特表2015-532453(P2015-532453A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-532453経管的腹腔鏡下手技のための外科用訓練モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532453(P2015-532453A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】経管的腹腔鏡下手技のための外科用訓練モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   G09B23/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-534753(P2015-534753)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】US2013062269
(87)【国際公開番号】WO2014052808
(87)【国際公開日】20140403
(31)【優先権主張番号】61/707,581
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ブレスリン トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】デマルキ ジャクリーン
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
腹腔鏡下手術のための技能を練習するモデルが提供される。このモデルは、細長いルーメン及びこのルーメンの内面に連結されている複数個のアイレットを備えた本体を有する。複数個のアイレットは、アイレット中への少なくとも1本の針及び縫合糸の挿通を訓練する少なくとも1つの経路を備える。このモデルは、フック状アイレット上に配置されるよう構成されている孔を有する取り外し可能な物体を備えたステージング領域を有する。このモデルは、狭い管状スペース内での腹腔鏡下手技に必要な技能のうちで手渡し、奥行き覚を訓練するためのプラットホームとなる。このモデルは、訓練装置の内部に設置可能であり、この訓練装置内において、訓練が模擬腹腔鏡下環境内で実施されてビデオディスプレイ上で観察される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用訓練器具であって、
基部を有し、
前記基部に連結されると共に該基部から間隔を置いて設けられていて、前記基部との間に内部キャビティを構成するトップカバーを有し、
前記内部キャビティにアクセスするための少なくとも1つの孔、側部開口部又は穿通可能な組織模擬領域を有し、
前記キャビティの内部に設けられたカメラを有し、前記カメラは、前記カメラに連結されると共に前記キャビティの外部に配置されたビデオモニタ上にビデオ画像を表示するよう構成され、
前記キャビティの内部に取り外し可能に配置されたモデルを有し、前記モデルは、視界から実質的に隠されているが、前記カメラが前記モデルの画像を前記ビデオモニタ上に表示することにより観察可能であるようになっており、前記モデルは、
外面及び開口近位端を有する細長いルーメンを画定する内面を備えた本体と、
前記ルーメンの前記内面に連結されると共に長手方向軸線に沿って分布して設けられた複数個のアイレットとを有し、
前記複数個のアイレットは、少なくとも1つの経路を形成し、前記少なくとも1つの経路は、前記少なくとも1つの経路を形成する前記アイレット中への少なくとも1本の針及び縫合糸の挿通を訓練するための経路である、外科用訓練器具。
【請求項2】
前記アイレットは、前記内面から前記ルーメン中へ様々な距離にわたって延びている、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項3】
各アイレットは、孔平面を定める孔を含み、少なくとも1つの孔平面は、前記複数個のアイレットの別の孔平面に対して角度をなしている、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項4】
前記開口近位端は、括約筋を模倣するよう構成されたインサートを備えている、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項5】
前記開口近位端は、アクセス器具で閉鎖されている、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項6】
前記本体は、光が前記本体を通過して前記ルーメンを照明することができるよう半透明である、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項7】
前記ルーメンの内部に同軸状に設けられると共に前記モデルの長手方向軸線に沿って長手方向に延びる細長いコアを更に有する、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項8】
前記経路は、実際の手術で見受けられる縫合糸経路形状を定めるようあらかじめ決定されている、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項9】
前記経路は、あらかじめ定められると共に人体器官に対する外科的処置と関連した縫合糸経路形状を定めている、請求項1記載の外科用訓練器具。
【請求項10】
外科用訓練器具であって、
内面及び外面を備えた細長い本体を有し、前記内面は、近位開口部及び長手方向軸線を備えたルーメンを画定し、
