(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532441(P2015-532441A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】溶接バイメタル時計外部構成部品
(51)【国際特許分類】
G04B 37/22 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
G04B37/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-538357(P2015-538357)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月22日
(86)【国際出願番号】EP2013070014
(87)【国際公開番号】WO2014072121
(87)【国際公開日】20140515
(31)【優先権主張番号】12191479.0
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】クヌッヒェル,ダニエル
(57)【要約】
時計の外部構成部品(100)を製造する方法であって:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金である第1の材料製の金属基材(10)を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート(20)を提供し、上記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、上記少なくとも1つのカバープレート(20)の厚さ(E)は0.5ミリメートル以上であり;
‐上記少なくとも1つのカバープレート(20)を上記基材(10)に溶接して、バイメタルブランク(30)を形成し;
‐上記バイメタルブランク(30)を成形及び/又は機械加工して上記構造性構成部品(100)にその最終形状を与える
ことを特徴とする、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の外部構成部品(100)を製造する方法であって:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材(10)を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート(20)を提供し、前記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、前記少なくとも1つのカバープレート(20)の厚さ(E)は0.5ミリメートル以上であり;
‐前記カバープレート(20)及び前記基材(10)を、前記カバープレート(20)の溶融温度及び前記基材(10)の溶融温度より高い温度にすることにより、前記少なくとも1つのカバープレート(20)を前記基材(10)に、溶加材を用いずに溶接して、バイメタルブランク(30)を形成し;
‐前記バイメタルブランク(30)を成形及び/又は機械加工して、前記構造性構成部品(100)に最終形状を与える
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
溶接作業の前は平坦である前記基材(10)を提供し、溶接作業の前は平坦である前記カバープレート(20)を提供し、前記基材(10)と前記カバープレート(20)との間の前記溶接作業を下向き姿勢で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の合金及び前記第2の合金は、ニッケルを含有しないよう選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
グレード2のチタン又はグレード5のチタン又はT35チタンであるチタン合金を、前記基材(10)の前記第1の材料として選択することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
18カラット金合金又は少なくとも95%の白金を含む白金合金又は少なくとも75%のパラジウムを含むパラジウム合金を、前記第2の材料として選択することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
18カラット5N金合金を、前記第2の材料として選択することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バイメタルブランク(30)は、型押し及び/又は絞り加工による変形によって成形されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記バイメタルブランク(30)を機械加工して、前記カバープレート(20)を局所的に除去することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基材(10)は、賦形加工済みバー(11)の形態で選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記カバープレート(20)は、少なくとも1つの切欠き(21)及び/又は貫通開口(22)を有するように予備機械加工されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基材(10)及び前記カバープレート(20)は、互いに対して溶接される前に、前記溶接作業前に前記基材及び前記プレートの幾何学的形状を適合させるため、並びに前記溶接作業中に前記基材及び前記プレートを互いに対して保持するための、隆起した及び/又は窪んだ基準点(15;25)を有した状態で準備されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記カバープレート(20)は前記基材(10)に対して、前記カバープレート(20)及び前記基材(10)の共通の接触表面全体にわたって溶接されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記カバープレート(20)は前記基材(10)に対して、前記基材(10)に面する前記カバープレート(20)の表面(26)の一部分のみにおいて、及び/又は前記カバープレート(20)に面する前記基材(10)の表面(16)の一部分のみにおいて、溶接されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接は、前記カバープレート(20)と前記基材(10)との間の接合表面(S0)のすぐ下で実施されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶接はレーザ溶接であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶接は超音波溶接であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記カバープレート(20)を前記基材(10)に溶接する前に、前記カバープレート(20)又は前記基材(10)に対して、前記カバープレート(20)又は前記基材(10)をそれぞれ前記基材(10)又は前記カバープレート(20)に圧着するための機械的変形操作を実施することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記機械的変形操作は前記カバープレート(20)に対して実施されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
