特表2015-532779(P2015-532779A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-532779高精細導電性パターンのフレキソ印刷向けのインク組成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532779(P2015-532779A)
(43)【公表日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】高精細導電性パターンのフレキソ印刷向けのインク組成
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20151016BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20151016BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20151016BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   H05K3/18 E
   C09D11/52
   H05K3/12 630Z
   H01B13/00 503D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-525417(P2015-525417)
(86)(22)【出願日】2013年3月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】US2013030617
(87)【国際公開番号】WO2014021941
(87)【国際公開日】20140206
(31)【優先権主張番号】61/677,058
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】507385800
【氏名又は名称】ユニピクセル ディスプレイズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ダンリン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン,エド エス.
【テーマコード(参考)】
4J039
5E343
5G323
【Fターム(参考)】
4J039BC20
4J039BC59
4J039BE12
4J039BE25
4J039BE27
4J039BE29
4J039EA05
4J039EA24
4J039GA09
5E343AA03
5E343AA12
5E343AA34
5E343BB13
5E343BB16
5E343BB22
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB44
5E343BB76
5E343DD02
5E343DD33
5E343ER04
5E343ER43
5E343FF02
5E343GG08
5G323CA05
(57)【要約】
本願で述べる装置と方法は、微細な高精細導電性パターン(HRCP)のフレキソ印刷を対象とするものである。このようなHRCPは、フレキソ印刷の過程で用いる高極性で安定した粘性を持つインクを得ることのできる一種類以上の組成を利用して印刷することができる。インクは水浸透性とUV硬化性を持つものとし、水や大気中の水分にさらされても完全性の喪失に耐えるように作ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精細導電性パターンをフレキソ印刷で製造する方法であって、
複数の線を含みその複数の線を構成する各線の幅が1ミクロンから25ミクロンの間である最初のパターンを、水に相溶性のあるポリマーとめっき触媒とを含むインクを用いて基板にフレキソ印刷で印刷し、
印刷されたパターンを少なくとも半凝固させることで最初のパターンを硬化させ、
最初のパターンをめっきして導電性パターンを形成する方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、高極性のポリマーが、ビスフェノールAジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、メタクリル酸ヒドロキシエチルモノマー、ペンタエリスリトールテトラアクリラートのうち少なくとも一つを含むもの。
【請求項3】
請求項1の方法であって、インクはさらに光開始剤を含み、その光開始剤は、1−ヒドロキシシクロエチルフェニルケトン、2,2−ジメチル−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アセトフェノン、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸のナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン/1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの等量混合物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4−ベンゾイルビフェニル、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−クロロ−チオキサンテン−9−オン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロリン酸、ジンベンゾスベレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンジル、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの等量混合物、4’−エトキシアセトフェノン、2−エチルアントラキノン、フェロセン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、ベンゾイルぎ酸メチル、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’−フェノキシアセトフェノン、チオキサンテン−9−オンのうち少なくとも一つを含むもの。
【請求項4】
請求項1の方法であって、めっき触媒が、酢酸パラジウム、2,4−ペンタンジオナトパラジウム、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、エルビウム(Er)とそれらの組み合わせであるもの。
【請求項5】
請求項1の方法であって、めっき触媒が複数のナノ粒子を含み、その複数のナノ粒子を構成する各ナノ粒子が10nmから5ミクロンの間であるもの。
【請求項6】
請求項1の方法であって、インクがさらに複数のナノ繊維を含むもの。
【請求項7】
請求項6の方法であって、複数のナノ繊維を構成する各ナノ繊維の直径が少なくとも20nmから200nmであり、長さが少なくとも2ミクロンから10ミクロンであるもの。