前記ルーメンの前記内面に連結されると共に前記内面から前記ルーメン中に内方に延びる複数個のアイレットを有し、前記アイレットは、前記ルーメンに沿って円周方向に且つ長手方向に間隔を置いて設けられ、各アイレットは、縫合針及び縫合糸を通すよう寸法決めされた孔を備えるヘッド部分を有し、各アイレットの前記孔は、孔平面を定めている、外科用訓練器具。
【請求項11】
各アイレットは、前記ヘッド部分に連結されたネック部分を有し、前記ネック部分は、前記ヘッド部分が前記内面上に延びるよう前記細長い本体の前記内面に連結されている、請求項10記載の外科用訓練器具。
【請求項12】
前記複数個のアイレットは、少なくとも1つの所定の経路を構成し、前記少なくとも1つの所定の経路は、前記少なくとも1つの所定の経路を形成する前記アイレット中への少なくとも1本の針及び縫合糸の挿通を訓練するための経路である、請求項10記載の外科用訓練器具。
【請求項13】
前記複数個のアイレットのうちの少なくとも1つは、フック状構造部を形成する開口した孔を含む、請求項10記載の外科用訓練器具。
【請求項14】
前記複数個のアイレットの少なくとも1つの孔は、外科用縫合針で穿通可能な物質で覆われている、請求項10記載の外科用訓練器具。
【請求項15】
腹腔鏡下縫合糸が包囲されたルーメンに沿って延びるようにする練習のための外科用訓練器具であって、
腹腔鏡訓練装置のキャビティの内部に配置可能な練習モデルを有し、前記モデルは、
内面を有すると共に開口近位端を備えた内部ルーメンを画定する細長い側壁を備えた本体と、
前記ルーメンの前記内面に連結されると共に前記内面から前記ルーメン中に延びる複数個のアイレットとを有し、各アイレットは、ネック部分に連結されたヘッド部分を有し、前記ネック部分は、前記内面に連結され、前記ヘッド部分は、孔平面を定める孔を有し、前記開口近位端は、縫合糸及び縫合針を前記ルーメン中に挿入すると共に該縫合糸及び縫合針を、前記ルーメンに沿って長手方向に且つ円周方向に間隔を置いて設けられた前記複数個のアイレットの1つ又は2つ以上の孔中に通すよう構成されている、外科用訓練器具。
【請求項16】
前記アイレットは、取り外し可能であると共に交換可能である、請求項15記載の外科用訓練器具。
【請求項17】
前記縫合糸及び縫合針は、前記腹腔鏡訓練装置の前記キャビティ中に通され、前記モデルの前記開口近位端中に通され、そして前記複数個のアイレットのうちの少なくとも1つの中に通される、請求項15記載の外科用訓練器具。
【請求項18】
外科用訓練器具であって、
外面と開口近位端を備えた細長いルーメンを画定する内面を備えた本体を有し、
前記ルーメンの前記内面に連結されると共に該内面に沿って長手方向に分布して設けられた複数個のアイレットを有し、前記アイレットのうちの少なくとも1つは、フック状特徴部を有し、
前記ルーメンの一端のところに設けられたステージング領域を有し、前記ルーメンの一端のところに設けられた前記ステージング領域は、前記ステージング領域内に取り外し可能に配置された少なくとも1つの物体を有し、前記少なくとも1つの物体は、前記アイレットのうちの少なくとも1つの前記フック状特徴部に嵌まるよう寸法決めされた孔を有し、前記少なくとも1つの物体は、前記ステージング領域から取り外し可能であると共に前記ルーメンの内部で且つ該ルーメンの長さに沿って動くことができ、そして前記フック状特徴部上に動くことができるよう構成されている、外科用訓練器具。
【請求項19】
前記ステージング領域は、面ファスナのストリップから成り、前記少なくとも1つの物体は、前記物体が前記ステージング領域に取り外し可能に取り付け可能であるように前記ストリップと補足し合う面ファスナを有する、請求項18記載の外科用訓練器具。
【請求項20】
外科用訓練モデルを更に有し、前記外科用訓練モデルは、
基部を有し、
前記基部に連結されると共に該基部から間隔を置いて設けられていて、前記基部との間に内部キャビティを構成するトップカバーを有し、
前記内部キャビティにアクセスするための少なくとも1つの孔、側部開口部又は穿通可能な組織模擬領域を有し、
前記キャビティの内部に設けられたカメラを有し、前記カメラは、前記カメラに連結されると共に前記キャビティの外部に配置されたビデオモニタ上にビデオ画像を表示するよう構成され、
前記本体は、前記モデルが視界から実質的に隠されているが、前記カメラが前記モデルの画像を前記ビデオモニタ上に表示することにより観察可能であるように前記外科用訓練モデルの前記内部キャビティの内部に取り外し可能に設けられ、前記モデルの前記ルーメンは、器械を前記少なくとも1つの孔、側部開口部又は穿通可能な組織模擬領域中に挿入し、そして前記モデルの前記近位開口中に挿入した状態でアクセス可能である、請求項18記載の外科用訓練器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、外科用訓練ツールに関し、特に、腹腔鏡下手術、内視鏡下手術及び低侵襲手術に関連した(しかしながら、これらには限定されない)種々の外科的技術及び手技を教示すると共に練習させる模擬(シュミレートした)組織構造体及びモデルに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2012年9月28日に出願された米国特許仮出願第61/707,581号(発明の名称:Surgical training model for transluminal laparoscopic procedures)の優先権及び権益を主張する出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
