特表2015-533826(P2015-533826A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-533826(P2015-533826A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】有機半導体材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20151030BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20151030BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20151030BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20151030BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   C07D519/00CSP
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 250G
   H01L29/78 618B
   H01L31/04 154B
   H01L31/04 154C
   H01L31/04 154D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2015-535164(P2015-535164)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(85)【翻訳文提出日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】IB2013059200
(87)【国際公開番号】WO2014057422
(87)【国際公開日】20140417
(31)【優先権主張番号】MI2012A001691
(32)【優先日】2012年10月9日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513161494
【氏名又は名称】エ・ティ・チ・エッセ・エッレ・エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マニュエラ・メルッチ
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ・ファヴァレット
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ザンビアンキ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエッラ・カペッリ
(72)【発明者】
【氏名】ミケレ・ムッチーニ
【テーマコード(参考)】
4C072
5F110
5F151
【Fターム(参考)】
4C072MM06
4C072UU10
5F110CC07
5F110EE07
5F110FF01
5F110FF27
5F110FF36
5F110GG05
5F110GG06
5F110GG25
5F110GG28
5F110GG29
5F110GG42
5F110HK02
5F151AA11
5F151BA11
(57)【要約】
本発明は、有機半導体材料として有用な新規な化合物、及びその有機半導体材料を含む半導体デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(III)及び(IV)からなる群から選択される式を有する化合物。
【化1】
上記式中、R2′及び/又はR、Rは互いに独立に、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、及び置換ベンジル基からなる群のなかで選択され;
Ar′、Ar″は互いに独立に、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、及び二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかで選択され;
15は、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、及びC〜C20の直鎖状又は分岐状のニトリル基からなる群のなかで選択され;
n、rは互いに独立に、1〜50の整数であり;
pは0〜5の整数であり;
Tはその化合物の末端単位であって、かつ、水素、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のハロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルコキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシアミド基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルスルホン酸基、及びC〜C40の直鎖状又は分岐状のニトリル基、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基、並びに二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基のなかから選択され;
但し、下記式Aの化合物を除く:
【化2】
式中、R13は、フェニル、4−クロロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニルからなる群のなかから選択され;R14は、フェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルからなる群のなかから選択され;R20は、H、Cl、F、メチル、メトキシからなる群のなかから選択される。
【請求項2】
pが0であり、nが2〜50である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式(IIIa)及び式(IVa)からなる群のなかで選択される式を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【化3】
上記式中、R、Rは互いに独立に、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、及び置換ベンジル基からなる群のなかから選択され;
Ar′は、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、及び二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかから選択され;
Tはその化合物の末端単位であって、かつ、水素、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のハロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシアミド基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルスルホン酸基、及びC〜C40の直鎖状又は分岐状のニトリル基、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基、並びに二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基のなかから選択される。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物であって、Ar′が、以下の単位(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)、(q)、(r)からなる群のなかから選択される単位である化合物。
【化4】
上記式中、Aは、S、O、Se原子、及びSO、SO、R17−P=O、P−(R17、N−R16、Si(R16基からなる群のなかから選択され;