【請求項8】
請求項1の方法であって、インクが、ビスフェノールAジアクリラート5重量%から80重量%、ポリエチレングリコールジアクリラート10重量%から80重量%、メタクリル酸ヒドロキシエチル5重量%から50重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリラート5重量%から50重量%、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1重量%から10重量%、2,2−ジメチル−1,2−ジフェニルエタン−1−オン1重量%から10重量%、酢酸パラジウム0.1重量%から20重量%を含むもの。
【請求項9】
請求項1の方法であって、最初のパターンを基板の第一面に印刷し、さらに基板の第一面とは反対側の面か、基板の第一面の最初のパターンの隣か、別の基板の少なくともいずれかに二番目のパターンを印刷するもの。
【請求項10】
請求項1の方法であって、めっきが、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、金(Au)、銀(Ag)、エルビウム(Er)かそれらの組み合わせのうち、少なくとも一つを用いた無電解めっきであるもの。
【請求項11】
高精細導電性パターンをフレキソ印刷によって製造する方法であって、
複数の線を含みその複数の線を構成する各線の幅が1ミクロンから25ミクロンであるパターンを、水に相溶性のあるポリマーとめっき触媒とを含むインクを用いて基板にフレキソ印刷で印刷し、
印刷されたパターンを少なくとも半凝固させることでパターンを硬化させ、
印刷されたパターンをめっきして高精細導電性パターンを形成する方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、その高精細導電性パターンは、タッチスクリーンセンサーのパターンか、RFアンテナのパターンの一方であるもの。
【請求項13】
請求項11の方法であって、高極性ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)、N−メチル−4−(4’−ホルミルスチリル)ピリジニウムメトスルファートアセタール溶液の一方であるもの。
【請求項14】
請求項11の方法であって、めっき触媒が酢酸パラジウムを含むもの。
【請求項15】
請求項11の方法であって、めっき触媒が、パラジウムか第VII族の金属いずれかの有機金属塩を含むもの。
【請求項16】
高精細導電性パターンをフレキソ印刷によって製造する方法であって、
複数の線を含みその複数の線の各線の幅が1ミクロンから25ミクロンの間である少なくとも一つのパターンを、少なくとも一つのポリマーと、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を含む少なくとも一つのめっき触媒とを含むインクを用いて基板に印刷し、
印刷されたパターンを少なくとも半凝固させる過程を含む硬化によって、印刷された少なくとも一つのパターンを硬化させ、
この少なくとも一つのパターンをめっきすることで導電性パターンを形成する方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、重合触媒が、トリメチロールプロパントリアクリラート、2,2’−(メチルアミノ)ジエタノールベンゾフェノン、ベンゾフェノンのうち少なくとも一つであるもの。
【請求項18】
請求項16の方法であって、インクが、10重量%から20重量%のトリメチロールプロパントリアクリラート、5重量%から10重量%の2,2’−(メチルイミノ)ジエタノールベンゾフェノン、1重量%から5重量%のベンゾフェノンを含む複数の重合触媒を含むもの。
【請求項19】
請求項16の方法であって、高精細導電性パターンが、タッチスクリーンセンサーパターンかRFアンテナパターンの少なくとも一方であるもの。
【請求項20】
請求項16の方法であって、インクの粘性が少なくとも50cpsから10000cpsであるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年7月30日に出願した米国仮特許出願第61/677,058号に基づく優先権を主張するとともに、ここで参照により援用する。
【0002】
本発明は一般的に印刷された電子装置に関するものであり、特に、タッチスクリーンディスプレイやアンテナなどの電子装置の製造において役立ちうるインク組成に関するものである。
【背景技術】
【0003】
透明な薄いフィルムアンテナを製造する従来の方法は銅/銀の導体ペーストと厚膜フィルムを使用するスクリーン印刷を用いているが、結果的に幅が広くて(>100μm)高さが高い(>10μm)の線ができる。より薄くより狭い特徴部位にはフォトリソグラフィやエッチングの方法が利用されている。高精細の導電性パターンを含む様々な電子デバイスやこれに関連する目的で利用されるようなより小さくてより高い解像度のパターンの印刷をすることは、この方法では不可能なことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許20060134442号
【特許文献2】米国特許4830880号
【特許文献3】国際公開第1995/032318号
【特許文献4】米国特許第5424009号
【特許文献5】米国特許第6719422号
【特許文献6】米国特許第20050153078号
【特許文献7】米国特許第20090181227号
【発明の概要】
【0005】
ひとつの実施例として、高精細導電性パターンをフレキソ印刷で製造する方法であって、複数の線を含みその複数の線を構成する各線の幅が1ミクロンから25ミクロンの間である最初のパターンを、水に相溶性のあるポリマーとめっき触媒とを含むインクを用いて基板にフレキソ印刷で印刷し、印刷されたパターンを少なくとも半凝固させることで最初のパターンを硬化させ、最初のパターンをめっきして導電性パターンを形成する方法。
【0006】
別の実施例として、高精細導電性パターンをフレキソ印刷によって製造する方法であって、複数の線を含みその複数の線の各線の幅が1ミクロンから25ミクロンの間である一つのパターンを、水に相溶性のあるポリマーとめっき触媒とを含むインクを用いて基板に印刷することを含む。この実施例はさらに、印刷されたパターンを少なくとも半凝固させる硬化によって、印刷されたパターンを硬化させ、このパターンをめっきすることで導電性パターンを形成することを含む。
【0007】
別の実施例として、高精細導電性パターンをフレキソ印刷によって製造する方法であって、複数の線を含みその複数の線の各線の幅が1ミクロンから25ミクロンの間である少なくとも一つのパターンを、少なくとも一つのポリマーと、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を含む少なくとも一つのめっき触媒とを含むインクを用いて基板に印刷することを含む。この実施例はさらに、印刷されたパターンを少なくとも半凝固させる過程を含む硬化によって、印刷された少なくとも一つのパターンを硬化させ、この少なくとも一つのパターンをめっきすることで導電性パターンを形成することを含む。
