(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-533733(P2015-533733A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】食品パッケージ
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20151030BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20151030BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20151030BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20151030BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20151030BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
B65D85/50 BBRQ
B32B27/00 H
B32B9/02
B65D65/40 D
B65D85/50 C
B65D65/46
B65D77/20 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-532246(P2015-532246)
(86)(22)【出願日】2013年9月13日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】AU2013001045
(87)【国際公開番号】WO2014043744
(87)【国際公開日】20140327
(31)【優先権主張番号】2012904120
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514157478
【氏名又は名称】プランチック テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モリス、ブレンダン、リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャッカ、デイビッド、コリン
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E035AA02
3E035AA04
3E035AA05
3E035AA11
3E035BA02
3E035BC02
3E035BD02
3E035BD10
3E067AA05
3E067AA11
3E067AB02
3E067AB04
3E067AB08
3E067BA07A
3E067BA10A
3E067BB15A
3E067BB25A
3E067BB30A
3E067BC02A
3E067CA06
3E067CA23
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA15
3E067GD01
3E086AA21
3E086AD01
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA29
3E086BB05
3E086BB90
3E086CA16
3E086CA22
3E086CA25
4F100AH02B
4F100AJ07B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK02A
4F100AK02C
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK05A
4F100AK05C
4F100AK06A
4F100AK06C
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK16A
4F100AK16C
4F100AK21B
4F100AK22B
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AK46A
4F100AK46C
4F100AK62A
4F100AK62C
4F100AK63A
4F100AK63C
4F100AK64A
4F100AK64C
4F100AK66A
4F100AK66C
4F100AL01A
4F100AL01C
4F100AL06A
4F100AL06C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA04B
4F100EH172
4F100EJ381
4F100GB23
4F100JB09
4F100JD03
4F100JD04
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は、食品パッケージ及びその製造の方法に関する。それは、包装バリアを越える酸素の透過が起こるが、水蒸気の透過は制限されることを必要とする腐敗しやすい食品の包装に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多層フィルムを含む支持部材であって、多層フィルムが、
(i)加工デンプンを含む少なくとも1つのデンプン層と、
(ii)38℃、90%の相対湿度で測定される1g.mm/m2.24hr.atm未満の水蒸気透過係数を有する少なくとも1つの他の層と
を含み、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さが多層フィルムの全体の厚さの20%より大きく、加工デンプンが1.5未満の置換度を有する、上記支持部材、及び
(b)それにより食品が封入されるように支持部材に封止される蓋材フィルム
を含む食品パッケージ。
【請求項2】
少なくとも1つの他の層の水蒸気透過係数が0.5g.mm/m2.24hr.atm未満、好ましくは0.2g.mm/m2.24hr.atm未満である、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さが多層フィルムの全体の厚さの30%より大きい、好ましくは多層フィルムの全体の厚さの40%より大きい、より好ましくは多層フィルムの全体の厚さの50%より大きい、請求項1又は請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
少なくとも1つの他の層がポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリ塩化ビニル及びポリ二塩化ビニリデン又はそれらの混合物を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項5】
ポリオレフィンが、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレンとプロピレンとのインターポリマー及びエチレン又はプロピレンと1種若しくは複数のC4〜C10α−オレフィンとのインターポリマー、環状オレフィンポリマー及びコポリマー、二軸延伸ポリプロピレン、化学的に変性させたポリオレフィン並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のパッケージ。
【請求項6】
ポリオレフィンが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のパッケージ。
