特表2015-533868(P2015-533868A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-533868(P2015-533868A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】サファイア表面を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20151030BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20151030BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20151030BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   B24B37/00 H
   B24B37/00 P
   H01L21/304 622D
   H01L21/304 622F
   H01L21/304 622W
   C09K3/14 550Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2015-528703(P2015-528703)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(85)【翻訳文提出日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】US2013056482
(87)【国際公開番号】WO2014032012
(87)【国際公開日】20140227
(31)【優先権主張番号】61/692,974
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロング キム マリー
(72)【発明者】
【氏名】カムラス マイケル
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
3C158CA04
3C158CB03
3C158CB10
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5F057AA14
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5F057EA30
5F057EA31
5F057EB03
5F057EB13
(57)【要約】
ここに記載されるのは、コロイダルシリカを包含する組成物を使用してサファイア表面を研磨するための方法であり、コロイダルシリカは広範な粒子サイズ分布を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア表面を研磨する方法であって、
回転研磨パッドと研磨組成物とを用いてサファイア表面を研削することであって、前記研磨組成物が有効量のコロイダルシリカを包含して、前記コロイダルシリカが広範な粒子サイズ分布を有すること、
を包む方法。
【請求項2】
前記コロイダルシリカが前記研磨組成物の約1重量%から約50重量%である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記コロイダルシリカが約5nmから約120nmの粒子サイズ分布を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記コロイダルシリカの中間粒子サイズ(r)に対する前記コロイダルシリカの粒子サイズの標準偏差(σ)の比が少なくとも約0.3である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記比σ/rが約0.3から約0.9である、請求項4の方法。
【請求項6】
前記コロイダルシリカ組成物が、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,または50nmの中間粒子サイズを有し、各サイズが、前記研磨組成物に使用される前記コロイダルシリカ粒子の総質量の0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%、15.5%、16.0%、16.5%、17.0%、17.5%、18.0%、18.5%、19.0%、19.5%、20.0%、20.5%、21.0%、21.5%、22.0%、22.5%、23.0%、23.5%、24.0%、24.5%、または25.0%である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記コロイダルシリカが約5nmから約50nmの中間粒子サイズを有する、請求項1の方法。
【請求項8】
前記研磨組成物がさらに、アルカリ性物質、無機性研磨粒子、水溶性アルコール、キレート剤、および緩衝剤から成る群から選択される追加構成要素を包含する、請求項1の方法。
【請求項9】
前記研磨組成物のpHが約6から約10.5である、請求項1の方法。
【請求項10】
前記研磨パッドが約5psi(34kPa)から約25psi(172kPa)の下向き力で前記サファイア表面に圧接される、請求項1の方法。
【請求項11】
前記研磨パッドが約40rpmから約120rpmの速度で回転される、請求項1の方法。
【請求項12】
前記研磨パッドがポリウレタン含浸ポリエステル材料を包含する、請求項1の方法。
【請求項13】
前記研磨パッドが約1%から約40%の圧縮率を有する、請求項12の方法。
【請求項14】
前記研磨パッドが約50から約60のショアD硬度を有する、請求項1の方法。
【請求項15】
前記サファイア表面がサファイアC面の表面である、請求項1の方法。
【請求項16】
前記サファイア表面がサファイアR面の表面である、請求項1の方法。
【請求項17】
(a)所定の最小粒子サイズの既成シリカゾル粒子を含む第1構成要素を少なくとも一つの撹拌加熱反応器へ供給することと、
(b)ケイ酸を含む第2構成要素を前記反応器に加えることであって、新たにシリカ粒子核が生成される速度より低い速度で前記第2構成要素が前記反応器へ供給されることと、
(c)アルカリ化剤を含む第3構成要素を前記反応器に加えることと、
を包含するプロセスにより前記コロイダルシリカが調製され、
(d)結果的に得られる前記コロイダルシリカの前記最小粒子サイズが前記第1構成要素の前記粒子サイズにより制御され、前記広範な粒子サイズ分布が前記第1構成要素および前記第2構成要素の供給速度の比に依存する、
請求項1の方法。
【請求項18】
二つ以上のコロイダルシリカ組成物を混合することを包含するプロセスにより前記コロイダルシリカが調製され、前記コロイダルシリカ組成物が、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119,または120nmの平均粒子サイズを有する、請求項1の方法。
【請求項19】
サファイア表面を研磨するためのキットであって、
(a)約10nmから約120nmの粒子サイズ分布を有するコロイダルシリカを包含する研磨組成物と、
(b)ポリエステルで含浸されたポリウレタンを包含して約5%から約10%の圧縮率と約50から約60のショアD硬度とを有する研磨パッドと、
を包含するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年8月24日に提出された米国仮特許出願第61/692,974号の非仮出願であり、参照によりその内容が完全に援用される。
【0002】
本発明は、コロイダルシリカを包含する研磨組成物を使用してサファイア表面を研磨するための組成物、キット、および方法に関するものであり、コロイダルシリカは広範な粒子サイズ分布を有する。
【背景技術】
【0003】
サファイアは、アルミナ(Al23)単結晶材料についての総称である。サファイアは、赤外およびマイクロ波システムの窓部、紫外線〜近赤外光のための光透過性窓部、発光ダイオード、ルビーレーザ、レーザダイオード、小型電子集積回路の用途や超伝導化合物および窒化ガリウムの成長のための支持材料などとしての使用には特に有益な材料である。サファイアは、優れた化学的安定性、光透過性、そしてチップ抵抗、耐久性、耐擦傷性、耐放射線性、ヒ化ガリウムの熱膨張係数との良好な一致、および高温での曲げ強度のような望ましい機械的性質を有する。
【0004】
サファイアウェハは、C面(0度面または底面とも呼ばれる0001配向)、A面(90度サファイアとも呼ばれる1120配向)、R面(C面から57.6度の1102配向)のように、いくつかの結晶軸線に沿って切削されるのが普通である。半導体、マイクロ波、および圧力トランスデューサの用途で使用されるサファイア基板シリコン材料に特に適したR面サファイアは、光学システム、赤外検出器、および発光ダイオードのための窒化ガリウム成長の用途で一般的に使用されるC面サファイアよりも、研磨に対する耐性が高い。
【0005】
サファイアウェハの研磨および切削は、きわめて時間のかかる面倒なプロセスである。たいてい、許容できるような研磨速度を達成するには、ダイヤモンドのような攻撃的(aggressive)研削材が使用されなければならない。このような攻撃的研削材は、表面下および表面の深刻な損傷と汚れとをウェハ表面に付与しうる。一般的なサファイア研磨は、研磨されるサファイアウェハの表面に研削材のスラリーを連続的に塗布し、結果的に得られる研削材コーティング表面を回転研磨パッドで同時に研磨する必要がある。回転研磨パッドは、ウェハの表面上を動かされて、ウェハ表面に対して、一般的には約5から20ポンド毎平方インチ(psi)(約34kPaから138kPa)の範囲である一定の下向き力(押し付け力)が維持される。研磨パッドの温度および圧力におけるサファイアとコロイダルシリカとの相互作用により、ケイ酸アルミニウム無水物の類の形成にとってエネルギー的に好ましい化学反応(つまりAl23+2SiO2→Al2Si27・2H2O)がもたらされる。これら様々な水和物およびアルミニウム種の硬度は、その下にあるサファイアより低いと想定され、結果的に薄膜が生じ、これは下層の表面に損傷を与えずにコロイダルシリカスラリーによって容易に除去されうる。従来の慣行はまた、研磨温度を上昇させてアルミニウム水和物膜の形成速度および除去速度を高めることに注目している。アルカリ性コロイダルシリカスラリーでの塩濃度の上昇は、cおよびm面サファイアの両方について除去速度を高めることも分かっている。最終的にEDTA誘導体およびエーテルアルコール界面活性剤などのアルミニウムキレート剤を加えると、表面アルミニウム種を結合および剥離して、きれいなウェハ表面にするためにスラリー構成要素を懸濁することにより、研磨性能を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0196849号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0104851号明細書
