特表2015-532901(P2015-532901A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-532901繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する成形工具、制御手段、方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532901(P2015-532901A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する成形工具、制御手段、方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20151020BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20151020BHJP
   B29C 39/42 20060101ALI20151020BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20151020BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20151020BHJP
   B29C 45/34 20060101ALI20151020BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
   B29C33/12
   B29C39/10
   B29C39/42
   B29C39/24
   B29C43/36
   B29C45/34
   B29C45/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-538461(P2015-538461)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2013072372
(87)【国際公開番号】WO2014067865
(87)【国際公開日】20140508
(31)【優先権主張番号】102012110354.2
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512024314
【氏名又は名称】ディーフェンバッハー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング マシーネン− ウント アンラーゲンバウ
【氏名又は名称原語表記】Dieffenbacher GmbH Maschinen− und Anlagenbau
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マティアス グラーフ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AC05
4F202AD16
4F202AM28
4F202CA09
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK18
4F202CK87
4F202CP06
4F202CQ01
4F204AC05
4F204AD16
4F204AJ08
4F204AM28
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EE07
4F204EF23
4F204EF27
4F204EF30
4F204EK09
4F204EK21
4F204EK24
4F206AC05
4F206AD16
4F206AM28
4F206JA03
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JN26
4F206JN33
4F206JQ81
(57)【要約】
本発明は、プラスチック構成部材(1)、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材(1)を製造する成形工具(20)、制御手段及び方法に関する。当該方法を実施する装置(10)も、同様に本発明の対象である。本発明に係る成形工具(20)は、上位概念をなす成形工具に対して、第1の工具部分(21)と第2の工具部分(22)との間に少なくとも1つの第1のシール(23a)が配置され、第1のシール(23a)は、真空ポートに通じる開口(25)に対して、工具部分(21,22)の第1の閉鎖位置では、キャビティが真空ポートに通じる開口(25)を介して排気可能であり、工具部分(21,22)の第2の閉鎖位置では、排気されたキャビティが真空ポートに通じる開口(25)に対しても封止されているように計画的に配置されていることを特徴としている。本発明は、工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して封止する1つの同じシール(23)により、必要に応じて、キャビティが真空ポートに通じる開口(25)を介して排気されたり、排気されたキャビティが真空ポートに通じる開口(25)に対して封止されたりするという利点を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造したいプラスチック構成部材(1)の所望の構成部材厚さに相当するキャビティを形成可能な、少なくとも第1及び第2の閉鎖位置に互いに移動可能な少なくとも2つの工具部分(21,22)と、