【請求項7】
内側デンプン層及び2つの外側ポリオレフィン層を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項8】
少なくとも1つのデンプン層が、接着剤により少なくとも1つの他の層に固定されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項9】
接着剤がポリウレタン及び/又はポリウレタン尿素を含む、請求項8に記載のパッケージ。
【請求項10】
フィルムが50%RHにおいて0.6cm3mm/m2.24h.atm未満、好ましくは50%RHにおいて0.3cm3mm/m2.24h.atm未満、より好ましくは50%RHにおいて0.1cm3mm/m2.24h.atm未満、最も好ましくは50%RHにおいて0.05cm3mm/m2.24h.atm未満の酸素透過係数(OPC)を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項11】
多層フィルムの全体の厚さが10〜1000μmである、請求項1から10までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項12】
少なくとも1つのデンプン層が100〜600μmの全体の厚さを有し、少なくとも1つの他の層が10〜400μmの全体の厚さを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項13】
少なくとも1つのデンプン層が10〜60μmの全体の厚さを有し、少なくとも1つの他の層が5〜40μmの全体の厚さを有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項14】
加工デンプンが高アミロースデンプンを含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項15】
加工デンプンが、エーテル及びエステル並びにそれらの混合物からなる群から選択される官能基でヒドロキシル官能基を置き換えるように化学的に変性されている、請求項1から14までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項16】
加工デンプンが、ヒドロキシアルキルC2−6基を含むように化学的に変性されている又はカルボン酸の無水物との反応により変性されている、請求項1から15までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項17】
少なくとも1つのデンプン層が少なくとも1種の水溶性ポリマーをさらに含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項18】
少なくとも1種の水溶性ポリマーがポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載のパッケージ。
【請求項19】
少なくとも1つのデンプン層が少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項1から18までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項20】
少なくとも1種の可塑剤が1種又は複数のポリオールを含む、請求項19に記載のパッケージ。
【請求項21】
蓋材フィルムが、多層フィルムよりも水分及び気体の両方について高い透過度を有する、請求項1から20までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項22】
蓋材フィルムが38℃、90%の相対湿度で測定される1g.mm/m2.24hr.atmより大きい水蒸気透過係数を有する、請求項1から20までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項23】
蓋材フィルムが50%RHにおいて0.6cm3mm/m2.24h.atmより大きい酸素透過係数(OPC)を有する、請求項1から20までのいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項24】
食品を包装する方法であって、
a)請求項1から23までのいずれか一項に記載の支持部材を準備するステップと、
b)蓋材フィルムを準備するステップと、
c)食品を支持部材にのせるステップと、
d)蓋材フィルムを支持部材及び食品の上に広げるステップと、
e)食品がそれにより封入されるように蓋材フィルムを支持部材に封止するステップと
を含む、上記方法。
【請求項25】
1つ又は複数のステップが自動化されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
支持部材を熱成形するステップを少なくとも含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
食品が、赤肉、家禽、魚、加熱調理された野菜又は調理済みの穀類の粉である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品パッケージ及びその製造の方法に関する。食品パッケージは、腐敗しやすい食品の包装に、専用ではないが、特別に用いられる。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は、食品産業における包装材料として広く使用されている。そのような用途では、包装材料は、食品を含まなければならないだけでなく、しばしば製品を保存し、また実際に鑑識眼のある消費者に対して製品を魅力的に表示しなければならない。多くの食品は、それらの性質により腐敗しやすく、包装材料の特性は、所定の食品の有効貯蔵寿命に著しく影響を及ぼす。酸化などの化学的変化及び微生物増殖は、酸素の存在下で促進され得る。したがって、パッケージ中の酸素含有量又はパッケージ中への酸素侵入速度を抑制することは、しばしば食品包装材料の最も重要な属性の1つである。食品パッケージの通気性も食品の貯蔵中のパッケージからの気体の放出に重要であり得る。
【0003】
調整雰囲気パッケージにおいては、製品は、パッケージの内部で、周囲大気中と異なる濃度を除いて正常の大気気体(酸素、窒素、二酸化炭素及び水蒸気)に曝露される。包装は、通常、規定の気体透過性を有するポリマーフィルムパウチ又はプラスチック容器からなる。多層バリアがしばしば用いられる。
【0004】
多層バリア包装は、無極性ポリマーで覆われている内層としての極性ポリマーで通常構成されている。前者は、気体バリアとしての役割を果たし、後者は、内層への速やかな水の吸収を妨げるための低い水蒸気透過度を有する疎水性外皮としての役割を果たす。極性ポリマー層を被覆するポリオレフィン外皮層、例えば、ポリエチレン−ビニルアルコールコポリマーを被覆するポリエチレン外皮(PE−EVOH)が一般的に用いられる。
【0005】
EVOHコポリマーは、一般的に0〜60%の範囲の低い湿度で優れた酸素バリア特性を示す。しかし、それらの気体バリア特性は、湿度が75〜90%の範囲にある場合の高湿度条件下で劇的に低下する。実際、EVOHの極性により、そのようなフィルムは、一般的に不良な水分バリアを示す。したがって、湿度の影響からEVOHを保護するために、EVOHは、実用的な包装応用のためのバリア特性を備えるように一般的に両側がポリオレフィンで貼り合わされている。しかし、時間の経過につれて、EVOH層の酸素バリア特性が損なわれるように十分な水分がポリオレフィン疎水性外皮に浸透し得る。
