(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532451(P2015-532451A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】腹腔鏡処置のための外科訓練モデル
(51)【国際特許分類】
G09B 23/30 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
G09B23/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-534627(P2015-534627)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月13日
(86)【国際出願番号】US2013061728
(87)【国際公開番号】WO2014052478
(87)【国際公開日】20140403
(31)【優先権主張番号】61/706,591
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ブレスリン トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】ブラック ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ワクリ セレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホーク アダム
(72)【発明者】
【氏名】パレルモ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ガルセス エイミー
(72)【発明者】
【氏名】デマルキ ジャクリーン
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
【課題】模擬組織部分を含むモデルを含む外科訓練装置を提供する。
【解決手段】模擬組織部分は、ベースに連結された複数のポスト上に選択張力可能な張力をかけて取り付けられる。各ポストは、模擬組織部分を保持するように構成された少なくとも1つの切欠きを含む。シートの形態の模擬組織部分を異なる高さの切欠き内に取り付けることによって、模擬組織の角度付けされた設置が創出され、模擬腹腔鏡環境において切断および縫合のような外科処置を練習することができる。2つ以上のシートを取り付けてもよく、各シートは、ポスト上で臨むように多かれ少なかれシートを引くことによって選択可能な張力で取り付けることができる。1つの変形例は、腹腔鏡的環境における外科技能訓練のための種々のレベルのダイナミズムおよび困難を提供するために、シートの間に配置された模擬腫瘍と、角度付けされ、またはぐらつくポストと、模様付けされ、しるし付けされた模擬組織表面とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
頂部カバーであって、該頂部カバーは、該頂部カバーと前記ベースとの間に内腔を構成するように前記ベースに連結されかつ前記ベースから間隔を隔てて配置された頂部カバーと、
前記内腔に接近するための少なくとも1つの孔または侵入可能な領域と、
前記内腔の内側の腹腔鏡カメラと、
前記腹腔鏡カメラに接続され、前記腹腔鏡カメラによって捕えられた画像を使用者に表示するように構成されたビデオ表示器と、
前記内腔内に配置された取り外し可能なモデルと、を含み、前記モデルは、ベースに間隔を隔てた仕方で連結された複数の取付けポストに連結された少なくとも1つの模擬組織部分を備え、前記各取付けポストは、外面に長手方向軸線に沿って形成された少なくとも1つの切欠きを含み、前記少なくとも1つの切欠きは、前記模擬組織部分が前記ベースから所定距離で宙吊りにされるように、該少なくとも1つの切欠きの位置に前記模擬組織部分を保持するように構成されている、ことを特徴とする外科訓練装置。
【請求項2】
前記模擬組織部分は、シリコーン製シートである、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項3】
前記シリコーン製シートは、引き伸ばし可能なファブリックまたはメッシュを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の外科訓練装置。
【請求項4】
前記モデルは、シートの形態の2つの模擬組織部分を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項5】
前記2つの模擬組織部分の少なくとも一方は、少なくとも1つの模擬腫瘍構造を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の外科訓練装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの模擬腫瘍構造は、前記2つの模擬組織部分の間に位置決めされている、ことを特徴とする請求項4に記載の外科訓練装置。
【請求項7】
前記模擬組織部分は、ポスト上に選択可能な張力で取り付けられ、実際の組織硬度を模すように操作されるときに撓み可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項8】
前記模擬組織部分は、前記複数の取付けポストに取り付けるための複数の予め形成された孔を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項9】
前記各取付けポストは、テーパした遠位端を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項10】
