特表2015-532450(P2015-532450A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532450(P2015-532450A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】腹腔鏡処置のための外科訓練モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20151013BHJP
   A61B 17/28 20060101ALN20151013BHJP
   A61B 17/32 20060101ALN20151013BHJP
【FI】
   G09B23/30
   A61B17/28 310
   A61B17/32 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-534613(P2015-534613)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】US2013061557
(87)【国際公開番号】WO2014052373
(87)【国際公開日】20140403
(31)【優先権主張番号】61/705,972
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ブレスリン トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
(72)【発明者】
【氏名】ワチリ セレヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホーク アダム
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】パレルモ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コーエン リー
(72)【発明者】
【氏名】デマルキ ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】ガルセス エイミー
【テーマコード(参考)】
2C032
4C160
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
4C160FF19
4C160GG22
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】組織ホルダに連結された管状形状を有する模擬組織を含む外科訓練モデルを提供する。
【解決手段】模擬組織の一部は、縫合またはステープリングによって膣円蓋、腸、あるいは他の器官の腹腔鏡的閉鎖を練習するのに適した膣円蓋への入口、または切断された腸を模するために組織ホルダの遠位端から張出す。2つの管状構造がまた、同じ組織ホルダ上に配置される。第2のモデルは、模擬組織が互いに隣接し、異なるタイプの吻合処置を練習するのに適したモデルを形成するように、2つのホルダによって保持された模擬組織の2つの部分を含む。第3のモデルは、2つのホルダを含み、単一のまたは二重の管状模擬組織が、これらの2つのホルダに連結され、これらの2つのホルダの間に間隙を隔てる。モデルは、繰り返しの練習のために円筒形開口部を閉じる段階を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科訓練装置であって、該外科訓練装置は、
近位端の開口部と、遠位端の開口部とを相互連結する内側表面を有する第1の中央管腔を含む管状形態を有する第1の模擬組織を含むモデルを含み、前記第1の模擬組織の遠位端は、圧縮可能であり、前記モデルは、近位端および遠位端を有する第1のホルダを含み、前記第1のホルダは、前記第1の模擬組織の近位端の開口部が、前記第1のホルダの少なくとも一部を前記第1の模擬組織の中央管腔内に配置して、前記第1のホルダ上に配置されるように前記第1の模擬組織に連結され、前記第1の模擬組織は、該第1の模擬組織の遠位端の開口部が、該第1の模擬組織の第1の張出し部分を規定する長さだけ前記第1のホルダの遠位端の遠位側にあるように前記第1のホルダに連結される、ことを特徴とする外科訓練装置。
【請求項2】
前記第1の模擬組織および前記第1のホルダは、前記第1の模擬組織の第1の張出し部分の遠位端の開口部を維持するように構成されており、前記第1の張出し部分は、遠位端の開口部を閉じるために圧縮可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項3】
前記モデルは、近位端の開口部と、遠位端の開口部とを相互連結する第2の中央管腔を含む管状形態を有する第2の模擬組織を含み、前記第2の模擬組織は、該第2の模擬組織の近位端の開口部が、前記第1のホルダの少なくとも一部を前記第2の模擬組織の中央管腔内に配置して、前記第1のホルダ上に配置されるように前記第1のホルダに連結され、前記第2の模擬組織は、該第2の模擬組織の遠位端の開口部が、該第2の模擬組織の第2の張出し部分を規定する長さだけ前記第1のホルダの遠位端の遠位側にあるように前記第1のホルダに連結され、前記第1の模擬組織および前記第2の模擬組織は、実質的に同心であり、一方が他方の頂部上にあるように模擬組織の2つの層を形成し、前記第2の模擬組織および前記第1のホルダは、前記第1の張出し部分の遠位端の開口部を維持し、かつ、前記第2の張出し部分の遠位端の開口部を維持するように構成されており、前記第1の張出し部分および前記第2の張出し部分は、前記第1の模擬組織の遠位端の開口部を閉じ、かつ、前記第2の模擬組織の遠位端の開口部を閉じるために圧縮可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項4】
前記第1の張出し部分は、前記第2の張出し部分よりも長い、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項5】
前記第2の模擬組織は、前記第1の模擬組織よりも薄い、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項6】
前記第2の模擬組織は、色が赤またはピンクであり、前記第1の模擬組織は、色が白である、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項7】
前記第2の模擬組織は、色が前記第1の模擬組織と対照的である、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項8】
前記第1の模擬組織および前記第2の模擬組織の遠位端の少なくとも一方は、不規則である、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項9】
前記モデルは、ベースをさらに含み、前記第1のホルダは、前記第1のホルダを前記ベースから間隔を隔てて配置する第1のコネクタにより前記ベースに連結される、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項10】
前記コネクタは、前記ベースに対して前記ホルダの移動を可能にする可撓性アームまたはグースネックである、ことを特徴とする請求項9に記載の外科訓練装置。
【請求項11】
前記第1のコネクタは、前記ベースに対して回転する、ことを特徴とする請求項9に記載の外科訓練装置。
【請求項12】
前記ベースは、鉛直部分を含み、前記コネクタは、前記鉛直部分に連結される、ことを特徴とする請求項9に記載の外科訓練装置。
【請求項13】
前記モデルは、前記第1のホルダに直接連結されるベースをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項14】
前記モデルは、鉛直部分を有するベースを含み、前記ホルダは、前記鉛直部分に連結される、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項15】