【0006】
EVOH材料は、それらがポリオレフィン基材に十分に結合するために接着促進剤及び/又は結合層樹脂の使用も必要とする。そのような結合樹脂を用いない場合、EVOH材料は、ポリオレフィン基材から容易にはがれ、その結果、バリア特性が失われ、外観が不良となる傾向がある。EVOHのさらなる不利な点は、比較的に高価であることである。さらに、再生可能の観点からは、EVOHは、完全に化石燃料に由来する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
丸鶏などの特定の食品の包装に関して、既存の方法は、金属クリップにより密封されているポリマーベースのバッグの使用を含む。これらのクリップは、例えば、パッケージに用いられる場合、危害をもたらし得る。したがって、金属クリップの必要を解消するような包装上の解決策を提供することが望ましいであろう。さらに、新たな包装上の解決策を提供することにより食品の視覚表示を改善することが有利であるであろう。さらに、包装プロセスの自動化を可能にする包装設計も望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、
(a)多層フィルムを含む支持部材であって、多層フィルムが、
(i)加工デンプンを含む少なくとも1つのデンプン層と、
(ii)38℃、90%の相対湿度で測定される1g.mm/m
2.24hr.atm未満の水蒸気透過係数を有する少なくとも1つの他の層と
を含み、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さが多層フィルムの全体の厚さの20%より大きく、加工デンプンが1.5未満の置換度を有する、上記支持部材、及び
(b)それにより食品が封入されるように支持部材に封止される蓋材フィルム
を含む食品パッケージを提供する。
【0009】
好ましくは、少なくとも1つの他の層の水蒸気透過係数は、38℃、90%の相対湿度で測定される0.5g.mm/m
2.24hr.atm未満、より好ましくは38℃、90%の相対湿度で測定される0.2g.mm/m
2.24hr.atm未満である。
【0010】
好ましくは、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さは、多層フィルムの全体の厚さの30%より大きい、より好ましくは多層フィルムの全体の厚さの40%より大きい、より好ましくは多層フィルムの全体の厚さの50%より大きい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さは、多層フィルムの全体の厚さの60%より大きい。
【0011】
多層フィルムは、低い酸素透過係数(OPC)を有する。いくつかの実施形態において、多層フィルムは、50%相対湿度(RH)において0.6cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。好ましくは、多層フィルムは、50%RHにおいて0.3cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPC、より好ましくは50%RHにおいて0.2cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。最も好ましくは、多層フィルムは、50%RHにおいて0.1cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。特に好ましくは、多層フィルムは、50%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、多層フィルムは、75%相対湿度(RH)において1.2cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。好ましくは、多層フィルムは、75%RHにおいて0.6cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPC、より好ましくは75%RHにおいて0.2cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。最も好ましくは、多層フィルムは75%RHにおいて0.1cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。特に好ましくは、多層フィルムは、75%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のOPCを有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、OPCは、長期間にわたり50%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のままである。好ましくは、OPCは、少なくとも10日間にわたり50%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のまま、より好ましくはOPCは、20日間にわたり50%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のまま、最も好ましくはOPCは、30日間にわたり50%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のままである。特に好ましい実施形態において、OPCは、30日間にわたり50%RHにおいて0.05cm
3mm/m
2.24h.atm未満のままである。
【0014】
したがって、多層フィルムは、長期間にわたる酸素バリア特性に関して高性能を有する。理論により拘束されることを望むものではないが、少なくとも1つのデンプン層内の水分レベルが比較的に高い場合でさえ、少なくとも1つのデンプン層の高い水分容量が酸素バリア効果の寿命を延長させるように作用すると考えられる。
【0015】
再生可能の観点から、多層フィルムが高い割合の生分解性デンプンを含むことが有利である。
【0016】
多層フィルム及び多層フィルム内の各層の厚さは、最終用途応用の正確な性質によって異なり得る。
【0017】
好ましくは、多層フィルムの全体の厚さは、10〜1000μmである。1つの実施形態において、多層フィルムの全体の厚さは、10〜100μm、より好ましくは20〜80μmである。他の実施形態において、多層フィルムの全体の厚さは、100〜1000μm、より好ましくは200〜800μmである。
【0018】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さは、5〜600μmである。1つの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さは、5〜50μm、好ましくは10〜40μmである。他の実施形態において、少なくとも1つのデンプン層の全体の厚さは、100〜600μm、好ましくは150〜450μmである。
【0019】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの他の層の全体の厚さは、5〜400μmである。1つの実施形態において、少なくとも1つの他の層の全体の厚さは、5〜25μm、好ましくは10〜20μmである。他の実施形態において、少なくとも1つの他の層の全体の厚さは、30〜400μm、好ましくは30〜300μmである。