前記各取付けポストは、鈍い遠位端を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科訓練装置。
【請求項11】
前記各取付けポストは、前記少なくとも1つの模擬組織部分に孔を形成することができる、ことを特徴とする請求項10に記載の外科訓練装置。
【請求項12】
外科訓練装置であって、該外科訓練装置は、
上面を有するベースと、
前記ベースに連結されており、前記ベースの上面から上方に延びた複数の取付けポストと、を含み、前記各取付けポストは、前記ベースに連結された近位端と、テーパした遠位端とを有し、
上面および下面と、孔とを有する少なくとも1つの実質的に平らな模擬組織部分をさらに含み、前記孔は、前記模擬組織部分が、該孔を通る前記取付けポストによって宙吊りにされるように、前記取付けポストに連結されており、前記模擬組織部分は、前記複数の取付けポストの間で張力をかけて取り付けられるように可撓性の引き伸ばし可能な材料でできている、ことを特徴とする外科訓練装置。
【請求項13】
少なくとも1つの取付けポストが、前記ベースに対して多軸的に角度付けされている、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項14】
前記各取付けポストは、前記模擬組織部分を保持するように構成された少なくとも1つの切欠きを含む、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項15】
前記各取付けポストは、前記ベースに対して角度をなしている、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項16】
上面および下面と、孔とを有する第2の実質的に平らな模擬組織部分をさらに含み、前記孔は、前記第2の模擬組織部分が、該孔を通る前記取付けポストによって宙吊りにされるように、前記取付けポストに連結されており、前記第2の模擬組織部分は、前記複数の取付けポストの間で張力をかけて取り付けられるように可撓性の引き伸ばし可能な材料でできており、前記第2の模擬組織部分は、前記少なくとも1つの模擬組織部分に隣接して配置されている、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項17】
前記第2の模擬組織部分と前記少なくとも1つの模擬組織部分の間に配置された模擬腫瘍をさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の外科訓練装置。
【請求項18】
前記第2の模擬組織部分は、前記少なくとも1つの模擬組織部分に対して角度をなしている、ことを特徴とする請求項16に記載の外科訓練装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの模擬組織部分は、埋設されたメッシュ材料を備えたシリコーンでできている、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項20】
4つの取付けポストをさらに含む、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項21】
前記模擬組織部分は、該模擬組織部分の周囲に沿って配置された4つの予め形成された孔を含む、ことを特徴とする請求項20に記載の外科訓練装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの模擬組織部分は、使用者が前記取付けポストの遠位端で該少なくとも1つの模擬組織部分を選択的に穿刺することによって前記複数の取付けポストに取り付けられる、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項23】
腹腔鏡訓練器をさらに含み、該腹腔鏡訓練器は、
訓練器ベースと、
頂部カバーであって、該頂部カバーは、該頂部カバーと前記ベースとの間に内腔を構成するように前記ベースに連結されかつ前記ベースから間隔を隔てて配置された頂部カバーと、
前記内腔に接近するための少なくとも1つの孔または侵入可能な領域と、
前記内腔内へ延びる腹腔鏡カメラと、
前記腹腔鏡カメラに接続され、前記腹腔鏡カメラによって捕えられた画像を使用者に表示するように構成されたビデオ表示器と、を含み、
前記ベース、取付けポスト、および少なくとも1つの模擬組織部分は、腹腔鏡処置を練習するために、使用者が直接観察することができない実質的に隠された訓練器内腔内に配置される、ことを特徴とする請求項12に記載の外科訓練装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの模擬組織部分は、該少なくとも1つの模擬組織部分の上面上にしるし付けされた所定の経路を含む、ことを特徴とする請求項23に記載の外科訓練装置。
【請求項25】
すべての取付けポストに、少なくとも1つの切欠きが同じ高さで形成されている、ことを特徴とする請求項14に記載の外科訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスレファレンス
本願は、出典を明示することにより全体が本願の開示の一部とされる2012年9月27日に出願された「腹腔鏡処置のための外科訓練モデル」と題する米国仮特許出願第61/706591号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に、外科訓練ツールに関し、特に、腹腔鏡的、内視鏡的、および最小侵襲性手術に関連するが、これに限定されない種々の外科技術および処置を教え、練習するための模擬組織構造およびモデルに関する。
【背景技術】
【0003】