前記工具部分の1つの工具部分(22)に形成され、前記キャビティを排気するように真空ポートに通じる少なくとも1つの開口(25)と、
前記工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して封止する少なくとも1つのシール(23;23a,23b)と、
を備える、プラスチック構成部材(1)、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材(1)を製造する成形工具(20)であって、
前記工具部分(21,22)の第1の工具部分(21)と第2の工具部分(22)との間に少なくとも1つの第1のシール(23a)が配置され、該第1のシール(23a)は、前記真空ポートに通じる開口(25)に対して、
前記工具部分(21,22)の第1の閉鎖位置では、前記キャビティが前記真空ポートに通じる開口(25)を介して排気可能であり、
前記工具部分(21,22)の第2の閉鎖位置では、排気された前記キャビティが前記真空ポートに通じる開口(25)に対しても封止されている、
ように計画的に配置されていることを特徴とする、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する成形工具。
【請求項2】
前記工具部分のうちの1つの工具部分(21)に、前記少なくとも1つの第1のシール(23a)が形成されており、これとは別の工具部分(22)に、前記真空ポートに通じる開口(25)が形成されている、請求項1記載の成形工具。
【請求項3】
前記真空ポートに通じる開口(25)は、前記工具部分のうちの1つの工具部分(22)の側壁に、前記キャビティの、前記プラスチック構成部材(1)の構成部材厚さを規定する領域外において形成されている、請求項1又は2記載の成形工具。
【請求項4】
前記工具部分のうちの少なくとも1つの工具部分(21,22)が、前記排気されたキャビティ内に樹脂系を供給する射出装置(24)に作用結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項5】
前記樹脂系を供給する射出装置(24)は、前記真空ポートに通じる開口(25)も形成されている前記工具部分(22)に作用結合されている、請求項4記載の成形工具。
【請求項6】
前記第1の工具部分(21)と前記第2の工具部分(22)との間に付加的に、該工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して封止する少なくとも1つの第2のシール(23b)が配置され、該第2のシール(23b)は、前記第1のシール(23a)及び前記真空ポートに通じる開口(25)に対して、
前記工具部分(21,22)が既に、前記排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、前記開口(25)を介して真空が、なおも前記成形工具(20)内に維持可能である、
ように計画的に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項7】
成形工具(20)、特に請求項1から6までのいずれか1項記載の成形工具(20)の2つの工具部分(21,22)を互いに移動させる制御手段であって、前記工具部分(21,22)により、製造したいプラスチック構成部材(1)、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材(1)の所望の構成部材厚さに相当するキャビティが形成可能であり、前記制御手段によって前記工具部分(21,22)を少なくとも2つの閉鎖位置へ移動させることが可能な制御手段において、
第1の閉鎖位置では、真空ポートに通じる開口(25)を介して前記キャビティが排気可能であるように、少なくとも1つの第1のシール(23a)が、前記工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して互いに封止し、
第2の閉鎖位置では、前記少なくとも1つの第1のシール(23a)が、排気された前記キャビティを前記真空ポートに通じる開口(25)に対しても封止する、
ようになっていることを特徴とする、成形工具の2つの工具部分を互いに移動させる制御手段。
【請求項8】
前記第2の閉鎖位置で、前記排気されたキャビティ内に樹脂系を供給する射出装置(24)が作動可能である、請求項7記載の制御手段。
【請求項9】
既に前記第2の閉鎖位置で、又は第3の閉鎖位置で初めて、前記工具部分(21,22)のキャビティが、前記プラスチック構成部材(1)の所望の構成部材厚さまで閉鎖可能である、請求項7又は8記載の制御手段。
【請求項10】
少なくとも1つの第2のシール(23b)が付加的に前記工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して封止する前記第2の閉鎖位置又は第3の閉鎖位置への前記工具部分(21,22)の移動時に、前記真空ポートは、作動状態に保たれ、前記真空ポートに通じる開口(25)を介して、引き続き真空が前記成形工具(20)内に維持可能である、請求項7から9までのいずれか1項記載の制御手段。
【請求項11】
成形工具(20)、特に請求項1から6までのいずれか1項記載の成形工具(20)の、製造したいプラスチック構成部材(1)の所望の構成部材厚さに相当するキャビティを形成可能な、互いに移動可能な少なくとも2つの工具部分(21,22)内において、