時計の外部構成部品(100)であって、
前記構成部品はチタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材(10)と、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含む第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート(20)とを含むバイメタル材料で作製され、前記カバープレート(20)は、少なくとも1つの溶接領域において前記基材(10)と直接接触し、前記少なくとも1つの溶接領域のミクロ組織は、前記カバープレート(20)のミクロ組織及び前記基材(10)のミクロ組織とは異なることを特徴とする、時計の外部構成部品(100)。
【請求項20】
前記基材(10)及び前記カバープレート(20)は互いに対して溶接されること;及び
前記カバープレート(20)の厚さ(E)は0.5ミリメートル以上であることを特徴とする、請求項19に記載の外部構成部品(100)。
【請求項21】
チタン又はチタン合金製の前記基材(10)の両側に溶接された、金又は白金又はパラジウム合金製の2つの前記カバープレート(20)を含む、請求項19又は20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか1項に記載の外部構成部品(100)を少なくとも1つ含む、時計又は腕時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の外部構成部品を製造する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、時計の外部構成部品にも関する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような外部構成部品を含む時計、特に腕時計にも関する。
【0004】
本発明は、時計学及び宝飾品の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
時計の外部構成部品の製造は多くの場合、優れた耐食性を保証するために、金又は白金等の貴金属を用いて達成される。しかしながらこのような金属は密度が高く、これらで作製された時計、特に腕時計はユーザにとって極めて重く、そして高価でもある。金等の材料は可鍛性であり、平均的な機械的品質を有している。これは多くの場合、耐久性が比較的高い一方で、経時的な外観の変化を伴う腐食に対して比較的高い感受性を有する金合金を選択する必要があることを意味している。
【0006】
CITIZENによる特許文献1は、チタン又はチタン合金製の基材への金又は金合金製の構成部品のろう付けを記載している。この方法は、金がチタンに浸透するのを阻止するために窒化によって得られたTiN表面を使用し、Ni−Pd又はNi−Cu層を予備形成する。
【0007】
PEDERSENによる特許文献2は、第1の構成部品内に溝を事前に作製するダマシンプロセスを開示しており、上記第1の構成部品を、溶加材を溝内で溶融状態で堆積させる又は着色する前に、装飾を形成する溶加材の溶融温度より高い温度とする。温度が必ずしも第1の構成部品の金属及び溶加材の溶融温度より高く上昇しない場合、これはろう付けである。組立体は、組立及びろう付け後に絞り加工によって成形できる。
【0008】
BOITES LA CENTRALEによる特許文献3は、母材支持部品への貴金属シェルのろう付けによる固定を開示している。
【0009】
SUWA SEIKOSHAによる特許文献4は、チタン製であってよい基体を、吹き付け技術によって金属又は非金属材料のコーティングで被覆することを開示している。
【0010】
THIEBAUDによる特許文献5は、めっきされた腕時計ケースを開示しており、この腕時計ケースは、両側を金箔でめっきされた非貴金属部分を有し、その縁部に平坦な純金リムが設けられ、母材金属を完全に隠している。この平坦なリムは、めっきの縁部に溶接される。
【0011】
PRECIMAXによる特許文献6は、2つの部分、即ち互いに対して機械的に組み付けられたチタン製の下側部分及び金製の上側部分が、からなる、腕時計のベゼルを開示している。
【0012】
GRANDJEANによる特許文献7は、窪みが作製されたステンレス鋼支持体という特定の場合における、ダマシンと同様の別の方法を開示している。支持体の温度を、関連するステンレス鋼の「理想的な溶接温度」に近い温度かつ典型的には金である装飾用金属の溶融温度より高い温度まで上昇させ、この装飾用金属を固体フラグメントの形態で窪み内に堆積させ、続いて装飾用金属が溶融して窪みを充填し、これによってろう付けが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開S60228666号
【特許文献2】仏国特許出願第926715A号
【特許文献3】スイス特許出願第264968A号
【特許文献4】英国特許出願第1406909A号
【特許文献5】スイス特許出願第30607A号
【特許文献6】スイス特許出願第652560A号
【特許文献7】スイス特許出願第632377A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、その全体が貴金属製の時計の外部構成部品の利用の代替案を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は時計の外部構成部品を製造する方法に関し、この方法は:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金である第1の材料製の金属基材を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレートを提供し、上記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、上記少なくとも1つのカバープレートの厚さは0.5ミリメートル以上であり;
‐上記カバープレート及び上記基材を、上記カバープレートの溶融温度及び上記基材の溶融温度より高い温度にすることにより、上記少なくとも1つのカバープレートを上記基材に溶接して、バイメタルブランクを形成し;
‐上記バイメタルブランクを成形及び/又は機械加工して上記構造性構成部品にその最終形状を与える
ことを特徴とする。
【0016】
本発明はまた、時計の外部構成部品にも関し、上記時計の外部構成部品は、チタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材と、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含む第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレートとを含む、バイメタル材料で作製され、上記カバープレートは、少なくとも1つの溶接領域において上記基材と直接接触し、上記少なくとも1つの溶接領域のミクロ組織は、上記カバープレートのミクロ組織及び上記基材のミクロ組織とは異なることを特徴とする。
【0017】