新しい外科技術を習得する医学生および経験を積んだ医師は、人間の患者で手術を行う資格を得る前に広範な訓練を受けなければならない。訓練は、種々の組織を切断し、穿刺し、クランプし、掴み、ステープリングし、焼灼し、縫合するための種々の医療装置を使用した正しい技術を教えなければならない。被訓練者の遭遇する可能性の範囲は大きい。例えば、異なる組織、並びに患者の解剖学的構造および病気が提示される。種々の組織の層の厚さおよび硬度(consistency)もまた、身体の部分毎に、また患者毎に異なる。異なる処置は、異なる技能を要求する。さらに、被訓練者は、患者の大きさおよび状態、隣接した解剖学的景観、並びに目標組織のタイプおよびそれらが容易に接近できるか、あるいは比較的接近困難か等の要因によって影響を受ける種々の解剖学的周囲状況において技術を練習しなければならない。
【0004】
多くの教具、訓練器、シミュレータ、およびモデル器官が、外科訓練の1つまたはそれ以上の観点に対して利用可能である。しかしながら、遭遇される可能性がある、並びに腹腔鏡的、内視鏡的、および最小侵襲性手術を練習するに際して使用することができるモデル器官または模擬組織要素に対する必要性が存在する。腹腔鏡的、または最小侵襲性手術では、5−10mm程度の小さい切開部が形成され、この切開部を通して、体腔に接近し、腹腔鏡のようなカメラを挿入するための通路を作るためのトロカールまたはカニューレが挿入される。カメラは、生のビデオフィード捕獲画像を提供し、次いで、この生のビデオフィード捕獲画像は、1つまたはそれ以上のモニタ上で外科医に対して表示される。少なくとも1つの追加の小さい切開部が形成され、この少なくとも1つの追加の小さい切開部を通して、経路を作るためのもう1つのトロカール/カニューレが挿入され、かかる経路を通して、モニタ上で観察される処置を行うための外科器具が通過される。腹部のような目標組織位置は、代表的には、二酸化炭素ガスを送出することによって体腔にガスを注入することによって拡大され、外科医が使用するスコープおよび器具を安全に収容するのに十分大きい作業空間を作り出す。体腔内のガス注入圧力は、特殊なトロカールを使用することによって維持される。腹腔鏡手術は、開放手術と比べたとき、多くの利点を提供する。これらの利点には、より小さい切開部による低減された痛み、減少された出血、およびより短い回復時間が含まれる。
【0005】
腹腔鏡的または内視鏡的最小侵襲性手術は、目標組織が臨床家によって直接観察されないために、開放手術と比べてより高度な技能レベルを必要とする。目標組織は、小さい開口を通して接近される手術部位の一部を表示するモニタ上で観察される。したがって、臨床家は、2次元の観察スクリーン上で、組織平面、3次元深さ知覚を視覚的に決定すること、器具の手から手への移転、縫合、精密切断、並びに、組織および器具の操作を練習する必要がある。代表的には、特定の解剖学的構造および処置を模したモデルが、練習者がこの解剖学的モデルを直接観察できないようにされた模擬骨盤訓練器内に配置される。模擬骨盤訓練器は、外科医および研修医に対し、掴み、操縦、切断、結び目作り、縫合、ステープリング、焼灼等の腹腔鏡手術で使用される基本的な技能および代表的な技術、並びに、これらの基本的技能を利用した特定の外科処置の仕方を訓練する機能的で安価な練習手段を提供する。模擬骨盤訓練器は、これらの腹腔鏡処置を行うのに必要な外科装置を実地説明(demonstrating)するための効果的な売り込みツールでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腹腔鏡的または最小侵襲性手術で練習を必要とする上記の技術の1つは、切断および縫合である。したがって、切断および縫合を練習するためのモデルを提供することが望ましい。特定の解剖学的構造を模するだけでなく、処置の特定の段階で解剖学的構造を提供し、または、模擬腹腔鏡環境内で練習する被訓練者のために処置の特定の段階を隔絶するモデルを有することもまた望ましい。次いで、モデルは、少なくとも部分的に直接観察できないようにされる腹腔鏡訓練器のような模擬腹腔鏡環境内に配置される。カメラおよびモニタが、実際の手術におけるように、練習者に視覚化を提供する。1つの技術が練習された後、かかるモデルは、容易さ、速さ、および費用節約を伴って繰り返しの練習を許容することがさらに望ましい。以上に鑑み、本発明の目的は、解剖学的構造を模し、かかる解剖学的構造を隔絶し、繰り返しの練習をも可能にする処置の特定の段階でかかる解剖学的構造を提供することである。模擬訓練器の使用が新しい腹腔鏡施術者の技能レベルを大きく高め、非外科設定環境で、将来の外科医を訓練するための優れたツールであることが証明されている。かかる改良された本物のような効果的な外科訓練モデルに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、外科訓練装置が提供される。この外科訓練装置は、頂部カバーであって、該頂部カバーは、該頂部カバーとベースとの間に内腔を構成するようにベースに連結されかつベースから間隔を隔てて配置された頂部カバーを含む。前記内腔に接近するための少なくとも1つの孔または侵入可能な領域が設けられている。腹腔鏡カメラが、前記内腔内へ延びており、ビデオ表示器が、前記腹腔鏡カメラに接続され、前記腹腔鏡カメラによって捕えられた画像を使用者に表示するように構成されている。取り外し可能なモデルが、前記内腔内に配置されている。前記モデルは、ベースに間隔を隔てた仕方で連結された複数の取付けポストに連結された少なくとも1つの模擬組織部分を備える。前記各取付けポストは、外面に長手方向軸線に沿って形成された少なくとも1つの切欠きを含み、前記少なくとも1つの切欠きは、前記模擬組織部分が前記ベースから所定距離で宙吊りにされるように、該少なくとも1つの切欠きの位置に前記模擬組織部分を保持するように構成されている。
