特表2015-533547(P2015-533547A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-533547脳の異なる領域の間の病的な相互作用を判定するために使用される位相分布を調べる装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-533547(P2015-533547A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】脳の異なる領域の間の病的な相互作用を判定するために使用される位相分布を調べる装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0484 20060101AFI20151030BHJP
   A61B 5/0488 20060101ALI20151030BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   A61B5/04 320M
   A61B5/04 330
   A61B5/05 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-533483(P2015-533483)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2013002971
(87)【国際公開番号】WO2014053244
(87)【国際公開日】20140410
(31)【優先権主張番号】102012218057.5
(32)【優先日】2012年10月2日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】510238926
【氏名又は名称】フォースチュングスヌートラム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】タス ペーター アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C027
【Fターム(参考)】
4C027AA03
4C027AA04
4C027AA10
4C027DD01
4C027DD02
4C027DD03
4C027DD07
(57)【要約】
本発明は、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる装置(1)に関し、本装置(1)は、同じ刺激(22)を連続的に患者に印加する刺激ユニット(11)であって、刺激が、検査する脳の領域における患者のニューロンを刺激する、刺激ユニット(11)と、刺激されたニューロンの神経活動を表す測定信号(23)を記録する測定ユニット(12)と、刺激ユニットを制御し、測定信号を分析する制御・分析ユニット(10)と、を備えている。本発明によると、制御・分析ユニットは、測定信号を複素平面に変換し、患者に印加された刺激への応答として測定ユニットによって記録された測定信号の刺激の位相の分布を調べ、脳の領域の間の病的な相互作用が存在するかを確認する目的で、位相分布が均一分布とは異なっている確率を求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる装置(1)であって、
同じ刺激を連続的に患者に印加するように構成されている刺激ユニット(11)であって、前記刺激が、検査する脳の領域における前記患者のニューロンを刺激する、前記刺激ユニット(11)と、
前記刺激されたニューロンの神経活動を再現する測定信号を記録する測定ユニット(12)と、
前記刺激ユニット(11)を制御し、前記測定信号を分析する制御・分析ユニット(10)であって、前記制御・分析ユニット(10)が、
前記刺激ユニット(11)が前記刺激を前記患者に印加するように前記刺激ユニット(11)を制御し、
前記測定信号を複素平面に変換し、前記患者に印加された前記刺激への応答として前記測定ユニット(12)によって記録された、前記複素平面における前記測定信号の位相の分布を調べ、前記位相の分布が均一分布とは異なっている確率を求めて、前記脳の領域の間の病的な相互作用が存在するかを判定する、
ように構成されている、前記制御・分析ユニット(10)と、
を備えている、装置(1)。
【請求項2】
前記測定ユニット(12)が、EEG電極、MEGセンサ、EMGセンサ、LFPセンサ、埋込型センサ、のうちの少なくとも1つを備えている、
請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記刺激ユニット(11)が非侵襲性であり、音響刺激、視覚刺激、触覚刺激、振動刺激、固有受容感覚刺激、熱刺激、臭覚刺激、経皮電気刺激の群からの刺激を生成するように構成されている、
請求項1または請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記刺激ユニット(11)が、電気刺激を印加するための1つまたは複数の埋込型電極を備えている、
請求項1または請求項2に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記制御・分析ユニット(10)が、連続する刺激の間の間隔が変化するように前記刺激ユニット(11)を制御する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