本発明のある特徴によると、上記基材及び上記カバープレートは互いに対して溶接され、上記カバープレートの厚さは0.5ミリメートル以上である。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような外部構成部品を含む時計、特に腕時計にも関する。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、賦形加工済み基材に溶接されたカバープレートを有する、本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、基材に溶接され、その後基材と共に絞り加工されたカバープレートを有する、本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、カバープレートを有する本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記カバープレートは切欠きを含み、また賦形加工済み基材に対して、上記基材に面する上記カバープレートの下面の一部分のみにおいて溶接されている。
【
図4】
図4は、貫通開口を含みかつ基材に溶接されたカバープレートを有する、本発明によるバイメタルブランクの概略斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のバイメタルブランクを完成させることにより得られた外部構成部品の断面図であり、ここで外部構成部品は、絞り加工及び/又は機械加工で形成された外側外形、並びに例えば腕時計のベゼルを形成するために溶接後に機械加工された貫通開口を有する。
【
図6】
図6は、カバープレートを有する本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記カバープレートは位置決め孔及び貫通開口を含み、上記プレートの上記孔に対応する位置決めピンを含む基材に溶接されている。
【
図7】
図7は、溶接後に作製された深く絞り加工された部分を有する、
図2と同様の外部構成部品の概略横断面図である。
【
図8】
図8は、カバープレートを有する本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記カバープレートは、賦形加工済み基材に対して、上記基材に面する上記カバープレートの下面の一部分のみにおいて溶接されている。
【
図9】
図9は、溶接後にアセンブリ内に形成されたH字型に機械加工された切欠きを含む、
図8と同様の本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図10】
図10は、2つのカバープレートを有する、本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記2つのカバープレートは、同一の賦形加工済み基材に対して、上記基材に面する上記カバープレートの下面の一部分のみにおいて溶接されている。
【
図11】
図11は、4つの横方向ウイングが溶接後に絞り加工によって形成された、
図10と同様の本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図12】
図12は、チタン又はチタン合金基材の両側に溶接された金又は白金又はパラジウム合金製の2つのカバープレートを含む、本発明による外部構成部品の概略断面図である。
【
図13】
図13は、本発明による構成部品を製造する方法のブロック図である。
【
図14】
図14〜20は、腕時計用のクローの製造を示す。
図14は、切欠き及び貫通開口を有するチタン基材の準備の斜視図である。
【
図15】
図15は、第1の操作において切断により形成された横材をヨークへと変形させるための基材の予備折り曲げを示す。
【
図16】
図16は、金製カバープレートを基材のいくつかの表面に溶接した後の、バイメタルブランクを示す。
【
図17】
図17は、ブランクを鋸引きすることにより得られた部分の概略端面図である。
【
図18】
図18は、
図17の部分を変形させることにより成形された、この場合はクローである外部構成部品を示す。
【
図21】
図21は、カバープレートのほぞ穴外形と協働する基材のほぞ外形において圧着する前の、カバープレートと基材との組立体の断面図である。
【
図22】
図22は、カバープレートのほぞ穴外形と協働する基材のほぞ外形において圧着した後の、カバープレートと基材との組立体の断面図である。
【
図23】
図23は、既に基材に圧着されているカバープレートの断面図であり、接合表面の表面のすぐ下の溶接領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、貴金属、特に金又は白金又はパラジウム合金でその全体が作製されるせいでユーザにとって極めて重く高価となる時計の外部構成部品の利用の代替案を提供することを提案する。
【0022】
本発明は宝飾品の構成部品にも直接応用できるが、特に、本発明の好ましい用途である腕時計の構成部品の場合、外部構成部品は優れた耐食性を示さなければならず、その上良好な機械的品質を有していなければならない。
【0023】
本発明は、同一の外部構成部品内で、機械的耐性及び耐食性の両方のために選択した材料で作製した第1の構成要素(以下「基材」という)の高い機械的耐性という利点と、少なくとも1つの第2の構成要素(以下「カバープレート」という)の外観及び高い耐食性という利点とを組み合わせることを提案する。本発明は、各構成要素の厚さEが好ましくは0.5ミリメートル超である中実構成部品に関する。
【0024】
実際、後の説明において確認できるように、本発明は溶接作業を包含する。この作業は、互いに対して溶接されることになる部品が分厚く、そして同等の厚みを有している場合、より一層制御しやすい。当然のことながら、本発明を、例えば0.2ミリメートル超等のより薄い構成要素を用いて実実装してもよい。
【0025】
本発明は、時計の外部構成部品100を製造する方法に関する。本方法によると:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材10を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート20を提供し、上記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、上記少なくとも1つのカバープレート20の厚さEは0.5ミリメートル以上であり;
‐カバープレート20及び基材10を、カバープレート20の溶融温度及び基材10の溶融温度より高い温度にすることにより、上記少なくとも1つのカバープレート20を上記基材10に溶接して、バイメタルブランク30を形成し;
‐上記バイメタルブランク30を成形及び/又は機械加工して上記構造性構成部品100にその最終形状を与える。
【0026】
特定の実装形態では、溶接作業の前は平坦である基材10を提供し、溶接作業の前は平坦であるカバープレート20を提供し、基材10とカバープレート20との間の溶接作業を下向き姿勢で実施する。
【0027】
好ましくは、第1の合金及び第2の合金はニッケルを含有しないよう選択される。
【0028】
基材10に関して、グレード2のチタン又はグレード5のチタン又はT35チタンを、基材10の第1の材料として選択すると有利である。グレード2のチタンは、18カラット金合金との高品質な溶接に特に適している。チタン及びチタン合金は、特に生理食塩水噴霧に対する極めて高い耐食性に加えて、鋼よりもはるかに小さい質量で鋼と同様の機械的品質を有する群を形成する。
【0029】
好ましくは、18カラット金合金又は少なくとも95%の白金を含む白金合金又は少なくとも75%のパラジウムを含むパラジウム合金を、第2の材料として選択する。
【0030】
金合金を使用する場合、18カラット5N金合金を、この第2の材料として選択すると有利である。
