(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532840(P2015-532840A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】甘味料シロップ
(51)【国際特許分類】
A23L 1/09 20060101AFI20151020BHJP
【FI】
A23L1/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-539820(P2015-539820)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】US2013066726
(87)【国際公開番号】WO2014066711
(87)【国際公開日】20140501
(31)【優先権主張番号】61/767,302
(32)【優先日】2013年2月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/718,944
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】593063172
【氏名又は名称】テイト アンド ライル イングレディエンツ アメリカス リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TATE & LYLE INGREDIENTS AMERICAS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ションドラ クック
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア ネヘミア フレッチャー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ マイケル ガッディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ユイチーン
【テーマコード(参考)】
4B041
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD08
4B041LH04
4B041LK10
4B041LK11
4B041LK12
4B041LK50
(57)【要約】
ブドウ糖と、DP2〜DP10の糖類、糖アルコール、ブドウ糖以外の単糖類及びこれらの混合物からなる群より選択された安定剤と、香味増強剤とを含有する甘味料シロップは、結晶化に抵抗性を有し、高果糖コーンシロップと同等な粘度及び甘味を有するので、食品及び飲料における高果糖コーンシロップの代替物として用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味料シロップであって、水分とブドウ糖を含み、乾燥固形分の含有量が69〜73重量%であり、前記甘味料シロップの結晶化を抑制できる量の、DP2〜DP10の糖類、糖アルコール、ブドウ糖以外の単糖類、及びこれらの混合物からなる群より選択された安定剤と、前記甘味料シロップの知覚される甘味を増強させることができる量の1種以上の香味増強剤とをさらに含み、前記甘味料シロップは乾燥固形分基準で0〜5重量%以下の果糖を含む、甘味料シロップ。
【請求項2】
前記甘味料シロップの前記安定剤の含有量は、ブドウ糖及び安定剤の組み合わせの25〜60重量%を占める、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項3】
前記甘味料シロップの前記ブドウ糖の含有量は、ブドウ糖及び安定剤の組み合わせの40〜75重量%を占める、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項4】
前記安定剤はショ糖である、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項5】
前記安定剤は、ショ糖、麦芽糖、マルトトリオース、マルトテトラオース及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項6】
前記安定剤は、糖アルコール又は糖アルコールの混合物である、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項7】
