(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532533(P2015-532533A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】電気部品並びに電気部品を製造する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H05K 3/44 20060101AFI20151013BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20151013BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20151013BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20151013BHJP
【FI】
H05K3/44 A
H05K3/12 610J
F21V19/00 150
F21Y101:02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-535690(P2015-535690)
(86)(22)【出願日】2013年9月23日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】US2013061102
(87)【国際公開番号】WO2014055270
(87)【国際公開日】20140410
(31)【優先権主張番号】61/710,395
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/838,008
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ザックス、ゼンケ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ライトナー、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンシェル、エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】フレックマン、ドミニク マリー エム
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ、マージョリー、ケイ
【テーマコード(参考)】
3K013
5E315
5E343
【Fターム(参考)】
3K013BA01
3K013CA05
5E315AA03
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5E343GG01
(57)【要約】
電気部品(100)を製造する方法は、基板(104)を提供することと、前記基板上に絶縁層(110)を塗布する工程と、前記絶縁層上に回路層(112)を塗布する工程と、前記絶縁層を変化させるために前記絶縁層に電子ビーム(114)を照射する工程と、前記回路層を変化させるために前記回路層に電子ビームを照射する工程とを含む。前記基板は、高い熱伝導性を有する金属基板とすることができる。前記絶縁層は、前記回路層と前記基板との間で電気的分離及び効果的伝熱を行う。本方法は、電気絶縁性や熱伝導性を有する層上に存在する前記回路層に対して熱管理が必要な発光ダイオードモジュール(102)又はその他の能動回路を結合する工程を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品(100)を製造する方法(200)であって、
基板(104)を提供する工程(202)と、
前記基板上に絶縁層(110)を塗布する工程(204)と、
前記絶縁層上に回路層(112)を塗布する工程(206)と、
前記絶縁層を変化させるために前記絶縁層に電子ビーム(114)を照射する工程(208)と、
前記回路層を変化させるために前記回路層に電子ビームを照射する工程(210)と
を含む方法。
【請求項2】
前記絶縁層(110)に照射する工程(208)と、前記回路層(112)に照射する工程(210)は同時に行われる請求項1の方法。
【請求項3】
前記絶縁層(110)に照射する工程(208)は、前記絶縁層上に前記回路層(112)を塗布する工程(206)の前に行われる請求項1の方法。
【請求項4】
前記回路層(112)に照射する工程(210)は、導電体を形成するために前記回路層を溶融するために前記回路層を加熱する工程を含む請求項1の方法。
【請求項5】
前記基板(104)を提供する工程(202)は、高い熱伝導率を有する金属基板を提供することからなり、
前記絶縁層(110)は、前記回路層(112)と前記基板との間で電気的分離を行う請求項1の方法。
【請求項6】
前記回路層に照射する前にその融点未満の温度に前記回路層(112)を予加熱する工程を更に含み、
前記回路層に照射する工程は、前記回路層の前記融点より高い温度に前記回路層を加熱する工程を含む請求項1の方法。
【請求項7】
前記絶縁層(110)を塗布する工程(204)は、結合剤濃度と金属濃度の組み合わせを有する絶縁層を塗布することからなり、
前記絶縁層に照射する工程は、前記導電体を形成するために、前記結合剤の略全てを気化させ、略金属の層を残す工程を含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記絶縁層(110)を塗布する工程(204)は、ガラス又はセラミック形成材料を有する絶縁層を塗布することからなり、
前記絶縁層に照射する工程(208)は、前記ガラス又はセラミック形成材料をガラス又はセラミックに変化させるために前記絶縁層に照射することを含む請求項1の方法。
【請求項9】
前記絶縁層(110)を塗布する工程(204)は、前記基板(104)の外表面上に前記絶縁層を直接印刷することからなり、
前記回路層(112)を塗布する工程(206)は、前記絶縁層上に前記回路層を直接印刷することを含む請求項1の方法。
【請求項10】
前記回路層(112)に発光ダイオードモジュール(102)を結合する工程(212)を更に含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記照射プロセス中に前記回路層を電気的に接地することを更に含む請求項1の方法。
【請求項12】