【0031】
腐食を制限するためには、金‐チタンを明確に選択すると特に効率的である。
【0032】
ある変形例では、第2の材料はパラジウム又はパラジウム合金である。パラジウムの使用は、金又は白金のように、圧着及び/又はろう付け及び/又は溶接によってバイメタルブランク30を形成するための、カバープレート20の基材10への耐久性のある取り付けに適している。
【0033】
例えば
図2に見られるように、いくつかの変形実施形態では、このバイメタルブランク30を型押し及び/又は絞り加工による変形によって成形する。
【0034】
他の変形例では、
図10又は11に示すように、バイメタルブランク30を機械加工して
カバープレート20を局所的に除去し、これにより基材10の少なくとも1つの表面16を局所的に露出させる。
【0035】
構成部品100を腕時計等に固定するための有利な実施形態では、基材10は有利には、賦形加工済みバー11の形態で選択される。
【0036】
図3又は4に見られるように、いくつかの応用例では、カバープレート20は、少なくとも1つの切欠き21及び/又は貫通開口22を有するように予備機械加工されるよう選択される。
【0037】
最適な相対的位置決めのために、基材10及びカバープレート20は有利には、互いに対して溶接される前に、
図6に見られるように隆起した及び/又は窪んだ基準点15、25を有した状態で準備される。これにより、溶接作業前に上記基材及びプレートの幾何学的形状を適合させて、溶接作業中にこれらを互いに対して保持できる。
【0038】
図1、2、4、6又は10に見られるように、ある変形例では、カバープレート20は基材10に対して、これらの共通の接触表面全体にわたって溶接される。
【0039】
図23に示すある変形実施形態では、溶接は、カバープレート20と基材10との間の接合表面S0のすぐ下で実施される。
【0040】
ある変形実施形態では、溶接はレーザ溶接である。
【0041】
ある変形実施形態では、溶接は超音波溶接である。
【0042】
有利な変形実施形態では、カバープレート20を基材10に溶接する前に、カバープレート20又は基材10に対して、これらをそれぞれ基材10又はカバープレート20に圧着するための機械的変形操作を実施する。
【0043】
好ましくは、機械的変形操作をカバープレート20に対して実施する。
【0044】
図21、22に見られるように、有利な変形実施形態では、カバープレートのほぞ穴外形と協働するよう構成されたほぞ外形Pを基材に作製するか、又はその逆を実施する。基材のほぞPは2つの対向する側面S1、S2を有し、関連するカバープレート20は2つの平行なほぞ穴表面S20を含む。圧着中、表面S20は表面S1、S2に対して押圧されて突出部Pをクランプ留めし、これによって突出部Pと共に分離できない組立体を形成する。
【0045】
金‐チタンの圧着により、金をチタン上に良好に支持でき、またこの良好な事前支持によって、溶接によって完成される幾何学的形状をより容易に正確に作製できる。
【0046】
図4、5の例は腕時計のベゼルの作製を簡略的に示し、ここでは、貫通開口22を含みかつ基材10に溶接されたカバープレート20から、バイメタルブランク30を先に準備する。続いてこのブランク30を、絞り加工及び/又は機械加工によって形成された外側外形と、溶接後に基材10内の開口22の延長部分に機械加工された開口12とを有するように変形及び/若しくは機械加工することにより、又は基材10及びカバープレート20両方に開口22を再形成することにより、成形する。
【0047】
他の変形例では、カバープレート20は基材10に対して、上記基材10に面するカバープレート20の表面26の一部分のみにおいて、及び/又は上記カバープレート20に面する基材10の表面16の一部分のみにおいて、溶接される。
【0048】
当然、基材10自体を本発明に従って作製でき、この基材10は2つ1組で溶接された複数の層を含むため、「バイメタル」という概念は限定的なものではないことが理解される。即ち本発明を、チタン又はチタン合金製の基材10の両側に溶接された、金又は白金又はパラジウム合金バンド製の2つのカバープレート20を含む、サンドイッチタイプの外部構成部品100にも応用できる。この構成は、外観に関する制約によって必要となり得る。チタンの芯により、剛性及び時計の他の部品に対する完璧な位置決めを保証する。
図12に見られるように、これらカバープレート20は接合表面34において、又はカバープレート20が平坦である場合は接合平面において互いに接触しており、継ぎ目35において金同士が溶接又ははんだ付けされ得る。従って本発明を、一方がチタン又はチタン合金製であり、他方が金又は白金又はパラジウム又は金合金又は白金合金又はパラジウム合金製である、1対の対向する表面を溶接することにより作製される大型構成部品の製造にまで拡張できる。
【0049】
本発明はまた、時計の外部構成部品100にも関し、この時計の外部構成部品100は、チタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材10と、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含む第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート20とを含むバイメタル材料で作製され、カバープレート20は、少なくとも1つの溶接領域において上記基材10と直接接触し、上記少なくとも1つの溶接領域のミクロ組織は、カバープレート20のミクロ組織及び基材10のミクロ組織とは異なる。好ましくは、基材10及びカバープレート20は互いに対して溶接され、この少なくとも1つのカバープレート20の厚さEは0.5ミリメートル以上である。
【0050】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような外部構成部品100を含む時計、特に腕時計1000にも関する。
【0051】
図14〜20は、腕時計1000用のクロー100の製造の非限定的な例を示し:
‐
図14に見られるように、チタン基材10をシート又は板から、切欠き13及び貫通開口12を有するように切断して、横材18で接続された側部支持表面14を有する梯子型構造を形成し;
‐
図15に見られるように、これら横材18を屈曲させてヨーク19を形成し、その結果基材はカバープレート20を受承できる状態となり;
‐2つの金製カバープレート20を基材10の側部支持表面14に溶接し、その結果、
図16に見られるように、バイメタルブランク30が形成され;
‐
図17は、ブランク30の鋸引き線32に沿って鋸引き又は切断することにより得られた部分35を示し;
‐その後この部分35を変形により成形して、
図18に示すように、外部構成部品100(この場合は
図19、20の腕時計ケースの所定の位置に設置されたクロー)を形成する。
【手続補正書】
【提出日】2015年4月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の外部構成部品を製造する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、時計の外部構成部品にも関する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような外部構成部品を含む時計、特に腕時計にも関する。
【0004】
本発明は、時計学及び宝飾品の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
