特表2015-533512(P2015-533512A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッドの特許一覧

特表2015-533512カプセル含有製品、その利用及び調製
<>
  • 特表2015533512-カプセル含有製品、その利用及び調製 図000004
  • 特表2015533512-カプセル含有製品、その利用及び調製 図000005
  • 特表2015533512-カプセル含有製品、その利用及び調製 図000006
  • 特表2015533512-カプセル含有製品、その利用及び調製 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-533512(P2015-533512A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】カプセル含有製品、その利用及び調製
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/28 20060101AFI20151030BHJP
   A24D 3/10 20060101ALI20151030BHJP
   A24B 13/00 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   A24B15/28
   A24D3/10
   A24B13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-541234(P2015-541234)
(86)(22)【出願日】2013年11月11日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月27日
(86)【国際出願番号】GB2013052951
(87)【国際公開番号】WO2014072735
(87)【国際公開日】20140515
(31)【優先権主張番号】1220280.0
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】アウティ、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ、ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】メイナーズ、ジャン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゼゲルス、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ゾンゴ、マテュー
【テーマコード(参考)】
4B043
4B045
【Fターム(参考)】
4B043BC02
4B043BC18
4B043BC28
4B045BA02
4B045BA08
4B045BB03
4B045BC14
(57)【要約】
カプセル含有製品、その利用及び調製
カプセルの殻が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含有する芯殻構造カプセルを含むタバコ製品を提供する。また、カプセルの殻が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含有する芯殻構造カプセルを拡散によって製造する方法をも提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部であって、前記カプセルの殻が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、前記芯殻構造カプセルが拡散を含む方法によって形成される、タバコ製品またはその一部。
【請求項2】
前記カプセルの芯が添加剤を含み、任意には前記添加剤がメンソールであることを特徴とする請求項1に記載のタバコ製品。
【請求項3】
前記カプセルの芯が添加剤を含み、前記添加剤が実質的に水からなることを特徴とする請求項1または2に記載のタバコ製品。
【請求項4】
前記カプセルの芯が添加剤を含み、前記添加剤がクローブ抽出物及び/またはクレテック風香料を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項5】
前記芯殻構造カプセルの直径が1mmより大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項6】
前記芯殻構造カプセルが湿気不透過性被覆を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項7】
前記湿気不透過性被覆が1種以上の可塑剤を含むことを特徴とする請求項6に記載のタバコ製品。
【請求項8】
前記芯殻構造カプセルが破裂可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項9】
前記タバコ製品が喫煙品または無煙経口タバコ製品であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項10】
前記タバコ製品の一部が、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコロッドもしくはタバコの一部であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項11】
タバコ製品またはその一部への芯殻構造カプセルの利用であって、前記カプセルの殻が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、前記芯殻構造カプセルが拡散を含む方法によって形成される利用。
【請求項12】
前記タバコ製品が喫煙品または無煙経口タバコ製品であることを特徴とする請求項11に記載の利用。
【請求項13】
前記タバコ製品の一部が、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコロッドもしくはタバコの一部であることを特徴とする請求項11に記載の利用。
【請求項14】
芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部を製造する方法であって、
担体材料から担体構造体を調製すること、
成膜材料で前記担体構造体をカプセル化して、前記担体構造体を完全に囲む殻を形成すること、
前記担体材料が溶解可能または分散可能である媒体に、前記カプセル化した担体構造体をさらすことにより、前記担体材料の少なくとも一部を前記殻の内部から除去すること、
前記媒体から前記得られた芯殻構造カプセルを除去すること、及び
タバコ製品またはその一部に前記芯殻構造カプセルを組み込むこと、を含み、
前記成膜材料が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、前記媒体及び/または前記担体材料が添加剤を含み、前記得られた芯殻構造カプセルが前記添加剤を含む方法。
【請求項15】
前記添加剤がメンソールを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記添加剤が実質的に水からなることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記カプセルの芯がクローブ抽出物及び/またはクレテック風香料を含むことを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記担体材料がポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記担体材料が前記カプセルの外部に拡散し、前記媒体が前記カプセルの内部に拡散し、前記媒体が前記添加剤を含むことを特徴とする請求項14乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記芯殻構造カプセルに塗料を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項14乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記塗料が1種以上の可塑剤を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記芯殻構造カプセルの直径が1mmより大きいことを特徴とする請求項14乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記タバコ製品が喫煙品または無煙経口タバコ製品であることを特徴とする請求項14乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記タバコ製品の一部が、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコロッドもしくはタバコの一部であることを特徴とする請求項14乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコ製品に組み込むためのカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコ製品の官能特性は、タバコ製品に添加剤を付加することによって変質し得る。例えば、一部のタバコ製品はカプセルを含有しており、そのカプセルが破裂すると、カプセルの中味がタバコ製品内に放出される。タバコ製品に組み込まれるカプセルは、種々の材料を用いて種々の方法により製造することができる。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様によれば、芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部が提供される。上記タバコ製品またはその一部において、カプセルの殻は酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、芯殻構造カプセルは拡散を含む方法によって形成される。
【0004】
第2の態様によれば、タバコ製品またはその一部への芯殻構造カプセルの利用が提供される。上記利用において、カプセルの殻は酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、芯殻構造カプセルは拡散を含む方法によって形成される。
【0005】
第3の態様によれば、芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部を製造する方法が提供される。上記方法は、
担体材料から担体構造体を調製すること、
酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含む成膜材料で上記担体構造体をカプセル化して、上記担体構造体を完全に囲む殻を形成すること、
上記担体材料が溶解可能または分散可能である媒体に、上記カプセル化した担体構造体をさらすことにより、上記担体材料の少なくとも一部を拡散によって上記殻の内部から除去すること、
上記媒体から上記得られた芯殻構造カプセルを除去すること、及び
タバコ製品またはその一部に芯殻構造カプセルを組み込むこと、を含む。
【0006】
上記方法のある実施形態では、得られた芯殻構造カプセルは添加剤を含む。ある実施形態では、媒体中に上記添加剤が存在しており、担体材料の少なくとも一部が除去されるのに伴い、この添加剤の少なくとも一部が殻を介してカプセル内部に拡散する。これに加えてまたはあるいは、担体材料内に上記添加剤が存在しており、担体材料の少なくとも一部が除去されても、この添加剤の少なくとも一部はカプセル内部に残留する。
【0007】
第1、第2及び/または第3の態様のある実施形態では、タバコ製品は喫煙品または無煙経口タバコ製品である。ある実施形態では、タバコ製品の一部は、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコの棒状体もしくは盛体である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
