(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-532968(P2015-532968A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(54)【発明の名称】駆動部材の選択
(51)【国際特許分類】
F16H 63/30 20060101AFI20151020BHJP
【FI】
F16H63/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-532497(P2015-532497)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】GB2013000406
(87)【国際公開番号】WO2014049317
(87)【国際公開日】20140403
(31)【優先権主張番号】1217100.5
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】511247389
【氏名又は名称】キネテイツク・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ロバート・ウィリアム
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA01
3J067AB01
3J067AC07
3J067BA02
3J067EA34
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3J067FA45
3J067FA67
3J067FB71
3J067FB85
3J067GA01
(57)【要約】
少なくとも1つの駆動部材と少なくとも2つの選択器部材とを備える駆動部材選択機構であって、駆動部材は第1面および第2面を備え、各面上に少なくとも1つの突起部をさらに備え、選択器部材はその少なくとも1つの面上に、駆動部材の突起部と選択的に係合するように構成された少なくとも1つの相補的突起部を備え、その構成は、選択器部材の突起部(複数可)と駆動部材の第1面の突起部(複数可)とが第1トルク接続で駆動可能に係合されることができ、選択器部材の突起部(複数可)と駆動部材の第2面の突起部(複数可)とが第2トルク接続で駆動可能に係合されることができ、第2トルク接続は第1トルク接続と反対側になるようなものである、駆動部材選択機構について述べられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの駆動部材と少なくとも2つの選択器部材とを備える駆動部材選択機構であって、駆動部材は第1面および第2面を備え、各面上に少なくとも1つの突起部をさらに備え、選択器部材はその少なくとも1つの面上に、駆動部材の突起部と選択的に係合するように構成された少なくとも1つの相補的突起部を備え、その構成は、選択器部材の突起部(複数可)と駆動部材の第1面の突起部(複数可)とが第1トルク接続で駆動可能に係合されることができ、選択器部材の突起部(複数可)と駆動部材の第2面の突起部(複数可)とが第2トルク接続で駆動可能に係合されることができ、第2トルク接続は第1トルク接続と反対側になるようなものである、駆動部材選択機構。
【請求項2】
駆動可能に係合されるとき、相補的突起部はそれらが確実に駆動可能に係合されるように物理的に干渉する、請求項1に記載の駆動部材選択機構。
【請求項3】
駆動可能に係合されるとき、相補的突起部は駆動可能に係合された選択器部材と駆動部材とを一緒に引き寄せるように形状化された、請求項1または請求項2に記載の駆動部材選択機構。
【請求項4】
突起部および/または選択器部材が、選択器部材と駆動部材との間の相対的回転が、駆動係合が存在するトルクの方向に反対の方向にある場合には、駆動部材と選択器部材とは押し離される、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項5】
駆動部材および選択器部材上の突起部が、第1トルク状態または第2トルク状態の一方から第1駆動状態または第2駆動状態の他方に変更するとき、バックラッシュを制限するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項6】
所与のトルク状態で駆動可能に係合されていない選択器部材は駆動部材から選択的に離されることができる、請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項7】
駆動部材および選択器部材の各係合面上に3つの突起部が設けられた、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項8】
少なくとも2つの駆動部材と少なくとも3つの選択器部材とを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項9】
駆動部材および選択器部材が共通軸を中心に配置され、それらの相対的な軸方向位置が変更されることができるように構成される、請求項8に記載の駆動部材選択機構。
【請求項10】
選択器部材(複数可)がシャフト上に滑動可能に取り付けられる、請求項9に記載の駆動部材選択機構。
【請求項11】
少なくとも1つの選択器部材の位置が少なくとも2つの予荷重付きバネによって決定される、請求項10に記載の駆動部材選択機構。
【請求項12】
少なくとも1つの選択器部材が2つの駆動部材の間に配置され、その各面上に少なくとも1つの突出部を備え、第1面上の突起部(複数可)は1つの駆動部材上の突起部との係合を作用させることができ、第2面上の突起部(複数可)は別の他の駆動部材上の突起部との係合を作用させることができる、請求項8から11のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項13】
駆動部材がギアである、請求項8から12のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項14】
選択器部材の位置を制御するように構成されたシフト機構を備え、シフト機構は、円周トラックが切り込まれた少なくとも1つの回転ドラム部位を備え、各選択器部材は、ドラム部材の回転が選択器部材の位置を決定するように、トラックに結合して取り付けられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項15】
シフト機構が少なくとも2つの選択器部材の位置を制御するように構成され、シフト機構は、任意の所与の時間における駆動係合中の2つ以上の駆動部材の選択を防止するように構成されたゲートをさらに備える、請求項8から13のいずれか一項に従属する請求項14に記載の駆動部材選択機構。
【請求項16】
駆動部材が様々なギア比をもたらし、それぞれが、駆動部材が結合した構成要素を駆動するように作用する正トルク、または結合した構成要素が駆動部材を駆動する負トルクの状態であることが可能であり、シフト機構は、1つのギアの負駆動の選択器部材とそれより高いギアの正駆動の選択器部材とによる同時係合を、または1つのギアの正駆動の選択器部材とそれより低いギアの負駆動の選択器部材との同時選択を防止するように構成される、請求項15に記載の駆動部材選択機構。
【請求項17】
トラックのパターンがドラムの両側で繰り返され、シフト機構は少なくとも2つのシフトアームをさらに備え、それぞれが、ドラムの一方側に結合して、それに形成されたトラックと係合するように構成される、請求項14から16のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項18】
複数のドラムを備え、ドラム同士は実質的に同一であり、相対的回転の変位を伴って取り付けられる、請求項14から17のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項19】
ドラム(複数可)がシフトシャフト上に取り付けられ、ドラムまたは各ドラムは、シフトシャフトの軸に沿って作用する少なくとも2つの弾性部材によって休止位置に向けて押しやられる、請求項14から18のいずれか一項に記載の駆動部材選択機構。
【請求項20】
