(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-533204(P2015-533204A)
(43)【公表日】2015年11月19日
(54)【発明の名称】軸受け、特に転がり軸受け又は滑り軸受け用の軸受け軌道輪
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20151023BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20151023BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20151023BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20151023BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/06
G01L3/10 301J
G01L5/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-527795(P2015-527795)
(86)(22)【出願日】2013年8月5日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月24日
(86)【国際出願番号】DE2013200095
(87)【国際公開番号】WO2014029396
(87)【国際公開日】20140227
(31)【優先権主張番号】102012215085.4
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ドレッシャー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベンカート
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヘアニング
(72)【発明者】
【氏名】アーミン ゲアナー
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】ホアスト ブレーム
【テーマコード(参考)】
2F051
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AB05
2F051BA03
3J217JA02
3J217JA03
3J217JA14
3J217JA24
3J217JA34
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3J701AA02
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3J701AA62
3J701AA72
3J701AA81
3J701BA80
3J701FA60
(57)【要約】
本発明は、特に転がり軸受け又は滑り軸受け用の軸受け軌道輪であって、第1の軸受け軌道(2)と軸方向に間隔を置いた第2の軸受け軌道(2’)とを有する、磁歪材料から成る本体と、本体の回転軸線(9)周りを延在する、軸受け軌道(2,2’)の間で本体の材料に押込み加工された永久的な磁化部(3)と、を備える軸受け軌道輪に関する。軸受け転動輪は、本発明によれば、逆磁歪効果を利用してトルクに依存する磁界を発生させるトルクセンサの軸受けへの構造的な組込みを改善するという課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に転がり軸受け又は滑り軸受け用の軸受け軌道輪であって、
第1の軸受け軌道(2)と軸方向に間隔を置いた第2の軸受け軌道(2’)とを有する、磁歪材料から成る本体と、
前記本体の回転軸線(9)周りを延在する、前記軸受け軌道(2,2’)の間で前記本体の材料に押込み加工された永久的な磁化部(3)と、
を備えることを特徴とする、軸受け軌道輪。
【請求項2】
前記永久的な磁化部(3)は、前記回転軸線(9)周りを第1の周方向で延在する第1の磁化された区分(3a)と、前記回転軸線(9)周りを第1の周方向とは逆向きに延在する、軸方向に間隔を置いた第2の磁化された区分(3b)とを備える、請求項1記載の軸受け軌道輪。
【請求項3】
前記永久的な磁化部(3)は、前記回転軸線(9)周りを第1の周方向で延在する、表面付近の部分磁化部と、前記回転軸線(9)周りを前記表面付近の部分磁化部とは逆向きに延在する、半径方向で間隔を置いた表面から離れた部分磁化部とを備える、請求項1又は2記載の軸受け軌道輪。