【0008】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練装置が提供される。この外科訓練装置は、上面を有するベースと、前記ベースに連結されており、前記ベースの上面から上方に延びた複数の取付けポストと、を含む。前記各取付けポストは、前記ベースに連結された近位端と、テーパした遠位端とを有する。上面および下面を有する少なくとも1つの実質的に平らな模擬組織部分が提供される。前記模擬組織部分に形成された孔が、前記模擬組織部分が、該孔を通る前記取付けポストによって宙吊りにされるように、前記取付けポストに連結されている。前記模擬組織部分は、前記複数の取付けポストの間で張力をかけて取り付けられるように可撓性の引き伸ばし可能な材料でできている。前記模擬組織部分は、縫合糸針およびスカルぺルを含む外科器具で侵入可能である。前記材料はまた、模擬組織部分を取付けポスト上で引張状態に保持しながら、侵入箇所を広げることなく縫合糸を保持するように構成されている。各取付けポストは、すべての取付けポストが同じ高さに切欠きを有するように取付けポストの一端から間隔を隔てて配置された少なくとも1つの切欠きを含む。
【0009】
本発明のもう1つの観点によれば、外科訓練方法が提供される。この外科訓練方法は、上面を有するベースを含む外科訓練モデルを準備する段階を含む。このモデルは、前記ベースに連結され、前記ベースの上面から上方に延びる複数の取付けポストを含む。各取付けポストは、ペースに連結された近位端と、前記近位端がペースに連結された状態でテーパした遠位端とを有する。この外科訓練方法はさらに、上面および下面を有する少なくとも1つの実質的に平らな模擬組織構造を準備する段階を含む。この模擬組織構造は、可撓性でかつ引き伸ばし可能である。この外科訓練方法は、模擬組織部分が、孔を通る取付けポストによって宙吊りにされるように選択可能な張力で模擬組織構造を取付けポストに連結するために、取付けポストのテーパした遠位端で模擬組織構造を穿刺する段階を含む。この外科訓練方法は、取付けポストの間で模擬組織を引き伸ばすことを含む。この外科訓練方法は、模擬組織部分を取付けポストに取り付ける前に、模擬組織構造に孔を設ける段階を含む。この外科訓練方法は、模擬組織構造に沿った選択された位置で取付けポストで模擬組織構造を穿刺することによって模擬組織構造に孔を形成する段階を含む。この外科訓練方法は、取付けポストに複数の切欠きを設け、模擬組織構造が切欠き内に保持されるように模擬組織を配置することを含む。この外科訓練方法はさらに、第2の平らな模擬組織構造を準備する段階を含む。この外科訓練方法はさらに、第2の模擬組織構造を取付けポスト上に取り付ける段階を含む。少なくとも1つの模擬組織構造を取り付ける段階は、取付けポストの遠位端で少なくとも1つの模擬組織構造を穿刺する段階を含む。第2の模擬組織構造および少なくとも1つの他の模擬組織構造を取り付ける段階は、取付けポストの遠位端で少なくとも1つの模擬組織構造を選択的に穿刺する段階をさらに含む。この外科訓練方法は、第1の模擬組織構造の上方に第2の模擬組織構造を取り付ける段階を含む。この外科訓練方法はさらに、腹腔鏡訓練器を準備する段階をさらに含む。腹腔鏡訓練器は、訓練器ベースと、訓練器頂部カバーであって、該訓練器頂部カバーは、該訓練器頂部カバーと前記訓練器ベースとの間に訓練器内腔を構成するように前記訓練器ベースに連結されかつ前記訓練器ベースから間隔を隔てて配置された訓練器頂部カバーと、を含む。この腹腔鏡は、訓練器内腔に接近するための少なくとも1つの孔または侵入可能な領域と、訓練器内腔内へ延び、訓練器内腔を見るための腹腔鏡カメラとを含む。腹腔鏡カメラに接続され、腹腔鏡カメラによって捕えられた画像を使用者に表示するように構成されたビデオ表示器をさらに準備する。この外科訓練方法はさらに、使用者の視覚から実質的に見えないように腹腔鏡訓練器の内腔内に外科訓練モデルを配置することを含む。この外科訓練方法はさらに、少なくとも1つの模擬組織構造の上面に所定の経路を設け、この所定の経路に沿って模擬組織構造を切断することを含む。この外科訓練方法は、少なくとも1つの模擬組織構造を腹腔鏡器具で切断し、開口部を形成することを含む。この外科訓練方法は、第2の模擬組織構造と少なくとも1つの他の模擬組織構造との間に配置された模擬腫瘍を設ける段階を含む。この外科訓練方法は、腫瘍に接近するために第2の模擬組織構造を穿刺する段階を含む。この外科訓練方法は、腹腔鏡で外科訓練モデルおよび処置を観察する段階を含む。この外科訓練方法は、外科訓練モデルから腫瘍を腹腔鏡的に切除することを含む。この外科訓練方法は、少なくとも1つの模擬組織構造および第2の模擬組織構造を縫合する段階を含む。この外科訓練方法は、少なくとも1つの模擬組織構造を引き伸ばす段階を含む。ぐらつき、角度が付き、または、多軸的に回転する取付けポストを準備する。この外科訓練方法は、外科器具で少なくとも1つの模擬組織構造と接触されるときに取付けポストの少なくとも1つを角度付けさせることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による外科訓練装置の平面斜視図である。
【
図2】本発明による外科訓練モデルの部分的に透明な平面斜視図である。
【
図3】本発明による模擬組織部分なしのモデルの平面斜視図である。
【