時計の外部構成部品の製造は多くの場合、優れた耐食性を保証するために、金又は白金等の貴金属が用いられる。しかしながらこのような金属は密度が高く、これらで作製された時計、特に腕時計はユーザにとって極めて重く、そして高価でもある。金等の材料は可鍛性であり、平均的な機械的品質を有している。これは多くの場合、耐久性が比較的高い一方で、経時的な外観の変化を伴う腐食に対して比較的高い感受性を有する金合金を選択する必要があることを意味している。
【0006】
CITIZENによる特許文献1は、チタン又はチタン合金製の基材への金又は金合金製の構成部品のろう付けを記載している。この方法は、金がチタンに浸透するのを阻止するために窒化によって得られたTiN表面を使用し、Ni−Pd又はNi−Cu層を予備形成する。
【0007】
PEDERSENによる特許文献2は、第1の構成部品内に溝を事前に作製するダマシンプロセスを開示しており、上記第1の構成部品を、溶加材を溝内で溶融状態で堆積させる又は着色する前に、装飾を形成する溶加材の溶融温度より高い温度とする。温度が必ずしも第1の構成部品の金属及び溶加材の溶融温度より高く上昇しない場合、これはろう付けである。組立体は、組立及びろう付け後に絞り加工によって成形できる。
【0008】
BOITES LA CENTRALEによる特許文献3は、母材支持部品への貴金属シェルのろう付けによる固定を開示している。
【0009】
SUWA SEIKOSHAによる特許文献4は、チタン製であってよい基体を、吹き付け技術によって金属又は非金属材料のコーティングで被覆することを開示している。
【0010】
THIEBAUDによる特許文献5は、めっきされた腕時計ケースを開示しており、この腕時計ケースは、両側を金箔でめっきされた非貴金属部分を有し、その縁部に平坦な純金リムが設けられ、母材金属を完全に隠している。この平坦なリムは、めっきの縁部に溶接される。
【0011】
PRECIMAXによる特許文献6は、2つの部分、即ち互いに対して機械的に組み付けられたチタン製の下側部分及び金製の上側部分が、からなる、腕時計のベゼルを開示している。
【0012】
GRANDJEANによる特許文献7は、窪みが作製されたステンレス鋼支持体という特定の場合における、ダマシンと同様の別の方法を開示している。支持体の温度を、関連するステンレス鋼の「理想的な溶接温度」に近い温度かつ典型的には金である装飾用金属の溶融温度より高い温度まで上昇させ、この装飾用金属を固体フラグメントの形態で窪み内に堆積させ、続いて装飾用金属が溶融して窪みを充填し、これによってろう付けが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開S60228666号
【特許文献2】仏国特許出願第926715A号
【特許文献3】スイス特許出願第264968A号
【特許文献4】英国特許出願第1406909A号
【特許文献5】スイス特許出願第30607A号
【特許文献6】スイス特許出願第652560A号
【特許文献7】スイス特許出願第632377A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、その全体が貴金属製の時計の外部構成部品の利用の代替案を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は時計の外部構成部品を製造する方法に関し、この方法は:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金である第1の材料製の金属基材を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレートを提供し、上記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、上記少なくとも1つのカバープレートの厚さは0.5ミリメートル以上であり;
‐上記カバープレート及び上記基材を、上記カバープレートの溶融温度及び上記基材の溶融温度より高い温度にすることにより、上記少なくとも1つのカバープレートを上記基材に溶接して、バイメタルブランクを形成し;
‐続いて上記バイメタルブランクを成形及び/又は機械加工して上記構造性構成部品にその最終形状を与える
ことを特徴とする。
【0016】
腕時計ケース用のクローである上記外部構成部品の作製へのこの方法の特定の応用では:
‐チタン又はチタン合金基材を、シート又は板から、切欠き及び貫通開口を有するように切断して、横材によって接続された側部支持表面を有する梯子型構造を形成し;
‐横材を折り曲げてヨークを形成し;
‐2つの金製カバープレートを上記基材の上記側部支持表面に溶接して、バイメタルブランクを形成し;
‐上記バイメタルブランクの部分を切断し;
‐上記部分を変形により成形して上記クローを形成する。
【0017】
本発明は更に、時計の外部構成部品に関し、この時計の外部構成部品は、チタン及び/又は第1のチタン合金を含みかつニッケルフリーである第1の材料製の金属基材と、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含む第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレートとを含む、バイメタル材料で作製され、上記カバープレートは、少なくとも1つの溶接領域において上記基材と直接接触し、上記少なくとも1つの溶接領域のミクロ組織は、上記カバープレートのミクロ組織及び上記基材のミクロ組織とは異なることを特徴とし、また上記基材及び上記カバープレートは互いに対して溶接されること、並びに上記カバープレートの厚さは0.5ミリメートル以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明のある特徴によると、上記基材及び上記カバープレートは互いに対して溶接され、上記カバープレートの厚さは0.5ミリメートル以上である。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような外部構成部品を含む時計、特に腕時計にも関する。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、賦形加工済み基材に溶接されたカバープレートを有する、本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、基材に溶接され、その後基材と共に絞り加工されたカバープレートを有する、本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、カバープレートを有する本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記カバープレートは切欠きを含み、また賦形加工済み基材に対して、上記基材に面する上記カバープレートの下面の一部分のみにおいて溶接されている。
【
図4】
図4は、貫通開口を含みかつ基材に溶接されたカバープレートを有する、本発明によるバイメタルブランクの概略斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のバイメタルブランクを完成させることにより得られた外部構成部品の断面図であり、ここで外部構成部品は、絞り加工及び/又は機械加工で形成された外側外形、並びに例えば腕時計のベゼルを形成するために溶接後に機械加工された貫通開口を有する。
【
図6】
