特表2015-532442(P2015-532442A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532442(P2015-532442A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】センサ素子を備えた空気質量流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/692 20060101AFI20151013BHJP
   G01F 1/696 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   G01F1/692 A
   G01F1/696 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-538392(P2015-538392)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】EP2013071917
(87)【国際公開番号】WO2014064026
(87)【国際公開日】20140501
(31)【優先権主張番号】102012219305.7
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トアステン クニッテル
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン セテシャック
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA02
2F035EA05
2F035EA08
2F035EA09
(57)【要約】
本発明は、センサ素子を備えた空気質量流量計に関する。この場合、測定すべき空気質量流が、センサ素子の上を越えて移動し、センサ素子は、微小電気機械システムとして形成されており、この微小電気機械システムはダイアフラムを有しており、このダイアフラムの上に加熱素子が形成されており、空気質量流の方向で加熱素子の前方及び後方に、それぞれ1つの電気的な測定抵抗と、少なくとも2つの電気的な比較抵抗が配置されており、それぞれ1つの測定抵抗を少なくとも2つの比較抵抗と電気的に結線することにより、第1の温度センサ素子と第2の温度センサ素子が形成される。センサ素子の汚れによる測定結果の誤りを排除するため、又は少なくとも狭い範囲内に抑えるため、第1の温度センサ素子は、センサ素子に設けられた複数の抵抗から成る直列接続回路として形成されており、第1の温度センサ素子は、空気質量流の方向で加熱素子の前方に配置された1つの測定抵抗と、空気質量流の方向で加熱素子の後方に配置された2つの比較抵抗とを備えており、第2の温度センサ素子は、センサ素子に設けられた複数の抵抗から成る直列接続回路として形成されており、第2の温度センサ素子は、空気質量流の方向で加熱素子の後方に配置された1つの測定抵抗と、空気質量流の方向で加熱素子の前方に配置された2つの比較抵抗とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)であって、
測定すべき空気質量流(10)は、前記センサ素子(15)の上を越えて移動し、
前記センサ素子(15)は、微小電気機械システムとして形成されており、該微小電気機械システムはダイアフラム(17)を有しており、該ダイアフラム(17)の上に加熱素子(12)が形成されており、
前記空気質量流(10)の方向において、前記加熱素子(12)の前方及び後方に、1つの電気的な測定抵抗(22)と、少なくとも2つの電気的な比較抵抗(21)が、それぞれ配置されており、
それぞれ前記1つの測定抵抗(22)を前記少なくとも2つの比較抵抗(21)と電気的に結線することにより、第1の温度センサ素子(7)と第2の温度センサ素子(8)が形成される、
センサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)において、
前記第1の温度センサ素子(7)は、前記センサ素子(15)に設けられた複数の抵抗から成る直列接続回路として形成されており、該複数の抵抗は、前記空気質量流(10)の方向を基準として、前記加熱素子(12)の前方に配置された1つの測定抵抗(22)と、前記空気質量流(10)の方向を基準として、前記加熱素子(12)の後方に配置された2つの比較抵抗(21)とを含み
前記第2の温度センサ素子(8)は、前記センサ素子(15)に設けられた複数の抵抗から成る直列接続回路として形成されており、該複数の抵抗は、前記空気質量流(10)の方向を基準として、前記加熱素子(12)の後方に配置された1つの測定抵抗(22)と、前記空気質量流(10)の方向を基準として、前記加熱素子(12)の前方に配置された2つの比較抵抗(21)とを含む
ことを特徴とする、
センサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)。
【請求項2】
前記測定抵抗(22)各々の抵抗値は、前記比較抵抗(21)各々の抵抗値よりも著しく大きい、
請求項1に記載のセンサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)。
【請求項3】
前記測定抵抗(22)各々の抵抗値は、前記比較抵抗(21)各々の抵抗値よりも少なくとも10倍大きい、