図4】本発明による2つ模擬組織部分を備えたモデルの部分的に透明な平面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、腹領域のような患者の胴体をまねるように構成された外科訓練装置10が、示されている。外科訓練装置10は、使用者から実質的に見えないようにされ、本発明に記載された模擬若しくは生組織またはモデル器官または訓練用モデル等を受け入れるように構成された体腔12を提供する。体腔12は、体腔12内に配置された組織または器官モデル上で外科技術を練習する装置を使用する使用者によって侵入される組織模擬領域14を通して接近される。体腔12は、組織模擬領域を通して接近されるように示されているけれども、代替的には、手補助接近装置または単一部位ポート装置を使用して体腔に接近することもできる。例示的な外科訓練装置が、出典を明示することにより全体が本願の開示の一部とされる2011年9月29日に出願された「持ち運び可能な腹腔鏡訓練器」と題する米国特許出願第13/248449号に記載されている。外科訓練装置10は、腹腔鏡的またはその他の最小侵襲性外科処置に特によく適している。
【0012】
さらに
図1を参照すると、外科訓練装置10は、少なくとも1つの脚20によってベース18に連結され、かつベース18から間隔をへだてて配置された頂部カバー16を含む。外科訓練装置10は、腹領域のような患者の胴体をまねるように構成されている。頂部カバー16は、患者の前面を代表しており、頂部カバー16とベース18の間の空間は、患者の内部すなわち器官がある体腔を代表している。外科訓練器10は、外科手術を受ける患者を模するに際して種々の外科処置およびそれらに関連した器具を教え、練習し、実地説明する(demonstarating)ための有用なツールである。外科器具は、組織模擬領域14および頂部カバー16に設けられた予め形成された孔22を通して、腔12内に挿入される。頂部カバー16とベース18の間に配置されたモデル器官上で模擬処置を行うために、種々のツールまたは技術を使用して頂部カバー16を貫通することができる。ベース18は、モデル受け入れ領域24、または、模擬組織モデルまたは生組織を載せ、または保持するためのトレーを含む。ベース18のモデル受け入れ領域24は、モデル(図示せず)を所定位置に保持するためのフレーム状要素を含む。ベース18上に模擬組織モデルまたは生組織を保持するのを助けるために、位置26に、引っ込め可能なワイヤに取り付けられたクリップが設けられる。ワイヤが延ばされ、次いでクリップ留めされて組織模擬領域14の実質的に下で組織モデルを所定位置に保持する。組織モデルを保持する他の手段には、モデルに取り付けられたフックアンドループ型ファスナ材料(VELCRO(登録商標))の相補的ピースに取り外し可能であるようにモデル受け入れ領域24でベース18に取り付けられたフックアンドループ型ファスナ材料(VELCRO(登録商標))のパッチが含まれる。
【0013】
図1には、カバー16にヒンジ連結されたビデオ表示モニタ28が閉鎖配向で示されている。ビデオモニタ28は、モニタに画像を送出するための種々の視覚的システムに接続可能である。例えば、予め形成された孔22の1つを通して挿入された腹腔鏡、または腔内に配置され、模擬処置を観察するのに使用されるウエッブカムを、ビデオモニタおよび/または画像を使用者に提供するモバイルコンピューティングデバイスに接続することができる。訓練処置を記録し、および/または、実地説明目的のためにモニタ上で予め記録されたビデオを再生するために、フラッシュドライブのような持ち運び可能なメモリ記憶デバイス、スマートフォン、デジタルオーディオ、またはビデオプレーヤー、あるいはその他のデジタルモバイルデバイスを接続する手段も提供される。もちろん、モニタ以外のより大きなスクリーンに視聴出力を提供する接続手段が提供される。もう1つの変形例では、頂部カバー10は、ビデオ表示器を含まないが、ラップトップコンピュータ、モバイルデジタルデバイス、あるいは、IPAD(登録商標)のようなタブレットを支持し、これをワイヤまたはワイヤレスで訓練器に接続する手段を含む。
【0014】
組み立てられるとき、頂部カバー16は、ベース18の上方に直接位置決めされ、脚20は、実質的に周囲のまわりに配置され、かつ、頂部カバー16とベース18と間でこれらに相互連結される。頂部カバー16およびベース18は、実質的に同じ形状および寸法であり、実質的に同じ周囲輪郭を有する。
図1に示された変形例では、脚は、周囲光が内腔をなるべく多く照明し、便利な可搬性のためになるべく重量を減らすことを可能にする開口部を含む。頂部カバー16は、脚20から取り外し可能であり、脚20は、ベース18に対して取り外し可能であるか、あるいは、ヒンジ等により折り畳み可能である。したがって、組み立てられない訓練器10は、より容易な可搬性に役立つ低減された高さを有する。本質的に、外科訓練器10は、使用者から見えないようにされた模擬体腔12を提供する。体腔12は、頂部カバー16に設けられた少なくとも1つの組織模擬領域14および/または孔22を通して、あるいは、使用者が、腹腔鏡的または内視鏡的最小侵襲性外科技術を練習するためにモデルに接近するための側部を通して接近可能な少なくとも1つの外科モデルを受け入れるように構成されている。
【0015】
本発明による外科訓練モデル30が、
図2に示されている。モデル30は、上述した外科訓練装置10、または上記した外科訓練装置と同様な他の外科訓練器内に配置されるように構成されている。モデル30は、いくつかの処置および外科技術を訓練または練習するために、腹腔鏡訓練器なしで単独で使用することもできる。モデル30は、ベース32と、複数のポスト34と、少なくとも1つの模擬組織部分36と、を含む。
【0016】