前記モデルは、第2のホルダおよび第2の模擬組織をさらに含み、前記第2の模擬組織は、近位端の開口部と、遠位端の開口部とを相互連結する第2の中央管腔を含む管状形態を有し、前記第2の模擬組織は、該第2の模擬組織の近位端の開口部が、前記第2のホルダの少なくとも一部を前記第2中央管腔内に配置して、前記第2のホルダ上に配置され、前記第2の模擬組織の遠位端の開口部が、該第2の模擬組織の第2の張出し部分を規定する長さだけ前記第1のホルダの遠位端の遠位側にあるように前記第2のホルダに連結され、前記第1のホルダおよび前記第2のホルダは、該第1のホルダと該第2のホルダとの間に間隙が形成されるように互いに対して配向される、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項16】
ベースをさらに含み、前記ベースは、前記第1のホルダの長手方向軸線が、前記第2の長手方向軸線と隣接し、かつこれと平行であるか、あるいは、前記第1のホルダの長手方向軸線が、前記第2のホルダの長手方向軸線と垂直であり、前記第1のホルダの遠位端が、前記第2のホルダの遠位端に隣接するように、前記第1のホルダおよび前記第2のホルダを該ベースに取り外し可能に連結するように構成されている、ことを特徴とする請求項15に記載の外科訓練装置。
【請求項17】
前記モデルは、縫合またはステープリングで膣円蓋の閉鎖を練習するための膣カフを模するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項18】
前記模擬組織は、シリコーンでオーバーモールドされたファブリックメッシュ材料でできている、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項19】
前記第1の張出し部分の長さは、前記第1のホルダに対して前記第1の模擬組織を移動させることによって選択可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項20】
前記第1の張出し部分および前記第2の張出し部分の長さは、前記第1のホルダに対して 前記第1の張出し部分および前記第2の張出し部分を移動させることによって各々選択可能である、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項21】
前記第1の模擬組織は、前記第2の模擬組織の内側表面が遠位端で第1の模擬組織から分離可能であるように前記第1の模擬組織および前記第2の模擬組織の遠位端の近位側位置で前記第2の模擬組織に接着される、ことを特徴とする請求項3に記載の外科訓練装置。
【請求項22】
前記第2の張出し部分の長さは、前記第2のホルダに対して前記第2の模擬組織を移動させることによって選択可能である、ことを特徴とする請求項15に記載の外科訓練装置。
【請求項23】
外科訓練器をさらに含み、該外科訓練器は、
ベースと、
頂部カバーであって、該頂部カバーは、該頂部カバーと前記ベースとの間に内腔を構成するように前記ベースに連結されかつ前記ベースから間隔を隔てて配置された頂部カバーと、
前記内腔に接近するための少なくとも1つの孔または侵入可能な領域と、
前記内腔の内側に配置された腹腔鏡カメラと、を含み、前記腹腔鏡カメラは、前記内腔の外側に配置され、該腹腔鏡カメラに接続されたビデオモニタ上にビデオ画像を表示するように構成されており、
前記モデルは、前記内腔の内側に配置され、該モデル上で外科技術を練習するために前記少なくとも1つの孔または侵入可能な領域を介して器具で接近される、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項24】
第1の模擬組織は、楕円形または円形断面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項25】
前記第1のホルダは、楕円形または円形断面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項26】
外科訓練装置であって、該外科訓練装置は、
近位端の開口部と、遠位端の開口部とを相互連結する第1の中央管腔を含む管状形態を有する第1の模擬組織と、
近位端および遠位端を有する第1のホルダと、を含み、前記第1の模擬組織の近位端の開口部が、前記第1のホルダの少なくとも一部を前記第1の模擬組織の中央管腔内に配置して、前記第1のホルダ上に配置されるように前記第1の模擬組織に連結され、
近位端および遠位端を有する第2のホルダをさらに含み、前記第2のホルダは、前記第1の模擬組織の遠位端の開口部が、前記第2のホルダの少なくとも一部を前記第1の模擬組織の中央管腔内に配置して、前記第2のホルダ上に配置されるように前記第1の模擬組織に連結され、
前記第1のホルダの遠位端は、前記第1の模擬組織によって隔てられる間隙を規定する長さだけ前記第2のホルダの遠位端から間隔を隔てて配置される、ことを特徴とする外科訓練装置。
【請求項27】
前記第1の模擬組織は、圧縮可能であり、切断可能である、ことを特徴とする請求項26に記載の外科訓練装置。
【請求項28】
前記第1の模擬組織は、前記間隙の位置に模擬腫瘍を含む、ことを特徴とする請求項26に記載の外科訓練装置。
【請求項29】
前記第1の模擬組織と同心の第2の模擬組織構造をさらに含む、ことを特徴とする請求項26に記載の外科訓練装置。
【請求項30】
前記第1のホルダおよび前記第2のホルダは、同じベースに連結される、ことを特徴とする請求項26に記載の外科訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスレファレンス
本願は、出典を明示することにより全体が本願の開示の一部とされる2012年9月26日に出願された「腹腔鏡処置のための外科訓練モデル」と題する米国仮特許出願第61/706592号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に、外科訓練ツールに関し、特に、腹腔鏡的、内視鏡的、および最小侵襲性手術に関連するが、これに限定されない種々の外科技術および処置を教え、練習するための模擬組織構造およびモデルに関する。
【背景技術】
【0003】
新しい外科技術を習得する医学生および経験を積んだ医師は、人間の患者で手術を行う資格を得る前に広範な訓練を受けなければならない。訓練は、種々の組織を切断し、穿刺し、クランプし、掴み、ステープリングし、焼灼し、縫合するための種々の医療装置を使用した正しい技術を教えなければならない。被訓練者の遭遇する可能性の範囲は大きい。例えば、異なる組織、並びに患者の解剖学的構造および病気が提示される。種々の組織の層の厚さおよび硬度(consistency)もまた、身体の部分毎に、また患者毎に異なる。異なる処置は、異なる技能を要求する。さらに、被訓練者は、患者の大きさおよび状態、隣接した解剖学的景観、並びに目標組織のタイプおよびそれらが容易に接近できるか、あるいは比較的接近困難か等の要因によって影響を受ける種々の解剖学的周囲状況において技術を練習しなければならない。
【0004】
多くの教具、訓練器、シミュレータ、およびモデル器官が、外科訓練の1つまたはそれ以上の観点に対して利用可能である。しかしながら、遭遇される可能性がある、並びに腹腔鏡的、内視鏡的、および最小侵襲性手術を練習するに際して使用することができるモデル器官または模擬組織要素に対する必要性が存在する。腹腔鏡的、または最小侵襲性手術では、5−10mm程度の小さい切開部が形成され、この切開部を通して、体腔に接近し、腹腔鏡のようなカメラを挿入するための通路を作るためのトロカールまたはカニューレが挿入される。カメラは、生のビデオフィード捕獲画像を提供し、次いで、この生のビデオフィード捕獲画像は、1つまたはそれ以上のモニタ上で外科医に対して表示される。少なくとも1つの追加の小さい切開部が形成され、この少なくとも1つの追加の小さい切開部を通して、経路を作るためのもう1つのトロカール/カニューレが挿入され、かかる経路を通して、モニタ上で観察される処置を行うための外科器具が通過される。腹部のような目標組織位置は、代表的には、二酸化炭素ガスを送出することによって体腔にガスを注入することによって拡大され、外科医が使用するスコープおよび器具を安全に収容するのに十分大きい作業空間を作り出す。体腔内のガス注入圧力は、特殊なトロカールを使用することによって維持される。腹腔鏡手術は、開放手術と比べたとき、多くの利点を提供する。これらの利点には、より小さい切開部による低減された痛み、減少された出血、およびより短い回復時間が含まれる。
【0005】