外表面を有する基板(104)と、
前記外表面に選択的に塗布された絶縁層(110)であって、前記絶縁層は、前処理状態及び電子ビーム(114)の照射後の後処理状態に構成され、前記絶縁層は、前記前処理状態から前記後処理状態に変化され、電子ビームが、前記絶縁層を変化させるために前記照射時に前記絶縁層を少なくとも部分的に透過する前記絶縁層(110)と、
前記絶縁層に選択的に塗布された回路層(112)であって、前記回路層は、前処理状態及び電子ビームによる照射後の後処理状態に構成され、前記回路層は、前記前処理状態から前記後処理状態に変化され、電子ビームが、前記回路層を変化させるために前記照射時に前記回路層を少なくとも部分的に透過する前記回路層と
を含む電気部品(100)。
【請求項13】
前記電子ビームは、前記絶縁層及び前記回路層に同時に照射される請求項12の電気部品。
【請求項14】
前記絶縁層への前記照射は、前記絶縁層に前記回路層を塗布する前に行われる請求項12の電気部品。
【請求項15】
前記基板は、金属材料から製造され、
前記絶縁層は、前記基板からの前記回路層の電気的分離を行う請求項12の電気部品。
【請求項16】
前記回路層の非金属材料含有量は、前記後処理状態よりも前記前処理状態において高く、
前記非金属材料は、前記電子ビームの照射中に除去される請求項12の電気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の主題は、一般に、電気部品並びに電気部品の製造方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能の発光ダイオード(LED)等の高性能能動電子素子は、大量の熱を発生し、この熱は、適切な動作のためには適度に放散されなければならない。LEDの場合、発生した光は正面側から放射されるので、放熱は部品の背面側で行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のシステムでは、有機絶縁層を付着させたヒートシンク(例えばアルミニウム)を使用して放熱が行われる。有機絶縁層には能動電子部品を駆動するための回路が塗布される。有機絶縁層(例えば、熱伝導率を上げるための粒子が加えられたエポキシ)は、熱をヒートシンクに伝達しなければならない。従来の絶縁層には問題がある。例えば、絶縁層は、電圧搬送回路からヒートシンクを十分に絶縁するために適度な絶縁破壊電圧を有する必要がある(場合によっては、最大で1000Vもの大きさの高電圧)。従来の絶縁体に比べて、有機絶縁層は、典型的には、低い絶縁破壊電圧を示す。絶縁破壊電圧を達成するためには相対的に厚い層の有機絶縁層が必要であるが、熱伝導率が下がるので、ヒートシンクに対する熱結合が不十分になる。
【0004】
これらの回路は、絶縁層に塗布された導電性金属構造体である。かかる層の塗布は、典型的には、マスクを使用することによる導電性金属構造体の付着(例えば、真空蒸着、スパッタリング、化学蒸着、めっき)によって、又は基板上に金属ペースト又はインクを印刷し、その後、熱による後処理を行うことによって行われる。これらの従来の塗布プロセスには問題がある。例えば、気相からの付着における導電性金属構造体の最小の製造可能な加工寸法は、使用されるマスクの構造寸法(通常、数ミリメートルのオーダー以上)に制限され、使用される材料の大部分は、実際の被覆には利用されないため、費用をかけて再利用しなければならない。更に、印刷された従来の熱処理された構造体(例えば、炉内で)は、印刷に、接着剤、結合剤、又は印刷に必要な流動性を調整するための添加剤等の非金属添加剤の添加が必要であるため、純金属と比べて電気的性質が悪くなる。熱による後処理では、これらの添加剤は、一部しか絶縁層から除去されず、その結果、被覆層は、純金属に近い金属等の金属含有量がより高い被覆層よりも電気的性質が悪くなる。加えて、付着中又は熱処理中時の熱応力が問題である。MID(Molded Interconnect Device)及びLDS(Laser Direct Structuring)等の一部の方法では、金属触媒を含有する特殊ポリマーを使用する。かかるプロセスにおける特殊材料の使用は高価であり、化学的被覆法は非常に時間が掛かる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題の解決法は、本書に記述される電気部品を製造する方法によって提供される。本方法は、基板を提供する工程と、前記基板上に絶縁層を塗布する工程と、前記絶縁層上に回路層を塗布する工程と、前記絶縁層を変化させるために前記絶縁層に電子ビームを照射する工程と、前記回路層を変化させるために前記回路層に電子ビームを照射する工程を含む。前記基板は、高い熱伝導率を有する金属基板とすることができる。前記絶縁層は、前記回路層と前記基板との間で電気的分離を行う。本方法は、前記回路層に対して発光ダイオードモジュールを結合する工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下、一例として添付の図面を参照して本発明が記述される。
【0007】
【
図1】基板上に電子モジュールを含むように製造された電気部品を示す。
【0008】
【
図2】一例示的実施形態に係る電気部品に電子ビームを照射するために使用される電気部品形成システムを示す。
【0009】
【
図3】電気部品の被覆層との電子ビームの相互作用を示す。
【0010】
【0011】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本書に記述される実施形態は、絶縁層及び回路層を変化させるためにこれらの層に電子ビームを照射することを含む電気部品を製造する方法を含む。本書に記述された実施形態は、絶縁層及び絶縁層上の回路層の1つ以上の性質を向上するためにこれらの層を変化させるためにこれらの層に照射される電子ビームを使用するシステムを含む。本書に記述される実施形態は、絶縁層及び回路層の性質を向上するために電子ビームからのエネルギーによって変化させるこれらの層を有する電気部品を含む。絶縁層は、基板上に付着し、回路層は絶縁層上に付着する。
【0014】
本書に記述される実施形態は、表面に回路を形成する導電体を備える金属被覆回路基板の形状を有する電気部品を含むことができ、この導電体は、電子ビームによって処理される。絶縁層は、金属被覆回路基板の回路と金属基板との間に設けられる。絶縁層及び導電体の両方には、これらの層を変化させるために電子ビームが照射される。