特に請求項7から10までのいずれか1項記載の制御手段を用いて、
プラスチック構成部材(1)、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材(1)を製造する方法であって、
a)先ず、両前記工具部分(21,22)、特に既に前記プラスチック構成部材(1)の繊維予備成形体(3)が装填された両前記工具部分(21,22)を第1の閉鎖位置に移動させ、第1の閉鎖位置では、真空ポートに通じる開口(25)を介して前記キャビティが排気可能であるように、少なくとも1つの第1のシール(23a)が、前記工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して封止するようにし、
b)次に、前記工具部分(21,22)により形成されるキャビティを、前記真空ポートに通じる開口(25)を介して排気し、
c)次に、両前記工具部分(21,22)を第2の閉鎖位置に移動させ、第2の閉鎖位置では、前記少なくとも1つの第1のシール(23a)が、前記排気されたキャビティを前記真空ポートに通じる開口(25)に対しても封止するようにし、
d)次に、前記キャビティ内に樹脂系を供給する射出装置(24)を作動させる、
ことを特徴とする、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法。
【請求項12】
前記工具部分の第1の工具部分(21)と第2の工具部分(22)との間に付加的に、該工具部分(21,22)を周囲の空気圧に対して封止する少なくとも1つの第2のシール(23b)を、前記第1のシール(23a)及び前記真空ポートに通じる開口(25)に対して、
前記工具部分(21,22)が既に、前記排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、前記開口(25)を介して真空が、なおも前記成形工具(20)内に維持可能である、
ように計画的に配置する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
既に第2の閉鎖位置への前記工具部分(21,22)の移動とともに、又は第3の閉鎖位置への前記工具部分(21,22)の移動後に初めて、前記工具部分(21,22)により形成されるキャビティは、前記製造したいプラスチック構成部材(1)の所望の構成部材厚さに相当する、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
プラスチック構成部材(1)、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材(1)を製造する方法、特に請求項11から13までのいずれか1項記載の方法を実施する装置(10)であって、少なくとも、
製造したいプラスチック構成部材(1)の所望の構成部材厚さに相当するキャビティを形成可能な、少なくとも第1及び第2の閉鎖位置に互いに移動可能な少なくとも2つの工具部分(21,22)を有する請求項1から6までのいずれか1項記載の成形工具(20)と、
前記工具部分の1つの工具部分(22)に形成され、前記キャビティを排気するように真空ポートに通じる少なくとも1つの開口(25)と、
排気された前記キャビティ内に樹脂系を供給する射出装置(24)と、
前記工具部分(21,22)を前記成形工具(20)の開放位置及び閉鎖位置に移動させ、かつ固定するプレスと、
を備えることを特徴とする、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法を実施する装置。
【請求項15】
前記工具部分(21,22)を前記成形工具(20)の開放位置及び閉鎖位置に移動させ、かつ固定するプレスを制御する請求項7から10までのいずれか1項記載の制御手段を備える、請求項14記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する成形工具、制御手段及び方法に関する。
【0002】
上記方法を実施する装置も、同じく本発明の対象である。
【0003】
特に繊維強化されたプラスチック構成部材(繊維複合構成部材)、特に炭素繊維強化されたプラスチック構成部材(CFRP構成部材)を製造するために、とりわけレジントランスファーモールディング(Resin−Transfer−Moulding:RTM)法が公知である。この方法を用いた繊維複合構成部材の製造は、産業的な使用においては、以下のように進行する個々のプロセスにて実施される。
【0004】
第1のプロセスステップ、いわゆる予備成形プロセス又はプリフォームプロセスにおいて、一般に裁断された繊維マット等の多層の織物若しくは編物又は組織体として存在する繊維半製品が変形加工される。その結果、繊維半製品は、既に、製造したい複合構成部材の幾何学形状を概ね有している。繊維半製品の個々の繊維マットは、繊維マット自体の他に一般にバインダも含んでいる。バインダは、接着剤状の特性を有している。バインダは、個々の繊維マット同士の、ひいては予備成形された繊維予備成形体(プリフォーム)の事前固化を引き起こす。これにより、繊維予備成形体は、形状安定的に後続のプロセスに供給可能である。繊維予備成形体は、単にプリフォームとも称呼可能である。
【0005】