前記安定剤は、DP2〜DP10の糖類又はDP2〜DP10の糖類の混合物である、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項8】
前記安定剤はキシロースである、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項9】
前記甘味料シロップの粘度は、20℃で0.2〜0.45Pa・sであり、37℃で0.05〜0.15Pa・sである、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項10】
前記1種以上の香味増強剤は、モグロシド、ステビオール配糖体、グリコシル化ステビオール配糖体、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ネオテーム、グリチルリチン、グリチルリチン塩、グリチルリチン誘導体、ルブソシド、及びこれらの混合物からなる群より選択された化合物を含む、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項11】
前記1種以上の香味増強剤は、モグロシドV及びレバウジオシドAを含む、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項12】
前記甘味料シロップは、DP値が11以上の糖類を乾燥固形分基準で合計10重量%未満含む、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項13】
前記甘味料シロップは、香味増強剤を乾燥固形分基準で合計0.001〜2重量%含む、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項14】
前記甘味料シロップは、果糖を乾燥固形分基準で1重量%以下含む、請求項1に記載の甘味料シロップ。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の甘味料シロップ、及び少なくとも1種の付加的な食品、飲料又は薬剤成分を含む、食品、飲料又は医薬組成物。
【請求項16】
甘味料シロップの製造方法であって、DP2〜DP10の糖類、糖アルコール、及びブドウ糖以外の単糖類からなる群より選択された1種以上の安定剤及び1種以上の香味増強剤をブドウ糖シロップと組み合わせるステップを含み、前記甘味料シロップの結晶化を抑制できる量の安定剤と、前記甘味料シロップの知覚される甘味を増強させることができる量の香味増強剤とを用い、その結果得られた甘味料シロップの乾燥固形分の含有量は69〜73重量%であり、又、前記甘味料シロップは乾燥固形分基準で0〜5重量%以下の果糖を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品及び飲料における高果糖コーンシロップの機能的代替物として有用に用いられる甘味料シロップに関する。
【背景技術】
【0002】
高果糖コーンシロップは、長年様々な食品、飲料及び医薬組成物の成分として用いられてきた。高果糖コーンシロップは組成物に甘味を加味することは勿論、充填剤として機能し、各種有用な性質を提供する。
【0003】
現存する小売製品の相当数は高果糖コーンシロップ(HFCS)を含有している。HFCSに対する消費者の認識がよくないため、多くの食品製造メーカはHFCS含有量を製品に表示しなければならないことを避けるために自社の製品に甘味を加味できる代案を模索している。HFCSの用途は広範囲であり、HFCSを主成分として用いる製品の製造及び処理工程が既に成立されているため、食品製造メーカはHFCSを1対1で代替することができ、成分の取り扱い手順又は製品の製造過程を変更する必要がない甘味料製品に非常に大きな興味を有していると見なされる。
【0004】