モデル30のベース32は、モデル30のその他の部分のための底部支持体として役立つプラットホームである。このプラットホームは、金属またはプラスチックのような任意の材料でできている。ベース32は、使用者によって操作される間、直立位置でモデルの安定性を維持するための十分な重量を有する。ベース32は、ポスト34を受け入れるための穴を有する。別の例では、ポスト34は、一体ボディとしてベース32と一体的に形成されてもよい。モデル30は、モデル受け入れ領域24の位置で外科訓練器10の体腔12内に配置されるように寸法決めされ、構成されている。ベース32の下面は、モデル30を外科訓練器10に取り付けるための手段を備える。訓練器10内にモデルを取り付けるためのかかる手段は、ベース32の底面に取り付けられ、外科訓練器30のベース18に取り付けられた相補的なフックアンドループ型ファスナ材料または接着材に取り付けられる接着材、吸引カップ、スナップ嵌め、磁石、および、フックアンドループ型ファスナ材料を含むが、これらに限定されない。
【0017】
さらに続けて
図2を参照すると、4つのポスト34が、モデル30のベース32に連結されており、別の例では、ポスト34は、ベース32と一体的に形成される。各ポスト34は細長く、形状が円筒形であり、ベース32に連結された近位端、およびベース32から上方に延びる遠位端を有する。1つの変形例では、遠位端は、テーパした部分38を含み、テーパした部分38は、使用者に怪我をさせないが、模擬組織を穿孔するのに十分に鋭利な鈍い先端表面40に終端する。1つの変形例では、
図2に示されているように、遠位端は、円錐形であり、または、テーパしており、滑らかに湾曲した、丸いまたは平らな先端を有する。各ポスト34は、外面からポスト34内に半径方向内方に延びる少なくとも1つの円周方向切欠き32またはカットを含む。
図2に示された変形例では、各ポスト34は、ポスト34の長さに沿って間隔を隔てて配置された3つの切欠き42a、42b、42cを含むが、任意の数の切欠きをポスト34に含んでもよい。切欠き42は、各ポスト34の長手方向軸線と垂直である。1つの変形例では、すべてのポスト34は、長手方向軸線に沿って同じ位置又は距離に同じ数の切欠き42を有する。ポスト34は、間隔を隔てて配置され、実質的にベース32の4つの隅部に配置されている。ポスト34は、張力がかけられた模擬組織部分36を保持し、または、模擬組織部分36の変化された張力を可能にするのを助けるためにベース32と垂直であるか、あるいは、
図2に示されているように外方に角度付けされてもよい。1つの変形例では、ポストは、模擬組織部分36上の張力を変化させるために、使用者がベース32に対するポストの角度を選択できるようにベース32に対して移動可能である。もう1つの変形例では、ポスト34の角度は、固定されず、連結された模擬組織部分36の操作時に束縛されたパラメータ内で変化し、それによって、臨床家が外科処置を行うに際しての困難を増大させる。ポスト34の少なくとも1つは、練習者によって模擬組織部分36に加えられる力に応答してベース32に対して角度付き、シフトし、傾き、ぐらつき、あるいは、移動可能である。少なくとも1つのポスト34の近位端は、ベース32に連結され、ポストが、ベースに対して多軸的に角度付けし、または、多軸的に回転する。もう1つの変形例では、ポスト34の少なくとも1つは、可撓性のグースネック(gooseneck)であり、可撓性のグースネックは、調節後グースネックポスト34によって維持される位置について調節可能である。グースネックポスト34は、模擬組織部分36において張力を調節するのに有利である。ポスト34は、模擬組織部分36を支持し、切欠き42に模擬組織部分36を選択的に配置し、位置決めするように構成されている。模擬組織構造36が、
図2に示されているようにシートの形態である場合には、切欠き42の厚さは、模擬組織構造36が、切欠き42内に切欠き42によって支持され、ポスト34に沿って切欠き42によって保持され、それによって、臨床家が模擬組織部分36を操作するときに、ポストの長さに沿って滑るないしは移動するのを防止するように、模擬組織部分36を形成するシートの厚さと少なくとも同じ厚さである。1つの変形例では、模擬組織部分36は、厚さが約0.05インチ(1.27mm)であり、切欠きは、厚さが約0.1インチ(2.54mm)であり、切欠き42は、約0.25インチ(6.35mm)互いに間隔を隔てて配置されている。もう1つの変形例では、切欠き42は、シートを切欠き42内の所定位置でわずかに圧縮するようにシート36よりも薄い。例えば、切欠き42は、約0.08インチ(2.03mm)であり、シートは、約0.1インチ(2.54mm)である。1つの変形例は、同じ高さに形成された切欠きを有する取付けポストを含む。例えば、ポスト34は、長さが約4.0インチ(10.7cm)であり、それぞれ、約1.0インチ(2.54cm)、1.8インチ(4.57cm)、2.7インチ(6.84cm)、および、3.7インチ(9.38cm)の位置に第1の切欠き、第2の切欠き、第3の切欠き、および、第4の切欠きを含む。ポスト34の外径は、約0.3インチ(7.62mm)であり、内径は、約0.23インチ(5.93mm)である。
【0018】
1つの変形例では、ポスト34は、ベース32から取り外し可能である。ベース32は、4つの孔を含み、ポスト34は、ベース32の下側からこれらの孔内に通される。各ポスト34は、フランジを備え、各孔は、フランジ付きポスト34が孔内に通ることが可能であるようにキー付けされる。一旦ベース32の孔内に挿入されると、ポスト34は、ポスト34をベース32に対して所定位置に係止するようにベース32に対して捩られる。ポスト34を取り外すためには、ポスト34を反対方向に捩り、孔を通して下に押す。ベース32の下面は、戻り止めを備えたアルコーヴ(alcove)を含み、ポスト34は、モデルを平らに収容するために、戻り止めを備えたアルコーヴ内にスナップインすることができる。もちろん、剛性のポスト34は、可撓性の/移動可能なポストと互換可能である。
【0019】
さらに続けて