【0015】
本書に記述される実施形態は、電子ビーム処理技術を用いることによって、熱伝導率は高いが電気絶縁性の絶縁層を形成することができる。例えば、絶縁層内部では素早く(例えばマイクロ秒以内)熱が生成され、例えば、絶縁層を凝固させるように絶縁層を変化させる。この熱は、絶縁層の化合物すなわち材料の一部又は全部を溶融又は再溶融するために使用することができる。他の実施形態では、電子ビームの電子は、絶縁層を変化させるために絶縁層の材料と反応することができる。絶縁層の材料の幾つかは、絶縁層の組成を変化させるために処理中に電子ビームによって分離させたり気化させたりすることができる。絶縁層のために使用される材料は、電子ビーム処理と共に良好に作用するものを選択することができる。例えば、ガラス又はセラミック形成材料を絶縁層の構造体として使用することができる。電子ビームによって絶縁層を処理することにより、高密度の高熱伝導率のナノスケール材料を得ることができる。
【0016】
本書に記述される実施形態は、電子ビーム処理技術を使用することにより、高品質の導電体を得ることができる。例えば、回路層内において素早く熱が生成され(例えば、マイクロ秒以内)、回路層の電気的性質を向上するように回路層を変化させることができる。この熱は、回路層の化合物すなわち材料の一部又は全部を溶融又は再溶融するために使用することができる。その他の実施形態では、電子ビームの電子は、回路層を変化させるために回路層の材料と反応することができる。回路層の材料の一部は、回路層の組成を変化させるために処理中に電子ビームによって分離させたり気化させたりすることができる。回路層のために使用される材料は、電子ビーム処理と共に良好に作用するものを選択することができる。例えば、非合金化金属の組み合わせを回路層の金属構造体として使用することができる。電子ビームによって回路層を処理することにより、硬質の高導電性のナノスケール材料を得ることができる。
【0017】
本書に記述された実施形態は、回路層の電子ビーム処理中に、ペースト又はインク(絶縁層に回路層を塗布するために使用される)から略全ての残留する非金属(例えば有機)材料が取り除かれた回路層及び導電体を提供することができる。後処理された導電体は、高密度の孔隙のない金属被覆とすることができる。回路層は、従来のペースト(例えば、加熱炉での処理されるペースト)よりも低い、それどころかはるかに低い非金属材料(例えば、結合剤)の初期濃度を有することができる。回路層は、従来のペースト(例えば、加熱炉で処理されるペースト)を用いて作製された部品よりも低い、それどころかはるかに低い非金属材料(例えば、結合剤)の最終濃度を有することができる。
【0018】
本書に記述される実施形態は、高品質の導電体を得るために制御パラメータを向上するすなわち選択することができる。塗布された被覆層及び基板との電子ビームの相互作用を考慮することができる。例えば、インク又はペースト組成、印刷技術(例えば、マイクロディスペンシング、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷等)や、電子ビームレベルを含むパラメータの相互作用が考慮されて、バランスを取ることができる。
【0019】
本書に記述される実施形態により、電気部品の耐用年数を通じて安定した電気機械的性能を提供するのに必要な性質を有することができる導電体が生成される。例えば、導電体は、低く安定した電気接触抵抗、良好な半田付け特性、良好な摩耗性能や、腐食性ガス又は高温曝露のような環境悪化要因に対する良好な抵抗を有することができる。電子ビームは、精密に制御され、導電体の高い空間分解能を可能にすることができる。導電体の仕上がりは、所望の性質を得るために電子ビーム加工及び回路層の材料によって制御することができる。例えば、導電体は、層組成、膜厚、粗度、形状、構造等の適切な被覆品質を有することができる。
【0020】
本書に記述される実施形態により、回路層から金属基板への放熱のための良好な熱的特性を提供するのに必要な性質を有することができる導電体が生成される。絶縁層は、電圧搬送回路層から金属基板を十分に絶縁するために適度な絶縁破壊電圧を提供するために良好な絶縁特性を提供することができる。
【0021】
図1は、基板104上に電子モジュール102を含むように製造された電気部品100を示す。一例示的実施形態では、電子モジュール102は、発光ダイオード(LED)モジュールであり、以下ではLEDモジュール102と呼ぶ場合があるが、基板104には、熱管理を必要とするその他の種類の電子モジュール102又はその他の能動回路を取り付けることができる。一例示的実施形態では、電子モジュール102は、高出力LED等の高出力素子である。高出力は、過剰な熱を生成する傾向があり、この熱は、電気コンポーネント100を保護するために放散される必要がある。一例示的実施形態では、基板104は、LEDモジュール102から熱を放散する金属基板すなわちヒートシンクである。電気部品100は、金属被覆回路基板と呼ばれる場合があるが、本書に記述された方法及びシステムを使用して、その他の種類の電気部品100が製造されることができる。
【0022】
加工中には、基板104の外表面108に被覆層106が塗布される。基板104には、任意の数の被覆層106を塗布することができる。図示の実施形態では、被覆層106は、基板104に塗布された絶縁層110と、絶縁層110に塗布された回路層112とを含む。LEDモジュール102は、回路層112に取り付けられる。例えば、LEDモジュール102は、回路層112に半田付けされることができる。絶縁層110は、回路層112と基板104との間の電気的分離を行う。一例示的実施形態では、絶縁層110は、回路層112及び回路層112に取り付けられた対応するLEDモジュール102からの熱を効率的に放散するために高い熱電導率を有することができる。
【0023】
一例示的実施形態では、被覆層106は、照射源116から生成された電子ビーム114によって加工される。任意ではあるが、両方の被覆層106には、電子ビーム114が同時に照射されてもよい。例えば、基板104には絶縁層110を塗布することができ、次に、絶縁層110には回路層112を塗布することができ、次に、両層110,112に照射する。或いは、基板104には絶縁層110を塗布し、次に電子ビーム114を照射することができる。次に、加工された絶縁層110に回路層112が塗布され、次に、電子ビーム114が照射される。任意ではあるが、電子ビームは、非断熱電子ビーム加工技術において利用されてもよい。