前記制御・分析ユニット(10)が、刺激を印加する前に記録された前記測定信号からしきい値を求め、前記刺激を印加した後に記録された前記測定信号から求められる、前記位相の分布が均一分布とは異なっている確率と、前記しきい値とを比較して、前記脳の領域の間の病的な相互作用が存在しているかを判定する、ように構成されている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
前記制御・分析ユニット(10)が、前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率を求めるためにカイパー検定を使用するように構成されている、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
前記刺激ユニット(11)によって前記患者に印加される前記刺激によって、前記刺激されたニューロンの病的に同期した振動性の活動の位相リセットがもたらされる、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率を求めるとき、前記刺激されたニューロンの病的に同期した振動性の活動の位相リセットがもたらされる時間期間において前記測定信号が考慮されないままである、
請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記制御・分析ユニット(10)が、
前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率が所定のしきい値を上回っている少なくとも1つの時点を検出する、および/または、
前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率を所定の時間期間にわたり積分する、および/または、
前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率が所定のしきい値を上回っている時間期間の合計時間長を求める、
ように構成されている、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項11】
脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる方法であって、
同じ刺激が連続的に患者に印加され、前記刺激が、検査する脳の領域における前記患者のニューロンを刺激し、
前記刺激されたニューロンの神経活動を再現する測定信号が記録され、
前記測定信号が複素平面に変換され、前記患者に印加された前記刺激への応答として記録された、前記複素平面における前記測定信号の位相の分布が調べられ、前記位相の分布が均一分布とは異なっている確率が求められ、前記脳の領域の間の病的な相互作用が存在するかが判定される、
方法。
【請求項12】
刺激を印加する前に記録された前記測定信号からしきい値が求められ、前記刺激を印加した後に記録された前記測定信号から求められる、前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率と、前記しきい値とが比較され、前記脳の領域の間の病的な相互作用が存在しているかが判定される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率を求めるためにカイパー検定が使用される、
請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者に印加される前記刺激によって、前記刺激されたニューロンの病的に同期した振動性の活動の位相リセットがもたらされる、
請求項11から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記位相の分布が均一分布とは異なっている前記確率を求めるとき、前記刺激されたニューロンの病的に同期した振動性の活動の位相リセットがもたらされる時間期間において前記測定信号が考慮されないままである、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の神経系疾患および精神病は、神経細胞集団の同期が病的に高まることを特徴とする(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照)。この場合、多数のニューロンが同期して活動電位を形成し、すなわち、関与するニューロンが過度に同期して発火する。これとは異なり、健康な人では、これらの脳の領域におけるニューロンの発火は質的に異なる(すなわち相関性がない)。
【0003】
ニューロンの病的な同期は、帯域通過フィルタリングまたは「経験的モード分解」によって取得される、病的な周波数範囲に属す高振幅モードにおける集合的/質量/マクロ(collective/mass/macro)信号の記録に現れる(例えば、非特許文献4、非特許文献5を参照)。後者は当業者に公知である(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照)。しかしながら、この点において、オールオアナッシング原理があてはまらず、すなわち、健康な人も、これらの特定の周波数範囲において電力スペクトルにおける電力密度を有することがある。したがって、このような信号(例えばMEG信号やEEG信号)の電力スペクトルを求めても、健康な人と患者とを十分に区別することはできない(例えば、非特許文献3を参照)。この問題は、標準的な誘発反応によっても解決できない(例えば、非特許文献6、非特許文献7を参照)、すなわち、病的または非病的と評価される電力スペクトルとして区別することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Pathological synchronization in Parkinson's disease: networks, models and treatments." by C. Hammond, H. Bergman and P. Brown, published in Trends Neurosci. 30, 2007, pages 357 to 364
