(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532915(P2015-532915A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】ボルテゾミブの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20151020BHJP
C07F 5/04 20060101ALI20151020BHJP
【FI】
C07F5/02 C
C07F5/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-530488(P2015-530488)
(86)(22)【出願日】2013年9月11日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】GB2013000380
(87)【国際公開番号】WO2014041324
(87)【国際公開日】20140320
(31)【優先権主張番号】2638/MUM/2012
(32)【優先日】2012年9月11日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】511109180
【氏名又は名称】シプラ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】ダルマラジ、ラーマチャンドラ、ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラ、ナラヤンラオ、カンカン
(72)【発明者】
【氏名】シュリーニバス、ラクシュミーナーラーヤン、パティ
(72)【発明者】
【氏名】ラビクマール、プパラ
【テーマコード(参考)】
4H048
【Fターム(参考)】
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB84
4H048AC53
4H048AC80
4H048VA75
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、ボルテゾミブ、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメート、および式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンの製造のための改良された方法を提供する。化合物(IV)は、第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で式(II)の(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチル−ヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミンまたはその塩と、式(III)のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンとをカップリングさせることによって製造され、この場合、当該カップリング工程は溶媒交換を含まない。化合物(V)は、無機酸のアルコール溶液を使用して化合物(IV)を脱保護することによって製造される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で、下記の式(II):
【化1】
の(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミンまたはその塩と、下記の式(III):
【化2】
のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンとをカップリングさせて、下記の式(IV):
【化3】
のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを得る工程と、
b)無機酸のアルコール溶液を使用して式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを脱保護することにより、下記の式(V):
【化4】
のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンまたはその塩を得る工程と、
c)第二カップリング剤および第二塩基の存在下において、第二溶媒中で、該式(V)の化合物またはその塩と、下記の式(VI):
【化5】
のピラジン−2−カルボン酸をカップリングさせて、下記の式(VII):
【化6】
のN−{(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}−Nα−(ピラジン−2−イルカルボニル)−L−フェニルアラニンアミドを得る工程と、
d)該式(VII)の化合物を脱保護して、ボルテゾミブまたはその無水物を得る工程と
を含む、ボルテゾミブを製造する方法。
【請求項2】
工程a)が溶媒交換を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で、式(II)の(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミンまたはその塩と、式(III)のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンとをカップリングさせて、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを得る工程を含む方法であって、溶媒交換を含まない方法。
【請求項4】
第一溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