図6は、カバープレートを有する本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記カバープレートは位置決め孔及び貫通開口を含み、上記プレートの上記孔に対応する位置決めピンを含む基材に溶接されている。
【
図7】
図7は、溶接後に作製された深く絞り加工された部分を有する、
図2と同様の外部構成部品の概略横断面図である。
【
図8】
図8は、カバープレートを有する本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記カバープレートは、賦形加工済み基材に対して、上記基材に面する上記カバープレートの下面の一部分のみにおいて溶接されている。
【
図9】
図9は、溶接後にアセンブリ内に形成されたH字型に機械加工された切欠きを含む、
図8と同様の本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図10】
図10は、2つのカバープレートを有する、本発明による外部構成部品の概略斜視図であり、上記2つのカバープレートは、同一の賦形加工済み基材に対して、上記基材に面する上記カバープレートの下面の一部分のみにおいて溶接されている。
【
図11】
図11は、4つの横方向ウイングが溶接後に絞り加工によって形成された、
図10と同様の本発明による外部構成部品の概略斜視図である。
【
図12】
図12は、チタン又はチタン合金基材の両側に溶接された金又は白金又はパラジウム合金製の2つのカバープレートを含む、本発明による外部構成部品の概略断面図である。
【
図13】
図13は、本発明による構成部品を製造する方法のブロック図である。
【
図14】
図14〜20は、腕時計用のクローの製造を示す。
図14は、切欠き及び貫通開口を有するチタン基材の準備の斜視図である。
【
図15】
図15は、第1の操作において切断により形成された横材をヨークへと変形させるための基材の予備折り曲げを示す。
【
図16】
図16は、金製カバープレートを基材のいくつかの表面に溶接した後の、バイメタルブランクを示す。
【
図17】
図17は、ブランクを鋸引きすることにより得られた部分の概略端面図である。
【
図18】
図18は、
図17の部分を変形させることにより成形された、この場合はクローである外部構成部品を示す。
【
図21】
図21は、カバープレートのほぞ穴外形と協働する基材のほぞ外形において圧着する前の、カバープレートと基材との組立体の断面図である。
【
図22】
図22は、カバープレートのほぞ穴外形と協働する基材のほぞ外形において圧着した後の、カバープレートと基材との組立体の断面図である。
【
図23】
図23は、既に基材に圧着されているカバープレートの断面図であり、接合表面の表面のすぐ下の溶接領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、貴金属、特に金又は白金又はパラジウム合金でその全体が作製されるせいでユーザにとって極めて重く高価となる時計の外部構成部品の利用の代替案を提供することを提案する。
【0023】
本発明は宝飾品の構成部品にも直接応用できるが、特に、本発明の好ましい用途である腕時計の構成部品の場合、外部構成部品は優れた耐食性を示さなければならず、その上良好な機械的品質を有していなければならない。
【0024】
本発明は、同一の外部構成部品内で、機械的耐性及び耐食性の両方のために選択した材料で作製した第1の構成要素(以下「基材」という)の高い機械的耐性という利点と、少なくとも1つの第2の構成要素(以下「カバープレート」という)の外観及び高い耐食性という利点とを組み合わせることを提案する。本発明は、各構成要素の厚さEが好ましくは0.5ミリメートル超である中実構成部品に関する。
【0025】
実際、後の説明において確認できるように、本発明は溶接作業を包含する。この作業は、互いに対して溶接されることになる部品が分厚く、そして同等の厚みを有している場合、より一層制御しやすい。当然のことながら、本発明を、例えば0.2ミリメートル超等のより薄い構成要素を用いて実実装してもよい。
【0026】
本発明は、時計の外部構成部品100を製造する方法に関する。本方法によると:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材10を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート20を提供し、上記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、上記少なくとも1つのカバープレート20の厚さEは0.5ミリメートル以上であり;
‐カバープレート20及び基材10を、カバープレート20の溶融温度及び基材10の溶融温度より高い温度にすることにより、上記少なくとも1つのカバープレート20を上記基材10に溶接して、バイメタルブランク30を形成し;
‐上記バイメタルブランク30を成形及び/又は機械加工して上記構造性構成部品100にその最終形状を与える。
【0027】
特定の実装形態では、溶接作業の前は平坦である基材10を提供し、溶接作業の前は平坦であるカバープレート20を提供し、基材10とカバープレート20との間の溶接作業を下向き姿勢で実施する。
【0028】
好ましくは、第1の合金及び第2の合金はニッケルを含有しないよう選択される。
【0029】
基材10に関して、グレード2のチタン又はグレード5のチタン又はT35チタンを、基材10の第1の材料として選択すると有利である。グレード2のチタンは、18カラット金合金との高品質な溶接に特に適している。チタン及びチタン合金は、特に生理食塩水噴霧に対する極めて高い耐食性に加えて、鋼よりもはるかに小さい質量で鋼と同様の機械的品質を有する群を形成する。
【0030】
好ましくは、18カラット金合金又は少なくとも95%の白金を含む白金合金又は少なくとも75%のパラジウムを含むパラジウム合金を、第2の材料として選択する。
【0031】
金合金を使用する場合、18カラット5N金合金を、この第2の材料として選択すると有利である。
【0032】
腐食を制限するためには、金‐チタンを明確に選択すると特に効率的である。
【0033】
ある変形例では、第2の材料はパラジウム又はパラジウム合金である。パラジウムの使用は、金又は白金のように、圧着及び/又はろう付け及び/又は溶接によってバイメタルブランク30を形成するための、カバープレート20の基材10への耐久性のある取り付けに適している。
【0034】
例えば
図2に見られるように、いくつかの変形実施形態では、このバイメタルブランク30を型押し及び/又は絞り加工による変形によって成形する。
【0035】
他の変形例では、
図10又は11に示すように、バイメタルブランク30を機械加工して
カバープレート20を局所的に除去し、これにより基材10の少なくとも1つの表面16を局所的に露出させる。
【0036】
構成部品100を腕時計等に固定するための有利な実施形態では、基材10は有利には、賦形加工済みバー11の形態で選択される。
【0037】
図3又は4に見られるように、いくつかの応用例では、カバープレート20は、少なくとも1つの切欠き21及び/又は貫通開口22を有するように予備機械加工されるよう選択される。
【0038】
最適な相対的位置決めのために、基材10及びカバープレート20は有利には、互いに対して溶接される前に、
図6に見られるように隆起した及び/又は窪んだ基準点15、25を有した状態で準備される。これにより、溶接作業前に上記基材及びプレートの幾何学的形状を適合させて、溶接作業中にこれらを互いに対して保持できる。
【0039】