弾性部材がシフトシャフトの内側に取り付けられるバネである、請求項19に記載の駆動部材選択機構。
【請求項21】
第1面および第2面を有する実質的に環状の本体を備える駆動部材を選択する選択器部材であって、各面上に少なくとも1つの突起部が配置され、突起部は、環状体と接触する基部と勾配面と対合面とを有する傾斜台付き形態を備え、第1面上の勾配面が第2面上の勾配面と反対方向に傾斜するよう配置される、選択器部材。
【請求項22】
対合面が、それが張り出し部を創出するように少なくとも部分的に基部を超えて延びるように形成される、請求項21に記載の選択器部材。
【請求項23】
突起部が、第1側上の傾斜台の先端が第2側上の傾斜台の先端から最小限に円周方向に変位されるように構成される、請求項21または請求項22に記載の選択器部材。
【請求項24】
シャフト上に取り付けられた少なくとも2つのギアとシャフト上に滑動可能に取り付けられ、それに回転可能に結合された少なくとも3つの選択器部材とを備えるギアボックスであって、ギアは実質的に環状であり、第1面および第2面を備え、各面上に少なくとも1つの突起部をさらに備え、選択器部材は実質的に環状であり、その少なくとも1つの面上に、ギアの突起部と選択可能に係合するように構成された少なくとも1つの相補的突起部を備え、その構成は、選択器部材とギアの第1面との突起部同士は正トルクの接続で駆動可能に係合されることができ、選択器部材とギアの第2面との突起部同士は負トルクの接続で駆動可能に係合されることができるようなものである、ギアボックス。
【請求項25】
実質的に本明細書で述べられ、添付図面に示された通りの駆動部材選択機構。
【請求項26】
実質的に本明細書で述べられ、添付図面に示された通りの選択器部材。
【請求項27】
実質的に本明細書で述べられ、添付図面に示された通りのギアボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部材(ギアなど)を選択する装置および方法とそれを組み込んだシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのデバイスで、デバイスを駆動し、その用途および有効性を向上させるために1つまたは複数の駆動部材が選択可能である。おそらく、最も一般的な例は、エンジンによってその時々に行われる仕事に応じてギアが選択されるギアボックスである。
【0003】
車両で使用されるような多段ギアボックスでは、エンジンまたは他の動力源が車輪に接続されておらず、有用な仕事を送達することが可能でない時間を最小限にするために、ギア比間の高速シフティングが極めて望ましい。したがって、高速シフトは車両の性能、特に車両の加速性を向上させる。多数の様々な形態のシフティング機構が車両の分野で使用されている。例えば、運転者がレバーまたはギア切替え装置を使用してギアを選択するマニュアルギアボックスは、一般的に「シンクロメッシュ」係合を使用する。このタイプの機構は、ギア選択器ハブごとに複雑な円錐ブレーキまたは他の摩擦ブレーキ機構を使用して、所謂噛合いクラッチの係合を許す前に、ギアボックスのシャフトの速度を選択されるべきギアと同期させる。当業者によって理解されるように、「噛合いクラッチ」とは、2つの回転する構成要素を干渉によって(例えば摩擦によってではなく)結合させるタイプのクラッチである。このプロセスは最初に、クラッチの使用によってギアボックスからエンジンを係脱することを必要とし、これも通常は運転者によって操作される。
【0004】
このタイプのギアボックスは、以下でより詳しく述べられるように、択一的な自動変速装置と比較して相対的にシンプルであるという利点を有する。マニュアルギアボックスも比較的高効率であり、摩擦損失が小さく、無駄な動力損失がない。しかし、多数の動作が次々と実行されなければならないことから、シフトの回数は比較的少ない。シフトの回数は運転者の技量にも依存する。しかし、このタイプのギアボックスが軽自動車では引き続き最も一般的に使用されている。
【0005】
自動ギアボックスも多くの車両で使用されている。このような自動ギアボックスは通常、多遊星ギア段を備え、そこでは様々なギア比が、一般的に油圧によって作動される多板クラッチ(板が摩擦によって結合される)を使用する機構の様々な要素を連係またはロックすることによって、選択される。典型的には、始動を可能にし、シフティングを助けるために、エンジンは、流体充填型のトルク増倍滑り機構であるトルクコンバータを介してギアボックスに接続される。
【0006】
このタイプのギアボックスは高速シフティングを達成することが可能である。しかし、(i)トルクコンバータ内の比較的大きな動力損失、(ii)多板クラッチ内の摩擦損失、(iii)油圧制御システムからの無駄な動力損失を考えると、これらは比較的低い効率しか有さない。このタイプのギアボックスは、マニュアルギアボックスよりも高重量かつ高コストとなる傾向もある。自動ギアボックスは一般的に大型で豪華な乗用車、ならびにバスを含む一部の高重量車両で使用される。
【0007】
高性能の公道走行車、特に高重量の高パワー車両の高速シフティングのために、二段クラッチギアボックスが使用されることがある。これらのギアボックスは中間ギアを個別のシャフト上に有し、2つのクラッチのうちの一方によって係合される。高速シフティングのために、次のギアが予備係合され、クラッチを交換することによってシフトが行われる。細心のタイミングによるクラッチ操作によって、極めて高速のシフトが達成されることが可能である。しかし、これらのギアボックスは、必要となる追加のクラッチおよびシャフトのために高重量かつ高コストであり、クラッチを操作し、ギアを取り上げて予備選択するために複雑な制御システムも必要とする。この理由から、これらのギアボックスは現在高コストの高性能スポーツカーでしか使用されていない。
【0008】
高速シフティングはレーシングカーで「クラッシュ」ギアボックス内の噛合いクラッチの構成を使用することによって達成される。クラッシュギアボックス内では、比較的大きな速度差を備えた噛合いクラッチの係合を可能にするために、大角度のバックラッシュが使用され、したがって同期化の必要度を縮小する。このタイプのギアボックスを操作するには複雑な制御システムまたは熟練した運転者のいずれかが必要になる。アップシフティングはクラッチを使用せずに行われることが可能であるが、ダウンシフティングは通常二段のクラッチ解除と「踵と爪先」の運転技術とを必要とする。クラッシュギアボックスはモータサイクルで一般的であるが、シンクロメッシュが好ましい選択肢となったことから公道走行車ではあまり使用されない。
【0009】
駆動が前ギアから係脱される前に噛合いクラッチの形態を使用して次のギアで駆動を捉えるシフト機構を使用して、実質的に瞬間的なシフトが実施されることが可能である。このタイプのギアボックスについて、国際公開第01/29440A1号パンフレットおよび国際公開第2004/099654号パンフレットに記載がなされている。過去に、類似の原理で作動する変速装置用選択器についても英国特許第1404385号明細書で記載がなされている。これらの文書は参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
国際公開第2004/099654号パンフレットでは、ギアが対で背中合わせに、対の間に選択器ハブアセンブリが配置された状態で取り付けられているのが分かる。各ギアは、変更ハブの1つを必要なギアに向けて滑動させることによってメインシャフトに係合される。これによってそのギアは、ギアの一方側の噛合いの構成によってシャフトに結合される。ギアを変更するために、前進駆動噛合いが逆進駆動噛合いに連続的に係合され、先に選択されたギアからの前進駆動噛合いを担持する構成要素が、選択されたギア用の逆進駆動噛合いを担持する。したがって、このレイアウトは、複雑な変更ハブアセンブリ内で互いに重なり合うための様々な噛合い構成要素を必要とする。
【0011】