請求項2に記載のセンサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)。
【請求項4】
前記比較抵抗(21)は、前記ダイアフラム(17)の周縁領域に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)。
【請求項5】
前記測定抵抗(22)は、前記ダイアフラム(17)の内部領域に配置されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ素子(15)を備えた空気質量流量計(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子を備えた空気質量流量計に関する。この場合、測定すべき空気質量流が、センサ素子の上を越えて移動し、センサ素子は、微小電気機械システムとして形成されており、この微小電気機械システムはダイアフラムを有しており、このダイアフラムの上に加熱素子が形成されており、空気質量流の方向を基準として、加熱素子の前方及び後方に、1つの電気的な測定抵抗と、少なくとも2つの電気的な比較抵抗が、それぞれ配置されており、それぞれ1つの測定抵抗を少なくとも2つの比較抵抗と電気的に結線することにより、第1の温度センサ素子と第2の温度センサ素子が形成される。
【背景技術】
【0002】
この種の空気質量流量計ないしはエアフローメータは、例えば自動車において内燃機関により吸入される空気質量を測定するために用いられる。吸入空気質量に関してできる限り信頼性のある情報に基づくことで、内燃機関の電子制御装置により、その空気質量に厳密に整合された燃料量が個々の燃焼室へ供給されるようにして、燃焼を最適化することができる。このような最適化の結果、有害物質の排出を低減させながらエネルギーの利用効率を高めることができる。
【0003】
DE 44 07 209 A1によれば、空気質量を測定するために吸気管中に挿入された空気質量流量計が公知であり、この場合、流れ全体のうち規定の割合がエアフローセンサを貫流する。この目的で上述の空気質量流量計は、プラグイン・ダクト型空気質量流量計(plug-in duct air mass meter)として構成されている。この空気質量流量計は、測定ダクト内に配置されたセンサ素子と、ケーシング内に配置されセンサ素子の測定値を評価及び/又は検出する電子装置と、センサ素子の他方の側に配置された排気ダクトを備えている。スペースを節約するために、上述のダクト即ち空気案内経路は、U字型、S字型又はC字型に形成されており、そのようにしてプラグイン部材として構成された全体としてコンパクトな装置が形成される。
【0004】
US 2008/0282791 A1に開示されているセンサ素子を備えた空気質量流量計によれば、ダイアフラム上に形成された加熱素子の前後に、それぞれ1つの温度センサ素子が配置されている。これらの温度センサ素子は、汚染物の付着による特性変動が抑圧されるように配置されている。
【0005】
US 2003/0010110 A1には、双方向に動作するエアフローセンサが開示されている。このエアフローセンサは、所定の電位と接続されたブリッジ回路を備えており、このブリッジ回路は温度に依存する第1及び第2のセンサを有しており、これらのセンサは直列に接続され、熱的に分離された基板上に配置されている。
【0006】
DE 42 08 135 A1には、気体又は液体の流れを測定するための装置が開示されている。この場合、温度感応型の2つの抵抗装置が第1のセンサを成し、温度感応型のさらに別の2つの抵抗装置が第2のセンサ素子を成している。これら両方のセンサは、それらが互いに熱的に作用し合わないように配置される。
【0007】
WO 03/089884 A1の開示内容に従って構成された空気質量流量計は、ホットフィルム型のアネモメータとして形成されており、基本的にこの空気質量流量計の有効性は実証されている。
【0008】
微小電気機械システム(MEMS)として構成された複数のセンサ素子をベースに動作する最近の空気質量流量計の開発において明らかにされたのは、それらのセンサ素子の測定結果に対し、特に汚れによって悪影響が及ぼされることである。例えば空気質量流中の油滴などによって生じる可能性のある汚れにより、時間の経過とともにセンサ素子において信号ドリフトが発生し、このドリフトによって空気質量流の測定値に誤りが引き起こされる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、微小電気機械システムとして構成されたセンサ素子は数多くの利点を有しており、それらの利点を手放すべきではない。したがって本発明の課題は、センサ素子の汚れに起因する測定結果の誤りを排除することにあり、或いはそのような誤りを少なくとも狭い範囲に抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項に記載された特徴によって解決される。従属請求項には有利な実施形態が記載されている。
【0011】