【0024】
図1は、加工の異なる段階即ち状態における電気部品100を示す。例えば、状態120では、電気部品100の被覆層106が加工前の状態で示されている。状態122では、電気部品100の被覆層106は加工中の状態で示され、この状態では、被覆層106に向かって電子ビーム114が放射されている。電子ビーム114は、少なくとも部分的に被覆層106を透過する。例えば、一部の電子ビーム114には絶縁層110を透過するように放射され、一方、他の一部の電子ビーム114は回路層112を透過するように放射される。任意ではあるが、絶縁層110に放射された電子ビーム114は、回路層112に放射された電子ビームとは異なる特性を有してもよい。被覆層106は、このような被覆層106の材料の1つ以上の性質を変化させるために照射される。状態124では、電気部品100の被覆層106は、電子ビーム114からの照射後の、加工後の状態で示されている。LEDモジュール102は、電子ビーム114による照射後に回路層112に結合された状態で示されている。
【0025】
基板104は、金属被覆回路基板等の回路基板を形成するために使用される。回路層112は、回路基板の回路を画定する導電性トレースを形成する。基板104は、アルミニウムヒートシンク等の金属基板である。
【0026】
絶縁層110は、高い熱伝導率を有する層である。任意ではあるが、絶縁層110は、硬質の陽極酸化層としてもよい。絶縁層110は、外表面108上にインク又はペーストを印刷することによって塗布される。任意ではあるが、絶縁層110は、外表面108に直接塗布されてもよい。或いは、基板104と絶縁層110の間には1つ以上の層が設けられてもよい。基板104は、外表面108上に絶縁層110を印刷する前に洗浄して脱酸素することができる。
【0027】
一例示的実施形態では、絶縁層110は、アルミニウム、シリコン、チタン、マグネシウム等の酸化物等の金属酸化物を含む。絶縁層110は、エナメル、ガラス、セラミック、磁器等のその他の粒子を含むことができる。絶縁層110は、ホウ酸塩、ケイ酸塩、フッ化物、アルカリ金属、鉛、アルミニウム等を含むことができる。絶縁層は、エポキシ、樹脂、結合剤等の有機材料を含むことができ、有機材料は、絶縁層110の熱伝導率を高めるために金属粒子又はフレークを含むことができる。例えば、有機キャリアは、金属酸化物、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイアモンド等の高い熱伝導率の粒子によって高充填されることができる。様々な形状及びサイズの粒子が用いられることができる。絶縁層110は、印刷時の接着を促進するための結合剤や、粒子凝集を防止するための界面活性剤を含むことができる。絶縁層110は、必要な溶媒や、印刷プロセスに必要なインク/ペーストの粘度を調整するためのその他の添加物を含むことができる。絶縁層110の材料は、電子ビーム114の照射中に化学的に減少させることができる金属前駆体又はその他の物質を含むことができる。
【0028】
一例示的実施形態では、絶縁層110は、マイクロ粒子やナノ粒子のマイクロ構造体とすることができる。絶縁層110の粒子は、材料が原子スケールで混合される溶液を生成するために電子ビーム114によって溶融される。任意ではあるが、絶縁層110は、相分離、粒子成長や、金属ヒートシンク104への過度の熱伝導を抑制するために溶液を直ぐに凝固させるために急速に冷却させてもよい。基板104を画定する金属ヒートシンクは、照射時及び照射後の絶縁層110からの素早い熱の放散を促す。材料の良好な混合物を有し、素早く凝固することにより、微細な材料のマイクロ構造体となる。
【0029】
絶縁層110は、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷、マイクロディスペンシング、スピンコーティング、ワイピング塗装等の様々な異なる印刷技術によって塗布されることができる。基板104に絶縁層110を塗布するために、別の実施形態では、印刷以外のその他の塗布技術を使用することができる。例えば、絶縁層110は、粉体コーティング、吹き付け、浸漬、液浸、又はその他の方法によって塗布することができる。塗布技術は、例えば、所定の回路トレース経路に沿って、基板104に絶縁層110を選択的に塗布することができる。上記印刷技術により、標準化されたパターンが基板104上に印刷することができ、印刷は、例えば、バッチ印刷による塗布では断続的に、又は、例えばリールツーリール(オープンリール式)印刷による塗布では連続的に行うことができる。印刷技術は、ペースト又はインクの最小構造体サイズ、塗布される層の厚さ、絶縁層材料の組成等に応じて選択することができる。
【0030】
回路層112は、絶縁層110上に導電性即ち金属製のインク又はペーストを印刷することによって塗布することができる。絶縁層110は、回路層112と基板104の間で電気的分離を行うために、これらの間に存在する。任意ではあるが、回路層112は、絶縁層110に直接塗布されてもよい。或いは、絶縁層110と回路層112の間には1つ以上の層が設けられてもよい。
【0031】
一例示的実施形態では、回路層112は、様々な形状及びサイズの金属粒子を含む。回路層112は、印刷時の接着を促進するための結合剤や、金属粒子の凝集を防止するための界面活性剤を含むことができる(例えば、1乃至2重量%)。回路層112は、印刷プロセスに必要な溶媒やその他の添加剤を含むことができる。任意ではあるが、回路層112は、例えば、1乃至10重量%のレベルの更なるフラックス添加剤(例えば、市販のろう付け用フラックス、ホウ砂、及び四ホウ酸カリウム)を含有してもよい。フラックスは、電子ビーム114による後処理中に回路層112の濡れ挙動を調整するために追加されることができる。一例示的実施形態では、回路層112は、高い金属濃度(例えば、50重量%を超える)を有することができる。一例示的実施形態では、金属粒子は、100%銀粒子とすることができる。他の実施形態では、金属粒子は、100%銅粒子又はその他の高い導電性金属とすることができる。他の実施形態では、金、アルミニウム、ニッケル、銀、モリブデン、錫、亜鉛、チタン、パラジウム、白金等や、それらの合金等のその他の種類の金属を使用してもよい。回路層112材料は、金属に化学的に還元されることができる金属前駆体を含むことができる。例えば、塩化銀、塩化錫、硝酸銀等の金属塩、金属酸化物、及びその他の金属化合物を使用することができる。前駆体は、錫、亜鉛、銅、銀等の低融点を有する金属を含むことができる。金属又は合金の混合物を用いる場合、被覆層106に関して所望の特性すなわち性質を得るために電子ビーム処理中には金属間構造体を形成することができる。
