサエレメント15への油滴11の堆積は、空気質量流10の流れ方向で見て加熱素子12の下流側に設けられた第2の温度センサ素子8の領域に特に激しく生じている。センサエレメント15への油滴11のこの非対称的な堆積は信号ドリフトを招き、この信号ドリフトは、最終的に、センサエレメント15により検出される絶対温度の悪化ひいては空気質量流10に対する測定値の悪化を招いてしまう。さらに、汚染物9の堆積は、好適にはダイヤフラム17の縁領域に生じる。油滴11の非対称的な堆積には、物理的な理由がある。その大本の理由は、特に第2のセンサ素子8の領域における相対的に高い温度と、ダイヤフラム17の縁領域における温度勾配とにある。
【0024】
図7には、空気質量計2のセンサエレメント15が示してある。このセンサエレメント15の第1の温度センサ素子7および第2の温度センサ素子8は、熱電対列23として形成されている。多数の熱電対23とも呼ばれる熱電対列23は、熱を電気的なエネルギに変換する。熱電対23は、一端で互いに接続されている二種類の金属から成っている。温度差によって、金属内での熱の流れに基づき、電圧が発生させられる。
【0025】
1つの導体の互いに異なる温度の2つの箇所の間に電位差が生じることは、ゼーベック効果と呼ばれる。電位差は温度差にほぼ比例しており、導体材料に左右される。測定のためのただ1つの導体の両端が等しい温度にある場合、電位差は常に打ち消されている。しかしながら、二種類の導体材料が互いに接続されると、熱電対23が形成される。ゼーベック効果をベースとした測定システムでは、通常、極めて多くの個々の熱電対23が直列に接続される。
【0026】
測定目的に合わせて材料対を選択する場合には、温度変化と電圧変化との間の高い線形性に関連して、可能な限り高い熱電圧が発生させられることが望ましい。図7に示した熱電対列23は、接続箇所28でそれぞれ第2の金属25に結合されている第1の金属24の列から成っている。
【0027】
図7に明確に認めることができるように、多数の熱電対23から形成された第2の温度センサ素子8の領域には、特に油滴11の形態の汚染物9が堆積している。この汚染物9は、温度センサ素子7,8により測定される絶対温度の悪化を招いてしまう。その結果として生じる信号ドリフトについては、すでに前図の説明において述べてある。
【0028】
図8には、前図に基づき公知のセンサエレメント15が示してある。この公知のセンサエレメント15は、マイクロマシニング型の構造形態で形成されていて、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とを有している。この第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間には、加熱素子12が配置されている。第1の温度センサ素子7と、第2の温度センサ素子8と、加熱素子12とは、肉薄のダイヤフラム17に形成されている。第1の温度センサ素子7は、第1の幅BT1と第1の長さLT1とを有している。第2の温度センサ素子8は、第2の幅BT2と第2の長さLT2とを有している。この実施の形態では、第1の温度センサ素子7の第1の長さLT1が、製造公差の範囲内で、第2の温度センサ素子8の第2の長さLT2に等しく寸法設定されている。また、第1の温度センサ素子7の第1の幅BT1も、製造公差の範囲内で、第2の温度センサ素子8の第2の幅BT2に等しく寸法設定されている。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8とは、測定抵抗体22または熱電対列23として形成されていてよい。肉薄のダイヤフラム17への第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との配置は、軸方向で対称的に行われる。この実施の形態では、加熱素子12が、両温度センサ素子7,8に対する対称軸線を成している。
【0029】
図9には、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との、加熱素子12により形成された対称軸線に対して非対称的な構成が示してある。図9に示したセンサエレメント15は、図8に示したセンサエレメント15にほぼ相当しているものの、この実施の形態では、第1の温度センサ素子7の第1の幅BT1が、第2の温度センサ素子8の第2の幅BT2よりも著しく大きく寸法設定されている。さらに、図9では、第1の温度センサ素子7の第1の長さLT1が、第2の温度センサ素子8の第2の長さLT2よりも著しく小さく寸法設定されている。第1の温度センサ素子7の第1の幅BT1および第1の長さLT1と、第2の温度センサ素子8の第2の幅BT2および第2の長さLT2との互いに異なる寸法設定によって、汚染に起因した空気質量計2の信号ドリフトを有効に抑圧することができる。これによって、空気質量計2の測定結果が長い期間にわたって極めて安定した状態で提供される。したがって、熱力学的な理由に基づき、汚染物9、特に油滴11が第2の温度センサ素子8の縁領域に堆積し得ないので、センサエレメント15が非対称的に形成されている場合の信号ドリフトの抑圧が効果的となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】