【請求項4】
前記本体の端部に又は端部付近に連結区分(8,8’)が設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の軸受け軌道輪。
【請求項5】
前記連結区分は、キーを備える、又は、歯列結合部もしくは多角結合部として構成されている、請求項4記載の軸受け軌道輪。
【請求項6】
前記連結区分は、ねじ山を備える、請求項4記載の軸受け軌道輪。
【請求項7】
前記軸受け軌道(2,2’)のうちの少なくとも1つ、特に両軸受け軌道は、前記永久的な磁化部(3)を有する区分(13)に対して、前記回転軸線(9)に関して半径方向にずらして配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の軸受け軌道輪。
【請求項8】
前記本体は、一体的に構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の軸受け軌道輪。
【請求項9】
前記永久的な磁化部(3)は、両前記軸受け軌道(2,2’)に対して軸方向の中央に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の軸受け軌道輪。
【請求項10】
2つの軸受け軌道輪を備え、特に内輪として構成された第1の軸受け軌道輪(1)が請求項1から9までのいずれか1項記載のように構成されている、軸受け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、軸方向に間隔を置いた2つの軸受け軌道を有する軸受け軌道輪、特に転がり軸受け又は滑り軸受け用の軸受け軌道輪、並びに請求項10に記載の軸受けに関する。
【0002】
実地から、回転する要素、特に軸を、少なくとも1つの軸受け、特に転がり軸受け又は滑り軸受けを用いて、接続構造体、特に軸受けハウジングに対して回動可能に支持することが公知である。この場合、回転する要素、特に軸は、大抵は、少なくとも部分的に軸受けにも伝達されるトルクを伝達するので、軸受けの域において、特に転がり軸受け又は滑り軸受けの複数の軸受け軌道輪のうちの1つの域においてトルクを把握する要求が生じる。
【0003】
先行技術において、原則的に、軸におけるトルクを把握するために磁歪測定原理が知られており、この場合、逆磁歪効果を利用して、軸に導入されるトルクにより発生させられる機械的な負荷が、軸の磁歪材料に磁界を発生させる。この磁界は、機械的な負荷ひいてはトルクの評価基準である。
【0004】
独国特許出願公開第10136438号明細書において、
図13に関して、単列の転がり軸受け、より具体的には単列の玉軸受けの軸受け外輪が記載されている。前掲明細書では、軸受け外輪は、環状の磁化部を有するので、外側から軸受け外輪に半径方向で作用する力の作用下で、追加的な軸方向の磁化部が生じ、その磁界は、磁歪センサ要素により、転がり軸受けの両軸受け軌道輪の間で検出されるので、転がり軸受けに掛かる半径方向力を測定することができる。前掲明細書では、どのようにして単列の玉軸受け内で回転可能に支持された軸のトルクを測定できるのかについてははっきりしていない。
【0005】
独国EP特許の翻訳文第69732183号明細書には、共通の第1の軸受け軌道輪と2つに分けられた第2の軸受け軌道輪とを備える2列の円錐ころ軸受けが記載されている。前掲明細書では、第2の軸受け軌道輪の両要素の間に間座リングが配置されている。間座リングには、歯付輪が取り付けられており、歯付輪は、回転速度を検知するための信号発信器として用いられる。
【0006】
独国特許出願公開第102010047928号明細書には、転がり軸受け、特に円錐ころ軸受けの2列の軸受け軌道輪が記載されている。前掲明細書では、軸受け軌道輪の両走行軌道の間の中央に、センサ、例えばひずみゲージ又は圧電セラミック力センサが、別の軸受け軌道輪に向いた周面上に配置されている。
【0007】
特開2001−033322号公報(要約書)には、単列の玉軸受けの軸受け軌道輪が記載されている。前掲公報では、玉軸受けの、別の軸受け軌道輪に向いた周面上に、トルクセンサのための信号発信器として働かせるために、磁気弾性材料の構造化された被覆が取り付けられており、トルクセンサは、両軸受け軌道輪の間で、構造化された被覆の、トルクに依存する磁界を検出する。構造化された被覆は、球形の転動体の走行軌道の片側で、軸方向に延長された区分に配置されている。