腹腔鏡的または内視鏡的最小侵襲性手術は、目標組織が臨床家によって直接観察されないために、開放手術と比べてより高度な技能レベルを必要とする。目標組織は、小さい開口を通して接近される手術部位の一部を表示するモニタ上で観察される。したがって、臨床家は、2次元の観察スクリーン上で、組織平面、3次元深さ知覚を視覚的に決定すること、器具の手から手への移転、縫合、精密切断、並びに、組織および器具の操作を練習する必要がある。代表的には、特定の解剖学的構造および処置を模したモデルが、練習者がこの解剖学的モデルを直接観察できないようにされた模擬骨盤訓練器内に配置される。模擬骨盤訓練器は、外科医および研修医に対し、掴み、操縦、切断、結び目作り、縫合、ステープリング、焼灼等の腹腔鏡手術で使用される基本的な技能および代表的な技術、並びに、これらの基本的技能を利用した特定の外科処置の仕方を訓練する機能的で安価な練習手段を提供する。模擬骨盤訓練器は、これらの腹腔鏡処置を行うのに必要な外科装置を実地説明(demonstrating)するための効果的な売り込みツールでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腹腔鏡的または最小侵襲性手術で練習を必要とする上記の技術の1つは、切断またはステープリングである。例えば、子宮が腹腔鏡的に除去される腹腔鏡子宮摘出術では、膣円蓋は、縫合により閉鎖される。膣カフのこの縫合またはステープリング、あるいはその他の産婦人科外科技能を練習するためのモデルを提供することが望ましい。それ故、特定の解剖学的構造を模するだけでなく、処置の特定の段階で解剖学的構造を提供し、または、模擬腹腔鏡環境内で練習する被訓練者のために処置の特定の段階を隔絶するモデルを有することもまた望ましい。次いで、モデルは、少なくとも部分的に直接観察できないようにされる腹腔鏡訓練器のような模擬腹腔鏡環境内に配置される。カメラおよびモニタが、実際の手術におけるように、練習者に視覚化を提供する。1つの技術が練習された後、かかるモデルは、容易さ、速さ、および費用節約を伴って繰り返しの練習を許容することがさらに望ましい。以上に鑑み、本発明の目的は、解剖学的構造を模し、かかる解剖学的構造を隔絶し、繰り返しの練習をも可能にする処置の特定の段階でかかる解剖学的構造を提供することである。模擬訓練器の使用が新しい腹腔鏡施術者の技能レベルを大きく高め、非外科設定環境で、将来の外科医を訓練するための優れたツールであることが証明されている。かかる改良された本物のような効果的な外科訓練モデルに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、腹腔鏡的外科技能を練習するための外科訓練装置が提供される。この外科訓練装置は、第1の模擬組織を有する模擬組織モデルを含む。第1の模擬組織は、近位端の開口部と、遠位端の開口部とを相互連結する内側表面を有する第1の中央管腔を含む管状形態を有する。前記第1の模擬組織の少なくとも遠位端は、圧縮可能である。前記モデルは、近位端および遠位端を有する第1のホルダをさらに含む。前記第1のホルダは、前記第1の模擬組織の近位端の開口部が、前記第1のホルダの少なくとも一部を前記第1の模擬組織の中央管腔内に配置して、前記第1のホルダ上に配置されるように前記第1の模擬組織に連結される。前記第1の模擬組織は、該第1の模擬組織の遠位端の開口部が、該第1の模擬組織の第1の張出し部分を規定する長さだけ前記第1のホルダの遠位端の遠位側にあるように前記第1のホルダに連結される。張出し部分は、練習者によって縫合またはステープリングして閉じられる膣カフを模する。
【0008】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練装置が提供される。この外科訓練装置は、可撓性材料でできており、外側表面および内側表面を有する細長い第1の模擬組織を含む。内側表面は、遠位端の開口部と、近位端の開口部とを相互連結する管腔を構成する。第1の模擬組織は、前記管腔の遠位端が閉鎖可能であるように圧縮可能である。この外科訓練装置は、上面および下面を有するベースと、近位端および遠位端を有する第1のホルダとをさらに含む。前記第1のホルダの近位端は、前記ベースの上面に連結され、前記ベースから上方に延びる。第1の模擬組織は、第1の模擬組織の近位端が第1のホルダに連結され、第1の模擬組織の遠位端が、第1の模擬組織の第1の張出し部分を規定する長さだけ第1のホルダの遠位端の遠位側にあるように、第1のホルダに連結される。第1の張出し部分は、第1のホルダに連結されるときに,遠位端の開口部を維持し、第1の張出し部分は、遠位開口部を閉じるために圧縮可能である。
【0009】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練装置が提供される。この外科訓練装置は、外科縫合糸を保持するように構成された可撓性材料でできており、外側表面と内側表面との間に厚みを有する細長い模擬組織構造を含む。この模擬組織構造の内側表面は、遠位端の開口部と、近位端の開口部とを相互連結する中央管腔を構成する。この模擬組織構造は、円形かたは楕円形断面を有し、応力を受けないときには管腔の開口部を維持し、管腔を閉じるために圧力下では圧縮可能である。この模擬組織構造は、ホルダに、模擬組織構造の近位端を該ホルダの遠位端上に引き伸ばすことによって、連結されるように構成されている。この外科訓練装置は、遠位端および近位端を有するホルダをさらに含む。このホルダは、模擬組織構造の近位端が、管腔内にホルダを挿入するために引き伸ばされ、ホルダに連結された模擬組織構造を維持するようにホルダ上に弾性的に収縮することを可能にされるように、模擬組織構造の管腔内に嵌まるように寸法決めされ、構成されている。この模擬組織構造は、模擬組織構造の遠位端の開口部が、張出し部分によって規定される長さだけホルダの遠位端の遠位側にあるように、ホルダに連結される。張出し部分の遠位端の開口部は、模擬組織構造の両側を圧縮することによって閉鎖可能である。張出し部分の遠位端の開口部は、張出し部分に縫合糸を通し、模擬組織構造の両側を互いに合わせることによって閉鎖可能である。この外科訓練装置は、模擬組織構造に同心的に嵌まるように寸法決めされ、構成された第2の細長い模擬組織構造を含む。この第2の模擬組織構造は、外科縫合糸を保持するように構成された可撓性材料でできており、外側表面と内側表面との間に厚みを有する。この第2の模擬組織構造の内側表面は、遠位端の開口部と、近位端の開口部とを相互連結する中央管腔を構成する。この外科訓練装置は、ベースに連結された模擬組織構造を保持するように構成されたクリップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による外科訓練装置の平面斜視図である。
図2】本発明による2つのカフを備えたカフモデルの部分的に透明な平面斜視図である。
図3】本発明によるカフなしのベース、コネクタ、およびカフホルダを示すカフモデルの側面斜視図である。
図4】本発明によるカフモデルの側面図である。
図5】本発明によるカフモデルの側面図である。
図6】本発明によるカフモデルの側面図である。
図7】本発明による単一カフの側面斜視図である。
図8】本発明による1つまたはそれ以上のカフなしのカフモデルの平面斜視図である。
図9】本発明による2つのカフを備えたカフモデルの部分的に透明な平面斜視図である。
図10】本発明による4つのカフを備えたカフモデルの部分的に透明な側面斜視図である。
図11】本発明による1つのカフを備えたカフモデルの部分的に透明な側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、腹領域のような患者の胴体をまねるように構成された外科訓練装置10が、示されている。外科訓練装置10は、使用者から実質的に見えないようにされ、本発明に記載された模擬若しくは生組織またはモデル器官または訓練用モデル等を受け入れるように構成された体腔12を提供する。体腔12は、体腔12内に配置された組織または器官モデル上で外科技術を練習する装置を使用する使用者によって侵入される組織模擬領域14を通して接近される。体腔12は、組織模擬領域を通して接近されるように示されているけれども、代替的には、手補助接近装置または単一部位ポート装置を使用して体腔に接近することもできる。例示的な外科訓練装置が、出典を明示することにより全体が本願の開示の一部とされる2011年9月29日に出願された「持ち運び可能な腹腔鏡訓練器」と題する米国特許出願第13/248449号に記載されている。外科訓練装置10は、腹腔鏡的またはその他の最小侵襲性外科処置に特によく適している。