【0008】
さらなる特徴と特色は、次の説明と添付の図面の考察から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の例示的な実施例を詳細に説明するため、ここで添付の図面を参照する。
図1A-1C】図1A〜1Cは、本発明の実施例に沿った様々な粘性を持ったインクが作るパターンの断面の説明図である。
図2図2は、本発明を行う実施例のための装置の説明図である。
図3図3は、本発明を行う実施例のための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
米国特許20060134442号『Method for electroless plating』、米国特許4830880号『Formation of catalytic metal nuclei for electroless plating』、国際公開1995/032318号『CATALYTIC, CROSSLINKED POLYMERIC FILMS FOR ELECTROLESS DEPOSITION OF METAL』、米国特許5424009号『Catalytic, cross-linked polymeric films for electroless deposition of metal』、米国特許6719422号『Curable inkjet printable ink compositions』、米国特許20050153078号『Formation of solid layers on substrates』、米国特許20090181227号『Formation of Conductive Metal Regions on Substrates』の内容は、本発明に関連する可能性がある。
【0011】
高精細パターン(High Resolution Pattern, HRP)は、導電性や非導電性の材料を基板表面にパターン形成したり、付着させたり、印刷したりしたものである。したがって、高精細導電性パターン(High Resolution Conducting Pattern, HRP)は、ここで述べているように導電性の材料を基板表面にパターン形成したものである。HRCPは、フレキソ印刷法を用いることで大量に製造することができる。フレキソ印刷は、輪転式のウェブ凸版印刷の一形態であり、凸版が印刷シリンダーに例えば両面接着剤をもって取り付けられる。この凸版は、マスター版又はフレキソ印刷版と呼ぶこともでき、速乾性のある粘性の低い溶媒と、アニロックスなどの二つのロールを備えたインク供給システムからのインク供給とともに使用してもよい。アニロックスロールは、インクの量を計量、制御しながら印刷版に供給するのに使われるシリンダーとしてもよい。インクは、例えば、水性、溶剤型、無溶剤のいずれかの紫外線硬化性インクとすることができる。ひとつの例として、最初のローラーでインクパンや計量装置から計量ローラーやアニロックスロールへインクを移す。インクが最終的に基板へ移る際に均一に広がるようにするために、インクをアニロックスロールから版胴へ移すときに均一の濃さになるよう計量する。基板がロール・ツー・ロール搬送システムを通して版胴から圧胴へ基板が動くと、圧胴が版胴に圧力をかけ、凸版から基板に画像が転写される。実施例によっては、版胴の代わりにファウンテンロールがあってもよく、ロールの全長にわたるインクの広がり方を改良するのにドクターブレードを用いることもできる。
【0012】
フレキソ印刷版は、例えば、プラスチック、ゴム、感光性樹脂(紫外線感受性ポリマーと呼ぶこともある)のいずれかで作ることができる。印刷版は、レーザー彫刻、写真製版、光化学的方法のいずれによって作ってもよい。印刷版は、購入してもよいし、公知の任意の方法に従って作製してもよい。望ましいフレキソ印刷の過程は、印刷部をひとつ以上積み重ねたスタックをプレス機のフレームの両側に縦向きに配置し、各スタックに各自一種類のインクを用いて印刷する版胴を持たせたスタック型として構成することができる。このような構成とすることによって、基板の片面にも両面にも印刷できるようになる。別の実施例として、プレス機のフレームに取り付けられた単独の圧胴を用いる中心圧胴式を利用することもできる。基板はプレス機に入っていくにつれて圧胴と接触し、適切なパターンが印刷される。別の方法として、複数の印刷部を水平な線上に配置して共通の軸で駆動するインライン型のフレキソ印刷の過程を利用することもできる。この例では、印刷設備に、硬化設備や切断機や折り畳み機などの印刷後処理設備を連結することもできる。他の形態のフレキソ印刷過程も利用することができる。
【0013】
ひとつの実施例として、フレキソ版の筒体を、例えば円筒(in-the-round,ITR)画像形成法によって用いることもできる。従来型の版胴と呼ぶことのできる、上で述べたような平面状の印刷版を印刷胴に取り付ける方法とは対照的に、ITR法では、感光性樹脂版の材料はプレス機に積まれることになっている筒体上で加工される。フレキソ版の筒体は、レーザーアブレーションマスクのコーティングを表面に施した感光性樹脂製の継ぎ目のない筒体とすることができる。別の例として、感光性樹脂からなる個々の断片をテープで基材となる筒体に取り付け、その後、上で述べたレーザーアブレーションマスク付きの筒体と同じように画像形成し処理することもできる。フレキソ版の筒体は、例えば、画像形成された平面状の印刷版を表面に取り付けるための支持ロールとして、又は画像が直接彫り込まれた筒体の表面(ITR)としてなど、いくつかの方法で利用することができる。筒体が単に支持ロールとしての役割を果たす例では、画像をエッチングした印刷版をその筒体に取り付け、その筒体を次に印刷設備のシリンダーに取り付けることもできる。この事前に取り付けた印刷版を用いると、筒体をすでに筒体に組み込んだ印刷版とともに格納することができるため、交換の時間を減らすことができる。筒体は、熱可塑性の複合材料、熱硬化性の複合材料、ニッケルなどの様々な材料で作られるが、ひびや割れに耐えられるよう繊維で強化してもよいし、しなくてもよい。かなり高い品質の印刷には、発泡体やクッション材からなる基材を包含する、長期にわたって再利用可能な筒体が用いられる。実施例によっては、発泡体やクッション材を持たない使い捨ての「薄い」筒体を使うこともできる。フレキソ印刷の過程はアニロックスロールをインク計量の手段としてインク移動に利用することで、ダマやこすれのない、鮮明で均一な特徴部を持つ目的のパターンをインクで印刷することができる。
【0014】