第一溶媒がジクロロメタンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一カップリング剤が、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、O−ベンゾトリアゾール−N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、および1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC HCl)からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第一カップリング剤が第一添加剤と共に使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第一添加剤が、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド(HOPO)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、およびN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第一カップリング剤がEDC HClであり、第一添加剤がHOBtである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第一塩基が、N、N−ジイソプロピルエチルアミンおよびトリエチルアミンから選択され得る、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
b)無機酸のアルコール溶液を使用して、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサ−ヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを脱保護することにより、式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンまたはその塩を製造する工程を含む、方法。
【請求項12】
無機酸が、塩酸、臭化水素酸、および硫酸からなる群より選択される、請求項1または11に記載の方法。
【請求項13】
アルコールが、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1、11、または12に記載の方法。
【請求項14】
無機酸のアルコール溶液がイソプロパノール性塩酸である、請求項1および11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化合物(IV)の脱保護が、化合物(IV)の単離を行うことなくインサイチュで実施される、請求項1および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
化合物(IV)の脱保護が15〜35℃の温度において実施される、請求項1および11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
化合物(IV)の脱保護が20〜30℃の温度において実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第二溶媒が、トルエンおよび酢酸エチルからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第二溶媒がトルエンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第二カップリング剤が、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、O−ベンゾトリアゾール−N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、および1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC HCl)からなる群より選択される、請求項1、18、または19に記載の方法。
【請求項21】
第二カップリング剤がTBTUである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第二カップリング剤が第二添加剤と共に使用される、請求項1および18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第二添加剤が、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド(HOPO)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、およびN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第二塩基が、N、N−ジイソプロピルエチルアミンおよびトリエチルアミンから選択される、請求項1および18〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
化合物(VII)の脱保護が、化合物(VII)をアルコール溶媒中においてボロン酸受容体で処理することによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ボロン酸受容体が、イソブチルボロン酸、2−メチル−1−プロピルボロン酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アルコール溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
請求項3〜10のいずれか一項に記載の方法により製造された、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメート。
【請求項29】
検出限界未満の下記2種の不純物:
【化7】
を含む、請求項28に記載の化合物(IV)。
【請求項30】
請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法により製造された、式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンまたはその塩。
【請求項31】
検出限界未満の脱ホウ素化された不純物(VIII)および二量体不純物(IX)を含む、請求項30に記載の化合物(V)またはその塩。
【請求項32】
請求項1、2、4〜10、および12〜27のいずれか一項に記載の方法により製造された、ボルテゾミブまたはその無水物。
【請求項33】
検出限界未満の脱ホウ素化された不純物(VIII)および二量体不純物(IX)を含む、請求項32に記載のボルテゾミブまたはその無水物。
【請求項34】