次に、添付図面を参照しながら、単なる例示として本発明の実施形態について説明する。
図1図1は、本発明のある実施形態に係る、芯殻構造カプセルを含有する喫煙品の断面を示す概略図である。
図2図2は、本発明のある実施形態に係る、複数の芯殻構造カプセルを含有する喫煙品の断面を示す概略図である。
図3図3は、本発明のある実施形態に係る、芯殻構造カプセルを含有する無煙経口タバコ製品の断面を示す概略図である。
図4図4は、本発明のある実施形態に係る芯殻構造カプセルの断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部が提供される。この芯殻構造カプセルは、酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含む。
【0010】
本明細書中用いられる「芯殻構造カプセル」という用語は、芯及び殻から構成されるカプセルを含む。
【0011】
本明細書中用いられる「タバコ製品」という用語は、無煙経口タバコ製品及び喫煙品などの喫煙可能なタバコ製品を含む。
【0012】
本明細書中用いられる「喫煙品」という用語は、タバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替物を元にしているかどうかに関わらず、紙巻きタバコ、葉巻及びシガリロなどの喫煙可能な製品を含み、さらに、熱によって燃焼しない(heat not burn)」製品(すなわち、材料を燃焼させずに加熱することにより、喫煙材料から風味が生成される製品)、及びタバコ由来のエアロゾルを生成可能なその他の物品も含む。通常、喫煙品には気体流から成分を除去するフィルターが設けられている。
【0013】
本明細書中用いられる「無煙経口タバコ製品」という用語は、ある限られた時間(この間、利用者の唾液と製品が接触する)、利用者の口腔内に置かれるように設計された任意の無煙タバコ製品を含む。
【0014】
芯殻構造カプセルは、拡散を伴う方法によって形成される。ある実施形態では、拡散交換に基づく方法によって芯殻構造カプセルが形成される。
【0015】
本明細書中用いられる「拡散交換」という用語は、拡散によって1種以上の物質が障壁または隔膜を突き抜けて交換されることを指すために用いられる。
【0016】
ある実施形態では、芯殻構造カプセルは、電気スプレーまたは電気処理によって生成されることはない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る喫煙品10の断面を示す図であり、喫煙品10のフィルター2の内部に芯殻構造カプセル1が組み込まれている。喫煙品10は、喫煙材ロッド6及びフィルター2を含む。図1に示す喫煙材ロッド6及びフィルター2は、チッピング紙3によって互いに取り付けられている。ただし、喫煙材ロッドをフィルターに取り付けるための他の手段が当業者にとって既知であれば、その手段を上記の代わりに用いてもよい。例示した実施形態では、フィルター2にフィルター2よりも長尺のチッピング紙3を巻装する当技術分野に周知の方法により、喫煙材ロッド6をフィルター2に結合させる。喫煙品10のフィルター2には、チッピング紙3に加えてプラグラッパー4を巻装してもよい。喫煙材ロッド6を、刻みタバコ、再生タバコ及び/またはペレット化したタバコから形成してもよい。また、喫煙材ロッド6は、ラッパー5で囲まれている。
【0018】
芯殻構造カプセル1を、喫煙品10のフィルター2の長さに沿って、おおよそ中央に配置してもよい。あるいは、芯殻構造カプセル1を、フィルター2の一端近くまたは一端(喫煙品10の喫煙材ロッド6に隣接するフィルター2の端部近く、または喫煙品10の口端部を形成するフィルター2の端部近くなど)に配置してもよい。
【0019】
芯殻構造カプセル1を、喫煙品10のフィルター2の長手方向軸におおむね沿った位置に配置してもよい。あるいは、芯殻構造カプセル1を、喫煙品10のフィルター2の周縁近くに配置してもよい(図示せず)。
【0020】
フィルター2は、2つ以上のフィルターエレメントから構成することができる。フィルターまたはフィルターエレメントには、当業者にとって既知である従来のフィルターまたはフィルターエレメントのどれを用いてもよい。例えば、フィルターまたはフィルターエレメントを、任意のフィルター材料または各フィルター材料の任意の組み合わせから構成してもよい。喫煙品10は、多数のフィルターエレメント及び少なくとも1つの空洞を含んでもよく、この空洞は、2つのフィルターエレメントの間またはフィルターの一端に配置される。
【0021】
ある実施形態では、タバコ製品は、一つの芯殻構造カプセル1を含む。別の実施形態では、タバコ製品は、複数の芯殻構造カプセル1を含む。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係る喫煙品20の断面を示す図である。この喫煙品20は、その長手方向軸に沿って離間構成で配置された複数の芯殻構造カプセル11を含む。ある実施形態では、各カプセル11は周縁に、あるいはより不規則な構成で配置されている。
【0023】
図2では、複数あるカプセル11の全てが喫煙材ロッド16内に配置されている。その他の実施形態では、これらのカプセル11のうちの一部または全てが、喫煙品20の1つ以上の他の構成要素(フィルター12など)内に配置されてもよい。
【0024】
ある実施形態(図示せず)では、喫煙品20の1つ以上の構成要素間に、1つ以上のカプセル11が配置される。例えば、1つ以上のカプセル11を、喫煙品20のフィルター12と棒状喫煙可能材材料16の間に配置してもよい。
【0025】
ある実施形態(図示せず)では、複数のカプセル11を配置して、これらカプセル11の一部がタバコ製品内またはその一部内に存在するようにしてもよい。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る無煙経口タバコ製品30の断面を示す図である。この無煙経口タバコ製品30は、当該製品30のタバコ含有材料26内に配置された芯殻構造カプセル21を含む。ある実施形態(図示せず)では、製品30は、タバコ含有材料26内に分布している複数のカプセル21を有する。これらのカプセル21は、全て同一としてもよく、あるいは異なっていてもよい。例えば、異なる添加剤を含有し、かつ/または異なる構成(例えば、一部では外側を被覆し、一部では被覆しない)をとるようにしてもよい。
【0027】
種々の製品または製品の異なる各部に組み込まれる(図1から3を参照して上述した)カプセルは、異なっていてもよい。例えば、カプセルの物理的特性は異なってもよく、あるいはその物理的特性を選定して、特定用途向けに最適化するようにしてもよい。一例として、喫煙品のフィルターに組み込まれるカプセルを、喫煙品の喫煙材ロッドに組み込まれるカプセル(この場合カプセルの直径をより小さくすることになるであろう)と異なるようにしてもよい。これに加えてまたはあるいは、複数のカプセルを一つの製品に組み込む場合、直径がより小さいカプセルを用いてもよい。
【0028】
図4は、ある実施形態に係る芯殻構造カプセル31の断面を示す図である。図4に示すカプセル31については以下で説明するが、ある実施形態では、図1から図3に示した本明細書に記載の実施形態のいずれにおいてもこのカプセル31を用いてよい。芯殻構造カプセル31は、殻32及び内部芯33を含む。本実施形態では、殻32は外被34で被覆されている。
【0029】
芯殻構造カプセル31の殻32は、酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含む。好適な酢酸セルロース誘導体は、当業者にとって既知であろう。ある実施形態では、殻32は、酢酸フタル酸セルロース(本明細書では、フタル酸セルロースと呼ぶ)を含む。ある実施形態では、殻32は、三酢酸セルロースを含む。ある実施形態では、殻材料は、実質的に酢酸セルロース及び/またはその誘導体で構成される。ある実施形態では、殻材料は、セルロース誘導体を含む。ある実施形態では、殻材料は、ゼラチンを含まない。
【0030】
ある実施形態では、殻32は、殻材料の連続層または連続膜で構成される。つまり、殻材料を用いることにより、殻の穴を埋める必要も、殻材料の1つ以上の端部または断面を共に封止する必要もなく、カプセル31の内部芯33の周りに連続被覆を形成することが可能となる。
【0031】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の殻32は着色される。ある実施形態では、食品用着色料で着色される。ある実施形態では、殻32は、芯殻構造カプセル31の芯33とは異なる色である。このような構成は、芯33が殻32によって完全に被覆されたかどうかを判断するのに好ましい。
【0032】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の内部芯33は、添加剤を含む。この添加剤は、タバコ製品の特性(タバコ製品の官能特性など)を改変及び/または強化する任意の物質であってよい。例えば、芯殻構造カプセル31を喫煙品に組み込む場合、添加剤は、煙に添加され得るもの及び/または煙の組成を改変し得るものであれば何であってもよい。
【0033】
添加剤は、固相、液相及び/または気相であってよい。ある実施形態では、添加物は液相である。芯殻構造カプセル31を喫煙品内に配置するある実施形態では、喫煙品の利用中に添加剤の相が変化する。このような構成では、喫煙品の利用中により多くの添加剤を放出することができるので好ましい。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31内の添加剤は、喫煙品の利用中に固相から液相に変化する。
【0034】
添加剤は、香料もしくは風味材料(現地の規制により許可される場合)、脱臭剤、希釈剤、吸着剤、またはタバコ製品の改変が可能な他の物質であってよい。添加剤は、水を含んでも、実質的に水からなっても、または水からなってもよい。添加剤の水分は、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%であってよい。
【0035】
本明細書中用いられる「香料」及び「風味材料」という用語は、現地の規制によって許可される場合において、大人の消費者向けの製品に所望の味または芳香をつけるのに用いることが可能である材料を指す。これらの香料及び風味材料には、抽出物(例えば、甘草、アジサイ、オオガシワ(Japanese white bark magnolia leaf)、カモミール、コロハ、クローブ、メンソール、ハッカ、アニス果実、シナモン、ハーブ、ウィンターグリーン、チェリー、ベリー、ピーチ、アップル、ドランブイ、バーボン、スコッチ、ウィスキー、スペアミント、ペパーミント、ラベンダー、カルダモン、セロリ、カスカリラ、ナツメグ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、ハチミツエキス、バラ油、バニラ、レモン油、オレンジ油、カッシア、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、イランイランノキ、セージ、フェンネル、ピメント、ジンジャー、アニス、コリアンダー、コーヒー、またはハッカ属のいずれかの種由来のミント油)、香料増強剤、苦みレセプター部位遮断剤、感覚レセプター部位活性剤または感覚レセプター部位刺激剤、砂糖及び/または甘味料(例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、シクラメート、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、もしくはマンニトール)、並びに炭、クロロフィル、ミネラル類、植物類、または口臭防止剤(breath freshening agent)などの他の添加剤などを挙げることができる。これらは、模造、合成または天然成分であってもよく、あるいはこれらの混合物であってもよい。これらは、いずれかの好適な形態、例えば、油、液体または粉体であってよい。