【0012】
さらに図1を参照すると、外科訓練装置10は、少なくとも1つの脚20によってベース18に連結され、かつベース18から間隔をへだてて配置された頂部カバー16を含む。外科訓練装置10は、腹領域のような患者の胴体をまねるように構成されている。頂部カバー16は、患者の前面を代表しており、頂部カバー16とベース18の間の空間は、患者の内部すなわち器官がある体腔を代表している。外科訓練器10は、外科手術を受ける患者を模するに際して種々の外科処置およびそれらに関連した器具を教え、練習し、実地説明する(demonstrating)ための有用なツールである。外科器具は、組織模擬領域14および頂部カバー16に設けられた予め形成された孔22を通して、腔12内に挿入される。頂部カバー16とベース18の間に配置されたモデル器官上で模擬処置を行うために、種々のツールまたは技術を使用して頂部カバー16を貫通することができる。ベース18は、モデル受け入れ領域24、または、模擬組織モデルまたは生組織を載せ、または保持するためのトレーを含む。ベース18のモデル受け入れ領域24は、モデル(図示せず)を所定位置に保持するためのフレーム状要素を含む。ベース18上に模擬組織モデルまたは生組織を保持するのを助けるために、位置26に、引っ込め可能なワイヤに取り付けられたクリップが設けられる。ワイヤが延ばされ、次いでクリップ留めされて組織模擬領域14の実質的に下で組織モデルを所定位置に保持する。組織モデルを保持する他の手段には、モデルに取り付けられたフックアンドループ型ファスナ材料(VELCRO(登録商標))の相補的ピースに取り外し可能であるようにモデル受け入れ領域24でベース18に取り付けられたフックアンドループ型ファスナ材料(VELCRO(登録商標))のパッチが含まれる。
【0013】
図1には、カバー16にヒンジ連結されたビデオ表示モニタ28が閉鎖配向で示されている。ビデオモニタ28は、モニタに画像を送出するための種々の視覚的システムに接続可能である。例えば、予め形成された孔22の1つを通して挿入された腹腔鏡、または腔内に配置され、模擬処置を観察するのに使用されるウエッブカムを、ビデオモニタおよび/または画像を使用者に提供するモバイルコンピューティングデバイスに接続することができる。訓練処置を記録し、および/または、実地説明目的のためにモニタ上で予め記録されたビデオを再生するために、フラッシュドライブのような持ち運び可能なメモリ記憶デバイス、スマートフォン、デジタルオーディオ、またはビデオプレーヤー、あるいはその他のデジタルモバイルデバイスを接続する手段も提供される。もちろん、モニタ以外のより大きなスクリーンに視聴出力を提供する接続手段が提供される。もう1つの変形例では、頂部カバー16は、ビデオ表示器を含まないが、ラップトップコンピュータ、モバイルデジタルデバイス、あるいは、IPAD(登録商標)のようなタブレットを支持し、これをワイヤまたはワイヤレスで訓練器に接続する手段を含む。
【0014】
組み立てられるとき、頂部カバー16は、ベース18の上方に直接位置決めされ、脚20は、実質的に周囲のまわりに配置され、かつ、頂部カバー16とベース18と間でこれらに相互連結される。頂部カバー16およびベース18は、実質的に同じ形状および寸法であり、実質的に同じ周囲輪郭を有する。図1に示された変形例では、脚は、周囲光が内腔をなるべく多く照明し、便利な可搬性のためになるべく重量を減らすことを可能にする開口部を含む。頂部カバー16は、脚20から取り外し可能であり、脚20は、ベース18に対して取り外し可能であるか、あるいは、ヒンジ等により折り畳み可能である。したがって、組み立てられない訓練器10は、より容易な可搬性に役立つ低減された高さを有する。本質的に、外科訓練器10は、使用者から見えないようにされた模擬体腔12を提供する。体腔12は、使用者が、腹腔鏡的または内視鏡的最小侵襲性外科技術を練習するためにモデルに接近するための頂部カバー16に設けられた少なくとも1つの組織模擬領域14および/または孔22を通して、少なくとも1つの外科モデルを受け入れるように構成されている。
【0015】
本発明によるカフモデル30が、図2に示されている。カフモデル30は、上述した外科訓練装置10、または上記した外科訓練装置と同様な他の外科訓練器内に配置されるように構成されている。カフモデル30は、ベース32と、コネクタ34と、カフホルダ36と、少なくとも1つのカフ38と、を含む。
【0016】
カフモデル30のベース32は、モデル30のその他の部分のための底部支持体として役立つプラットホームである。このプラットホームは、金属またはプラスチックのような任意の材料でできている。ベース32は、使用者によって操作される間、直立位置でモデルの安定性を維持するための十分な重量を有する。モデル30は、モデル受け入れ領域24の位置で外科訓練器10の体腔12内に配置されるように寸法決めされ、構成されている。ベース32の下面は、カフモデル30を外科訓練器10に取り付けるための手段を備える。訓練器10内にカフモデルを取り付けるためのかかる手段は、ベース32の底面に取り付けられ、外科訓練器10のベース18に取り付けられた相補的なフックアンドループ型ファスナ材料または接着材に取り付けられる接着材、吸引カップ、スナップ嵌め、磁石、および、フックアンドループ型ファスナ材料を含むが、これらに限定されない。
【0017】
さらに続けて図2および図3を参照すると、カフモデル30のベース32には、コネクタ34が連結されている。コネクタ34は、ベース32からカフホルダ36を分離する細長いアームである。第1の端で、コネクタ34は、コネクタ34がベース32から鉛直方向上方に延びるように、ベース32に連結されている。コネクタ34の第2の端部で、コネクタ34は、カフホルダ36に連結されている。コネクタ34は、グースネック(gooseneck)であって、カフホルダ36の位置が調節後グースネックコネクタ34によって維持されるようにカフホルダ36の位置を調節することができるようなグースネックである。1つの変形例では、コネクタ34は可撓性であり、もう1つの変形例では、コネクタ34は剛性である。図4に示されたさらにもう1つの変形例では、剛性コネクタ34が、該剛性コネクタ34が、調節を可能にし、なお調節後の新しい位置にカフホルダ36を維持する仕方で移動可能であるように、玉継手(ball joint)または自在軸受(swivel bearing)40を介してベース32に連結されている。コネクタ34は、ベース32に対して回転可能であるのがよい。コネクタ34は、コネクタ34が調節された位置を保持しないが、使用者によって所望の位置に維持されなければならないほど薄弱(flimsy)であってもよい。もちろん、コネクタ34は、訓練器10のベース18に直接連結されてもよい。
【0018】
カフモデル30のもう1つの変形例が、図5に示されており、ベース32は、鉛直部分42を含んでいる。図5に示されているように、直立した鉛直部分42から、コネクタ34は実質的に横方向に延びている。コネクタ34は、カフホルダ36を支持する可撓性のグースネック型コネクタ、または剛性のコネクタである。図5は、1つまたはそれ以上のカフ38なしのカフホルダ36を示している。この変形例では、コネクタ34は、剛性であっても、可撓性であってもよく、ベースに対するその位置を維持することができ、またはできない。コネクタを鉛直部分42に連結するために、自在軸受(swivel bearing)を使用してもよい。
【0019】
次に、図6を参照すると、ベース32が、上方に延びる鉛直部分32を含むもう1つの変形例が示されている。直立した鉛直部分42から、カフホルダ36は、ベース32に直接取り付けられている。この変形例では、カフホルダ36に可撓性または可動性を与えるコネクタ34がない。カフホルダ36は、接着材またはその他のファスナ手段によりベース32に直接取り付けられる。もう1つの変形例では、図6に示されているように、コネクタは、細長いピン等であり、この細長いピン等に、カフホルダ36は、固定された関係、または、カフホルダ36が、ベース32に対して角度付きし、回転し、若しくは移動する移動可能な関係で取り付けられる。もちろん、カフホルダ36は、コネクタ34なしでベース32の水平部分に取り付けられてもよい。コネクタ34なしで、カフホルダ36は、ベース32に対して角度をなしてベース32に連結されてもよい。