【特許文献3】特開2008−044078号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0132306号明細書
【特許文献5】特開2009−297818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、サファイア研磨におけるこれらの発展のいずれも、他の研削材料で達成可能な一般的に低い研磨速度と、研磨パッドの性質との組み合わせによる粒子サイズおよび分布の影響に関するコンセンサスの欠如ゆえに、研磨性能を完全には解決していない。したがって、サファイア表面の研磨の効率を向上させる組成物、キット、および方法の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転研磨パッドおよび研磨組成物を用いてサファイア表面を研削することを包含するサファイア表面の研磨方法に関連し、研磨組成物は、有効量のコロイダルシリカを包含し、コロイダルシリカは広範な粒子サイズ分布を有する。いくつかの実施形態では、この方法のコロイダルシリカは、研磨組成物の約1重量%から約50重量%を占めるとともに、約5nmから約120nmの粒子サイズ分布を有する。いくつかの実施形態では、コロイダルシリカの中間粒子サイズ(r)に対するコロイダルシリカの粒子サイズの標準偏差(σ)の比は、少なくとも約0.3から約0.9である。いくつかの実施形態において、コロイダルシリカ組成物は、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,または50nmの中間粒子サイズを有し、各サイズは、研磨組成物で使用されるコロイダルシリカ粒子の総質量の0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%、15.5%、16.0%、16.5%、17.0%、17.5%、18.0%、18.5%、19.0%、19.5%、20.0%、20.5%、21.0%、21.5%、22.0%、22.5%、23.0%、23.5%、24.0%、24.5%、または25.0%である。
【0009】
いくつかの実施形態では、研磨組成物はさらに、アルカリ性物質、無機性研磨粒子、水溶性アルコール、キレート剤、および緩衝剤から成る群から選択される追加構成要素を包含する。いくつかの実施形態では、研磨組成物のpHは約6から約10.5である。いくつかの実施形態では、約5psi(約34kPa)から約25psi(約172kPa)の下向き力で研磨パッドがサファイア表面に圧接され、約40rpmから約120rpmの速度で回転される。いくつかの実施形態において、研磨パッドはポリウレタン含浸ポリエステル材料を包含するとともに、約1%から約40%の圧縮率を有する。いくつかの実施形態において、研磨パッドは約50から約60のショアD硬度を有しうる。いくつかの実施形態では、サファイア表面はサファイアC面表面またはサファイアR面表面である。
【0010】
いくつかの実施形態において、この方法に使用されるコロイダルシリカは、(a)所定の最小粒子サイズの既成シリカゾル粒子を含む第1構成要素を少なくとも一つの撹拌加熱反応器に供給することと、(b)ケイ酸を含む第2構成要素を反応器に加えることであって、新たにシリカ粒子の核が生成される速度より低い速度で第2構成要素が反応器へ供給されることと、(c)アルカリ化剤を含む第3構成要素を反応器に加えることとを包含するプロセスにより調製され、(d)結果的に得られるコロイダルシリカの最小粒子サイズが第1構成要素の粒子サイズにより制御されて、広範な粒子サイズ分布が第2構成要素に対する第1構成要素の供給速度の比に依存する。いくつかの実施形態では、二つ以上のコロイダルシリカ組成物を混合することを包含するプロセスによりコロイダルシリカが調製され、コロイダルシリカ組成物は、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18.19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119,または120nmの平均粒子サイズを有する。
【0011】
本発明はさらに、サファイア表面を研磨するためのキットに関し、キットは、(a)約10nmから約120nmの粒子サイズ分布を有するコロイダルシリカを包含する研磨組成物と、(b)約5%から約10%の圧縮率と約50から約60のショアD硬度とを有するポリエステル含浸ポリウレタンを包含する研磨パッドとを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】研磨システムの図である。
図2】コロイダルシリカ組成物の粒子サイズ分布のグラフである。
図3】ここで説明されるコロイダルシリカ組成物のTEM画像を示し、A)組成物1、B)組成物2、C)組成物3、D)組成物4、E)組成物5である。
図4】様々な研磨組成物および研磨パッドのためのサファイア表面からの材料除去速度のグラフである。
図5】研磨時間に応じて変化する材料除去速度および摩擦係数のグラフである。
図6】A)研磨前のC面サファイアウェハ表面についての原子間力顕微鏡の5μm×5μm×800nm表面プロットと、B)同じウェハについての20μm×20μm×2000nm表面プロットとを示す。
図7】研磨前のC面サファイアウェハ表面の原子間力顕微鏡の上面図画像を示す。
図8】コロイダルシリカ組成物5を用いた研磨の間のC面サファイアウェハ表面のAFM表面プロットを示し、A)20分、25μm×25μm×2000nmの表面プロット、B)120分、25μm×25μm×2000nmの表面プロット、C)120分、1μm×1μm×50nmの表面プロットである。
図9】プロセスA条件で組成物2を用いた研磨の後のC面サファイアウェハ表面についての原子間力顕微鏡の上面図画像を示す。
図10】プロセスD条件で組成物2を使用した180分の研磨の後のC面ウェハについての原子間力顕微鏡の1μm×1μm×20nmの表面プロットを示す。
図11】表面上の変動性を表す、図10に示された研磨後ウェハの断面を示す。
図12】プロセスB条件で組成物6を使用した180分の研磨の後のC面ウェハについての原子間力顕微鏡の1μm×1μm×20nmの表面プロットを示す。
図13】表面上の変動性を表す、図12に示された研磨後ウェハの断面を示す。
図14】プロセスF条件で組成物2を使用した180分の研磨の後のC面ウェハについての原子間力顕微鏡の1μm×1μm×20nmの表面プロットを示す。
図15】表面上の変動性を表す、図14に示された研磨後ウェハの断面を示す。
図16】プロセスF条件で組成物6を使用した180分の研磨の後のC面ウェハについての原子間力顕微鏡1μm×1μm×20nmの表面を示す。
図17】表面上の変動性を表す、図16に示された研磨後ウェハの断面を示す。
図18】プロセスD条件で組成物6を使用した180分の研磨の後のR面ウェハについての原子間力顕微鏡1μm×1μm×20nmの表面を示す。
図19】表面の変動性を表す、図18に示された研磨後ウェハの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、多様な研磨パッドと、広範または多モード粒子サイズ分布を有するコロイダルシリカ組成物の間の、パッド−粒子相互作用の独自な発見に関する。このような相互作用の結果、サファイア表面の効果的かつ効率的な研磨が行われる。広範で明確なコロイダルシリカ粒子の粒子サイズ分布を有する組成物により、サファイア表面の化学的機械的平面化が向上され、また、材料除去速度の上昇とサファイア基板の表面粗度の低下とが同時に伴われる。
【0014】
本発明は、C面またはR面ウェハのようなサファイア表面を研磨するための組成物、キット、および方法に関する。組成物は水溶性マトリックス(母材)内のコロイダルシリカ粒子を包含する。粒子サイズ分布は広範だが明確であり、約5nmから約120nmの範囲に及ぶ。粒子サイズ分布は、中間粒子サイズ(r)に対する粒子サイズ分布の標準偏差(σ)の比を特徴とし、σ/rは少なくとも約0.3である。規定の比での指定の粒子サイズの混合を通して、または工学的連続製造プロセスにより、粒子の分布が得られる。
【0015】
本発明の方法は、狭い粒子サイズ分布を有する従来の研磨スラリーを用いて達成可能な除去速度よりも速やかな、サファイア表面の研磨のための材料除去速度を提供しうる。結果的に得られる研磨後サファイア基板は、発光ダイオード(LED)、半導体、光学レーザ、および遠距離通信機器を限定的でなく含むいくつかの用途に使用されうる。
【0016】
1.定義
ここで使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定的であることは意図されていない。明細書および添付請求項で使用される際に、単数形の“a”,“an”,“the”は、文脈から他の意味が明示されない限り、複数形の引用対象を含む。
【0017】
絶対的な語と近似的な語のいずれかで示されるいかなる範囲もその両方を内含することが意図されており、ここで使用されるいかなる定義も限定ではなく明瞭化を意図したものである。本発明の広い範囲を規定する数値範囲およびパラメータが近似的であるにもかかわらず、特定の例で規定される数値はできるかぎり正確に述べられる。しかし、いかなる数値も、それぞれの検査測定で見られる標準偏差から必ず生じる一定の誤差を含む。また、ここに開示されるすべての範囲は、ここに包摂されるいかなる、またすべての下位範囲(すべての分数および整数を含む)を内含するものと理解される。