【0036】
ある実施形態では、添加剤はメンソールである。添加剤のメンソール分は、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはほぼ100%であってよい。
【0037】
ある実施形態では、添加剤は、クレテック(Kretek)風香料、クローブ抽出物、及び/またはオイゲノールなどの、クローブ類もしくはクローブ抽出物中に存在し得るいずれかの天然化合物もしくは合成化合物を含む。
【0038】
ある実施形態では、添加剤を溶媒と混合してもよい。好適な溶媒は、当業者にとって既知であろう。添加剤がメンソールを含むある実施形態では、プロピレングリコールが好適な溶媒となり得る。
【0039】
あるいはまたは加えて、芯殻構造カプセル31の内部芯33内の添加剤は、担体材料を含んでもよい。ある実施形態では、担体材料は、ポリエチレングリコール(PEGとしても知られている)であり、あるいはポリエチレングリコールを含む。
【0040】
芯殻構造カプセル31の内部芯33は、単一種類の添加剤を含有してよい。あるいは、内部芯33は、複数種類の添加剤を含有してよい。ある実施形態では、内部芯33は、2種類の異なる添加剤を含む。例えば、添加剤は、それぞれ異なる種類の風味材料であってもよく、あるいは、一方の添加剤は風味材料で、他方の添加剤は風味材料ではなくてもよい。
【0041】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31を外被34で被覆してもよい。この外被34は任意であるが、ある実施形態においては好ましい場合がある。ある実施形態では、外被34は、湿気不透過性の被覆であってよい。湿気不透過性層は、添加剤の放出が望ましくなるまで、内部芯33の添加剤を芯殻構造カプセル31内に保持する働きをしてもよい。芯殻構造カプセル31の内部芯33が、水溶性であり、または水を含み、もしくは水である添加材料を含む実施形態では、外被34は、不透水性または略不透水性であってよい。
【0042】
芯殻構造カプセル31は、2つ以上の外被34を含んでもよい。これらの実施形態において、複数の外被34は、同一または略同一の材料組成を有してよい。あるいは、複数の外被34の組成は異なっていてもよい。
【0043】
外被34に好適な材料は、当業者にとって既知であろう。ある実施形態では、外被34は、カスターワックスなどのワックス、ミツロウ、カルナバワックス、またはこれらの組み合わせを含む。
【0044】
あるいはまたは加えて、外被34は、酢酸セルロース及び/または1種以上のセルロース誘導体を含んでもよい。好適なセルロース誘導体は、当業者にとって既知であろう。また、このセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び/またはカルボキシルメチルセルロース(CMC)を含んでもよい。
【0045】
あるいはまたは加えて、外被34は、1種以上の可塑剤を含んでもよい。本明細書中用いられる「可塑剤」という用語は、軟化剤を含むが、水は含まない。
【0046】
1種以上の可塑剤を、芯殻構造カプセル31の外被34を不透過にし、あるいはその不透過化を促進するのに用いてよい。1種以上の可塑剤を用いて、内部芯33から芯殻構造カプセル31の外部への漏れを制限または抑制することにより、これを実現することが可能である。
【0047】
あるいはまたは加えて、芯殻構造カプセル31の殻32は、1種以上の可塑剤を含んでもよい。1種以上の可塑剤を、芯殻構造カプセル31の殻32を不透過にし、あるいはその不透過化を促進するのに用いてよい。1種以上の可塑剤を用いて、内部芯33が液相または気相であるときに、内部芯33から芯殻構造カプセル31の外部への漏れを制限または抑制することにより、これを実現することが可能である。
【0048】
芯殻構造カプセル31の殻32が1種以上の可塑剤を含む実施形態では、芯殻構造カプセル31の殻32の材料が可塑剤ともみなし得る物質である場合、少なくとも1種の可塑剤は、芯殻構造カプセル31の殻32の材料とは異なる物質である。
【0049】
ある実施形態では、少なくとも1種の可塑剤は、不透水性であり、かつ/または脂溶性である。ある実施形態では、少なくとも1種の可塑剤は、不透脂性であり、かつ/または水溶性である。
【0050】
少なくとも1種の可塑剤を、トリアセチン、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ジアセチル化モノグリセリド類、セバシン酸ジブチル、鉱油、安息香酸ベンジル、クロロブタノール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール類、及び可塑剤に親和性のある酢酸フタル酸セルロースからなる群から選択してよい。これらの化合物は、殻32及び/または芯殻構造カプセル34の外被34を脂溶性とするのが望ましいときには特に好適である。
【0051】
あるいはまたは加えて、少なくとも1種の可塑剤を、ポリビニルピロリドン(PVP)及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択してよい。
【0052】
あるいはまたは加えて、少なくとも1種の可塑剤を、クエン酸トリエチル、トリアセチン、安息香酸ベンジル、フタル酸ジブチル、及び2,5−ジメチルピラジンからなる群から選択してよい。
【0053】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31は、0.1〜30重量%の可塑剤を含む。芯殻構造カプセル31は、0.5〜20重量%、1〜15重量%または2〜10重量%の可塑剤を含んでもよい。芯殻構造カプセル31は、4〜8重量%の可塑剤を含んでもよい。
【0054】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の外被34は、15重量%超、20重量%超、25重量%超、30重量%超、35重量%超、40重量%超、または45重量%超の可塑剤を含む(上記百分率は、外被34の重量を基準とする)。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の外被34は、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%の可塑剤を含む。
【0055】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の殻32は、40重量%未満の可塑剤を含む(上記百分率は、殻32の重量を基準とする)。殻32は、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、または3重量%未満の可塑剤を含んでもよい。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の殻32は、可塑剤を含まず、あるいは可塑剤を実質的に含まない。
【0056】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の殻32は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%の可塑剤を含む(上記百分率は、殻32の重量を基準とする)。
【0057】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の外被34は1種以上の可塑剤を含み、芯殻構造カプセル31の殻32は、可塑剤を含まず、あるいは可塑剤を実質的に含まない。ある実施形態では、外被34は、芯殻構造カプセル31の殻32よりも多重量%の可塑剤を含む。
【0058】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の殻32は可塑剤を実質的に含まず、外被34は、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも8重量%、または少なくとも10重量%の可塑剤を含む(上記百分率は、外被34の重量を基準とする)。
【0059】
芯殻構造カプセル31の内部芯33に含有される添加剤が水分を含むある実施形態では、芯殻構造カプセル31が不透水性であり、従って、25℃、相対湿度(RH)75%で1ヶ月間保存したとき、水分の少なくとも一部は芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持される。これらの条件では、上記1ヶ月間の開始時及び/または初期含水量に比べて、水分の少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%が、芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持され得る。
【0060】
芯殻構造カプセル31の内部芯33に含有される添加剤が水分を含むある実施形態では、芯殻構造カプセル31が不透水性であり、従って、25℃、相対湿度(RH)75%で2ヶ月間保存したとき、水分の少なくとも一部は芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持される。これらの条件では、上記2ヶ月間の開始時及び/または初期含水量に比べて、水分の少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%が、芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持され得る。
【0061】
芯殻構造カプセル31の内部芯33に含有される添加剤が水分を含むある実施形態では、芯殻構造カプセル31が不透水性であり、従って、25℃、相対湿度(RH)75%で3ヶ月間保存したとき、水分の少なくとも一部は芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持される。これらの条件では、上記3ヶ月間の開始時及び/または初期含水量に比べて、水分の少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%が、芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持され得る。
【0062】
芯殻構造カプセル31の内部芯33に含有される添加剤が水分を含むある実施形態では、芯殻構造カプセル31が不透水性であり、従って、25℃、相対湿度(RH)75%で4ヶ月間保存したとき、水分の少なくとも一部は芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持される。これらの条件では、上記4ヶ月間の開始時及び/または初期含水量に比べて、水分の少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%が、芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持され得る。
【0063】
芯殻構造カプセル31の内部芯33に含有される添加剤が水分を含むある実施形態では、芯殻構造カプセル31が不透水性であり、従って、25℃、相対湿度(RH)75%で5ヶ月間保存したとき、水分の少なくとも一部は芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持される。これらの条件では、上記5ヶ月間の開始時及び/または初期含水量に比べて、水分の少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%が、芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持され得る。
【0064】