【0032】
一例示的実施形態では、回路層112は、マイクロ粒子やナノ粒子のマイクロ構造体とすることができる。任意ではあるが、回路層112は、結合剤や溶媒、フラックス混合物とのAg粒子等の固体金属粒子の混合粉体を含んでもよい。金属粒子は、材料が原子スケールで混合された溶液を生成するために電子ビーム114によって溶融される。任意ではあるが、回路層112は、相分離及び粒子成長を抑制するために溶液を直ぐに凝固するために急速に冷却されてもよい。例えば、基板104を画定する金属ヒートシンクは、回路層112からの熱を放散するために使用されることができ、この熱は、高い熱伝導率の絶縁層110も通過する。材料の良好な混合物を有すること、及び素早く凝固することにより、微細な材料のマイクロ構造体となる。任意ではあるが、異なるサイズ及び形状に設定された金属粒子を使用してもよい。照射及び溶融プロセス中に金属粒子に還元される前駆体(例えば、金属塩、金属酸化物)を使用することができる。任意ではあるが、例えば、絶縁層110の材料と回路層112との材料の間での相互拡散を減少するために、絶縁層110と回路層112との間には拡散障壁層が設けられてもよい。
【0033】
結合剤濃度は、例えば、金属粒子濃度と比較して、相対的に低くすることができる(例えば、5重量%未満)。結合剤濃度は、従来の加熱炉による後処理の適用において使用される従来のペーストと比較して相対的に低くすることができる。結合剤濃度は、約25重量%乃至5重量%とすることができる。或いは、結合剤濃度は、非常に低くすることができる(例えば、1重量%未満)。結合剤の一例として、デキストリン、ポリビニルブチラール樹脂(例えば、Butvar)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))が挙げられるが、別の実施形態では、その他の種類の結合剤を使用してもよい。結合剤は、絶縁層110に塗布する場合に被覆材料の粘度を変更するために接着剤又はその他の添加物を含むことができる。
【0034】
回路層112は、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷、マイクロディスペンシング、スピンコーティング、ワイピング塗装等、様々な印刷技術のうちの一つによって塗布されることができる。別の実施形態では、絶縁層110に回路層112を塗布するために、印刷以外のその他の塗布技術を使用してもよい。例えば、回路層112は、粉体コーティング、吹き付け、浸漬、液浸、又はその他の方法によって塗布することができる。塗布技術は、例えば、所定の回路トレース経路に沿って、絶縁層110に回路層112を選択的に塗布することができる。印刷技術は、基板104上に印刷される標準化されたパターンを可能にし、印刷は、例えば、バッチ印刷による塗布では断続的に、又は、例えばリールツーリール(オープンリール式)印刷による塗布では連続的に行われることができる。印刷技術は、ペースト又はインクの最小構造体サイズ、塗布される層厚、被覆層材料の組成等に応じて選択することができる。
【0035】
図2を更に参照すると、
図2は、一例示的実施形態に係る電気部品100に対して電子ビーム114を照射するために使用される電気部品形成システム140を示す。システム140は、電子ビーム114を生成することができる電子ビームマイクロ溶接機とすることができる。この加工は、真空室142内で行われることができる。照射源116の出力は、処理中に制御することができる。電子ビーム114のエネルギー密度は、処理中に制御することができる。電子の偏向速度は、処理中に制御することができる。最大加速電圧は、加工中に制御することができる。最大電子ビーム電流は、処理中に制御することができる。ターゲットに対するビーム焦点スポットサイズ及び深さは、処理中に制御することができる。システム140は、例えば、絶縁層110及び回路層112に同時に照射するために、2つ以上のビーム焦点スポットに集束するように電子ビーム114を制御することができる。電子ビーム114は、付着された被覆層106の性質(例えば、層厚、層組成)及び被覆層106の材料の性質(例えば、密度、熱伝導率、化学組成)に基づいて制御することができる。
【0036】
システム140は、走査電子顕微鏡(SEM)と類似の、被加工物の電子ビーム画像を生成するために使用することができる後方散乱電子及び二次電子検出器の両方を備えることができる。この画像は、コンピュータを用いて画面上で生で見ること、又は保存することができる。システム140は、例えば、サンプル上の既定の経路を走査するように、又は既定のパターンに照射するように電子ビーム114をプログラムするために、照射源116の機能を制御するためのソフトウェアを含むことができる。このソフトウェアは、連続移動するリール等の被照射サンプルとの電子ビーム110の同期移動を可能にすることができる。このようにして、連続的な再溶融プロセスが可能である。任意ではあるが、システム140は、高い熱質量を有し、ターゲットとの良好な熱的接触状態に配置された厚いアルミニウムプレートシートシンク等のヒートシンクを含んでもよい。
【0037】