さらにこれらの従来技術の機構は、前進駆動と逆進駆動の両方をメインシャフト上のギアの一方側で係合させる複雑で脆弱なインターロッククラッチ歯構成要素に頼っている。この機構はシフティング構成要素の制御でバネも使用するが、それらのバネは、起動力が生成される前に変位が必要なことから、何れの停止部に対しても予荷重を掛けられず、不充分な制御しか与えられない。さらに、複雑な回転アセンブリの一部としてバネおよび滑動構成要素の使用が必要となることは、速度変化と共にそれらの機能が変化しやすくなることから(求心加速度によって生成される力によって)、望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2001/29440号
【特許文献2】国際公開第2004/099654号
【特許文献3】英国特許第1404385号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術は、シャフトのロッキングと潜在的な壊滅的な故障とを引き起こす不適切なギア選択に対して防護するための複雑な追加の機構をも必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1態様によれば、少なくとも1つの駆動部材と少なくとも2つの選択器部材とを備える駆動部材選択機構であって、駆動部材は第1面および第2面を備え、各面上に少なくとも1つの突起部をさらに備え、選択器部材はその少なくとも1つの面上に、駆動部材の突起部と選択的に係合するように構成された少なくとも1つの相補的突起部を備え、その構成は、選択器部材の突起部(複数可)と駆動部材の第1面の突起部(複数可)とが第1トルク接続で駆動可能に係合されることができ、選択器部材の突起部(複数可)と駆動部材の第2面の突起部(複数可)とが第2トルク接続で駆動可能に係合されることができ、第2トルク接続は第1トルク接続と反対側になるようなものである、駆動部材選択機構が提供されてある。
【0015】
したがって、本明細書で述べられる選択器部材は、少なくとも1つの駆動部材上で選択的に係合する一方向駆動クラッチとして作用することが可能である(本文脈では、用語「選択的に」はそれらが駆動部材から係脱されることも可能であることを意味する)。好ましい実施形態では、少なくとも2つの駆動部材と少なくとも3つの選択器部材とが存在する。そのような場合には、駆動部材(例えばギアボックスのギアである場合がある)の両側にこのような選択器部材を使用することの利点は、構成要素が、複雑なインターロック構成要素を使用する従来技術と比較して簡単かつ堅牢であることが可能であるということである。当業者によって理解されるように、選択器部材は、例えばギアボックス内で、シャフトと共に高速回転することができる。したがって、それらは好ましくは簡単な一部片の構成要素であり、理想的には、求心加速度によって引き起こされる力によって影響を受けるバネ構成要素、内部滑動構成要素、または類似のものを備えない。特に上述の従来技術の重なり合う噛合い構成要素と比較すると、それらは比較的幅狭であることも可能である。例えばオーバードライブ、即ちオフロード車両のローレンジと係合する、または二輪駆動から四輪駆動に係合する駆動ラインの一部として、単一駆動部材しか選択可能でない場合でも、単一噛合いクラッチ(当業者によく知られている場合がある)に勝る利点が存在する。2つの係合部材、即ち前方駆動用の部材と逆方駆動用の部材との使用は、係合中には大きなバックラッシュを、しかし完全に係合されると小さなバックラッシュを可能にして、より信頼性のある、より速い係合を実現し、係合におけるより大きな速度差を可能にする。
【0016】
さらに、ある向きの相対的トルクの駆動部材と駆動可能に係合するようにそれぞれが構成された個別の選択器部材を提供することにより、選択器部材のうちの1つだけが所与のトルクの状態の駆動部材に駆動可能に係合される。このことは、他の部材が選択的に係脱されるのを可能にし、ひいては、別の駆動部材が選択的に係合されることが可能であり、それがトルク伝達の中断なく駆動を「捉える」ことが可能であることを意味する。
【0017】
駆動部材選択機構は、駆動可能に係合されるとき、相補的突起部同士が確実に係合されるように構成されることができる。この「確実な係合」は、駆動係合中、選択器部材が駆動部材から離れることができないように、係脱を防止すする物理的な干渉物、例えば少なくとも1つの突起部上の「張り出し」部位などを含むこともできる。実際、好ましい実施形態では、この構成は、相補的突起部は、駆動係合中、駆動可能に係合された選択器部材と駆動部材とを一緒に引っ張り、または押し付けるように形状化されるようなものであることができる。このことは、駆動係合は選択的または意図的にしか中断されることができないことを保証する。
【0018】
一部の実施例では、突起部および/または選択機構は、選択器部材と駆動部材との間の相対的回転が、駆動係合が存在するトルクの方向とは反対の方向にある場合、駆動部材と選択器部材とは離れるように強いられるように構成される。これは、「一方向駆動クラッチ」の選択器部材が意図された方向とは反対の方向に偶発的に係合されるのを防止する。これは、駆動係合中に対合面を有する傾斜台状突起部を有することによって達成されることも可能である。しかし反対方向の相対的回転が存在する場合には、傾斜台の勾配が、駆動部材と選択器部材とを歯止めの形式で互いの上に乗り上げることを可能にする。しかし、当業者によく知られているように、これだけが形式である必要はない。例えば、選択器部材と駆動部材とは、なんらかの選択機構を使用して物理的に離されることも可能である(しかし上述の「歯止め」構成と比較してこれは複雑さを増すことになる場合がある)。本明細書で使用される用語「対合面」は、別の面/構成要素と接触するように構成された任意の面または構成要素を指し、インターロック、形状化などを暗示しない。
【0019】
一部の実施例では、駆動部材上の突起物は、正トルクの状態から負トルクの状態に変化するときバックラッシュを制限するように構成される。これは、駆動部材の第1側上の突起部の対合面または駆動面が、第2側上の駆動面と接近して位置合わせ、または少なくとも指定の許容値内で位置合わせされることを意味することができる。当然ながら、選択器部材もこれを達成するために正確に取り付けられなければならず、選択器部材が正確に取り付けられることを保証する1つの形式は、選択器部材から、またそれらが取り付けられるシャフトからスプラインがなくなっている取り付け構造を有することである。
【0020】
駆動部材選択機構は、所与のトルク状態で駆動可能に係合されていない選択器部材が駆動部材から選択可能に離されることができるように構成されることができる。これは、選択器部材が異なった駆動部材を係合するように位置決めされることを可能にし、そのことは一部の実施形態で望ましい場合があり、さらに、駆動部材を駆動係合から切り離すために、1つの選択器部材だけが動かされればよいことを意味する。
【0021】
一部の実施例では、駆動部材と選択器部材とは共通軸上に配置され、それらの相対的軸方向位置が変更されることができるように構成される。このような構成は、標準的なギアボックスから当業者によく知られるところであり、軸上に滑動可能に取り付けられる選択器部材(複数可)を備えることができる。
【0022】
少なくとも1つの軸取り付け選択器部材の位置は、少なくとも2つの予荷重付きバネによって決定されることができる。バネは好ましくは固定停止部に対して予荷重が掛けられ、したがって選択器の動きに対する確実な制御がもたらされるが、機構内の最大力は実質的にバネ上の予荷重に制限される。これは特に、2つの駆動部材の間にある選択器部材にとって望ましい。「端部」選択器部材(または単一の駆動部材しか係合させない選択器部材)にとっては、単一のバネで充分である可能性が高い。
【0023】
一実施形態では、少なくとも1つの選択器部材が2つの駆動部材の間に配置されることができ、それらの各面上に少なくとも1つの突起部を備えることができ、第1面上の突起部(複数可)は1つの駆動部材上の突起部(複数可)との係合を作用させることができ、第2面上の突起部(複数可)は別の駆動部材上の突起部(複数可)との係合を作用させることができる。このような「2面」選択器部材を提供することは、多段駆動部材の実施形態で必要とされる構成要素を単純化する。
【0024】
一部の実施形態では、駆動部材および選択器部材の各面上に3つの突起部が設けられることができる。1面ごとに1つから多数の任意の数の突起部が存在することが可能であり、負荷を拡げるためには2つ以上が望ましいことが理解されるであろうが、突起部の数が多くなる場合、製造が複雑になり、突起部は細くかつ小さくなる必要があるので、突起部が脆弱になってしまう場合がある。望ましい突起部の数は、駆動部材選択機構の用途に応じて様々であることができる。