主な糖類あるいは唯一の糖類として、ブドウ糖を含有するブドウ糖シロップが現在市販中であり、原則的に甘味料として用いることが可能である。但しブドウ糖シロップはHFCSよりも甘味が落ち、大気温度ないし大気温度より多少高い温度で長期保管する場合、結晶化を起こすという致命的な欠点があり、取り扱いが困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一様態は、甘味料シロップを提供し、当該甘味料シロップは水分とブドウ糖を含み、乾燥固形分の含有量が69〜73重量%であり、上記甘味料シロップの結晶化を抑制できる量の、DP2〜DP10の糖類(例:ショ糖、麦芽糖、マルトトリオース、マルトテトラオース)、糖アルコール及びブドウ糖以外の単糖類のような安定剤と、上記甘味料シロップの知覚される甘味を増強させる甘味を補助するレベルの量の1種以上の香味増強剤をさらに含み、上記甘味料シロップは、乾燥固形分基準で0〜5重量%以下の果糖を含有する。上記安定剤は、例えば、ブドウ糖及び安定剤の組み合わせの25〜60重量%を構成することができる。したがって、本発明は様々な最終消費製品で高果糖コーンシロップを代替できる高糖度、低糖度、保存安定性の特徴を有する甘味料を提供することができる。
【0006】
本発明の他の様態は、上述の甘味料シロップ、及び少なくとも1種の付加的な食品、飲料又は薬剤成分を含む、食品、飲料又は医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明のさらに他の様態は甘味料シロップの製造方法を提供し、当該方法はDP2〜DP10の糖類、糖アルコール及びブドウ糖以外の単糖類からなる群より選択された1種以上の安定剤及び1種以上の香味増強剤をブドウ糖シロップと組み合わせるステップを含み、上記甘味料シロップの結晶化を抑制できる量の安定剤と、上記甘味料シロップの甘味を増強させることができる量の香味増強剤とを用い、その結果得られた甘味料シロップの乾燥固形分の含有量は、69〜73重量%であり、又上記甘味料シロップは乾燥固形分基準で0〜5重量%以下の果糖を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明の甘味料シロップには、69〜73重量%(他の実施形態では70〜72重量%)の乾燥固形分の含有量を維持できる量で存在する水分以外にブドウ糖が存在する。ブドウ糖(デキストロースともいう)は適合した原料から得ることができる。結晶性ブドウ糖を採用することもできるが、利便性と経済的な理由によってブドウ糖の原料としてはブドウ糖シロップ(例:水にブドウ糖を溶解した濃縮液)を用いることが好ましい。ブドウ糖シロップは本分野における周知の物質であり、市中で容易に手に入れることができる。例えば、Tate&Lyle社がSTALEYDEXという製品名として販売しているブドウ糖シロップを用いてもよい。通常、ブドウ糖はブドウ糖及び安定剤の組み合わせの40〜75重量%を占める。すなわち、ブドウ糖は本発明の甘味料シロップに存在するブドウ糖と安定剤の総重量の40〜75%を占める。一実施形態において、甘味料シロップは27〜56重量%のブドウ糖を含有する。
【0009】
大気温度ないし大気温度より多少高い温度で長期保管する場合、ブドウ糖が甘味料シロップから結晶化する傾向を抑制するために1種以上の安定剤をシロップに加える。安定剤は、例えば、DP2〜DP10の糖類(重合度が2〜10の糖類)又は当該糖類の2種以上の混合物であってもよい。当該分野における周知の二糖類及びオリゴ糖類は、例えば、ショ糖、麦芽糖、マルトトリオース、マルトテトラオース及びこれらの混合物等を含む。その他の好適なDP2〜DP10の糖類としては、トレハロース及びラフィノースが挙げられる。DP2〜DP10の糖類はTate&Lyle Ingredients Americas社をはじめとする多数の供給源から入手が可能である。DP2〜DP10の糖類は必要に応じてシロップ状又は乾燥状として便宜により本発明の甘味料シロップに用いることができる。
【0010】
糖アルコールも本発明の安定剤成分として有用に用いられる。糖アルコールは、分子当たり3種以上のヒドロキシル基を含有する多価アルコールであり、一般式HOCH
2(CHOH)
nCH
2OH(nは1〜5の整数)に対応することができる。好適な糖アルコールの例としては、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ポルグリシトール及びこれらの混合物が含まれる。
【0011】