新たな外科的技術(術式)を学習する医学生並びに熟練医は、自分達が患者としての人間に対して手術を行う資格を得る前に大がかりな訓練を受けなければならない。この訓練は、種々の形式の組織を切断し、穿通し、クランプし、把持し、ステープル留めし、焼灼し、縫合するための種々の医療器具を用いる適正な技術を教示しなければならない。訓練を受ける人(訓練生)が遭遇する場合のある場面の範囲は、広い。例えば、種々の器官並びに患者の解剖学的構造及び疾患が提示される。種々の組織層の厚さ及びコンシステンシーも又、身体の一部分と隣りの部分とでは違いがあり、しかも患者ごとに様々な場合があろう。互いに異なる手技には互いに異なる技能が要求される。さらに、訓練生は、例えば患者の体格や病態、標的組織の隣接の解剖学的景観及び景観や標的組織が容易にアクセス可能であるか比較的アクセス不能であるかという要因によって影響を受ける種々の解剖学的環境中において技術を練習しなければならない。
【0004】
外科用訓練の1つ又は2つ以上の観点について多くの教示補助具、訓練器具、模擬訓練装置(シミュレータ)及びモデル器官が利用可能である。しかしながら、遭遇する可能性があり且つ内視鏡下の手技、腹腔鏡下の手技、低侵襲手術手技(外科的処置)を練習するために使用できるモデル器官又は模擬組織要素が要望されている。腹腔鏡下手術では、トロカール又はカニューレを挿入して体内腔にアクセスしたりカメラ、例えば腹腔鏡の挿入のためのチャネルを作ったりする。カメラは、ライブビデオフィードキャプチャリング画像を提供し、次にこれら画像を1つ又は2つ以上のモニタで外科医に表示する。別のトロカール/カニューレを挿入してモニタ上で観察される手技を実施するために外科用器具を挿通させる経路を作る。標的組織場所、例えば腹部は、典型的には、二酸化炭素ガスを送り出して体内腔に通気し又は注入して外科医により用いられるスコープ及び器具を受け入れるのに足るほど広い作業空間を作ることによって拡張される。組織腔内のガス注入圧力は、専用トロカールを用いることによって維持される。腹腔鏡下手術は、開放手技と比較した場合、多くの利点を提供する。これら利点としては、疼痛が軽いこと、出血が少ないこと、回復期間が短いことが挙げられる。
【0005】
腹腔鏡下又は内視鏡下低侵襲手術では、開放手術と比較して技能レベルの高いことが要求される。というのは、標的組織は、医師によって直接観察されることがないからである。標的組織は、小さな開口部を通ってアクセスされる手術部位の一部分を表示するモニタにより観察される。したがって、医師は、組織平面を視覚的に見定め、二次元観察スクリーン上における三次元奥行き覚、器具の手渡し、縫合、高精度切断並びに組織及び器具の操作を練習する必要がある。典型的には、特定の解剖学的構造又は手技を模倣するモデルが模擬骨盤又は腰部訓練器具内に配置され、この訓練器具では、解剖学的モデルは、医師による直接可視化(直視化)から隠されている。訓練器具に設けられたポートは、器具を通して直視化から隠された解剖学的モデルに対して行われる技術を練習するために用いられる。模擬骨盤訓練器具は、内視鏡及び腹腔鏡下低侵襲手術で用いられる基本的な技能及び典型的な技術、例えば把持、操作、切断、結び目を作ること、縫合、ステープル留め、焼灼並びにこれら基本的な技能を利用した特定の外科的処置をどのように実施するかについて外科医及び研修医を訓練する機能的且つ安価であり、しかも実用的な手段となる。模擬骨盤訓練器具は又、これら腹腔鏡下手技を実施するのに必要な医療器具を実演するための効果的な販売用ツールでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手技の中には、例えば経肛門的低侵襲手術(TAMIS)とも呼ばれている経肛門的内視鏡小手術(TEMS)又は一般に経肛門アクセスプラットホーム及び標準型腹腔鏡器械を用いて遠位‐近位直腸に存在する良性及び悪性病変部を切除するために実施される他の経管的手術の場合において狭い極限部、例えば直腸内でしかも軸線に実質的に沿って実施される必要のあるものがある。これら手技では、医師は、縫合、焼灼、ステープル留め、結び目を作ること、切断、把持、器械を操作すること及び組織を動かしているのを二次元ビデオモニタ上で観察しながら、これら手技(これらは全て、細長い管状領域の狭い極限部内で実施される)の実施形態に加えて、技能、例えば管腔に沿う三次元奥行き覚、組織平面の決定及び手渡しを習熟する必要がある。したがって、これら技能を練習するのに適していて、更に医師が模擬腹腔鏡下環境内で訓練するための訓練生向きの手技の特定のステップ、例えば、縫合糸の挿通だけを分離して行うモデルを提供することが望ましい。腹腔鏡訓練モデルは、模擬腹腔鏡下環境、例えば腹腔鏡訓練装置の内側に取り外し可能に配置され、この腹腔鏡訓練装置内では、腹腔鏡訓練モデルは、直視化から少なくとも部分的に隠される。カメラ及びモニタは、その医師に対して可視化を提供する。技術の練習後、かかるモデルは、容易に、スピーディーに且つコストを節約した状態で繰り返し可能な訓練を可能にすることが更に望ましい。上述のことを考慮して、本発明の目的は、解剖学的構造を現実的に模倣して繰り返し可能な訓練も又可能にする手技の特定のステージ又はステップだけを切り離して行う外科用訓練器具を提供することにある。模擬訓練装置の使用により、新米の腹腔鏡下術者の技能レベルが大幅に向上すると共にかかる模擬訓練装置が将来の外科医を非手術設定環境で訓練するための優れたツールであることが実証された。かかる改良されると共に真に迫った且つ効果的な外科用訓練モデルが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、外科用訓練器具が提供される。