添付の実施例を参照することにより、本明細書において実質的に記載された、ボルテゾミブの製造方法。
【請求項35】
添付の実施例を参照することにより本明細書において実質的に記載された、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートの製造方法。
【請求項36】
添付の実施例を参照することにより本明細書において実質的に記載された、式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンまたはその塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ボルテゾミブおよびボルテゾミブの中間体の製造のための改良された方法に関する。
【0002】
背景技術
ボルテゾミブは、ロイシンおよびフェニルアラニンから誘導される修飾されたジペプチジルボロン酸誘導体である。化学名は、[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸であり、以下の式によって表される。
【化1】
【0003】
米国特許第5780454号において、ボルテゾミブが開示されており、その一方で、国際公開第02059130号では、ボルテゾミブのマンニトールエステルについて開示されている。
【0004】
米国特許第5780454号では、ボルテゾミブの製造については例示されていない。国際公開第2005097809号には、ボルテゾミブの大規模での製造について記載されており、この場合、反応は、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および第三級アミンの存在下において、溶媒としてのジクロロメタン中で実施され、ならびにジクロロメタンを酢酸メチルと交換する溶媒交換を伴う。
【0005】
ボルテゾミブの合成のための様々な方法が記載されている他の特許出願、例えば、国際公開第2009004350号、国際公開第2009036281号、国際公開第2010146172号、国際公開第2011087822号、国際公開第2011098963号、および国際公開第2012048745号など、が存在する。
【0006】
国際公開第2009004350号および国際公開第2009036281号には、N−(ピラジニルカルボニル)−L−フェニルアラニンと、4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−メタンアミン、ヘキサヒドロ−3a,5,5−トリメチル−α−(2−メチルプロピル)−(αR,3aS,,4S,6S,7aR)−トリフルオロアセテートとの縮合について記載されている。
【0007】
国際公開第2010146172号には、4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−メタンアミン、ヘキサヒドロ−3a,5,5−トリメチル−α−(2−メチルプロピル)−(αR,3aS,,4S,6S,7aR)−トリフルオロアセテートの製造について記載されている。
【0008】
国際公開第2011087822号には、(2S)−N−[(1R)−1−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−3−メチルブチル−3−フェニル−2−(ピラジン−2−イルホルムアミド)プロパンアミドの脱保護によるボルテゾミブの製造について記載されている。
【0009】
国際公開第2011098963号には、最後の3つの工程のうちの任意の2つの工程が中間体の単離なしで実施される、ボルテゾミブの製造について記載されている。
【0010】
国際公開第2012048745号には、カップリング剤として環状ホスホン酸無水物を使用したボルテゾミブの製造について記載されている。
【0011】
先行技術の方法は、ハロゲン化溶媒の使用、溶媒交換、および面倒な後処理手順を必要とし、したがって、結果として低い収率となる。
【0012】
従って、改善された収率ならびに向上した化学純度および光学純度を有する生成物を提供する、工業的に実現可能で経済的な方法を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第一の側面によれば、ボルテゾミブの製造のための改良された方法が提供される。
【0014】
当該方法は、
a)第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で、下記の式(II):
【化2】
の(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミンまたはその塩と、下記の式(III):
【化3】
のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンとをカップリングさせて、下記の式(IV):
【化4】
のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを得る工程と、
b)無機酸のアルコール溶液を使用して式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを脱保護することによって、下記の式(V):
【化5】
のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンまたはその塩を得る工程と、
c)第二カップリング剤および第二塩基の存在下において、第二溶媒中で、化合物(V)またはその塩と、下記の式(VI):
【化6】
のピラジン−2−カルボン酸とをカップリングさせて、下記の式(VII):
【化7】
のN−{(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}−Nα−(ピラジン−2−イルカルボニル)−L−フェニルアラニンアミドを得る工程と、
d)化合物(VII)を脱保護して、ボルテゾミブまたはその無水物を得る工程と
を含む。
【0015】
本発明の第二側面によれば、a)第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で、式(II)の(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミンまたはその塩と、式(III)のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンとをカップリングさせて、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを得る工程を含む方法であって、溶媒交換を含まない方法が提供される。