Dは、C、S、O、Se原子、及びSO、SO、R17−P=O、P−(R17、N−R16、Si(R16基からなる群のなかから選択され;
B、Cは互いに独立に、C、N原子、及びNR16基からなる群のなかから選択され;
Eは、C(R16、S、O、及びNR16基からなる群のなかから選択され;
、R、R、R、R18、及びR19は互いに独立に、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群から選択され;
16、R17は互いに独立に、水素、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群から選択される。
【請求項5】
(Ar′)単位が、下記の基(s)及び(t)からなる群のなかから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【化5】
式中、Aは請求項4で定義した通りであり;
Wは、請求項4に記載した単位(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)、(q)、(r)からなる群のなかから選択される基であり;
10は、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群から選択される。
【請求項6】
下記式(V)を有する請求項1に記載の化合物。
【化6】
式中、R、R、R11は互いに独立に、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群のなかから選択され;
mは1〜50の整数である。
【請求項7】
下記式(VI)を有する、請求項6に記載の化合物。
【化7】
【請求項8】
下記式(VII)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化8】
式中、R12は、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群のなかから選択され;
tは2〜6の整数である。
【請求項9】
下記式(III)及び(IV)からなる群から選択される式を有する化合物の、電子デバイス中の有機半導体材料としての使用。
【化9】
上記式中、R2′及び/又はR、Rは互いに独立に、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、及び置換ベンジル基からなる群のなかから選択され;
Ar′、Ar″は互いに独立に、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、及び二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかから選択され;
15は、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、及びC〜C20の直鎖状又は分岐状のニトリル基からなる群のなかから選択され;
n、rは互いに独立に、1〜50の整数であり;
pは0〜5の整数であり;
Tはその化合物の末端単位であって、かつ、水素、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のハロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシアミド基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルスルホン酸基、及びC〜C40の直鎖状又は分岐状のニトリル基、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基、並びに二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基のなかから選択される。
【請求項10】
請求項2〜8のいずれか一項に記載の化合物の、電子デバイス中の有機半導体材料としての使用。
【請求項11】
電子デバイス中のn型有機半導体としての、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
いくつかの電極と接触している半導体層を含み、前記半導体層が下記式(III)及び(IV)からなる群のなかから選択される式を有する少なくとも1つの化合物を含む電子デバイス。
【化10】
上記式中、R2′及び/又はR、Rは互いに独立に、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、及び置換ベンジル基からなる群のなかから選択され;
Ar′、Ar″は互いに独立に、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、及び二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかから選択され;
15は、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、及びC〜C20の直鎖状又は分岐状のニトリル基からなる群のなかから選択され;
n、rは互いに独立に、1〜50の整数であり;
pは0〜5の整数であり;
Tはその化合物の末端単位であって、かつ、水素、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のハロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシアミド基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルスルホン酸基、及びC〜C40の直鎖状又は分岐状のニトリル基、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基、並びに二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基のなかから選択される。
【請求項13】
いくつかの電極と接触している半導体層を含み、前記半導体層が請求項2〜8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なn型有機半導体材料、及びそのn型有機半導体材料を含む半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、電磁エネルギーまたは化学ドーパントの適用によってその中に可逆的に電荷が導入されうる材料であることが知られている。これらの材料の電気伝導度は金属と絶縁体の間にあり、10−9〜10Ω−1cm−1の広い範囲にわたっている。伝統的な無機半導体のように、有機物質はp型又はn型のいずれかとして機能できる。p型半導体においては、大多数のキャリアは正孔であり、一方、n型においては大多数のキャリアは電子である。
【0003】
従来技術の大多数は、p型有機半導体材料の設計、合成、及び構造特性相関に焦点を当てきており、それには、オリゴアセン類、縮合したオリゴチオフェン類、アントラジチオフェン類、カルバゾール類、オリゴフェニレン類、及びオリゴフルオレン類が含まれ、そのいくつかはアモルファスシリコンよりも優れた性能をもつ電界効果トランジスタをもたらしている。それとは対照的に、n型オリゴマー及びポリマー半導体の開発はp型材料に対して遅れている。実際に、p型半導体と比べて、n型半導体は未だ完全には開発されておらず、その性能も満足できるものではない。
【0004】
高い電子親和性を有する有機半導体はしかしこれも必要とされており、なぜなら、p型及びn型材料の両方とも、効率的な論理回路及び有機太陽電池のために必要とされているからである。実際に、n型有機電界効果トランジスタは、柔軟性があり、大面積で、かつ低コストの電子工学的応用へと導く有機p-n接合、バイポーラトランジスタ、及び相補型集積回路のための鍵となる構成要素と思われている。
【0005】
さまざまな有機半導体が当分野においてn型有機半導体材料と考えられてきた。