本発明に用いられる安定剤としてブドウ糖以外の単糖類を用いてもよく、ここではエリトロース、エリトルロース、トレオース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、アロース、アルトロース、プシコース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、ソルボース、タロース、タガトオース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース及びこれらの混合物等のC4−C7単糖類が含まれる。
上記物質の混合物も本発明の安定剤として用いることが可能である。
【0012】
甘味料シロップは、果糖(レブロースともいう)をほとんど含有していないか、全く含有していない。例えば、甘味料シロップは乾燥固形分基準で5重量%以下、あるいは1重量%以下の果糖を含む。一実施形態では、甘味料シロップは果糖を全く含有していない。
【0013】
当該シロップは、結晶化を抑制できる量の安定剤を含有するように調製される。すなわち、安定剤を含有していない類似シロップに比べ、時間の経過によって発生する結晶化の程度を低減することができる。シロップ内に存在する安定剤の量を、37℃の温度を維持したとき、最小1週間甘味料シロップの結晶化を防止できる量で選択した方がよい。他の実施形態において、シロップ内に存在する安定剤の量を、37℃の温度を維持したとき、最小2週間、最小1ヶ月間、最小2ヶ月間、最小3ヶ月間、最小4ヶ月間、最小5ヶ月間又は最小6ヶ月間甘味料シロップの結晶化を防止できる量で選択してもよい。さらに他の実施形態において、シロップ内に存在する安定剤の量を、25℃の温度を維持したとき、最小2週間、最小1ヶ月間、最小2ヶ月間、最小3ヶ月間、最小4ヶ月間、最小5ヶ月間又は最小6ヶ月間甘味料シロップの結晶化を防止できる量で選択してもよい。通常、安定剤の含有量はブドウ糖及び安定剤の組み合わせの25〜60重量%を占める。すなわち、安定剤の総量は、本発明の甘味料シロップに存在するブドウ糖と安定剤の総重量の25〜60%を占める。
【0014】
甘味料シロップの低粘度を維持するためには、シロップに存在する高級糖類のレベルを最小化することが一般的に好ましい。例えば、本発明の各種実施形態において、シロップは全て合わせて(乾燥固形分基準で)10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下のDP11+の糖類(重合度11以上の糖類)を含有している。一実施形態において、甘味料シロップはDP11+の糖類を含有していない。他の実施形態において、シロップは全て合わせて(乾燥固形分基準で)20重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下のDP6+の糖類(重合度が6以上の糖類)を含有する。さらに他の実施形態において、甘味料シロップはDP6+の糖類を含有していない。
【0015】
一実施形態において、甘味料シロップの粘度は20℃で0.2〜0.45Pa・s、37℃で0.05〜0.15Pa・sである。
【0016】
他の実施形態において、甘味料シロップはHFCS 42(乾燥固形分基準で42重量%の果糖を含有する高果糖コーンシロップ)に当たる粘度プロフィールを有する。
【0017】
本発明の甘味料シロップは、香味増強剤として機能することができ、シロップの甘味を増強させる1種以上の物質をさらに含有する。言い換えれば、香味増強剤の濃度は、砂糖のような他の甘味物質が組成物に存在していない場合、ヒトが香味増強剤物質を含有した組成物を甘味として認識する最低レベル(甘味検出閾値ともいう)未満である。香味増強剤は、他の部分と化学的に結合した1種以上の糖部分(例えば配糖体)を含有していてもよいが、それとは関係なく香味増強剤としては糖類以外の物質を用いる。香味増強剤は、通常、非常に少量で存在し、例えば乾燥重量基準で、シロップ全体の2重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下又は0.2重量%以下含有されている。一般的に、甘味料シロップは乾燥重量基準で、少なくとも総0.001重量%の香味増強剤を含有している。一実施形態において、甘味料シロップは乾燥固形分基準で、香味増強剤を0.001〜2重量%含有している。
【0018】