【0020】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、100〜600μmの全体の厚さを有し、少なくとも1つの他の層は、10〜400μmの全体の厚さを有する。他の好ましい実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、100〜400μmの全体の厚さを有し、少なくとも1つの他の層は、40〜250μmの全体の厚さを有する。
【0021】
他の好ましい実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、10〜60μmの全体の厚さを有し、少なくとも1つの他の層は、5〜40μmの全体の厚さを有する。
【0022】
他の層
他の層(単数又は複数)は、最終多層フィルムに特定の物理的及び審美的特性を付与するように選択することができる。これらの特性は、例えば、防曇性、強度、ヒートシール適性、色又は透明度を含み得る。いくつかの実施形態において、特に好ましい他の層は、低い水蒸気透過度を有するものである。
【0023】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの他の層は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリ塩化ビニル及びポリ二塩化ビニリデン又はそれらの混合物を含む。1つの実施形態において、他の層のそれぞれは、成分の混合物を含み得る。他の実施形態において、1つ又は複数の他の層は、異なる物質の多層で構成され得る。さらなる実施形態において、他の層のそれぞれは、異なる物質を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンフィルム層の調製のための適切なポリオレフィンは、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレンとプロピレンとのインターポリマー及びエチレン又はプロピレンと1種若しくは複数のC
4〜C
10α−オレフィンとのインターポリマー、環状オレフィンポリマー及びコポリマー、二軸延伸ポリプロピレン並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において、適切なポリオレフィンは、エチレン又はプロピレンと1種若しくは複数のα−オレフィンとのコポリマーから選択される。高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの両方を好ましくは用いることができる。
【0026】
適切な直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンとα−オレフィン(約5〜約15重量%)とのコポリマーを含む。アルファ−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び同様なもの並びにそれらの混合物を含む。LLDPEの密度は、約0.865〜約0.925g/cm
3の範囲内にある。
【0027】
適切な高密度ポリエチレン(HDPE)は、エチレンホモポリマー及びエチレンとα−オレフィン(約0.1〜約10重量%)とのコポリマーを含む。適切なアルファ−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び同様なもの並びにそれらの混合物を含む。HDPEの密度は、好ましくは約0.940〜約0.970g/cm
3である。
【0028】
適切な環状オレフィンポリマー及びコポリマーは、ノルボルネン又はテトラシクロドデセンのポリマー及びノルボルネン又はテトラシクロドデセンと1種若しくは複数のα−オレフィンとのコポリマーを含む。環状オレフィンポリマーの例は、Topas(Ticona)及びApel(三井化学株式会社)である。
【0029】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィン及び他のポリマーの混合物を有利に用いることができる。無延伸ポリプロピレン(cPP)又は二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は、改善された強度及び低いWVTRのために選択することができる。ポリエチレンテレフタラート(PET)は、強度及び収縮性のために選択することができる。
【0030】
他の実施形態において、グラフトポリオレフィンなどの変性ポリオレフィンを用いることができる。好ましいグラフトポリオレフィンは、無水マレイン酸グラフトポリオレフィンである。
【0031】
デンプン層
多層フィルムは、加工デンプンを含む少なくとも1つのデンプン層を含み、加工デンプンは、1.5未満の置換度を有する。置換度は、アンヒドログルコース単位当たりの置換基の平均数を定義するものである。したがって、定義により、デンプンの可能な最大置換度は、3.0である。
【0032】
1つの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、高アミロースデンプンを含む。好ましくは、高アミロースデンプンの量は、デンプン層の総重量に基づく5〜80重量%である。
【0033】
他の実施形態において、加工デンプンは、エーテル及びエステル並びにそれらの混合物からなる群から選択される官能基でヒドロキシル官能基を置き換えるるように化学的に変性されている。好ましいエステルは、ヘプタノアート又は低級同族体を含む。特に好ましいエステルは、アセタートを含む。
【0034】
さらなる実施形態において、加工デンプンは、ヒドロキシアルキルC
2−6基を含むように変性されている又はカルボン酸の無水物との反応により変性されている。好ましくは、加工デンプンは、ヒドロキシC
2−4基を含むように変性されている。より好ましくは、加工デンプンは、ヒドロキシプロピル基を含むように変性されている。
【0035】
さらなる実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、水溶性ポリマーを含む。好ましくは、デンプン層は、1〜20重量%の水溶性ポリマー、より好ましくは4〜12重量%の水溶性ポリマーを含む。具体例としての、ただし非限定的な、水溶性ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール又はそれらの混合物からなる群から選択される。ポリビニルアルコールが特に好ましい水溶性ポリマーである。
【0036】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、水、好ましくは20重量%までの水、より好ましくは12重量%までの水を含み得る。いくつかの実施形態において、水は、可塑剤としての役割を果たし得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層の含水率は、一般的に環境%RHにおける平衡含水率である。例えば、平衡含水率は、約4%の低い%RHから15%超の高い%RHまでの範囲にある。
【0038】