本発明によれば、第1の温度センサ素子は、センサ素子に設けられた複数の抵抗から成る直列接続回路として形成されており、この複数の抵抗は、空気質量流の方向を基準として、加熱素子の前方に配置された1つの測定抵抗と、空気質量流の方向を基準として、加熱素子の後方に配置された2つの比較抵抗とを含み、第2の温度センサ素子は、センサ素子に設けられた複数の抵抗から成る直列接続回路として形成されており、この複数の抵抗は、空気質量流の方向を基準として、加熱素子の後方に配置された1つの測定抵抗と、空気質量流の方向を基準として、加熱素子の前方に配置された2つの比較抵抗とを含む。センサ素子に配置された複数の抵抗をこのように結線することによって、一方の側に堆積した例えば油滴などの汚染物粒子に起因する信号の歪みが補償され、センサ素子の汚れによっても空気質量流量計からの信号に誤りが生じない。したがって空気質量流量計の測定結果は、長期にわたり安定して維持され、空気質量流量計の周期的な較正を省くことができる。センサ素子を、薄いダイアフラムとともに微小電気機械システムとして形成すると有利である。この種のセンサ素子によって、格別に良好な測定結果が得られる。その理由は、薄いダイアフラムは熱伝導性がほとんどなく、このため通過して流れる空気質量の熱伝導性だけによって測定結果が定まるからである。
【0012】
1つの実施形態によれば、個々の測定抵抗の抵抗値は、個々の比較抵抗の抵抗値よりも著しく大きい。個々の測定抵抗の抵抗値が、個々の比較抵抗の抵抗値よりも少なくとも10倍大きいと、殊に有利である。抵抗値をこのように選定することによって、空気質量流に関して極めて良好で格段に再現性のよい測定結果が得られるようになる。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、比較抵抗はダイアフラムの周縁領域に配置されている。このようにすることで、ダイアフラム周縁領域に著しく多くの汚染物が堆積しても、空気質量流量計の測定結果にほとんど影響が及ぼされないようになる。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態によれば、測定抵抗はダイアフラムの内部領域に配置されている。このようにすれば、特にダイアフラムの周縁領域に発生する測定素子の汚れが測定抵抗に作用を及ぼすことはなく、このことも測定結果の安定性を得るのに役立つ。
【0015】
本発明のその他の特徴及び利点については、次に図面を参照しながら実施例を説明することで示すことにする。以下では、それぞれ図面が異なろうが、同じ構成部材については同じ用語及び同じ参照符号を用いることにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】空気質量流量計を示す図
図2】微小電気機械システム(MEMS)として形成されたセンサ素子を示す図
図3】微小電気機械システム(MEMS)として形成され、空気質量流量計の補助管内に配置されたセンサ素子を示す図
図4】空気質量流が吸気開口部を通り空気質量流量計の補助管に流れ込んでいる状況を示す図
図5】空気質量流量計内に微小電気機械システム(MEMS)として形成され、プラグインフィンガとして吸気管内に組み込まれたセンサ素子を示す図
図6】第1の温度センサ素子及び第2の温度センサ素子を備えたセンサ素子を示す図
図7】抵抗の電気的結線の1つの可能な形態を示す図
図8図7に示したセンサ素子を別の形態の抵抗の電気的結線で示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、空気質量流量計2が示されている。空気質量流量計2は、この実施例ではプラグインフィンガとして構成されており、これは吸気管1内に差し込まれ、吸気管と固定的に接続される。吸気管1は、空気質量流10を内燃機関のシリンダに向けて案内する。内燃機関のシリンダ内で動力用燃料を効率的に燃焼させるために必要とされるのは、供給された空気質量に関する正確な情報を得ることである。供給された空気質量に基づき、シリンダ中に噴射される燃料の燃焼に不可欠である酸素の利用可能量を推定することができる。さらに図1に示されている空気質量流量計2は、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8を有している。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8は、それぞれ異なる場所に配置されている。これらの温度センサ素子7,8は一般に抵抗によって形成されており、それらは温度センサ素子のところに生じている温度に応じて、それぞれ異なる抵抗値をとる。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間に、加熱素子12が形成されている。吸気開口部4を通って空気質量流量計2のケーシング3に流入する空気質量流10は、最初に第1の温度センサ素子7の上を通過し、次いで加熱素子12の上を通過し、その後、空気質量流10は第2の温度センサ素子8のところに到達し、さらに補助管5に沿って空気質量流量計2の排気開口部6へ向かって案内される。この場合、空気質量流10は、第1の温度センサ素子7のところに所定の温度で到達する。この温度は、第1の温度センサ素子7によって測定される。その後、空気質量流10は加熱素子12の上を通り、空気質量流10は、加熱素子12を通過して流れる質量に応じて多少の差こそあれ加熱される。加熱された空気質量流10が第2の温度センサ素子8に到達すると、空気質量流10のそのときの温度が第2の温度センサ素子8によって測定される。第1の温度センサ素子7によって測定された温度と、第2の温度センサ素子8によって測定された温度との差から、通過して流れた空気質量を求めることができる。この目的で、空気質量流量計2自体に、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8の測定信号を評価する評価電子装置13を設けることができる。このようにして得られた空気質量流10に関する情報は、ここでは図示されていないエンジン制御装置へ転送される。