【0020】
カフホルダ36は、所望の構成にカフ38を保持するように構成された構造である。カフホルダ36は、上述したように、コネクタ34に連結され、または、ベース32に直接連結される。カフホルダ36は、カフホルダ36上に配置されるべき1つまたはそれ以上のカフ38のための取付部として役立つ。1つの変形例では、カフホルダ36は、形状が円筒形であり、中実または中空構造のプラスチックまたは金属のような任意の適当な材料でできている。コネクタ34に連結されるカフホルダ36の近位端は、コネクタ34を受け入れ、コネクタ34に取り付けるための連結手段またはソケットを含んでもよい。カフホルダ36は、カフホルダ36が、コネクタ34に対して、回転し、角度付き、捩れ、または,移動するようにコネクタ34に取り付けられてもよい。1つの変形例では、カフホルダ36は、横断面が円形でなく、楕円形横断面を有する。1つの変形例では、カフホルダの楕円形横断面の長軸は、約1.75インチ(4.45cm)であり、短軸は、約1インチ(2.54cm)である。もう1つの変形例では、カフホルダの楕円形横断面の長軸は、約2.25インチ(5.72cm)であり、短軸は、約1.5インチ(3.81cm)である。カフホルダ36は、練習すべき外科技能および組織模擬の目的に応じて任意の閉じた曲線または多角形形状を含む任意の横断面形状を有してよい。カフホルダ36は、長さが約1.5インチ(3.81cm)である。さらに、カフホルダ36は、ベースまたはコネクタ34から取り外し可能であり、異なる長さまたは横断面形状または寸法を有する別のカフホルダ36と互換可能である。カフホルダ36は、スナップ嵌め、摩擦嵌め、またはコネクタ34上へのねじ込みのような任意の取り外し可能な手段によって連結することができる。
【0021】
次に、図7を参照すると、本発明の代表的なカフまたはスリーブ38が示されている。カフ38は、開放した近位端と開放した遠位端を相互連結する中央管腔を有する管状形態を有する。カフ38の遠位端の少なくとも一部は、使用者がクランプ若しくは縫合糸若しくはステープルを使用して、または、端を単純に押圧することによって、遠位端の周を互いに押圧して近置し、管腔および端を閉じるように、弾力的であり、圧縮可能である。カフ38の材料は、可撓性であり、好ましくはポリマ材料でできている。カフは、シリコーンオーバーモールドを備え、中空円筒管状形状に成形されたナイロンのような4方向引き伸ばし多孔性ファブリック材料を含むのがよい。カフ38の厚さは、約1−5mmであり、カフ38は、長さが2−4インチ(5.08−10.2cm)であり、6インチ(15.2cm)まで、より長くてもよい。一般的に、カフ38は、カフ38の少なくとも一部が、カフホルダ36の自由な遠位端を越えて延びるように、カフホルダ36よりも長い。カフ38の材料は引き伸ばし可能なので、カフ38は、ホルダ38上で引き伸ばされるように寸法決めされる。それ故、カフ38の径は、カフホルダ36の径にきわめて一致し、カフホルダ36は、カフ38が、カフホルダ36上で引き伸ばされたときに張力をかけられて配置され、それによって、カフホルダ36に取り外し可能に連結されて保持されるように、径がカフ38の径と同じか、あるいは、わずかに大きい。楕円形断面を有するカフ38も本発明の範囲内である。カフ38の楕円形断面の長軸は約1.75インチ(4.45cm)であり、短軸は約1.0インチ(2.54cm)である。もう1つの変形例では、カフ38の楕円形断面の長軸は約2.25インチ(5.72cm)であり、短軸は約1.5インチ(3.81cm)である。楕円形断面を有するカフ38は、円形断面または楕円形断面を有するカフホルダ36上に配置されてもよい。シリコーンオーバーモールドは、本物のような組織の感じを提供し、カフの埋設されたファブリック材料は、材料の裂けを防止し、このことは、使用者がカフ38を通して縫合糸を引く練習をするときに特に重要である。カフは、シリコーン、または、熱可塑性エラストマー、クラトン(KRATON)(登録商標)のようなスチレンブロックコポリマ、または、ヒドロゲルを含む任意のポリマでできていてよい。カフ38は、本物の組織をまねるように、代表的には白またはピンクに染料付けされ、または色付けされる。2つのカフが練習のために使用される場合、第1のカフ38aは、白に選択され、第1のカフホルダ36上に配置され、第2のカフ38bは、色が赤またはピンクであり、第1のカフ38aが第2のカフ38b内にあるように第1のカフ38a上に配置される。2つの色の使用は、人体のある本物の組織をまね、また、2つのカフ層の間の対照性および区別を可能にする。赤またはピンクである外側層は、腹腔鏡を通してモニタ上で見るときに光によって洗い流されない。外側層は赤またはピンクなので、白い層のように、腹腔鏡を通して見るときに光を反射しない。モニタを通して見るときにコントラスト(対照)が創出される限り、2つの層に対して任意の色を使用してよい。したがって、1つの層、好ましくは内側層は、淡色の層であり、外側層は、好ましくはより暗い色でできている。対照的な層は、必須ではない。2つのカフ38a、38bを用いる代わりに、一方のカフが他方のカフの内側にある2つのカフをまねるように単一のカフ38を形成してもよく、単一のカフは、カフ38の外側から内側に向かうにつれて色の勾配(gradient)をなして着色するのがよい。1つまたはそれ以上のカフ38a、38bの遠位端は、端を縫合する困難性を増し、練習者に、縫合長さを変え、したがって、カフを引き、伸ばすことを要求するために、不規則な(uneven)縁部を有してもよい。カフ38の不規則な遠位端は、遠位端に波形パターンを形成するためにカフの遠位端から内方に延びるスカラップ(scallops)を含んでよい。一方を他方の頂部に配置した2つのカフ38a、38bが使用されるとき、それぞれの遠位端は、互いに対しても不規則である。例えば、一方のカフは、直線的な縁を有し、他方のカフは不規則な遠位縁を有してもよく、または、両方のカフが、不規則な遠位縁を有してもよい。
【0022】
使用に際して、単一のカフ38を、カフホルダ36上に張力をかけて、引き伸ばして配置する。カフ38の材料の所望の量または長さが、カフホルダ36の遠位または自由端44を越えて張出し、または延びる。カフホルダ36の自由端44を超えて延びるカフ38が、図2および図4に示されている。使用者は、カフホルダ36の遠位端44から張出した円筒形カフ38の開放端を縫合糸またはステープルで閉じる練習をする。カフ38の張出した部分は有利に、切断された腸および膣開口部のようなある本物の組織構造をまね、使用者が、外科医の直接的視覚からカフモデル38が隠されて外科訓練器10内に配置された腹腔鏡的または内視鏡的最小侵襲性処置において練習したいと思ういかなる縫合技術をも練習することを可能にする。カフ38は、模擬が、大腸か、小腸か、結腸か、膣カフか、あるいは、血管構造かによって、任意の寸法と径であってよい。
【0023】
例えば、外科医は、腹腔鏡的子宮摘出術の後に行うことが必要な縫合を練習することができる。腹腔鏡的婦人科外科医は、子宮を除去し、膣円蓋を閉じることが必要になる腹腔鏡的子宮全摘出術を行う。本カフモデル30、および、特に、カフ38の張出した部分は、子宮摘出術後に縫合によって閉じることが必要な膣円蓋への入口をまねる。かくして、外科医は、モデルを使用して、この特別な外科処置における縫合を練習することができる。
【0024】