【0025】
この機構は、少なくとも1つの選択器部材の位置を制御するように構成されたシフト機構を含み、円周トラックが切り込まれた回転ドラム部位を備えるシフト機構を備えることができ、選択器部材(複数可)は、ドラム部材の回転が選択器部材の位置(例えば軸方向位置)を決定するように取り付けられる。
【0026】
駆動部材選択器ドラムは、少なくとも2つの選択器部材の位置を制御するように構成されることができ、駆動部材選択機構は、駆動係合している2つ以上の駆動部材を選択することを防止するように構成されたゲートをさらに備えることができる。これはギアの「衝突する」選択を防止する。特に、駆動部材が様々なギア比を提供し、それぞれが、結合した構成要素を駆動部材が駆動するように作用する正トルクの状態、または駆動部材を結合した構成要素が駆動する負トルクの状態であることが可能である場合には、シフト機構は好ましくは、1つのギアの負駆動の選択器部材とそれより高いギアの正駆動の選択器部材とによる同時係合を、または1つのギアの正駆動の選択器部材とそれより低いギアの負駆動の選択器部材との同時選択を防止するように構成される。
【0027】
選択器部材はドラム内に形成されたトラックまたは切出しと結合して取り付けられることができる。好ましくは、トラックには湾曲(複数可)が形成されて、トラックによって形成される経路が軸方向に変化し、トラックはドラムの両側で「対称」である。シフト機構は各ドラムに結合して少なくとも2つのシフトアームを備え、シフトアームはそれぞれドラムの一方側に結合して、そこに形成されたトラックと係合するように構成される。これは、選択器部材が僅かに屈曲し、位置合わせの僅かなずれを吸収することを可能にする。「対称」の性質は、トラック内の形態またはパターン(例えば湾曲(複数可)の)が、ドラムのまわりで180度の変位で繰り返されるようなものである。対称形のトラックは、シフト機構が選択器部材上で実質的に軸方向に作用するのを可能にする(両方のシフトアームがトラックの作用下で同じ軸方向の変位を受けることによる)。
【0028】
複数のドラムを備えた実施形態では、ドラム同士は実質的に同一であることができ、相対的回転変位を伴って取り付けられることができる。同一部品を使用することは、製造上の複雑さを軽減することから望ましい。
【0029】
ドラム(複数可)はシフトシャフト上に取り付けられることができ、各ドラムは、シフトシャフトの軸に沿って作用する少なくとも2つの弾性部材によって休止位置に向けて押しやられる。弾性部材は、選択器部材の位置が安全に保持されることを保証するが、閾値を超える力が万一掛かった際には動きを可能にする。一実施例では、弾性部材はシフトシャフトの内側に取り付けられたバネであるが、他の構成も当業者に思いつかれるであろう。
【0030】
本発明の第2の態様では、第1面および第2面を有する実質的に環状の本体を備える駆動部材を選択する選択器部材であって、各面上に少なくとも1つの突起部が配置され、突起部は環状本体と接触した基部、傾斜面、および対合面を有する傾斜台付きの形態を備え、第1面上の傾斜面が第2面上の傾斜面に対して反対方向に傾くように配置される、選択器部材が提供されてある。対合面(用語「対合」は、面が別の面との接触がもたらされることができることのみを意味することを思い起こされよう)は、基部を少なくとも部分的に超えて延びて張り出し部を創出するように形成されることができる。したがって、例えば、突起部は鋸歯または鈍角不等辺三角形の形態を有することができる。この構成は、好ましくはある向きのみの確実な係合のために構成された歯止めに類似する。したがって、本発明を代替的な形式で表現するために、第1面および第2面を有する実質的に環状の本体を備える駆動部材であって、各面上に少なくとも1つの突起部が配置され、突起部は、環状本体と接触した基部、傾斜面、および対合面を有する傾斜台付きの形態を備え、第1面上の対合面(複数可)は第1の向きの回転で突起部(複数可)を誘導し、第2面上の対合面(複数可)は第2の反対の向きの回転で突起部(複数可)を誘導するように構成される、駆動部材が提供される。
【0031】
選択器部材は実際に、本発明の第1の態様による駆動部材選択機構内の選択器部材として作用するように構成されることができる。勾配付き傾斜台は、相対的回転が存在するところで駆動部材と選択器部材とが互いの上に乗り上げることを可能にし、設けられている場合には「張り出し部」が駆動係合中の意図しない分離を防止し、実際に歯止め装置と類似の形式で駆動系中に接近係合を強制する。
【0032】
選択器部材はシャフト、例えば駆動シャフトと係合する手段を追加的に備えることができる。このような手段は、環状体の内側リングのまわりに配置された、シャフト上の相補的歯と係合するように構成された歯、または他の係合手段を備えることができる。
【0033】
選択器部材は、上述の本発明の第1の態様に関して述べられた特色のいずれも有することができる。同等に、本発明の第1の態様の選択器部材は、本発明の第2の態様に関して述べられた特色のいずれも有することができる。
【0034】
本発明の第3の態様によると、シャフト上に取り付けられた少なくとも2つのギアと、シャフト上に滑動可能に取り付けられ、それに回転可能に結合された少なくとも3つの選択器部材とを備えるギアボックスであって、ギアは実質的に環状であり、第1面および第2面を備え、各面上に少なくとも1つの突起部をさらに備え、選択器部材は実質的に環状であり、その少なくとも1つの面上に、ギアの突起部と選択可能に係合するように構成された少なくとも1つの相補的突起部を備え、この構成は、選択器部材とギアの第1面との突起部同士が正トルクの接続で駆動可能に係合されることができ、選択器部材とギアの第2面との突起部同士は負トルクの接続で駆動可能に係合されることができる、ギアボックスが提供されてある。
【0035】
ギアボックスは、バネ負荷付選択器ドラムと不適切なギア選択を阻止する簡単な手段とを使用する簡単なギア選択機構をさらに備えることができる。したがって、本発明によるギアボックスの簡単さは、どのような車両タイプにも使用できる低コスト軽量、高効率、高速シフティングの変速装置を提供する。
【0036】
シフティングを制御するのに必要なバネ機構は、好ましくは構成要素の動きへの確実な制御を与えるために予荷重が掛けられる(同じ目的で予荷重のない板バネを使用した従来技術のシステムで見られる劣った制御を回避する)。
【0037】
当業者にとって明らかなように、好ましい特色は必要に応じて組み合わされることができ、本発明の態様のいずれとも組み合わされることができる。本明細書で述べられるシフト機構は、他の駆動部材選択機構と共に使用されることができる。
【0038】
本発明がどのようにして実行に移されるのかを示すために、次に本発明の実施形態について添付の図面を参照してあくまで一例として以下に説明がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態の主要な構成要素の完全に係脱された状態のアセンブリを示す図である。
【
図2】
図1の実施形態の主要な構成要素の分解図である。
【
図3】噛合いハブ3b上の噛合い特徴部と対応するギア2上の噛合い特徴部との詳細図である。
【
図4】
図1の実施形態の主要な構成要素の半係合された状態のアセンブリを示す図である。
【
図5】
図1の実施形態の主要な構成要素の完全に係合された状態のアセンブリを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの全体図である。
【
図7】参考のため1つの噛合いハブが分解図で示された、
図6のシフティング機構の構成要素を示す図である。
【
図8】シフトシャフト9と選択器ドラムとの間のバネ接続を示すシフトシャフト9の軸を通した断面図である。
【
図9】1つのギア比が完全に係合された、本発明の実施形態によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの平面図である。
【