つまり一般に、予備成形プロセスのために、事前に二次加工された繊維マットが、予め規定された繊維層構造に応じて層状に重ねて置かれ、1つの繊維半製品を形成する。複数の繊維マットから形成されるこの繊維半製品は、その後、室温で、又は変形加工温度に加熱されて、予備成形工具又はプリフォーム工具内へと移される。繊維予備成形体への繊維半製品の変形加工は、工具の閉鎖により実施される。最終的に、こうして形成された繊維プリフォームの縁部領域は、さらに裁断(以下、トリミング又はネットシェーピングともいう)、例えばパンチング又は超音波切断により裁断され得る。その結果、繊維プリフォームは、所定の輪郭縁を有する。繊維プリフォームあるいは繊維予備成形体は、最終的に離型され、場合によっては後続のプロセスステップ及び方法ステップの実施のために一時保管される。
【0006】
一時保管中、既に最初の品質管理が行われてもよい。この場合、目視検査により、特に繊維予備成形体(プリフォーム)の成形バリ及び場合によっては存在する繊維変形、繊維波打ち、褶曲又はこれに類する表面欠陥の判別が可能である。
【0007】
後続の第2のプロセスステップ、すなわちRTMプロセスにおいて、繊維予備成形体は、RTM工具の、クリーニングされ、離型処理、すなわち付着防止剤のコーティングが施されたキャビティ内に装填される。一般に2つの部分からなる成形工具は、次にプレスにより閉鎖され、2成分の樹脂系が、成形工具のキャビティ内に射出される。樹脂系は、マトリックス材料として繊維予備成形体の繊維構造を通り抜け、繊維を埋封する。樹脂系の硬化後、こうして得られた繊維強化されたプラスチック構成部材の本成形体は、離型され、場合によっては改めて品質検査され得る。
【0008】
樹脂の射出時に繊維予備成形体の浸潤のために工具を密閉して維持すべく、工具上側部分と工具下側部分との間には、通常、エラストマーシールが存在している。一般に、このために市販されている丸紐シールが使用される。このとき、繊維予備成形体の外郭は、やはり極めて精緻である必要がある。このことは、既述のように、大抵の場合、RTMプロセス前の予備成形体のトリミングにより達成される。しかし、この場合、さらに、プリフォームとシールとの間に隙間が生じることは、避けられない。この隙間は、一種の「通路」が大抵の場合縁部領域に発生し、この通路を通して樹脂が管理不能に流入し、流動フロントが繊維プリフォーム内で短絡してしまうという不都合な特性につながる。これにより、望ましくない空気封入及び含浸欠陥が発生する恐れがある。加えて、「通路」にも樹脂が充填されねばならず、このことは、大量生産時、樹脂消費量の増大につながり、ひいては特に競争上の欠点となりかねない。
【0009】
RTM法において全自動の大量生産プロセスを実現するために、工具上側部分と工具下側部分との間に配置され、キャビティを排気するように真空ポートに通じる開口が樹脂と接触し、サイクル後、時間をかけてクリーニングされねばならないという事実は、特に高圧で射出又は過圧縮される樹脂に関する、取扱い技術上の大きな課題の1つである。
【0010】
しかし、例えば35バールから100バールまで又は100バールを超える高いキャビティ圧は、今日のいわゆる高圧RTM法(HP−RTM)に特有である。高圧RTM法は、高反応性の樹脂系の使用による繊維強化構造の繊維の完全な含浸時に可及的迅速な樹脂射出を用いた特に繊維強化されたプラスチック構成部材、例えば高性能繊維複合材料の製造に傾注する。このことから、これまで一般的であったサイクル時間の大幅な短縮が生じる。高反応性の樹脂成分及び硬化剤成分の均質な混合のために、高圧RTM装置が使用される。その際、高圧圧縮(Compression)RTM法(HP−CRTM)と高圧射出(Injektion)RTM法(HP−IRTM)との区別がある。
【0011】
HP−CRTMプロセスでは、樹脂が、規定されて(僅かに)開放された、繊維予備成形体を内包する工具型内に射出される。射出工程後、工具型は、閉鎖され、繊維予備成形体は、100バールまでの液圧プレスの閉鎖力から結果として生じる高い工具内圧に基づいて圧縮(過圧縮)され、同時に含浸もされる。
【0012】
HP−IRTM法では、完全に閉鎖された工具型内に既に存在する繊維予備成形体が、例えば35バールの明らかに高い樹脂射出圧により含浸される。高い射出圧は、含浸期間の時間的な短縮につながる。
【0013】
両HP−RTM法は:
− HP−CRTM法及びHP−IRTM法における短い射出時間及び含浸時間;
− 高反応性の樹脂系の使用による短いサイクル時間;
− 比較的に極めて少ない樹脂余剰分にて加工されるため、経済的かつ環境的に効率的な加工プロセス;
− プラスチック成形品、特に軽量構造のためのプラスチック成形品内の最適化された樹脂と繊維の関係構築;
という利点を有している。
【0014】
本発明の根底にある課題は、RTM法、特に高圧RTM法(HP−RTM)の利点を享受しつつ、同様に経済的であり、かつ自動化された大量生産プロセスにも向いた、従来技術と比較して改善された、特に簡単かつ安価なシール法、特にキャビティを排気するように真空ポートに通じる開口のためのシール法を提供することである。
【0015】