芯殻構造カプセル31の内部芯33に含有される添加剤が水分を含むある実施形態では、芯殻構造カプセル31が不透水性であり、従って、25℃、相対湿度(RH)75%で6ヶ月間保存したとき、水分の少なくとも一部は芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持される。これらの条件では、上記6ヶ月間の開始時及び/または初期含水量に比べて、水分の少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%が、芯殻構造カプセル31の内部芯33内に保持され得る。
【0065】
芯殻構造カプセル31は、タバコ製品に組み込むのに好適な大きさであってよい。
【0066】
図1図3に例示して上述した実施形態を任意に含む、ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は、1.5〜10mmの範囲内であり、任意には2〜8mmの範囲内である。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は、3〜5mmの範囲内であり、任意には3.4〜4.8mmであり、さらに任意には3.5〜4.5mmである。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は2.5〜4mmの範囲内である。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は、3.5mm程度である。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は、1mm、少なくとも1.5mm、少なくとも2mm、少なくとも2.5mm、少なくとも3mm、少なくとも3.1mm、少なくとも3.2mm、少なくとも3.3mm、少なくとも3.4mm、少なくとも3.5mm、少なくとも3.6mm、少なくとも3.7mm、少なくとも3.8mm、少なくとも3.9mm、少なくとも4mm、少なくとも4.5mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、少なくとも8mm、少なくとも9mm、または少なくとも10mmである。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は、少なくとも2mmである。ある実施形態では、芯殻構造カプセル31の直径は、1mm超、2mm超、3mm超、または4mm超である。
【0067】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31は、マイクロカプセルまたはナノカプセルではない。本明細書中用いられる「マイクロカプセル」及び「ナノカプセル」という用語は、それぞれ直径1mm未満のカプセル及び直径1μm未満のカプセルを指す。
【0068】
平均カプセルサイズは、特に、国際規格ISO13320−1に規定されているようなレーザー回折分析によって求めてもよい。例えば、マルバーンマスターサイザー3000を用いてもよい。この方法は、0.2μm〜3.5mmの範囲の平均カプセルサイズを求めるのに有用である。直径がより大きい場合(3.5mm超の直径など)には、手動で、必要であれば顕微鏡を用いて、統計的に代表するカプセルの試料を測定することによって平均直径を求めることができる。本明細書において、平均は、算術平均である。
【0069】
ある実施形態では、芯殻構造カプセル31は、球形または略球形である。あるいは、芯殻構造カプセル31を延伸してもよく、任意には長手方向軸がタバコ製品の長手方向軸に平行に延在するように延伸してもよい。
【0070】
通常は、芯殻構造カプセル31の中味は、利用前及び/または利用中に放出されなければならず、さらにある状況では、カプセルが内部に組み込まれたタバコ製品またはその一部の利用後においても放出されなければならない。いずれかの好適な手段によって芯殻構造カプセル31の中味を放出してよい。ある実施形態では、カプセルの破裂によって芯殻構造カプセル31の中味を放出することにより、所定量の添加剤を放出する。つまり、芯殻構造カプセル31は、破裂可能であってよい。
【0071】
芯殻構造カプセル31が喫煙品内に存在するある実施形態では、利用者は、芯殻構造カプセル31を囲むタバコ製品の一部に圧力を加えてカプセル31の殻32及び/または外被34を破裂させることにより、カプセル31を破ることができる。例えば、芯殻構造カプセル31が喫煙品のフィルター内に配置されている実施形態では、フィルターの外面に圧力を加えることにより、カプセル31の殻32及び/または外被34を破裂させてもよい。
【0072】
本発明の芯殻構造カプセルは、芯殻構造カプセルの殻を介した拡散に基づく工程によって生成される。意外なことに、本発明者らは、実質上全ての従来方法ではカプセルサイズが小さな範囲に制限されるという技術的限界を、多段階の工程を利用することにより克服した。
【0073】
ある実施形態では、この方法は、芯殻構造カプセルの殻を生成する工程、添加剤を含む媒体に上記殻をさらす工程、及び上記殻から添加剤を拡散及び/または浸透させる工程を含む。
【0074】
ある実施形態では、殻を形成する成膜材料によってカプセル化された担体構造体または芯を含む前駆体芯殻構造カプセルを生成する工程;及び担体構造体の材料の少なくとも一部が芯から殻を介して殻の外部へと拡散及び/または浸透する条件に、上記前駆体芯殻構造カプセルをさらす工程を含む。
【0075】
ある実施形態では、殻を形成する成膜材料によってカプセル化された担体構造体または芯及び添加剤を含む前駆体芯殻構造カプセルを生成する工程;及び添加剤の少なくとも一部を上記カプセルの芯内に保持しつつ、担体構造体の材料の少なくとも一部が芯から殻を介して殻の外部へと拡散及び/または浸透する条件に、上記前駆体芯殻構造カプセルをさらす工程を含む。
【0076】
ある実施形態では、添加剤を含有する芯を有する芯殻構造カプセルの調製方法は、
可溶化媒体に溶解可能な担体材料から固体担体構造体を調製すること;
上記固体担体構造体をカプセル化して、殻(前駆体芯殻構造カプセル)に囲まれ、カプセル化された担体構造体を得ること;
上記カプセル化された担体構造体を上記媒体に十分な期間さらして、担体構造体の材料の少なくとも一部を上記媒体で少なくとも部分的に置換することにより、上記媒体及び殻を含む芯を有する芯殻構造カプセルを得ること;及び
媒体から芯殻構造カプセルを除去すること、を含む。
【0077】
ある実施形態では、担体構造体の形成前及び/または形成中に、添加剤と担体材料を混合する。あるいはまたは加えて、ある実施形態では、可溶化媒体に添加剤を加える。
【0078】
ある実施形態では、対向流拡散による芯殻構造カプセルの調製方法は、
担体材料から、略球形で自己保持した担体ビーズであって、直径が1μm〜1cmの範囲である上記担体ビーズを調製する工程;
前駆体芯殻構造カプセルを得るために、適切な成膜材料で上記自己保持した担体ビーズをカプセル化して、半透過性殻を形成する工程;及び
添加剤を含有する可溶化媒体に上記前駆体芯殻構造カプセルをさらすことにより(ここで上記担体材料は、上記媒体に可溶性及び/または分散性である)、上記前駆体芯殻構造カプセルの外部に、溶解及び/または分散させた担体材料を好適に拡散し、かつ/または前駆体芯殻構造カプセル中に上記添加剤を拡散することにより、添加剤を含む芯殻構造カプセルを得る工程、を含む。
【0079】
ある実施形態では、芯殻構造カプセルは、添加剤を含有する芯を含み、上記芯及び/または上記添加剤の一部または全体が、65℃で液体の性質を有するか液状である。
【0080】
ある実施形態では、芯殻構造カプセルは、添加剤を含有する芯を含み、上記芯及び/または上記添加剤の一部または全体は、65℃で液体である。
【0081】
ある実施形態では、芯殻構造カプセルは芯を含み、その芯の一部または全体が45℃、35℃及び/または25℃で液状であるか液体の性質を有し、さらに、添加剤を含む。また、上記殻は、酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含む。
【0082】
ある実施形態では、本発明の方法は、担体構造体、担体芯または担体ビーズを担体材料から調製する工程を含んでよい。本明細書中用いられる「担体構造体」、「担体ビーズ」、「担体芯」及び「初期芯」、「初期ビーズ」、「初期化合物」、「前駆体ビーズ」並びに「前駆体芯」という用語は、どれも同じ意味であり、同じ原理を説明するのに用いてよい。「芯」という表現は、上記担体ビーズ及び/または芯が、中間芯または前駆体芯殻構造カプセルを形成するものであることを表す。「初期」という表現は、明細書の他の箇所で特定されるように、上記担体構造体が過渡的なものであり、添加剤または媒体によって略置換されるものであることを表す。ある実施形態では、上記担体ビーズが自己保持している。自己保持しているということは、その特徴として、上記ビーズが骨格として機能するように十分密集している状態を指しており、別の工程でそれらの周りに殻を形成することが可能となる。このことから、上記担体ビーズは、実際には液体(例えば、媒体に懸濁させた液状ビーズの形態をとる)であってよく、従って、上記殻を上記担体芯の周りに形成することができる。ただし、一実施形態によれば、上記ビーズは固体状態であり、例えば、結晶または非結晶の固体状態(例えば、ガラス状態)の形態をとる。例えば、固体の場合、自己保持しているという上記特徴は、本明細書の他の箇所で記載されているような殻形成工程が施されたときの状態にあてはまる。
【0083】
本発明の方法の革新的な態様の1つは、以下でさらに記載されるであろうが、自立した構造(芯、ビーズ)を最初に作製することであり、これは、初期芯の周りに隔膜を作製するための骨組みとして機能する。
【0084】
ある実施形態では、なおさらに次の工程において、ビーズを略分解させる(例えば、可溶化及び/または懸濁させる)条件に、上記ビーズをさらしてよい。
【0085】
ある実施形態では、上記担体ビーズは略球形である。
【0086】
任意の好適な材料から、担体ビーズを調製してよい。担体ビーズを調製するのに用いられる材料の融点、溶解度及び拡散特性に関する好適な特性については、本明細書の他の箇所で議論する。
【0087】
一実施形態によれば、上記担体ビーズの上記担体材料は、例えば、PEG、ポリビニルアルコール(PVA)(完全加水分解PVA、加水分解の中間体PVA、または部分加水分解PVAを含む)、水溶性糖類(特に、水溶性の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類)、脂質類、脂肪類、並びにワックス類から選択される。
【0088】
ある実施形態では、上記担体材料の融点は、5℃超、10℃超、15℃超、20℃超、25℃超、30℃超、35℃超、40℃超、45℃超、50℃超または60℃超である。
【0089】
本発明の方法に用いることが可能な担体ビーズを生成する手法は多数存在するが、例示のため一例として、液化した担体材料の液滴を凝固させることが挙げられる。そのため、ある実施形態では、上記担体ビーズは、液状担体材料(例えば、液化した担体材料)を用いて、液状担体材料の液滴を凝固媒体中に加えることによって得られる。従って、上記液滴の凝固により、上記担体ビーズが得られる。例えば、ノズルを通じて上記液状担体材料を上記凝固媒体中に送り出し、かつ/またはそれらを凝固媒体中に適下することによって上記液滴を得てもよい。ある実施形態では、上記凝固媒体は液体である。ある実施形態では、液状担体材料の上記液滴を加えるとき、上記凝固媒体の温度は、上記担体材料の融点未満である。
【0090】
ある実施形態では、上記担体材料の融点は、上記(液状)凝固媒体の融点よりも高い。従って、上記担体材料の融点未満の温度で液状凝固媒体に接触すると、上記液化した担体材料が固化して上記自己保持した担体ビーズを形成する。
【0091】
ある実施形態では、上記担体ビーズの上記担体材料に添加剤を加える。上記担体ビーズの形成前及び/または形成時に、上記添加剤と上記担体材料を混合してよい。一実施形態によれば、液状担体材料に上記添加剤を加える。本実施形態によれば、担体ビーズは、担体材料及び添加剤の混合物を含む。本実施形態では、上記担体ビーズは、例えば、50〜99重量%、60〜98重量%、70〜97重量%または80〜96重量%の担体材料、及び1〜50重量%、2〜40重量%、3〜30重量%または4〜20重量%の添加剤を含んでもよい。