【0008】
米国特許第8079275号明細書には、単列の玉軸受けとして構成された転がり軸受け用の軸受け内輪が記載されている。前掲明細書では、軸受け軌道輪の外側で、軸方向で内輪の端面の横において、磁歪材料から成る軌道輪ボディが軸上に取り付けられており、この場合、別の軸受け軌道輪に磁気センサが取り付けられており、この場合、このセンサは、軸受け外輪の軸方向の延長部にもしくは軸受け外輪に取り付けられた保持スリーブに配置されていて、この配置により、磁気センサは、磁歪軌道輪ボディに半径方向で対向する。
【0009】
独国特許出願公開第102006054179号明細書には、軸アセンブリが記載されている。この軸アセンブリは、軸方向で入力軸と出力軸とに分けられた軸と、入力軸及び出力軸にトルク接続式に結合されたねじり要素であって、トルクフリー状態で軸の回転軸線周りを延在する永久的な磁化部を有する、ねじり要素と、磁気センサとして構成されたトルクセンサであって、ねじり要素のトルク負荷状態でねじり要素の外側に発生する磁界を検出する、トルクセンサとを備える。入力軸もしくは出力軸の支持は、ねじり要素から構造的に分離された、詳説されない軸受けによりもたらされるので、軸受けに対して追加的に設けるべき構成要素としてねじり要素を設ける必要がある。
【0010】
発明の課題
本発明の課題は、逆磁歪効果を利用してトルクに依存する磁界を発生させるトルクセンサの軸受けへの構造的な組込みを改善することである。
【0011】
発明の概要
この課題は、特に転がり軸受け又は滑り軸受け用の軸受け軌道輪であって、第1の軸受け軌道と軸方向に間隔を置いた第2の軸受け軌道とを有する、磁歪材料から成る本体と、本体の回転軸線周りを延在する、軸受け軌道の間で本体の材料に押込み加工された永久的な磁化部と、を備える軸受け軌道輪によって解決された。
【0012】
軸受け軌道輪の両軸受け軌道の間で、軸受け軌道輪の、磁化された材料から形成され本体に押込み加工された、本体の回転軸線周りを延在する永久的な磁化部は、トルクに依存する磁界を形成し、この場合、軸受け軌道輪は、トルクを導く軸にトルク接続式に結合されている。両軸受け軌道の間の永久的な磁化部の配置は、軸受けが転がり軸受けとして構成されている場合に転がり軸受けの転動体が軸受け軌道に沿って転動するところの転動体の影響、もしくは軸受けが滑り軸受けとして構成されている場合に軸受け軌道の域に滑り軸受けと別の軸受け軌道輪との滑り接触が生じるところの別の軸受け軌道輪の影響が排除されることを保証する。
【0013】
軸のトルクフリー状態であるが、永久的な磁化部に半径方向で対向する磁気センサにより、漂遊場に起因しない磁界が検出される場合、この磁界は、永久的な磁化部の域に軸受け軌道輪の該当する区分の塑性変形が生じていて、これにより軸受け軌道輪に、設定されていないトルクが掛けられたことを示唆する。
【0014】
好適には、永久的な磁化部は、回転軸線周りを第1の周方向で延在する、表面付近の部分磁化部と、回転軸線周りを表面付近の部分磁化部とは逆向きに延在する、半径方向で間隔を置いた表面から離れた部分磁化部とを備える。両部分磁化部は、互いに合わせるように調整されていて、これにより軸もしくは軸受け軌道輪のトルクフリー状態で、トルクを発生させる磁界が軸受け軌道輪から外へ作用しないので、永久的な磁化部に対応して配置された磁気センサは、場合により磁気的な干渉場を検出するが、トルクに明確に対応付け可能な磁界を検出しない。
【0015】
好適には、永久的な磁化部もしくは部分磁化部は、回転軸線周りを第1の周方向で延在する第1の磁化された区分と、回転軸線周りを第1の周方向とは逆向きに延在する、軸方向に間隔を置いた第2の磁化された区分とを備える。逆向きの磁化部もしくは部分磁化部の軸方向の間隔を置いた配置は、トルクの回転方向の特定を可能にし、更に、磁気的な干渉場の影響を抑えることができる。なぜならば例えば両磁化部の磁界の差だけが検出されるからである。
【0016】
好適には、本体の端部に又は端部付近に連結区分が設けられている。連結区分は、軸受け軌道輪の本体の端部に、つまり軸受け軌道輪の端面にもしくは軸受け軌道輪の本体の端部付近に、より具体的には軸受け軌道輪の周面の、端面に隣接する区分に形成された区分に設けられており、そこには、成形により、軸の所定の区分をトルク接続式(トルク伝達式)に取り付けることができる構造が形成されている。この場合、軸は、軸受け軌道輪の両走行軌道により、別の軸受け軌道輪とともに、接続構造に対して回動可能に支持される。