【0018】
図2には、空気質量流量計1のためのセンサ素子15が示されている。センサ素子15は、微小電気機械システム(MEMS)として、単一のシリコンチップ上に形成されている。センサ素子15は差分温度法に従い動作し、それによって通過して流れる空気流10の質量が求められる。この目的で、薄いダイアフラム17の上に、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8が形成されている。第1の温度センサ素子7及び第2の温度センサ素子8は、ダイアフラム17の表面16上のそれぞれ異なる場所に設けられている。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間に、加熱素子12が配置されている。微小電気機械システムとして形成されたセンサ素子15には、評価電子装置13も組み込まれており、この評価電子装置13は、温度センサ素子7,8の測定信号をただちに評価して、空気質量流10に比例する信号に変換することができる。ただし評価電子装置13を、後段の電子機器に統合してもよい。空気質量流10に関する情報を、接続パッド19及び接続ワイヤ18を介して、ここには図示されていない後段のエンジン制御装置へ転送することができる。
【0019】
図3には、微小電気機械システム(MEMS)として形成された、空気質量流量計2のためのセンサ素子15が示されており、このセンサ素子5は、空気質量流量計2の補助管5内に配置された単一の基板の上に形成されている。図3の場合、吸気開口部4を介して空気質量流10は流れておらず、これは例えば内燃機関が停止されている場合に該当する。センサ素子15に設けられた加熱素子12に電気エネルギーが供給されると、加熱素子12を中心として、図示されているような対称的な温度分布20が発生する。したがってこの場合、第1の温度センサ素子7及び第2の温度センサ素子8は、同じ温度を測定し、これらの温度センサ素子7,8の温度測定信号の差分形成後に評価電子装置13は、空気質量流量計2の補助管5内には空気質量流10が存在しない、と識別する。
【0020】
図4には、空気質量流10が吸気開口部4を通り空気質量流量計2の補助管5に流れ込んでいる状況が示されている。このような状況では、加熱素子12を中心とした温度分布20が、はっきりと目立つように第2の温度センサ素子8の方向にずらされている。したがってこの場合、第2の温度センサ素子8は、第1の温度センサ素子7よりも著しく高い温度を測定する。次いで、これら両方の温度センサ素子7,8の差分温度を評価電子装置13において求めることによって、空気質量流10を求めることができる。空気質量流10に応じて、温度の和も反応する。ただし、温度の和は、空気質量の熱特性にも反応し、例えば通過して流れる空気質量流10の熱容量及び/又は熱伝導性にも反応する。例えば、空気質量流10が同じままで空気質量の熱伝導性が高まると、システムが冷え、温度の和が著しく減少する。ただし、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8の差分温度は、1次近似では変化しないまま維持される。このため、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8の和信号によって、空気質量の熱特性の変化例えば熱容量又は熱伝導性の変化を測定することができる。和温度信号を差分温度で補って計算すれば、通過して流れる空気質量の熱伝導性の変化及び/又は熱容量の変化を推定することができる。
【0021】
図5には、プラグインフィンガとして吸気管1に組み込まれた空気質量流量計2内に、微小電気機械システム(MEMS)として形成された空気質量流量計のセンサ素子15が設けられている様子が示されている。この場合も、空気質量流10は吸気開口部4に到達し、補助管5の中に流入する。ダイアフラム17の表面16には、第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8が設けられているのがわかる。第1の温度センサ素子7と第2の温度センサ素子8との間には、加熱素子12が配置されている。空気質量流10は、最初に第1の温度センサ素子7に到達し、次に加熱素子12の上を通過し、その後、第2の温度センサ素子8に到達する。
【0022】
図5には、空気質量流10に汚染物9も含まれていることが示されている。空気質量流10によって、例えば水滴6、油滴11及び/又はダスト粒子14が、空気質量流量計2に向かって搬送される。これらの汚染物9は、空気質量流量計2の吸気開口部4を通ってセンサ素子15に達する。汚染物9が第1の温度センサ素子7及び第2の温度センサ素子8の領域に堆積すると、時間が経過するにつれて空気質量流10の測定値が大幅に誤ったものとなるおそれがある。このような誤りは、長期にわたりセンサ素子15の上に汚染物が蓄積していくことでいっそう増加していくことから、これに関しては空気質量流量計2の信号ドリフトという用語も使用する。このような信号ドリフトは望ましくないものであり、抑圧及び/又は補償しなければならない。