【0092】
別の実施形態によれば、上記担体ビーズには、上記添加剤が実質的に含まれておらず、本明細書の他の箇所で開示されるように、後で上記添加剤を加える。
【0093】
一実施形態によれば、上記添加剤を含み、あるいは含まない上記担体ビーズを、適切な溶媒(例えば、アセトン及び/または複数種の溶媒の混合液など)で洗浄してもよい。この洗浄工程は、例えば、次のカプセル化工程の前に行われる。
【0094】
ある実施形態では、本発明の方法は、芯殻構造カプセルの殻を生成する工程;上記担体ビーズを適切な成膜材料及び/または高分子材料でカプセル化して、担体芯殻構造カプセルを得る工程;上記固体担体芯をカプセル化して担体芯殻構造カプセルを得る工程;及び前駆体芯殻構造カプセルを得るために、適切な成膜媒体で上記自己保持した担体ビーズをカプセル化して、半透過性殻を形成する工程から選択される工程のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0095】
ある実施形態では、上記担体ビーズは、殻を形成することができる適切な材料でカプセル化される。このようにして、同義的に「前駆体芯殻構造カプセル」とも呼ばれる「担体芯殻構造カプセル」を得てもよい。従って、上記担体または前駆体芯殻構造カプセルの芯は、担体材料を含んでもよく、実質的に担体材料で構成されてもよく、または担体材料で構成されてもよい。担体ビーズに添加剤を加える実施形態では、この担体材料と添加剤を任意に混合する。
【0096】
一実施形態によれば、上記殻を形成するための上記成膜材料及び/または高分子材料を、多糖類、多糖類系物質類、タンパク質系物質類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、及び前述した2つ以上を含む組み合わせから選択された1つ以上を含む材料から選択してもよい。
【0097】
タンパク質類及びタンパク質系物質類の例としては、乳清タンパク質及び/またはカゼインタンパク質などの乳タンパク質類、小麦タンパク質及びトウモロコシ由来のゼインタンパク質などの穀物タンパク質類、並びにゼラチンが挙げられる。
【0098】
多糖類及び多糖類系物質類の例としては、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体(一般に、本明細書で指定したもの以外のセルロース誘導体も含む)、キトサン、キチン、アラビアガム、アルギン酸、ペクチン、プルラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン(例えば、シクロデキストリンα、β及び/またはγ)、デンプン、変性デンプン、並びに前述した2つ以上を含む組み合わせが挙げられる。
【0099】
一実施形態によれば、上記成膜材料及び/または高分子材料は、セルロース及び/またはセルロース誘導体(酢酸セルロース、または例えば、酢酸フタル酸セルロース及び/もしくは三酢酸セルロースなどの酢酸セルロース誘導体など)であり、あるいはこれらを含む。セルロース及び酢酸セルロース誘導体は、ある状況において好ましい、というのも、これらは多くの一般的な溶媒(純水など)に通常溶解しにくいからである。しかしながら、これらは、ジアセチンまたはトリアセチン溶液及び酢酸溶液には溶解する。
【0100】
以下でさらに明らかになるであろうが、殻を調製する材料は、その材料を用いて得られる殻の隔膜特性を十分考慮して選択するのが好ましい。以下に記載するように、芯から可溶化媒体に殻材料を拡散させる必要があり、かつ/または、殻が少なくとも部分的にその初期芯から空の状態になると(ただし、ほぼ空になり得る)、可溶化媒体及び/または添加剤が隔膜に流入することにより、芯媒体が全体的にまたは部分的に置換され得る。殻を調製する材料の選択並びに殻の拡散特性及び/または透過性を最適化するのに用いられるカプセル化技術に加えて、あるいはその代わりに、殻の拡散特性及び/または透過性を最適化するために殻の厚さの調整を行ってもよい。
【0101】
上記を念頭に置いて、任意の適切な方法で上記殻を調製してよい。一実施形態によれば、上記担体ビーズをカプセル化する上記工程は、上記成膜材料及び/または高分子材料を固体状担体ビーズに供給する工程を含む。ある実施形態によれば、適切な成膜材料及び/または高分子材料を用いて上記担体ビーズをカプセル化する工程は、上記担体芯を被覆する工程を含む。任意の適切な装置によってこの被覆を行ってよい。例えば、この被覆は、流動床、ドラム式塗装機及びレーディゲ(Loedige)社製塗装機からなる群から選択される任意の装置を用いて行ってよい。上記殻の調製、かつ/または上記芯ビーズのカプセル化に被覆技術を用いた場合、上記被覆は第1被覆であってよい。また、本明細書の他の箇所で指定されるように、例えば、殻の透過性または拡散特性を改変する(あるいは、特に抑制する)ため、第2被覆を行う工程に本発明の方法のいずれか1つを含めてもよい。
【0102】
殻の拡散特性及び/または透過性は、殻の隔膜の細孔径、細孔形態及び細孔分布といった諸特性と密接に関係している。前述のように、隔膜または殻の厚みもまた、カプセルへの流入、かつ/またはカプセルからの流出に影響し得る。本発明の目的のために用いることが可能な殻を提供するため、これらの設定値に留意し、かつ/またはこれらを決定もしくは試験すべきである。
【0103】
隔膜または殻の厚みを調整して、本発明で望まれるような、特に、可溶化媒体にさらす工程(ここで、担体芯をカプセルの外部に移動させる必要がある)で要求されるような、透過性及び/または拡散特性を達成するようにしてもよい。透過性は、通常殻の厚みに依存し、より具体的には、厚みの増加と共に減少する。当業者は、殻の厚みを調整して拡散特性を最適化してもよく、任意には、カプセル化対象の材料(添加剤)に関する拡散特性を最適化してもよい。
【0104】
本発明によれば、上記担体芯殻構造カプセルの上記担体芯と上記殻の重量比は、1〜40重量%の殻と60〜99重量%の芯材料、2〜30重量%の殻と70〜98重量%の芯材料、3〜25重量%の殻と75〜97重量%の芯材料、5〜20重量%の殻と80〜95重量%の芯材料、または8〜15重量%の殻と85〜92重量%の芯材料の範囲であり、例えば、殻材料は10重量%程度である。これらの重量比は、さらに後述するように、可能であれば第2の被覆工程の後、添加剤を含む最終芯殻構造カプセルに適用されてもよい。この場合は、単に担体芯の重量が、添加剤を含む芯の質量に置き換えられる。
【0105】
ある実施形態では、担体芯殻構造カプセルの殻の厚さは、30〜500μmまたは50〜200μmであってよい。
【0106】
一実施形態によれば、上記担体ビーズをカプセル化し、次いで得られたカプセルにさらに任意の処理を施した後では、担体芯殻構造カプセル及び/または前駆体芯殻構造カプセルの殻は細孔を含む。
【0107】
一実施形態によれば、上記担体ビーズをカプセル化し、次いで得られたカプセルにさらに任意の処理を施した後では、担体芯殻構造カプセル及び/または前駆体芯殻構造カプセルの殻は半透過性である。
【0108】
一実施形態によれば、担体芯殻構造カプセル及び/または前駆体芯殻構造カプセルの殻に上記の処理を施すことにより、あるいはさらに別の処理を施すことにより、上記可溶化媒体、並びに/または液化及び/もしくは溶解した担体材料を、上記殻から拡散及び/または浸透させる隔膜特性が得られる。
【0109】
上述したように、殻を透過性及び/または多孔性にするために特定の処理工程を必要とする実施形態では、かかる工程は、上記透過性を生じさせる物理的及び/または化学的処置を含んでよい。例えば、担体芯殻構造カプセルを、殻に対して腐食性の溶液にさらしてもよく、これにより、例えば、所与の時間さらすと細孔が形成され、あるいは透過性が増加する。例えば、特定のpHを有する溶液を用いて、必要とされる殻の拡散特性/透過特性を得てもよい、一般に、用いられ得る物理的及び/または化学的処置には、圧力を加えること、温度を変化(温度上昇及び/もしくは温度低下)させること、pHを変化させること、並びに/またはこれらの2つ以上の組み合わせが必要とされる。
【0110】
以下でさらに明らかになるであろうが、本発明の方法は、上記とは反対の目的で、特に、殻を介した拡散及び/または透過性を減少させる目的で、カプセルを化学的及び/または物理的に処置してカプセルの拡散特性及び/または透過特性に影響を及ぼす工程をさらに含んでもよい。物理的及び/または化学的処置が2つの工程で構成されて隔膜の透過特性を改変する実施形態では、拡散/透過性を増加させる工程を、上記殻を化学的及び/または物理的に処置または加工する第1工程とし、上記隔膜の拡散特性/透過特性を減少させる上記の後工程を、第2工程、すなわち上記殻を化学的及び/または物理的に処置または加工する別の工程としてよい。
【0111】
ある実施形態では、この段階で(上述した任意の別の処理工程の後に)上記担体芯殻構造カプセルの殻は、必要に応じて担体材料を可溶化または懸濁させた後に、少なくとも担体材料を透過させる隔膜特性を有する。ある実施形態では、この段階で殻は添加剤を透過する隔膜特性を有し、そのため殻は、カプセル化されることになり、あるいは既にこの段階でカプセル内に存在し得る。
【0112】
ある実施形態では、上記担体芯殻構造カプセルの隔膜は、特に以下で指定されるような条件で、カプセル内への添加剤の拡散特性、並びに/または可溶化(例えば、融解もしくは溶解)及び/もしくは懸濁させた担体材料のカプセル内部から外部への拡散特性を最適化及び/または好適化するように処理されている、あるいは処理される。
【0113】
一実施形態によれば、本発明の方法は、担体芯の少なくとも一部が殻から殻の外部に拡散及び/または浸透する条件(例えば、これらの条件を媒体によって与えてよい)に、上記前駆体芯殻構造カプセルをさらす工程を含んでもよい。
【0114】
本発明では、カプセル外部に拡散させるために最適な細孔特性がカプセル内に好適に拡散させる特性とは異なってもよいことを考慮に入れている。
【0115】
一実施形態によれば、本発明の方法は、上記担体芯殻構造カプセルを可溶化媒体(これは、液状媒体であってよい)にさらす工程を含んでもよい。
【0116】
ある実施形態では、上記担体材料は、上記媒体が液体であろうと気体であろうと、この媒体に可溶性または分散性である。
【0117】
一実施形態によれば、上記担体ビーズの上記担体材料、上記添加剤及び(任意には液状の)上記可溶化媒体を選択することにより、任意には上記媒体の物理的及び/または化学的処置の後で、上記担体材料及び上記添加剤が両方とも上記媒体に可溶性または分散性となるようにする。例えば、可溶化媒体を、上記担体材料の融点を超えた温度で供給してもよい。このように、上記担体芯殻構造カプセルを上記媒体にさらすときには、担体材料を上記温度にさらす。ある実施形態では、上記媒体は上記温度で液体である。
【0118】
一実施形態によれば、(任意には、上記水を100℃まで、90℃まで、70℃まで、または60℃の温度まで加熱した後)上記添加剤及び/または上記担体材料は、液状水に可溶性及び/または分散性である。
【0119】
一実施形態によれば、上記可溶化媒体は、例えば、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、5℃、0℃の温度で、あるいは−5℃の温度でも液体である。
【0120】
一実施形態によれば、上記媒体は、水溶液、アルコール含有溶液、疎水性溶媒、油、及び前述した2つ以上を含む混合物からなる群から選択される液状媒体である。
【0121】
上記担体芯殻構造カプセルを上記可溶化媒体にさらす例示的な方法は、上記液状媒体を含む槽中に担体芯殻構造カプセルを置くことを含む。例えば、上記液状媒体に落とすことにより、単に担体芯殻構造カプセルを移動させてもよい。
【0122】
ある実施形態では、上記担体芯殻構造カプセルを液状媒体にさらす上記工程中に、上記担体材料の略一部が液化される(例えば、溶解、融解及び/または懸濁される)。
【0123】