【非特許文献2】"Tinnitus Perception and Distress Is Related to Abnormal Spontaneous Brain Activity as Measured by Magnetoencephalography" by N. Weisz, S. Moratti, M. Meinzer, K. Dohrmann and T. Elbert, published in PLoS Med 2(6), 2005, pages 546 to 553
【非特許文献3】"Imaging of Thalamocortical Dysrhythmia in Neuropsychiatry" by J. J. Schulman, R. Cancro, S. Lowe, F. Lu, K. D. Walton and R. R. Llinas, published in Front. Hum. Neurosci. 5, 2011, page 69
【非特許文献4】"The empirical mode decomposition and the Hilbert spectrum for nonlinear and non-stationary time series analysis" by N. E. Huang, Z. Shen, S. R. Long, M. C. Wu, H. H. Shih, Q. Zheng, N.-C. Yen, C. C. Tung and H. H. Liu, published in Proc. R. Soc. A: Math. Phys. Eng. Sci. 454, 1998, pages 903 to 995
【非特許文献5】"Engineering analysis of biological variables: An example of blood pressure over 1 day" by W. Huang, Z. Shen, N. E. Huang and Y. C. Fung, published in Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95, 1998, pages 4816 to 4821
【非特許文献6】"A summation technique for the detection of small evoked potentials." by G. D. Dawson, published in Electroencephalogr. Clin. Neurophysiol. 44, 1954, pages 153 to 154
【非特許文献7】"Magnetoencephalography: Theory, instrumentation, and applications to noninvasive studies of the working human brain" by M. Hamalainen, R. Hari, R. J. Ilmoniemi, J. Knuutila and O. V. Lounasmaa, published in Rev. Mod. Phys., Vol. 65, 1993, pages 413 to 497
【非特許文献8】"Mapping cortical hubs in tinnitus" by W. Schlee, N. Mueller, T. Hartmann, J. Keil, I. Lorenz and N. Weisz, published in BMC Biol. 7, 2009, page 80
【非特許文献9】"Tests concerning random points on a circle" by N. H. Kuiper, published in Proceedings of the Koninklijke Nederlandse Akademie van Wetenschappen, Series A 63, 1960, pages 38 to 47
【非特許文献10】"Circular Statistics in Biology" by E. Batschelet, Academic Press, London, 1981
【非特許文献11】"Tonotopic organization of the human auditory cortex as detected by BOLD-FMRI" by D. Bilecen, K. Scheffler, N. Schmid, K. Tschopp and J. Seelig (published in Hearing Research 126, 1998, pages 19 to 27)
【非特許文献12】"Representation of lateralization and tonotopy in primary versus secondary human auditory cortex" by D. R. M. Langers, W. H. Backes and P. van Dijk (published in NeuroImage 34, 2007, pages 264 to 273)