【0017】
好適には、連結区分に関して、連結区分は、キーを備える、又は、歯列結合部もしくは多角結合部として構成されている。
【0018】
好適には、軸受け軌道のうちの少なくとも1つ、特に両軸受け軌道は、永久的な磁化部を有する区分に対して、回転軸線に関して半径方向にずらして配置されている。この場合、軸受け軌道輪の、永久的な磁化部を有する区分における材料厚さは、例えば標準型の軸受け軌道輪の材料削剥式の後加工により調節され、これにより、本体に高められたねじりモーメントが生じるので、支持機構の軸受けの一部としての軸受け軌道輪の機能を制限することなく、僅かなトルクも簡単に測定することができる。
【0019】
好適には、本体は、一体的に構成されているので、軸受け軌道輪は、磁歪材料から成る単一の部分から製作されており、その部分には、軸方向で間隔を置いた少なくとも2つの軸受け軌道が製作されており、その部分は、内孔を有する。
【0020】
好適には、永久的な磁化部は、両軸受け軌道に対して軸方向で中央に配置されている。軸方向で間隔を置いた2つの磁化された区分が設けられている場合、これらの磁化された区分は、仮想の、軸方向で中央の中心平面に対して両側に、特に鏡面対称的に配置されており、この中心平面に対して、軸方向で間隔を置いた両軸受け軌道も鏡面対称的に配置されている。
【0021】
本発明は、更に、2つの軸受け軌道輪を備え、特に内輪として構成された第1の軸受け軌道輪が本発明に従って前述したように構成されている、軸受けに関する。
【0022】
別の利点及び特徴は、従属請求項並びに本発明の実施の形態の説明から明らかである。
【0023】
本発明を、以下に、添付の図面に関して詳しく記載し、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による軸受け軌道輪の1つの態様並びに本発明による軸受けの1つの態様の概略的な断面図である。
【0025】
図面の詳しい説明
図1には、軸受け軌道輪1が示されている。軸受け軌道輪1は、球形の転動体を備える2列の転がり軸受けの内輪として構成されており、このとき、軸受け軌道輪1は、磁歪材料から成る一体的な本体であって、転動軌道2として構成された第1の軸受け軌道、及び軸方向で間隔を置いた、やはり転動軌道2’として構成された第2の軸受け軌道を有する本体と、両転動軌道2,2’の間で軸受け軌道輪1の本体の材料に押込み加工された永久的な磁化部3であって、本体の回転軸線9周りを円状に延在する永久的な磁化部3とを備える。
【0026】
永久的な磁化部3は、両転動軌道2,2’の間で、本体の、回転軸線9から離れる方向を向いた外周面10付近に形成されていて、転動軌道2,2’の間に形成された、軸方向で間隔を置いた2つの磁化された区分3a,3bを備える。この場合、第1の磁化された区分3aの域で、磁化部の表面付近の部分は、回転軸線9周りを第1の周方向に、つまり時計回り方向に延在し、第2の磁化された区分3bの域で、第1の周方向に対して逆向きに、つまり反時計回り方向に延在する。
【0027】
軸方向で互いに間隔を置いた両方の磁化された区分3a,3bの各々において、永久的な磁化部3は、第1の周方向で回転軸線9周りを延在する表面付近の部分磁化部と、回転軸線9周りを表面付近の部分磁化部とは逆向きに延在する、半径方向で間隔を置いた、表面から離れた部分磁化部とを備える。具体的には、第1の磁化された区分3aの域で、永久的な磁化部は、上述の表面付近の、回転軸線9周りを時計回り方向で延在する部分磁化部と、追加的に表面付近の部分磁化部から回転軸線9の方向に間隔を置いた、回転軸線周りを逆向きに、つまり反時計回りに延在する表面から離れた部分磁化部とを備える。これに応じて、第2の磁化された区分3bの域では、永久的な磁化部3は、上述の表面付近の、回転軸線9周りを反時計回りに延在する部分磁化部に対して追加的に、半径方向でこの部分磁化部に対して間隔を置いた、回転軸線9周りを逆向きに、つまり時計回り方向に延在する部分磁化部を備える。
【0028】