ある実施形態では、上記担体芯殻構造カプセルを可溶化媒体にさらす上記工程中に、上記担体材料は、上記殻から上記カプセルの外部に拡散する。ある実施形態では、液状媒体または可溶化媒体を、上記殻を介してカプセル内に拡散させてよい。添加剤が媒体に添加されていた場合は、上記添加剤を、上記液状媒体と共にカプセル内に拡散させてもよい。特に、上記媒体は、上記添加剤を含んでもよく、実質的に上記添加剤で構成されてもよく、あるいは上記添加剤で構成されてもよい。例えば、上記液状媒体は、香油、精油、抽出物(例えば、植物抽出物)、または他の種類の液状添加剤であってよい。
【0124】
ある実施形態では、上記担体芯殻構造カプセルを上記媒体に十分な時間さらして、上記担体材料の略一部を、上記殻から上記殻の外部に拡散または浸透させる。
【0125】
ある実施形態では、上記担体芯殻構造カプセルを、上記液状媒体及び/または可溶化媒体に十分な期間さらして、上記芯殻構造カプセルの上記担体芯の少なくとも一部を上記液状媒体で置換することにより、上記液状媒体を含む液状芯を含有する芯殻構造カプセルを得る。この工程中、上記担体材料の略一部が上記殻から上記殻の外部に拡散及び/または浸透することにより移動する。例えば、上記担体材料の40重量%超、50重量%超、60重量%超、または70重量%以上が、上記担体芯殻構造カプセルの外部に移動する。ある実施形態では、実質的に全ての担体材料(100重量%まで)をカプセル内部から除去するのが好ましい場合もあるものの、通常は、カプセル内に少量または残留量の担体材料が残ることが認められる。
【0126】
上記可溶化媒体は、任意に添加剤を含んでおり、上記担体材料が上記殻の内部から外部に移動するのと同時に移動(例えば、殻内部に拡散)し得る。この状況では、上記担体芯殻構造カプセルの上記殻の隔膜を介した拡散交換が発生する。つまり、担体材料の少なくとも一部が、上記可溶化媒体及び/または上記添加剤担体材料に置き換わる。
【0127】
上記の一実施形態における本発明の方法は、対向流拡散及び/または拡散交換により、添加剤を含有する芯殻構造カプセルをカプセル化する方法、かつ/または提供する方法を対象とし得る。
【0128】
あるいは、第1工程で、担体材料が移動及び/または拡散し、続く別の工程で、上記可溶化媒体及び/または添加剤が殻の内部に移動及び/または拡散すると想定される。さらに、担体芯殻構造カプセルから担体材料を除去した前工程の後に、添加剤またはこれを含有する溶液もしくは分散液を殻内に移動させる別の工程を特に設けることが想定される。
【0129】
さらに、本発明は、添加剤が上記担体芯と共に存在しており、可溶化媒体にさらしている間、添加剤を殻内に残留させつつ、担体材料のみまたは実質的に担体材料のみをカプセルの殻の外部に拡散させる実施形態をも包含する。
【0130】
ある実施形態では、可溶化媒体及び/または添加剤を含む媒体に上記担体芯殻構造カプセルをさらすことにより、液状芯及び/または添加剤を含む芯殻構造カプセルを得る。
【0131】
本実施形態では、本発明の方法は、上記可溶化媒体及び/または液状媒体から、例えば、先の工程で得られるような液状芯を含有する上記芯殻構造カプセルを除去する工程を含む。適宜、例えば濾過によって上記カプセルを分離してよい。
【0132】
一実施形態によれば、本発明の方法は、必要であればカプセルを洗浄することにより、上記芯殻構造カプセルの表面から、残留する液状媒体及び/または可溶化媒体並びに添加剤を除去する工程を含む。
【0133】
また、上記の媒体にさらす工程後に、かつ/または上述した任意の洗浄工程後に得られる芯殻構造カプセルの表面を乾燥させることも可能である。ある実施形態では、上記芯殻構造カプセルを、適切な温度の空気またはガスを用いて(例えば、空気流及び/またはガス流中で)乾燥させる。あるいはまたは加えて、例えば、ケイ酸塩粉末などの適切な吸収媒体を利用して、上記芯殻構造カプセルの表面から残留する媒体または溶媒を除去してもよい。
【0134】
任意ではあるが、本発明は、特に放出特性を調整または改変して放出を制御するため、上記カプセルにさらに処理を施す方法を含有する。
【0135】
一実施形態によれば、本発明の方法は、添加剤を含む上記芯殻構造カプセルの上記殻を化学的及び/または物理的に処置または加工する工程を含むことにより、上記芯殻構造カプセルの殻からの拡散特性を改変するようにしてもよい。本発明の方法が前述した物理的及び/または化学的処置の第1工程を含む場合、本工程は、物理的及び/または化学的処置の第2工程であってよい。この時、カプセルは添加剤を含み、担体芯は実質的に除去されている。
【0136】
そのため、本発明の方法は、上記前工程で得られたカプセルの殻の拡散特性を変化させる条件に上記芯殻構造カプセルをさらす工程を含むことにより、担体芯の少なくとも一部を上記殻の外部に移動させてから、添加剤が上記殻から、かつ/またはカプセルの外部に拡散しにくくするようにしてもよい。
【0137】
ある実施形態では、本工程の処置及び/または加工によって殻の隔膜の透過性が減少する。この処理により、添加剤を含む芯が殻内により良好に保持され得る。
【0138】
殻の透過性及び/または拡散特性を改変する物理的及び/または化学的処置としては、例えば、温度を変化させること(温度を上昇及び/または低下させること)、圧力を加えること、pHを変化させること、及び/または芯殻構造カプセルに塗料を塗布することが挙げられる。
【0139】
本発明の方法は、添加剤を含む上記芯殻構造カプセルに塗料を塗布する工程を含んでもよい。上記液状媒体及び/または可溶化媒体に殻をさらす工程の後に(必要に応じて、中間の洗浄工程の後に)、上記工程を実施してよい。この段階で、芯殻構造カプセルが既にその芯内に添加剤を含み、担体芯が実質的に除去されていてもよい。
【0140】
上記担体ビーズをカプセル化する工程が被覆工程を必要とする実施形態では、添加剤を含む芯殻構造カプセルを被覆する工程を第2被覆と呼んでもよく、それに対して、先の被覆を第1被覆と呼んでもよい。あるいは、添加剤を含む芯殻構造カプセルを被覆する工程を外被34と呼んでもよく、それに対して、先の被覆を殻32と呼んでもよい。
【0141】
上記物理的及び/または化学的処置(例えば、上記被覆)により、細孔特性及び/または透過特性を変化させることが可能となり、特に、カプセル内部に添加剤を良好に保持することが可能となる。
【0142】
酢酸などの溶媒(この溶媒で酢酸セルロースを担体構造体に加えて、芯殻構造カプセルの殻を形成する)を除去してもよい。ある実施形態では、気化によって溶媒を除去する。この気化は、用いた溶媒の気化を促進しあるいは強化する条件に、カプセルまたはその前駆体をさらす気化工程により行ってもよい。
【0143】
ある実施形態では、第2被覆を実施する場合、任意の好適な成膜材料及び/または高分子材料によってこの被覆を作製してよい。ある実施形態では、可塑剤を用いる。例えば、上記カプセルを、脂質(例えばワックス及び/もしくは脂肪)、塗料、並びに/または酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース並びに/もしくはセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び/もしくはカルボキシルメチルセルロース(CMC)など)などの他の成膜材料並びに/もしくは高分子材料を含み、実質的にそれらで構成され、あるいはそれらで構成される物質で被覆してよい。他の好適な可塑剤については、本明細書の他の箇所で議論する。
【0144】
好適なワックスの例としては、カルナバワックス、ミツロウ、カスターワックス、キャンデリラワックス及びパラフィンワックスが挙げられる。他の脂質類の例としては、例えば、硬化油(水素添加大豆油またはパーム油など)、モノグリセリド類、ジグリセリド類、酢酸エステル類、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(DATEM)、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カリウムなどがある。
【0145】
例えば、所望の放出特性によって、第2被覆、すなわち第2層または次の層の材料を選択してよい。第2層または次の被覆層の安定性、一体性及び/または感受性によって芯内の添加剤の保持及び/または芯からの添加剤の放出を決定し、それに従ってこれらの性質を選択してよい。カプセルが機械的に損傷した後のみに添加剤の放出が発生する場合は、第2層または次の被覆層の材料を選択して、環境的要因(例えば、温度及び/またはpHなど)の変動に対して比較的安定するようにしてもよい。加えて、この場合には、カプセルの材料を強固なものとして、機械的拘束及び/または圧力にほとんどあるいは全く影響を受けないようにしてもよい。
【0146】
カプセルの芯が水及び/または水溶性材料を含むときには、第2被覆、すなわち第2層または次の層の材料は、不透水性及び/または脂溶性であってよい。カプセルの芯が脂溶性材料を含むときには、第2被覆、すなわち第2層または次の層の材料は、不透脂性及び/または水溶性であってよい。
【0147】
本発明の芯殻構造カプセルの上記第1及び第2被覆または各層は、同一または異なる層から構成されてよい。
【0148】
本発明は、本発明の方法のいずれか1つによって得られるカプセルを含むタバコ製品に関する。かかるタバコ製品としては、喫煙品及び無煙経口タバコ製品が挙げられる。あるいは及び/またはそれに加えて、本発明は、本発明の方法のいずれか1つによって得られる喫煙品用芯殻構造カプセルを含むフィルターエレメントに関する。当技術分野において既知である任意の好適な方法により、1つ以上の芯殻構造カプセルをタバコ製品及び/またはフィルターエレメントに組み込んでよい。
【0149】
一実施形態によれば、本発明は、添加剤を含有する芯を含む芯殻構造カプセルを提供する。この芯殻構造カプセルでは、上記芯及び/または上記添加剤の一部または全体が液体の性質を有するが液状であり、上記芯及び/または上記添加剤の一部または全体は、60℃、50℃、40℃、35℃及び/もしくは30℃で、並びに/もしくは室温(25℃)で液体であり、またはさらに低い温度(22℃、20℃、15℃、10℃及び5℃など)で液体である。
【0150】
一実施形態によれば、上記芯及び/または上記添加剤の一部または全体は、液体の性質を有するが液状である。ある実施形態では、液体を含む複数種類の物質は、種々の凝集状態で存在する各種の物質を含む組成物を包含し、少なくとも1種の物質は、液体の形態で存在している。例えば、ある実施形態では、芯及び/または添加剤は、固体と混合させたゲルまたは液体を含んでよい。
【0151】
液体を含み、添加剤及び/または本発明のカプセルの芯として機能し得る材料の物質例としては、ゲル、湿潤スポンジ構造体、懸濁液、乳濁液、分散液、コロイド、エアロゾル及び泡がある。
【0152】
液体の性質を有する物質(液体を含む)とは、形状変化にはそれほど強く抵抗しないものの、一般に圧力を加えると抵抗する物質である。液体は通常、ほとんど圧縮することができない。一般的な定義によれば、液体とは、一定の容積を持つが決まった形状を持たない物質の形態である。厳密には液体ではないが液体の性質を有し、本発明のカプセル内の芯及び/または添加剤の少なくとも一部として用いることが可能な材料の物質は、例えば、液晶及び樹脂結晶などの半固体類から選択してよい。半固体類または疑似固体類は、非結晶類としても知られている。
【0153】
一実施形態によれば、液体及び液体の性質を有する物質(半固体類など)は、60℃、50℃、40℃、35℃及び/もしくは30℃で、並びに/もしくは室温(25℃)で、またはさらに低い温度(22℃、20℃、15℃、10℃及び5℃など)で、0.005〜15,000センチポアズの範囲の粘度を有する物質である。
【0154】
一実施形態によれば、液体及び液体の性質を有する物質(半固体類など)は、60℃、50℃、40℃、35℃及び/もしくは30℃で、並びに/もしくは室温(25℃)で、またはさらに低い温度(22℃、20℃、15℃、10℃及び5℃など)で、0.005〜3,000センチポアズの範囲の粘度を有する物質である。
【0155】