ここで用いる場合のパターン材料は、幅、すなわち基板表面の平面における横方向の寸法が約50μm未満である。HRPは、導電性材料でめっきされていなくても、実施例によってはHRCPであるとして説明できるものと理解されたい。これは、導電性材料でめっきされる可能性があるため、あるいはパターンの目的の特性を得るのにめっきが必要ないかもしれないためである。このため、ここでの一つ以上の設備は、無電解めっき過程の効率を上げられるように構成することもできる。実施例によっては、インクの浸透性を上げると、パターンを成すインク中の物質粒子とめっき溶液中に存在する金属イオンとのの、反応に使える表面積などの相互作用の大きさが上昇しうる。このように相互作用の程度が上昇すると、めっき過程の速度、均質性、質の一つ以上が改善しうる。これは、添加剤を用いてインクの浸透性を高めることで行うことができる。用途によっては、市販のインク組成物を用いた印刷パターン内の触媒添加剤から解離した金属粒子どうしの相互作用は、表面や基板に限られる。より具体的に言えば、めっき過程において解離した金属イオンは、水性のめっき溶液と接触している表面に限られる。このため、本願のインク組成は、例えば水への相溶性が高いポリマーか水溶性のポリマー(「親水性」や「高極性」と呼ぶこともできる)を使うなど、添加物を含有させることで、インクの水への浸透性を高めるように作っている。
【0015】
加えて、印刷過程を通して粘性のばらつきを減らすことによって、より高品質で又はより高精細で、より長く連続した生産を行うことができ、さらにはその分だけ操作者の見過ごしや監視や管理を減らすことができる。ここで用いている粘性とは、流れに対する流体の内部抵抗を指すことができる。また、ここで用いている粘性という用語は、せん断力、引張力、あるいはその両方による変形に対する抵抗の尺度である。幅1ミクロンから30ミクロンの線を含む微細なパターンを形成するフレキソ印刷などの印刷過程で用いるインクの粘性は、パターンが確実に正確に印刷できて、印刷工程からその次の硬化などの工程(解離させる目的や後続の処理に向けてパターンを固化させる目的で行うもの)までの間(どんなに短時間でも)自身の形状を維持できるように調節する。
【0016】
「印刷過程」という用語は、基板の少なくとも一箇所の表面に任意の種類のインクを適用されるどんな過程も示すのに用いることができる。同様に、フレキソ印刷過程という言葉によって、シリンダー上の柔軟性のある凸版を用いて基板にインクを付着させる印刷過程ならばいかなるものも指す。実施例によっては、凸版をマスター版と呼び、任意の基板への印刷に使われる所定のパターンを保持するいかなるロールを指すこともある。場合によっては、マスター版はアニロックスロールと呼ぶこともできる。アニロックスロールは、インクを計量して印刷版に供給するのに使われるシリンダーとしてもよい。あるいは、フレキソ版にインクを移すのに使われる表面に窪みがあったりパターンを持つローラーならどれでもよい。そのフレキソ版は、フレキソ印刷のための凹部かくぼみを外周面に持つ概して円柱形の金属、ポリマー、複合材料でできたドラムとしてもよい。インクをフレキソ版に移すのに使われる、アニロックスロール上の凹部やくぼみのパターンがどのようなものであるかにかかわらず、アニロックスパターンではなくフレキソ版パターンが基板に移されることは理解できよう。
【0017】
ここで扱っているインクは、モノマー、オリゴマー、ポリマーと金属元素、金属錯体、有機金属との混合物であって、基板表面に離散的に塗布することのできる固体あるいは液体状態のものである。また、ここで用いているインクという用語は、ある印刷過程、例えば、フレキソ印刷の過程において使う表面か基板に付着させることのできるいかなる材料を指すこともある。インクは液体状態であれば、例えば、混合体、懸濁液、コロイドなど、制限はない。場合によっては、インクは表面に付着した固体や液体を指すこともある。
【0018】
本発明は、微細な印刷パターンを使う電子装置を例えばフレキソ印刷法などで印刷する際に利用する多種のインク組成を包含している。この組成は、印刷とめっきの均一性に寄与する性質を持ったものとする。より具体的に言えば、ここで述べる組成は、従来のインクと比べて、印字(パターンの印刷)の際に呈する水への浸透性の程度を改良したものとすることができる。ひとつの実施例として、ここで扱っているインクは、従来のインクと比べて、動作条件で呈する粘性の経時変化がより小さいものとすることができる。浸透性という用語は、ある材料について、他の液体がその材料に浸透したり通り抜けたりすることができる性質を指している。例えば、個体の物質や印刷された物質、又は基板上に印刷されて硬化した材料に液体物質を通す能力のことである。時間の短縮や質の向上、無電解めっきなどの過程の均一性など、これらに限らないが、処理をしやすくするには浸透性を増加させることが求められる。ここで述べるインクは、高精細パターン(1ミクロン〜30ミクロン)を求められる柔軟性のある電子部品などに応用できるフレキソ印刷において使うことができる。インクは、少なくとも一つの触媒に少なくとも一つのモノマー、ポリマーかオリゴマーと任意の添加剤を混ぜた混合物とする。添加剤という用語は、インクの様々な性質を変えるか変えないかにかかわらず、インクの任意の化学成分を指すこともある。
【0019】
一般に、インクは、限定しないが例えばフレキソ印刷などの多くの印刷法を用いて基板に付着させることができる。付着したインクは、複数の線を含むパターンを形成する。印刷パターンは、めっき触媒の少なくとも一部が解離して金属粒子になるよう、一つ以上の硬化設備において一つ以上の段階を経て硬化を受ける。ここでいう硬化は、以前に基板に付着させた塗膜ないしインク面を乾燥、凝固、定着させる過程のいずれかを指す。硬化は、インクなどの材料の少なくとも1種類の物理的、化学的な性質を変化させるよう、光か熱、あるいはその両方を利用して行うことができる。さらに、硬化は、光を照射している液体中における化学的又は物理的な変化の過程を含むことができる。
【0020】
ひとつの実施例として、インクのめっき触媒は、濃度を0.1重量%から25重量%とし、0.5重量%から10重量%が好ましい。ひとつの実施例として、印刷する線が大きいほど、必要な触媒の割合が小さくなる、又は使う触媒の割合を小さくする。めっき過程は、同じ濃度においては、線が小さいほどゆっくり起こる。これは、より太い線のめっきは、表面積が増加することに起因して速くなるからである。ここで開示しているインクは、例えば高極性ポリマー塩基などのポリマー塩基だけでなく、多くの添加剤を含むこともある。ここでいう「高極性」はそのポリマー塩基がもつ親水性の性質を指している。インクは、例えばモノマー、ポリマー、オリゴマーなどの添加剤に加え、少なくとも一種類のめっき触媒を含む。実施例によっては、光開始剤を用いることもできる。いくつかの例では、ポリマーは、インクの浸透性を上げる水と相溶性のあるポリマーである重合体のことであり、これは高極性ポリマーと呼ぶこともできる。実施例によっては、めっきと粘性に影響を与えるため、追加的な添加剤なしで高極性ポリマーを用いることもできる。実施例によっては、インク中のポリマー系が光開始剤を必要としないこともある。
【0021】