好ましい香味増強剤の例としては、天然高密度性甘味料である物質が含まれるが、これに限定されない。上記物質としては、モグロシド(例:モグロシドV)、その他羅漢果抽出物等の1種以上のモグロシドを含有している抽出物;ステビオシド及びレバウジオシド(例:レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC)等のステビオール配糖体、その他ステビア抽出物等の1種以上のレバウジオシドを含有している抽出物;グリコシル化ステビオール配糖体(半精製ステビオール配糖体混合物の酵素性グリコシル化によって得たもの);ルブソシド(ルブス抽出物の形態として提供されるもの)及びこれらの混合物等が挙げられる。その他の本発明で好ましく用いられる香味増強剤の例としては、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ネオテーム、グリチルリチン及びその塩/誘導体(例:アンモニア化グリチルリチン)、アスパルテーム、サッカリン、ソーマチン、モナチン、スクラロース、アセスルファムカリウム及びこれらの混合物等(上述の天然高密度性甘味料の混合物を含む)のような天然及び人工物質が含まれる。
【0019】
本発明のシロップは、1種以上の香味増強剤以外にも、1種以上の添加剤、例えば防腐剤、安定剤、pH調節剤(酸、塩基)、緩衝剤等をさらに含有してもよい。
【0020】
本発明の甘味料シロップは、DP2〜DP10の糖類、糖アルコール、ブドウ糖以外の単糖類、及びこれらの混合物からなる群より選択された1種以上の安定剤及び1種以上の香味増強剤をブドウ糖シロップと組み合わせて調製できる。ここで安定剤は甘味料シロップの結晶化を抑制できる程度の量で、香味増強剤は甘味料シロップの甘味を増強させる甘味を補助するレベルの量で用いられる。その結果得られた甘味料シロップの乾燥固形分の含有量は、69〜73重量%である。安定剤及び香味増強剤は、ブドウ糖シロップに別々に、あるいは共に添加してもよく、その結果得られた混合物を処理(例:タンクで混合又は攪拌)して均一な甘味料シロップを調製する。成分及び/又は成分の混合物を加熱する。安定剤及び/又は香味増強剤をブドウ糖シロップと組み合わせる前に、水に溶解すると一層便利である。安定剤(例:DP2〜DP10の糖類)はシロップの形態、例えば高麦芽糖シロップの形態として供給される。甘味料シロップの乾燥固形分の含有量を69〜73重量%に維持するように水分の総導入量を選択及び制御する。本発明の一実施形態では、成分を組み合わせるとき、過剰量の水分を導入し、その後水分を除去して目標乾燥固形分の含有量を達成する。本発明の他の実施形態では、熱を加えて安定剤を溶解する程度の水分のみを用い、次いで溶解された香味増強剤及び安定剤をブドウ糖シロップと組み合わせた後、水分を添加して目標乾燥固形分の含有量を達成する。本発明のさらに他の実施形態では、ブドウ糖シロップと安定剤を先に混合して均一なシロップを形成する。熱を加えることなく香味増強剤を溶解する程度の水分を用い、次いで溶解された香味増強剤をシロップと組み合わせた後、水分を添加して目標乾燥固形分の含有量を達成する。
【0021】
本発明のシロップは、食品、飲料、家畜用飼料、家畜用健康/栄養食、医薬製品、化粧品に用いてもよい。当該シロップは食品及び飼料の質感を柔らかくし、容積を増やし、濃度を増加させ、糖の結晶化を防止して香味及び甘味を増強させる。例えば、当該シロップは食品の高果糖コーンシロップ成分を全て又は一部代替することができる。
【0022】
具体的には、当該シロップは充填剤として有用であり、従来のコーンシロップと類似の外観、粘度、結晶化度、食感、保湿性、甘味及びそれ以外の束一的性質を有する。したがって当該シロップは食品、飲料、家畜用飼料、家畜用健康/栄養食、医薬製品、化粧品等に用いられている従来の高果糖コーンシロップをほぼ同一の重量又は容積を基準として容易に代替することができる。したがって本発明のシロップは、製品の物理的/感覚的属性を大きく変化させることなく高果糖コーンシロップを代替することができる。
【0023】