軸受け軌道輪1の本体の両端の各々に、それぞれ1つの連結区分8,8’が形成されており、連結区分8,8’は、連結区分8,8’にトルク接続式に連結された軸から軸受け軌道輪1にトルクをトルクに耐え得る形で伝達するために設けられている。両連結区分8,8’は、同一に構成されていて、各々の軸受け軌道2,2’により、永久的な磁化部3から分離されていて、例えば端面11又は軸受け軌道輪1の本体の周面10の、端面11に直接に隣接する区分12に形成された変形部又は加圧成形部として構成されていて、特に両連結区分8,8’は、同一に構成されていて、図示されていない各々の軸に対する形状接続(形状接続とは、嵌め合いまたは噛み合いなどの部材相互の形状的関係による接続を意味する)、力接続(力が伝達されるような接続)又は材料接続(材料接続とは、例えば接着や溶接等の材料の力(原子、分子の力)による接続を意味する)式の結合部の一部として、例えばキー結合部、多角結合部、歯列結合部の一部として構成されている。
【0029】
軸受け軌道輪1の本体によれば、更に、両軸受け軌道2,2’は、周面10の、両軸受け軌道2,2’の間に位置し、永久的な磁化部3を有する区分13に関して、半径方向に、つまり回転軸線9に関してずらして、しかも回転軸線9から離れる方向にずらして形成されている。
【0030】
軸受け軌道輪1の本体は、一体的に構成されており、特に製造時に磁歪材料の略シリンダ形の部分から製作されており、この場合、軸受け軌道2,2’が形成され、半径方向で回転軸線9に向けてずらされた中央の区分13(そこには永久的な磁化部3を形成すべきである)が、例えば材料削剥式に製造され、この場合、連結区分8,8’も、工作物の両端に対して形成され、例えばやはり材料削剥式に又はプレス加工法により形成される。特に、2列の標準型の玉軸受けから出発して、標準型の玉軸受けの両走行軌道の間に、材料の削剥により、中央の区分13を形成することが可能であり、中央の区分13には、後の方法ステップにおいて、永久的な磁化部3が押込み加工される。中央の区分13における材料厚さの減少は、外側からトルクが掛かった状態での材料のねじれを高め、ひいてはアセンブリの感受性を高める。
【0031】
軸受け軌道輪1の本体によれば、更に、永久的な磁化部3が、軸方向で、つまり回転軸線9の方向で、両軸受け軌道2,2aの間の中央に配置されている。特に、永久的な磁化部3の両方の磁化された域3a,3bは、仮想の中心平面14の両側に配置されている。仮想の中心平面14から、両軸受け軌道2,2aは、同一の距離を有する。この中心平面14に関して、両軸受け軌道2,2a並びに磁化された域3a,3bは、鏡面対称的に構成されており、この場合、磁化された域3a,3bは、中心平面14に対して僅かな間隔しか有さず、中心平面14に直接に境を接するので、永久的な磁化部3は、その全体が、軸方向で両軸受け軌道2,2aの間の中央に配置されている。
【0032】
内輪として構成された軸受け軌道輪1は、追加的に、軸受け軌道輪1に対して更に少なくとも1つの別の軸受け軌道輪、つまり軸方向に間隔を置いた2つの外輪4a,4aを有する軸受けの一部であり、外輪4,4aの各々の転動軌道は、内輪1の転動軌道2,2aに対向するので、転動体15は、少なくとも1つの別の軸受け軌道輪4,4aに対して相対的な1つの軸受け軌道輪1の回転可能な支持を可能にする。軸方向で間隔を置いた両外輪4,4aの間に、シリンダ形のスリーブ5が支持体として配置されており、シリンダ形のスリーブ5には、2対の磁気センサ7,7aが配置されていて、内輪1の本体に形成された磁化部3の磁化された区分3a,3bに半径方向で対向するように取り付けられている。マグネットセンサ7,7aに電気的に接続され、やはりスリーブ5に取り付けられた2つの評価ユニット6,6aは、回転軸線9に関して対偶を成して互いに対向する、それぞれ対応して配置された磁気センサ7,7aの測定信号を検出し、処理し、かつ評価する。
【0033】
軸受けは、更に図示されていない別のセンサ、例えば温度センサもしくは回転する内輪1の回転数及び回転方向を検出するセンサを備え、この場合、別のセンサの測定値は、評価ユニット6,6aに送られ、そこで処理される。
【0034】
本発明は、以下のように機能する:
連結区分8’には、第1のトルクが掛けられる入力軸が、入力軸の端部が形状接続、力接続、又は摩擦接続式に軸受け軌道輪1の区分12に結合されることにより、相対回動不能に(つまり一緒に回転するように)、要するに特にトルク接続式に配置される。別の連結区分8には、駆動すべき第2の軸が出力軸として取り付けられている。両軸、つまり入力軸及び出力軸は、軸受け軌道輪1並びに外輪4,4’により、図示されていない定位置のハウジングに対して、軸線9を中心に回転可能に支持される。これにより、軸受けの軸受け軌道輪1は、トルクが掛けられる部分に、つまり軸受け軌道輪1により回転可能に支持された軸に相対回動不能に結合されている。