一実施形態によれば、液体及び液体の性質を有する物質(半固体類など)は、60℃、50℃、40℃、35℃及び/もしくは30℃で、並びに/もしくは室温(25℃)で、またはさらに低い温度(22℃、20℃、15℃、10℃及び5℃など)で、0.005〜1,000センチポアズの範囲の粘度を有する物質である。
【0156】
一実施形態によれば、液体及び液体の性質を有する物質(半固体類など)は、60℃、50℃、40℃、35℃及び/もしくは30℃で、並びに/もしくは室温(25℃)で、またはさらに低い温度(22℃、20℃、15℃、10℃及び5℃など)で、0.005〜500センチポアズの範囲の粘度を有する物質である。
【0157】
一実施形態によれば、液体及び液体の性質を有する物質(半固体類など)は、60℃、50℃、40℃、35℃及び/もしくは30℃で、並びに/もしくは室温(25℃)で、またはさらに低い温度(22℃、20℃、15℃、10℃及び5℃など)で、0.005〜200センチポアズの範囲の粘度を有する物質である。
【0158】
粘度は、0.50mLの試料をブルックフィールド社製DV−II+粘度計を用いて、上記に示した温度(必要に応じて、例えば、60℃、50℃、40℃、35℃、30℃、22℃、20℃、15℃、10℃、5℃、25℃)で測定して求めてよい。
【0159】
一実施形態によれば、センチポアズで表された上記の粘度範囲では、0.005の値は、0.899センチポアズに置き換えられるが、これは水の粘度である。
【0160】
ある実施形態では、上記芯の少なくとも一部、例えば、上記芯の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、80重量%もしくは90重量%は液体のまま残留し、かつ/または、25℃かつ相対湿度50%で3ヶ月間保存した場合の貯蔵期間は液体の性質を保つ。
【0161】
ある実施形態では、上記芯の少なくとも一部、例えば、上記芯の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、80重量%もしくは90重量%は液体のまま残留し、かつ/または、25℃かつ相対湿度50%で6ヶ月間保存した場合の貯蔵期間は液体の性質を保つ。
【0162】
ある実施形態では、上記芯の少なくとも一部、例えば、上記芯の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、80重量%もしくは90重量%は液体のまま残留し、かつ/または、25℃かつ相対湿度50%で9ヶ月間保存した場合の貯蔵期間は液体の性質を保つ。
【0163】
ある実施形態では、上記芯殻構造カプセルの芯は、上記担体材料の残留量及び検出可能な量を含む。例えば、上記担体材料がPEGである場合、上記芯は、添加剤に加えて残留PEGを含み得る。
【0164】
ある実施形態では、上記芯殻構造カプセルの殻は、酢酸セルロース及び/またはその誘導体(酢酸フタル酸セルロースなど)を含む。これ以外の殻材料は、本明細書の他の箇所で言及されている。
【0165】
ある実施形態では、上記芯殻構造カプセルの殻は多層からなり、少なくとも2層、または少なくとも3層以上の区別可能な層を含む。上記別々の各層は、異なる材料及び/または異なる組成物を含んでもよく、あるいはこれらで構成されてもよい。第1層を殻32と呼んでもよく、それに続く任意の層を被覆34と呼んでもよい。
【実施例】
【0166】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記載されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0167】
添加剤を含有する担持用芯の調製
融点45〜50℃のポリエチレングリコール(PEG)2000(メルク社、ドイツ)を融解して60〜65℃の温度に維持し、このPEGを15重量%のメンソール油と混合した。
【0168】
ヒマワリ油で冷却槽を用意し、10〜15℃に保った。1400μmのノズル(ニスコ社、チューリッヒ、スイス)を通じてPEG−メンソール混合物を押し出し、滴状方式で冷却槽に落とした。
【0169】
直径2〜4mmのビーズを冷却槽からふるいで取り分け、アセトンで洗浄した。
【実施例2】
【0170】
殻の形成
酢酸セルロース(シグマ アルドリッチ(登録商標)社、CAS番号9004−35−7)15gを酢酸100mlに溶解した。この酢酸セルロースを完全に溶解させてから、当該溶液にイソプロパノール80mlを連続的に添加した。流動床(MP−1、エアロマティック社、ニーロ、ドイツ)に酢酸セルロース溶液を噴霧することにより、ビーズ90%と酢酸セルロース10%の重量比で、実施例1の芯構造を有するビーズを被覆した。
【実施例3】
【0171】
芯からの担体基材の置換
実施例2の被覆済みビーズを70℃の水槽に浸漬し、芯が液化して芯内に水が吸収されるまで槽中に保持した。
【実施例4】
【0172】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのワックス封止
実施例3の殻及び液状芯を含むカプセルの一部を、ワックス5%とカプセル95%の重量比になるまで、流動床(実施例2と同様の装置)にカスターワックスを用いて被覆した。
【実施例5】
【0173】
液状芯を含有する被覆済みカプセルの酢酸セルロース封止
ワックスの代わりに酢酸セルロースを用いて、実施例3のカプセルの残りの部分を流動床被覆した。特に、酢酸セルロース15gを酢酸100mlに溶解した。この酢酸セルロースを完全に溶解させてから、当該溶液にイソプロパノール80mlを連続的に添加した。
【0174】
実施例4及び実施例5で得られたカプセルを、25℃、相対湿度(RH)70%で6ヶ月間保存した。各カプセルを破裂させて、カプセルの内容液を放出した。添加剤がカプセル内に液体のまま6ヶ月間残留していた。
【実施例6】
【0175】
添加剤を含有する担持用芯の調製
PEG3000(融点50〜56℃)とPEG1500(融点42〜48℃)を80対20の割合で融解して65〜70℃の温度に維持し、このPEG混合物を15重量%のメンソール油と混合した。直径2〜4mmのビーズを用意して、実施例1に記載したように洗浄した。
【実施例7】
【0176】
殻の形成
フタル酸セルロース(酢酸フタル酸セルロース、シグマ アルドリッチ(登録商標)社、CAS番号9004−38−0)15gを酢酸100mlに溶解した。このフタル酸セルロースを完全に溶解させてから、当該溶液にイソプロパノール80mlを連続的に添加した。流動床にフタル酸セルロース溶液を噴霧することにより、ビーズ90%とフタル酸セルロース10%の重量比で、実施例6の芯構造を有するビーズを被覆した。
【実施例8】
【0177】
芯からの担体基材の置換
実施例7の被覆済みビーズを70℃の水槽に浸漬し、芯が液化して芯内に水が吸収されるまで槽中に保持した。
【実施例9】
【0178】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのワックス封止
実施例3の殻及び液状芯を含むカプセルの一部を、ワックス5%とカプセル95%の重量比になるまで、流動床にワックス混合物を用いて被覆した。このワックス混合物は、ミツロウ33.3%、カスターワックス33.3%及びカルナバワックス33.3%で構成されており、これらのワックスを混合融解してカプセルに噴霧した。
【実施例10】
【0179】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのフタル酸セルロース封止
ワックスの代わりにフタル酸セルロースを用いて、実施例8のカプセルの残りの部分を流動床被覆した。フタル酸セルロース15gを酢酸100mlに溶解した。このフタル酸セルロースを完全に溶解させてから、当該溶液にイソプロパノール80mlを連続的に添加した。
【0180】
実施例9及び実施例10で得られたカプセルを6ヶ月間保存した。カプセル30個を破裂させて、カプセルの内容液を放出した。添加剤がカプセル内に分散したまま6ヶ月間残留していた。
【実施例11】
【0181】
添加剤を含有する担持用芯の調製
PEG2000(融点45〜50℃)を融解して60〜65℃の温度に維持し、このPEGを15重量%のメンソール油と混合した。
【0182】
ヒマワリ油で冷却槽を用意し、10〜15℃に維持した。500μmのノズルを通じてPEG−メンソール混合物を押し出し、滴状方式で冷却槽に落とした。
【0183】
直径1〜2mmのビーズを冷却槽からふるいで取り分け、アセトンで洗浄した。
【実施例12】
【0184】
殻の形成
正確には実施例2に述べたビーズ90%と酢酸セルロース10%の重量比で、実施例11の芯構造を有するビーズを被覆した。
【実施例13】
【0185】
芯からの担体基材の置換
実施例12の被覆済みビーズを70℃の水槽に浸漬し、芯が液化して芯内に水が吸収されるまで槽中に保持した。
【実施例14】
【0186】
液状芯を含有する被覆済みカプセルの脂肪封止
実施例13の殻及び液状芯を含むカプセルの一部を、脂肪5%とカプセル95%の重量比になるまで、流動床に脂肪を用いて被覆した。用いた脂肪は、Bergazid脂肪(C1852、ベルク・シュミット社製、ハンブルク、ドイツ)であり、この脂肪を融解してカプセルに噴霧した。
【実施例15】
【0187】
液状芯を含有する被覆済みカプセルの酢酸セルロース封止
実施例5に述べた酢酸セルロースを用いて、実施例13のカプセルの残りの部分を流動床被覆した。
【0188】
実施例14及び実施例15で得られたカプセルを、25℃、RH70%で6ヶ月間保存した。各カプセルを破裂させて、カプセルの内容液を放出した。添加剤がカプセル内に液体のまま6ヶ月間まで残留していた。
【実施例16】
【0189】
添加剤を含有する担持用芯の調製
PEG3000(融点50〜56℃)とPEG1500(融点42〜48℃)を、80対20の割合で融解して65〜70℃の温度に維持した。この段階では、添加剤を未添加とした。直径2〜4mmのビーズを用意して、実施例1に述べたように洗浄した。
【実施例17】
【0190】
殻の形成
実施例7に述べたフタル酸セルロースを流動床に用いて、実施例16の芯構造を有するビーズを被覆した。
【実施例18】
【0191】
芯からの担体基材の置換
実施例17の被覆済みビーズを、水90%w/w、メンソール油8%w/w、tween(登録商標)20 1.5%w/w、及びSpan(登録商標)40 0.5%w/wで構成される60℃の乳液槽に浸漬し、芯が液化して芯内に乳濁液が吸収されるまで槽中に保持した。
【実施例19】
【0192】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのワックス封止
実施例18の殻及び液状芯を含むカプセルの一部を、ワックス5%とカプセル95%の重量比になるまで、実施例9に使用したワックス混合物を用いて流動床被覆した。
【実施例20】
【0193】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのフタル酸セルロース封止
実施例10に述べたフタル酸セルロースを用いて、実施例18のカプセルの残りの部分を流動床被覆した。
【0194】
実施例19及び実施例20で得られたカプセルを、室温、RH70%で12ヶ月間保存した。各カプセルを破裂させて、カプセルの内容液を放出した。保存期間中、添加剤がカプセル内に分散したまま残留していた。
【実施例21】
【0195】
添加剤を含有する担持用芯の調製
直径2〜4mmのビーズを用意して、実施例16に述べたように洗浄した。
【実施例22】
【0196】
殻の形成
実施例7に述べたフタル酸セルロース溶液を用いて、実施例21の芯構造を有するビーズを流動床被覆した。
【実施例23】
【0197】
芯からの担体基材の置換
タイム精油で構成される60℃の香料槽に実施例22の被覆済みビーズを浸漬し、芯が液化して芯内に香料が吸収されるまで槽中に保持した。
【実施例24】
【0198】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのワックス封止