図3は、被覆層106との電子ビーム114の相互作用を示す。この例示的実施形態では、絶縁層110と回路層112は両方とも照射前に印刷される。照射中に、電子ビーム114の幾らかは、絶縁層110の内側に集束され、電子ビーム114の他の幾らかは、回路層112の内側に集束される。電子ビーム114は、各被覆層106を少なくとも部分的に透過する。一例示的実施形態では、ビーム焦点スポット150は絶縁層106内にあり、ビーム焦点スポット152は回路層112内にある。電子ビーム114は基板104内に集束されないが、基板は被覆層106からの熱を放散する。基板104に対する照射又は加熱は、電子ビーム114を被覆層106に集束させることによって制限される。電子ビーム114の衝突電子は被覆層106の材料によって散乱されるので、電子の運動エネルギーは熱エネルギーに変換される。散乱確率は、電子のエネルギー、対応する被覆層106の被照射材料の密度、ビーム焦点深度等によって決定することができる。任意ではあるが、電子ビームの透過深度は、0.5μm乃至20μmとしてもよい。一例示的実施形態では、散乱確率のエネルギー依存の特性は、生成された熱密度の最大値が、材料の表面ではなく、透過深度の約1/3にあるということである。熱は、被覆層106の材料の表面だけでなく内側でも生成される。電子の一部は、被覆層106から反射すなわち再放射される。かかる電子は、例えば、フィードバック制御システムを介して照射プロセスを制御するために、照射中に現場でSEM画像を生成するために利用されることができる。
【0038】
生成される熱の出力は、一定の加速電圧に対する電子流によって決まる。加速電圧とビーム電流の積がビームの出力となる。この出力は、電子流や加速電圧を制御することによって調整することができる。照射プロセスを制御するために調整されることができる他のパラメータは、被覆層106のスポットの箇所又はその付近の照射時間である。被覆層106の印刷された材料は、生成された熱が、材料の融点まで材料を加熱するのに必要な熱エネルギー及び材料の融解潜熱を越えると溶融する。基板104ではなく被覆層106内に熱エネルギーを集中させることにより、熱を生じて非常に素早く被覆層106を溶融する。被覆層106や基板層104は、材料を反応させたり層を焼結したりすることによって層の特性を変化させるために融点未満の温度に加熱されることができる。任意ではあるが、基板104は、照射後に被覆層106からの熱を素早く放散し、溶融フィルムの高冷却速度を可能にするためにヒートシンクとして機能してもよい。速い加熱及び冷却速度は、被覆層106の性質に影響を与えることができる。例えば、回路層112の硬度は、ペーストに加えて基板104が加熱される加熱炉内での熱硬化において典型的な回路層112の緩やかな加熱及び冷却とは対照的な素早い加熱及び冷却によって高くなる。更に、ペーストに加えて基板が加熱されるため、加熱炉内でペーストを加熱するためにより多くの熱エネルギーが必要である。
【0039】
結合剤は、典型的には、被覆層106における金属粒子よりも1桁小さい質量密度を有するので、被覆層106内の結合剤の体積百分率はもっと高い。例えば、加熱炉にて硬化される塗布における使用において典型的な従来のペーストは、23重量%のButvar結合剤を有する90Ag/10Mo材料であり、これは、高い結合剤濃度であり、境界値である非常に高い結合剤濃度である。かかる従来のペーストは、約75%の結合剤体積分率を有する。従来のペーストの高い又は非常に高い結合剤濃度は、基板上に印刷された構造体を確実に固定するために必要とされ、従来の加熱炉を使用する加熱処理後には結合剤が残る。
【0040】
一例示的実施形態では、電子ビーム114による処理のために、結合剤は、照射のために基板104を電子ビーム114まで移動する時間だけ基板104上の所定の位置に、印刷された被覆層106を留めればよいので、被覆層106は、上記のような高い結合剤含有量を必要としない。例えば、結合剤含有量は、約1重量%とすることができ、体積百分率も大幅に減少する。溶融後、被覆層106は、高密度で、良好な接着性を有する。一例示的実施形態では、結合剤は、例えば気化や分解によって、照射プロセス中に被覆層106から実質的に完全に除去されることが意図されている。被覆層106において低濃度の結合剤を使用することにより、照射中の結合剤をより素早く且つより多く気化又は除去することが可能になる。絶縁層110における結合剤をより少なくすることにより、絶縁層110は熱伝導性を増し、それは金属被覆回路基板用途のような特定の実施形態では望ましい。回路層112における結合剤をより少なくすることにより、回路層112は導電性を増し、それは特定の用途では望ましい。結合剤材料を選択する際には、高いペースト品質、高い印刷膜接着性、照射後の被膜層106の膜品質(例えば、照射後の低濃度の残留炭素(炭化物))等の性質を有する結合剤が考慮される。一例示的実施形態では、結合剤の全て又は略全ては、電子ビーム114が照射され、少量の残留炭素が残り、これは削り取り又は他の処理技術によって除去されることができる。
【0041】
処理中、電子ビーム114の作用は、特定の被覆層106の材料の種類に基づいて変えることができる。例えば、この作用は、純金属前駆体を使用する場合と金属前駆体を使用する場合とで異なる。電子ビーム114の作用は、回路層112に対するものと絶縁層110に対するものとで異なる。一例示的実施形態では、純金属成分の場合、回路層112の後続の加工及び照射は、金属粒子が焼結するように、又は金属成分の内の少なくとも1つが溶融相になり、回路層112が融解して均質な金属相になるように、エネルギー密度及び露光時間を調整することによって制御することができる。幾つかの実施形態では、焼結と後続の溶融による二段プロセスが可能である。非金属成分(例えば、結合剤)は分離又は気化され、純金属層が残る。一例示的実施形態では、例えば絶縁層110内の金属酸化物等の金属前駆体の場合(しかしながら、幾つかの実施形態では、かかる金属前駆体は、回路層112を形成するために使用されてもよい)、絶縁層110の後続の加工及び照射は、絶縁層110への入熱によって間接的に、又は電子ビーム114の電子との金属前駆体の相互作用によって直接的に金属前駆体が化学的に還元されるように、エネルギー密度及び露光時間によって制御される。金属酸化物は、非導電性であるが熱伝導率の高い層を形成することができ、この層は、金属基板104によって画定されるヒートシンクと回路層112との間の絶縁層110にとって望ましい。絶縁層110の非金属成分(例えば、結合剤)は、分離又は気化させることができる。絶縁層110は、前駆体が電子ビーム114によって化学的に変化した時、酸化アルミニウム層等の均質な層に変化することができる。
【0042】