【0018】
「アスカーC」硬度は、アスカーC硬度計により測定されるような軟質ゴムおよびスポンジの硬度の測定値を意味する。
【0019】
「コロイダルシリカ組成物」と、「コロイダル」や「ゾル」などを含む他の同様の語は、分散相と連続相とを有する水性二相系を指す。本発明で使用されるコロイダルシリカ組成物は、連続的または実質上連続的な液体相、一般的には水溶液に分散または懸濁される、固体相を有する。ゆえに、「コロイド」または「シリカゾル」の語は両方の相を内含し、「コロイダル粒子」、「コロイダルシリカ」、「シリカゾル粒子」、または「粒子」は、分散相または固体相を指す。
【0020】
「材料除去速度」または「MRR」は、除去された材料を時間間隔で割った量を指す。MRRは、所与の基板についての単位時間当たりの質量(例えばmg/分)またはnm/分の単位で述べられる。例えば、サファイアの密度は3.98g/cm3であり、ゆえに0.001グラムの損失は、3インチ(7.62cm)ウェハの表面での55.1nmの均一な損失と同等である。そのため、材料除去速度は以下の変換式により計算されうる。
【数1】
【0021】
ここで使用される「研磨組成物」は、コロイダルシリカ組成物とサファイア表面を研磨するのに使用されうる任意の追加構成要素とを含む組成物を指す。研磨組成物は、分散相としてのコロイダルシリカと、連続相としての水溶液と、アルカリ性物質、他の無機性研磨粒子、水溶性アルコール、キレート剤、緩衝剤、表面活性剤、乳化剤、粘度調整剤、湿潤剤、潤滑剤、石鹸などから選択される任意の追加構成要素とを含みうる。
【0022】
「二乗平均平方根粗度」、「RMS粗度」、または「Rq」はここでは互換的に使用され、所与のエリア内でのZ値の標準偏差を指し、式1により表される。
【数2】
【0023】
上式において、Zavgは所与のエリア内での平均Z値であり、ZiはZ関心値(点または画素)であり、Nは所与のエリア内の点の数である。ゆえに、完全に平らな表面であればRq=0である。非ゼロだが低いRqであれば、表面が粗いがその粗度の一因となった複数のフィーチャ(形状要素)はすべて近似的に対等であることを表すであろう。他方で、高いRqであればフィーチャ間の変動性が高いことを表すであろう。
【0024】
「粗度平均」、「中間粗度」、または「Ra」はここでは互換的に使用され、中心面からの偏差の算術平均を指し、式2により表される。
【数3】
【0025】
上式において、Zcpは中心面のZ値であり、ZiはやはりZ関心値であり、Nは所与のエリアの点の数である。
【0026】
「ショアC硬度」は、ショアデュロメータで測定されるような硬質ゴム、半剛性プラスチック、および硬質プラスチックの硬度の測定値である。多様なショア硬度計が、規定のバネ力による針の圧入に対する材料の耐性を測定する。
【0027】
「ショアD硬度」は、ショアデュロメータで測定されるような硬質ゴム、半剛性プラスチック、および硬質プラスチックの硬度の測定値である。多様なショア硬度計が、規定のバネ力による針の圧入に対する材料の耐性を測定する。
【0028】
「安定状態」は、このpH範囲全体に亘り、沈殿物を含まず効果的に、コロイドの固体相が存在し、媒体に分散されて安定であることを意味する。
【0029】
「Z値」は、原子間力顕微鏡により決定されるような表面上の所与の点での垂直高さの測定値である。「Z較差」は、画像エリアでの最大フィーチャおよび最小フィーチャ間の高さの差である。
【0030】
2.サファイア表面を研磨するための組成物およびキット
ここに記載されるのは、研磨組成物および研磨組成物を包含するキットであり、研磨組成物は広範な粒子サイズ分布を有するコロイダルシリカ粒子を包含する。キットはさらに、サファイア表面を研磨するための研磨パッドを包含する。キットは研磨パッドと研磨組成物とを用いてサファイア表面を研削するのに使用されうる。キットは、単峰の狭い粒子サイズ分布(PSD)を有するコロイダルシリカ研磨組成物を使用して達成されるものより高いかこれに匹敵する材料除去速度(MRR)を得るのに使用されうる。キットは、MRRの損失を伴わない低濃度の研磨組成物の使用を可能にしうる。キットはまた、サファイア表面を研磨するための指示を包含しうる。
【0031】
キットは、サファイア表面に使用されるポンド毎平方インチ(PSI)圧力およびパッドに応じて、少なくとも約30nm/分、31nm/分、32nm/分、33nm/分、34nm/分、35nm/分、36nm/分、37nm/分、38nm/分、39nm/分、40nm/分、41nm/分、42nm/分、43nm/分、44nm/分、45nm/分、46nm/分、47nm/分、48nm/分、49nm/分、50nm/分、51nm/分、52nm/分、53nm/分、54nm/分、55nm/分、56nm/分、57nm/分、58nm/分、59nm/分、60nm/分、61nm/分、62nm/分、63nm/分、64nm/分、65nm/分、66nm/分、67nm/分、68nm/分、69nm/分、または70nm/分の材料除去速度(MRR)を提供することにより、サファイア表面の最終表面粗度を向上させうる。キットは、40.0nm/分、40.5nm/分、41.0nm/分、41.5nm/分、42.0nm/分、42.5nm/分、43.0nm/分、43.5nm/分、44.0nm/分、44.5nm/分、45.0nm/分、45.5nm/分、46.0nm/分、46.5nm/分、47.0nm/分、47.5nm/分、48.0nm/分、48.5nm/分、49.0nm/分、49.5nm/分、50.0nm/分、50.5nm/分、51.0nm/分、51.5nm/分、52.0nm/分、52.5nm/分、53.0nm/分、53.5nm/分、54.0nm/分、54.5nm/分、55.0nm/分、55.5nm/分、56.0nm/分、56.5nm/分、57.0nm/分、57.5nm/分、58.0nm/分,または58.5nm/分のサファイア表面からの除去速度であるサファイア表面からの材料除去速度(MRR)を達成しうる。
【0032】
キットは、初期の二乗平均平方根(RMS)が最大1ミクロンの状態から、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、2.0nm、1.9nm、1.8nm、1.7nm、1.6nm、1.5nm,1.4nm,1.3nm、1.2nm、1.1nm,1.0nm,0.9nm,0.80nm,0.70nm、0.60nm、0.50nm、0.40nm、0.30nm、0.20nm,または0.10nmより小さいか等しいサファイア表面の二乗平均平方根(RMS)粗度またはRqを提供しうる。キットは、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、5.0Å、4.9Å、4.8Å、4.7Å、4.6Å、4.5Å、4.4Å、4.3Å、4.2Å、4.1Å、4.0Å、3.9Å、3.8Å、3.7Å、3.6Å、3.5Å、3.4Å、3.3Å、3.2Å、3.1Å、3.0Å、2.9Å、2.8Å、2.7Å、2.6Å、2.5Å、2.4Å、2.3Å、2.2Å、2.1Å、2.0Å、1.9Å、1.8Å、1.7Å、1.6Å、または1.5Åより低いか等しいサファイア表面のRMS粗度を達成しうる。
【0033】
キットは、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、1.8nm、1.7nm,1.6nm、1.5nm、1.4nm、1.3nm、1.2nm、1.1nm、1.0nm、0.9nm、0.80nm,0.70nm,0.60nm,0.50nm,0.40nm,0.30nm、または0.20nmと等しいかこれより小さいサファイア表面の粗度平均またはRaを提供しうる。キットは、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、14.5Å、4.4Å、4.3Å、4.2Å、4.1Å、4.0Å、3.9Å、3.8Å、3.7Å、3.6Å、3.5Å、3.4Å、3.3Å、3.2Å、3.1Å、3.0Å、2.9Å、2.8Å、2.7Å、2.6Å、2.5Å、2.4Å、2.3Å、2.2Å、2.1Å、2.0Å、1.9Å、1.8Å、1.7Å、1.6Å、または1.5Åのサファイア表面の粗度平均を達成しうる。
【0034】
キットはまた、研磨プロセスの間に著しい温度上昇を伴わずにサファイア表面の効果的な研磨を可能にしうる。例えば、研磨の間には設定温度から1,2,3,4,5,6,7,8,9,または10℃未満だけ温度が上昇しうる。
【0035】
スラリーおよび研磨プラテンの温度を上昇させて制御し周囲温度より上に温度を維持することにより、サファイア表面の効果的な研磨がさらに向上しうる。例えば、研磨中の研磨パッド温度は25℃から50℃+/−3℃を目標としうる。
【0036】
a.研磨組成物
サファイア表面を研磨するためのキットは研磨組成物を包含する。研磨組成物は、広範な粒子サイズ分布を有するコロイダルシリカ粒子を包含する。研磨組成物は、水(例えば脱イオン水)中のコロイダルシリカ粒子の水性スラリーであり、任意の追加構成要素を含みうる。
【0037】
i.コロイダルシリカ
コロイダルシリカは、細かい非晶質、非多孔性、そして一般的に球形のシリカ(SiO2)粒子が液体相に含まれる懸濁液でありうる。コロイダルシリカ粒子は、約5nmから約120nmの粒子サイズ分布を有しうる。コロイダルシリカ粒子は、5nm、10nm、15nm,20nm,25nm,30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm,65nm、70nm、75nm,80nm,85nm,90nm、95nm、100nm,105nm,110nm,115nm,または120nmの粒子直径を有し、各コロイダルシリカ粒子サイズは、研磨組成物に使用されるコロイダルシリカ粒子の総質量の0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%、15.5%、16.0%、16.5%、17.0%、17.5%、18.0%、18.5%、19.0%、19.5%、20.0%、20.5%、21.0%、21.5%、22.0%、22.5%、23.0%、23.5%、24.0%、24.5%、または25.0%に相当する。