【0035】
入力軸にトルクが存在しない場合、磁気センサ7,7aは、場合により生じる完全には遮蔽されない地磁気の残部に基づく干渉場を除いて磁界を検出しない。永久的な磁化部3の軸方向で間隔を置いた域3a,3bの表面付近のもしくは表面から離れた各々の部分磁化部は、値、方向及び深さにおいて、互いに合わせて調整され、これにより、入力軸にトルクが存在せず、ひいては軸受け軌道輪1の本体にトルクが伝達されもしない場合、永久的な磁化部3から及ぼされる、軸受け軌道輪の本体の外側に生じる磁界が消失し、場合によっては干渉場が検出される。
【0036】
入力軸を介して軸受け軌道輪1の本体を通じてトルクが出力軸に伝達される場合、つまり特に入力軸からトルクがトルクを導く部分、つまり入力軸に相対回動不能に結合された軸受け軌道輪1の本体に導入される場合、軸受け軌道輪1の本体の材料の磁歪特性に基づいて、逆磁歪効果により、第1の磁化された区分3aの域に第1の正味磁界が発生し、第2の磁化された区分3bの域に第2の正味磁界が発生し、この場合、両正味磁界の、それぞれ軸方向の、つまり回転軸線9に対して平行に向けられた一部は、軸受け軌道輪1の本体の外側で、磁気センサ7,7aにより検出される。両磁化された域3a,3bのそれぞれの部分磁化部は、互いに合わせるように調整されていて、これにより、軸方向の成分がそれぞれ異なる方向であるが同じ値を有するので、評価ユニット6,6aは、差の形成により、極端な干渉場の値の分だけ処理された信号を検出し、処理する。この信号は、軸受け軌道輪1の本体におけるトルクに対応する。
【0037】
トルクが軸受け軌道輪1の本体に導入されないが、それでも両磁気センサ7,7aのうちの少なくとも1つが、軸受け軌道輪1の本体の外側で、干渉場に起因しない正味磁界を検出する場合には、この磁気センサは、過度に高いトルクによる永久的な磁化部3の破損を示すので、磁気センサ7,7aは、過負荷表示装置として設けてもよい。これに応じて、軸受け軌道輪1の本体の材料厚さは、トルクの許容範囲内で材料の持続的な変形が生じないように設定することができる。外側のトルクが軸受け軌道輪1に導入される連結区分8’に、クラッチ、特別には滑りクラッチを設けてよい。このクラッチは、軸受け軌道輪1の本体に導入されるトルクを、許容最高値以下の所定の値に制限する。
【0038】
前述の態様では、軸受けは、両軸受け軌道2,2’有する共通の1つの内輪を備える一方、軸方向に間隔を置いた、スリーブ5により構造的に分離された2つの外輪4,4’を備える。もちろん、両軸受け軌道を外輪に有する共通の1つの外輪を設けてよい。
【0039】
前述の態様では、トルクを導く部分、つまり入力軸に相対回動不能に結合された軸受け軌道輪1は、外輪4,4aにより固定のハウジングに対して入力軸を支持する軸受けの内輪として構成されている。変化態様では、軸受けの内輪が不動に、軸受けの外輪が回転するように構成されるようにしてよく、この場合、永久的な磁化部は、外輪の本体に形成されている。なぜならば、外輪は、トルクを導く部分、つまり入力軸に相対回動不能に結合されているからである。
【0040】
前述の態様では、軸受け軌道2,2’は、特に球形の転動体15を用いる転がり軸受けの転動軌道として構成されている。もちろん、両軸受け軌道のうちの少なくとも1つ、特に全ての軸受け軌道は、滑り軌道として構成してもよく、軸受けの別の軸受け軌道輪の滑り相手用の滑り面として構成されている。
【0041】
前述の態様では、連結区分8,8’は、歯列結合部もしくは多角結合部として構成されている。もちろん、連結区分は、1つのねじ山を有してもよく、このねじ山に、入力軸もしくは出力軸の対応ねじ山が、ねじ込みにより取り付けられる。トルクを両回転方向で伝達したい場合、連結区分のねじ山における、軸の対応ねじ山を固定するための締付けトルクは、伝達すべき最大トルクよりも高く設定すべきである。これに対して択一的に又は補足的に、両ねじ山区分の結合部を固定する、ボール又はピンのような係止ボディが設けられている。
【符号の説明】
【0042】
1 軸受け軌道輪
2,2’ 軸受け軌道
3 磁化部
3a,3b 磁化された区分
4,4a 外輪
5 スリーブ
6,6a 評価ユニット
7,7a 磁気センサ
8,8’ 連結区分
9 回転軸線
10 外周面
11 端面
12 区分
13 中央区分
14 中心平面
15 転動体
【国際調査報告】