図1、2、4、6又は10に見られるように、ある変形例では、カバープレート20は基材10に対して、これらの共通の接触表面全体にわたって溶接される。
【0040】
図23に示すある変形実施形態では、溶接は、カバープレート20と基材10との間の接合表面S0のすぐ下で実施される。
【0041】
ある変形実施形態では、溶接はレーザ溶接である。
【0042】
ある変形実施形態では、溶接は超音波溶接である。
【0043】
有利な変形実施形態では、カバープレート20を基材10に溶接する前に、カバープレート20又は基材10に対して、これらをそれぞれ基材10又はカバープレート20に圧着するための機械的変形操作を実施する。
【0044】
好ましくは、機械的変形操作をカバープレート20に対して実施する。
【0045】
図21、22に見られるように、有利な変形実施形態では、カバープレートのほぞ穴外形と協働するよう構成されたほぞ外形Pを基材に作製するか、又はその逆を実施する。基材のほぞPは2つの対向する側面S1、S2を有し、関連するカバープレート20は2つの平行なほぞ穴表面S20を含む。圧着中、表面S20は表面S1、S2に対して押圧されて突出部Pをクランプ留めし、これによって突出部Pと共に分離できない組立体を形成する。
【0046】
金‐チタンの圧着により、金をチタン上に良好に支持でき、またこの良好な事前支持によって、溶接によって完成される幾何学的形状をより容易に正確に作製できる。
【0047】
図4、5の例は腕時計のベゼルの作製を簡略的に示し、ここでは、貫通開口22を含みかつ基材10に溶接されたカバープレート20から、バイメタルブランク30を先に準備する。続いてこのブランク30を、絞り加工及び/又は機械加工によって形成された外側外形と、溶接後に基材10内の開口22の延長部分に機械加工された開口12とを有するように変形及び/若しくは機械加工することにより、又は基材10及びカバープレート20両方に開口22を再形成することにより、成形する。
【0048】
他の変形例では、カバープレート20は基材10に対して、上記基材10に面するカバープレート20の表面26の一部分のみにおいて、及び/又は上記カバープレート20に面する基材10の表面16の一部分のみにおいて、溶接される。
【0049】
当然、基材10自体を本発明に従って作製でき、この基材10は2つ1組で溶接された複数の層を含むため、「バイメタル」という概念は限定的なものではないことが理解される。即ち本発明を、チタン又はチタン合金製の基材10の両側に溶接された、金又は白金又はパラジウム合金バンド製の2つのカバープレート20を含む、サンドイッチタイプの外部構成部品100にも応用できる。この構成は、外観に関する制約によって必要となり得る。チタンの芯により、剛性及び時計の他の部品に対する完璧な位置決めを保証する。
図12に見られるように、これらカバープレート20は接合表面34において、又はカバープレート20が平坦である場合は接合平面において互いに接触しており、継ぎ目35において金同士が溶接又ははんだ付けされ得る。従って本発明を、一方がチタン又はチタン合金製であり、他方が金又は白金又はパラジウム又は金合金又は白金合金又はパラジウム合金製である、1対の対向する表面を溶接することにより作製される大型構成部品の製造にまで拡張できる。
【0050】
本発明はまた、時計の外部構成部品100にも関し、この時計の外部構成部品100は、チタン及び/又は第1のチタン合金を含む第1の材料製の金属基材10と、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含む第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート20とを含むバイメタル材料で作製され、カバープレート20は、少なくとも1つの溶接領域において上記基材10と直接接触し、上記少なくとも1つの溶接領域のミクロ組織は、カバープレート20のミクロ組織及び基材10のミクロ組織とは異なる。好ましくは、基材10及びカバープレート20は互いに対して溶接され、この少なくとも1つのカバープレート20の厚さEは0.5ミリメートル以上である。
【0051】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような外部構成部品100を含む時計、特に腕時計1000にも関する。
【0052】
図14〜20は、腕時計1000用のクロー100の製造の非限定的な例を示し:
‐
図14に見られるように、チタン基材10をシート又は板から、切欠き13及び貫通開口12を有するように切断して、横材18で接続された側部支持表面14を有する梯子型構造を形成し;
‐
図15に見られるように、これら横材18を屈曲させてヨーク19を形成し、その結果基材はカバープレート20を受承できる状態となり;
‐2つの金製カバープレート20を基材10の側部支持表面14に溶接し、その結果、
図16に見られるように、バイメタルブランク30が形成され;
‐
図17は、ブランク30の鋸引き線32に沿って鋸引き又は切断することにより得られた部分35を示し;
‐その後この部分35を変形により成形して、
図18に示すように、外部構成部品100(この場合は
図19、20の腕時計ケースの所定の位置に設置されたクロー)を形成する。
【0053】
本発明は、ベゼル、クロー、ケース、ブレスレットのリンク及びクラスプ等の外部構成部品の作製に特によく適しているが、このリストは非限定的なものである。本発明は、厚みが大きい状態で使用されかつより軽量の合金又は金属に溶接される貴金属の組み合わせによって、着用感を極めて良好なものとする軽量性を提供しながら変形及び機械的応力に対する耐性が保証された、高品質の部品をユーザに提供する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の外部構成部品(100)を製造する方法であって:
‐チタン及び/又は第1のチタン合金である第1の材料製の金属基材(10)を提供し;
‐第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート(20)を提供し、前記第2の材料は、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含み、前記少なくとも1つのカバープレート(20)の厚さ(E)は0.5ミリメートル以上であり;
‐前記カバープレート(20)及び前記基材(10)を、前記カバープレート(20)の溶融温度及び前記基材(10)の溶融温度より高い温度にすることにより、前記少なくとも1つのカバープレート(20)を前記基材(10)に、溶加材を用いずに溶接して、バイメタルブランク(30)を形成し;
‐続いて前記バイメタルブランク(30)を成形及び/又は機械加工して、前記構造性構成部品(100)に最終形状を与える
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
グレード2のチタン又はグレード5のチタン又はT35チタンを、前記第1の材料として選択することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶接作業の前は平坦である前記基材(10)を提供し、溶接作業の前は平坦である前記カバープレート(20)を提供し、前記基材(10)と前記カバープレート(20)との間の前記溶接作業を下向き姿勢で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の合金及び前記第2の合金は、ニッケルを含有しないよう選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