【非特許文献13】"Reorganization of auditory cortex in tinnitus" by W. Muhlnickel, T. Elbert, E. Taub and H. Flor (published in Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 1998, pages 10340 to 10343)
【非特許文献14】"Visual Field Maps in Human Cortex" by B. A. Wandell, S. O. Dumoulin and A. A. Brewer, published in Neuron 56, October 2007, pages 366 to 383
【非特許文献15】"Lehrbuch der Anatomie des Menschen. [Textbook of Human Anatomy. Presented With Emphasis on Functional Relationships]. 3rd Vol., Nervous System, Skin and Sensory Organs", Urban und Schwarzenberg, Munich 1964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を電気生理学的な手法で高い信頼性で診断することのできる装置および方法を提供することである。特に、本装置および本方法を利用すれば、EEG信号、MEG信号、EMG信号などの電気生理学的信号によって測定される病的な周波数範囲における病的な電力スペクトルと病的でない電力スペクトルとの間の区別を達成できる。特に、本発明の目的は、少なくとも2つの相互作用している神経細胞集団の信号の二変量解析および測定をこの目的のために必要とすることなく、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を診断できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって満たされる。本発明のさらなる有利な発展形態および態様は、従属請求項に記載されている。
【0007】
以下では、本発明について、図面を参照しながら例示的にさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる装置の概略図である。
図2】病的な相互作用を調べるための一連の同じ刺激の概略図である。
図3A】測定信号の通常位相の可能な分布の例示的な図である。
図3B】測定信号の通常位相の可能な分布の例示的な図である。
図3C】測定信号の通常位相の可能な分布の例示的な図である。
図3D】測定信号の通常位相の可能な分布の例示的な図である。
図4】脳の異なる領域の間の病的な相互作用を音響刺激を使用して調べるさらなる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる装置1を概略的に示している。装置1は、制御・分析ユニット10と、刺激ユニット11と、測定ユニット12とを備えている。装置1の動作時、制御・分析ユニット10は、特に、刺激ユニット11の制御を行う。この目的のため、制御・分析ユニット10は、刺激ユニット11によって受信される制御信号21を生成する。刺激ユニット11は、制御信号21を使用して刺激22を生成し、これらの刺激を患者に印加する。刺激22は、一連の同一の個々の刺激として患者に印加され、検査する脳の領域における患者のニューロンを刺激するように構成されている。
【0010】
電気刺激22によって達成される刺激効果が、測定ユニット12を利用して測定される。測定ユニット12は、患者において測定された1つまたは複数の測定信号23を記録し、測定信号23を必要に応じて電気信号24に変換し、電気信号24を制御・分析ユニット10に供給する。特に、刺激された標的領域、または標的領域に密に関連付けられる脳の領域26における神経活動を、測定ユニット12を使用して測定することができる。
【0011】
制御・分析ユニット10は、信号24を処理し(例えば信号24を増幅してフィルタリングすることができる)、処理した信号24を分析する。この点において、制御・分析ユニット10は、患者に印加された刺激22への応答として測定ユニット12によって記録された測定信号23の位相の分布を調べて、位相の分布が均一分布(equal distribution)と異なっている確率を求める。制御・分析ユニット10は、この分析を使用して、脳の異なる領域の間の病的な相互作用が存在するかを判定する。制御・分析ユニット10は、例えば、自身の機能を実行するためのプロセッサ(例:マイクロコントローラ)を含んでいることができる。
【0012】
刺激22は、音響刺激、視覚刺激、触覚刺激、振動刺激、固有受容感覚刺激(proprioceptive stimuli)、熱刺激、臭覚刺激、経皮電気刺激の群からの刺激とすることができる。刺激22は、特に、患者に意識的に知覚させることができる。刺激ユニット11と、特に、制御・分析ユニット10および測定ユニット12は、この実施形態においては非侵襲性ユニットであり、すなわちこれらのユニットは、装置1の動作時に患者の身体の外側に位置しており、患者の身体内に外科的に埋め込まれない。