【0006】
芳香族テトラカルボン酸無水物とそれらのジイミド誘導体は最初のn型材料のなかで報告された。この群の材料のなかで、フッ素化された側鎖を有するペリレンテトラカルボン酸ジイミドは、最大で0.72cm−1−1の移動度を示し、これは空気に曝すことによってわずかに低下した。空気安定性、充填粒径、及びその堆積膜のモルフォロジー、並びに電子特性は、側鎖の長さを変えること、酸化された基を挿入すること、及びフッ素化の程度によって変えることができる。しかし、ペリレンビルディングブロックのほとんどは、その構造の強直性と高くない溶解性によって構造上の変更が容易にできず、入手可能な材料の量が限られている。
【0007】
その他の群のn型有機材料が記載されており、例えば、シアノビニルオリゴマー、フラーレンなどである。
【0008】
J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 16616-16617には、ジケトピロロピロールコポリマーの両極性電荷輸送特性が記載されている。
【0009】
Mater. 2010, 22, 47, 5409-5413に記載されているベンゾチアジアゾール-ジケトピロロピロールコポリマーは、それぞれ0.35cm−1−1及び0.40cm−1−1という高くかつバランスのとれた正孔移動度及び電子移動度を示している。最高で0.85cm−1−1という、より大きな電子移動度が、スタッガードトップゲート式構成において、ポリ{[N,N9−ビス(2−オクチルドデシル)−ナフタレン−1,4,5,8−ビス(ジカルボキシイミド)−2,6−ジイル]−alt−5,59−(2,29−ビチオフェン)(Polyera ActivInk N2200)とよばれる、電子のみを輸送するn型ポリマーについて空気中で達成された。
【0010】
フッ素化された側鎖を有するオリゴチオフェンからなるN型半導体材料も、J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 1348及びAngew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 3900に記載されている。これらのオリゴマーは、最高で0.43cm−1−1の移動度を示した。しかし、これらのパーフルオロアリール及びパーフルオロアルキルアリール置換材料のほとんどに基づくOFETは空気中で不安定であり、高いしきい電圧という問題があった。フルオロカルボニル官能化オリゴマーも記載されており、これは改善された空気安定性を示したが、フッ素化オリゴマーについてはより低い電子移動度を示した。
【0011】
内部コアとしてビチオフェン-イミド単位を含むオリゴマー及びポリマーも記載されている。
【0012】
例えば、J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 9679-9694には、そのポリマー構造に応じてp型又はn型半導体挙動を示すN−アルキル−2,2′−ビチオフェン−3,3′−ジカルボキシイミドに基づくホモポリマー及びコポリマーが記載されている。しかし、そのような材料を用いて、空気に安定なデバイスは全く達成されることができなかった。さらに、出発原料であるジハロゲン化ビチオフェンイミド化合物の低い反応性が、この群の材料の利用可能性を制限している。
【0013】
J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 5355-5362、Tetrahedron Letters 44 (2003) 1653-1565には、電子不足3,4−イミド−チエニルブロックを電子豊富なアミノ置換チエニルブロックと交互に含むコポリマーを開示している。そのコポリマーの電子特性については何の研究も行われていない。
【0014】
N−アルキル化ポリ(ジオキソピロロチオフェン)類が、Organic Letters 2004, 6, 19, 3381-3384に記載されている。しかし、OFETデバイス中での効率的なn型挙動のいかなる証拠も報告されていない。
【0015】
先に述べた群の材料のそれぞれは不十分な電子特性しかもっていない。
【0016】
国際公開第2008/127029号は、チエニル環の3,4位に縮合したピロール部分を有するジオキシピロロヘテロ環化合物、及びそのジオキシピロロヘテロ環化合物を用いた有機電子デバイスに関する。
【0017】
Wei Hongら, “Linear fused dithieno[2,3-b: 3′2′-d]thiophene diimides”, Organic Letters, vol 13, no. 6, 2011年3月18日, 1410-1413頁には、1つの種類の線状の完全に縮合したジチエノチオフェンジイミドが開示されている。
【0018】
以下の文献:ドイツ国特許出願公開第1954550号;Ronova Iga Aら: “The effect of conformational rigidity of the initial decomposition temperature of some heterocyclic polyimides”, High Performance Polymers, Institute of Physics Publishing, Bristol GB, vol. 14, No. 2, 2002年1月1日, 195-208頁; 及び、Gaina C.ら, “Polyimides containing 1,4-dithiine units and their corresponding thiophene 2,3,4,5-tetracarboxyimide units”, High Performance Polymers, institute of Physics publishing, Bristol GB, vol. 11, No. 2, 1999年6月1日, 185-195頁は、ポリマーの繰り返し単位を結合させている構成要素がN−イミド置換基であるジイミドポリマー化合物を開示している。これらの最後の3つの文献は、そこに開示された化合物のどのような半導体特性についても言及していない。
【0019】
国際公開第2006/094292号は、低酸素誘導因子の安定性及び/又は活性を調節することができるチエノピリジン化合物、その化合物を含む医薬組成物、及びその化合物を調製するために有用な化学中間体を開示している。その化学中間体の中では、4,6−ジオキソ−チエノ[2,3−c]ピロール核を有する具体的な化合物が開示されている。
【0020】
欧州特許出願公開第0467206号公報は、4,6−ジオキソ−チエノ[2,3−c]ピロール核を有する具体的な化合物と、除草剤としてのそれらの使用を開示している。
【0021】
しかし、国際公開第2006/094292号及び欧州特許出願公開第0467206号公報は、それらの化合物の半導体特性について教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2008/127029号
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第1954550号
【特許文献3】国際公開第2006/094292号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0467206号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 16616-16617
【非特許文献2】Mater. 2010, 22, 47, 5409-5413
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 1348
【非特許文献4】Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 3900
【非特許文献5】J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 9679-9694