ある実施例で光開始剤を使う場合、その光開始剤は、アセトフェノン、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸のナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの等量混合物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4−ベンゾイルビフェニル、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−クロロチオキサンテン−9−オン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロリン酸、ジベンゾスベレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンジル、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの等量混合物、4’−エトキシアセトフェノン、2−エチルアントラキノン、フェロセン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、ベンゾイルぎ酸メチル、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’−フェノキシアセトフェノン、チオキサンテン−9−オンのいずれか、あるいはこれらの組み合わせとする。
【0022】
めっき水溶液に接触する表面積を増やすため、インクに添加剤を使ってインクの水への透過性を大きくすることができる。インクの透過性を変えて制御すれば、印刷パターン中における触媒の解離によって生じる金属と、無電解めっき過程における金属イオンとの間の相互作用を調節、改善できることもある。こうすることで従来のインクと比べてパターンをより均一にめっきすることができ、場合によっては費用を削減したり、時間枠を縮めたりすることもできる。また、透過性を制御することによって、フレキソ印刷過程の間に、基板に配置されたインクが溶解したり、洗い流されたり、はがれたりするのを制限できることもある。こうすることで、印刷パターンの最終用途によって要求されるかもしれない寿命を延ばすことができる可能性がある。製造過程の一部が別の場所や別の時間に行われるようなより大きいシステムや装置に印刷された部品を使う場合は、寿命が延びることは好ましい。これは、印刷された部品が、保管や搬送の間、寸法の欠陥がない状態を維持できるからである。
【0023】
めっき触媒は、例えば無電解めっきに用いるような無電解めっき溶液に配合されている還元体の酸化を促進する能力を持つものとすることができる。多くの金属は、無電解めっきに用いられてきたすべての還元剤の酸化反応にとってよい触媒になると考えられうる。一つの例として、パラジウム(Pd)は十分な触媒であると考えられる。パラジウムは、例えば金属そのものかテトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)のような、0価状態の金属の形で使うことができる。加えて、UV感光か熱処理の後に還元されうる、例えば塩化第一スズ−塩化パラジウムか、酢酸パラジウム(II)、2,4−ペンタンジオナトパラジウムのようなパラジウム有機化合物などの、パラジウムの酸化還元系が使われる。さらに、実施例によっては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、エルビウム(Er)のいずれかあるいはこれらの組み合わせも、いくつかの無電解めっき系の触媒として使える。
【0024】
ひとつの実施例として、粘性を高めたり制御したりするために、多くのナノ繊維、例えばシリコンのナノ繊維かナノ粒子をインクに加えることができる。印刷中に制御を維持するためだけでなく、印刷からめっきまでの間に印刷パターンが自身の形や大きさを確実に維持できるようにするために、インクの粘性を制御するか調整することもできる。ひとつの実施例として、複数のナノ繊維やナノ粒子で、インク組成の0.5重量%から25重量%を構成することもできる。この時間の空白が比較的短くても、微細な形状(1ミクロンの大きさの場合もある)を維持して後のめっきの際に定位置に正確に硬化させることができるようにするために、より粘性の高いインクが求められることもある。「極性」という用語は、特定のインク、又はインクの化学成分、又は添加剤の水への透過性や水との相互作用を表現するのに用いることもある。一般的に、フレキソ印刷過程向けの市販のインクは、極性が低く、疎水性とみなすことができる。概して、疎水性インクは、無電解めっき法に関わる手法など水性の環境では少ししか相互作用しない。場合によっては、親水性インクの利用が好ましい。親水性インクとはつまり、浸透性を高め、めっき溶液槽との相互作用で使える表面積を増やすことができるような高極性や親水性の性質を持つインクのことである。
【0025】
概して、ここで述べているインクは、一つの例として、以下から選ばれた化学成分を組み合わせた組成を持つ。ビスフェノールAジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、メタクリル酸ヒドロキシエチル単量体、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、光開始剤として例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメチル−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、触媒として例えば、酢酸パラジウム。組成によっては、本願の組成の、上記の化学成分の各濃度は、約0.1重量パーセント(重量%)から約70重%、あるいは、約3重量%から50重量%、他の例では、約3重量%から約40重量%とする。さらなる組成として、各化学成分は、約3.5重量%より大きい濃度とすることもできる。別の組成として、あるインクの組成において、各化学成分の濃度は30重量%より小さくする。さらに、ひとつの実施例として、少なくとも一つの化学成分を除く(すなわち0重量%の濃度にする)こともできる。
【0026】
1ミクロンから25ミクロンの線を複数含むフレキソ印刷パターンに用いるインクの他の組成としては、これらに限定しないが、ポリ(ビニルアルコール)、N−メチル−4−(4’−ホルミルスチリル)ピリジニウムメトスルファートアセタール溶液、ポリビニルピロリドン、酢酸パラジウム、1−メトキシ−2−プロパノールから選んだ化学成分の組み合わせとする。組成によっては、本願の組成の各化学成分の濃度は約0.1重量パーセント(重量%)から約70重量%の間、あるいは約1重量%から約70重量%、あるいは約2重量%から約69重量%の間とする。さらなる組成として、各化学成分は約2重量%より大きい濃度とすることもできる。別の組成として、インク組成中での各化学成分の濃度は、70重量%より小さくする。さらに、ひとつの組成として、少なくとも一つの化学成分を除く(すなわち濃度を0重量%にする)こともできる。加えて、いくつかの組成では、いずれの化学成分も、固形物濃度や固体の含有量を約30重量%より小さく、あるいは約25重量%より小さく、場合によっては固体の含有量を約15重量%より小さくすることもできる。