【0038】
実施形態において、コロイダルシリカ組成物の粒子サイズ分布は、透過電子顕微鏡(TEM)を使用して決定されるような、平均粒子直径rに対する分布の標準偏差σの比として定義されうる。このような慣行は、米国特許第6,910,952号に記載されている。ここに記載される方法およびキットに使用されうるコロイダルシリカ組成物は、少なくとも約0.30から約0.90、例えば約0.30,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.40,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.50,0.51,0.52,0.53,0.54,0.55,0.56,0.57,0.58,0.59,0.60,0.61,0.62,0.63,0.64,0.65,0.66,0.67,0.68,0.69,0.70,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.80,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87.0.88,0.89,または0.90であるσ/rの値を持つ広範な粒子サイズ分布を有しうる。
【0039】
コロイダルシリカ粒子は、約10nmから約50nm、例えば約20nmから約40nmの中間粒子直径rを有しうる。例えば、コロイダルシリカ粒子は、約10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28.29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,または50nmの中間粒子サイズを有しうる。
【0040】
コロイダルシリカ粒子の粒子サイズ分布の標準偏差σは、約10から約20、例えば10,10.1,10.2,10.3,10.4,10.5,10.6,10.7,10.8,10.9,11.0,11.1,11.2,11.3,11.4,11.5,11.6,11.7,11.8,11.9,12.0,12.1.12.2,12.3,12.4,12.5,12.6,12.7,12.8,12.9,13.0,13.1,13.2,13.3,13.4,13.5,13.6,13.7,13.8,13.9,14.0,14.1,14.2,14.3,14.4,14.5,14.6,14.7,14.8,14.9,15.0,15.1,15.2,15.3,15.4,15.5,15.6,15.7,15.8,15.9,16.0,16.1,16.2,16.3,16.4,16.5,16.6,16.7,16.8,16.9,17.0,17.1,17.2,17.3,17.4,17.5,17.6,17.7,17.8,17.9,18.0,18.1,18.2,18.3,18.4,18.5,18.6,18.7,18.8,18.9,19.0,19.1,19.2,19.3,19.4,19.5,19.6,19.7,19.8,19.9,または20である。
【0041】
特定のサイズでの各コロイダルシリカ粒子の総質量の百分率は大きく変動し、広範なサイズ分布が存在する。例えば、コロイダルシリカ組成物は、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,または50nmの中間粒子サイズを有し、各サイズの粒子は、研磨組成物に使用されるコロイダルシリカ粒子の総質量の0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%、15.5%、16.0%、16.5%、17.0%、17.5%、18.0%、18.5%、19.0%、19.5%、または20.0%でありうる。
【0042】
ii.液体相
研磨組成物はさらに、スラリーを生成するため液体相を包含する。例えば、液体相は脱イオン水でありうる。液体中のコロイダルシリカのスラリーを形成する前と後のいずれかで、約6.0,6.1,6.2,6.3,6.4,6.5,6.6,6.7,6.8,6.9,7.0,7.1,7.2,7.3,7.4,7.5,7.6,7.7,7.8.7.9,8.0,8.1,8.2,8.3,8.4,8.5,8.6,8.7,8.8,8.9,9.0,9.1,9.2,9.3,9.4,9.5,9.6,9.7,9.8,9.9,10.0,10.1,10.2,10.3,10.4,または10.5にpHが調節されうる。pHは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどといった塩基を使用して調節されうる。
【0043】
iii.任意の追加構成要素
実施形態では、研磨組成物はさらに、以下の添加剤のうち一つ以上を含みうる。
【0044】
A)水酸化ナトリウム、第4アンモニウム塩基およびその塩、モノエタノールアミンなどの水溶性アミン、硝酸塩、塩化物、硫酸塩などを含むアルカリ金属塩のような、アルカリ性物質。
【0045】
B)ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を含む、非酸化物ゾルのような無機性研磨粒子。同様に、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ムライト、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、酸化スズなどが加えられうる。同様に、組成物は、水酸化アルミニウム、ベーマイト、またはゲータイトのような水和酸化物を含有しうる。
【0046】
C)エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのような水溶性アルコール。
【0047】
D)キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン、およびメチルホルムアミドなど、キラントを含有する一つ以上のアミンまたはアミドと、シュウ酸またはイミノ二酢酸などの有機酸。
【0048】
E)緩衝剤。緩衝組成物は、中性付近からアルカリ性のpH範囲に及ぶように調節されうる。一塩基酸、二塩基酸、および多塩基酸は、水酸化アンモニウムなどの塩基で完全または部分的に脱プロトン化された時に、緩衝液として作用しうる。酸のアンモニウム塩が適当であるが、他のアルカリとカルボン酸のアルカリ土類金属塩とが使用されうる。代表的な例として、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸を含むカルボン酸の塩が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、マロン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、これらの塩、そしてこれらの混合物が挙げられる。スラリーを緩衝しうる窒素含有化合物は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、アルギニン、オルニチン、システイン、チロシン、カルノシン、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−(2−アセトアミド)−2−イミノ二酢酸、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン、トリエタノールアミン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、およびグリシンを含む。リン酸水素アンモニウムも、スラリーに使用されうる。
【0049】
F)界面活性剤、乳化剤、粘度調整剤、湿潤剤、潤滑剤、石鹸など。一般的な界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性、両性、ポリ電解質の化合物を含む。例として、有機酸、アルカン硫酸塩、アルカリスルホン酸塩、水酸化物、置換アミン塩、ベタイン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムテトラメチルハロゲン化アンモニウム、セチルトリメチルハロゲン化アンモニウム、ノニルエーテル、そしてこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
b.研磨パッド
キットは、サファイア表面を処理するのに研磨組成物とともに使用される研磨パッドをさらに包含する。研磨パッドは、樹脂、あるいは製織または不織材料を包含しうる。例えば、研磨パッドは、ポリウレタンパッド、またはポリエステルフェルトやスエードのようなポリウレタン含浸繊維系材料を含みうる。
【0051】
研磨パッドは、約1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%、15.5%、16.0%、16.5%、17.0%、17.5%、18.0%、18.5%、19.0%、19.5%、20.0%、20.5%、21.0%、21.5%、22.0%、22.5%、23.0%、23.5%、24.0%、24.5%、25.0%、25.5%、26.0%、26.5%、27.0%、27.5%、28.0%、28.5%、29.0%、29.5%、30.0%、30.5%、31.0%、31.5%、32.0%、32.5%、33.0%、33.5%、34.0%、34.5%、35.0%、35.5%、36.0%、36.5%、37.0%、37.5%、38.0%、38.5%、39.0%、39.5%、または40.0%の圧縮率を有しうる。
【0052】
研磨パッドは、約50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100のショアC硬度を有しうる。
【0053】
研磨パッドは、約50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100のショアD硬度を有しうる。
【0054】
研磨パッドは、約50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100のアスカーC硬度を有しうる。