この課題は、請求項1の特徴を有する、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する成形工具と、請求項7の特徴を有する、成形工具の2つの工具部分を互いに移動させる制御手段と、請求項11の特徴を有する、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法と、請求項14の特徴を有する、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法を実施する装置とにより解決される。個々に又は互いに組み合わされて使用可能な好ましい態様及び形態は、従属請求項の対象である。
【0016】
本発明に係る、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する成形工具は、製造したいプラスチック構成部材の所望の構成部材厚さに相当するキャビティ(つまり中空室)を形成可能な、少なくとも第1及び第2の閉鎖位置に互いに移動可能な少なくとも2つの工具部分と、1つの工具部分に形成され、キャビティを排気するように真空ポートに通じる少なくとも1つの開口と、工具部分を周囲の空気圧に対して封止する少なくとも1つのシールと、を備える、上位概念をなす成形工具を前提としている。本発明に係る成形工具は、この上位概念をなす成形工具に対して、第1の工具部分と第2の工具部分との間に少なくとも1つの第1のシールが配置され、第1のシールは、真空ポートに通じる開口に対して、工具部分の第1の閉鎖位置では、キャビティが真空ポートに通じる開口を介して排気可能であり、工具部分の第2の閉鎖位置では、排気されたキャビティが真空ポートに通じる開口に対しても封止されているように計画的に配置されていることを特徴としている。本発明により形成される成形工具は、工具部分を周囲の空気圧に対して封止する1つの同じシールにより、必要に応じて、キャビティが真空ポートに通じる開口を介して排気されたり、排気されたキャビティが真空ポートに通じる開口に対して封止されたりするという利点を有している。
【0017】
成形工具の第1の所定の態様において、少なくとも1つの第1のシールを1つの工具部分に形成し、真空ポートに通じる開口をこれとは別の工具部分に形成することは、実証されている。
【0018】
成形工具の第2の択一的又は累積的な所定の態様において、真空ポートに通じる開口を1つの工具部分の側壁に、キャビティの、プラスチック構成部材の構成部材厚さを規定する領域外において形成することは、実証されている。
【0019】
排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するために、有利には、かつ公知の形式で、少なくとも1つの工具部分が射出装置に作用結合されている。この場合、特に、樹脂系を供給する射出装置が、真空ポートに通じる開口も形成されている工具部分に作用結合されている成形工具の一態様は、実証されている。
【0020】
最後に、本発明において、第1の工具部分と第2の工具部分との間に付加的に、工具部分を周囲の空気圧に対して封止する少なくとも1つの第2のシールが配置され、第2のシールは、第1のシール及び真空ポートに通じる開口に対して、好ましくは、工具部分が既に、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、開口を介して真空が、なおも成形工具内に維持可能であるように計画的に配置されている成形工具の一態様が、好ましい。
【0021】
成形工具、特に前述の成形工具の2つの工具部分を互いに移動させる制御手段であって、工具部分により、製造したいプラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材の所望の構成部材厚さに相当するキャビティが形成可能であり、制御手段によって工具部分を少なくとも2つの閉鎖位置へ移動させることが可能な制御手段も、本発明の対象である。本発明に係る制御手段は、この上位概念をなす制御手段に対して、第1の閉鎖位置では、真空ポートに通じる開口を介してキャビティが排気可能であるように、少なくとも1つの第1のシールが、工具部分を周囲の空気圧に対して互いに封止し、第2の閉鎖位置では、少なくとも1つの第1のシールが、排気されたキャビティを真空ポートに通じる開口に対しても封止するようになっていることを特徴としている。少なくとも2つの閉鎖位置への工具部分の有利な移動可能性により、必要に応じて、安価かつ簡単に、工具部分を周囲の空気圧に対して封止する1つの同じシールにより、キャビティは、真空ポートに通じる開口を介して排気可能であるとともに、排気されたキャビティは、真空ポートに通じる開口に対して封止可能である。
【0022】
制御手段の第1の態様において、好ましくは、第2の閉鎖位置で、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給する射出装置が作動可能である。
【0023】
制御手段の第2の択一的又は累積的な態様において、好ましくは、既に第2の閉鎖位置で、又は第3の閉鎖位置で初めて、工具部分のキャビティが、プラスチック構成部材の所望の構成部材厚さまで閉鎖可能である。その結果、好ましくは、特に高圧圧縮RTM法(HP−CRTM)も高圧射出RTM法(HP−IRTM)も実施可能である。
【0024】
最後に、本発明において、少なくとも1つの第2のシールが付加的に工具部分を周囲の空気圧に対して封止する第2の閉鎖位置又は第3の閉鎖位置への工具部分の移動時に、真空ポートが、作動状態に保たれ、真空ポートに通じる開口を介して、引き続き真空が工具内に維持可能である制御手段の一態様が、好ましい。
【0025】