【0013】
代替実施形態においては、刺激ユニット11は、患者の身体内に外科的に埋め込まれており、制御信号21に基づいて電気刺激22を生成し、電気刺激22が患者の脳もしくは脊髄またはその両方に印加される。
【0014】
測定ユニット12は、刺激されたニューロンの神経活動を十分な時間解像度で検出することのできる1つまたは複数のセンサを含んでいる。センサとしては、例えば脳波計(EEG)電極、脳磁図(MEG)センサ、局部電位(LFP)を測定するセンサなど、非侵襲性センサを使用することができる。神経活動は、付随する筋活動を筋電計(EMG)センサにより測定することによって間接的に調べることもできる。
【0015】
これに代えて、センサを患者の身体に埋め込むことができる。例えば、上皮質電極、脳深部の電極、硬膜下または硬膜外の脳電極、皮下EEG電極またはEMG電極、硬膜下または硬膜外の脊髄電極は、侵襲性センサとして機能することができる。さらには、末梢神経に取り付けられる電極をセンサとして使用することもできる。
【0016】
装置1の個々の構成要素、具体的には制御・分析ユニット10、刺激ユニット11、測定ユニット12は、構造的に互いに個別であるようにすることができる。したがって、装置1は、システムとして理解することもできる。
【0017】
装置1は、特に、神経系疾患または精神病(例えば、パーキンソン病、本態性振戦、多発性硬化症に由来する振戦およびそれ以外の病的振戦、ジストニア、てんかん、鬱病、運動機能障害、小脳疾患、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症、脳卒中および脳梗塞後の機能障害、痙性、耳鳴り、睡眠障害、統合失調症、過敏性腸症候群、嗜癖障害、境界型人格障害、注意力欠如障害、注意欠陥多動性障害、病的賭博、神経症、過食症、食欲不振、摂食障害、燃え尽き症候群、線維筋痛、偏頭痛、神経障害性疼痛、群発頭痛、一般的な頭痛、神経痛、運動失調、チック障害、高血圧)のほか、神経活動の同期性が病的に高まることを特徴とするさらなる病気の診断および治療に使用することができる。
【0018】
上に挙げた病気は、特定の回路内に結合されている神経回路網の生体電気による伝達の障害に起因する、またはそのような障害を特徴とすることがある。この点において、神経細胞集団は、病的な神経活動、場合によっては神経活動に関連付けられる病的な結合性(網構造)を、絶え間なく発生させる。この点において、多数のニューロンが同期して活動電位を形成し、すなわち、関与するニューロンが過度に同期して発火する。さらには、病的な神経細胞集団は振動性の神経活動を示し、すなわち、ニューロンが律動的に発火する。神経系疾患または精神病の場合、影響下にある神経回路網の病的な律動的活動の平均周波数は、およそ1〜30Hzの範囲内にあるが、この範囲外であることもある。しかしながら、健康な人では、ニューロンの発火は質的に異なる(例えば相関性がない)。
【0019】
さらに、同期した振動性の神経活動を有する脳の領域は、病的に過度に相互作用する(例えば非特許文献8を参照)。
【0020】
実施形態によると、刺激対象の神経細胞集団において患者に印加される刺激22は、刺激されたニューロンの神経活動の位相のリセットをもたらす。刺激されたニューロンの位相は、リセットにより、現在の位相値には関係なく、特定の位相値、またはほぼ特定の位相値に設定される。したがって、病的な神経細胞集団の神経活動の位相が、直接的な刺激によって制御される。
【0021】
以下では、装置1の機能についてさらに詳しく説明する。この点における目的は、過度に同期した振動性の神経活動が存在する脳の領域の間の、診断に関連する病的に高まった結合を検出することである。
【0022】
驚くべきことに、脳の異なる領域の間の病的に増大した相互作用の結果として、単純な刺激に起因して、装置1によって検出することのできる複雑な誘発反応(complex evoked responses)が発生することが判明した。すなわち、刺激が複数回印加された場合、対応する脳の領域(例えば一次および二次聴覚皮質)は、音響刺激に対してつねに同じ画一的な誘発反応によって反応するわけではない。同じ単一刺激22の十分に大きな集合体の場合(例えば50または100回の個々の刺激22の場合)、誘発反応の2つの以上のグループが、それぞれの相互位相に関して異なる1つまたは複数の時間間隔において発生する。誘発反応の2つのグループは、例えば互いに逆位相であることがあり、逆位相の誘発反応は平均化されるため、刺激を印加する前の時間間隔と比較して、平均された誘発反応の標準的な計算において大きな誘発反応が発生することはない。
【0023】
図2は、刺激ユニット11を使用して実行される刺激の印加を示しており、N個の同じ個々の刺激22が印加され、数Nは、例えば10以上、50以上、または100以上である。個々の刺激22それぞれは、持続時間dを有し、時刻tj,1に印加される。インデックスjは、j番目の刺激22を表し、j=1,2,...,Nである。インデックス1は、j番目の刺激22の開始時刻を表す。j番目の刺激22は、時刻tj,2において終了し、このときd=tj,2−tj,1である。次のj+1番目の刺激22は、時刻tj,4=tj+1,1において開始し、j=1,2,...,N−1である。
【0024】
j番目の刺激22の最後と、j+1番目の刺激22の開始との間の時間間隔を、j番目の刺激に続く刺激間間隔ISIと称する。刺激間間隔ISIは、刺激ごとに変化することができ、固定部分xと可変部分yとからなる。
【0025】