本発明の甘味料シロップの用途には充填成分、結合成分及びコーティング成分;着色剤、香料/香辛料及び高密度性甘味料の担持体;噴霧乾燥補助剤;充填剤、増粘剤及び分散剤;保湿促進成分(保湿剤)等が含まれるが、これらに限定されない。当該シロップを用いて製造することができる製品の例としては、食品、飲料、医薬製品、栄養製品、スポーツ用品及び化粧品が挙げられる。本発明による甘味料シロップを含む特定種類の製品としては、濃縮飲料ミックス、炭酸飲料、無炭酸飲料、フルーツフレーバー飲料、フルーツジュース、茶、コーヒー、ミルクネクター、粉末飲料、原液、乳酸菌飲料、スムージー、アルコール飲料、フレーバーウォーター及びこれらの組み合わせのような飲料製品が含まれる。本発明による食品は、例えば、ベーカリー類(例:パン)、菓子類、冷凍乳製品、肉類、シリアル(例:朝食用シリアル)、乳製品(例:ヨーグルト)、調味料、スナックバー、スープ、ドレッシング、ミックス、調理食品、離乳食、ダイエット食品、ピーナッツバター、シロップ、甘味料、食品コーティング、ペット用飼料、家畜用飼料、家畜用健康/栄養食、ドライフルーツ、ソース、グレイビー、ジャム/ゼリー、デザート類、スプレッド、ブレッディング、パン粉、スパイシーミックス、フロスティング等を含む。1種以上の他の材料、すなわち食品、飲料又は薬剤成分と甘味料シロップを組み合わせて食品、飲料又は医薬組成物を提供することができる。
【実施例】
【0024】
実施例では、下記の原料(市販品)を用いて各種甘味料シロップを調製した。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例1
原料Aを表1(表記した量の単位は重量%)によって乾燥ショ糖及び香料と混合した。ショ糖、香料及び原料Aの%DSB(乾燥固形分基準)の合計は100%であった。溶解をより容易にするために、原料Aを添加する前にまずショ糖及び香料を約55℃で水に溶解した。シロップの最終の固形分の含有量は、71重量%を目標にした。
【0027】
【表2】
【0028】
シロップを準備した後、官能テスト用の溶液を原料Cとシロップ1−1組成物、シロップ1−2組成物及びシロップ1−3組成物から調製した(表2)。シロップを計測し、特定の重量となるように水分を添加して溶液を調製した。ATAGO RX−5000屈折計を用いて溶液のブリックス値を測定した。
【0029】
【表3】
【0030】
甘味の一対比較試験を中性pH水で行った。試験は完備型ブロック計画法によって行った。提示手順と基準を変更し続けた。溶液を室温で2オンス入りスフレカップに入れた。参加者達に各サンプルの少なくとも半分を摂取するように指示し、3桁コードにラベリングしたサンプルのうちどれがさらに甘かったかを質問した。ボトルウォーターと無塩クラッカーを提供し、試験の前及び途中に口に残っている味を洗えるようにした。両側検定における有意レベルを0.05にし、結果を二項検定によって分析した。
【0031】
表3は、表1に記載した組成を有するシロップから得た甘味評価の結果をまとめたものである。表に記載した数字は甘味がさらに強いサンプルとして当該シロップを選択した参加者の数字である。
【0032】
【表4】
【0033】
原料Bを315ppm含有し、香料としてレバウジオシドAを用いて2:1の割合でより砂糖に近い味プロフィールを再現したシロップ1−2は、10ブリックス(p値0.24)で原料Cとそれほど差がなかった。
【0034】
原料Bを292ppm含有し、香料としてレバウジオシドAを用いて1.32:1の割合でより砂糖に近い味プロフィールを再現したシロップ1−3は、10ブリックス(p値0.07)で原料Cとそれほど差がなかった。
【0035】
原料Bを333ppm含有し、香料としてレバウジオシドAを用いて2.96:1の割合でより砂糖に近い味プロフィールを再現したシロップ1−1は、10ブリックス(p値<0.01)で原料Cより著しく甘味が低下した。
【0036】
実施例2
表4は、実施例1よりもデキストロースの含有量が低いコーンシロップの三種類の組合法を示す。デキストロースの含有量が低く、ショ糖を全く含有していないため、表4のコーンシロップは実施例1のシロップより甘味が低下し、したがって香味増強剤の数字と含有レベルが増加した。シロップ2−1、シロップ2−2、シロップ2−3の甘味を専門家二名の助けを借りて10%固形分の含有量で原料Cと比較した。
【0037】
【表5】
【0038】
原料D溶液を20%dsb、原料Eを79.9%dsb、原料Bを600ppm、レバウジオシドAを300ppm含有したシロップ2−1は、10%固形分溶液において原料Cの約80%の甘味を表した。
【0039】
原料D溶液を20%dsb、原料Eを79.9%dsb、原料Bを498ppm、レバウジオシドAを168ppm含有したシロップ2−2は、10%固形分溶液において原料Cの約50%の甘味を表した。