【0027】
また、ひとつの組成として、これに限定するわけではないが、化学成分自体を別の組成にしたり、化学成分を別のものではあるが同様か類似のものにしたりすることもできる。非限定的な例となる組成としては、酢酸パラジウムは、いずれかの他の有機金属化合物、塩や、これに限定するわけではないが、シュウ酸パラジウムなどのパラジウム化合物に代えることができる。さらに、有機金属塩は、第VIII族のいずれの金属の塩に代えることもできる。また、インクのアクリラート組成物は、限定はしないが、さまざまな化学構造、分岐、側鎖を持ったものとすることができる。
【0028】
図1A〜1Cは様々な粘性を持つインクが作るパターンの断面を示す。上で述べたように、高精細の導電性微細パターンを用いるRFアンテナ、タッチスクリーンセンサーなどの用途に利用される複数の線からなるパターンを基板に印刷できる。このパターンを印刷するのに使うインクは、従来のインクと比較して浸透性が高くてもよい。ひとつの実施例として、浸透性を調節する添加剤が過剰だったり、粘性を調節する添加剤を欠いたり不十分だったりすると、パターンの印刷形状に影響を及ぼす可能性がある。印刷の際、インクに形状を維持するだけの十分な粘性がなければ、浸透性を上げるのに用いる化学成分が過剰だったり粘性を上げる化学成分が不足していたりすることが原因となって、パターンが硬化に先立って広がったり、そうでなくても変形したりしてしまうかもしれない。
【0029】
図1Aは、基板106に配置された印刷パターンの複数の線から取り出した、望ましい断面102と実際の線の断面104aを示している。この基板は、例えばセルローストリアセテート、アクリル系、あるいはこれらに似たポリマーなどの光学的等方性のある透過フィルムや、紙、ガラス、セラミック、金属などの材料でできた目的や処理に適する基板である。この図は、インクに自身の形状を維持するのに十分な粘性がないときに何が起こるかも説明することができる。インクが自身の形状を維持できなければ、特定の装置向けのHRCPが望ましい形状を保持できず、それゆえ最終用途に適合しなくなるかもしれないということは認識できよう。こうなると再加工ができない廃棄物が生じるため、ロール・ツー・ロール過程でのスクラップにかかる時間と費用が増大する。インクの粘性があまりにも低いという理由でインクが自身の形状を維持できないこともある。粘性が低いのは、インクの浸透性が高いことに起因する場合もあれば、組成に含まれているほかの要因のための場合もある。粘性は、以下で説明するように、ナノ繊維とナノ粒子の両方又はいずれかを添加することで、変更又は増加させることができる。実施例によっては、インク中に用いる複数のナノ粒子の大きさは、目的の線幅や形状によって、10nmから5ミクロンとしたり、それより大きくしたりすることができる。ナノ粒子の原料は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、セシウム(Ce)、アルミニウム(Al)などの酸化物を含む。ひとつの実施例として、複数のナノ繊維中の各ナノ繊維は、直径20nmから200nm、長さ少なくとも2ミクロンから10ミクロンとすることができ、複数のナノ粒子中の各ナノ粒子は、直径20nmから200nmとすることができる。ナノ繊維の直径と長さやナノ粒子の直径が印刷パターンの線の幅よりも小さいことは認識できよう。
【0030】
実施例によっては、ナノ粒子として、例えば酸化セリウム(セリア)、シリカ、酸化スズ、酸化イットリウム(イットリア)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ジルコニア)のコロイド粒子など、コロイド形態の酸化物を利用することができる。ひとつの実施例として、ナノ粒子やコロイドや繊維の添加によって、粘性を変え、インクの印刷特性を調節できるようになる。このように添加することは、基板への銅めっきの密着強度を改善するのにも役立つ。これらの形態の酸化物は、有機金属パラジウム(Pd)か、Pd化合物の水性の溶液に混合することができる。別の実施例として、後に図1Cで述べるように、求められる粘性と完全に形成されたパターンを実現するために、水和形態の触媒のための増粘剤としてPVA(ポリビニルアルコール)を用いることが可能である。
【0031】
図1Bは、基板106上に配置された印刷パターンの複数の線から取り出した、一つの線の望ましい断面102と、実際の線の断面104bを示す。断面104bを印刷するのに用いたインクは、ナノ繊維かナノ粒子をいくらか含んでいるか、あるいは水に溶けやすい添加剤を含んではいるが図1Aのときほどは溶けやすくないかインク中の含有量が少ない可能性がある。しかしながら、望んだパターンを形成するのに十分な量を含んでいない可能性がある。図1Cは、基板106に配置された印刷パターンの複数の線から取り出した一本の線の望ましい断面102と実際の線の断面104cを示す。説明のためではあるが、図1Cは、ナノ繊維、ナノ粒子、PVAなどの増粘添加剤によるか、又は、透水性の主成分か添加剤によるか、又はその両方により調節されるかどうか、粘性の影響を示す意図がある。図1Cは、どのようにして望ましい断面102内を正確にインクで満たせるかを描写している。図1A〜1Cに示している断面は形が長方形であるが、正方形、多角形、円、台形、三角形かそれらの組み合わせなど、他の形の断面が必要になる場合もあるということは十分理解できよう。この例では、104cの断面の線で示したパターンを印刷するのに使ったインクは、ナノ繊維とナノ粒子の両方又は一方を、インクを望んだ形状で印刷できるような重量パーセントで含んでいる。別の例としては、用いたポリマーの極性がナノ繊維とナノ粒子の両方又はいずれかを用いなくても又はその量を減らしても望んだ浸透性を得ることができるほど十分に高い可能性があり、図1Cの処理パラメーターや設定に従って印刷後の求められるパターンの形を望みの時間のあいだ保持することができる可能性がある。どちらの例であっても、断面は、望ましい断面102で示した完全に目的の仕様通りに形成される。
【0032】