【0016】
本発明の第三側面によれば、b)無機酸のアルコール溶液を使用して、式(IV)のtert−ブチル[1−({(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサ−ヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]カルバメートを脱保護することにより、式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサ−ヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンまたはその塩を製造する工程を含む方法が提供される。
【0017】
本発明は、ボルテゾミブまたはボルテゾミブの中間体の製造のための方法であって、脱ホウ素化された不純物(VIII)および二量体不純物(IX)などの不純物の形成を低減するために役立つ方法に関する。
【0019】
ボルテゾミブを調製するための当該改良された方法は、
a)第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で化合物(II)またはその塩と化合物(III)とをカップリングさせて化合物(IV)を得る工程と、
b)無機酸のアルコール溶液を使用して化合物(IV)を脱保護して化合物(V)またはその塩を得る工程と、
c)第二カップリング剤および第二塩基の存在下において、第二溶媒中で化合物(V)またはその塩と化合物(VI)とをカップリングさせて化合物(VII)を得る工程と、
d)化合物(VII)を脱保護してボルテゾミブまたはその無水物を得る工程と
を含む。
【0020】
化合物(IV)を調製するための当該改良された方法は、a)第一カップリング剤および第一塩基の存在下において、第一溶媒中で化合物(II)またはその塩と化合物(III)とをカップリングさせる工程を含み、この場合、当該方法は溶媒交換を含まない。この方法は、工程b)と、工程b)およびc)と、または工程b)、c)、およびd)と組み合わせることができる。
【0021】
本発明者らは、工程a)において溶媒交換を避けることにより、化合物(IV)の分解が避けられ、それが、脱ホウ素化された不純物(VIII)および二量体不純物(IX)などの不純物の形成を低減するために役立つことを見出した。さらに追加の溶媒が必要ないため、工程a)のコストおよび時間サイクルが減じられる。したがって、化合物(II)またはその塩と化合物(III)とのカップリングは、好ましくは、第一溶媒を他の溶媒と交換することなく実施され、すなわち、当該カップリングプロセスは、溶媒交換を含まなくてもよい。
【0022】
当該第一溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。好ましくは、当該第一の溶媒はジクロロメタンである。
【0023】
当該第一カップリング剤は、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、O−ベンゾトリアゾール−N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC HCl)からなる群より選択され得る。
【0024】
副反応を抑制するため、およびラセミ化を低減するために、添加剤を使用してもよい。したがって、第一カップリング剤は、第一添加剤と共に使用してもよい。第一添加剤は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド(HOPO)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、およびN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)からなる群より選択され得る。
【0025】
好ましくは、第一カップリング剤はEDC HClであり、かつ第一添加剤はHOBtである。
【0026】
第一塩基は、N,N−ジイソプロピルエチルアミンおよびトリエチルアミンからなる群より選択され得る。
【0027】
これらの特徴は、本発明の第一および第二側面の両方に当てはまる。
【0028】
化合物(IV)を脱保護するための当該改良されたプロセスは、b)無機酸のアルコール溶液を使用して化合物(IV)を脱保護して化合物(V)またはその塩を得る工程を含む。このプロセスは、工程a)と、工程a)およびc)と、工程a)、c)、およびd)と、工程c)と、または工程c)およびd)と組み合わせてもよい。
【0029】
本発明者らは、化合物(IV)の脱保護の際に無機酸のアルコール溶液を使用することも不純物の形成を抑制するために役立つということを見出した。
【0030】
使用される無機酸は、塩酸、臭化水素酸、および硫酸からなる群より選択され得る。
【0031】
使用されるアルコールは、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0032】
好ましくは、無機酸のアルコール溶液は、イソプロパノール性塩酸である。
【0033】
化合物(IV)の脱保護は、15〜35℃、好ましくは20〜30℃の温度において実施され得る。
【0034】
化合物(IV)の脱保護は、式(IV)の化合物の単離を行うことなく、インサイチュ(
in situ)で実施してもよい。
【0035】
これらの特徴は、本発明の第一および第三側面の両方に当てはまる。
【0036】
上記において記載されるように、ボルテゾミブの製造のための当該方法および化合物(IV)を製造するための当該方法は、国際公開第2005097809号によって必要とされる溶媒交換工程を回避する。脱ホウ素化された不純物(VIII)および二量体不純物(IX)などの不純物は、国際公開第2005097809号に記載される方法に従うことによって得られる化合物(IV)の試料中に存在する不純物と比較して、検出可能な限界未満であることが見出されることも認められる。得られる生成物の純度もより高い。上記において説明されるように、工程b)での無機酸のアルコール溶液の使用も、不純物の形成を抑制するために役立つ。工程a)および工程b)の際に、不純物が抑制されるので、本発明のボルテゾミブの製造のための方法により、その後に得られるボルテゾミブは、純度がより高く、検出限界未満の脱ホウ素化された不純物(VIII)および二量体不純物(IX)を含む。