被覆層106内において電子ビーム114によって生成された熱エネルギーは、電子ビーム114のパラメータを調整することによって制御することができる。低い熱エネルギー及び長い照射時間では、被覆層106は、部分的に溶融されるだけで、下層構造体に結合されない。低い熱エネルギー及び長い照射時間では、被覆層106の粒子は、焼結されるだけで、完全には溶融されない。かかる状況では、被覆層106は、下層構造体に対して十分に接着せず、時間と共に機械的に容易に変位してしまう。低熱エネルギーではあるが短い照射時間では、被覆層106の一部は、例えば、照射によって材料を撥ね散らすことによって、電子ビーム114によって除去されてしまう。より高いエネルギーでは、大きな湿潤除去ドロップ(滴状部)と三次元アイランド(島状構造部)が残ってしまい、望ましくない。エネルギーが高過ぎる場合等の、更に高いエネルギーでは、基板104又は絶縁層110等の下層構造体は、回路層112に加えて溶融され、電気的界面が不良になる。電子ビーム114のエネルギーレベルは、下層構造体の良好な被覆を行いながら、下層構造体を過度に損傷することなく、被覆層106の溶融を達成するように制御されるべきである。
【0043】
使用中、被覆層106の粒子の吹き付け又はスパッタリングは、任意のエネルギーレベルで発生する可能性がある。金属粒子の吹き付けの効果は、幾つかの物理的効果によって説明される。すなわちa)運動量移行、b)静電効果、c)電気力学的効果、及びd)熱力学効果である。粒子の吹き付けを減少するために、過剰な電荷を接地へ「流出」させるために、粒子間の充填剤が少ないほど粒子間の導電路の数が多くなるため、非金属成分の量は減少又は最小化することができる。粒子の吹き付けを減少するために、被覆層106又は基板のその他の層は、実際の溶融前に、より低いビーム出力が要求されるように、予加熱することができる。例えば、被覆層106は、例えば、加熱炉、電子ビームの使用、又はその他の方法によって、被覆層106の融点未満の温度に予加熱することができる。照射プロセス中、被覆層106は、対応する被覆層106の融点より高い温度に更に加熱される。粒子の吹き付けを減少するために、粒子間の接触が機械的であるほど、より多くの導電路が形成される可能性があるだけでなく、粒子同士を相対的に移動させる力が大きくなるため、収支の吹き付けの効果を減少するために、より粒径の大きな材料の被覆層106を使用するか、不規則な(非球形の)形状の粒子を使用することができる。粒子の吹き付けを減少するために、例えば基板104を介して、熱伝導によって間接的に被覆層106の材料を加熱するように、走査すなわち照射パターンを選択することができる。粒子の吹き付けを減少するために、被覆層106の材料組成は、導電性及び熱伝導率を増すように、高い金属粒子密度や低い孔隙率を有することができる。
【0044】
電子ビーム114での照射中に基板104の帯電の可能性を回避するために、コーティング層106を接地することができる。電子ビーム114での照射中に基板104の帯電の可能性を回避するために、電子ビーム114は、電子照射を増加するように低加速電圧で動作されることができる。電子ビーム110の照射中に基板104の帯電の可能性を回避するために、光(例えば、UV又はレーザ)は、コーティング層106の光導電性を増加するように使用されることができる。電子ビーム114での照射中に基板104の帯電の可能性を回避するために、コーティング層106は、圧力を増大させて(例えば、アルゴン分圧)で処理されることができる。
【0045】
一例示的実施形態では、電子ビーム114によって生成される熱エネルギー量などの電子ビーム114の制御は、被覆層106に沿って変化させることができる。例えば、回路層112のある部分と比較して回路層112の他の部分に沿って電子ビーム114の作用を変えることにより、回路層112の特性を変化させることができる。例えば、電子ビーム114のパラメータの変化によって導電体パス又は回路に抵抗器を組み込むことができる。抵抗器の組み付け又は取付けが必要なくなる。更に、電子ビーム114の制御は、回路層112に沿って、絶縁層110と比べて変更することができる。
【0046】
図4は、電気部品100(
図1に示す)を形成するための他のプロセスを示す。図示の実施形態では、絶縁層110と回路層112は両方とも電子ビーム114による処理前に付着される。まず、電子ビーム114は絶縁層110を処理する。次に、回路層112が後の他の時に処理される。このようにして、電子ビームは、具体的には、例えば異なる動作パラメータ等によって(例えば、異なる出力レベル、異なる速度等)、1つの層をそして次に他の層を対象とするように制御されることができる。
【0047】
図5は、電気部品100(
図1に示す)を形成するための他のプロセスを示す。図示の実施形態では、まず、基板104上に絶縁層110が付着され、次に、電子ビーム114によって照射される。次に、処理された絶縁層上に回路層112が付着される。次に、回路層112には電子ビーム114が照射される。
【0048】
図6は、金属被覆回路基板等の電気部品を製造する方法200を示す。方法200は、外表面を有する基板を提供する工程202を含む。一例示的実施形態では、この基板は、電気部品のヒートシンクとして機能するアルミニウム基板等の金属基板である。
【0049】
方法200は、この基板の外表面上に絶縁層を塗布する工程204を含む。絶縁層は、ペースト又はインクとすることができる。絶縁層は、粉体でもよいし、その他の形態を有してもよい。絶縁層は、処理後にガラス又はセラミックに変化するガラス形成材料又はセラミック形成材料を含むことができる。絶縁層は、後のステップにおいて処理される金属酸化物又は金属塩等の前駆体を含むことができる。任意ではあるが、絶縁層は、絶縁層を基板に固定するための結合剤を含んでもよい。処理中に略全ての結合剤が除去される予定なので、結合剤濃度は低くすることができる。
【0050】
絶縁層は、基板上に絶縁層を印刷することによって塗布204されることができる。例えば、絶縁層は、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷することができる。絶縁層は、マイクロディスペンシング、スピンコーティング、ワイピング塗装、粉体コーティング、吹き付け、浸漬、液浸、又はその他の方法によって塗布されてもよい。絶縁層は、基板の外表面に直接塗布されることができる。或いは、それらの間にその他の層が設けられてもよい。
【0051】
方法200は、絶縁層上に回路層を塗布する工程206を含む。回路層はペースト又はインクとすることができる。回路層は、粉体でもよいし、その他の形態を有してもよい。回路層は、高濃度の金属粒子を含むことができる。回路層は、後のステップにおいて処理される金属酸化物又は金属塩などの前駆体を含むことができる。任意ではあるが、回路層は、回路層を絶縁層に固定するための結合剤を含んでもよい。処理中に略全ての結合剤が除去される予定なので、結合剤濃度は低くすることができる。