図2は、本発明の実施例を実行するためのシステムの説明図である。図3は、本発明の実施例を実行するための方法のフローチャートである。図2は、タッチスクリーンセンサーやRFアンテナなどの様々な目的で使うことのできる高精細導電性パターンを組み立てるのに用いるロール・ツー・ロール移送法200を図示している。ひとつの実施例として、細長く弾力性のある、薄い基板106を巻き出しロール202に配置しておく。基板106には、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリエステル、ポリカーボネートなどの透明な基板を使うことができる。基板106の厚さは、タッチセンサーが曲がったときに過剰な応力がかかるのを避けられる程度に薄くすることもできる。反対に、基板106の厚さは、製造過程の間、層や材料の特性の連続性を脅かすほど小さくするべきではない。好ましくは、1ミクロンから1ミリメートルの間の厚さが適切なこともある。巻き出しロール202から例えば何らかの公知のロール・ツー・ロール移送法を用いて基板106を送り、ブロック302の掃除を行う。ブロック302の洗浄は、一つ以上の洗浄設備を用いることができる。実施例によっては最初の洗浄設備204を単独で用いることもできるが、別の実施例として二番目の洗浄設備208を用いることもできる。ロール・ツー・ロール過程に対する基板106の向きの矯正を実行することもできる。基板の向きは、印刷パターンの位置、寸法、品質に影響を及ぼすかもしれないためである。最終製品が印刷基板であるか、以下に述べるようなさらに加工される製品であるかに関わらず、印刷パターンの位置、寸法、品質は、最終製品にマイナスの影響を与える可能性がある。一つの実施例として、位置決めケーブル206を用いて適切な特徴部の向きを維持する。他の実施例として、何らかの公知の方法をこの目的のために使うこともできる。実施例によっては、最初の洗浄設備204は、高電界オゾン発生器とする。発生したオゾンは、基板106から例えばオイルやグリースのような不純物を除くために使われる。
【0033】
実施例によっては、基板106は、二番目の洗浄設備208を経由させることもできる。一つの実施例として、二番目の洗浄設備208はウェブクリーナーとすることもできる。ウェブクリーナーは、ウェブや基板から粒子を取り除くためにウェブ製造で用いられる任意の装置のことである。これらの洗浄段階後、基板106は、マスター版210と高精度の測定設備212を備えた最初の印刷設備でブロック304の最初の印刷を経る。測定設備212は、上ですでに述べたような必要な粘性と透過性を持つように調整したインクを入れたインクパンを備える。ブロック304の最初のパターンの印刷では、微細なパターンを基板106の片面に印刷できる。微細なパターンは複数の線を含んだものであり、その各線は幅1ミクロンから25ミクロンの間、高さ1ミクロンから100ミクロンとすることができる。この微細パターンは、粘度が10から15000cpsの間であるUV硬化性インクを使ってマスター版210で印刷することができる。ひとつの実施例として(図示していないが)、複数のロールをパターンの印刷に用いることもでき、この複数のロールには異なるインク、似たインク、同種のインクのいずれかを使うこともできる。パターンは、異なる厚さ、関連する特性、関連する特性の配置、横断の配置を持つ多くの線からなるため、使うインクの型は、パターンの特性の配置や複雑さによって決まる可能性がある。
【0034】
ブロック304で最初のパターンを印刷する際にマスター版210から基板106に移るインクの量は、高精度の測定設備212によって制御することができる。移すインクの量は、過程の速度、インクの配合、パターンを構成する多くの線の形状と寸法によって決めることもできる。機械の速さは、分速20フィート(fpm)から750fpmまでで変化することができ、装置によっては50fpmから200fpmが適していることもある。インクは、めっき触媒と光開始剤を含んだものとすることができる。ブロック304の最初のパターン印刷の後は、最初の硬化設備214でブロック306の硬化を続けて行うこともできる。ブロック306の硬化は、目的とする強さを約0.5mW/cm2から約50mW/cm2までとし、波長を約280nmから約480nmまでとした紫外線硬化とする。実施例によっては、ブロック306の硬化は、二番目の硬化系統216での約20℃から約85℃までの温度幅におさまる熱源を用いたオーブン加熱とすることもできる。最初の印刷設備でブロック304のパターン印刷を行った際に基板106に形成されたパターンの複数の線は、ブロック306の硬化後に、例えば、めっきなどのさらなる処理に備えて、あるいは使用や次の工程の前の搬送、保管のために、固化、又は半固化する。
【0035】
片面に微細な印刷パターンができた基板106には、無電解めっき設備220において、ブロック308の無電解めっきを施し、導電性材料の層を微細なパターン上に積層することができる。これはめっき設備220に置かれた無電解めっき浴に基板106を沈めることによって行うことができ、無電解めっき浴のタンクには温度幅が20℃から90℃、実施例によっては80℃とした銅などの液体状態の導電性材料を入れることができる。導電性材料は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、エルビウム(Er)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つか、これらの組み合わせとすることができる。成膜速度は毎分約10から100ナノメートル(0.01ミクロンから0.1ミクロン)とすることが可能であり、導電性材料はウェブのスピードに依存し目的に合わせて約1nmから100000nm(0.001ミクロンから100ミクロン)の厚さで積層させる。この無電解めっき過程は電流を流す必要がなく、硬化過程の際に紫外線への暴露により前もって活性化されためっき触媒を含むパターン領域のみがめっきされる。めっき浴には、例えばホウ化水素や次亜リン酸塩といった、めっきを生じさせる強い還元剤を含ませることができる。無電解めっきによって得られるめっきの厚さは、電界がないために電気めっきよりもより均一にすることができる。無電解めっきは電気めっきよりも時間を多く消費するかもしれないが、高精細の導電性パターンにあるような複雑な形態や多くの細かい特徴部を持つ部品によく適している。
【0036】
実施例によっては、ブロック308の無電解めっきに続いて、洗浄設備222においてブロック310の基板106の洗浄を行うことができる。基板106は、洗浄設備222のところにある室温の水を含む洗浄タンクへ沈めることによってブロック310の洗浄を行い、それから基板106を室温の空気を当てることによって乾かす乾燥設備224でブロック312の基板106の乾燥を行うこともできる。他の実施例として(図2には示していないが)、導電性材料と水との間で危険で望ましくない化学反応が起こらないようにするために、ブロック312での乾燥の後に、パターン噴霧などを用いて基板にブロック314の不動態化を施すことができる。
【0037】