さらなる実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、1種又は複数のポリオール可塑剤、好ましくは20重量%までの1種又は複数のポリオール可塑剤、より好ましくは12重量%までの1種又は複数のポリオール可塑剤を含む。具体例としての、ただし非限定的な、ポリオール可塑剤は、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、キシリトール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
他の実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、50重量%までの天然の非加工デンプンも含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、デンプン及び/又は加工デンプンの混合物、例えば、高及び低アミロースデンプンの混合物を含み、1つ又は複数のデンプン成分は、変性されていてもよい。
【0041】
さらなる実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、潤滑剤を含む。好ましい潤滑剤は、C
12−22脂肪酸及び/又はC
12−22脂肪酸塩である。好ましくは、C
12−22脂肪酸及び/又はC
12−22脂肪酸塩は、5重量%までの量で存在する。
【0042】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのデンプン層は、1つ又は複数のナノ材料を含む。好ましくは、ナノ材料は、デンプン複合材料内で薄片にされている。具体例としてのナノ材料は、粘土及び変性粘土、特に「疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土」を含む。好ましい粘土は、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、雲母、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト、マガダイト、ケニヤイト、ステベンサイト、ヴォルコンスキー石又はそれらの混合物を含む。
【0043】
「疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土」又は「疎水性粘土」は、好ましくは長鎖アルキルアンモニウムイオン、例えば、モノ又はジC
12−22アルキルアンモニウムイオンなどの長鎖アルキル基を含み、ヒドロキシル又はカルボキシルなどの極性置換基が長鎖アルキルに結合されていない、界面活性剤による交換により変性された粘土である。適切な粘土の例は、Southern Clay Products Inc.製のCLOISITE(登録商標)20A又はCLOISITE(登録商標)25Aを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、デンプン層及び/又は他の層は、着色剤を含んでいてもよい。
【0045】
接着剤
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの他の層は、適切な接着剤を用いることにより少なくとも1つのデンプン層に固定することができる。これは、滑りを最小限にし、したがって、優れたバリア性能を維持する助けとなる。多くの適切な接着剤が当業者にはすぐにわかるであろう。好ましくは、接着剤は、少なくとも1つのデンプン層に化学的に結合するように選択される。好ましい接着剤は、1つ又は複数のポリウレタンを含む。
【0046】
有利なことに、接着剤の使用により、変性又はグラフトされた他の層を結合層として用いる必要性が回避されるか又は最小限になる。したがって、例えば、標準的なフィルムのポリエチレンの品質等級は、多層フィルムにおけるポリオレフィンの他の層として成功裏に用いることができる。これは、コスト的な理由から望ましい。
【0047】
他の適切な接着剤は、EVAコポリマー、アクリルコポリマー及びターポリマー、イオノマー、メタロセン由来ポリエチレン、エチレンアクリルエステルターポリマー及びエチレンビニルアセタートターポリマーを含む。
【0048】
当業者は、熱活性化及びUV活性化システムを含む、様々なタイプのプラスチックを接着するのに適する他の接着剤貼り合わせ技術に精通している。具体例としての接着剤は、ポリウレタン、エポキシ、ナイロン、アクリル及びアクリラートを含む。
【0049】
多層フィルムの調製の方法
多層フィルムは、様々な方法により調製することができる。多層フィルムは、同時押出、コーティング及び他の貼り合わせ方法により調製することができる。フィルムは、キャスティング又はインフレーションフィルム法によっても調製することができる。
【0050】
同時押出は、結合層を使用する傾向があり、変性(グラフト)ポリオレフィンなどの変性された他の層を利用する。同時押出は、一般的により薄い全厚を達成することができる。貼り合わせは、接着剤を利用するより厚い多層フィルムにより適している。
【0051】
1つの実施形態において、内側デンプン層及び2つの外側ポリオレフィン層を含む3層フィルムを提供する。他の実施形態において、接着剤層をデンプン層及びポリオレフィン層の間に用い、それにより5層フィルムを形成してもよい。
【0052】
3又は5層フィルムは、デンプン及び他の層を用いる多くの可能な実施形態の1つにすぎないことを当業者が理解すべきである。層の数及びそれらの相対的な厚さは、フィルムの機能又は最終用途によって調節することができる。
【0053】
さらに、バリアフィルム応用に一般的に用いられる他の材料を含むさらなるフィルム層を想定することができる。具体例としてのさらなるフィルム層は、金属蒸着フィルム、非ポリマーフィルムなどを含む。
【0054】
支持部材の設計
多層フィルムを含む支持部材は、包装される食品の性質によって、様々な設計のものであり得る。例えば、支持部材は、一般的に食品の重量によって、食品を十分に含むようにするために十分に厚いものであるべきである。さらに、支持部材の形状は、包装される特定の食品によって異なり得る。例えば、全鶏用のパッケージを提供するに際して、鶏を「ふっくらとさせ」、それにより提示を強調するために支持部材の側面を十分な高さにすることが有利であり得る。
【0055】
支持部材は、熱成形プロセスにより多層フィルムから形成することが有利であり得る。
【0056】
蓋材フィルム
いくつかの実施形態において、蓋材フィルムは、多層フィルムよりも高い水蒸気透過度及び高い気体透過度を有する。蓋材フィルムの水蒸気透過係数は、好ましくは38℃、90%の相対湿度で測定される1g.mm/m
2.24hr.atmを超える。好ましくは、蓋材フィルムは、50%の相対湿度(RH)で0.6cm
3mm/m
2.24h.atmを超える酸素透過係数を有する。
【0057】
蓋材フィルム用の好ましい材料は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ二塩化ビニリデン、ナイロン、デンプン、ポリカーボナート、エチレンビニルアセタート並びにエチレンビニルアルコールを含む。蓋材フィルムは、単一層を含み得る又は上記の材料の組合せを有する多層材料を含み得る。蓋材フィルムは、気体バリア又は透過性収縮若しくは非収縮フィルムであり得る。好ましくは、蓋材フィルムは、熱収縮製である。蓋材フィルムは、用途によって柔軟性又は剛性であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、蓋材フィルムは、食品パッケージのバリア又は通気性機能を制御する。バリア機能を得るためには、好ましい蓋材フィルム材料は、エチレンビニルアルコール、デンプン及びナイロンを含む。通気性蓋材フィルムについては、好ましい材料は、ポリエチレンなどのポリオレフィンを含む。