実施例23の殻及び液状芯を含むカプセルの一部を、実施例9に述べたワックス混合物を流動床に用いて被覆した。
【実施例25】
【0199】
液状芯を含有する被覆済みカプセルのフタル酸セルロース封止
実施例10に述べたフタル酸セルロースを用いて、実施例23のカプセルの残りの部分を流動床被覆した。
【0200】
実施例24及び実施例25で得られたカプセルを、室温、RH70%で12ヶ月間保存した。各カプセルを破裂させて、カプセルの内容液を放出した。添加剤がカプセル内に分散したまま12ヶ月間まで残留していた。
【実施例26】
【0201】
酢酸セルロースの殻、及び添加剤を含有する芯を含む非被覆カプセル
酢酸セルロースを用いた芯殻構造カプセルを以下の組成で生成した。
酢酸セルロース 5%
PEG400 5%
PEG1500 80%、
メンソール油 15%
【実施例27】
【0202】
別の担持用芯の調製
PEG3000とPEG400を85%と15%の重量比で混合して融点45〜50℃を得た。この混合物を融解して60〜65℃の温度に維持した。融解したPEGを実施例1に記載した冷却槽に押し出し、平均直径2〜4mmのカプセルを冷却槽からふるいで取り分け、アセトンで洗浄した。
【実施例28】
【0203】
酢酸セルロースを含有する殻の形成
カプセル90%と酢酸セルロース10%の重量比で、実施例27の芯構造を有するカプセルを実施例2に記載したように被覆した。
【実施例29】
【0204】
三酢酸セルロースを含有する別の殻の形成
三酢酸セルロース(シグマ アルドリッチ(登録商標)社、CAS番号9012−09−3)15gを酢酸200mlに溶解した。この三酢酸セルロースを完全に溶解させてから、流動床に三酢酸セルロース溶液を噴霧することにより、カプセル90%と三酢酸セルロース10%の重量比で、実施例27の芯構造を有するカプセルを被覆した(実施例2を参照)。
【実施例30】
【0205】
芯からの担体基材の置換
実施例28及び実施例29の各被覆済みカプセルを35℃の水槽に浸漬し、芯が液化して芯内に水が拡散するまで槽中に保持した。本実施例では、活性剤として水のみを用いた。
(実施例31〜40)
【0206】
実施例30の芯殻構造カプセルの封止
一連の実験において、実施例30の2種類の液状芯殻構造カプセル(それぞれ異なる種類の塗料で被覆されている)にさらに処置を施すことにより、殻を封止して、この殻がカプセルの殻内に保持された水に不透過(カプセル化)となるようにした。これらのさらなる実施例では、被覆材料または被覆材料及び可塑剤の混合物を1種または2種の溶媒に溶解し、流動床(MP−1、エアロマティック社、ニーロ、スイス)での噴霧によって実施例30のカプセルを被覆した。以下の表1は、用いた封止材料、可塑剤及び溶媒に関する詳細及び量を一覧にしたものである。
【0207】
これらの実施例では、封止により、第2被覆を形成し、かつ/または上記芯殻構造カプセルの殻にさらに層を形成した。
【0208】
実施例31〜40の溶媒及び被覆材料
【0209】
【表1】
溶媒1:酢酸;溶媒2:イソプロパノール;
*実施例30で得られた芯殻構造カプセル:被覆材料(実施例31及び実施例32)または実施例30で得られた芯殻構造カプセル:可塑剤(実施例33〜40)の重量比;
被覆材料:A=酢酸セルロース;B=三酢酸セルロース;
可塑剤:C=安息香酸ベンジル;D=トリアセチン;E=クエン酸トリエチル;F=フタル酸ジブチル
【0210】
例えば、実施例34を以下の通り実施した。
酢酸セルロース15gを酢酸200mlに溶解した。完全に溶解させてから、当該溶液に安息香酸ベンジル可塑剤12.5gを連続的に添加した。三酢酸セルロースはイソプロパノールと親和性がないことに注意すべきであるが、これは、本実施例ではイソプロパノールで酢酸を希釈していないためである。三酢酸セルロース溶液を流動床に噴霧することにより、芯殻構造カプセル(実施例30)89%、三酢酸セルロース6%及び安息香酸ベンジル5%(第2被覆全体の11%)の重量比で実施例30の液状芯殻構造カプセルを被覆した。
【0211】
実施例33、35、37及び39では、溶媒1と被覆材料の溶液にイソプロパノールを連続的に添加した。次いで、2種の溶媒を含み、被覆材料を液中に溶解させた溶液に可塑剤を添加した。次いで、上述した2種の溶媒、被覆材料及び可塑剤の混合物を用いて実施例30のカプセルを被覆した。実施例31を実施例2として実施した。
【0212】
実施例31〜40では、封止済み芯殻構造カプセル、または2層に分かれた被覆(多層芯殻構造カプセル)で構成される芯殻構造カプセルを得た。25℃、相対湿度(RH)75%で、カプセルを6ヶ月間保存した。各カプセルを破裂させて、カプセルの内容液を放出した。水がカプセル内に6ヶ月間残留していた。
【0213】
種々の問題に対処し本技術を促進するため、本開示の全体は、種々の実施形態を一例として示す。その実施形態の中で特許請求の範囲に記載の1つ以上の発明が実践され、添加物の優れた封入物が提供される。本開示の利点及び特徴は、単に実施形態の代表的事例であって、これらに限定されるものではない。これらは単に特許請求された特徴の理解を助け、教示するために提示される。本開示の利点、実施形態、実施例、機能、特徴、構造、及び/または他の態様は、特許請求の範囲で規定される本開示またはその均等物を限定するものではなく、本開示の範囲及び/または概念から逸脱することなく他の実施形態を利用し改変することができることを理解すべきである。種々の実施形態は、開示された要素、構成要素、特徴、部品、工程、手段などの種々の組み合わせを好適に含んでも、それらで構成されても、または本質的にそれらで構成されてもよい。さらに本開示には、現在特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明も含まれる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2014年9月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部であって、前記カプセルの殻が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、前記芯殻構造カプセルが、
前記殻を形成する成膜材料によってカプセル化された担体構造体または芯を含む前駆体芯殻構造カプセルを生成する工程、及び前記担体構造体の材料の少なくとも一部が前記芯から前記殻を介して前記殻の外部に拡散及び/または浸透する条件に、前記前駆体芯殻構造カプセルをさらす工程、を含む方法によって形成されるタバコ製品またはその一部。
【請求項2】
前記カプセルの芯が添加剤を含み、任意には前記添加剤がメンソールであることを特徴とする請求項1に記載のタバコ製品。
【請求項3】
前記カプセルの芯が添加剤を含み、前記添加剤が実質的に水からなることを特徴とする請求項1または2に記載のタバコ製品。
【請求項4】
前記カプセルの芯が添加剤を含み、前記添加剤がクローブ抽出物及び/またはクレテック風香料を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項5】
前記芯殻構造カプセルの直径が1mmより大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項6】
前記芯殻構造カプセルが湿気不透過性被覆を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項7】
前記湿気不透過性被覆が1種以上の可塑剤を含むことを特徴とする請求項6に記載のタバコ製品。
【請求項8】
前記芯殻構造カプセルが破裂可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項9】
前記タバコ製品が喫煙品または無煙経口タバコ製品であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項10】
前記タバコ製品の一部が、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコロッドもしくはタバコの一部であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項11】
タバコ製品またはその一部への芯殻構造カプセルの利用であって、前記カプセルの殻が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、前記芯殻構造カプセルが、
前記殻を形成する成膜材料によってカプセル化された担体構造体または芯を含む前駆体芯殻構造カプセルを生成する工程、及び前記担体構造体の材料の少なくとも一部が前記芯から前記殻を介して前記殻の外部に拡散及び/または浸透する条件に、前記前駆体芯殻構造カプセルをさらす工程、を含む方法によって形成される利用。
【請求項12】
前記タバコ製品が喫煙品または無煙経口タバコ製品であることを特徴とする請求項11に記載の利用。
【請求項13】
前記タバコ製品の一部が、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコロッドもしくはタバコの一部であることを特徴とする請求項11に記載の利用。
【請求項14】
芯殻構造カプセルを含むタバコ製品またはその一部を製造する方法であって、
担体材料から担体構造体を調製すること、
成膜材料で前記担体構造体をカプセル化して、前記担体構造体を完全に囲む殻を形成すること、
前記担体材料が溶解可能または分散可能である媒体に、前記カプセル化した担体構造体をさらすことにより、前記担体材料の少なくとも一部を前記殻の内部から除去すること、
前記媒体から前記得られた芯殻構造カプセルを除去すること、及び
タバコ製品またはその一部に前記芯殻構造カプセルを組み込むこと、を含み、
前記成膜材料が酢酸セルロース及び/またはその誘導体を含み、前記媒体及び/または前記担体材料が添加剤を含み、前記得られた芯殻構造カプセルが前記添加剤を含む方法。
【請求項15】
前記添加剤がメンソールを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記添加剤が実質的に水からなることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記カプセルの芯がクローブ抽出物及び/またはクレテック風香料を含むことを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記担体材料がポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記担体材料が前記カプセルの外部に拡散し、前記媒体が前記カプセルの内部に拡散し、前記媒体が前記添加剤を含むことを特徴とする請求項14乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記芯殻構造カプセルに塗料を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項14乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記塗料が1種以上の可塑剤を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記芯殻構造カプセルの直径が1mmより大きいことを特徴とする請求項14乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記タバコ製品が喫煙品または無煙経口タバコ製品であることを特徴とする請求項14乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記タバコ製品の一部が、フィルターもしくはフィルターエレメントであり、またはタバコロッドもしくはタバコの一部であることを特徴とする請求項14乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項14乃至24のいずれか1項に記載の方法によって製造される芯殻構造カプセルを含む、タバコ製品またはその一部。
【国際調査報告】