図10】第3速度から第4速度へアップシフトを行うプロセスにあるところを示された、本発明によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの平面図である。
【
図11】正駆動のトルクが存在する間にダウンシフトが予備選択されているところを示された、本発明の実施形態によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、完全に係脱された状態の本発明の主要な構成要素のアセンブリを示す。シャフト1は、本明細書で「噛合いハブ」3aと呼ばれる第1選択器部材とギア2の形態の駆動部材と第2噛合いハブ3bとを通過する。ギア2は、この実施形態ではプレーンスラストワッシャと針状ころ軸受けとの組み合わせである低摩擦軸受(ここでは見えない)によってシャフト上に取り付けられて、シャフト1上で軸方向および半径方向に位置付けられるが、シャフト1に対して自由に回転できるようになる。
【0041】
この実施形態では、駆動部材はギア2であるが、他の実施形態では、駆動部材は、シャフトに選択可能で回転可能に係合されることが必要な駆動機構の任意の部品、例えばころ入り鎖スプロケットまたはベルト駆動プーリなどであることができる。
【0042】
特に
図1から
図3を参照して分かるように、噛合いハブ3は実質的に環状であって、2つの面とシャフト1と係合する手段、この実施例では歯付き内側リング6a、6bとを有する。それらは、それらの各面上に配置された複数(この実施例では3つ)の突起部または係合「噛合い」特徴部7a、7b、7f、7eも備える。ギア2も環状であって、歯付き外側面と両側に2つの面とを備える。ギアは複数(この実施例では各面上に3つ)の係合「噛合い」特徴部7c、7dをさらに備える。ハブ3bの噛合い特徴部7は、以下でより詳しく述べられるように、ギア2の噛合い特徴部7と係合するように形状化される。
【0043】
図1の係脱状態で、2つの噛合いハブ3aと3bは、ギア2から軸方向に離して変位されて、ハブ上の噛合い特徴部7a、7bがギア2上の対応する噛合い特徴部7c、7dから係脱されるようになる。留意されるのは、2つの噛合いハブ3a、3bの第2面(図示されるように外側面)上の噛合い特徴部7eおよび7fは、
図1〜
図5に示されたギア2とは係合しないが、メインシャフト上に取り付けられることのできる他のギアと係合するのを可能にするように設けられるということである(
図6以降を参照)。
【0044】
図2は本発明の実施形態の主要構成要素の「分解図」である。図面の下半分は、図面の上半分と同じ構成要素であるが、ギア2の第2側上の噛合い特徴部7を明らかにするように異なった角度から見たものを示す。
図2の上半分では、噛合いハブ3a上の噛合い特徴部7aとギア2の一方側上の対応する噛合い特徴部7dとが見える。
図2の下半分では、噛合いハブ3b上の噛合い特徴部7bとギア2の他方側上の対応する噛合い特徴部7cとが見える。
【0045】
添付の図で示されたこの実施形態では、各噛合いハブ3の各面と各ギア2の各面とは、シャフトの軸を中心に実質的に均等に分配された噛合い特徴部7によってもたらされた3つのこのような突起部を有する。しかし、1面ごとに任意の数の類似の噛合い特徴部7を使用することも、本発明の範囲内で可能である。例えば、より大きな負荷容量が必要な場合、より多くの噛合い特徴部7が使用されることが可能であり、あるいは簡略化するため、またはより大きな速度差での係合を達成するために、より少ない噛合い特徴部7が使用されることが可能である。しかし、1面ごとに3つの噛合い特徴部7を提供することは、噛合い特徴部7同士間の実質的に均等な負荷分散をもたらし、噛合い特徴部7がトルクを伝達するとき自動センタリング作用を与える。4つ以上の噛合い特徴部7が使用される場合、4つ以上の噛合い特徴部7にわたる負荷分散が達成されるべきなら、噛合い特徴部の位置の誤差が負荷下の噛合い特徴部7の偏向よりも小さいことを保証するために高精度の製造が必要となる。1面ごとに3つの特徴部7を使用することは、特徴部間の大きな角度ギャップをもたらして、噛合いハブ3とギア2との間の高相対速度を伴った確実な係合を可能にする。
【0046】
シャフト1は、複数の雄型スプライン歯部位6c、6d(その数はアセンブリ内の噛合いハブ3の数と一致する)を備え、噛合いハブ3の内側リングは対応する雌型スプライン歯6a、6bを担持する。これらの対合するスプライン6c、6cと6a、6bとは隙間嵌めをもって係合するように許容度が付けられる。雄型スプライン歯は雌型スプライン歯よりも幅広であって(即ち軸方向にシャフト1に沿ってさらに延びる)、シャフト1上に配置された後は、噛合いハブ3a、3bは、雄型スプライン歯6c、6dと位置合わせされると半径方向に回転可能にシャフト1に接続されるが、シャフト1へのこの接続を維持しながら軸方向に自由に動くことができる。これは、噛合いハブ3a、3bの噛合い特徴部7a、7bが、シャフト1によって駆動されながらもギア2の噛合い特徴部7c、7dとの係合に出入りすることを可能にする。
【0047】
図3は、噛合いハブ3上の噛合い特徴部7a、7bとギア2上の対応する噛合い特徴部7c、7dとの詳細図を示す。噛合い特徴部7a〜dはそれぞれ、ギア2または噛合いハブ3の側面の上に突き出る傾斜台状ブロックから成る。噛合い特徴部7a〜dはそれぞれ、噛合いハブ3の面と同じ平面内にある基部4eから立ち上がり、勾配面5b、5cと、「対合」または接触面4c、4bとを備える。それはシャフト1の軸から離して角度付けされて、一方が回転可能に他方を駆動するとき、ハブ3の特徴部とギア2の特徴部との間に確実な係合または物理的なインターロックをもたらす。
【0048】
さらに、単一ハブの実施例を取り上げると、噛合いハブ3bがシフティング機構(本明細書で以下に述べられる)の作用によってギア2に向けて動かされると、噛合いハブ3bの噛合い特徴部7bの先行縁部4bは、ギア2の噛合い特徴部7cの先行縁部4cと係合された状態になり、2つの構成要素の間にトルクを伝達する手段をもたらす。トルクの伝達から生じる対合面4b、4c間の接触力は、噛合いハブ3bをギア2に向けて引き寄せる傾向にあって(対合面4b、4cの角度によって)、トルク伝達中に機構が係合から外れ落ちでしまう傾向のないことを保証する。
【0049】
噛合い特徴部7b、7cの勾配面5b、5cは、比較的浅い角度で傾斜する後行縁部をもたらす。噛合いハブ3bとギア2との間に他方の向きでの相対的回転が存在するとき、浅い勾配面5b、5cは容易に互いに乗り上げて、ギア2から噛合いハブ3bを押し離し、そのようにして2つの構成要素間の接続を係脱させる。したがって、噛合い特徴部7a〜fのこの「傾斜台付き」形態は、一方の向きの相対的回転でトルクの確実な係合および伝達を、他方の向きの相対的回転で噛合い特徴部7a〜fの係脱とトルクの無伝達とを実現する。
【0050】
留意されるべきは、
図2の上半分で見られるように、ギア2の一方側上の噛合い特徴部7と噛合いハブ3a上の対応する噛合い特徴部7とは、一方の向きの相対的回転で、噛合いハブ3aとギア2との間に確実な係合および駆動接続を与えるように適合され、ギア2の他方側上の噛合い特徴部7と噛合いハブ3b上の対応する噛合い特徴部7とは、他方の向きの相対的回転で確実な係合および駆動接続を与えるように適合されることである。したがって、両方の噛合いハブ3がシフティング機構(後で述べられる)の作用によってギア2に向けて動かされると、ギア2と噛合いハブ3a、3bとの間の両方の向きの相対的回転で、また両方の噛合いハブ3a、3bがスプラインによってシャフトに接続されるとから、シャフト1への確実な駆動係合が存在する。
【0051】
図4は、本発明の主要構成要素の「半係合された」状態のアセンブリを示す。噛合いハブ3aはギア2と接触し、噛合い特徴部7の対合面4a、4dは互いに接触している。噛合いハブ3bは、噛合い特徴部の突起部の先端同士の間に隙間が存在するように、ギア2から軸方向に離して変位される。したがって、この状態では、ギア2は、一方の向きの相対的回転(例えば正トルク/前方駆動)でシャフト1に回転可能に接続されるが、他方の向き(例えば負トルク/逆方駆動)では接続されない。
【0052】