成形工具の、製造したいプラスチック構成部材の所望の構成部材厚さに相当するキャビティを形成可能な、互いに移動可能な少なくとも2つの工具部分内、特に前述の成形工具内において、特に前述の制御手段を用いて、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法も、本発明の対象である。
【0026】
本発明に係る、プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法は、公知の方法に対して、先ず、両工具部分、特に既にプラスチック構成部材の繊維予備成形体が装填された両工具部分を第1の閉鎖位置に移動させ、第1の閉鎖位置では、真空ポートに通じる開口を介してキャビティが排気可能であるように、少なくとも1つの第1のシールが、工具部分を周囲の空気圧に対して封止するようにし、次に、工具部分により形成されるキャビティを、真空ポートに通じる開口を介して排気し、次に、両工具部分を第2の閉鎖位置に移動させ、第2の閉鎖位置では、少なくとも1つの第1のシールが、排気されたキャビティを真空ポートに通じる開口に対しても封止するようにし、次に、キャビティ内に樹脂系を供給する射出装置を作動させることを特徴としている。少なくとも2つの閉鎖位置への工具部分の好ましい移動により、必要に応じて、安価かつ簡単に、工具部分を周囲の空気圧に対して封止する唯一のシールにより、キャビティは、真空ポートに通じる開口を介して排気可能であるとともに、排気されたキャビティは、真空ポートに通じる開口に対して封止可能である。
【0027】
本発明において、第1の工具部分と第2の工具部分との間に付加的に、工具部分を周囲の空気圧に対して封止する少なくとも1つの第2のシールを、第1のシール及び真空ポートに通じる開口に対して、工具部分が既に、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、開口を介して真空が、なおも成形工具内に維持可能であるように計画的に配置する方法の一態様は、好ましい。
【0028】
特に高圧圧縮RTM法(HP−CRTM)も高圧射出RTM法(HP−IRTM)も実施可能とするために、最後に、既に第2の閉鎖位置への工具部分の移動とともに、又は第3の閉鎖位置への工具部分の移動後に初めて、工具部分により形成されるキャビティが、製造したいプラスチック構成部材の所望の構成部材厚さに相当する方法の択一的又は累積的な態様は、実証されている。
【0029】
プラスチック構成部材、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法、特に前述の方法を実施する装置も、本発明の対象である。本発明に係る装置は、製造したいプラスチック構成部材の所望の構成部材厚さに相当するキャビティを形成可能な、少なくとも第1及び第2の閉鎖位置に互いに移動可能な少なくとも2つの工具部分を有する前述の成形工具と、1つの工具部分に形成され、キャビティを排気するように真空ポートに通じる少なくとも1つの開口と、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給する射出装置と、工具部分を成形工具の開放位置及び閉鎖位置に移動させ、かつ固定するプレスと、を備えることを特徴としている。工具部分を成形工具の開放位置及び閉鎖位置に移動させ、かつ固定するプレスを制御する目的で、最後に、本発明に係る装置の一態様において、装置は、前述の制御手段を備えることを特徴としている。
【0030】
本発明は、信頼性の高いシール法、特にキャビティを排気するように真空ポートに通じる開口のための信頼性の高いシール法を提供する。本発明の好ましい態様において、このシール法は、特に第2のシールにより、好ましくは、工具部分が既に、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、なおも真空を工具内に維持することを可能にする。このシール法は、好ましくは特にRTM法に好適である。
【0031】
以下に、本発明のこれらの特徴及び利点並びにその他の特徴及び利点について、繊維強化されたプラスチック構成部材の例示の製造を参照しながら詳説する。ただし、本発明は、この例示の製造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】繊維強化されたプラスチック構成部材を製造する方法を実施する装置の典型的なステーションa)〜h)を示す概略図である。
図2】繊維強化されたプラスチック構成部材を製造するRTM装置、特にHP−CRTM法を実施するRTM装置における典型的なプロセスステップa)〜d)を示す概略図である。
【0033】
好ましい実施の形態の以下の説明において、同一の符号は同一の構成部材を指している。理解を助けるべく、導入説明として、様々な符号及び構成部材が本発明においてどのように解釈されるかについて予め説明する。繊維予備成形体3は、製造の過程において繊維半製品4から形成される。繊維半製品4は、他方、少なくとも2つの繊維マット5からか、又はこれに類する繊維布帛からなっており、これにより繊維マット積層体とも称呼可能である。繊維予備成形体3は、このプロセスを補助するために、特に圧力が極めて高い高圧噴射法において工具の封止をいわば1つの別のシールフロントにより補助するシーリング材材料が提供されている縁部領域を有していてもよい。完成したプラスチック構成部材1の本成形体2は、主として、本明細書では詳細に説明することを要しない、なおも必要な移送工程又は加工工程の点で様々である。キャビティとは、工具部分が部分的に又は完全に閉鎖された状態において工具部分により形成される中空形状と解され、この中空形状は、プラスチック成形品の最終成形体にほぼ相当し、工具部分が完全に閉鎖されているときはプラスチック成形品の最終成形体に相当する。