【0055】
研磨パッドは、約50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100のJIS硬度を有しうる。
【0056】
適当なパッドはRohm&Haasから商品名SUBA(商標)で入手可能である。例えば、SUBA(商標)500パッドは、比較的低い圧縮率(約13%)と約55のショアD硬度とを有する。SUBA(商標)600パッドは、約4%の圧縮率と約80のアスカーC硬度とを有する。SUBA(商標)800パッドは、約4%の圧縮率と約82のアスカーC硬度とを有する。加えて、Rohm&Haasから入手可能なMHNおよびMHSパッドは、非常に低い圧縮率(約3%)と約84のJIS硬度とを備えるポリウレタンパッドである。
【0057】
c.他の要素
キットはさらに、追加要素を包含する。例えば、キットは、研磨組成物および/または研磨パッドの使用のための指示も含みうる。キットに含まれる指示は包装材料に貼付されるか、添付書として含まれうる。指示は一般的に文書または印刷物であるが、これらに限定されない。このような指示を保存してエンドユーザに伝えることのできる何らかの媒体が、本開示では想定されている。このような媒体は、電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCD、DVD)などを限定的ではなく含む。ここで使用される際に、「指示」の語は、指示を提供するインターネットサイトのアドレスを含みうる。キットの様々な構成要素は、必要に応じて適当な容器、例えばボトル、広口瓶、小瓶で提供される。
【0058】
3.サファイア表面を研磨する方法
ここに開示されるのは、上記のキットまたは広範な粒子サイズ分布を有するコロイダルシリカ粒子を包含する組成物を使用してサファイア表面を研磨するための方法でもある。この方法は、回転研磨パッドと研磨組成物とを用いてサファイア表面を研削することを包含し、研磨組成物は有効量のコロイダルシリカを包含し、コロイダルシリカは広範な粒子サイズ分布を有する。
【0059】
例えば、ここに開示される方法は、化学的機械的研磨(CMP)を必要としうる。CMPの主な目的は、誘電性堆積物の表面トポグラフィを平滑化してマルチレベル金属被覆を可能にすること、または余分なコーティング材料を除去して象嵌金属ダマシン構造とSTI用の分離溝とを設けることである。CMPでの材料除去の機構は完全に理解されているわけではないが、概して、酸化物基板が表面にて化学的に処理されることで比較的脆弱または軟質の薄膜が急速に生成される。この表面膜が次に、化学的と研磨用の両方の構成要素を含有する製剤を使用して、均一な平面状となるまで「丁寧に」研削される。
【0060】
本発明の方法では、回転キャリアに取り付けられたウェハのようなサファイア表面の表面に研磨組成物が塗布されうる。次に回転研磨パッドを使用してサファイア表面が研削されうる。一般的に、プロセス中にはパッドの研磨表面とサファイア表面の表面との間に、研磨スラリーの少なくとも一部分が載ったままである。研磨パッドは、選択された回転速度でサファイア表面に垂直な回転軸線を中心に回転する平面状の研磨表面を有する。サファイア表面に垂直な選択されたレベルの下向き力により、パッドの回転研磨表面がサファイア表面に押圧される。回転研磨パッドがサファイア表面に押圧された状態でサファイア表面にスラリーを連続的に供給することにより、研磨組成物がサファイア表面に塗布されうる。
【0061】
回転研磨パッドと研磨スラリーとの複合作用は、狭いサイズ分布のコロイダルシリカ粒子を有する研磨組成物を使用して、同じパッド、同じ回転速度、そして同じ下向き力でサファイア表面を研削することにより達成可能なサファイア除去速度よりも高い速度で、表面からサファイアを除去しうる。
【0062】
研磨パッドは、約5psi(約34kPa)から約25psi(約172kPa)、例えば約10psi(約69kPa)から約20psi(約138kPa)または約12psi(約83kPa)から約16psi(約110kPa)の下向き力でサファイア表面に押圧されうる。例えば、パッドは、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,または25psi(約34,41,48,55,62,69,76,83,90,97,103,110,117,124,131,138,145,152,159,165,または172kPa)の下向き力でサファイア表面に圧接されうる。研磨パッドは、約40から約120回転毎分(rpm)または約60から80rpmの速度で回転されうる。例えば、研磨パッドは、約40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,または120rpmの速度で回転されうる。
【0063】
この方法では、約120分、125分、130分、140分、145分、150分、155分、160分、165分、170分、175分、180分、185分、190分、195分、200分、205分、210分、215分、220分、または225分の間、サファイア表面が研磨されうる。
【0064】
この方法は、サファイアウェハのC面またはR面表面を研磨または平面化するのに有益であり、狭い粒子サイズ分布を有するもののように、従来の研削スラリーで達成されるものより著しく高い材料除去速度を提供しうる。除去速度は、狭い粒子サイズ分布を有するスラリーにより得られる除去速度よりも、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%高い。
【0065】
この方法は、何らかの研削研磨装置を利用して実行されうる。選択されたパッド回転速度(例えば約20から約150rpm)で、選択された下向き力により(例えば約2から約20psi(約14から138kPa)の範囲の下向き力により)ウェハの表面に圧接される回転研磨パッドを使用して、回転キャリアに取り付けられたサファイアウェハで研磨が達成されるのが適当であり、ウェハは、選択された回転速度(例えば約20から約150rpm)で回転するキャリアに取り付けられる。適当な研磨装置は、CETR(カナダ、キャンベル)およびSpeedFam(日本、神奈川)のように様々な製造元から市販されている。例えば、CP−4 CMP検査機器またはSpeedFam GPAW32機器が使用されうる。
【0066】
この方法は、ポンド毎平方インチ(PSI)圧力とサファイア表面に使用されるパッドとに応じて、少なくとも約30nm/分、31nm/分、32nm/分、33nm/分、34nm/分、35nm/分、36nm/分、37nm/分、38nm/分、39nm/分、40nm/分、41nm/分、42nm/分、43nm/分、44nm/分、45nm/分、46nm/分、47nm/分、48nm/分、49nm/分、50nm/分、51nm/分、52nm/分、53nm/分、54nm/分、55nm/分、56nm/分、57nm/分、58nm/分、59nm/分、60nm/分、61nm/分、62nm/分、63nm/分、64nm/分、65nm/分、66nm/分、67nm/分、68nm/分、69nm/分、または70nm/分の材料除去速度(MRR)を提供することにより、サファイア表面の最終表面粗度を向上させうる。この方法は、40.0nm/分、40.5nm/分、41.0nm/分、41.5nm/分、42.0nm/分、42.5nm/分、43.0nm/分、43.5nm/分、44.0nm/分、44.5nm/分、45.0nm/分、45.5nm/分、46.0nm/分、46.5nm/分、47.0nm/分、47.5nm/分、48.0nm/分、48.5nm/分、49.0nm/分、49.5nm/分、50.0nm/分、50.5nm/分、51.0nm/分、51.5nm/分、52.0nm/分、52.5nm/分、53.0nm/分、53.5nm/分、54.0nm/分、54.5nm/分、55.0nm/分、55.5nm/分、56.0nm/分、56.5nm/分、57.0nm/分、57.5nm/分、58.0nm/分、または58.5nm/分のサファイア表面除去速度であるサファイア表面からの材料除去速度(MRR)を達成しうる。
【0067】
この方法は、最大1ミクロンの初期RMSから、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、2.0nm、1.9nm、1.8nm,1.7nm,1.6nm,1.5nm,1.4nm,1.3nm,1.2nm,1.1nm、1.0nm、0.9nm、0.80nm、0.70nm,0.60nm,0.50nm,0.40nm,0.30nm、0.20nm,0.10nmより小さいか等しいサファイア表面の二乗平均平方根(RMS)粗度またはRqを提供しうる。キットは、ある時間周期(例えば約180)のサファイア表面の研磨の後に、5.0Å、4.9Å、4.8Å、4.7Å、4.6Å、4.5Å、4.4Å、4.3Å、4.2Å、4.1Å、4.0Å、3.9Å、3.8Å、3.7Å、3.6Å、3.5Å、3.4Å、3.3Å、3.2Å、3.1Å、3.0Å、2.9Å、2.8Å、2.7Å、2.6Å、2.5Å、2.4Å、2.3Å、2.2Å、2.1Å、2.0Å、1.9Å、1.8Å、1.7Å、1.6Å、または1.5Åより小さいか等しいサファイア表面のRMS粗度を達成しうる。
【0068】
この方法は、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、1.8nm,1.7nm,1.6nm,1.5nm,1.4nm,1.3nm,1.2nm,1.1nm、1.0nm、0.9nm、0.80nm、0.70nm,0.60nm,0.50nm,0.40nm,0.30nm、または0.20nmと等しいか小さいサファイア表面の粗度平均またはRaを提供しうる。キットは、ある時間周期(例えば約180分)のサファイア表面の研磨の後に、4.5Å、4.4Å、4.3Å、4.2Å、4.1Å、4.0Å、3.9Å、3.8Å、3.7Å、3.6Å、3.5Å、3.4Å、3.3Å、3.2Å、3.1Å、3.0Å、2.9Å、2.8Å、2.7Å、2.6Å、2.5Å、2.4Å、2.3Å、2.2Å、2.1Å、2.0Å、1.9Å、1.8Å、1.7Å、1.6Å、または1.5Åというサファイア表面の粗度平均を達成しうる。