【0052】
回路層は、絶縁層上に回路層を印刷することによって塗布206されることができる。例えば、回路層は、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷されることができる。回路層は、マイクロディスペンシング、スピンコーティング、ワイピング塗装、粉体コーティング、吹き付け、浸漬、液浸、又はその他の方法によって塗布されてもよい。回路層は、絶縁層に直接塗布されることができる。或いは、それらの間にその他の層が設けられてもよい。
【0053】
任意ではあるが、被覆層を画定する絶縁層及び回路層は、電子ビームによって被覆層を処理するようなその他の処理ステップの前に予加熱することができる。被覆層は、被覆層の融点未満の温度に予加熱することができ、その後のその他の処理工程において、その温度は、被覆層の融点を上回る温度に上昇することができる。
【0054】
任意ではあるが、被覆層は、電子ビームによって被覆層を処理するようなその他の処理工程の前に、電気的に接地されてもよい。接地により、電子ビームによる処理中の被覆層のスパッタリングを減少することができる。
【0055】
方法200は、絶縁層を変化させるために電子ビームを絶縁層に照射する工程208を含む。電子ビームは、絶縁層内にスポット集束させることができる。電子ビームの照射により、金属基板と回路層との間には非導電性ではあるが熱を伝導する層を形成するために絶縁層を溶融するために絶縁層を加熱することができる。任意ではあるが、照射208は、回路層が絶縁層に塗布された後に行われてもよい。或いは、照射208は、絶縁層に回路層を塗布する工程206の前に行われてもよい。
【0056】
照射208により、絶縁層の結合剤及び非金属材料の略全てを気化させることができる。絶縁層は、絶縁層の非金属材料が完全に除去されるまで照射されることができる。照射プロセスは、厚み、組成、結合剤の濃度等の絶縁層の性質に基づき、例えば、電子ビームの動作パラメータを制御することによって制御することができる。任意ではあるが、絶縁層の異なる部分が、異なるように照射されてもよい。
【0057】
方法200は、電気部品の導電体を形成するために電子ビームを回路層に照射する工程210を含む。電子ビームは、回路層内にスポット集束させることができる。任意ではあるが、照射210は、例えば、両被覆層に電子ビームを放射するように照射源を制御すること等によって、絶縁層への照射208と同時に行われてもよい。両層には、同一の電子ビームが照射されることができる。電子ビームの照射により、導電体を形成するために回路層を溶融するために回路層を加熱することができる。任意ではあるが、例えば、回路層において金属前駆体が使用される場合、金属前駆体は、回路層を変化させるために照射中に電子ビームの電子と相互作用してもよい。電子ビームにより、導電体を形成するために金属前駆体を金属に化学的に還元することができる。
【0058】
照射210により、導電体を形成するために、回路層の結合剤又は非金属材料の略全てを気化させ、略純金属の層を残すことができる。回路層は、回路層の非金属材料が完全に除去されるまで照射されることができる。照射プロセスは、厚み、組成、結合剤の濃度等の回路層の性質に基づき、例えば、電子ビームの動作パラメータを制御することによって制御することができる。任意ではあるが、例えば導電体内に抵抗器を形成するために、回路層の異なる部分が異なる照射を受けるようにしてもよい。電気部品は、構造化した電気部品とすることができる。例えば、電気部品の層は、1つ以上の層において所定の性質を得るために、構造的に印刷し、電子ビームを照射することができる。電気部品は、平面構造体上に又は平面構造体を画定するように積層又は印刷することができる。電子ビームは、層状構造体の全ての部分又は選択された部分に照射されることができ、その結果、過剰に積層された/印刷された材料を除去することができる。
【0059】
方法は、LEDモジュールを回路層に結合する工程212を含む。LEDモジュールは、回路層に半田付けすることができる。LEDモジュールからの熱は、基板によって放散される。絶縁層は、絶縁層を通って基板に効率的に熱を伝えることができるように、高い熱伝導率を有する。
【0060】
電子ビーム114によって絶縁層110及び回路層112を処理する本明細書に記述された方法により、金属基板上に高品質の層状構造体が得られる。絶縁層110は、回路層からの熱を基板104のヒートシンクに放散するために、非導電性且つ高い熱伝導率を有する。この方法は、湿式化学を用いず、環境への影響を小さくして行うことができる。電気部品を製造するための金属の消費量は、他の製造技術と比較して減少することができる。この方法により、被覆層106の高い選択性及び正確な配置が達成される。被覆層106及び電気部品は、素早く処理することができ、連続的なリールツーリールシステム又は断続的なバッチシステムの一部として処理することができる。処理された回路層112によって画定される導電体により、標準的な手順と比べて向上した性質が提供される。例えば、導電体は、増大した導電性、増大した熱伝導率、より良い耐摩耗性、より良い耐腐食性、増大した硬度等を有することができる。処理された絶縁層110によって画定された絶縁層は、標準的な手順と比べて向上した性質を提供する。例えば、絶縁層は、より低い濃度の結合剤を有することができ、それにより、絶縁層の熱伝導率を増大することができる。
【0061】
当然のことながら、上記の記述は、一例であって、制限的なものではない。例えば、上述の実施形態(やその態様)は、互いに組み合わせて用いられることができる。更に、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況又は材料を適応させるために、多くの変形を行うことができる。本書に記述された寸法、材料の種類、様々な部品の向き、及び様々な部品の個数及び位置は、特定の実施形態のパラメータを定義するものであって、制限するものではなく、例示的な実施形態に過ぎない。請求項の精神及び範囲内の多くのその他の実施形態及び変形は、上記の記述を再検討すれば、当業者には明らかである。
【国際調査報告】