この器具は、基部に連結されると共にこれから間隔を置いて設けられていて、基部との間に内部キャビティを構成するトップカバーを有する。内部キャビティにアクセスするための少なくとも1つの孔、側部開口部又は穿通可能な組織模擬領域が提供される。カメラがキャビティの内部に設けられ、このカメラは、カメラに連結されたビデオモニタ上にビデオ画像を表示するよう構成されている。ビデオモニタは、キャビティの外部に配置される。モデルがキャビティの内部に取り外し可能に設けられ、このモデルは、視界から実質的に隠されているが、カメラがモデルの画像をビデオモニタ上に表示することにより観察可能であるようになっている。モデルは、外面及び内面を有する。内面は、開口近位端を有する細長いルーメンを画定する。複数個のアイレットがルーメンの内面に連結されると共に長手方向軸線に沿って分布して設けられている。複数個のアイレットは、少なくとも1つの経路を形成し、少なくとも1つの経路は、かかる少なくとも1つの経路を形成するアイレット中への少なくとも1本の針及び縫合糸の挿通を訓練するためのものである。
【0008】
本発明の別の観点によれば、外科用訓練器具が提供される。外科用訓練器具は、内面及び外面を備えた細長い本体を有する。内面は、近位開口部及び長手方向軸線を備えたルーメンを画定する。複数個のアイレットがルーメンの内面に連結されている。アイレットは、内面からルーメン中に内方に延びると共にルーメンに沿って円周方向に且つ長手方向に間隔を置いて設けられている。各アイレットは、縫合針及び縫合糸を通すよう寸法決めされた孔を備えるヘッド部分を有する。各アイレットの孔は、孔平面を定めている。
【0009】
本発明の別の観点によれば、腹腔鏡下縫合糸が包囲されたルーメンに沿って延びるようにする練習のための外科用訓練器具が提供される。練習モデルが腹腔鏡訓練装置のキャビティの内部に配置される。モデルは、開口近位端を備えた内部ルーメンを画定する内面を有する細長い側壁を備えた本体を有する。複数個のアイレットがルーメンの内面に連結されている。アイレットは、内面からルーメン中に延びている。各アイレットは、ネック部分に連結されたヘッド部分を有する。ネック部分は、内面に連結されている。ヘッド部分は、孔平面を定める孔を有する。開口近位端は、縫合糸及び縫合針をルーメン中に挿入すると共に縫合糸及び縫合針を、ルーメンに沿って長手方向に且つ円周方向に間隔を置いて設けられた複数個のアイレットの1つ又は2つ以上の孔中に通すよう構成されている。
【0010】
本発明の別の観点によれば、外科用訓練器具が提供される。この器具は、外面及び内面を備えた本体を有する。内面は、開口近位端を備えた細長いルーメンを画定している。複数個のアイレットがルーメンの内面に連結されると共に該内面に沿って長手方向に分布して設けられている。アイレットのうちの少なくとも1つは、フック状特徴部を有する。ルーメンの一端のところに設けられたステージング領域が提供される。ステージング領域は、ステージング領域内に取り外し可能に配置された少なくとも1つの物体を有する。少なくとも1つの物体は、アイレットのうちの少なくとも1つのフック状特徴部に嵌まるよう寸法決めされた孔を有する。少なくとも1つの物体は、ステージング領域から取り外し可能であると共にルーメンの内部で且つその長さに沿って動くことができ、そしてフック状特徴部上に動くことができるよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の外科用訓練器具の上から見た斜視図である。
図2】本発明のモデルの上から見た斜視図である。
図3】本発明のモデルの近位側端面図である。
図4】本発明のモデルの遠位側端面図である。
図5】本発明の種々のアイレットを示す図(5A,5B,5C,5D)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
患者の胴、例えば腹部領域を模倣して作られた外科用訓練器具10が図1に示されている。外科用訓練器具10は、ユーザから実質的に隠されていて、本明細書に記載する模倣され若しくは生きている組織又はモデル器官若しくは訓練モデル等を受け入れる本体キャビティ12を備えている。本体キャビティ12にはユーザが器具を用いて本体キャビティ12内に見えるように設けられた組織又は器官に対して手術法を実施することにより穿通される組織模擬領域14を介してアクセスされる。本体キャビティ12は、組織模擬領域を通ってアクセス可能であるものとして示されているが、変形例として、手を使ったアクセス器具又は単一部位ポート器具を用いて本体キャビティ12にアクセスしても良い。例示の外科用訓練器具が2011年9月29日に出願された米国特許出願第13/248,449号明細書(発明の名称:Portable Laparoscopic Trainer)に記載されており、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。外科用訓練器具10は、腹腔鏡下又は他の低侵襲手術手技を練習するのに特に好適である。
【0013】