【非特許文献6】J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 5355-5362
【非特許文献7】Tetrahedron Letters 44 (2003) 1653-1565
【非特許文献8】Organic Letters 2004, 6, 19, 3381-3384
【非特許文献9】Wei Hongら, Organic Letters, vol 13, no. 6, 2011年3月18日, 1410-1413頁
【非特許文献10】Ronova Iga Aら, High Performance Polymers, Institute of Physics Publishing, Bristol GB, vol. 14, No. 2, 2002年1月1日, 195-208頁
【非特許文献11】Gaina C.ら, High Performance Polymers, institute of Physics publishing, Bristol GB, vol. 11, No. 2, 1999年6月1日, 185-195頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、より高い電子移動特性を有するn型有機半導体材料又は化合物の必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本明細書において、及び特許請求の範囲において、「n型有機半導体」の用語は、ソース、ドレイン、及びゲートの制御電極を備えた電界効果デバイス構造中に活性層として挿入されて、10−7cm−1−1より高い電子移動度を示す材料を意味する。
【0026】
上述した欠点のない半導体材料として用いるために適した新しい有機材料を提供することが本発明の目的である。その目的は、その主な特性が最初に請求項に開示されている化合物、その主な特性が請求項11に開示されている化合物の使用、及びその主な特性が請求項14に開示されている電子デバイスによって達成される。その化合物のその他の特性は、請求項2〜10に記載されている。
【0027】
有利には、本発明の化合物は、p型、n型、又は両極性有機半導体材料として有用でありうる。
【0028】
特に、本発明による化合物は、高い電子移動特性、大気条件下での優れた安定性を有し、合成的に容易な方法によって入手可能である。
【0029】
本発明によるそれらの化合物、材料、及びデバイスのさらなる利点及び特性は、添付した図面を参照して、それらのある側面についての以下の詳細かつ非限定的な記載から当業者に明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明による好ましい化合物5のH−NMRスペクトルを示している 。
図2図2は、本発明による化合物5のUV可視及びPLスペクトルを示している。
図3図3は、本発明による好ましい化合物5の示差走査熱量測定(DSC)スペクトルを示している。
図4図4のa)、b)、c)、d)、及びe)は、半導体層として本発明による化合物5を含むOTFTの光電子特性を表しているグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一つの側面によれば、式(I)又は(II)又は(III)又は(IV)の化合物を提供する。
【化1】
【化2】
【0032】
上記式中、R、R、R2′は互いに独立に、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基、並びに二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかで選択され;
Arは、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、及び二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかで選択され;
Ar′、Ar″は互いに独立に、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、及び二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基からなる群のなかで選択され;
15は、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、及びC〜C20の直鎖状又は分岐状のニトリル基からなる群のなかで選択され;
n、rは互いに独立に、1〜50の整数であり;
pは0〜5の整数であり;
Tはその化合物の末端単位であって、かつ、水素、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のハロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のシクロアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のヘテロアルコキシアルキル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシル基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボキシアミド基、C〜C40の直鎖状又は分岐状のアルキルスルホン酸基、及びC〜C40の直鎖状又は分岐状のニトリル基、単環式アリール基、置換された単環式アリール基、多環式アリール基、置換された多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、置換された単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、置換された多環式ヘテロアリール基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基、並びに二量体、三量体、及び四量体としてそれらを組み合わせた基のなかから選択され;
但し、下記式Aの化合物を除く:
【化3】
式中、R13は、フェニル、4−クロロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニルからなる群のなかから選択され;R14は、フェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルからなる群のなかから選択され;R20は、H、Cl、F、メチル、メトキシからなる群のなかから選択される。
【0033】
pの値は0、1、又は2であることが好ましい。
【0034】
n及びrの値は互いに独立に、好ましくは2〜50であることが好ましく、2〜30であることがさらに好ましく、2〜10であることがなおさらに好ましい。
【0035】
pが0の値である場合、nは特に2〜50であることが好ましく、2〜30であることがさらに好ましく、2〜10であることがなおさらに好ましい。
【0036】
好ましくは、R15は水素である。
【0037】
、R、及びR2′は好ましくはC〜C50単環式アリール基、C10〜C50多環式アリール基、C〜C50単環式ヘテロアリール基、C〜C50多環式ヘテロアリール基、ベンジル基であり、これらは置換されていてもよい。好ましくは、R、R、及びR2′は、フェニル基、置換されたフェニル基、ベンジル基、及び置換されたベンジル基からなる群のなかから選択される。
【0038】
、R、及びR2′の上記の単環式アリール基、多環式アリール基、単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基、及びベンジル基の好ましい置換基は、ハロゲン、アルケニル、アルキニル、又はヘテロアルキル基のなかから選択される。より好ましくは、前記の置換基は、C〜C12アルキル、C〜C12パーフルオロアルキル、C〜C12オキシアルキル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12チオアルキル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12カルボキシアルキル、C〜C12シリルアルキル、及びC〜C12分岐アルキルアルケニル、及びC〜C12アルキルアルキニル基からなる群のなかから選択される。