【0034】
図1は、繊維強化されたプラスチック構成部材1を製造する方法を実施する装置10の典型的なステーションa)〜h)を略示しており、当該方法は、少なくとも以下の方法ステップ、すなわち:裁断ステーション(図1a参照)において個々の繊維マット5を裁断する方法ステップ(方法ステップ1.1)と、予備成形装置(図1d参照)の、少なくとも2つの工具部分31,32を有する予備成形工具30あるいは予備成形型の外又は内において、又は特に予備成形工具と本成形工具とが統合されて形成されている場合(図示せず)は、RTM装置の、少なくとも2つの工具部分21,22を有する成形工具20あるいは成形型の内において、バインディング(Bebinderung)あり又はなしにて、(図1c参照)複数の繊維マット5を積み重ねて1つの繊維半製品4とする方法ステップ(方法ステップ1.2)と、予備成形装置(図1d参照)の予備成形工具30内でプラスチック構成部材1の繊維予備成形体3(図1e参照)を製造する予備成形プロセスを実施する方法ステップ(方法ステップ1.3)と、RTM装置(図1f参照)の成形工具20内でプラスチック構成部材1の本成形体2(図1g参照)を製造するRTMプロセスを実施する方法ステップ(方法ステップ1.4)と、を含んでいる。RTM法において全自動の大量生産プロセスを実現するにあたり、工具上側部分21と工具下側部分22との間に配置されるシールが樹脂と接触し、サイクル後、時間をかけてクリーニングされねばならないか、又はそれどころか周期的に交換されねばならないという事実は、特に高圧で射出又は過圧縮される樹脂に関する、取扱い技術上の大きな課題の1つである。
【0035】
このことを回避するために、同日付の独国特許出願(DE102012110353.4)では、繊維強化されたプラスチック構成部材1を製造する装置及び方法に係る発明について特許請求されている。当該独国特許出願は、ここに本明細書の一部を構成するものとして包括的に援用され、従来技術に対して、方法ステップ1.2及び/又は方法ステップ1.3に関して前に、同時にかつ/又は後に、少なくとも部分的に周囲を取り巻くように延び、シーリング材としての使用に好適な材料6を、個々の、複数のかつ/又はすべての繊維マット5及び/又は繊維半製品4に被着かつ/又は供給し、遅くとも、方法ステップ1.4で予定されるRTMプロセスの実施前には、繊維予備成形体3の、完全に周囲を取り巻くように延びる縁部領域3aにおいて、そこにあるすべての繊維気孔及び繊維間隙がシーリング材材料6により閉鎖されているようにする被着及び/又は供給手段11、特にフラットヘッドノズル12(図1b参照)を特徴としている。
【0036】
これに対して択一的又は累積的に、RTM法において全自動の大量生産プロセスを実現するにあたり、上側の工具部分21と下側の工具部分22との間に配置され、キャビティを排気するように真空ポートに通じる開口25が樹脂と接触し、サイクル後、時間をかけてクリーニングされねばならないという事実も、やはり取扱い技術上の大きな課題の1つである。
【0037】
このことを回避するために、本発明により、シール法、特にキャビティを排気するように真空ポートに通じる開口25のためのシール法が提供される(図1f参照)。本発明によるシール法は、特に、第1の工具部分21と第2の工具部分22との間に少なくとも1つの第1のシール23aが配置され、第1のシール23aは、真空ポートに通じる開口25に対して、工具部分21,22の第1の閉鎖位置Aでは、キャビティが真空ポートに通じる開口25を介して排気可能であり、工具部分21,22の第2の閉鎖位置では、排気されたキャビティが真空ポートに通じる開口25に対しても封止されているように計画的に配置されていることを特徴としている。
【0038】
図2は、RTM装置、好ましくはプラスチック構成部材1、好ましくは繊維強化されたプラスチック構成部材1を製造するHP−CRTM法を実施するRTM装置における典型的なプロセスステップa)〜d)を例示している。
【0039】
図2aは、RTM装置の、少なくとも2つの工具部分21,22を有する成形工具20あるいは成形型を、開放された位置で示している。その際、上側の工具部分(雄型)21と下側の工具部分(雌型)22とは、互いに対応するように形成されており、最終的な閉鎖位置で、後に樹脂系が射出されることになるプラスチック構成部材1の本成形体2に相当するキャビティを形成するようになっている。射出装置24を介した樹脂の射出時に、繊維予備成形体3の浸潤のために、成形工具20を周囲の空気圧に対して密に閉鎖して維持すべく、工具上側部分21と工具下側部分22との間に少なくとも1つの主シール、特にエラストマーを含む主シール23が存在する。しかし、工具部分21,22の構造次第では、図2aに示すように、場合によっては2つ以上の、別の工具部分22を含む工具部分21を周囲の空気圧に対して完全に、例えば周囲を取り巻くように封止するシール23a,23bが設けられていてもよい。キャビティの、浸潤前に必要な排気のために、少なくとも2つの工具部分21,22の少なくとも1つの工具部分内には、真空ポートに通じる少なくとも1つの開口25が形成されている。図2aには、下側の工具部分22に形成された開口25が示されている。