依然として図1を参照すると、外科用訓練器具10は、少なくとも1つの脚部20によって基部18に連結されると共にこの基部から間隔を置いて設けられたトップカバー16を有している。外科用訓練器具10は、患者の胴、例えば腹部領域を模倣して作られている。トップカバー16は、患者の前方表面を表しており、トップカバー16と基部18との間の空間は、器官が存在する患者の内部又は体内腔を表している。外科用訓練装置10は、患者が手術手技を受ける場合の模擬(シミュレーション)において種々の手術手技及びこれらと関連した器械を教示し、練習し、そして実証するための有用なツールである。外科用器械は、組織模擬領域14を通ると共にトップカバー16にあらかじめ設けられた孔22を通ってキャビティ12中に挿入される。種々のツール及び技術を用いてトップカバー16を穿通し、それによりトップカバー16と基部18との間に配置されたモデル器官又は訓練ツールに対して模擬手技を実施することができる。基部18は、模擬組織モデルをステージングし又は保持するためのモデル受け入れ領域24又はトレーを有する。基部18のモデル受け入れ領域24は、モデル(図示せず)を定位置に保持するフレーム状要素を有している。模擬組織モデルを基部18上に保持するのを助けるため、引っ込み可能なワイヤに取り付けられたクリップが場所26のところに設けられている。引っ込み可能なワイヤは、伸長され、次にクリップ留めされて組織モデルを組織模擬領域14の実質的に下の定位置に保持する。組織モデルを保持する他の手段としては、モデル受け入れ領域24内で基部18に取り付けられたフック・アンド・ループ式(所謂マジックテープ(登録商標)式)締結材料のパッチ(VELCRO(登録商標))が挙げられ、このフック・アンド・ループ式締結材料のパッチは、モデルに取り付けられたフック・アンド・ループ式締結材料の補足し合う小片(VELCRO(登録商標))に取り外し可能に連結可能である。
【0014】
トップカバー16にヒンジ留めされたビデオディスプレイモニタ28が図1に閉じられた向きで示されている。ビデオモニタ62は、画像をモニタに送る種々の視覚的システムに接続可能である。例えば、あらかじめ設けられた孔22又はキャビティ内に設けられたウェブカム(ウェブカメラ)のうちの一方を通って挿入され、そして模擬手技を観察するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタ28及び/又はモバイルコンピューティング装置に接続して画像をユーザに提供するのが良い。また、音声記録又は送り出し手段も又提供されて訓練装置10と一体化され、それにより音声及び視覚的機能を提供するのが良い。携帯式記憶装置、例えばフラッシュドライブ、スマートフォン、ディジタルオーディオ若しくはビデオプレーヤ又は他のディジタルモバイル装置も又実証目的で訓練手技を記録すると共に/或いはあらかじめ記録された映像をモニタ上にプレイバックするために設けられる。当然のことながら、音声視覚的出力をモニタではなく大型スクリーンに提供する接続手段が設けられる。別の変形例では、トップカバー16は、ビデオディスプレイを備えておらず、ラップトップ型コンピュータ、モバイルディジタル装置又はタブレット、例えばIPAD(登録商標)と接続し、これをワイヤ又はワイヤレスで訓練装置に接続する手段を含む。
【0015】
組立て時、トップカバー16は、脚部20が実質的に周囲に沿って配置されると共にトップカバー16と基部18との間に相互に連結された状態で基部18の真上に位置決めされる。トップカバー16と基部18は、実質的に同一の形状及び寸法のものであり且つ実質的に同一の周囲外形を有している。内部キャビティは、視界から部分的に又は完全に隠されている。図1に示されている変形例では、脚部は、周囲光が内部キャビティをできるだけ多く照明することができ、しかも有利には、携帯性に都合がいいようにできるだけ軽量化をもたらすために開口部を有している。トップカバー16は、脚部20から取り外し可能であり、脚部20は、基部18に対して取り外し可能であり又は基部18に対してヒンジ等により折り畳み可能である。したがって、非組立て状態の訓練装置10は、携帯を容易にする減少高さを有している。本質的には、外科用訓練装置10は、ユーザからは隠されている模擬本体キャビティ12を備えている。本体キャビティ12は、少なくとも1つの組織模擬領域14及び/又はトップカバー16に設けられた孔22を介してアクセス可能である少なくとも1つの手術モデルを受け入れるよう構成されており、ユーザは、孔22を通ってモデルにアクセスして腹腔鏡下又は内視鏡下低侵襲手術法を練習することができる。モデルは又、訓練装置の側部開口部を通ってアクセス可能である。
【0016】
本発明に従って腹腔鏡下、内視鏡下、又は他の低侵襲手技の際に縫合糸を通す練習のためのモデル30が図2に示されている。モデル30は、上述の外科用訓練器具10又は他の類似の外科用訓練装置の本体キャビティ12の内部に配置されるよう構成されている。モデル30は、本体34に連結された基部32を有している。
【0017】
モデル30の基部32は、モデル30の残部の底部支持体としての役目を果たすプラットホームであり、この基部は、モデル30が倒れることがないよう寸法決めされると共に形作られている。プラットホームは、任意の材料、例えば金属又はプラスチックで作られる。基部32は、ユーザによって操作されている間直立位置においてモデル30の安定性を維持するのに十分な重さのものである。モデル30は、モデル受け入れ領域24の場所で外科用訓練装置10の本体キャビティ12内に配置されるよう寸法決めされると共に形作られている。基部32の下側は、モデル30を外科用訓練装置10の内部に取り付けるための手段を備えている。モデル30を訓練装置10の内部に取り付けるためのかかる手段としては、接着剤、吸引カップ、磁石、スナップ嵌め、及びフック・アンド・ループ式締結材料(面ファスナ)が挙げられるがこれらには限定されず、フック・アンド・ループ式締結材料は、基部32の底面に取り付けられ、外科用訓練装置10の基部18に取り付けられた補足し合うフック・アンド・ループ式締結材料又は接着剤と結合するよう構成されている。変形例として、モデル30は、スタンドアロン型訓練装置として用いられても良く、或いは訓練装置10の外部で用いられても良い。