【0059】
デンプン層を蓋材フィルムに用いる場合、デンプン層は、多層フィルムに用いられるデンプン層に関して本明細書で開示した実施形態のいずれかを含み得る。
【0060】
蓋材フィルムの厚さは、柔軟構造として又は剛性構造として用いられるかどうかに依存する。柔軟構造が望ましい場合、蓋材フィルムの厚さは、好ましくは5μm〜200μm、より好ましくは15μm〜100μm、最も好ましくは25μm〜70μmである。より剛性が高い構造が望ましい場合、例えば、いわゆる「ドームパック」応用例において、蓋材フィルムの厚さは、好ましくは200μm〜750μm、より好ましくは300μm〜500μmである。
【0061】
蓋材フィルムは、密封部分に十分な圧力を加える成形ヒートシールバーを用いることによるなどの当業界で一般的に用いられる方法により支持部材に気密封止することができる。剛性パックは、上部及び底部のシール加熱を必要とし得る。フィルムにおける潜在収縮エネルギーは、シールバーからの放射熱により、又は第2の方法としての外部熱水シュリンクトンネルにより誘発される。
【0062】
食品パッケージは、食品の保存に適する雰囲気を与えるためにガス置換することができる。ガス(単数又は複数)の種類は、食品の種類及び包装の目的によって異なり得る。調整雰囲気包装技術は、透過性又は通気性技術と同様に用いることができる。
【0063】
他の実施形態において、パッケージは、食品を封入した後に真空にかけることができる。
【0064】
食品パッケージ
種々のポリマー材料から調製されたパッケージは、小分子、例えば、気体及び水蒸気に対して種々の程度に透過性である。さらに、異なる材料は、各種分子に対する異なる透過性を有する。以下の表に調整雰囲気包装に最も一般的に用いられる3種の気体に対する数種のポリマーの透過性の相対値を示す。
【表1】
【0065】
したがって、材料の適切な選択により、小分子の相対透過度を変化させ、制御することができる。これは、単一層における材料の変化又は多層における1種若しくは複数の材料の変化により達成することができる。或いは又はさらに、それは、単一又は多層フィルムにおける1つ若しくは複数の層の厚さを変化させることにより達成することができる。
【0066】
明らかに、この概念は、上の表に示した材料に限定されるのではなく、デンプン及びエチレンビニルアルコールベースの材料などの他の材料に拡張されるであろう。
【0067】
この概念は、現在開示している食品パッケージの多層フィルム及び/又は蓋材フィルムに適用することができる。したがって、この概念は、特定の調整雰囲気パッケージガスミックス並びに製品のガス発生及び吸収特性に合わせることができる目標とされる又は望ましい気体透過度を達成するのに柔軟性を与える。特産肉などの高価値製品については、貯蔵寿命の延長は、複雑さがより高い包装を使用することの埋め合わせとなり得る。
【0068】
さらなる態様において、食品を包装するための前述の実施形態のいずれかによる食品パッケージの使用を提供する。具体例としての食品は、赤肉、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥などの家禽、魚又は貝、生、部分的に加熱調理された若しくは完全に加熱調理された状態の調理済みの穀類の粉、加熱調理された若しくは部分的に加熱調理された野菜である。
【0069】
さらなる態様において、包装済み食品を調製する方法であって、
a)前述の実施形態のいずれかによる支持部材を準備するステップと、
b)蓋材フィルムを準備するステップと、
c)食品を支持部材にのせるステップと、
d)蓋材フィルムを支持部材及び食品の上に広げるステップと、
e)食品がそれにより封入されるように蓋材フィルムを支持部材に封止するステップと
を含む、上記方法を提供する。
【0070】
蓋材フィルムは、前述の実施形態のいずれかにおいて開示した通りであり得る。
【0071】
1つの実施形態において、該方法は、例えば、「成形及び充填」装置又は「熱成形」装置などの自動包装装置を用いて実施する。好ましい実施形態において、支持部材は、熱成形する。自動化は、有利なことに連続生産及び印刷済み蓋材フィルムの使用、用いられ場合、制御された日付スタンピング及びラベリングを可能にする。自動化はまた、成形支持部材上に食品を自動的に載せることを可能にし得る。連続的トレーサビリティー及びバッチ制御も適切であり得る。
【0072】
本明細書を通して、用語「含む」又は「含むこと」又はその文法的な変形形態の使用は、記述された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を明記すると解釈するものとするが、具体的に記述されていない、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はその群の存在又は追加を排除しない。
【発明を実施するための形態】
【0073】
特定の実施形態及び実施例に関して本発明を説明することが今や好都合である。これらの実施形態及び実施例は、例示にすぎないものであり、本発明の範囲に対する制限と解釈すべきではない。熟練対象者に明らかであろう説明済みの発明の変形形態は、本発明の範囲内にあることが理解されよう。同様に、本発明は、本文書に明確に列挙されていない分野における用途を見いだすことができ、いくつかの用途が具体的に記述されていないという事実は、本発明の全体的な適用性に対する制限と考えるべきではない。
【0074】
ポリオレフィン
適切なLLDPE、HDPE及びポリプロピレンは、チーグラー、シングルサイト又は他のオレフィン重合触媒により製造することができる。チーグラー触媒及び助触媒は、当技術分野で周知である。メタロセンシングルサイト触媒は、シクロペンタジエニル(Cp)又はCp誘導体配位子を含む遷移金属化合物である。例えば、米国特許第4,542,199号は、メタロセン触媒の調製を教示している。ヘテロ芳香族(heteroatomic)配位子、例えば、ボラアリール、ピロリル、アザボロリニル又はキノリニルを含む非メタロセンシングルサイト触媒も当技術分野で周知である。
【0075】
HDPEは、多峰性でもあり得る。「多峰性」とは、ポリマーが少なくとも2つの成分を含み、そのうちの1つが比較的に低い分子量を有し、もう一方のものが比較的に高い分子量を有することを意味する。多峰性ポリエチレンは、多峰性ポリマー生成物を生成する条件を用いた重合により製造することができる。これは、2種以上の触媒作用部位を有する触媒系を用いることにより、或いは異なる段階に異なるプロセス条件(例えば、異なる温度、圧力、重合媒体、水素分圧等)を用いる2段階又は多段階重合プロセスを用いることにより達成することができる。多峰性HDPEは、反応器の1つにおいてのみコモノマー付加を行う、一連の反応器を用いた多段階エチレン重合により製造することができる。
【0076】
加工デンプン