図5は、本発明の主要構成要素の「完全係合された」状態のアセンブリを示す。両方の噛合いハブ3a、3bがギア2と接触している。噛合いハブ3上の噛合い特徴部7a、7bの先行縁部はギア2上の噛合い特徴部7c、7dの対応する先行縁部と係合している。したがってこの状態では、ギア2は両方の向きの相対的回転および駆動で回転可能にシャフト1に接続される。留意されるべきは、噛合いハブ3a、3bのシャフト1上への組み立ては、この完全係合の状態でのみ、噛合い特徴部7の先行縁部同士の間に接線方向の小さな隙間が存在するように選択されることである。この接線方向の小さな隙間は、この完全係合状態でギア2とシャフト1との間にほんの少量のバックラッシュしか存在しないことを保証する。公道走行車両、とりわけ乗用車両では、乗客の快適さのために小さなバックラッシュが望ましく、これによって、例えば運転者がアクセルペダルから足を外すときなど、トルクの逆転が起こる度に駆動ライン内のねじれ方向の衝撃を最小限にする。噛合い部同士間に最小限の量の隙間が設けられて、角度付きの先行縁部を有する噛合い特徴部7a〜fの係合を可能にして(この実施形態で示される通り)確実な係合を実現し、製造許容差に余裕をみれる。
【0053】
図6は、本発明によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの全体図である。メインシャフト1aは、レイギア8とそれぞれが噛み合う様々な直径の4つのギア2a、2b、2c、2dを担持する。レイギア8にはその長さに沿って4つの噛合いギアが形成される。本発明のこの実施形態では、メインシャフト1aが入力であり、レイギア8が出力である。ギア2a〜dのうち1つが、噛合いハブ3を使用してそれをメインシャフトに回転可能に接続することによって選択されると、入力シャフト1aとレイギア8との間に駆動接続が存在し、入力シャフト1aのレイギア8に対する相対速度は、選択されたギア2とレイギア8上の噛合いギアとの歯数同士の比である。各ギアの直径および歯数は、隣接し合うギア対同士間で実質的に類似のギア比の差を達成するように選ばれて、シフトがなされる際に入力速度の類似の段階的変化を実現する。
【0054】
シフト機構は、いくつかのシフト機構10に接続されたシフトシャフト9を備える。この4速の例示的実施形態では、このようなシフト機構が5つ、各噛合いハブ3に1つずつ存在する。
図1に示されるように、メインシャフト1a上の各ギア2間の噛合いハブ3には、隣接し合うギア2のいずれかと係合する噛合い特徴部7が両側に形成される。この図面内に示されたメインシャフト1aの各端部上の噛合いハブ3は、隣接する噛合いギア2と係合する特徴部7を一方側のみに有する。しかし、便宜上、所与のギアボックス内で使用される様々な構成要素の数を最小限にするため、かつ不正確な組み立てに対して防御するために、ギア2同士の間に使用されるのと同じ「両側」噛合いハブ3がメインシャフト1aの端部上で使用されることも可能であり、その際その外側噛合い特徴部7は不必要となる。
【0055】
メインシャフト1a、レイギア8、およびシフトシャフト9はケーシング内で適切な軸受け上で支持され、各シャフトの端部ごとに1つの軸受けがある。この図面ではケーシングおよび軸受けは示されていないが、適切な軸受けが当業者によく知られている。
【0056】
図7は、1つの噛合いハブ3に結合されるシフティング機構の構成要素の分解図である。シフトシャフト9上に選択器ドラム11が取り付けられる。シフトアーム12a、12bが、1つが各選択器ドラム11の上に、1つがその下に取り付けられ、枢動ピン13によってギアボックスケース(図示されず)の中に位置付けられる。枢動ピン13は、ケースと共に静止状態となるようにギアボックスケース内の穴内に位置付けられる。枢動アーム12a、12bそれぞれの一方端部上に、ピン15が存在し、これが選択器ドラム11の外側直径内に切り込まれたトラック16と係合する(トラック16を見るために
図9も参照)。
図9に示された組み立てシフティング機構でおそらくより充分に理解されることが可能であるように、トラック16の軸方向位置はドラム11の円周のまわりで変化する。ドラム11がシフトシャフト9と共に回転するにつれて、したがってピン15は軸方向に動かされ、シフトアーム12a〜bは枢動ピン13のまわりで枢動する。シフトアーム12a、12bの他方端部上にはシフトスラストリング14が取り付けられる。シフトスラストリング14の外側上に形成されたピン17が、シフトアーム12a、12bの端部内の穴を通り抜けて、シフトスラストリング14がアーム12a、12bの端部上で枢動することが可能になる。シフトスラストリング14は、その内側直径のまわりに溝18を有するように形成され、溝18は、噛合いハブ3の外側直径上に形成された畝19に取りつく。シフトスラストリング14が噛合いハブ3に取りつくとき、溝18の内側と畝19の外形との間に軸方向の小さな隙間が存在して、噛合いハブ3がリング14の内側で自由に回転することが可能であるようになるが、リング14が軸方向に変位される場合、噛合いハブ3も軸方向に変位される。具体的には、シフトアーム12a、12bが、回転されている選択器ドラム11の作用によって枢動すると、したがってシフトスラストリング14は軸方向に変位され、それと共に噛合いハブ3も変位される。
【0057】
ここに図示される実施形態では、ギアボックスには、ギアおよび軸受けの冷却用および潤滑用の油が部分的に充填されていると考えられる。したがって、この油が溝18の内側と畝19との間に潤滑をもたらして、ギアボックスが高速度で回転するときに、ギア選択の目的で噛合いハブ3を変位させる能力のあるスラスト軸受けを形成する。当業者によく知られているように、溝18と畝19との間の接触面積を縮小して摩擦を軽減し、潤滑を助けるように、溝18の内側面の一部が、隆起したスラストパッドを残すように切り込まれることができる。
【0058】
他の実施形態では、シフトスラストリング14と噛合いハブ3との間のスラスト軸受けは任意の他の適切な形態のスラスト軸受け、例えば針状ころスラスト軸受け、玉軸受け、または球面ころ軸受けなどであることができる。当業者によく知られているように、このような軸受けはいずれも噛合いハブ3の軸方向の変位を引き起こす能力がある。
【0059】
図8は、シフトシャフト9と選択器ドラム11との間のバネの接続を明らかにするシフトシャフト9の軸を通した断面図である。シフトシャフト9は、一連のスロット22(
図9も参照)が管壁に切り抜かれた管を備える。各選択器ドラム11の両側に1つずつあるピン21がスロット22を通り抜け、選択器ドラム11の両側で切り出されたトラック25と係合する。各選択器ドラム11同士の間のシフトシャフト9の内側にバネ24が装着され、各バネ24の各端部上にバネカップ23があり、バネカップ23はピン21に当てる。バネ24は、各バネカップ23同士の間のギャップよりも長くなるように選択されて、それらがアセンブリ上で部分的に圧縮されるようになり、そのようにしてピン21に規定の予荷重をもたらす。バネカップ23が当たる各ピン21の中央部位は小直径であって、ピン21が選択器ドラム11の軸方向の変位によって露出される場合でも、ピン21をシフトシャフト9内の定位置内に保持するようにバネカップ23の両側に段が存在するようにする。留意されるべきは、シフトシャフト9内のスロット22の端部同士のギャップと選択器ドラム11内の切出しトラック25同士間の材料の軸方向の厚みとは、実質的に同じであって、バネ24からのピン21上の予荷重がピン21をスロット22の端部と接触した状態で保持し、選択器ドラム11がシフトシャフト9の軸に沿ってピン21同士の間に確実に位置付けられるようになるということである。スロット22を通過し選択器ドラム11内の切出し部25の中に至るピン21は、シフトシャフト9とドラム11との間に回転接続をもたらすが、スロット22の長さの中で軸方向の変位を可能にする。バネ24内の予荷重を超える力がシフトシャフト9に沿って選択器ドラム11を押すように作用する場合、ピン21はスロット22に沿って動き、バネ24をさらに圧縮して、回転接続を維持しながら選択器ドラム11の軸方向の変位を可能にする。したがって選択器ドラム11はシフトシャフト9の長さに沿って確実に位置付けられて、シフトアームと噛合いハブ3のシフト1に沿った動きとに対して確実な制御をもたらすことが可能であるが、バネ24内の予荷重によって規定された負荷が超過される場合、選択器ドラム11は軸方向にシフトシャフト9に沿って変位されることができる。