【0039】
なおさらに好ましくは、R、R、及びR2′は、フェニル基、アルキル置換フェニル基、ハロフェニル基からなる群のなかから選択される。
【0040】
好ましくは、Ar、Ar′、及びAr″は互いに独立に、C〜C50単環式アリール基、C〜C50置換単環式アリール基、C10〜C50多環式アリール基、C10〜C50置換多環式アリール基、単環式C〜C50ヘテロアリール基、C〜C50置換単環式ヘテロアリール基、C〜C50多環式ヘテロアリール基、C〜C50置換多環式ヘテロアリールからなる群のなかから選択される。
【0041】
本発明の一つの側面によれば、以下の式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、及び(IVa)の化合物を提供し、これらは式(I)、(II)、(III)、(IV)においてpが0に等しく、かつR15が水素のものに対応する:
【化4】
式中、R、R、Ar、Ar′、T、及びnは上で定義したとおりである。
【0042】
本明細書の記載において、また特許請求の範囲において、式(I)、(Ia)、(II)、及び(IIa)中のAr部分をチエノ(ビス)イミド単位に結合させている曲線は、そのAr部分がそのチエノ(ビス)イミド単位とともに縮合環システムを形成していることを示している。
【0043】
さらに、化学図の実務において通常のとおり、本明細書において及び特許請求の範囲において、式(III)、(IIIa)、(IV)、及び(IVa)中のチオフェンの二重結合と交差している結合線は、(Ar′)部分がチオフェン環の2又は3位のいずれかに結合でき、それらと縮合しているのではないことを示している。好ましくは、(Ar′)部分はチオフェン環の2位に結合している。
【0044】
式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、及び(IVa)において、整数nは1〜30であることが好ましく、さらに好ましくは2〜30、なおさらに好ましくは2〜10である。
【0045】
nが2である本発明による化合物は、多数の溶媒中、例えば、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン中での有利な高い溶解度によって特徴づけられる。
【0046】
式(I)、(Ia)、(II)、及び(IIa)において、(Ar′)部分はチエノ(ビス)イミド単位と縮合しているAr部分の任意の位置に結合していることができる。
【0047】
好ましくは、Ar′は、以下の基(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)、(q)、(r)の中から選択される単位である:
【化5】
【0048】
上記式中、Aは、S、O、Se原子、及びSO、SO、R17−P=O、P−(R17、N−R16、Si(R16基からなる群のなかから選択され;
Dは、C、S、O、Se原子、及びSO、SO、R17−P=O、P−(R17、N−R16、Si(R16基からなる群のなかから選択され;
B、Cは互いに独立に、C、N原子、及びNR16基からなる群のなかから選択され;
Eは、C(R16、S、O、及びNR16基からなる群のなかから選択され;
、R、R、R、R18、及びR19は互いに独立に、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群から選択され;
16、R17は互いに独立に、水素、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群から選択される。
【0049】
式(e)及び(n)では、その置換基は、その非局在化したシステムを形成している任意の環の任意のC位に結合していることができること意味している。
【0050】
式(a)〜(r)の上述した基の例は、例えば、以下のものである:
【化6】
【0051】
本発明の別の好ましい態様では、Ar′部分は、例えば、上で表した(a)〜(r)基などの別のアリール単位と連結されたチオフェン又はフェニル単位を含むダイマーであることができ、例えば下記式(s)及び(t)などである:
【化7】
式中、Wは、上に示した基(a)〜(r)からなる群の中から選択される基であり、R10はR〜Rと同じ基のなかから選択される基である。
【0052】
より好ましくは、Ar′基は、以下の式(u)及び(v)の(Ar′)におけるものなどの、多環式縮合チオフェン単位にα位で連結されたチオフェン単位を含むダイマーであることができる:
【化8】
式中、R、R、及びnは上で記載した意味を有する。
【0053】
本発明の一つの態様では、Ar′はチオフェン単位または置換されたチオフェン単位であり、(Ar′)部分はα位で連結したチオフェン単位または置換されたチオフェン単位の直鎖である。
【0054】
本発明による式(I)、(Ia)、(II)、及び(IIa)の化合物のチエノ(ビス)イミド単位に縮合したAr部分は、1つ、2つ、又は3つの芳香環から形成されていることが有利でありうる。
【0055】
好ましくは、式(I)、(Ia)、(II)、及び(IIa)において、Arは以下の環(α)、(β)、(γ)、(δ)、(ε)、(ζ)、(η)、(θ)、(ι)からなる群のなかから選択される:
【化9】
【化10】
式中、Xは、S、SO、SO、O、Si、Se、NRからなる群のなかから選択され;
YはC及びNからなる群のなかから選択され;
は、水素、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群のなかから選択される。
【0056】
好ましくは、式(II)、(IIa)、(IV)、及び(IVa)において、RはRと同じである。
【0057】
本発明の好ましい側面によれば、式(V)の線状のα位で連結したオリゴチオフェンジイミド化合物が提供される:
【化11】
式中、R、R、R11は互いに独立に、水素、ハロゲン、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルケニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ハロゲン化アルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキル-アルキニル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状シクロアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルコキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ヘテロアルコキシアルキル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシル基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルカルボキシアミド基、C〜C20の直鎖状又は分岐状アルキルスルホン酸基、C〜C20の直鎖状又は分岐状ニトリル基、C〜C40アリール基、C〜C40アルキルアリール基からなる群のなかから選択され;
mは1〜50の整数である。
【0058】
より好ましくは、式(V)の化合物において、mは1〜30であり、さらに好ましくは2〜30であり、なおさらに好ましくは、mは2〜10である。
【0059】
本発明の好ましい側面によれば、下記式(VI)を有する化合物が提供される:
【化12】
式中、R、R、R11は、式(V)に関連して上で定義したとおりである。
【0060】
本発明の別の好ましい側面によれば、下記式(VII)を有する化合物が提供される:
【化13】
式中、R12は式(V)に関連して上で定義したR11の意味と同じ意味を有し、tは2〜6の整数である。