【0018】
図2図4を参照すると、モデル30の本体34は、基部32に連結され又は基部32と一体に形成され、その結果、本体34は、基部32が支持面、例えばテーブルトップと接触した状態で支持され、本体34は、テーブルトップ又は基部32に対して調節可能な角度をなすように構成されるのが良い。本体34は、形状が実質的に円筒形であり、内側ルーメン36を備えている。一変形例では、内側ルーメン36は、約3〜4インチ(7.62〜10.16cm)の直径を有する。本体34は、内面40及び外面42を備えた側壁38を有し、内面40及び外面42は、これらの間に厚さを定めると共に近位開口部45を備えた近位端44と遠位開口部47を備えた遠位端との間で長手方向軸線に沿って延びている。管状本体34は、半透明又は透明であるのが良い硬質プラスチック材料で作られ、それにより、光は、側壁38を通ってルーメン中に入って内部ルーメン36を照明することができる。管状本体34は、可撓性シェルであっても良く、この管状本体は、不透明であると共に半透明であっても良い。本体34は、円筒形断面を備えた円筒形ルーメン36を有するが、本発明は、これには限定されず、ルーメンは、任意断面形状のものであって良い。本体34は、内側ルーメン36が容易にアクセス可能であるように互いにスナップ装着され又は互いにヒンジ留め可能な2つの半部から成るのが良い。本体34は、本体34を直立して配置でき又は任意の角度をなして支持することができる構造体及び形状又は追加の脚部要素を有しても良い。本体34は、近位端部48及び遠位端部50のところに減少した断面領域を備えている。これら端部48,50は、種々の端キャップ及びクロージャ、例えばカリフォルニア所在のアプライド・メディカル・リソーシズ・コーポレーション(Applied Medical Resources Corporation)製のGELPOINT(登録商標)の追加を可能にすると共にルーメン36中に狭い導入路をもたらすよう構成されている。一変形例では、本体34は、近位端部48に取り付けられていて、肛門を真似る取り外し可能な括約筋インサート52を有する。括約筋インサート52は、代表的には、本物のように軟質且つ柔軟性の組織状インターフェース又は導入路をルーメン36に提供するようシリコーンで作られている。括約筋インサート52は、近位開口部45中に挿入可能であり、この括約筋インサートは、全体として本体34のルーメン36と同軸の孔54を有する。アクセス器具(図示せず)も又提供されるのが良く、このアクセス器具は、これが用いられる場合には括約筋インサート52中に挿入され又は本体34の近位開口部45中に直接挿入されることによって、近位端44のところで本体34に連結されるのが良い。アクセス器具は、ルーメン36の近位開口部を封止し、模擬ガス注入ポートとなる。手持ちアクセス器具、シングルポート器具及び拡張器具(これらは全て、モデル30と併用できる)は、米国特許第7,473,221号明細書、同第6,958,037号明細書、同第7,650,887号明細書、米国特許出願公開第2009‐0187079号明細書及び同第2010‐0094227号明細書に開示されており、これら特許文献を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。また、シリコーンで作られた他の模擬組織構造体が近位開口部45若しくは遠位開口部47を少なくとも部分的に又は円周方向に覆った状態で又は内側ルーメン36に沿って近位端44又は遠位端46のところに配置されるのが良く、従って、内側ルーメン36の他の部分にアクセスするためには例えばメンブレンの形態をした模擬組織構造体を拡張する必要がある。
【0019】
モデル30は、本体34の内面40に連結されると共にこの内面の周りに且つこれに沿って間隔を置いて設けられた複数個のアイレット56を有し、アイレット56は、図3及び図4に示されているように本体34の内面40の上方に位置するよう構成されている。例示のアイレット56が図5Aに示されている。一般的に言って、アイレット56は、医師が針及び縫合糸を通す訓練を行うことができるようにする開口部を提供するよう構成されている。アイレット56は、ヘッド部分60に連結されたネック部分58を有している。ヘッド部分60は、少なくとも1つの孔62を有し、少なくとも1つの孔62は、これが位置する孔平面を定めている。孔62は、楕円形の形状を有するものとして示されているが、本発明は、これには限定されず、孔62は、任意の形状、例えば円、多角形又は閉じられた曲線のものであって良い。図5Aは、閉じられた孔62を示しているが、図5Bに示されているような開いたフック状孔64は、本発明の範囲に含まれる。開いた孔64は、開いていると共にヘッド部分60の周囲材料によって部分的にしか包囲されていない孔であり、後には、孔64への開口部又は入口が寸法において孔周長の約1/8から1/4までのどこかの場所に位置した状態で残され、フック状形態が形成される。一変形例では、アイレット56の孔62は、シリコーン又はメッシュ若しくは織物補強材を含むのが良い他の材料の少なくとも1つの層で覆われ、その結果、針及び縫合糸を孔62中に通すには、縫合糸付きの針で孔62の覆いを穿通する必要がある。覆いは、本物の組織を模倣しており、かくして、訓練の迫真性の一因となる。
【0020】