【0023】
図6には、第1の温度センサ素子7及び第2の温度センサ素子8と、これらの温度センサ素子7,8の間に配置された加熱素子12を備えたセンサ素子15が示されている。矢印で、空気質量流10の方向が表されている。したがって空気質量流10の流動方向で見ると、加熱素子12の前方に第1の温度センサ素子7が、加熱素子12の後方に第2の温度センサ素子8が配置されている。この場合、第1の温度センサ素子7も第2の温度センサ素子8も、例えば大きい抵抗値を有する1つの測定抵抗22と、例えば小さい抵抗値を有する少なくとも2つの比較抵抗21とから成る、電気的な直列回路として構成されている。この図からわかるように、測定抵抗22は薄いダイアフラムの内部領域に配置されており、比較抵抗21はダイアフラム17の周縁領域に配置されている。
【0024】
さらに図6には、汚染物9ここでは特に油滴11が、空気質量流10とともにセンサ素子15に搬送されることが示されている。センサ素子15の上には、特に油滴11が堆積している。この図からはっきりとわかるように、油滴11はセンサ素子15の上において、空気質量流10の流動方向で見て、加熱素子12の後方に位置する抵抗の領域に、特に著しく堆積している。センサ素子15の上に油滴11がこのように非対称に堆積していることで、信号ドリフトが引き起こされ、それによって最終的に、センサ素子15により測定される空気質量流10の測定値に誤りが引き起こされる。しかも汚染物は、大部分がダイアフラム17の周縁領域に堆積している。油滴11が非対称に堆積するのには物理的な理由があり、これは特に、第2のセンサ素子8の領域の温度がいっそう高いことに由来し、膜17の周縁領域の温度勾配に起因している。
【0025】
図7には、センサ素子15における比較抵抗21と測定抵抗22の実現可能な電気的結線が示されている。この場合、第1のセンサ素子7は、空気質量流10の方向で見て、加熱素子12の前方に配置された1つの測定抵抗22と、空気質量流10の方向で見て、やはり加熱素子12の前方に配置された2つの比較抵抗21とから成る直列接続回路によって、形成されている。同様に第2の温度センサ素子8も、複数の抵抗から成る直列接続回路によって形成されており、この場合も空気質量流10の流動方向で見て、加熱素子12の後方に1つの測定抵抗22が配置されており、やはり空気質量流10の方向で見て、加熱素子12の後方に2つの比較抵抗21が配置されている。
【0026】
すべての抵抗は薄いダイアフラム17の上に配置されており、この場合、抵抗値が小さい比較抵抗21はダイアフラム17の周縁領域に設けられ、抵抗値が大きい測定抵抗22は薄いダイアフラム17の中央に配置されている。
【0027】
図8には、図7に開示したセンサ素子15が示されており、この場合、薄い膜17の上において中央に加熱素子12が配置されている。この加熱素子12を、例えば電気的な抵抗ヒータとして形成することができる。センサ素子15は、微小電気機械システムとして形成されており、この場合、薄いダイアフラム17を例えば、シリコン基板をそれ相応にエッチングすることで製造することができる。このような薄いダイアフラム17の上に、例えば小さい抵抗値とすることのできる比較抵抗21と、例えば大きい抵抗値とすることができる測定抵抗22が、加工形成される。図8に示した実施例によれば、このようにして薄いダイアフラムの上に、抵抗値が大きい2つの測定抵抗22と、抵抗値が小さい4つの比較抵抗21と、加熱素子12として用いられる電気抵抗とが設けられる。
【0028】
図8には、空気質量流10の流動方向が矢印で表されている。この流動方向を基準として、加熱素子12の前方に、2つの比較抵抗21と1つの測定抵抗22が設けられ、加熱素子の後方に、さらに別の2つの比較抵抗21とさらに別の1つの測定抵抗22が設けられる。
【0029】
この場合、薄いダイアフラムの上で加熱素子12の前方に設けられた1つの測定抵抗22と、加熱素子12の後方に設けられた2つの比較抵抗21とを、電気的に直列接続することによって、第1の温度センサ素子7が形成される。つまり、以下のような複数の抵抗から成る第1の直列接続回路によって、第1の温度センサ素子7が形成される。即ちこの場合、第1の温度センサ素子7は、空気質量流10の流動方向で見て、加熱素子12の後方に配置された2つの比較抵抗21から成り、これらの抵抗21は、加熱素子12の前方に配置された1つの測定抵抗22と接続されている。
【0030】
さらに第2の温度センサ素子8は、加熱素子12の軸線に関して鏡像対称に、以下のような複数の抵抗から成る直列接続回路として構成されている。即ちこの場合、加熱素子12の前方に位置する1つの比較抵抗21が、ダイアフラム17の上で加熱素子12の後方に位置する1つの測定抵抗22と、電気的に接続されている。第2の温度センサ素子8の測定抵抗22は、さらに別の1つの比較抵抗21と電気的に接続されており、この比較抵抗21も電気的な加熱素子12の前方に位置している。
【0031】
なお、「小さい抵抗値」及び「大きい抵抗値」という概念は、個々の測定抵抗22各々の抵抗値が、個々の1つの比較抵抗21の抵抗値よりも少なくとも10倍は大きい、ということを意味する。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】