【0061】
良く理解できるように、式(VII)の化合物は一般式(IIIa)から誘導され、式(IIIa)中、nは1に等しく、Ar′はRがR12である式(u)の単位であり、Rはアルケニル基で置換されたフェニル基である。
【0062】
式(V)、(VI)、(VII)において、記号R,R、R11、及びR12は、そのフェニル及び/又はチオフェン環の一置換及び多置換の両方を示すことを意味する。
【0063】
好ましくは、式(VII)において、そのアルケニル基は、例えば下記式(VIIa)におけるように、そのN−置換基であるフェニル基のパラ位にある:
【化14】
【0064】
いかなる理論に対しても本発明を限定することを望むことなく、そのイミドチオフェン部分は、カルボキシル基の強い電子求引効果(これは最終的なオリゴマーのLUMOエネルギー準位を低くするのに寄与する)を、そのチエニル環の化学的な汎用性、安定性、及び柔軟性と組み合わせることを可能にしていると考えられる。このことが、現在より良好な性能を示すn型半導体有機材料に相当する高い電子親和性をもつ新規なα共役材料の実現を可能にしている。
【0065】
その他の種類のn型材料に関するそのような化合物の主な利点のなかでは、容易な入手可能性及び構造上の汎用性が挙げられる。
【0066】
実際のところ、以下に記載するとおり、そのイミド部分はチエニル環と容易に縮合できる。そのイミド-チオフェン部分は容易にモノ又はジハロゲン化されて、線状又は分岐したオリゴマーを実現することができる。
【0067】
最後に、N置換、特にアリール基でのN置換は、π-共役チエノ(ビス)イミド系材料の固体状態での充填(パッキング)及び薄膜のモルフォロジーに強い影響を及ぼしうる。
【0068】
アリールペンダント基は、強められた分子間π−π重なり相互作用を通して密接した分子充填(パッキング)を促進することができると考えられる。
【0069】
共役したオリゴマー及びポリマーの固体状態のモルフォロジーは、電子デバイス、例えば、有機太陽電池(OPVD)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、及び有機発光トランジスタ(OLET)の性能特性において重要な役割を果たす。例えば、励起子移動及びキャリア移動度の両方(電荷輸送に基づくデバイスにとって重要なパラメータ)は、その共役した骨格の固体状態充填(パッキング)によって強く調節される。特に、電子波動関数の高められた分子間での重なりは、増大した帯域幅をもたらし、これはコヒーレント輸送状態におけるキャリア移動度に直接関連している。
【0070】
高度のα共役と平面構造をもつ縮合したヘテロ環中にイミドチオフェンブロックが挿入されている式(I)及び(II)の化合物の利点は、最終的なオリゴマーの電子レベルならびにモルフォロジー及び光電子特性のさらなる調整が可能であるということである。
【0071】
チオフェン-イミド部分は、以下に記載するように従来法又はマイクロ波を用いた方法でクロスカップリングさせることによって、選択したπ共役コアに結合させることができる。
【0072】
本発明の化合物の容易な入手可能性は、オリゴマーの大きさ、及び分子の官能化の程度及びそのタイプの容易な変更をも可能にし、これは次にその化合物の特性を、所望する応用が具体的に必要とする機能に応じて調整することを可能にする。
【0073】
本発明による化合物は、クロマトグラフィー、結晶化、及び昇華によって、電子機器用レベルの純度で、また、古典的な分析法によって曖昧さのない分子構造決定をしながら、得ることができる。
【0074】
従来技術によるチオフェン−3,4−イミドポリマー、ビチオフェン-イミドポリマー、及びペリレンテトラカルボン酸ジイミドシステムとは異なり、ここでの種類の材料はバッチごとに高い再現性で調製することができ、このことは再現性のある応答をするデバイスを達成するために重要である。さらに、それらは、目的に適合させたアリール基をN−置換基として挿入することによって溶液加工法に適応させることができる。
【0075】
本発明による化合物の別の利点は、薄膜におけるその高い自己組織化の能力及び状態にあり、それはβ位の内部置換基よりむしろα位末端置換基としてイミド部分を含むそれらの化学構造によるものである。
【0076】
本発明のなお別の側面によれば、本発明による化合物の製造方法を提供し、その方法は芳香族化合物の反復ハロゲン化とクロスカップリング反応を含む。
【0077】
本発明による方法は、好ましくは、パラジウムによって触媒される。
【0078】
式(I)、(II)、(III)、及び(IV)の本発明による化合物は、以下のスキーム1及び2にあるように、ジハロゲン化された芳香族ハライドから出発して得ることができる。
【0079】
【化15】
【0080】
【化16】
【0081】
スキーム中、Zはハロゲン原子、例えば、Br、Iのなかから選択され;Mは有機金属化合物、例えば、B(OR′)及びSnR″(式中、R′は水素又はアルキル基であり、R″はアルキル基である)であり;[cat]は、パラジウム系触媒である。
【0082】
別の合成方法によれば、直接アリール化反応を、慣用されるクロスカップリングの代わりに用いることができる。この場合には、有機金属種(Ar−M)は必要でなく、なぜならこの反応は一般にはハロゲン化された骨格(Ar−Z)と非置換のもの(Ar′−H)が関与するからである。当技術分野で知られているように、直接アリール化はパラジウム錯体によって触媒される。
【0083】
スキームIaは、式1の方法の出発物質を調製するための可能な合成方法を示しており、スキーム1a中、Zはハロゲンであり、NZSはハロゲン化コハク酸イミドを意味する。縮合したヘテロ環の種類に応じて、経路a又はbが選択されるべきである。
【0084】
【化17】
【0085】
式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、及び(IVa)の化合物は、本発明にしたがって、以下のスキーム3及び4に概要を示した方法によって得ることができる。
【0086】
【化18】
【0087】
上記スキーム3中、Zは、ハロゲン原子、例えば、Br、Iのなかから選択され;Mは、有機金属化合物、例えば、B(OR′)及びSnR″(式中、R′は水素及びアルキル基からなる群のなかから選択され、R″はアルキル基からなる群のなかから選択される)であり;[cat]は、パラジウム系触媒である。例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を触媒として用いることができる。
【0088】
別の合成方法によれば、直接アリール化反応を、従来のクロスカップリングの代わりに用いることができる。この場合、いかなる有機金属種(Ar−M)も必要とされず、なぜなら、この反応は一般にハロゲン化された骨格(Ar−Z)と非置換のもの(Ar′−H)が関与するからである。
【0089】
スキーム3aは、スキーム3の出発物質の調製のための合成アプローチを示しており、スキームにおいてNZSはハロゲン化コハク酸イミドである。
【0090】
【化19】
【0091】
この化合物の分子の対称性は、固体状態において、その分子の自己組織化単位(モチーフ)及びモルフォロジーに、したがって、最終的な機能特性に影響を及ぼす。上のスキーム中、最終化合物の対称性は、合成経路を変えることによって調節できる。モノハロゲン化チオフェンイミド単位とモノ金属種との間のクロスカップリング、又はモノハロゲン化物と非置換チエノ(イミド)の間の直接アリール化は、非対称システム(Ia)及び(IIIa)をもたらす。その一方、N−置換基R及びRが同じであることを条件として、バイメタリックの又はジハロゲン化された種を用いることによって、対称なシステムを得ることができる。
【0092】
詳しくは、本発明による式(VI)の好ましい化合物5の合成は、以下のスキーム5に概要が示されている。
【0093】
【化20】
【0094】
【化21】
【0095】