【0069】
この方法はまた、研磨プロセス中に著しい温度上昇を伴わないサファイア表面の効果的な研磨を可能にしうる。例えば、研磨中には0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,または10℃未満だけ温度が上昇しうる。
【0070】
研磨時間(例えば、180分のようにここに記載の研磨時間)にわたって、摩擦係数(CoF)が監視されうる。このような監視から、研磨時間にわたって約0.05,0.10,0.15,0.20,0.25,0.30,0.35,0.40,0.45,または0.50だけCoFが上昇することが示されうる。
【0071】
4.広範分布コロイダルシリカ組成物を調製する方法
研磨組成物は、連続的な製造プロセスを通して合成されうる。広範な分布のコロイダルシリカ組成物は、当該技術で周知の任意の適当な手段により準備されうる。いくつかの実施形態では、工学的な連続製造プロセスにより組成物が得られうる。他の実施形態では、規定の比での指定粒子サイズの混合を通して組成物が得られうる。
【0072】
a.工学的連続製造プロセス
適当な工学的連続製造プロセスは、所定の粒子サイズまたは粒子サイズ分布を有する既成のシリカ粒子を用意するステップと、アルカリ剤を用意するステップと、ケイ酸を用意するステップとを含みうる。これらの構成要素は一般的に、反応容器内で新たな核生成が生じるのを妨げるため制御された速度で反応器へ供給される。連続反応器では、定常条件が達成された後には粒子のサイズおよび分布は概ね一定のままである。組成物の粒子サイズ分布は、単一反応器の連続プロセスで正確に制御されうる。既成のコロイダル粒子のみが成長することを保証するため、新しい粒子を形成するための核生成速度より低い速度にケイ酸の供給速度が維持される。
【0073】
供給速度は、90℃では1,000平方メートルの表面積で1時間あたりシリカがSiO2として10.0グラムでありうるため、新たな核生成が完全に回避される。この供給速度は温度依存であって、温度が高いほど高い供給速度が可能である。このようにして、所望の粒子サイズ分布を維持して新たな粒子の核生成を回避しながら、コロイダルシリカが所望の粒子サイズまで「成長」できる。各構成要素の供給速度を監視することにより、結果的に得られるコロイダルシリカの増加を最大化させることができ、そのためシリカの生成が最大化されうる。
【0074】
工学的連続製造プロセスの別の供給構成要素は、既成のコロイダル粒子を含む。一般的に、この構成要素は狭い分布を有するコロイダル粒子を含む。広範な粒子サイズ分布のシリカの形成中に、ケイ酸がこれらの粒子に付着する。そのため使用される既成粒子の粒子サイズは、結果的に得られる広範な分布の生成物の所望の最小粒子サイズであり、生成されるコロイダルシリカ粒子の本質的にすべてが、既成のシリカゾル粒子より大きい。一般的には、結果的に得られるシリカゾルの所望の平均粒子サイズおよび粒子サイズ分布が特定され、これにしたがって既成シリカとケイ酸に対する既成シリカの比とが使用される。既成シリカゾル粒子の粒子サイズの増大は、結果的に得られるコロイダルシリカの最小および平均の粒子サイズを増大させる。
【0075】
ケイ酸溶液を調製する例示的な方法は、H+−陽イオン交換樹脂の床(bed)にケイ酸ナトリウム溶液を通過させることである。結果的に得られる脱イオン化ケイ酸溶液はかなり反応性が高い傾向が見られ、重合作用を遅らせるため一般的には低温に保たれる。ケイ酸溶液をアルカリ溶液に添加すると、「供給シリカ」または「ヒール(heel)」を形成する。ヒールまたは供給シリカは、NaOH、KOH、NH4OHなどおよびこれらの組み合わせのようなアルカリ剤を含有する。
【0076】
一般的に、ケイ酸は4から8%の濃度を有し、約2から4の範囲のpHを有する。本発明での使用には、他のシリカ粒子成長技術で使用されうるあらゆるケイ酸が想定されている。任意の適当なタイプのケイ酸溶液が利用されうることと、任意の適当な方法を通してケイ酸が生成されうることとが認識されるべきである。
【0077】
ケイ酸の供給速度は、新たな核生成が発生する速度より低く維持されるべきである。最高供給速度は、反応器の容積および反応温度に依存する。容積が大きくなるほど、最高供給速度は高くなる。温度が高いほど、最高供給速度は高くなる。既成コロイダル粒子の供給を使用しない一般的な連続システムについては、反応器で新たな粒子が形成される。本発明の方法を通して、最小粒子サイズ境界が維持されうる。
【0078】
反応器系へのアルカリ剤供給構成要素は一般的に、アルカリ系を維持する塩基材料である。シリカゾル生成に通常使用されるアルカリは、すべて許容可能である。一般的なアルカリ剤は、約8.0から約12.5の間の(シリカゾル生成に理想的な)pH範囲を有する。ゲル形成を防止するために、通常は希釈溶液が使用される。適当なアルカリ剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなど、そして以上の組み合わせが挙げられる。
【0079】
結果的に得られるコロイダルシリカの最小粒子サイズは、既成シリカゾルの粒子サイズにより制御され、広範粒子サイズ分布はケイ酸に対する既成シリカゾルの比に依存する。例えば、既成コロイダルシリカに対するケイ酸の比を上昇させると、分布曲線を幅広にするとともに平均粒子サイズを増大させる。同じ平均粒子サイズを保ちながら分布曲線を狭くするには、大きな既成粒子と、既成コロイダルシリカに対するケイ酸の比の上昇とが使用されうる。
【0080】
一実施形態では、本発明に使用される反応器は単一のオーバーフローユニットである。一般的に反応温度は40℃より高く入熱が必要である。最高温度は通常、反応器圧力定格に依存する。150℃から200℃の上端温度が一般的である。しかし、反応器が高圧定格を有する場合には、より高い温度が採用されうる。
【0081】
他の連続システムのように、このシステムは、定常条件を達成するのに充分なほど長く作動しうる。最初の操作の後で、(同じ生成物が作られると仮定すると)前に作られた生成物が最初の反応器内容物として使用されうる。この実施形態によれば、前の操作で生成されたコロイダルシリカ粒子を反応器に加えることにより、反応器では定常条件が維持される。
【0082】
したがって、広範な粒子サイズ分布のコロイダルシリカ粒子は、(a)所定の最小粒子サイズの既成シリカゾル粒子を含む第1構成要素を少なくとも一つの撹拌加熱反応器へ供給することと、(b)ケイ酸を含む第2構成要素を反応器に加えることであって、新たにシリカ粒子の核が生成される速度よりも低い速度で第2構成要素が反応器に供給されることと、(c)アルカリ化剤を含む第3構成要素を反応器に加えることとを何らかの順序で包含し、(d)結果的に得られるコロイダルシリカの最小粒子サイズが第1構成要素の粒子サイズにより制御され、広範粒子サイズ分布が第2構成要素に対する第1構成要素の供給速度の比に依存する方法により、生成されうる。
【0083】
いくつかの実施形態では、生成されたコロイダルシリカ粒子の本質的にすべてが第1構成要素の既成シリカゾル粒子より大きい。いくつかの実施形態では、広範粒子サイズ分布の平均粒子サイズは、第1構成要素の平均粒子サイズにより決定される。いくつかの実施形態では、広範粒子サイズ分布の平均粒子サイズは、第1構成要素と第2構成要素との供給速度の比により決定される。いくつかの実施形態では、この比を上昇させると、広範粒子サイズ分布曲線が幅広になる。いくつかの実施形態では、この方法は、広範粒子サイズ分布曲線の平均粒子サイズを増大させることを含む。いくつかの実施形態においてこの方法は、大きな既成シリカゾル粒子を第1構成要素に含めることと第1構成要素と第2構成要素との供給速度比を上昇させることとにより平均生成粒子サイズを変えることなく比較的狭い粒子サイズ分布曲線を作成することを含む。いくつかの実施形態では、反応器は単一のオーバフロー反応器である。いくつかの実施形態では、反応器は一連の反応器である。いくつかの実施形態では、方法は、生成されたコロイダルシリカ粒子を濃縮することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、反応中に蒸発を介して濃縮することを含む。いくつかの実施形態では、約40から約200℃の範囲の温度に反応器が維持される。いくつかの実施形態では、アルカリ化剤は約8.0から約12.5のpHを維持する。いくつかの実施形態では、生成されたコロイダルシリカを反応器から連続的に除去することにより、反応器は一定の容積に保たれる。いくつかの実施形態では、方法は、連続プロセスとして方法を実行することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、反応器の前の操作で生成されたコロイダルシリカ粒子を反応器に加えることにより反応器で定常条件を維持することを含む。
【0084】
b.混合プロセス
混合プロセスは、所定の粒子サイズまたは粒子サイズ分布を有する既成シリカ粒子を用意するステップと、粒子を混合して広範な粒子サイズ分布を有する組成物を用意するステップとを含みうる。例えば、プロセスは、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119,または120nmの平均粒子サイズを有する二つ以上の単峰コロイダルシリカ組成物の選択を必要としうる。二つ以上の組成物が所望の比で混合され、広範な粒子サイズ分布を有する組成物を生成する。
【0085】
本発明は、ここに記載される様々な実施形態のいくつかまたはすべてにより可能な組み合わせのいずれかおよびすべてを内含する。本出願に引用される特許、特許出願、科学論文、他の参考文献のいずれかおよびすべてが、本明細書で引用される任意の参考文献と共に、参照により全体として援用される。
【0086】
本発明は多数の態様を有し、そのいくつかが以下の非限定的な例により例示される。
【0087】

一般的な材料および方法