特に本物のようであるのは、縫合閉鎖される内側層および外側層である2つの層を含む膣円蓋をまねる2つの円筒形カフ38a、38bの使用である。外科技能を練習するため、内側カフ38aは、粘膜層を代表し、外側カフ38bは、筋膜または腹膜を代表することができる。1つの変形例では、2つのカフ38a、38bは、カフホルダ36上に張力をかけて配置される。1つの変形例では、白色を有する第1のカフ38aが、わずかに引き伸ばされ、上記の張出し部分を残して、カフホルダ36上に引かれる。次いで、色が赤またはピンクである第2のカフ38bが、わずかに引き伸ばし、第1のカフ38a上で引き、カフホルダ36上に引くことによって第1のカフ38a上に配置される。別の例として、第1の白いカフ38aが、第2の赤またはピンクのカフ38bの内側に配置され、次いで、両方が、同時にわずかに引き伸ばされ、次いで、カフホルダ36上に同時に引かれる。カフ38aおよび38bの引き伸ばしは、何がカフ38aおよび38bを所定位置に保持し、カフホルダ36に移動可能に連結されるかである。もう1つの変形例では、2つのカフ38a、38bは、頂部層38bの遠位端で後退配置(setback)されて、またはされないで互いに糊付けされる。接着材は、2つの層38a、38bが遠位端で互いから分離可能であるように、遠位端から近位方向に付けられる。張出し部分は、内側カフ38aおよび外側カフ38bを含み、それらの遠位端は、約0.25インチ(0.635cm)〜1インチ(2,54cm)の距離だけカフホルダ36の遠位端44を超えて延びている。張出し部分の長さは変化してよく、張出し長さを調節するためにカフホルダ36に沿ってカフ38を移動させることによって選択可能である。カフホルダ36は、実質的に開放形状のカフホルダ36と実質的に同じ断面形状のカフ38の張出し部分を維持するように構成されている。例えば、円形断面を有するカフホルダ36に取り付けられるときに円形断面を有するカフ38は、遠位端が円形である開口部を保持する張出し部分を有する。より楕円形状の張出し部分が望まれる場合には、楕円形断面を有するカフホルダに楕円形状のカフを取り付けるのがよい。第2のすなわち外側カフ38bは、第2のすなわち外側カフ38bの遠位端が、図2および図4に示されているように、第1すなわち内側カフ38aの遠位端から約1/3cm後退配置されるように、第1のカフ38a上に配置される。2カフ構成の1つの例は、内側長軸寸法が約1.75インチ(4.45cm)であり、内側短軸寸法が約0.40インチ(1.02cm)であり、厚さが約(3.18mm)であり、長さが約3.0インチ(7.62cm)である実質的に楕円形断面を有する管状の第1のカフ38aを含む。第2のカフ38bもまた、管状であり、楕円形断面を有し、約0.05−0.08インチ(1.27−2.03mm)の厚さ、および約2.80インチ(7.11cm)の全体長さを有する。カフ38bは、約2.0インチ(5.08cm)の内側長軸および約0.66インチ(1.68cm)の内側短軸を有する。第1のカフ38aは、約0.3−0.5cm第2のカフ38bの遠位端を越えて延びている。第2のカフ38bののより短い長さのために、使用者は、両端を互いに縫合するために第2のカフ38bの遠位端を第1のカフ38aの遠位端と整合するように引くことを強いられ、それによって、使用者は、縫合糸を配置する間に外側層を張力がかけられた状態に維持する練習をすることができる。同様に、外側層38bは、内側層38aよりも薄いので、使用者は、縫合糸がカフ材料を通して引かれないように適切に張力を調整することを強いられる。それ故、同じ厚さを有しない2つの層を有することが有利である。
【0025】
色、径、および、長さ以外は、内側カフ38aおよび外側カフ38bは、同じ材料で形成され、あるいは、異なる材料で形成され、実質的に同じである。例えば、1つまたはそれ以上の層は、メッシュ支持体を省略してもよい。層の厚さも同じ(約1/16インチ(1.59mm))であってよい。円形断面のカフ38が使用される場合には、内側すなわち第1のカフ38aは、約1.0インチ(2.54cm)の径を有し、外側すなわち第2のカフ38bは、約1.125インチ(2.86cm)の径を有する。カフホルダ36は、径が約1.125インチ(2.86cm)であり、外側すなわち第2のカフ38bの径と同じである。カフホルダ36上に少なくとも1つのカフ38がある状態で、カフホルダ36は、臨床家に合うようにカフ38の近位開放端を位置決めするために、可撓性のコネクタ34を使用して関節運動させることができる。それ故、臨床家は、自己の必要性に適切に合わせるためにカフホルダ36の位置を操作する練習をすることができる。次いで、使用者は、カフを縫合し、またはステープリングして閉じる。カフの位置は、外科医が縫合を行う最良の位置を得るために臨床家または補助者が閉鎖中操作することができる。それ故、関節運動するコネクタアーム34は、カフ38の異なる位置および調節を可能にする。
【0026】
縫合を練習するのに利用可能な張出し部分により、使用者は、体内若しくは対外結び目よって各々閉じられた個々のスティッチ(断続性縫合)、または初めと終わりに結び目を有し、中間に結び目がないランニングスティッチを作る練習をすることができる。さらに、使用者は、いかなるタイプの結び目も必要とせず、張出しカフの開放端の長さを走るとげ付き縫合糸(barbed suture)を使用する練習をすることができる。しばしば、使用者は、内側層38aおよび外側層38bの両方を同時に閉じ、または、先ず第1のすなわち内側カフ38aを閉じ、次いで第2のすなわち外側カフ38bを閉じる練習をすることができる。スティッチが完成した後、外科医は、水を内側カフ内に注ぎ、水がカフ内に保持されるかを確認することによって、縫合カフが十分に閉じられているかを確認する漏れ試験を練習することもできる。漏れ試験では、層が縫合され閉じられた後、使用者は、カフホルダからカフを取り外し、カフの開放端内に水を注ぎ、縫合された端が漏れを起こすかどうかを確認する。漏れが観察される場合には、縫合は改善を必要とする。カフがステープリングされた後に、同じ漏れ試験を行うことができる。
【0027】
縫合糸またはステープルによる少なくとも1つのカフ38の閉鎖後、使用者は、縫合されたまたはステープリングされた端部を切断して、これを少なくとも1つのカフの残りの部分から除去することができ、必要ならば、少なくとも1つのカフ38をカフホルダ36の自由端に向けてスライドさせてもう1つの張出し部分を作り出し、または、1つまたはそれ以上の張出し部分の長さを選択的に増大させ若しくは調節して再び縫合の練習をすることができる。このプロセスは、さらなる練習のために新しいカフ38をカフホルダ上に配置することができるカフホルダ36の箇所に不十分なカフ38が引き伸ばされたままにされるまで、繰り返すことができる。それ故、カフ38は、長さが約3インチ(7.62cm)であり、あるいは、交換を必要とする前に多数使用を可能にするより長くてもよい消耗可能な構成要素として設計されている。使用者は、カフを縫合して閉じる。次いで、カフ38の遠位部分は、交換が必要となる前にいくつかのより多い回数、カフの残りの部分を使用することができるように切断される。それによって、カフモデル30は有利に、円筒形開口部を縫合する段階、特に、繰り返しの練習のために代表的なモデルで膣カフを腹腔鏡的に縫合する段階を隔絶する。
【0028】
次に、図8を参照すると、カフモデル50のもう1つの変形例が示されており、この変形例では、各々が上記と同様な2つのカフモデル48、49が互いに実質的に向かい合わせに位置決めされる。カフモデル50は、上述され、図1に示された外科訓練装置10、または、上記の外科訓練装置と同様な他の外科訓練器内に配置される。カフモデル50は、互いに実質的に向かい合わせ関係でベース52に連結される2つのカフモデル48、49を含む。第1のカフモデル48は、一方の端がベース52に連結され、他方の端が第1のカフホルダ58に連結された第1のコネクタ54を含む。第2のカフモデル48は、一方の端がベース52に連結され、他方の端が第2のカフホルダ60に連結された第2のコネクタ56を含む。図9に示されているように、少なくとも1つのカフ62が各カフホルダ58、60上に配置され、図9は、第1のカフホルダ58および第2のカフホルダ60上にそれぞれ配置されたカフ62aおよび62bを示している。
【0029】
カフモデル50のベース52は、両方のカフモデル48、49のための底部支持体として役立つプラットホームであり、ベース52は、モデルがひっくり返らないように寸法決めされ、構成されている。プラットホームは、金属またはプラスチックのような任意の材料でできている。ベース52は、使用者によって操作される間に直立位置でモデル50の安定性を維持するために十分な重量を有する。モデル50は、モデル受け入れ領域24の位置で外科訓練器10の体腔12内に配置されるように寸法決めされ、構成されている。ベース52の下面は、外科訓練器10内にモデル50を取り付けるための手段を備える。かかる外科訓練器10内にモデル50を取り付けるための手段には、ベース32の底面に取り付けられ、外科訓練器30のベース18に取り付けられた相補的なフックアンドループ型ファスナ材料または接着材に取り付けられる接着材、吸引カップ、スナップ嵌め、磁石、および、フックアンドループ型ファスナ材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