実施例によっては、乾燥設備224のあとに、他の(二番目の)パターンの作製を続けることもできる。別の実施例として、ブロック304で両パターンを同時に印刷しブロック306で同時に硬化させブロック308で同時にめっきしたり、又は最初のパターンの印刷、硬化、めっきのうち少なくとも一つを二番目のパターンの作製や処理よりも前に行ったりするなど、印刷とめっきを様々に組み合わせながら二番目のパターンを最初のパターンと並行して作製することもできる。二番目のパターンは二番目の複数の線であり、別の基板や、ブロック304印刷設備210にて最初のパターンを印刷した基板の反対側の面や、最初のパターンの隣又は上に印刷することができる。二番目のパターンの配置や位置は、導電性パターンの最終製品によって決めてもよい。二番目のパターンは、二番目のマスター版226と二番目の高精度の測定装置228を備えた二番目の印刷設備において、200から10000cpsの間の粘性を持つUV硬化性インクを使ってブロック304aの印刷を行う。このインクは、印刷系統210で最初のパターンを印刷するのに用いるインクと同じでも違っていてもよい。二番目のマスター版226から基板106へ移されるインクの量は、他の高精度測定装置(二番目の印刷設備)228によって制御され、工程の速さ、インク組成と、パターンの形状と大きさによって決めることができる。二番目の印刷設備228での二番目の印刷過程に続いて、基板106は、図3におけるブロック306の硬化と同様の二番目の硬化を施すことができる。装置の配置構造によって、二番目の硬化を最初の硬化設備214で行うことも、二番目の硬化設備230で行うことも可能である。二番目の硬化は、0.5mW/cm2から20mW/cm2までの強度の紫外光による硬化か、温度が20℃から150℃間である乾燥機232の両方又は一方とすることができる。続いて、基板106は既知の従来の洗浄技術を用いた二番目の洗浄設備234に通すこともでき、乾燥設備236での二番目の乾燥として基板106を室温の空気で乾燥することも可能である。少なくとも一つの導電性パターンを印刷しめっきしたら、ブロック314でそのパターンを不動態化する。実施例によって、最初のパターンとして2つ以上のパターンを同じ基板に印刷したり違う基板に印刷したりする場合は、それらのパターンは接着剤などを用いて組み合わせることもできる。
【0038】
例として図2の装置や図3の方法で用いるインクは、HRCPのフレキソ印刷に使えるUV硬化性インクであって酢酸パラジウムかあるいはシュウ酸パラジウムなどの他のパラジウム有機金属化合物などめっき触媒の添加剤を含む市販の化学成分で構成されたものが挙げられる。実施例によっては、このめっき触媒は1重量%から15重量%含有させることができ、このときUV硬化性インクはシリカ繊維1重量%から3重量%と水浸透性ポリマー20重量%まで任意の組み合わせをさらに含有させることができる。この水浸透性ポリマーは、浸透性の添加剤、水に相溶性のあるポリマー、又は高極性のポリマーと呼ぶこともできる。ナノ粒子とシリカ繊維などのナノ繊維の一方または両方を添加することでUV硬化性インクの粘性を増加させることができ、モノマーを添加することでUV硬化性インクの粘性を減少させることができる。ひとつの実施例として、シリカ繊維やナノ繊維を添加する代わりに塩化パラジウムのナノ粒子かインクの組成に適した他のナノ粒子を、用いることも可能である。インク中に塩化パラジウムを用いる実施例では、溶解度を減少させ、粘性を増加させるために、複数の繊維を加えることもできる。ナノ繊維やナノ粒子の一方か両方の添加で粘性を調節すれば、粘性の調節なしでは使うことが不可能だったかもしれないフレキソ印刷の過程や微細パターンの印刷などにもここで述べたようなインクの組成を利用できるようになるかもしれない。
【0039】
実施例によっては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンはダブルボンドケミカルズ社(Double Bond Chemicals)からDouble Cure184という商品名で提供されているものとし、2,2−ジメチル−1,2−ジフェニルエタン−1−オンはダブルボンドケミカルズ社からDouble CureBDKという商品名で提供されているものとし、残りの化学成分はシグマアルドリッチ社から提供されているものとすることができる。
【0040】
以上の実施例において、インクは、水への浸透性があり、UV硬化性があり、印刷と硬化の間に自身の形状を維持できる程度の粘性を持つ。さらに、インクは、水にさらされても、著しく分解せず、洗い流されず、はがれない。インクはまた、水性のインクや溶剤系のインクと比較して高い極性と安定した粘性を持つことができる。この安定性があると保管寿命を延ばすことができるが、このことは、OEM製造業者や部品製造業者が製造過程の一部に関わっており基板上のパターンの完全性を脅かすことなく供給者や製造業者から、又は製造業者や供給者へ発送することができる印刷基板などの部品を必要としているような場合には望ましいことである。
【0041】
例えの実施例において、インクは、ビスフェノールAジアクリラート5重量%から80重量%、ポリエチレングリコールジアクリラート10重量%から80重量%、メタクリル酸ヒドロキシエチル5重量%から50重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリラート5重量%から50重量%、1−ヒドロキシシクロエチルフェニルケトン1重量%から10重量%、2,2−ジメチル−1,2−ジフェニルエタン−1−オン1重量%から10重量%、酢酸パラジウム0.1重量%から20重量%を含む。
【0042】
ひとつの実施例として、この組成の性質を変えることなく、代わりの有機金属塩をここに含有させることもできる。より具体的に言うと、酢酸パラジウムを、パラジウムなどVII族のいずれかの金属の塩に置換することもできる。
【0043】
実施例によっては、粘性と浸透性の両方を得るために以下のような特有の組成が必要になることもある。
【0044】
組成1:
ビスフェノールAジアクリラート:22.4重量%
ポリエチレングリコールジアクリラート:22.4重量%
メタクリル酸ヒドロキシエチル:29.9重量%
ペンタエリスリトールテトラアクリレート:14.9重量%
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:4.5重量%
2,2−ジメチル−1,2−ジフェニルエタン−1−オン:2.2重量%
酢酸パラジウム:3.6重量%
【0045】
組成2:
ポリ(ビニルアルコール),N−メトキシ−4−(4’−ホルミルスチリル)ピリジニウムメトスルファートアセタール溶液(固形分13.3重量%):26.3重量%
ポリビニルピロリドン:4.1重量%
酢酸パラジウム:2.1重量%
1−メトキシ−2−プロパノール:67.5重量%
【0046】
ここに開示した組成は、運転条件下での粘性の変化に耐えられるようにするための組成である。このため、この組成はこのインクが使える製造過程において処理パラメーターを監視する必要性を削減できるように設計されている。このインクは、HRCPのフレキソ印刷を含むどんな印刷過程にも役立ちうる、浸透性、粘性の安定性、極性の向上を示す。
【0047】
発明の好ましい実施例を示して説明してきたが、当業者は、発明の主旨と教えから逸脱することなく改良を行うことが可能である。ここで説明した実施例や、示した例は、限定することを意図するものではない。ここで開示した発明は、発明の範囲内で多くの変形や改良を行うことが可能である。従って、保護の範囲は以上の記述によって限定されず、以下の請求項のみによって限定されるものであり、その範囲は請求の対象と均等なもの全てを含む。本発明の様々な説明に役立つ実施例をさらに解説するために、以下の例を示す。

図1A
図1B
図1C
図2
図3
【国際調査報告】