【0040】
原料D溶液を20%dsb、原料Eを79.9%dsb、原料Bを400ppm、レバウジオシドAを200ppm、ソーマチンを100ppm含有したシロップ2−3は、10%固形溶液において原料Cとほぼ類似した甘味を表した。
【0041】
実施例2は、各香味増強剤を甘味補助レベル未満の程度で用いる場合にも香味増強剤の組み合わせを異ならせると甘味が低下するというシロップの全体的な甘味認識を高めることができるという事実を立証する。
【0042】
実施例3
シロップブレンド3種と、従来の市販コーンシロップ3種、すなわち原料E、原料F及び原料Cを表5に従い準備した。各シロップの含水量を原料Cと同様のレベルに調整した。各シロップの粘度を定常流法によってAdvanced Rheometer AR 2000でチェックした。せん断速度は50/sに設定した。粘度を60℃、50℃、37℃、30℃、20℃で測定した。各温度で10個の標本値群を収集した。
【0043】
【表6】
【0044】
表6は表5に記載した各種シロップの粘度を示す。
【0045】
【表7】
【0046】
コーンシロップ/ショ糖ブレンドは、全て原料Cよりも粘度が少し高かったが、粘度が高いということが食品又は飲料における高果糖コーンシロップを代替するときに必ず加工が難しくなるという意味ではない。希釈原料F、すなわち従来の市販のコーンシロップは、低温で原料Cより著しく粘度が高く、原料Eはブレンドとほぼ類似した粘度を表した。
【0047】
実施例4
ショ糖を含有した甘味増強シロップ2種を、微生物安定性試験用として、次のように調製した。
【0048】
サンプルC2−263:全固形分71%で、原料A75%dsb、ショ糖25%dsb、レバウジオシドA0.0250%dsb、原料B0.0060%dsbを含有
【0049】
サンプルC2−262:全固形分71%で原料A75%dsb、ショ糖25%dsb、レバウジオシドA0.0250%dsb、NHDC0.0030%dsbを含有
【0050】
シロップを95°F、110°F、125°F、160°Fに保存し、経時的微生物安定性試験を行った。両シロップ(C2−263及びC2−262)とも110°Fでは最大7ヶ月まで微生物の増殖が観測されなかった。95°F、125°F及び160°Fでも両シロップともサンプルを廃棄する前まで保存する間、微生物が増殖しなかった(表7)。実施例4は、当該甘味料シロップが微生物安定性を有していることを示す。
【0051】
【表8】
【0052】
【表9】
【0053】
実施例5
実施例5、6、7に記載された通りに試験を行い、結晶化作用にシロップの組成が及ぼす影響を判定した。当該シロップは、香味増強剤を含有していないが、必要に応じて、本明細書に記載されたように甘味を増強させるために1種以上の香味増強剤を添加することができる。
【0054】
原料A(〜74%乾燥固形分の含有量)を表7の記載に従い各種物質と混合した。追加物質及び原料Aの%DSB(乾燥固形分基準)合計は100%であった。最終シロップの固形分の含有量は71%を目標にした。「RSCS」は、コーン澱粉を酵素加水分解して調製した低糖コーンシロップを示す。当該シロップは、単糖類及び二糖類、DP値が10より大きい糖類の含有量が相対的に低く、DP3〜DP10の糖類の含有量が相対的に高いシロップである。
【0055】
【表10】
【0056】
表8のサンプルを、それぞれ1000グラムずつ調製し、4個のガラス瓶に250グラムずつ分けて入れた。瓶を80℃で0.5時間加熱し、一晩最終保存温度(2個は25℃、2個は37℃)まで冷却した。結晶化を促進するために、各温度の各サンプルから瓶を一つずつ選定し、原料Dを0.01グラム添加した(播種)。原料Dを添加していない瓶(未播種)は基準サンプルとして用いた。各サンプルの結晶化の程度を、カールフィッシャー滴定を用いて溶液内の含水量を百分率で測定することで判定した。HPLC分析も溶液内のデキストロース(ブドウ糖)の濃度変化をモニターすることに用いられた。
【0057】
表8のサンプルのうち、25℃で保存したサンプルは全て1ヶ月後に完全に結晶化されたので、これらサンプルについてはこれ以上の分析試験を行わなかった。37℃で保存したその他のシロップ系の最終デキストロースの溶解度を表9に示した。