図2を参照すると、模擬組織部分36は、模擬組織材料のシートを含む。もう1つの変形例では、模擬組織部分36は、特定の器官の形態および形状を取ってもよい。模擬組織部分36は、ポスト34に連結され、模擬組織部分が取り付けられる切欠き42の距離によって規定される距離だけベースの上面から本質的に宙吊りにされる。模擬組織部分36は、ポスト34の支持箇所以外ではすべての側部上で自由である。模擬組織部分36は、ポスト34の間でわずかに引き伸ばされて張力をかけて取り付けられ、ポスト34に連結される。シートの張力は、ポスト34を角度付けることによって、または、模擬組織部分に沿って互いに近づけられた位置で模擬組織部分を引き伸ばし、穿刺することによって、調節することができる。1つの変形例では、模擬組織部分36は、シリコーン製シートである。もう1つの変形例では、模擬組織部分は、少なくとも1つの側がシリコーンでコーティングされたファブリックまたはメッシュのシートである。ファブリックまたはメッシュは、ストレッチナイロン(stretch nylon)、または、スパンデックス(spandex)、または、ストレッチナイロン/スパンデックスブレンドメッシュまたはファブリックのような2方向または4方向引き伸ばし材料である。このファブリックまたはメッシュ材料は、引き伸ばし可能であり、多孔性であり、重量が約79グラム/平方ヤード(65.8グラム/m
2)である。シートの材料は、可撓性である任意の材料であってよく、メッシュ、あるいはその他の補強材料または繊維を含んでもよい。メッシュ上のシリコーンコーティングは、本物のような組織の触り心地を提供し、使用者に触覚的フィードバックを与え、使用者がグラスパで表面を掴むことを可能にする模様付き表面(textured surface)を含んでもよい。メッシュ、ファブリック、繊維、あるいはその他の充填材は、シートが、裂けなしに縫合糸を保持し、あるいは、操作され、または、ポスト34に連結されるときに裂けなしに引き伸ばされることができるようにシリコーンに補強を与える。模擬組織部分36は、クラトン(KRATON)(登録商標)、あるいはその他の熱可塑性エラストマーでできていてもよい。
【0020】
1つの変形例では、模擬組織部分36は、使用者に切るべき経路を示すため、少なくとも1つの模擬組織部分36の上面にインクで描かれたしるし、または所定の経路を含む。使用者が切除するのを練習することができる形状を描いてもよい。予めしるし付けされた模擬組織部分36が、使用者に始点を提供する。また、空白の模擬組織部分36が、使用者に、腹腔鏡ハサミおよび切開器を用いて精密切断を練習し、次いで、縫合により切断部または開口部を閉じる練習をするために、使用者が切断することができる自身の線、経路、または、形状を模擬組織部分36上に描くことを可能にする。さらに、1つの変形例では、模擬組織部分36は、
図2に示されているように4つの隅部で周囲に沿って配置された予め形成された孔44を含む。これらの孔は、径が0.125インチ(3.18mm)であり、約0,413インチ(10.9mm)だけ縁部から後方に設置されている。これらの孔44は、シート36の4つの隅部に配置され、図示されているように4つの隅部上に模擬組織部分36を取り付けるために使用される。シートの形態の模擬組織部分36は、厚さが、例えば、1−10mmである。もう1つの変形例では、シートに形成された模擬組織部分36は、模様付き上面と、滑らかな下面とを含む。模様は、突出部、あるいはその他の本物のような器官細部であってよい。所望ならば、使用者は、ポスト上で滑らかな面が上方に向くようにシートをひっくり返すこともできる。滑らかな面は、器具で模擬組織部分を掴み、操作する際の困難を増大させることができる。もう1つの変形例では、模擬組織のシート36は、いくつかの予め切断された経路および/または穴を含み、これらの予め切断された経路および/または穴は、縫合のために穴または予め切断された経路の両側を互いに引き寄せるときに、使用者に強制的に、模擬組織部分上で張力を維持させる。
【0021】
使用に際し、使用者は、ポスト34上に少なくとも1つの模擬組織部分36を取り付ける。模擬組織部分が予め形成された孔44を含む場合には、模擬組織部分36を取り付けることは、各ポスト34上に孔44を配置し、模擬組織部分36をスライドさせて、ポスト34に形成された少なくとも1つの切欠き42内に1つずつ載置させることを含む。模擬組織部分36は、4つのすべてのポスト上に取り付けられる。より少ないポストを使用して、模擬組織部分36を宙吊りにしてもよい。切欠き42は有利に、模擬組織部分36の1つの側部または少なくとも1つの隅部が、その他の隅部およびポストに対してより高いまたは低い切欠き上に取り付けられるように角度をなして取り付けられることを可能にする。例えば、模擬組織部分36の一方の側部が、その第1の側部に沿った模擬組織部分36を、切欠き42aに載置されるように位置決めすることによって、2つのポストに34に連結され、模擬組織部分36の他方の側部が、その第2の側部に沿った模擬組織部分36を、切欠き42aよりも低い切欠き42c内に載置されるように位置決めすることによって、2つのポストに34に連結され、それによって、模擬組織部分36を角度付けする。模擬組織部分36が予め形成された孔44を備えない場合には、ポスト34のテーパした遠位端38を使用して、シートのどこにでも孔44を穿刺することができる。それ故、模擬組織部分36の張力は、使用者が模擬組織部分36をポスト34上に取り付けるときに、使用者によって選択されることができる。例えば、模擬組織部分36が、模擬組織部分36に孔44を穿刺することによって取り付けられるときには、模擬組織部分36をもう1つのポスト34等上に取り付けるために第2の孔44を穿刺する前に、模擬組織構造36は選択的に引き伸ばされ、模擬組織部分36を、使用者が望むように緊張させ、または緩めることができる。ファブリックで補強されたシリコーン材料は、孔44が広がるのを防止する。特定の組の予め形成された孔44を使用してシートを取り付けるときに異なる程度の張力を付与するために、シートに多数の予め形成された孔44を含めることができる。シートの形態の模擬組織構造36がポスト上で引き伸ばされるときに、シートの形態の模擬組織構造36は、切欠き42の1つ内の所定位置にスナップ嵌めする。ポスト34は、切欠き42と共に、または、切欠き42なしに、模擬組織部分36を所定位置に保持するのを助けるために、外面から外方に延びるとげ(barbs)、ショルダ、あるいは、フランジ(図示せず)を含んでもよい。ポスト34は、体内の異なる構造または位置を代表するために、異なる困難レベルおよび異なる角度を可能にするように、使用者が、シートを異なる張力に設定することを可能にする。