さらに続けて図8および図9を参照すると、カフモデル50のベース52には、コネクタ34に関して上述したのと同様な第1のコネクタ54および第2のコネクタ56が連結されている。コネクタ54、56は、ベース52から、それぞれ、各カフホルダ58、60を分離する細長いアームである。それらの第1の端で、コネクタ54、56は、各々がベース52から離れる方向に鉛直方向上方に延びるようにベース52に連結されている。それらの第2の端で、各コネクタ54、56は、カフホルダ58、60に連結されている。各コネクタ54、56は、可撓性のグースネックアームであり、かかる可撓性のグースネックアームは、カフホルダ58、60の位置が、調節後にこれらのグースネックアーム54、56によって維持されるように調節することができるようなものである。1つの変形例では、コネクタ54,56の少なくとも1つは、可撓性であり、もう1つの変形例では、コネクタ54、56は、両方とも剛性である。さらにもう1つの変形例では、剛性コネクタ54、56は、剛性コネクタ54、56が、調節を可能にし、しかも調節後の新たな位置にカフホルダ58、609を維持する仕方で移動可能であるように、上述し、図4に示した玉継手または自在軸受を介してベース52に連結される。
【0031】
カフモデル50の他の変形例では、コネクタ54、56の少なくとも1つが、直立した鉛直部分から、コネクタ54、56が互いに向かって互いに対向して実質的に横方向に延びるように、図5に示されているようなベース52の1つまたはそれ以上の鉛直部分に取り付けられている。カフホルダ58、60は、ベース52に直接連結されてもよく、もう1つの変形例では、カフホルダ58、60の1つまたはそれ以上は、訓練器10のベース18に直接連結され、さらにもう1つの変形例では、カフホルダ58、60、および、コネクタ54、56が用いられておらず、カフは、ベースに連結されたクリップ26で訓練器10のベース18に連結される。コネクタ54、56は、それぞれ、カフホルダ58、60を支持する可撓性のグースネック型コネクタ、または剛性コネクタである。図8は、1つまたはそれ以上のカフ62なしのカフホルダ58、60を示す。
【0032】
カフモデル50のもう1つの変形例では、ベース52は、図6に示されているのと同様な上方に延びる2つの対向した鉛直部分を含む。直立した鉛直部分から、カフホルダ58、60は、鉛直部分に直接取り付けられ、互いに向かって互いに対向して横方向に延びる。カフホルダ68、60は、接着材または他のファスナ手段によりベース52に直接取り付けられる。カフモデル50のもう1つの変形例では、コネクタ54,56は、細長いピンであり、カフホルダ58、60は、これらのピン上に可動または固定関係で取り付けられる。もちろん、カフホルダ58、60は、コネクタ54、56なしでベース52の水平部分に取り付けられてもよい。
【0033】
カフホルダ58、60は各々、所望の形状に少なくとも1つのカフまたはスリーブ62を保持するように構成されている。カフホルダ58は、上述したように、コネクタ54に、またはベース52に直接連結されている。カフホルダ60は、コネクタ56に、またはベース52に直接連結されている。カフホルダ58、60は、1つまたはそれ以上のカフを配置するための取付部として役立つ。1つの変形例では、カフホルダ58、60は、形状が円筒形であり、中実または中空構造のプラスチックまたは金属のような任意の適当な材料でできている。コネクタに連結されるカフホルダの端は、コネクタを受け入れ、コネクタに取り付けるための連結手段またはソケットを含むのがよい。1つの変形例では、カフホルダは、断面が円形でなく、楕円形断面を有する。カフホルダは、任意の閉じた曲線または多角形を含む任意の断面形状を有してよい。カフホルダ58、60の各々は、長さが約1.5インチ(3.81cm)である。
【0034】
カフモデル50のために使用される代表的なカフ62は、カフモデル30のために使用され、図7に示されているのと同じである。カフの材料には、中空円筒形管状形状に形成された、ナイロンのような4方向引き伸ばし、多孔性ファブリック材料、あるいは、シリコーンオーバーモールドを備えた他のメッシュが含まれる。カフ62の厚さは、約1−5mmであり、カフ62は、長さが約3−4インチ(7.62−10.2cm)であり、6インチ(15.2cm)までのような、より長くてもよい。腸の厚さを模するために、カフは、より厚く、厚さが1/8インチ(3.18mm)である。カフ62は、図9でわかるように、カフ62a、62bの少なくとも一部が、それぞれ、カフホルダ58、60の自由端44a、44bを越えて延びるように、カフホルダ58、60よりも長さが長い。カフ62a、62bの材料は引き伸ばし可能なので、カフ62a、62bの材料は、ぞれぞれ、カフホルダ58、60上で引き伸ばされるように寸法決めされる。それ故、カフ62a、62bの径は、それぞれ、カフホルダ58、60の径にきわめて一致し、カフホルダ58、60は、カフ62a、62bが、カフホルダ58、60上で張力をかけられて引き伸ばされるように、カフ62a、62bの径と径が同じか、またはそれよりわずかに大きい。シリコーンオーバーモールドは、本物のような組織の感じを提供し、カフのファブリック材料は、材料の裂けを防止し、このことは、使用者がカフ62を通して縫合糸を引くときに特に重要である。カフ62は、本物の組織をまねるために、任意の色、代表的には白またはピンクに着色される。特殊化された縫合を練習するために4つのカフを用いる場合には、第1のカフ62a、62bは白に選択され、それぞれ、カフホルダ58、60上に配置され、第2のカフ62c、62dは色が赤またはピンクに選択され、それぞれ、第1のカフ62a、62b上に配置される。2つの色の使用は、人体のある本物の組織をまね、また、2つのカフ層の間の対照性および区別を可能にする。赤またはピンクである外側の層は、腹腔鏡を通してモニタ上で見るときに光によって洗い流されない。外側の層は赤またはピンクなので、白い層のように、腹腔鏡を通して見るときに光を反射しない。2つの層に対して、任意の色を用いることができる。1つの層を、2層モデルに似るように形成し、外側表面のより暗い色から内側表面のより淡色に変化する色の勾配(gradient)をなして着色してもよい。カフ62a、62b、カフ62c、62dは、円形または楕円形断面を有してよく、円形または楕円形断面を有するカフホルダ58、60上に配置されてよい。
【0035】
円形または楕円形断面を有する形状が円筒形である単一カフ62aを、円形または楕円形断面を有するのがよいカフホルダ58上に張力をかけて配置し、引き伸ばす。カフ62aを、カフ62aの材料の所望の量が、カフホルダ58の遠位または自由端44aを越えて延びるまでコネクタ48に向けて引く。形状が円筒形である第2の単一カフを、第2のカフホルダ60上に張力をかけて配置し、引き伸ばす。カフ62bを、カフ62bの材料の所望の量が、カフホルダ60の遠位または自由端44bを越えて延びるまでコネクタ56に向けて引く。使用者は、遠位開放端が並置されまたは互いに隣接した円筒形カフ材料の2つの張出し部分を連結する練習をする。2つのカフを互いに連結するために1つまたはそれ以上の縫合糸68を一方のカフ62aおよび他方のカフ62bに繰り返し通すことによって、カフ62aおよび62bの2つの隣接した円筒形の張出し部分の連結を行う。カフ62a、62bの1つまたはそれ以上を、端部を縫合するようためにいくらかの張力状態に、しかも、縫合糸がカフを通して裂かないように張力をかけすぎずに維持するには技能が必要である。カフ62a、62bの張出し部分は有利に、切断された腸および膣開口部のようなある本物の組織構造をまね、使用者が、外科医の直接的視覚からカフモデル50が隠されて外科訓練器10内に配置された腹腔鏡的または内視鏡的最小侵襲性処置において練習したいと思ういかなる縫合技術をも練習することを可能にする。それ故、このカフモデル50は、それぞれのカフホルダ上に近接して保持されるカフ材料の2つの開放した円筒形部分を含む。カフホルダは、自由端を互いに縫合する困難性を増大させ、または減少させるように調節することができる。例えば、一方のコネクタを一方の側に、捩り、また方向付けして、一方のカフホルダを対向したカフホルダからオフセットさせることができ、あるいは他の方法では、一方のカフホルダの長手方向軸線を、他方のカフホルダの長手方向軸線に対して角度をなして置き、それによって、取り付けられたカフを、図8および図9に関して上述したように互いにオフセットさせて、あるいは角度付けさせることができる。