j番目の刺激22と、対応する刺激間間隔ISIとを含む合計の時間間隔の時間長は、τ=d+x+yである。すべての刺激間間隔ISIの固定部分xは、j番目の刺激22に対する誘発反応が、j+1番目の刺激22が印加される前に減衰するように選択するべきである。この理由のため、500ms≦x≦1000msが選択されることが好ましい。しかしながら、例えば検査速度を高めるため、より小さい値(例えば300ms)を選択することができ、あるいは、より複雑な誘発反応を検出するため、より大きな値(例えば3000ms)を選択することもできる。
【0026】
【0027】
測定信号23は、個々の刺激22が印加されるのと同時に測定ユニット12によって記録され、信号24の形で制御・分析ユニット10に転送される。制御・分析ユニット10において帯域通過フィルタリングを行って、それぞれの病気に関連する周波数帯域をフィルタリングすることができる。これらの周波数帯域は当業者に公知である。耳鳴りの患者の場合、病的に過度な振動性の神経活動を、1〜4Hzのデルタ帯域などの低周波数範囲において特徴的に見つけることができ、この神経活動は、脳波検査(EEG)または脳磁気図検査(MEG)を使用して検出することができる(例えば、非特許文献2を参照)。
【0028】
【0029】
時間軸を生成する分析窓[a,b]を各刺激22の開始点tj,1に固定し、測定ユニットによって記録される誘発反応を分析する。時間軸はt’∈[a,b]であり、各時間窓[a,b]における対応する刺激22の開始はt’=0に位置する。窓の最大許容幅は、b−a=d+xであり、なぜなら、それ以上であると窓の重なりが生じるためである。刺激前範囲および刺激後範囲は、a=−x/2およびb=d+x/2によって対称的にカバーされる。分析は、aおよびbを選択することによって刺激前範囲または刺激後範囲に焦点を当てることができる。ここで重要なのは刺激後の力学(刺激の終了後の誘発反応)であるため、刺激後の力学に焦点を合わせ、例えばa=−x/4およびb=d+3x/4として非対称の窓を選択し、この窓において、より小さい刺激前範囲を使用して刺激前測定のベース(prestimulus measurement base)を求めるのに対して、長い刺激後範囲は、誘発反応を分析する役割を果たす。
【0030】
k番目のモードsの位相の誘発反応の特徴的なパターンを調べるため、t’=0に位置する刺激の開始に対する、時刻t’における対応するノルム化された位相Φの分布を見る。この分布は{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nと表され、t’∈ [a,b]である。
【0031】
時刻t’において時間的に完全に刺激に結合されたノルム化された位相Φの誘発反応(画一的な誘発反応)は、時刻t’におけるディラック分布に一致し、この場合、Φは、理想的には時刻t’においてつねに同じ値をとり、すなわちすべてのj=2,3,...,Nに対して{Φ(t’+t1,1)}={Φ(t’+tj,1)}である。再誘発される理想的な位相リセットによって、一例として図3Aに示したようなディラック分布となる。
【0032】
現実的な条件下(すなわち生体適合性の刺激強度において、ノイズの存在下)では、分布{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nにおける累積点(いわゆるピーク)は、一般に、再誘発された位相リセットの場合、刺激の開始後、特定の部分間隔に見られる。図3Bは、このようなピークを一例として示している。
【0033】
対照的に、刺激が位相の力学に対して何らの影響も有し得ない場合、分布{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nは、刺激前範囲において等しいのみならず、刺激中および刺激後範囲においても等しく、図3Cに一例として示した状態となる。
【0034】
例えば、刺激の開始における位相に依存して、位相の質的に異なる誘発反応が起こり得る場合、分布{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nは、図3Dに一例として示したように、刺激中もしくは刺激後範囲またはその両方において、特定の時刻における2つ以上のピークを有する。これが、逆位相に配置された類似する幅の2つのピークの問題である場合、これら2つの質的に異なる誘発反応の振幅Aが、関連する様式で互いに異なっていない場合、対応するN個の誘発反応は、平均値となる。
【0035】
病的に過度に結合した神経細胞集団は、驚くべきことに、EEG信号などの対応する測定信号の位相の複雑な誘発反応を特徴的に示す。すなわち、刺激の印加後に変化現象(epoch)が起こり、分布{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nは、均一分布とは大幅に異なる。特にノルム化された位相は周期的な循環変数(circular variable)であるため、コルモゴルフ・スミルノフ検定の循環分散(circular variant)を表すいわゆるカイパー検定を適用することができる(例えば非特許文献9、非特許文献10を参照)。時刻t’において分布{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nが均一分布とは異なる確率p(t)を、カイパー検定を利用して求めることができる。刺激によって分布{Φ(t’+tj,1)}j=1,...,Nの大幅な変化がもたらされるかを最終的に調べる目的で、しきい値を計算することのできる刺激前分布{p(t’)}t’∈[a,0[を観察する。例えば、分布{p(t’)}t’∈[a,0[の最初の百分位数と99番目の百分位数により、刺激前測定のベースとしての99番目の百分位数γが決定値である信頼区間が形成される。刺激の印加後にp(t’)が99番目の百分位数を超える場合、均一分布とは大幅に異なる。