【0022】
図3は、5以上のポスト34を含むモデル30の変形例を示している。特に、第1のすなわち外側の組のポスト34、および第2のすなわち内側の組のポスト46がある。4つの外側ポスト34と4つの内側ポスト46、合計8つのポストがある。両組のポストは、概してベース32の4つの隅部に互いに隣接して位置決めされている。2組のポストを有することで、模擬組織部分36を取り付けるための張力または角度におけるより多くの変化または選択を可能にする。第1の組のポスト34と同様に、第2の組のポスト46は、模擬組織部分34を位置決めするための切欠き42を含む。ポスト34、46のすべてに1つの切欠き42が示されているけれども、本発明はそのように限定されず、ポスト34、46に、異なる高さで任意の数の切欠き42を形成することができる。
図3は、模擬組織部分36を示していない。
【0023】
次に、
図4を参照すると、ポスト34に取り付けられた2つの模擬組織部分36a、36bを有する本発明によるモデル30が示されている。図示されているように、模擬組織部分36a、36bは、シートとして形成されているが、そのように限定されず、器官、およびその他の組織構造を模した形状を含んでもよい。第1の模擬組織部分36aが、ポスト34上に取り付けられ、切欠き42c内に配置され、第2の模擬組織部分36bが、ポスト34上に取り付けられ、切欠き42a内に配置されるように示されている。もちろん、第2のシート36bは、第1のシート36aと同じ切欠き内に配置されてもよく、または、第1のシート36aに対して任意の仕方で角度付けてよく、第1のシート36aもまた、角度付けされ、または、異なる切欠き内に配置されてもよい。シート36a、36bを同じ切欠きに配置することで、腹部領域で見られるような筋肉組織をまねるように使用できる層をなした組織が創出される。模擬組織のシート36は、任意の色でよく、本物の組織をまねるために模擬組織構造36上に描かれたしるしおよび血管構造を含んでもよい。多数のシートは、すべて互いに連結され、シートの間の選択された領域に選択的に付けられた接着材で保持されてもよい。2つのシート36a、36bが示されているけれども、本発明は、示されたポスト34上に取り付けることができる数のシートに限定されない。したがって、ポスト34は、より長く作られてもよく、より多くのシートおよび角度付けのより広範な選択に順応するようにより多くの切欠き42を含んでもよい。
図4は、2つのシート36a、36bの間に配置された模擬腫瘍48を示している。腫瘍48は、層36a、36bの一方または両方に取り付けられてよく、あるいは、取り付けられなくてもよい。臨床家は、腫瘍48を露出させるために第2の層36bに切開部を形成する練習をすることができ、次いで、腫瘍48を切除する練習をすることができ、次いで、腫瘍48が第1の層36aに取り付けられていた場合には第1の層36aに残された欠損を縫合する練習をすることができ、次いで、第2の層36bを縫合して閉じる練習をすることもできる。
【0024】
モデル30は、鈍い切開モデルとしての使用にも適している。鈍い切開のための模擬組織部分36は、切開器またはトロカールが材料を穿刺し、分離することを可能にするファブリック補強物を備えないシリコーンでできている。多数の組織の切開および組織平面の分離を可能にするために、多数のシートを、互いに層化させ、シリコーン接着材またはより薄いシリコーン層によって取り付けてもよい。
【0025】
モデル30は、腹腔鏡環境における訓練のために、模擬組織構造を提供するための本物のようなプラットホームを提供する。臨床家は、切断および縫合のようないくつかの技術を練習するときに、グラスパ、カッター、縫合糸針、縫合糸、腹腔鏡、内視鏡、トロカール等のいくつかの器具を使用する。本発明のモデルにおいてポスト上で支持された模擬組織構造が器具によって接触されるときに、力の下で、模擬組織構造は降伏して曲がり、模擬組織構造が取り付けられている張力に応じてある程度撓む。この模擬組織構造のダイナミズムは有利に、本物の生命において操作するときに降伏し、動き、曲がる本物の生の組織をまねる。同様に、切断および縫合は、宙吊りにされ、張力がかけられ、ある量の撓みを可能にする模擬組織構造上で行われるときに、異なって感じられる。これらの模擬利点は、本発明によって提供され、模擬腹腔鏡環境において縫合し、切断し、穿刺する間に、使用者が、深さ感覚および組織操作技能を微調整することを可能にする腹腔鏡外科処置を練習するときに特に有用である。
【0026】
いくつかの実施形態を特に示し、例示的な実施形態を参照して説明してきたけれども、当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変形を行うことができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0027】
10 外科訓練装置
30 外科訓練モデル
32 モデルのベース
36 模擬組織部分
34、46 ポスト
42 切欠き
48 模擬腫瘍
【国際調査報告】