【0038】
化合物(V)またはその塩と式(VI)のピラジン−2−カルボン酸とのカップリングは、式(VII)のN−{(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}−Nα−(ピラジン−2−イルカルボニル)−L−フェニルアラニンアミドを得るために、第二カップリング剤および第二塩基の存在下において、第二溶媒中で実施される。
【0039】
当該第二溶媒は、トルエンおよび酢酸エチルからなる群より選択され得る。好ましくは、当該第二溶媒はトルエンである。
【0040】
第二カップリング剤および第二塩基は、上記において提示された、第一カップリング剤としての使用に好適なカップリング剤のリストおよび第一塩基としての使用に好適な塩基のリストから選択され得る。好ましくは、第二カップリング剤はTBTUである。
【0041】
当該第二カップリング剤は、第二添加剤と共に使用してもよい。当該第二添加剤は、上記において提示された、第一添加剤としての使用に好適な添加剤のリストから選択され得る。
【0042】
ボルテゾミブまたはその無水物を得るための式(VII)の化合物の脱保護は、式(VII)の化合物を、アルコール性溶媒中においてボロン酸受容体によって処理することにより実施することができる。
【0043】
ボロン酸受容体は、イソブチルボロン酸、2−メチル−1−プロピルボロン酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0044】
当該アルコール溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0045】
一実施形態において、本発明のボルテゾミブの調製のためのプロセスは、以下の反応スキームに示されるように表すことができる。
【化9】
【0046】
本発明のさらなる詳細は、下記において提供される実施例において提示されるが、これらの実施例は、例示のみのために提供されるのであり、したがって本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0047】
1)式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンヒドロクロリドの調製
80.0mlのジクロロメタンをフラスコに装入し、続いて6.7gの式(III)のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンを加えた。当該反応混合物を5分間撹拌し、次いで、窒素雰囲気下において0℃まで冷却した。10.1gのEDC HClおよび7.1gのHOBTをフラスコに装入し、続いて10gの(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミントリフルオロアセテート(式(II)の化合物のトリフルオロ酢酸塩)を加えた。20.0mlのジクロロメタンで希釈した14.0mlのN,N’−ジイソプロピルエチルアミンを−5℃〜0℃において反応物に滴加し、当該反応物を−3±2℃で1時間撹拌した。
【0048】
反応が完了した後、当該反応物を15℃未満において200.0mlの1NのHCl溶液でクエンチし、27±2℃で15分間撹拌し、内容物をハイフロベッド(hyflo bed)を通してろ過し、続いて10.0mlのジクロロメタンで洗浄した。ジクロロメタン層を200.0mlの1NのHCl溶液で洗浄し、続いて200mlの10%重炭酸ナトリウム溶液で二回洗浄し、最後に200mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。
【0049】
ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、窒素雰囲気下において反応フラスコに装入した。20.0mlのイソプロパノール性HCl(isopropanolic HCl)(20%)を27±2℃で当該反応物に滴加し、3時間撹拌した。
【0050】
反応が完了した後、ジクロロメタンを真空下において30℃未満で反応物から完全に蒸留し、それに200mlのジイソプロピルエーテルを加えた。当該反応物を27±2℃で1時間撹拌し、10±2℃に冷却し、ろ過して洗浄した。得られた固体物質を、真空下において35℃未満のオーブンで8時間乾燥させた。
収量:7.5g
【0051】
2)式(VII)のN−{(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}−Nα−(ピラジン−2−イルカルボニル)−L−フェニルアラニンアミドの調製
75mlのトルエンおよび7.5gの実施例1から得られる化合物を、窒素雰囲気下において反応フラスコに装入し、続いて、2.33gの式(VI)のピラジン−2−カルボン酸および6.0gのTBTUを加えた。当該反応混合物を10分間撹拌し、0±5℃に冷却した。15.0mlのトルエンで希釈した12mlのN,N’−ジイソプロピルエチルアミンを当該反応物に滴加し、当該反応物を25℃に温めて、3時間撹拌した。
【0052】
反応が完了した後、当該反応物を75mlの純水で2回洗浄した。層を分離し、トルエン層を75mlの1%リン酸溶液で洗浄し、75mlの2%炭酸カリウム溶液で洗浄し、最後に75mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、35℃未満において真空下で完全に蒸留した。
収量:8.0g
【0053】
3)ボルテゾミブの調製
実施例2から得られた化合物8gを、反応フラスコにおいて64.0mlのメタノールに溶解させた。室温において当該溶液に64.0mlのヘプタンを加え、続いて2.5gの2−メチル−1−プロピルボロン酸を加えた。42.0mlの1Nの塩酸溶液を滴加し、当該反応物を12時間撹拌した。
【0054】