好ましい加工デンプン成分は、ヒドロキシプロピル化アミロースデンプンである。他の置換基は、ヒドロキシエーテル置換を構成するためのヒドロキシエチル又はヒドロキシブチルであり得、或いは無水物、例えば、マレイン酸フタル酸無水物(maleic phthalic anhydride)又はオクテニルコハク酸無水物を用いてエステル誘導体を生成することができる。置換度(置換されている単位におけるヒドロキシル基の平均数)は、好ましくは0.05〜1.5である。好ましいデンプンは、高アミローストウモロコシデンプンである。他の好ましいデンプンは、高アミロースタピオカデンプンである。好ましい加工デンプン成分は、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン(例えば、National Starch and Chemical Companyにより市販されているECOFILM(登録商標)又はPenfordにより市販されているGelose(登録商標)A939)である。
【0077】
他のデンプン成分は、用いる場合、市販のデンプンである。これは、例えば、コムギ、トウモロコシ、タピオカ、ジャガイモ、コメ、オートムギ、クズウコン及びエンドウ源から得ることができる。これらのデンプンは、化学的に変性させることもできる。
【0078】
水溶性ポリマー
デンプン層の水溶性ポリマー成分は、好ましくはデンプンと適合性があり、水溶性で、生分解性であり、デンプンの処理温度と適合する低い融点を有する。ポリビニルアルコールは、好ましいポリマーであるが、エチレン−ビニルアルコールのポリマー、エチレン−酢酸ビニルのポリマー又はポリビニルアルコールとのそれらのブレンドを用いてもよい。好ましい濃度は、4〜12重量%、より好ましくは8%〜12%の範囲である。
【0079】
可塑剤
一連の可塑剤及び保湿剤は、特に含水率及び相対湿度に対する依存性を低減するうえでの、バリア材料の処理を促進し、機械的特性を制御し、安定化するためのデンプン層への有用な添加物である。所望の可塑剤含量は、主として(同時)押出プロセス及びそれに続くブロー成形又は伸張プロセス中の要求される処理挙動並びに最終製品の要求される機械的特性に依存する。
【0080】
費用及び食品接触は、適切な可塑剤を選択する際の重要な問題である。好ましい可塑剤は、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、マンニトール、キシリトール及びエリスリトールの2種以上、又は3種以上、又は4種以上の混合物などのポリオールの混合物である。或いは、エリスリトール、エチレングリコール及びジエチレングリコールも適切であるが、ソルビトール並びに1つ又は複数の他のポリオール、特にグリセロール、マルチトール、マンニトール及びキシリトールが適切である。可塑剤は、以下の3つの役割を果たす。
1.押出配合プロセス及び貼り合わせプロセスに適するレオロジーをもたらし、
2.製品の機械的特性に正の影響を与え、且つ
3.抗老化又は抗結晶化剤としての役割を果たし得る。
【0081】
好ましい可塑剤含量は、特定の用途及び同時押出又は貼り合わせプロセスによってデンプン層の最大20重量%である。
【0082】
ソルビトール、グリセロール及びマルチトール混合物は、キシリトール並びにキシリトールとソルビトール及びグリセロールとの混合物と同様に、製剤の機械的特性の改良に特に適している。OH基の数が多いほど、可塑剤が結晶化の低減により有効である。ソルビトール、マルチトール及びキシリトールは、特に優れた保湿剤である。グリセロールは、処理中にポリビニルアルコールを溶解する助けとなる。ソルビトールを単独で用いる場合、結晶化が認められる。一部のポリオール(特にソルビトール及びグリセロール)は、表面への移行を示す可能性があり、ソルビトールの場合には不透明の結晶性フィルムが、或いはグリセロールの場合には油性フィルムが生成する可能性がある。様々なポリオールを混合することにより、この作用が様々な程度に抑制される。安定化は、乳化剤としてのモノステアリン酸グリセロール及びステアロイル乳酸ナトリウムの添加により増強させることができる。さらに、塩との相乗効果が機械的特性に対するより強い効果をもたらす。
【0083】
他の可塑剤
ポリエチレングリコール化合物は、乳化剤、可塑剤又は保湿剤として用いることができる。ポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコールは、交互に又は一緒に、多層構造(MLS)における層間剥離をもたらし得る膨潤を予防するための耐水性の増大ももたらし得る。
【0084】
代替可塑剤は、エポキシ化アマニ油又はエポキシ化ダイズ油である。疎水性であるので、これらの添加物は、材料の水分感受性を改善し得る。好ましくは乳化システムにより安定化された、これらの可塑剤は、処理を促進するが、ヤング率の有意なさらなる低下をもたらさない。PVC業界でより一般的に用いられている他の可塑剤は、クエン酸トリブチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート及びアセチルクエン酸トリエチルなどが適切であり得る。
【0085】
カラギーナン、キサンタンゴム、アラビアゴム、グアールゴム又はゼラチンなどの(補助)可塑剤として作用し得る20%までの保湿剤又は水結合剤又はゲル化剤を用いることができる。糖又はグルコースなどの他の保湿剤を用いることができる。増粘剤として食品に一般的に用いられ、冷水に部分的に溶け、熱水に完全に溶けるカラギーナンなどの生体高分子は、機械的特性を調整するのに適している。水に結合することにより、これらの成分は、著しい可塑化機能を有し得る。ゼラチンは、機械的特性を改善し、水分感受性を低下させるために加えることができる。キサンタンゴムは、高い保水容量を有し、乳化剤としても作用し、デンプン組成物中で抗老化効果を有する。アラビアゴムは、調質剤及びフィルム形成剤としても用いることができ、親水性炭水化物及び疎水性タンパク質は、そのヒドロコロイド乳化及び安定化特性を有効にする。グアールゴムは、デンプン組成物中で類似の抗結晶化効果を有する。他の適切な保湿剤は、三酢酸グリセリルである。
【0086】
脂肪酸及び/又は脂肪酸塩
脂肪酸及び/又は脂肪酸塩は、潤滑剤として用いることができる。デンプン層は、好ましくは0.1〜1.5重量%のC
12−22脂肪酸及び/又はC
12−22脂肪酸塩を含む。脂肪酸及び/又は脂肪酸塩成分は、より好ましくは0.6〜1%の濃度で存在する。ステアリン酸が特に好ましい成分である。ステアリン酸のナトリウム及びカリウム塩も用いることができる。費用は、この成分の選択における因子であり得るが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸及びベヘン酸は、すべて適している。
【0087】
接着剤
ポリウレタンベースの接着剤は、他の層をデンプン層に固定するのに特に適している。ポリウレタン接着剤は、1種又は複数のイソシアナートとデンプン層との反応によりin situで調製することができる。デンプンの表面ヒドロキシル官能基とイソシアナートとの反応により、ウレタン官能基が形成される。好ましいイソシアナートは、ジイソイソシアナートである。当業者は、ポリウレタン合成の技術分野で一般的に用いられている広範囲から適切なイソシアナートを選択することができよう。
【0088】
或いは、ポリウレタン接着剤は、1種又は複数のポリオールを含み得る。ジイソイソシアナート及びポリオールを含むそのような2成分系は、当技術分野で周知である。
【0089】
接着剤は、溶媒を含んでいても含んでいなくてもよい。溶媒は、有機系又は水性であり得る。
【0090】
具体例としてのイソシアナートは、メチレンジフェニルジイソイソシアナート及びトルエンジイソイソシアナートを含む。具体例としてのポリオールは、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール及びアジピン酸系ポリオールなどのポリエステルポリオールを含む。