ベース52の異なる位置に形成された穴内に配置するために、カフホルダ58、60が取り付けられたコネクタ54、56の少なくとも1つを、ベース52から取り外すことができる。ベース52の穴の構成は、互いに対するカフの角度付けを可能にする。それ故、モデル50は、2つのカフの端が、約1.5インチ(3.81cm)間隔を隔てて配置され、2つのホルダの端が、約3.5インチ(8.89cm)間隔を隔てて配置されている図9に示されているような端と端の吻合、カフが並置されるようにベースの隣接した穴内にコネクタ54、56を配置することによって、カフ62a、62bおよびカフホルダ58、60の長手方向軸線が互いに実質的に平行に配向される側と側の吻合、および、一方のカフの端が、他方のカフの側壁と並置されるようにベースの隣接した穴内にコネクタ54、56を配置することによって、カフ62a、62bおよびカフホルダ58、60の長手方向軸線が互いに実質的に垂直に配向される側と端の吻合含む異なるタイプの吻合を練習するのに理想的である。もちろん、異なるタイプの吻合を練習するために、2つのベースを使用し、正しい配向に移動させてもよい。また、コネクタは、追加の器具または処置を用いて使用者が支持することが必要な本物の組織を模するために、支持または不断の調節を必要とする薄弱なグースネックであってよい。
【0036】
次に、図10を参照すると、一方のカフホルダ58上にカフ62a、62cによって形成されたポリマメッシュ材料製の2つの層を有し、他方の対向したカフホルダ60上にカフ62b、62dによって形成されたポリマメッシュ材料製の2つの層を有する構造を創出するために4つの円筒形カフ62a、62b、62c、62dを備えるカフモデル50を使用することもできる。かかる構成では、両方が縫合されて閉鎖される内側層および外側層が提供される。1つの変形例では、2つのカフ62a、62cが張力をかけてカフホルダ58上に配置され、2つのカフ62b、62dが張力をかけてカフホルダ60上に配置される。1つの変形例では、第1のカフ62a、62bは、色が白であり、それぞれ、わずかに引き伸ばされ、それぞれ、カフホルダの遠位端44a、44bの遠位側に、対向して配置された張出し部分を残して、カフホルダ58、60上に引かれる。次いで、色が赤またはピンクである第2のカフ62c、62dが、それぞれ、わずかに引き伸ばし、第1のカフ62a、62b上で引き、カフホルダ58、60上に引くことによって第1のカフ62a、62b上に配置される。別の例として、第1の白いカフ62aが、第2の赤またはピンクのカフ62cの内側に配置され、次いで、両方が、同時にわずかに引き伸ばされ、次いで、カフホルダ58上に同時に引かれる。1つまたはそれ以上のカフの引き伸ばしは、何が1つまたはそれ以上のカフを所定位置に保持し、カフホルダに移動可能に連結されるかである。張出し部分は、一方のカフホルダ58上に内側カフ62aおよび外側カフ62cを含み、他方のカフホルダ60上に内側カフ62bおよび外側カフ62dの張出し部分を含み、カフホルダ58、60の自由端44a、44bから離れる方向に延びる張出し部分は、出会って並置されるか、互いに隣接し、いくつかの変形例では、縫合が行われる距離だけ分離される。内側カフ層と外側カフ層の径は実質的に同じであり、内側カフ層と外側カフ層は同じ材料で作られており、ほぼ同じ厚さ(約1/16インチ(1.59mm)である。1つの変形例では、外側カフは、内側カフよりもわずかに薄い。内側すなわち第1のカフ62a、62bは、約1インチ(2.54cm)の径を有し、外側すなわち第2のカフ62c、62dは、約1.125インチ(2・87cm)の径を有する。カフホルダ58、60は、径が約1.125インチ(2・87cm)である。カフホルダ58、60上に少なくとも1つのカフ62がある状態で、上記の異なるタイプの吻合を練習する臨床家に合う仕方でカフ62の遠位開放端を位置決めするために、コネクタ54、56を使用して、カフホルダ58、60を関節運動させることができる。カフの径は、血管吻合のための1.0mmから、胃吻合のための65mmまで変化することができ、これに対応して、カフホルダは、異なるカフを保持するように寸法決めされる。カフホルダは、異なるカフを嵌めるためにコネクタおよびベースと互換可能である。臨床家は、自己の必要性に適切に合わせるためにカフホルダ58,60の位置を操作する練習をすることができる。次いで、使用者は、カフを互いに縫合する。カフの位置は、外科医が縫合を行う最良の位置を得るために臨床家または補助者が閉鎖中操作することができる。それ故、関節運動するコネクタアーム54,56は、カフ62の異なる位置を可能にする。
【0037】
縫合糸による少なくとも1つの少なくとも1つの対向したカフ62への連結後、使用者は、縫合された部分を切断して、カフホルダ上に取り付けられた2つの管状部片を残して、これを少なくとも1つのカフの残りの部分から除去することができる。残った管状部片を、カフホルダ上で自由端44a、44bに向けてスライドさせることによって移動させ、再び2つの隣接した管状カフを互いに縫合する練習をするための十分な長さの張出し部分を作り出すことができる。このプロセスは、さらなる練習のために新しいカフをカフホルダ上に配置することができるカフホルダ36の箇所に引き伸ばされた状態で保持されるべきカフが不十分なままであるまで、繰り返すことができる。それ故、カフ62は、長さが約3インチ(7.62cm)であり、あるいは、交換を必要とする前に多数使用を可能にするより長くてもよい消耗可能な構成要素として設計されている。すでに購入されたカフホルダ、コネクタ、およびベースと同時に使用される多数のカフのキットを販売してもよく、カフホルダ、コネクタ、およびベースは、このキットに含まれていてもよい。使用者は、張出しカフを互いに縫合する。次いで、カフの縫合された部分は、交換が必要となる前にいくつかのより多い回数、カフの残りの部分を使用することができるように切断される。それによって、カフモデル50は有利に、管状開口部を縫合する段階、特に、繰り返しの練習のために代表的なモデルで2つの管状構造を互いに腹腔鏡的に縫合する段階を隔絶する。
【0038】
カフモデル50は、2つの構造の連結である吻合を練習するのに特に有用である。この吻合は、血管構造の間の連結、または、腸の個々のループのような他の管状構造の間の連結をいう。使用者が練習することができる外科吻合の例は、腸の一部を切断し、例えば、いわゆるルーワイ(Roux-en-Y)吻合と呼ばれる処置において、2つの残った端を互い縫いまたはステープリングする(吻合する)場合である。かかる構成(set up)では、モデルは、両方のカフホルダ58、60に取り付けられ、図11に示されているようなカフホルダ58、60の距離を隔てる単一カフ64について使用されることになろう。単一カフ64は、カフ64に取り付けられ、対照的着色により腫瘍の位置を使用者に視覚的に表示する疑似腫瘍66を含むのがよい。次いで、使用者は、模擬腸のその部分を切断して、カフ64から除去し、次いで、コネクタ54、56を操作して、残りの張出し部分を互いに近づけて、2つの残りの張出し管状部分を互いに吻合縫合またはステープリングする。かかる変形例では、カフ64は、厚さが約1/8インチ(3.18mm)であり、長さが6−12インチ(15.2−30.5cm)である。
【0039】
子宮摘出術後膣カフを縫合する練習をするために使用されるモデルの変形例では、モデルは、付随的な模擬器官および組織をさらに含んでもよい。例えば、模擬子宮仙骨靭帯および膀胱に加えて、模擬付属器組織および腹膜がモデルに設けられてもよい。これらの模擬組織は、シリコーン、あるいはその他の適当な材料でできている。
【0040】
いくつかの実施形態を特に示し、例示的な実施形態を参照して説明してきたけれども、当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変形を行うことができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0041】
10 外科訓練装置
30、50 カフモデル
36、58、60 カフホルダ
38、62、64 カフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】