反応が完了した後、ヘプタン層を分離して捨てた。水性メタノール層をより多くのヘプタンで洗浄し、次いで、真空下において35℃で濃縮してメタノールを完全に除去した。得られた残留物を57.0mlのジクロロメタンに溶解させ、3±2℃に冷却した。当該溶液のpHを、2NのNaOH溶液を用いて12±0.1に調整した。ジクロロメタン層を分離し、水層をより多くのジクロロメタンで洗浄した。水層を清浄なフラスコに移し、3±2℃に冷却した。次いで、80mlの2NのHClを加え、当該反応物をジクロロメタンで抽出した。当該ジクロロメタンを、洗浄液のpHが中性になるまで飽和食塩水で洗浄した。当該ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下において35℃未満でジクロロメタンを留去した。得られたオイルに、34.0mlのアセトンを加え、50℃未満で蒸留し、続いてさらに63.0mlの新鮮なアセトンを加え、当該反応物を25℃で撹拌し、5±2℃に冷却して撹拌した。得られた固体をろ過し、冷アセトンで洗浄し、次いで真空において43±2℃で10時間乾燥させた。
収量:4.0g
純度:99.6%
キラル純度−99.8%を超える
【0055】
4)式(V)のN−{(1S)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}フェニルアラニンヒドロクロリドの調製
400.0mlのジクロロメタンをフラスコに装入し、続いて33.5gの式(III)のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンを加えた。当該反応混合物を5分間撹拌し、次いで、窒素雰囲気下において0℃まで冷却した。50.5gのEDC HClおよび35.5gのHOBTをフラスコに装入し、続いて、50gの(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブタン−1−アミントリフルオロアセテート(式(II)の化合物のトリフルオロ酢酸塩)を加えた。100.0mlのジクロロメタンで希釈した70.0mlのN,N’−ジイソプロピルエチルアミンを−5℃〜0℃において反応物に滴加し、当該反応物を−3±2℃で1時間撹拌した。
【0056】
反応が完了した後、当該反応物を、15℃未満において1000.0mlの1NのHCl溶液でクエンチし、27±2℃で15分間撹拌し、内容物をハイフロベッドを通してろ過し、続いて50.0mlのジクロロメタンで洗浄した。ジクロロメタン層を1000.0mlの1NのHCl溶液で洗浄し、続いて1000mlの10%重炭酸ナトリウム溶液で二回洗浄し、最後に1000mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。
【0057】
当該ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、窒素雰囲気下において反応フラスコに装入した。100.0mlのイソプロパノール性HCl(20%)を、27±2℃で当該反応物に滴加し、3時間撹拌した。
【0058】
反応が完了した後、ジクロロメタンを真空下において30℃未満で反応物から完全に蒸留し、それに1000mlのジイソプロピルエーテルを加えた。当該反応物を27±2℃で1時間撹拌し、10±2℃に冷却し、ろ過して洗浄した。得られた固体物質を、真空下において35℃未満のオーブンで8時間乾燥させた。
収量:40.0g
【0059】
5)式(VII)のN−{(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aS)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メタノ−1,3,2−ベンゾジオキサボロール−2−イル]ブチル}−Nα−(ピラジン−2−イルカルボニル)−L−フェニルアラニンアミドの調製
400mlのトルエンおよび40.0gの実施例4から得られる化合物を、窒素雰囲気下において反応フラスコに装入し、続いて、12.2gの式(VI)のピラジン−2−カルボン酸および32.0gのTBTUを加えた。当該反応混合物を10分間撹拌し、0±5℃に冷却した。80.0mlのトルエンで希釈した64.0mlのN,N’−ジイソプロピルエチルアミンを当該反応物に滴加し、当該反応物を25℃に温めて、3時間撹拌した。
【0060】
反応が完了した後、当該反応物を400mlの純水で2回洗浄した。層を分離し、トルエン層を400mlの1%リン酸溶液で洗浄し、400mlの2%炭酸カリウム溶液で洗浄し、最後に400mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。当該トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下において37℃未満で完全に蒸留した。
収量:46.0g
【0061】
6)ボルテゾミブの調製
実施例5から得られた化合物46gを、反応フラスコにおいて368.0mlのメタノールに溶解させた。室温において当該溶液に368.0mlのヘプタンを加え、続いて14.72gの2−メチル−1−プロピルボロン酸を加えた。230.0mlの1Nの塩酸溶液を滴加し、当該反応物を12時間撹拌した。
【0062】
反応が完了した後、ヘプタン層を分離して捨てた。水性メタノール層をより多くのヘプタンで洗浄し、次いで、真空下において35℃で濃縮してメタノールを完全に除去した。得られる残留物を368.0mlのジクロロメタンに溶解させ、3±2℃に冷却した。当該溶液のpHを2NのNaOH溶液を用いて12±0.1に調整した。ジクロロメタン層を分離し、水層をより多くのジクロロメタンで洗浄した。水層を清浄なフラスコに移し、3±2℃に冷却した。次いで、460.0mlの2NのHClを加え、当該反応物をジクロロメタンで抽出した。当該ジクロロメタンを、洗浄液のpHが中性になるまで飽和食塩水で洗浄した。当該ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ジクロロメタンを真空下において35℃未満で留去した。得られたオイルに、184.0mlのアセトンを加え、50℃未満で蒸留し、続いてさらに368.0mlの新鮮なアセトンを加え、当該反応物を25℃で撹拌し、5±2℃に冷却して撹拌した。得られた固体をろ過し、冷アセトンで洗浄し、次いで真空下において43±2℃で10時間乾燥させた。
収量:22.0g
純度:99.7%
キラル純度−99.87%
【国際調査報告】