一変形例では、アイレット56は、剛性である。別の変形例では、アイレット56のネック部分58は、可撓性であり、ヘッド部分60は、剛性であり、別の変形例では、ネック部分58とヘッド部分60の両方は、可撓性であり又は撓曲可能である。撓曲可能又は可撓性アイレット56は、縫合糸を通す際の難しさを増大させる。別の変形例では、アイレット56は、図5C及び図5Dに示されているようにあらかじめ曲げられており又はネック部分58に対して角度が付けられている。一般的に言って、アイレット56は、外科医が手術針及び縫合糸を通す訓練をするための孔62となる。アイレット56のネック58は、孔62を本体34の内面40から隔てるよう構成されている。また、ネック58は、本体34に結合するよう構成され、従って、ネック58は、本体に結合するためのねじ山、接着剤又は他の手段を有するのが良い。また、アイレット56は、アイレット56全体が本体34に対して回転し又は回転可能であるように本体34に取り付けられるのが良く、別の変形例では、アイレット56は、アイレット56のヘッド60がネック部分58に対して回転するよう構成される。このように結果として本体34に対して孔62,64が回転できることにより、縫合糸を通す場合の難しさが増す。一変形例では、本体34の内面40は、柔軟性であり又はアイレット56が植え込まれる組織を表すための柔軟性皮膜を有する。柔軟性のある内面40の結果として、アイレット56は、アイレット56がユーザによって操作されると、本物の組織のように動く。
【0021】
複数個のアイレット56が本体34の内面40に連結されている。各アイレット56は、同一であっても良く、或いは、複数個のアイレット56は、上述の種々の特徴を備えたアイレット56の混ざったものであっても良く、例えば、互いに異なる寸法及び形状の孔62,64を備えたアイレット、可撓性アイレット、回転可能なアイレット、撓曲可能なアイレット、撓曲時に撓曲状態のままの塑性変形可能なアイレット及び撓曲後に先の位置を再び取る撓曲可能なアイレットであっても良い。図3及び図4で理解できるように、アイレット56の中には、ヘッド部分60だけが内面40の上方に位置するよう本体34に連結されているものがあれば、アイレット56の中には、ヘッド部分60とネック部分58の両方が内面40の上方に位置するよう持ち上げられているものもある。複数個のアイレット56は、カメラ観察モニタ上でアイレット孔62,64を可視化する際の難しさを増大させるために本体34の内面40の背景又は色に対して溶け合った色を含む互いに異なる色のアイレットを含むのが良い。また、本体34に取り付けられたアイレット56のうちの少なくとも1つは又、このアイレット56が視覚的に目立ち又はスコープを用いて本体の背景又は内面40を観察したときにコントラストをなすよう着色されていても良い。さらに、複数個のアイレット56は、同色のものであり、かくして、縫合糸を通さなければいけない所定の経路がアイレット56の色によって定められるよう色分けされた1つ又は2つ以上のアイレット群を含んでも良い。例えば、1組の緑色に着色されたアイレット56は、手術手技に特有の所定の経路を定めるか或いは、例えば比較的大径の孔62,64を備えたアイレット56によって定められる比較的容易な技能レベルを定めても良い。変形例として、所定の経路は、アイレット56の着色によってではなく、本体34の内面40上に施された相互連結線又は他の印で印付けされても良い。内面40上のかかる印は、解剖学的ランドマークを含むのが良く、ユーザは、かかる解剖学的ランドマークから縫合糸を通すために辿るべき正確な経路を導き出すことができる。変形例として、印は、アイレット56を相互に連結した内面40上に施されたインキで引かれた線である。線としての印は、本体34に対してコントラストをなす色で着色され、所定の経路を示すよう色分けされているのが良い。また、本体34に取り付けられた複数個のアイレット56のうちで、アイレット56の群は、印、例えば、或る特定の群内のアイレット56を互いに連結する本体34に引かれた線で相互に連結されても良い。或る特定のアイレット群は、特定の経路に沿って位置する特定の群のアイレット56の全てに通したことを確認するユーザの技能を試験するために辿るべき所定の経路を定めることができる。それ故、本体に取り付けた複数個のアイレットのうちでアイレット56のサブセットに属するアイレット56の配置及び選択を利用すると、針及び縫合糸を孔中に通す技能を向上させることができ、従って、経路及び各経路中で選択されるアイレットは、比較的容易なアイレット、例えば、大きな孔を有するアイレット、直立したアイレット、剛性であり且つ外面の比較的平坦な領域に位置すると共に背景に対して全くのコントラストをなすアイレットから、より難しいアイレット、例えば、小さな孔を有するアイレット、可撓性アイレット、撓曲可能なアイレット及び背景に対して溶け込むよう着色されたアイレットまで困難さが様々であるのが良い。
【0022】
縫合糸を通す所定の経路は、練習すべき手術手技に基づいてあらかじめ定められているのが良い。例えば、特定の手技の練習では、アイレットが小さな開口部を備えた状態で全体として円形の経路が必要な場合がある。したがって、かかる経路は、外科医が練習するための内面40上に設けられた着色アイレット又は印によって定められると共に印付けされるのが良い。それ故、練習すべき手術手技は、用いられるアイレットの形式並びにユーザに特定の経路を指示するこれらの配置及び印を定めるのが良い。
【0023】
アイレット56は、本体34内に埋め込まれており、これらアイレットは、種々のパターンをなして且つパターン及び経路を作る形態をなしてルーメン36中に内方に延びる。幾つかの経路の狙いは、臨床医がアイレットの全てを可視化し又は縫合糸を通すのが難しいアイレットを見落とすことなく1つの組の全てに首尾良く通すのを確認することにある。当然のことながら、アイレットは、様々な高さ及び様々な角度で配置され、その目的は、外科医が実際の縫合針又は模擬縫合針を各アイレット中に且つ特定の順序で通して各経路を修了することにある。孔平面は、複数個のアイレットの少なくとも1つの他の孔平面に対して角度をなしている。同一プラットホーム内での技能の向上を可能にする様々な技能レベルについて種々のサイズのアイレットを備えた多数の経路が存在する。