【0058】
【表11】
【0059】
表9の結果は、1ヶ月間37℃で保存した後、実施例5のシロップのほとんどは最初の溶液からデキストロースを一部失い、最終デキストロースの溶解度は約61%であることを示す。
【0060】
実施例6
上記の実験結果に基づき、上記と同様のステップ(表10)を経てサンプル17個をさらに調製した。これらサンプルを37℃で保存した場合のデキストロースの溶解度を表11に示した。
【0061】
【表12】
【0062】
【表13】
【0063】
実施例5と同様に、1ヶ月間37℃で保存した後、実施例6のシロップのほとんどは最初の溶液からデキストロースを一部失い、最終デキストロースの溶解度は約61〜64%であった。最も安定したシロップは14%エリトリトールとキシロースを含有しているシロップであった。しかしエリトリトール及びキシロースは比較的単価が高いためにHFCSの代替物としては適していない。代案は、デキストロースの溶解度が64%未満(デキストロース/(デキストロース+水分))に維持される限り、原料E又はショ糖及び原料Fの組み合わせを、37℃でデキストロースに対する安定剤(抗結晶化剤)として用いることである。
【0064】
実施例7
上記のサンプルが全て25℃で結晶化したため、第3のサンプルセット(実施例7)を配合設計のDOEを用いて調製した。設計概要を表12に示す。
【0065】
【表14】
【0066】
実施例7のシロップ組成物を表13に示した。各シロップを100グラム入りガラス瓶2本に入れた。各シロップは10mMアセテート緩衝剤を含有し、pHを5.5に維持した。
【0067】
【表15】
【0068】
各成分を完全に混合した後にpHをチェックした。各シロップにおける糖類分布度をHPLC法を用いて判定した。シロップの粘度は40mmクロスハッチ鋼板を装備したAdvance Rheometer
TM AR 2000を用いて、せん断速度25/s、温度60℃、50℃、37℃、30℃、20℃で測定した。各温度ごとに標本値群を10個採集して平均を算出した。その後、シロップを80℃まで30分間加熱し、核を除去して一晩にわたり25℃で冷却した後、原料D粉末0.01%を各サンプルのうち瓶を1本選定して添加した。原料Dを添加していないサンプルは基準サンプルとして用いた。
フードプロセッサーは一般的に保存中にシロップの温度を維持するために被覆タンクを備えているが、多くの場合、室温で安定した(結晶抵抗性)シロップを採用することが好ましい。したがって、低温でも高い安定性を有するシロップを開発する必要がある。表14に、25℃でその他の成分を含有した場合のデキストロース結晶化安定性を評価するために設計した実施例7の結果をまとめた。
【0069】
【表16】
【0070】
表14によれば、ほとんどのシロップは25℃で約53%以下のデキストロースの溶解度を表した。初期デキストロースの含有量が高かったシロップ2個(10−3及び10−18)は、25℃で完全に結晶化され、これ以上分析することができなかった。表14に記載したほとんどのシロップ(10−3及び10−18以外)は目視で透明であったが、一部は粘度が上昇した。表15にこれらシロップの20℃における粘度を示す。
【0071】
【表17】
【0072】
表15は原料A、原料F、原料H及びショ糖で構成されたシロップの20℃における粘度を表した。サンプルの調製時、固形分の含有量が〜71%(含水量〜29%)になるように調製したが、表15のサンプル10−2の含水量が非常に低い。これは10−13(10−2と同一の組成)の含水量が〜28%であることからすると、実験変数による現象である可能性が高い。それにかかわらず、サンプル10−2の含水量が最も低く、よって粘度が最も高い。水分の他にも、高分子量成分の含有量が粘度制御で重要な役割をする。サンプル10−13の粘度は5.8Pa・sである。該当サンプルは、約26%の高分子量糖類を含有する原料Hを最も多く含有している。低分子量糖類を多く含有しているサンプルであるほど(サンプル10−1、10−3、10−4、10−5、10−16、10−18、10−20)、低い粘度を表した。しかし、サンプル10−3及び10−18が25℃で完全に結晶化された以上、シロップがより低い温度で保存されることを勘案すると、これらはHFCS 42の代案として適しているとは思われない。
【国際調査報告】