【0036】
刺激ユニット11によって印加される刺激22は、刺激されたニューロンの振動性の神経活動の位相リセットが刺激22によってもたらされるように設計することができる。対応する刺激によって刺激される一次感覚野(例えば音響刺激によって刺激される一次聴覚野)の場合、この位相リセットは特徴的に早期に、すなわち刺激の開始または刺激の終了から短時間内に(例えば最初の100ms以内に)もたらされる(刺激の開始または刺激の終了によって誘発反応がトリガーされるかに依存する)。感覚野ではない他の脳の領域では、位相リセットをずっと遅く(例えば200ms後に)もたらすことができる。位相リセットは、脳の領域に対する刺激の効果を主として反映する。しかしながら、装置1によって検出される複雑な誘発反応は、診断に関連する、脳の異なる領域間の病的に高まった結合を反映する。したがって、位相リセットが起こる時間間隔は、複雑な誘発反応の分析から除外するべきである。
【0037】
【0038】
刺激によって位相リセットがもたらされるかを判定するため、刺激前分布{σ(t’)}t’∈[a,0[を観察する。例えば、分布{σ(t’)}t’∈[a,0[の最初の百分位数と99番目の百分位数により、刺激前測定のベースとしての99番目の百分位数がこの場合にも決定値である信頼区間が形成される。刺激22の印加後にσ(t’)が99番目の百分位数を超える場合、均一分布とは大幅に異なる。位相リセットを伴う変化現象を検出するための刺激前測定のベースとして、より高いしきい値(例えば99番目の百分位数の4倍)を適用することは、σ(t’)のスケーリング特性の結果として有利である。このしきい値をγσと称する。
【0039】
しきい値γσを使用して、時間依存のマスク関数μ(t’)を次のように計算することができる。
【0040】
【数1】
【0041】
この結果として、マスクされた確率P(t’)=μ(t’)[p(t’)-γ]が得られ、これは、位相リセットを伴う変化現象と刺激前測定のベースによって補正された確率を示しており、時刻t’において複雑な誘発反応が起きるが位相リセットは起こらない確率である。マスクされた確率P(t’)は、間隔]0,b]において求められる。定義により、刺激前範囲における判定では正の値は発生しない。
【0042】
制御・分析ユニット10は、さまざまな情報を提供することができる。例えば、制御・分析ユニット10は、マスクされた確率にP(t’)>0があてはまる時刻t’を少なくとも検出するように、構成することができる。ここから、変化現象の存在について結論することができ、これは極めて短い変化現象に過ぎないが、脳の異なる領域の間の病的に高い結合を反映する複雑な誘発反応を反映する複雑な誘発反応を伴う。
【0043】
さらには、積分マスクされた確率(integral masked probability)(間隔]0,b]にわたり積分したマスクされた確率)を、制御・分析ユニット10によって計算することができる。
【0044】
さらに、しきい値より高いマスクされた確率を有する個々の変化現象の全体的な持続時間を求める。合計持続時間および特徴的な強さ(積分マスクされた確率)は、脳の異なる領域の間の病的に高い結合に関連するパラメータである。
【0045】
この分析は、十分な時間解像度で振動性の神経活動を表す1つまたは複数のEEG信号、MEG信号、LFP信号、または他の測定信号23の1つまたは複数のモードに対して実行される。
【0046】
可能な実施形態においては、装置1は、マスクされた確率の時間的パターンを視覚化することのできる手段を有する。
【0047】
以下では、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べるのに適する刺激22について説明する。なお、本出願に記載されている複雑な誘発反応の発生は、脳の領域の特定の情報処理特性にはあまり依存せず、脳の異なる領域の間の病的に高い相互作用に起因することに留意されたい。したがって、以下に記載されている刺激パラメータおよび刺激のタイプとは相当に異なる刺激パラメータおよび刺激のタイプも使用することができる。
【0048】
感覚の刺激(すなわち特に振動刺激22、触覚刺激22、固有受容感覚刺激22、熱刺激22、視覚刺激22、臭覚刺激22の印加)の場合、刺激パラメータは、刺激22によって誘発電位がトリガーされるように選択されることが好ましい。複数の特性または性質を含む刺激22を使用することが特に好ましい。例えば、明るさ情報に加えて輪郭情報および色情報を含む視覚刺激22を使用することができる。この場合、脳の異なる領域、または脳領域の異なる部分領域が直接刺激され、これにより複雑な誘発反応が増幅されて発生する。侵襲性の刺激(すなわち患者の脳または脊髄の電気刺激)では、個々のパルスが刺激22として印加されることが好ましい。さらには、低周波数のパルストレインを印加することができ、パルストレイン内の周波数は例えば50Hz以下である。
【0049】