18カラット金合金又は少なくとも95%の白金を含む白金合金又は少なくとも75%のパラジウムを含むパラジウム合金を、前記第2の材料として選択することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
18カラット5N金合金を、前記第2の材料として選択することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バイメタルブランク(30)は、型押し及び/又は絞り加工による変形によって成形されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バイメタルブランク(30)を機械加工して、前記カバープレート(20)を局所的に除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基材(10)は、賦形加工済みバー(11)の形態で選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カバープレート(20)は、少なくとも1つの切欠き(21)及び/又は貫通開口(22)を有するように予備機械加工されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基材(10)及び前記カバープレート(20)は、互いに対して溶接される前に、前記溶接作業前に前記基材及び前記プレートの幾何学的形状を適合させるため、並びに前記溶接作業中に前記基材及び前記プレートを互いに対して保持するための、隆起した及び/又は窪んだ基準点(15;25)を有した状態で準備されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カバープレート(20)は前記基材(10)に対して、前記カバープレート(20)及び前記基材(10)の共通の接触表面全体にわたって溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記カバープレート(20)は前記基材(10)に対して、前記基材(10)に面する前記カバープレート(20)の表面(26)の一部分のみにおいて、及び/又は前記カバープレート(20)に面する前記基材(10)の表面(16)の一部分のみにおいて、溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接は、前記カバープレート(20)と前記基材(10)との間の接合表面(S0)のすぐ下で実施されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶接はレーザ溶接であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記溶接は超音波溶接であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記カバープレート(20)を前記基材(10)に溶接する前に、前記カバープレート(20)又は前記基材(10)に対して、前記カバープレート(20)又は前記基材(10)をそれぞれ前記基材(10)又は前記カバープレート(20)に圧着するための機械的変形操作を実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記機械的変形操作は前記カバープレート(20)に対して実施されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、腕時計ケースのクローである前記外部構成部品(100)の作製に適用されること;並びに
‐チタン又はチタン合金製の基材(10)を、シート又は板から、切欠き(13)及び貫通開口(12)を有するように切断して、横材(18)によって接続された側部支持表面(14)を有する梯子型構造を形成し;
‐前記横材(18)を折り曲げてヨーク(19)を形成し;
‐2つの金製カバープレート(20)を前記基材(10)の前記側部支持表面(14)に溶接して、バイメタルブランク(30)を形成し;
‐前記バイメタルブランクの部分(35)を切断し;
‐前記部分(35)を変形により成形して前記クロー(100)を形成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
時計の外部構成部品(100)であって、
前記構成部品は:
チタン及び/又は第1のチタン合金を含みかつニッケルフリーである第1の材料製の金属基材(10)と、金、白金、パラジウムから選択される第2の金属及び/又は少なくとも金若しくは白金若しくはパラジウムを含む第2の合金を含む第2の材料製の少なくとも1つの金属カバープレート(20)とを含むバイメタル材料で作製され、前記カバープレート(20)は、少なくとも1つの溶接領域において前記基材(10)と直接接触し、前記少なくとも1つの溶接領域のミクロ組織は、前記カバープレート(20)のミクロ組織及び前記基材(10)のミクロ組織とは異なること;
前記基材(10)及び前記カバープレート(20)は互いに対して溶接されること;並びに
前記カバープレート(20)の厚さ(E)は0.5ミリメートル以上であること
を特徴とする、時計の外部構成部品(100)。
【請求項21】
グレード2のチタン又はグレード5のチタン又はT35チタンを、前記第1の材料として選択することを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項22】
チタン又はチタン合金製の前記基材(10)の両側に溶接された、金又は白金又はパラジウム合金製の2つの前記カバープレート(20)を含む、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項23】
前記カバープレート(20)及び前記基材(10)は互いに対して、前記カバープレート(20)及び前記基材(10)の共通の接触表面全体にわたって溶接されることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項24】
前記カバープレート(20)は前記基材(10)に対して、前記基材(10)に面する前記カバープレート(20)の表面(26)の一部分のみにおいて、及び/又は前記カバープレート(20)に面する前記基材(10)の表面(16)の一部分のみにおいて、溶接されることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項25】
前記構成部品は腕時計のクローであることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項26】
前記構成部品は腕時計のベゼルであることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項27】
前記構成部品は腕時計ケースであることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項28】
前記構成部品は腕時計のブレスレットのリンクであることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項29】
前記構成部品は腕時計のクラスプであることを特徴とする、請求項20に記載の外部構成部品(100)。
【請求項30】
請求項20に記載の外部構成部品(100)を少なくとも1つ含む、時計又は腕時計(1000)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】