スキーム5は、本発明による化合物5であるチオフェン系オリゴマーの調製の概略を示しており、チオフェン系オリゴマー中、芳香族核Ar′は2,2′−ビチオフェンからなり、末端はN−置換基として2,4,6−トリフルオロフェニル基を有する対称なイミド基である。標的のオリゴマーへの合成経路は、通常の加熱下でのビススタニルビチオフェンと臭素化チオフェンイミドブロック4との間のStilleクロスカップリング反応に基づいている。詳しくは、チオフェンイミド出発単位3は、対応する無水物1により、従来技術の方法にしたがって調製することができる。3の臭素化と、それに続くビススタニル-ビチオフェンと化合物4のStilleクロスカップリングが、満足できる収率で所望する化合物5をもたらす。
【0096】
その別の側面では、本発明は、式(I)、(II)、(III)、及び/又は(IV)による少なくとも1つの化合物を含む半導体材料に関する。好ましくは、その半導体材料は、式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、及び/又は(IVa)による少なくとも1つの化合物を含む。さらに好ましくは、半導体材料は、式(V)、(VI)、(VII)、及び/又は(VIIa)による少なくとも1つの化合物を含む。
【0097】
その一つの態様では、その半導体材料は化合物5を含む。
【0098】
別の側面によれば、本発明は、いくつかの電極と接触している半導体層を含む電子デバイスであって、その半導体層が式(I)、(II)、(III)、及び/又は(IV)にしたがう少なくとも1つの化合物を含む電子デバイスに関する。好ましくは、その半導体層は、式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、及び/又は(IVa)にしたがう少なくとも1つの化合物を含む。さらにこの好ましくは、その半導体層は、式(V)、(VI)、及び/又は(VII)にしたがう少なくとも1つの化合物を含む。
【0099】
その一つの態様では、半導体層は化合物5を含む。
【0100】
好ましくは、本発明による化合物を含有する半導体層を含む上記電子デバイスは、光デバイス、電気光学デバイス、電界効果トランジスタ、集積回路、薄膜トランジスタ、有機発光デバイス、及び有機太陽電池のなかから選択される。
【0101】
特に、本発明によるチオフェン-イミド系材料の薄膜は、以下の実施例で実証するようにOFET及びOLETデバイス中の活性層として用いることができる。それらは単層OFET中の電子又は正孔輸送層として又は両極性輸送体として、単層OLET中の多官能電子及び正孔輸送及び発光層として、また、多層型OLET中の正孔又は電子輸送層として用いることができる。
【0102】
最後に、有機光電池における本発明の化合物及び材料の応用も考えられる。
【0103】
以下の実施例において、全てのH、13C、及び19F NMRスペクトルは、室温で、400MHz(H)及び100.6MHz(13C)で運転するVarian Mercury 400分光計で記録した。化学シフトは、TMSを参照にした内部CDCl、アセトン-d、又はCDCl共鳴を用いて較正した。19F NMRスペクトルにおいては、0.5%フルオロベンゼンを内部標準として添加した。フルオロベンゼンはCFClを参照とした。マススペクトルは、四重極ISQ Thermoscientific分光計で測定した。各サンプルは、直接曝露プローブ(DEP)を介してISQのイオン源領域に導入した。融点(未較正)は、ホットステージ装置で測定し、ホットステージにおいて顕微鏡を用いて溶融過程を観察した。UV可視スペクトルは、Perkin Elmer Lambda 20分光計を使用して記録した。フォトルミネセンススペクトルは、その最大吸収λに対応する励起波長を使用して、Perkin Elmer LS50B蛍光分光計で得た。
【0104】
2,4,6−トリフルオロアニリン及び5,5′−ビス(トリブチルスタニル)−2,2′−ビチオフェンは、Sigma-Aldrich社から購入した。チオフェン−2,3−ジカルボン酸無水物1は、既に報告されている方法にしたがって調製した。
【0105】
実施例1: 3−(2,4,6−トリフルオロフェニルカルバモイル)チオフェン−2−カルボン酸,2、及び2−(2,4,6−トリフルオロフェニルカルバモイル)チオフェン−3−カルボン酸,2′の合成
20mlのトルエン中のチオフェン−2,3−ジカルボン酸無水物,1(308 mg, 2 mmol)及び2,4,6−トリフルオロアニリン(309 mg, 2.1 mmol)の溶液を24時間還流させた。その冷たい反応混合物のろ過によって、粗生成物を集めた。トルエンからの結晶化によって、2:1の比で表題の異性体の混合物を白色固体として得て(500 mg, 83%収率)、これをさらに精製することなく次の環化工程で用いた。
【数1】
【0106】
実施例2: 5−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン 3の合成
32mlの塩化チエニル中の化合物2+2′(482 mg, 1.6 mmol)の溶液を3時間還流させた。溶媒を蒸留によって除去し、得られた褐色固体をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,石油エーテル/CHCl/AcOEt 8:1:1)によって精製して、ベージュ色の結晶性固体(406 mg, 90%)として表題化合物を得た。
【数2】
【0107】
実施例3: 2−ブロモ−5−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン, 4の合成
化合物3(400 mg, 1.41 mmol)を6mlのトリフルオロ酢酸に溶かした。外部から氷冷した後、1mlの濃硫酸を反応器に導入した。この混合物に、6時間にわたって少しずつ固体NBS(244 mg, 1.37 mmol)を添加した。夜通し室温で撹拌した後、茶色の溶液を10mlの水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて褐色固体として粗生成物を得た。シリカゲルと石油エーテル/AcOEt(90:10)を溶出液として用いるカラムクロマトグラフィーによる精製によって、350mg(69%)の所望する化合物を灰白色結晶として得た。
【数3】
【0108】
実施例4: 2,2′−(2,2′−ビチオフェン−5,5′−ジイル)ビス(5−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン),5の合成
化合物4(152 mg, 0.42 mmol)及びその場で調製した触媒Pd(AsPh(10 mol%, すなわち21.7 mgのPd2dba3及び51.4 mgのAsPh3)の還流しているキシレン溶液(8 ml)にN雰囲気下で、キシレン(2 ml)中の5,5′−ビス(トリブチルスタニル)−2,2′−ビチオフェン(153 mg, 0.20 mmol)を滴下して添加した。その溶液を6時間還流させ、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をペンタン及びイソプロパノールで洗った。熱いトルエンからの再結晶により、暗赤色固体として生成物を得た(74 mg, 51%)。
【数4】
【0109】
実施例5: 有機薄膜トランジスタの作製
有機薄膜トランジスタ(OTFT)をボトムゲート-トップコンタクト型配置で作製した。用いたITO基板洗浄法は、2つの超音波処理サイクルからなり、初めにアセトン中、次に2−イソプロパノール中で各10分間である。450nm厚さのPMMAの誘電層をそのきれいなITO基板の上にスピンコーティングによって成長させる(相対的誘電率100 Hzにおいてε= 3.6)。PMMA膜を次にグローブボックス中で120℃(PMMAのガラス転移温度の約10℃上)において15時間不活性雰囲気下で熱アニーリングをした。化合物5の15nm厚さの層を、自家製の真空チャンバー内で、0.1Å/sの堆積速度で、10−6mbarの基礎圧力において、真空昇華によって成長させた。金のソースドレイン接点を、次に有機フィルムの上に堆積させ、適切にマスキングして70μmの長さ及び15mmの幅のチャネルを形成させる。その膜堆積時の基板温度は室温(RT)に保っている。