本発明による装置によって、刺激の選択に応じて、脳の1つまたは複数の領域が直接刺激される。これにより起こる複雑な誘発反応は、脳の異なる領域の間の病的に高い相互作用の特徴である。本発明による装置は、脳の一部分のみの神経活動を表す1つのみの信号が使用されるときでも、病的な相互作用を検出することができる。特に、脳の異なる領域から取得される少なくとも2つの信号を測定して、それらを二変量相互作用分析によって分析する必要はない。したがって、本発明による装置は、病的に高まった相互作用を、単変量データ分析によって検出することができる。
【0050】
個々の音声や周波数の混合を、エンベロープ(例えばHanning窓エンベロープや余弦エンベロープ)によって乗算して音響刺激22を生成することができる。一例として、100〜300msの長さと、可聴しきい値以上の15dBの刺激強度を有し、Hanning窓エンベロープによって純粋なサイナス音声(sinus sound)から得られる個々の音声を挙げることができる。
【0051】
音響刺激22は、片方または両方の耳を介して患者によって知覚され、内耳において神経インパルスに変換され、1つまたは複数の聴覚神経を介して脳内の神経細胞集団に転送される。音響刺激22は、聴覚皮質における神経細胞集団を刺激するように設計されている。特定周波数における内耳の音響刺激時に、聴覚皮質の周波数特定性構造(tonotopic arrangement)のため、聴覚皮質の特定の部分が活性化される。聴覚皮質の周波数特定性構造については、例えば非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13に記載されている。
【0052】
視覚刺激22による刺激は、輝度または明るさの変化に基づくことができ、例えば、輝度または明るさが変化するパルスとして刺激22を印加することができる。偏頭痛の患者に使用するための刺激として、例えば格子縞の刺激パターンを挙げることができる。それぞれ0.7cd/mおよび117cd/mの輝度の4×4の黒と白の格子縞を有する22×22cmのディスプレイを使用して、患者に刺激を印加する。
【0053】
視野内の異なる位置は、水晶体を介して網膜の異なる位置に結像し、網膜の異なる位置は、視神経を介して脳内の異なるニューロンに結合されているため、異なる空間的位置に配置されている光刺激要素を使用して、異なる神経細胞集団を直接刺激することができる。視野の領域と、脳の対応する領域との関連性については、例えば非特許文献14に記載されている。
【0054】
振動刺激22、触覚刺激22、固有受容感覚刺激22、熱刺激22、視覚刺激22、または臭覚刺激22は、皮膚の上に配置される1つまたは複数の適切な刺激ユニットによって患者に印加することができる。刺激ユニットは、患者の皮膚の表面上に配置される、場合によっては皮膚に押し込まれる(pressed into)刺激要素を含んでいることができる。熱刺激を印加する場合、刺激要素は対応する温度を有することができる。振動刺激22、触覚刺激22、固有受容感覚刺激22、視覚刺激22、および臭覚刺激22は、特に、パーキンソン病またはジストニアの患者に特に適している。神経障害性疼痛の患者は、特に、振動刺激22、触覚刺激22、固有受容感覚刺激22、視覚刺激22、および臭覚刺激22に加えて熱刺激によって治療することができる。
【0055】
振動刺激22、触覚刺激22、固有受容感覚刺激22、熱刺激22、および視覚刺激22によって脳の特定の領域を直接刺激することが可能であるのは、体の領域と、脳の特定の領域の「体部位の関連性(somatotopic association)」による。刺激ユニットは、例えば、患者の足、下肢、および大腿部に、あるいは、手、前腕、および上腕に、取り付けることができる。神経経路の「体部位の関連性」のため、それぞれの位置に印加される刺激によって異なるニューロンが刺激される。脳の領域と皮膚の位置の「体部位の関連性」については、例えば、A.Benninghoffらの非特許文献15に記載されている。臭覚系についても、類似する関係があてはまる。
【0056】
図4は、脳の異なる領域の間の病的な相互作用を調べる装置の実施形態を概略的に示している。イヤフォンまたはヘッドフォン30,31を介して患者に音響刺激が印加される。測定ユニットとしての非侵襲的に固定されたEEG電極32,33は、EEG誘発反応を測定する。ケーブル34,35,36は、イヤフォンまたはヘッドフォン30,31とEEG電極32,33を制御・分析ユニット37に接続しており、制御・分析ユニット37は、マスクされた確率を計算する手段と、可能な実施形態においては、マスクされた確率の時間的パターンを視覚化する手段とを有する。
【0057】
請求項1に関して、刺激ユニットは、特に、同じ刺激を連続的に患者に印加するように構成されており、この場合、刺激は、検査する脳の領域における患者のニューロンを刺激し、連続的に印加される同じ刺激それぞれが同じニューロンを刺激する。測定ユニットは、同じ刺激によって刺激されたニューロンの神経活動を再現する測定信号を記録する。侵襲性の電気刺激の場合、電気刺激が患者の脳または脊髄における同じ位置に印加されるとき、特に、同じニューロンを刺激することができる。触覚刺激、振動刺激、固有受容感覚刺激、熱刺激、および経皮電気刺激は、患者の皮膚の同じ位置に印加されたとき同じニューロンを刺激する。臭覚刺激は、同じ位置において臭覚系を刺激するとき同じニューロンを刺激する。患者の視野内の同じ位置において生成される視覚刺激は、同様に同じニューロンを刺激する。音響刺激によって同じニューロンを刺激するため、刺激は1つまたは複数の同じ周波数を有することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
【国際調査報告】