【0060】
留意されるべきは、この実施例では、各選択器ドラム11は、軸方向の変位を可能にするように隙間嵌めを伴ってシフトシャフト9の上に装着され、さらに、選択器ドラム11の内部穴28は二重円錐の形態であって、シャフト9上でのドラム11の幾分かの位置合わせ不良を許容するということである。さらに留意されるべきことは、この例示的実施形態の2つのシフトアーム12aおよび12bは互いに無関係に枢動することが可能であるということである。このことは、製造許容差などによる各構成要素の幾何学的形状の変化を許容する機構の柔軟度の量をもたらす。次いで噛合いハブ3が、シフト機構によって過度に抑制されずにギア2に接触するのを可能にされる。これも留意されることは、選択器ドラム11を、そのトラック内で2つのピン15の一方が他方に真反対に係合した状態で使用することは、選択器ドラム11上のシフトアーム12から生じる力がバネ24上のシャフト9の実質的に中心線で作用することを確実にすることである。したがってこの構成は、ギア2上の噛合い特徴部7に係合する噛合いハブ3上の噛合い特徴部7の作用によってドラム11が軸方向に変位される場合に、ドラム11がシフトシャフト9上で固着する傾向に抵抗する。
【0061】
留意されることは、この実施例では、使用される様々な構成要素の数を最小限にし、不正確な組み立てを防止することによるコスト効果の高い製造のために、シフトシャフト9に装着される選択器ドラム11はそれぞれ同一の構成要素であること、それらの角度および軸方向位置はシフトシャフト9に切り抜かれた様々なスロット22の位置によって決定されることである。また選択器ドラム11同士は、適正に機能するのに特定の配向で設置される必要がないように対称であるように設計される。しかし、全ての実施例でそうである必要はない。
【0062】
図7はシフトシャフト9に装着された選択器ドラム11を示す。ドラム11に隣接しているのはゲート26である。ゲート26はギアボックス(図示されず)のケースに固定され、各選択器ドラム11の縁部が通過する一連のスロットを有する。ドラム11とゲート26内のスロットとの間に隙間が存在して、通常動作でドラム11がゲート26と接触せずに自由に回転するようになる。各ドラム11の端面には、ゲート26内のスロットに隣接して切出し部27が存在する。ある種の角度位置で、ドラム11の切出し部27はゲート26と位置合わせされて、選択器ドラム11がシフトシャフト9に沿って軸方向に変位される場合、切出し部27がゲート26と係合し、ドラム11とシフトシャフト9全体との回転が切出し部の角度に制限されるようになる。これは、次に述べられる通りに、ギアボックスを損傷する可能性のある、噛合いハブ3の動きのある種の組み合わせを阻止する機構を実現する。他の角度位置では、切出し部27はゲート26と位置合わせされずに、ドラム11の軸方向の動きがゲート26によって制限されるようになる。
【0063】
留意されるべきことは、シャフトアーム12上のピン15が、ピンの軸方向の変位を引き起こすトラック16の部位内にあって、シフトアーム12を動かし、噛合いハブ3を動かしてギア2との係合へと至らせるとき、選択器ドラム11内の切出し部27はゲート26と位置合わせされるということである。選択器ドラム11内のトラック16の残りの部位は軸方向の変位をもたらさず、したがってピン15がトラックのこの部位内にあるとき、噛合いハブ3は、ギア2同士間の実質的に中間位置に保持されて、ギア2とは係合されず、切出し部27はゲート26と位置合わせされずに、ドラム11の軸方向の変位はドラムの縁部とゲート26との間の隙間に制限される。
【0064】
このシフト機構は、他の駆動部材選択アセンブリ内でも使用されることが可能である。
【0065】
図9は、1つのギア2が完全に係合された、本発明によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの平面図である。具体的には、噛合いハブ3aおよび3bはギア2aと係合される。シフトシャフト9は、選択器ドラム11aおよび11b内のトラック16aおよび16b内のピン15a、15bがギア2aから軸方向に離して変位されて、シフトアーム12aおよび12cが枢動ピン13a、13bのまわりで枢動されて噛合いハブ3をギア2aと係合された状態で保持するようになる角度位置にある。
【0066】
ここに図示された本発明の好ましい例示的実施形態は、従来型エンジン駆動車両で使用するように構成される。この用途のために、ギアボックスは、アップシフトが実質的に正トルクの伝達で実施され(即ち入力シャフトのトルクの向きが回転の向きと同じであるとき)、ダウンシフトが実質的に負トルクで実施される(即ち入力シャフトのトルクの向きが回転の向きと反対であるとき)ように組み立てられる。アップシフトはあるギア比から別のギア比への移行であり、これは一定の出力シャフト速度に対する入力シャフト速度の低下をもたらし、通常車両が加速する際に連続的に実行される。ダウンシフトはあるギア比から別のギア比への移行であり、これは一定の出力シャフト速度に対する入力シャフト速度の上昇をもたらし、通常車両が減速する際に連続的に実行される。
【0067】
図9では、留意されるべきは、各ギア2の右手側の面上の噛合い特徴部7と噛合いハブ3上の噛み合う噛合い特徴部7とは、ギア2とシャフトとの間に正駆動のトルク接続をもたらすこと、各ギア2の左手側上の噛合い特徴部7はギア2とシャフトとの間に負駆動トルクをもたらすことである。ギアボックスが正トルクを伝達するとき、したがってギア2aの右手側上の噛合いハブ3bが、
図9に示されるように入力シャフトからギア2にトルクを伝達するとき、レイギアとそのとき噛み合うギア2が出力を駆動する。留意されるべきは、トルクの伝達時、噛合い特徴部7の角度付き面、ならびに噛合いハブ3とシャフト1との間のスプライン接続の摩擦によって、噛合いハブ3は、ギア2をシャフトから係脱させるように即座にギア2から離されることができないということである。シフトシャフト9上のバネ24内の予荷重が制限されて、係脱が比較的小さなトルクレベルでしか起こることが可能とならないことを保証する。
【0068】
しかし図面で示されるように、噛合いハブ3aには、正トルクが伝達されるとき負荷が掛けられずに、シフト機構によって強いられれば自由にギア2aから離れられる。
【0069】
図10は、第3速度から第4速度にアップシフトをなすプロセスにあるところで示された本発明によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの平面図である。シフトシャフト9は第4ギアの位置まで完全に回転されている。噛合いハブ3bはトルクを入力シャフトからギア2aに伝達していて係合した状態に保持されている。関連した選択器ドラム11bはシフトシャフト9に沿って変位される。別の噛合いハブ3cが、シフトシャフト9内のバネ24の作用によってギア2bに向けて動かされている。第3ギア2aが未だ係合されていることから、ギア2bはシャフト1aおよび噛合いハブ3よりも低速で回転して、噛合い特徴部7の傾斜台付き面同士が互いに乗り上げて、噛合いハブ3を係合していないギア2bから押し離す。噛合いハブ3は、シフトシャフト9の内側のバネ24を圧縮することによってギア2bから離れて動くことを可能にされる。さらなる噛合いハブ3aが、シフトシャフト9の内側のバネ24の作用によって第4ギア2bに向けて動かされている。第4ギア2bと噛合いハブ3aとの間の噛合い特徴部7は正駆動であり、メインシャフトは第4ギアよりも高速で回転し、したがって噛合いハブ3が軸方向にギアに向けて動かされるにつれて、噛合い特徴部7の先行面同士が接触し、シャフトとギア2との間に正駆動が達成される。噛合いハブ3aによって駆動が捉えられるにつれて、噛合いハブ3b上の負荷は弛緩され、次いでギア2aはメインシャフト1よりも速く回転している。次いで噛合い特徴部7上の傾斜台が、噛合いハブ3bをギア2aから押し離されるようにし、シフトシャフト9内のバネ24も選択器ドラム11をニュートラルな位置に戻す。
【0070】
噛合いハブ3aがギア2bと係合した後は、メインシャフトはギア2bと同じ速度で回転し、したがって噛合いハブ3cはギア2bと完全に係合した状態に入ることが可能となる。次いで第4ギアは完全に係合され、シフティングのプロセスは完了する。