【0024】
モデル30は、交換可能なアイレット56を有するのが良く、ユーザは、ヒンジ留めされ又は違ったやり方で互いに連結された2つの部品で作られた本体34を開くことによって内側ルーメン36にアクセスする。ユーザは、ルーメンを作り直すためにモデルの本体を閉じる前に、或る特定の技能、難しい技能レベル又は手技を練習するための手術手技の経路に対応した或る特定のアイレット又は所定の組をなすアイレットを自分で選択することができる。ルーメンは、ルーメンをナビゲートする難しさを増すルーメン中に突き出た障害物又は腫瘍を含む場合がある。一変形例では、中央ルーメン36は、モデル30の長手方向軸線に沿って軸方向に延びるコアを備えている。コアは、硬質又は軟質であって良く、しかも柔軟性のあるポリマー、例えばシリコーンで作られるのが良い。コアは、ルーメンがアクセス可能な領域を訓練を実施する難しさのレベルを増大させるモデル30に沿って長手方向に延びる環状スペースに減少させるのを阻止する。モデル30は、有利には、全ての技能レベルにとって取り組み甲斐があり且つ調節可能であり、ユーザが両手を同等に用いて経路を修了しなければならないという点で効果的である。縫合針は又、縫合針を孔中に首尾良く通すために各挿通に適切な方向に向くよう操作されなければならない。それ故、モデルは、腹腔鏡下における縫合糸挿通、組織平面の決定及び可視化という練習、アイレットの奥行き覚及び可視化という練習、器械及び針の手渡し、縫合及び組織操作に特に有用であり、これらは全て、小径の管状構造体の局限部内で行われる。このモデルにより、臨床医は、自分の技能を優秀な状態に維持することができ又は実際の手術の際に首尾良い結果を得るために前もって「ウォーミングアップ」することができる。
【0025】
本体34は、図3で理解できるようにルーメン36の内部に配置されると共に内面40に円周方向に取り付けられたステージング領域66を更に有する。ステージング領域66は、物体70を保持するための場所を含む。ステージング領域66は、ポケット又はコンパートメントから成るのが良い。一変形例では、ステージング領域は、面ファスナ、例えばVELCRO(登録商標)のストリップを有する。この変形例では、物体70は、ステージング領域66中のストリップの面ファスナと補足し合う面ファスナ、例えば、VELCRO(登録商標)の少なくとも一部分を有し、その結果、物体70は、ステージング領域66に取り外し可能に取り付け可能である。少なくとも1つの物体70を取り外し可能に取り付ける他の手段としては、物体70に施され又はステージング領域66内に施される接着剤が挙げられる。図3は、ルーメン36の内面40に沿って円周方向に配置された面ファスナのストリップを示しており、物体70は、本体34の近位端44のところでストリップに取り付けられた面ファスナ表面を有する。物体70は、内面上の補足し合う関係をなす面ファスナ場所に取り付け可能に構成された面ファスナを有する表面領域を備えた平坦な又はディスク状のものである。物体70は、任意形状のものであって良く、一変形例では、円形である。物体70は、孔72を有する。物体70は、ステージング領域66内に一時的に配置され又は違ったやり方でステージング領域66に取り外し可能に固定される。ユーザは、少なくとも1つの物体70を取り外してこれを管状ルーメン36に沿ってフック状特徴部を形成する開放孔64を備えたアイレット56のうちの1つまで長手方向に運ぶことにより腹腔鏡下の技術、例えば手渡し及び奥行き覚を練習する。ユーザは、物体70をアイレット56のフック状特徴部上に配置し又は引っかける練習を行い、これには、アイレット56を物体70に設けられた孔72を通って動かすことが含まれる。ユーザは、物体70をフック状アイレットから取り外し、これをルーメン76に沿ってステージング領域66に長手方向に戻し、少なくとも1つの物体70をステージング領域66に配置し又は取り付けることによって練習を続行することができる。物体70の適正な向きが孔72をフック状アイレット56上に引っかけて訓練を修了するためには物体70の適正な向きが必要である。練習は、これによりユーザが腹腔鏡下環境内において手渡し技術及び奥行き覚を用いることが必要であるという点で有効である。
【0026】
練習モデル30は、腹腔鏡訓練装置10の内部に配置され、腹腔鏡がキャビティ12中に挿入されてモデル30を観察する。縫合針及び縫合糸が孔22若しくは組織模擬領域14又はトップカバー16と基部18との間の側部開口部のうちの1つに通されてキャビティ12内に入れられ、縫合糸をアイレット56に通す手技は、ビデオディスプレイモニタ28上で観察され、このビデオディスプレイモニタは、腹腔鏡訓練装置10の内側に配置されると共に直接可視化から隠された三次元モデル30の二次元ビデオ表示を医師に提供する。モデル30と訓練装置10の組み合わせにより、有利には、ユーザは、縫合糸のための所望の手術経路を識別し、針を動かし、縫合糸を腹腔鏡下で多数のアイレット34に通す練習を行うことができる。
【0027】
或る特定の実施形態を具体的に図示すると共にその例示の実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部について種々の変更を行うことができることは、当業者によって理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
【国際調査報告】