【実施例】
【0091】
OTRは、ASTM F1927−98を用いて測定し、WVTRは、ASTM F1249−01を用いて測定した。すべての成分の重量は、乾燥基準で表す。
【0092】
(例1)
デンプンフィルムは、88.5重量%の加工デンプン(ECOFILM(登録商標)、National Starch and Chemical Company)、9重量%のポリビニルアルコール(Elvanol(登録商標)71−30)、2重量%のCloisite 20A(Southern Clay Products)及び0.5%のステアリン酸の混合物の押出処理及び300μmシートへの一体成形により調製した。次いで、これを、MOR Free PU接着剤(Rohm and Haas)を用いて100μmのHDPEフィルムに各側に接着により貼り合わせた。貼り合わせは、標準貼り合わせ機で実施した。
【0093】
試料は、50%及び75%RH(OTRの場合)及び38℃/90%RH(WVTRの場合)で2週間条件付けし、平衡後に測定した。
【0094】
表1及び2に結果を示す。
【表2】
【表3】
【0095】
(例2及び3)
デンプンフィルムは、88.5重量%の加工デンプン(ECOFILM(登録商標)、National Starch and Chemical Company)、9重量%のポリビニルアルコール(Elvanol(登録商標)71−30)、2重量%のCloisite 20A(Southern Clay Products)及び0.5%のステアリン酸の混合物の押出処理及び150μmシートへの一体成形により調製した。次いで、これを、Specialty Adhesives and Coatings製のポリウレタン接着剤システムを用いて50μm(例2)又は35μm(例3)のHDPEに各側に接着により貼り合わせた。貼り合わせは、標準貼り合わせ機で実施した。
【0096】
試料は、50%及び75%RH(OTRの場合)及び38℃/90%RH(WVTRの場合)で2週間条件付けし、平衡後に測定した。
【0097】
表3に結果を示す。
【表4】
【0098】
(例4)
デンプンフィルムは、90.5重量%の加工デンプン(ECOFILM(登録商標)、National Starch and Chemical Company)、9重量%のポリビニルアルコール(Elvanol(登録商標)71−30)及び0.5重量%のステアリン酸の混合物の押出処理及び350μmシートへの一体成形により調製した。次いで、これを、Specialty Adhesives and Coatings製のポリウレタン接着剤システムを用いて50μmのHDPEに各側に接着により貼り合わせた。貼り合わせは、標準貼り合わせ機で実施した。
【0099】
試料は、50%及び75%RH(OTRの場合)及び38℃/90%RH(WVTRの場合)で2週間条件付けし、平衡後に測定した。
【0100】
表4に結果を示す。
【表5】
【0101】
(例5)
デンプンフィルムは、90.5重量%の加工デンプン(ECOFILM(登録商標)、National Starch and Chemical Company)、9重量%のポリビニルアルコール(Elvanol(登録商標)71−30)及び0.5重量%のステアリン酸の混合物の押出処理及び350μmシートへの一体成形により調製した。次いで、これを、Specialty Adhesives and Coatings製のポリウレタン接着剤システムを用いて、その一方の側を50μmのHDPEに、そのもう一方の側を80μmのポリプロピレンフィルムに接着により貼り合わせた。貼り合わせは、標準貼り合わせ機で実施した。
【0102】
試料は、50%及び75%RH(OTRの場合)及び38℃/90%RH(WVTRの場合)で2週間条件付けし、平衡後に測定した。
【0103】
表5に結果を示す。
【表6】
【0104】
(比較例1)
デンプンフィルムは、88.5重量%の加工デンプン(ECOFILM(登録商標)、National Starch and Chemical Company)、9重量%のポリビニルアルコール(Elvanol(登録商標)71−30)、2重量%のCloisite 20A(Southern Clay Products)及び0.5%のステアリン酸の混合物の押出処理及び290μmシートへの一体成形により調製した。
【0105】
試料は、50%及び75%RHで2週間条件付けし、平衡後に測定した。結果を表6に示す。
【表7】
【0106】
(比較例2)
デンプンフィルムは、100重量%の加工デンプン(ECOFILM(登録商標)、National Starch and Chemical Company)の押出処理及び300μmシートへの一体成形により調製した。
【0107】
試料は、50%及び75%RH(OTRの場合)及び38℃/90%RH(WVTRの場合)で2週間条件付けし、平衡後に測定した。
【0108】
表7に結果を示す。
【表8】
【0109】
(例1〜5並びに比較例1及び2の要約)
表8に例のそれぞれのOTR及びOPV(酸素透過値)を示す。OPVは、コアデンプン層の厚さのみに基づく1mm厚試料に標準化されている。
【表9】
【0110】
結果から、例1〜5の多層フィルムが優れたバリア性能を示すことが明らかである。コアデンプン層が厚さ約300μmである場合、デンプン層単独の性能と比べて、OTRが外層を有する試料において実質的に低いことが認められる。より薄いデンプンコア層は、デンプン単独と比べて高い(75%)RHで低いOTRを有する。外層の非存在下でのデンプン層単独は、非常に高いWVTRを示す。
【0111】
(例6)
例1の約500μmのデンプンベースのフィルムを自動化Form−Fill−Seal機を用いて半剛性支持部材に熱成形した。加熱調理されていない全鶏を熱成形支持部材内に入れ、蓋材フィルムを支持部材の周辺部に封止した。得られた包装済みの鶏の外観は優れていた。
【0112】
(例7)
例6に従って包装した鶏を用いて全鶏の貯蔵寿命を試験したが、545μmのデンプンベースのフィルムを支持部材に用いた。PE/EVOH/PEバリアフィルムを蓋材フィルムとして用いた。目的は、9日の貯蔵寿命を達成する包装を提供することであった。3種の調整雰囲気を試験した。これらは、20%CO
2/80%O
2、40%CO
2/70%N
2及び40%CO
2/60%O
2であった。無バリア包装も試験した。
【0113】
鶏を8℃及び4℃で保存し、0、4、6、8及び13日目に微生物学的分析に供した。鶏を好気性及び嫌気性生菌数(TVC)について試験した。ガス分析も同じ時間間隔で実施した。
【0114】
ガス分析結果から、13日目に不安定になり、CO
2の割合の増加を示した20%CO
2/80%O
2の組成を除いて、各種の調整雰囲気の組成が13日の保存中に安定なままであったことが示された。
【0115】
本発明による包装を用いたすべての調整雰囲気試料は、8日目に8℃で好気性TVCが限界を下回っており、20%CO
2/80%O
2試料のみが13日目に容認できないものであった。すべての調整雰囲気試料が4℃では容認できるものであった。
【0116】
無バリアフィルムによる制御は、4℃でさえも13日目に容認できないものであった。
【0117】
試験した3種の調整雰囲気は、気体組成及び微生物学的組成の両方に関する9日貯蔵寿命という要件に適合していた。
【国際調査報告】