【0071】
留意されるべきことは、シフトは、係合または係脱された2つのギア2同士間にある中間噛合いハブ3の軸方向の動きによって達成されるということである。この噛合いハブ3は、係脱されているギア2に対しては負駆動の構成要素であることから、自由に動いてシフトを開始し、係合されるべきギア2に対しては正駆動の構成要素であることから係合をなす。中間噛合いハブ3によって係合がなされた後は、正駆動の噛合いハブ3は前に選択されたギア2から解放され、同期化が達成されて、係合されつつあるギア2上の負駆動の噛合いハブ3が係合に完全に入ることを可能にする。
【0072】
より一般的に表現すると、正駆動の選択器部材がより高いギアの駆動部材に向けて動かされる場合、各駆動部材上の突起部の先行縁部同士は異なったギア比のために互いに向かって動く。先行縁部同士が接触すると、より高いギアの駆動部材によって駆動が捉えられ、より低いギアの駆動部材用の選択器は係脱される。より低いギアからの駆動はより高いギアによって駆動が捉えられた後でのみ係脱されることから、トルク伝達に妨害が起こらず、シフトは実質的に瞬間的であることができる。
【0073】
ダウンシフトは、負トルクが伝達される間に中間ギア2の動きの同じ機構によって完了される。従来型エンジン駆動の車両の場合には、これはダイバーがアクセルペダルから足を外したときに起こる。
【0074】
正駆動トルクが要求されるとき、例えば車両が勾配を登っており、車両速度が降下しているときなどでダウンシフトが必要な場合、異なったシフトプロセスがとられる。ギアボックスが正トルクを伝達する間に、シフトシャフト9を次に低いギア位置に回転させることによってシングルダウンシフトが予備選択されることができる。中間噛合いハブ3は自由に動くことができない。これは、それがギア2と入力シャフトとの間の正駆動の係合であることによる。したがって中間ギア2用の選択器ドラム11はシフトシャフト9に沿って軸方向に変位され、シフトシャフト9の内側のバネ24はさらに圧縮される。係合されるべきより低いギアの負駆動の噛合いハブ3はギア2と接触するようにもたらされるが、ギア2よりも低速で回転しているので、係合しない。シフトを完了するために、この実施例では、運転者は少しの間駆動トルクを減少または逆転させて中間噛合いハブ3を解放する。これは、アクセルを持ち上げることによって、あるいはクラッチペダルがあればそれを下げることによって最も簡単に達成される。中間噛合いハブ3を通して伝達されるトルクが弛緩されるや否や、シフトシャフト9内の圧縮バネ24が噛合いハブ3を動かしてより低いギアと係合させ、負噛合いハブが係合し、ギア2とシャフト1とは同期化され、前方噛合いハブは係合に入ってダウンシフトを完了する。
【0075】
2つ以上のシフトが試みられるときに、トルクを低下させることによってシフトが完了されるのを可能にせずに、噛合いハブ3を係合した状態へと保持する正駆動のトルクが存在する場合、それを防止するためのステップがとられないならば、他のギアの正駆動の噛合いが未だ係合されている間に低ギア用の負駆動の噛合いハブが係合される可能性が存在する。これは、アセンブリに大きなダメージを及ぼす可能性のあるロックアップ状態をもたらすことになるが、以下で明記されるように対処されることが可能である。
【0076】
図11は、正駆動のトルクが存在する間にダウンシフトが予備選択された、本発明によるシフティング機構を含む4段ギアボックスの平面図である。噛合いハブ3bがギア2aと係合した状態で保持されている。噛合いハブ3dはギア2cに向けて動かされるが、ギア2aが未だ係合されていることによってギア2cがメインシャフトよりも高速で回転しているので、逆の駆動噛合いハブ3dは係合しない。この状態で、シフトシャフト9は、完全に係合されたより低ギアに対応する位置に回転されている。噛合いハブ3bがギア2aと係合した状態で保持されながら、選択器ドラム11bはシフトシャフト9に沿って変位され、切出し部27はゲート26と係合される。したがって、シフトシャフト9が、第2のダウンシフトを予備選択するようにさらに回転されることは可能でなく、ロックアップ状態が防止される。各選択器ドラム11の両側に類似の切出し部が存在し、各選択器ドラム11の両側にゲート26が隣接する。したがって同様に、負トルクが伝達される間に2つ以上のアップシフトを予備選択することが防止される。したがって、切出し部27は、1つのギア2の負駆動の噛合いハブ3とそれより高いギア2の正駆動の噛合いハブ3との同時係合を防止し、1つのギア2の正駆動の噛合いハブ3とそれより低いギア2の負駆動の噛合いハブ3との同時選択も防止する。
【0077】
この実施例のシフトシャフト9は各シフト上で所定の角度で回転されなければならない。手動操作では、これは、当業者によく知られた任意の形態の割出し機構、例えばモータサイクルのギアボックス内の選択器ドラムの割出しに使用される歯止め機構を使用することによって最も容易に達成される。代替方法として、任意の形態の回転式アクチュエータ、例えば電気サーボモータ、油圧サーボモータ、または空気圧サーボモータも使用されることが可能である。
【0078】
ギアの適切な選択を達成するために必要な噛合いハブ3の制御を提供する他のシフティング機構、例えば他の機械的な手動操作装置や、個々のアクチュエータの使用、例えば噛合いハブ3ごとに電気測定アクチュエータ、油圧アクチュエータ、または空気アクチュエータを使用することも、本発明の範囲内で当業者によって考案されることができる。本発明によるギア機構を操作するために電子的または他の形態の制御システムも使用されることができる。これは単に、シフトをなすタイミングを決定して機械的シフト機構を使用してシフトを自動化する手段の形態をとることも可能であるし、あるいは必要なシーケンスで個々の噛合いハブ3の操作を制御するシステムであることも可能である。
【0079】
上述の、添付図面に示された本発明の例示的な好ましい実施形態は、本発明によるギアボックスの、その様々な構成要素および機能について述べる目的の単なる実施例として見なされるべきである。当業者には本発明によるシフティング構成要素および機構が任意の目的の多数の様々な構成のギアボックスまたは変速装置で、例えば任意の数の異なった選択可能なギアを使用して、または2つ以上のシャフト上に選択可能なギアを取り付けて使用されることができることが明らかである。
【0080】
本発明によるギアボックスによって実施されるギアシフトは、クラッチを使用する必要なく(そのようにして使用の複雑さを軽減する)、駆動エンジンまたは他の回転動力源の速度で実質的に瞬間的な段階的変化をもたらす。この動力源はいくらかの慣性を有することから、接続された駆動ラインにトルクパルスが付与されてあることになる。車両の駆動ラインには、トルクパルスを吸収する様々な源のねじれ撓み性が存在し、それには例えば駆動シャフト、クラッチ板バネ、およびタイヤなどがある。高性能車両、例えばスポーツカーまたはレーシングカーの場合には、このトルクパルスは運転者に受け入れ可能であることができるが、高レベルの洗練性を必要とする車両では、駆動ライン内にさらにねじれ撓み性の高い構成要素、またはトルクを制限する構成要素を含むことが望ましい場合がある。代替方法として、シフトが完了される間にエンジンを完全または部分的に係脱させるために従来型クラッチが使用されることができる。
【0081】
留意されるべきは、本発明によるギアボックスまたはいずれの構成要素も、構成要素のシャフトへの選択的結合を必要とするどのような機構にも使用されることができるということである。これも留意されるべきは、本明細書で述べられるギアボックスまたはいずれの構成要素も、例えば電気モータを車両の車輪に結合する変速装置内で、任意の回転式動力源および回転負荷と併せて使用されることができることである。本発明と併せて使用されることが可能な回転動力源の他の例には、以下に限られないが、油圧モータ、空気圧モータ、内燃エンジン、およびガスタービンエンジンが含まれる。
【0082】
本明細書の教示の理解のために述べると、当業者に明らかなように、本明細書で与えられるいかなる範囲値または装置値も、求められる効果を失わずに拡大または変更されることができる。
【国際調査報告】