直径3インチのC面(0001)の切削され磨かれた状態のサファイアウェハを、Roditi,Inc.およびGT Crystal Systemsから入手した。研磨パッドは、ノースカロライナ州モンローのEminess Technologiesから購入された。他に記載のない限り、研磨実験は、カリフォルニア州キャンベルのCETRにより製造されたCP−4 CMP検査機器を使用して実行された。SpeedFamの32GPAW機器について、付加的な指定の研磨調査が実施された。研磨プロセスの概要が図1に示されている。
【0088】
Nanoscope IIIa制御装置を装備したVeeco Metrology Group製のDigital Instruments Dimension 3100顕微鏡を用いて、AFM画像が取得された。Vistaprobe CSR−10エッチングシリコンプローブチップ(長さ225μm、共振周波数28kHz、公称バネ定数0.1N/m)と、応用ナノシリコンプローブ(13kHzの共振周波数、0.17N/mの公称バネ定数)のいずれかを使用して、画像が接触モードで収集された。
【0089】
粗度および他の表面フィーチャについて統計的に重要なデータを取得するため、通常は各サファイアウェハで最少でも5箇所が試験を受け、いくつかの箇所でウェハの中心とともにエッジを評価する。概して、5個の異なる方形画像エリアの試験が行われた。75μm、25μm、5μm、1μ、および500nm。Digital Instruments Nanoscope IIIaRソフトウェアのバージョン5.31r1を用いて、データが解析された。上面図と表面プロットとが構築され、表面粗度計算が最初の高さデータについて実施された。圧電スキャナと共通する圧電ヒステリシス効果を除去するために、標準的な二次または三次面フィットと平坦化パラメータとで構成されるデータ操作のみ行った。二次面フィットは概して、1um〜10umのエリアのような小さいエリアの画像に適用され、一方で三次面フィットは広いエリアに適用された。
【0090】
サファイア表面の粗度はいくつかの異なる手法で評価された。Z較差は、画像エリアでの最大および最小フィーチャ間の高さの差である。埃の付いた完全に平らな表面は高いZ較差を記録するので、このフィーチャは誤解を招きやすい。しかし、汚れのない比較的粗い表面という状況で検討すると、顕著なフィーチャについての視覚的表示が提供される。
【0091】
二乗平均平方根(RMS)粗度Rqは、所与のエリア内でのZ値の標準偏差であり、式1により表される。
【数4】
【0092】
avgは所与のエリア内での平均Z値であり、ZiはZ関心値(点または画素)であり、Nは所与のエリア内での点の数である。ゆえに、完全に平らな表面であればRq=0を有するだろう。非ゼロだが低いRqであれば、表面は粗いが粗度に関与するフィーチャがすべて概ね等しいことを表す。他方で高いRqは、フィーチャ間に高度な変動性があることを示す。
【0093】
中間粗度Raは中心面からの偏差の算術平均であり、式2により表される。
【数5】
【0094】
cpは中心面のZ値であり、ZiはやはりZ関心値であり、Nは所与のエリア内の点の数である。等式1では平均の代わりに中心面が使用されるので、中間粗度は実際には中央値に近い。平均値および中央値と同様に、式1により計算される粗度は、データにスパイクを発生させるフィーチャまたは汚れによる歪みの影響をより受けやすいことが予想されるだろう。
【0095】
サファイアの材料除去速度は、0.0001gまでの測定が可能な解析用上載せはかりを使用した重量測定により決定される。サファイアの密度が3.98g/cm3であると分かっているので、0.001グラムの損失は、3インチ(7.62cm)ウェハの表面での55.1nmの均一な損失に等しい。そのため、材料除去速度は以下の変換式により計算されうる。
【数6】
【0096】
例1
コロイダルシリカスラリーの特徴評価
【0097】
コロイダルシリカ生成物を脱イオン(DI)水で希釈して0.1MのNaOHでpHを10.2に調節することにより、コロイダルシリカスラリーが調製された。これらの例で使用されたコロイダルシリカスラリーの代表的なデータおよび性質が、表1に挙げられている。粒子サイズ特徴は、透過電子顕微鏡(TEM),動的光散乱(DLS)、および/またはシアーズ滴定に基づき、およそ30〜105nmのサイズ範囲を持つ。
【0098】
組成物1は、平均して25nm(滴定による)および85nm(DLSによる)の広範な分布のカリウム安定化ゾルを含む。これらの粒子は連続プロセスでカリウムにより成長され限外濾過(UF)を介して固体が約40%となるまで濃縮される。このような組成物はNalco(登録商標)13184として市販されている。
【0099】
組成物1を調製するため、pH9.1で固体が31.1%である12860グラムの上記生成物が、脱イオン水で2000グラムまで希釈された。次に250グラムの0.1MのNaOHでpHが10.1に調節された。結果的に得られるスラリーは固体19.9%と解析された。
【0100】
組成物2は、多峰分布のナトリウム安定化ゾルから成り、公称粒子サイズはおよそ25nmで粒子の50%以上が40と120nmの間である。TEMによる粒子サイズ測定は、36nmの平均粒子サイズを示す。この組成物は、およそ25,50,80nmの3種の異なるナトリウム成長(sodium grown)による単峰組成物を混合させたものであり、これらは正しい粒子サイズを得るため混合され、UFを介して固体がおよそ50%となるまで濃縮された。このような組成物は、Nalco(登録商標)1060として市販されている。
【0101】
組成物2を調製するため、pH8.7で固体が49.7%である7628グラムの上記生成物が、脱イオン水で18935グラムまで希釈された。次に250グラムの0.1MのNaOHでpHが10.1に調節された。最終的なスラリーは、固体が19.8%と解析された。
【0102】
組成物3は、平均して38nm(滴下による)および85nm(DLSによる)の広範な分布のカリウム安定化ゾルを含む。これらの粒子は連続プロセスでカリウムにより成長されUFを介して固体が40%まで濃縮され、組成物1の粒子に類似した方法で調整される。このような組成物はNalco(登録商標)DVSTS029として市販されている。
【0103】
組成物3を調製するため、pHが9.65で固体が50.4%である7527グラムの上記生成物が、脱イオン水で18948グラムまで希釈された。次に20グラムの1.0MのNaOHでpHが10.1に調節された。結果的に得られるスラリーは、固体20.2%と解析された。
【0104】
組成物4は、平均80nm(DLSによる)の狭い分布のコロイダルシリカを含む。これらの粒子は商業的に、ナトリウムで成長されてから限外濾過(UF)を介して固体が40%まで濃縮される。このような組成物は、Nalco(登録商標)2.329Kとして市販されている。
【0105】
組成物4を調製するため、8.29で固体が40.4%である9919グラムの上記生成物が、脱イオン水で19602グラムまで希釈された。次に20グラムの1.0MのNaOHでpHが10.0に調節された。結果的に得られるスラリーは、固体20.6%と解析された。
【0106】
組成物5は、狭い分布のコロイダルシリカを含む。これらの粒子は、商業的に、ナトリウムで成長されてから限外濾過(UF)を介して固体48%まで濃縮される。このような組成物は、Nalco(登録商標)2329Plusとして市販されている。
【0107】
組成物5を調製するため、pHが9.89で固体が47.6%である7978グラムの上記生成物が、脱イオン水で18941グラムに希釈された。次に20グラムの1.0MのNaOHでpHが10.5に調節された。結果的に得られるスラリーは、固体20.1%と解析された。
【0108】
組成物6は、多峰分布のナトリウム安定化ゾルから成り、公称粒子サイズはおよそ22nmであり、粒子の85%以上が38nm未満である。TEM粒子サイズ測定は、22nmの平均粒子サイズを示す。この組成物は、およそ12,25,50,80,および100nmの5種の異なるナトリウム成長による単峰分布コロイダルシリカ組成物を混合させたものであり、これらは正しい粒子サイズ分布を得るため混合され、UFを介して固体がおよそ50%まで濃縮される。
組成物6を調製するため、pHが9.5で固体が49.7%である7628グラムの上記生成物が、脱イオン水で18935グラムまで希釈された。次に250グラムの0.1MのNaOHでpHが10.1に調節された。最終的なスラリーは、固体19.8%と解析された。
【0109】
【表1】
【0110】
図2は、組成物の各々についてのTEM PSDを重ねたものを表す。概して、広範PSDゾルと記されるコロイダルシリカ組成物は非ガウス性であると分かり、ここでは公称粒子サイズとして定義されるモード値と著しく異なる平均粒子サイズを有する。対照的に、単峰分布ゾルは限定されたガウス分布にわたる粒子サイズを有し、モード値と平均粒子サイズ値とは本質的に同等である。広範分布は、米国特許第6,910,952号に記載の慣行を使用して、この分布のTEM平均粒子サイズrと標準偏差σとの間の比の形で説明されうる。この指数を使用すると、調査対象の研磨粒子は二つのグループに明確に分かれる。緊密な単峰のガウス分布と見られるものは結果的にσ/r比が0.15未満となるのに対して、広範な非ガウス分布は0.45より大きい比を有する。TEM PSDヒストグラムをさらに解析すると、単峰分布の粒子サイズとほぼ関連する「ビン(bins)」サイズで数えられる粒子の相対百分率が得られる。TEM解析は表2に挙げられている。
【0111】
【表2】
【0112】
図3も、各組成物の代表的なTEM画像を表している。
【0113】
例2
サファイア研磨試験
3種の異なる研磨パッドを使用して研磨試験が実施された。
SUBA(商標)500:13%の圧縮率と55のショアD硬度とを備えるポリウレタン含浸ポリエステルフェルトパッド。
SUBA(商標)600:4%の圧縮率と80のアスカーC硬度とを備えるポリウレタン含浸ポリエステルフェルトパッド。
SUBA(商標)800:4%の圧縮率と82のアスカーC硬度とを備えるポリウレタン含浸ポリエステルフェルトパッド。
MHNパッド:3%の圧縮率と84のJIS硬度とを備えるポリウレタン樹脂フェルトパッド。
【0114】