【0110】
乾燥した不活性グローブボックス内に配置したAgilent B1500Aパラメトリック分析器に接続されたSuss PM5 professional probe stationによって、電気計測を行う。作用デバイスに由来するエレクトロルミネッセンスを集めるために、そのprobe stationは、1cmの活性面積をもつHamamatsu S1337フォトダイオードを備えており、これはOTFTチャンネルの下に配置されている。さらなるデバイス特性は以下の通りである。
PMMA=7.08nF/cm
【0111】
作用デバイスに由来する可能なエレクトロルミネッセンスを集めるために、フォトダイオードを備えたSuss PM5 professional probe station (市販のプローブステーション)を使用して、窒素でコントロールした雰囲気中で、作製したOTFTの電気的応答を測定している。このプローブステーションは、B1500 Agilentパラメトリック分析器と一体化されている。得られた結果は、図4で報告しているグラフにあり、測定された電荷移動度及びしきい電圧の測定値は以下のとおりである。
μ=2.5×10−5cm/Vs
=50V
μ=1.3×10−6cm/Vs
=−10V
【0112】
実施例6: 2−(2,2′−ビチオフェン−5−イル)−5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン,化合物8の合成
【化22】
【0113】
a)2−(メシチルカルバモイル)チオフェン−3−カルボン酸及び3−(メシチルカルバモイル)チオフェン−2−カルボン酸,6−6′の調製:
110mlの無水トルエン中の化合物1(1.1 g, 0.0071 mol)の溶液に、2,4,6−トリメチルフェニルアミン(1.013 g, 0.0075 mol)を室温で添加し、その混合物を48時間還流させた。室温に冷やした後、生成した固体を集め、ペンタンで洗った。白っぽい固体が得られた(2 g, 収率97%)。
【数5】
【数6】
【0114】
b)5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン,7の調製:
SOCl(100 ml)中の化合物6−6′混合物(2.0 g, 0.0069 mol)の溶液をN下で5時間還流させた。蒸留によってSOClを除去した後、粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル40/70:CHCl:AcOEt/40:30:30で溶出)によって精製した。化合物7を白っぽい固体として得た(0.58 g, 収率27%)。
【数7】
【0115】
c)2−(2,2′−ビチオフェン−5−イル)−5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン,8の調製:
2.5mlの無水トルエン中の化合物7(0.250 g, 0.000817 mol)、5−ブロモ−2,2′−ビチオフェン(0.260 g, 0.00106 mol)、ピバル酸(0.025 g, 0.000245 mol)、KCO(0.169 g, 0.00123 mol)、Pd(OAc)(0.011 g, 0.000049 mol)、PCyHBF(0.036 g, 0.000098 mol)の混合物を5時間還流させた。溶媒を蒸発させた後、混合物を15mlのCHClに溶かし、水で洗った。有機層を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル40/70:CH2Cl2:AcOEt / 80:10:10での溶出)によって精製した。生成物を含む画分をまとめ、溶媒を蒸発させ、残留物を熱いトルエンから結晶化させた。化合物8は暗橙色固体として得られた(80 mg, 収率21%)。
【数8】
【0116】
実施例7: 2,2′−(5,5′−(5−ブチル−4,6−ジオキソ−5,6−ジヒドロ−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−1,3−ジイル)ビス(チオフェン−5,2−ジイル))ビス(5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン)の合成
【化23】
【0117】
a)5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−2−(チオフェン−2−イル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン,9の調製:
6mlの無水トルエン中の化合物7(0.325 g, 0.000106 mol)、2−ブロモチオフェン(0.225 g, 0.00138 mol)、ピバル酸(0.065 g, 0.000637 mol)、KCO(0.147 g, 0.00106 mol)、Pd(OAc)(0.014 g, 0.0000637 mol)、PCyHBF(0.047 g, 0.000127 mol)の混合物を5時間還流させた。溶媒を蒸発させた後、混合物を20mlのCHClに溶かし、水で洗った。有機層を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル40/70:CH2Cl2: EtOAc / 80:10:10での溶出)によって精製した。生成物9を橙色固体として得た(230 mg, 収率56%)。
【数9】
【0118】
b)2−(5−ブロモチオフェン−2−イル)−5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン,10の調製:
化合物9(0.235 g, 0.606 mmol)を30mlのジクロロメタン及び酢酸の1:1混合物に溶かし、10分後、0.5mlの98%HSOを添加した。0℃において、遮光下で、NBS(119 mg, 0.666 mmol)を添加し、反応混合物を室温で夜通し撹拌した。その黄色溶液を次に50mlの水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル40/70:CH2Cl2:AcOEt / 80:10:10での溶出)によって精製して、黄色粉末として化合物10を得た(229 mg, 収率81%)。
【数10】
【0119】
c)2,2′−(5,5′−(5−ブチル−4,6−ジオキソ−5,6−ジヒドロ−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−1,3−ジイル)ビス(チオフェン−5,2−ジイル))ビス(5−(3−クロロ−2,4,6−トリメチルフェニル)−5H−チエノ[2,3−c]ピロール−4,6−ジオン),12の調製:
10mlの無水トルエン中の化合物10(0.229 g, 0.490 mmol)、化合物11(0.049g, 0.234 mmol)、ピバル酸(0.029 g, 0.28 mmol)、KCO(0.097g, 0.701 mmol)、Pd(OAc)(3 mg, 0.0140 mmol)、PCyHBF(10 mg, 0.028 mmol)の混合物を5時間還流させた。溶媒を蒸発させた後、混合物を15mlのCHClに溶かし、水で洗った。有機層を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル40/70:CH2Cl2: EtOAc / 60:30:10での溶出)によって精製した。生成物を含む画分をまとめ、溶媒を蒸発させ、残留物を熱いジクロロメタンから結晶化させ、−50℃にてペンタンで洗った。化合物12を赤色固体として得た(70 mg, 収率30%)。
【数11】
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
図4c)】
図4d)】
図4e)】
【国際調査報告】