【0040】
図2bは、図2aに示したRTM装置の2つの部分からなる成形工具20を示している。成形工具20内には、予備成形された(ただし本実施の形態では概略的に略平たんに図示された)繊維予備成形体3が装填されており、繊維予備成形体3は、その縁部領域に統合されたシーリング材材料6を有している。この繊維予備成形体3では、つまり、繊維予備成形体3の、完全に周囲を取り巻くように延びる縁部領域において、そこにあるすべての繊維気孔及び繊維間隙が、シーリング材材料6により閉鎖されている。如何にして、既に第1の閉鎖位置で、まず部分的に閉鎖された工具部分21,22が、周囲を取り巻くように延びる下側のシール23aを介して互いに気密に密閉可能であり、かつ如何にして、これにより形成されるキャビティが、開口25を介して真空ポートに向かって排気可能であるかが、看取可能である。
【0041】
図2cは、図2bに示したRTM装置の2つの部分からなる成形工具20を、さらに閉鎖された第2の閉鎖位置で示している。第2の閉鎖位置で、真空ポートに通じる開口25は、今や第1の(下側の)シール23aにより、工具部分21,22により形成されるキャビティに対して封止され、工具部分21,22は、付加的に第2の(上側の)シール23bにより封止されている。その結果、開口25を介して真空は、工具部分21,22が既に、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、なおも成形工具20内に確実に維持され得る。主シール23の高さ次第では、1つの主シール23が第1の位置から第2の位置への工具部分21,22の移動の過程中に開口25を完全にカバーすることができれば、1つの主シール23で十分であり得る。しかし、この特別な態様でも、第2のシール23bを設けることが必要な場合がある。これにより、第1のシール23aが僅かに不密であっても第2のシール23bを介してRTMプロセス前及びRTMプロセス中の空気遮断が引き続き保たれ得るので、プラスチック構成部材1内の望ましくない空気封入は、常に回避されている。このことは特に、RTM装置において特にHP−CRTMプロセスが実施される場合、つまり第2の閉鎖位置で工具部分21,22をまず所定の間隙寸法まで閉鎖し、これにより樹脂を言及すべき程の流動抵抗なしに繊維予備成形体3の外側の層の上側又は図示したように下側において射出することができるようにし、最終的な閉鎖位置への工具部分21,22の続いての閉鎖により圧縮する場合にも、有利である。
【0042】
図2dは、図2cに示したRTM装置の2つの部分からなる成形工具20を、第3の最終的な閉鎖位置で示している。この第3の閉鎖位置で、工具部分21,22に残されるキャビティは、今や、製造したいプラスチック構成部材1の所望の構成部材厚さに相当している。その結果、先に射出した樹脂は、繊維予備成形体3の気孔及び間隙内に押し込まれ、その際に、シーリング材材料6により予め繊維予備成形体3内に形成され一体化されたシールを通過することはない。
【0043】
最終的に、シーリング材材料6を切り離しつつプラスチック構成部材1の本成形体2(図1g参照)を簡単にトリミングすることにより、プラスチック構成部材1の最終成形体(図1h参照)を得ることができる。
【0044】
プラスチック構成部材の所望される仕様次第で、プラスチック構成部材は、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、スチール繊維、天然繊維、ナイロン繊維若しくはこれに類する繊維からなるマット、これらの繊維の混合物からなるマット及び/又はいわゆるランダム配向繊維マット(リサイクリング繊維マット)を含んでいてもよい。
【0045】
本発明は、信頼性の高いシール法、特にキャビティを排気するように真空ポートに通じる開口25のための信頼性の高いシール法を提供する。本発明の好ましい態様において、このシール法は特に第2のシール23bにより、好ましくは、工具部分21,22が既に、排気されたキャビティ内に樹脂系を供給するための第2の閉鎖位置に移動していても、なおも真空を工具20内に維持することを可能にする。それゆえこのシール法は、好ましくは特にいわゆる高圧RTM法(HP−RTM)に好適である。
【0046】
最後に、好ましくは、統合されたシールを有する繊維予備成形体3が使用可能であり、これにより初めてHP−RTM法のためにも、RTM工具において成形工具20の上側の工具部分21と下側の工具部分22との間に配置される主シール23あるいはシール23a,23bに樹脂が到達しないことが保証され得る。その結果、シール23;23a,23bも、もはや樹脂により汚損されることはなく、時間をかけてクリーニングしたり、周期的に交換したりする必要はなくなる。
【符号の説明】
【0047】
1 プラスチック構成部材
2 本成形体
3 繊維予備成形体
4 繊維半製品
5 繊維マット
6 シーリング材材料
10 装置
11 被着及び/又は供給手段
12 フラットヘッドノズル
20 成形工具
21 工具部分
22 工具部分
23 主シール
23a シール
23b シール
24 射出装置
25 開口
30 予備成形工具
31 工具部分
32 工具部分
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
【国際調査報告】