新品の時または使用のたびに、パッド調整では、ポリウレタン研磨パッドの独立または被覆気泡を開放する。これはウェハへのスラリーの移動を向上させうるとともに、パッド寿命にわたって一貫した研磨表面を提供し、結果的にウェハごとの研磨変動性を低下させる。パッド調整プロセスでは、パッド表面に印加される最小の下向き力により、コンディショニングリングが機器の上のウェハキャリアと交換される。表3は、この研究でパッドを調整するのに使用された調整パラメータをまとめたものである。
【0115】
【表3】
【0116】
CP−4 CMP検査機器は、2から4インチのウェハと9インチのプラテンパッドとを収容できる。研磨中に、摩擦力とウェハパッド境界面での摩擦係数(CoF)とプラテンパッド温度とがその場で連続的に監視される。この例で使用されるプロセス条件が表4にまとめられている。
【0117】
Speedfam GPAW 32研磨器は、32インチのプラテンパッドと4個の研磨ヘッドとを有し、各ヘッドが3または83インチのウェハを収容する取り付けテンプレートを装備する。研磨中に、プラテンパッド温度が監視される。この例で使用されるプロセス条件が表4にまとめられている。
【0118】
【表4】
【0119】
操作時間、処理圧力、パッド、コロイダルシリカ研削材、および研削材濃度を変化させながら、すべての操作でプラテン速度を一定に保ってすべてのウェハが研磨された。CETR CP−4システムについては、ウェハキャリア回転が研磨中にモータ駆動されて制御される。Speedfam GPAW32については、ウェハキャリアヘッドはモータ駆動されず、研磨プロセスの摩擦力を受けてウェハが自由回転する。概して、すべての組成物がプレストン則に基づく挙動を示し、材料除去速度(MRR)は下向圧力および回転速度の線形関数である。しかし、線の勾配、そのためこれらの変数の各々の影響度は、研磨組成物によって大きく変化する。同様に、MRRは研磨スラリー中のコロイダルシリカの濃度に大きく依存し、最大粒子の濃度が低下すると、速度低下が大きくなる。業界標準である20%のSiO2の固体投入において、調査対象のコロイダルシリカゾルの公称粒子サイズの影響がさらに調べられる。検討目的のため、これらのデータの部分集合がここでまとめられる。
【0120】
表5は、共通の処理パラメータでのC面サファイア研磨研究用の操作について得られた除去速度をまとめたものである。シリカゾルは脱イオン水でシリカ固体が20%まで希釈され、pHは9.5より高く調節された。7.11および10.00psi(約49及び69kPa)の二つの下向き圧力が、三つのSUBA(商標)パッドおよび一つのMH−Nパッドについて評価され、すべてのウェハが180分間研磨された。比較目的のため、初期検査がSUBA500パッドで行われ、下向き力は12.00psi(約83kPa)まで上昇され、ウェハは2時間のみ研磨された。
【0121】
【表5】
【0122】
図4では、データはグラフ上ではコロイダルシリカ研削材の公称粒子サイズの関数である。プロセスAおよびDに示されたSUBA(商標)500パッドは最高の除去速度を示し、組成物2,3,6のすべてで、10psi(約69kPa)の下向き圧力では毎分45nmより高い材料除去速度が結果的に得られた。これは、同一の研磨条件における、より大径な単峰組成物4,5の速度の2倍以上である。SUBA(商標)600およびSUBA(商標)800パッドを使用する研磨プロセスについてのサファイア除去速度は、コロイダルシリカ粒子サイズまたはPSDにそれほど依存せず、MRR値はおよそ20+/−5nm/分である。また、プロセスBでSUBA600パッドとともに使用される組成物6を除いて、同一の研磨条件及び7.11psi(約49kPa)下向き圧力における、より大径の単峰組成物4および5の速度の2倍以上である毎分45nmよりも高い材料除去速度が得られる。
【0123】
12.0psi(約83kPa)の下向き力でのSUBA(商標)500パッドでの20分ずつ増える研磨(プロセスA)により、文献に記されている20分研磨速度でのMRRを比較するとともに、除去速度、摩擦係数、および表面仕上げに関して平面化の進行を追跡することができる。図5は、プロセスAを使用した組成物5の研磨時間に応じて、MRRの低下と、これに対応するその場のCoFの上昇とを図に示したものである。最初の20分の研磨周期では、組成物5のMRRは約34.2nm/分であることが分かっており、これは好ましいことに、類似の条件で報告された25〜40nm/分の速度に匹敵する。(例えば米国特許出願第2006/0196849号と台湾特許出願第2007/287484号を参照)。しかし、研磨が進行するにつれて、摩擦係数の上昇とともに除去速度が低下する。平滑化作業を検討するとこれが理解されうる。概して、最初は研削材が表面の凸部を平坦化する。平面化が続くと、粒子、パッド、およびウェハ表面の間の表面接触が増大し、結果的にこの境界面での摩擦が上昇する。しかし、表面全体にわたってはるかに大きな材料塊を除去することにより、深溝が除去されなければならない。従来のCMPプロセスに見られるような相当の表面修正が欠如しているために、除去速度の低下は当然の結果である。180分の操作時間を通して温度が24.0度C+/−2度で比較的安定していることに注目することが重要である。
【0124】
断面Cに記された対応のAFM表面プロットを見ると、これがさらに理解されうる。20分の研磨では、図8aに見られるような表面が生成される。研磨プロセスのこの点で、50um2のエリアから、比較的平滑な広いエリアを表面が有することは明らかであるが、いくつかの粒子が表面に付着して(高さ25nmmまでの「尖端」として現れる)、いくつかの深い「のこぎり溝」がまだ残っており、表面のさらなる平面化が必要であることを示唆している。平面化プロセス中にウェハ、パッド、および粒子の間の表面接触が著しく増加すると、40分の研磨の後に除去速度がかなり低下することに注目すべきである。
【0125】
図6は、研磨前に調べられたサファイアウェハの一つの一般的な表面を示す。A)C面ウェハの5μm2×800nmの表面プロット、RMS=150.5nm、Ra=117.1nm。B)同じウェハの20μm2×2000nmの表面プロット、RMS=204.3nm、Ra=162.6nm。大きく尖った表面フィーチャが明白であり、zスケールは、これらのフィーチャが数百ナノメートル程度の高さであることを示す。同じ5μm2の箇所の上面図が図7に示されている。上面図は色シェーディングにより表面フィーチャの相対高さを示し、最も低いエリアは暗く見え、最も高いエリアは明るい。この未研磨表面の画像Z較差は、(最低点から)二分の一ミクロンほどの高さの尖端を示す。画像全体の粗度はRa=117nmであり、ナノメートル以下の粗度という最終目標よりもかなり高い。これはサファイアコアからのスライス(のこぎり切断)の後でのウェハ表面であるため、おそらくはのこぎり跡が図6および7に見られる形態の原因である。
【0126】
12.0psi(約83kPa)の下向き力でのSUBA500パッドでの2時間の周期の研磨(プロセスA)は、図8および9に見られるような表面を生成する。図8は、組成物5による研磨プロセスA中のC面サファイアのAFM表面プロットを示す。A)20分の研磨時間、25μm2×2000nmの表面プロット、RMS=350nm。B)120分で25μm2×200nmの表面プロット、RMS=70nm。C)1μm2×50nmの表面プロット、RMS=4.30nm、Ra=3.50nm。図9は、組成物2を使用した研磨プロセスAの後のc面サファイアウェハのAFM上面図(1μm×1μm)と粗度統計とを示す。
【0127】
研磨プロセスのこの点で、50μm2エリアから、比較的平滑な広いエリアを表面が有するが、いくつかの粒子が表面に付着していくつかの深い「のこぎり溝」がまだ残っているのは明らかで、表面のさらなる洗浄および平面化が必要とされることを示唆している。平滑の程度が上昇して表面相互作用が増加するにつれて、除去速度は低下する。120分では、比較的平面状の広いエリアが存在し、ウェハ全体についての代表的な粗度評価を行いながら、表面の微細なフィーチャを捕捉するには1から10μm2のエリアの分離が理想的である。図8cの1μm2画像では、深さが<10nm程度の小さな溝のみが観察され、エリアは均質に見え、ナノメートルの表面粗度を含む。
【0128】
しかし、ナノメートル以下の粗度という目標は、最終的な表面粗度目標に達するのに長い研磨時間が必要とされることを暗示している。この理由のため、表6に記されているように、他のすべての研磨操作が180分まで延長された。セクションBで特定された除去速度で60分の研磨時間が追加されると、表面平滑性目標、攻撃的研磨やえぐり取り(gouging)の防止に必要なサファイア除去深さを満たすように、すべてのシリカスラリーが計算された。表に記載された結果から分かるように、7.11psi(約49kPa)の下向き圧力は、使用されるSUBAパッドに関係なく、小さな公称粒子サイズを持つシリカゾルについての表面仕上げ目標を満たすのには不充分である。
【0129】
【表6】
【0130】
180分の研磨操作は、ナノメートル以下の表面粗度をより一定して生じることができた。図10は、プロセスD条件での180分間の研磨の後のC面ウェハ表面を示し、ナノメートル以下の平均粗度が達成されたことを表している。図11は同じウェハの断面を示し、表面上での変動性を表している。図12はプロセスB条件で組成物6を使用した180分間の研磨の後のC面ウェハ表面を示し、図13は同じウェハの断面を示し、表面上での変動性を表している。図14はプロセスF条件で組成物2を使用した180分間の研磨の後のC面ウェハ表面を示し、図15は同じウェハの断面を示し、表面上での変動性を表す。図16はプロセスF条件で組成物6を使用した180分間の研磨の後のC面ウェハを示し、図17は同じウェハの断面を示し、表面上での変動性を表している。図18はプロセスD条件で組成物6を使用した180分間の研磨の後のR面ウェハ表面を示し、図19は同じウェハの断面を示し、表面での変動性を表す。
【0131】
組成物6がプロセスBで115オングストロームのRMSと0.9オングストロームのRaとを達成してから、組成物2がプロセスDで2.85オングストロームのRMSと2.03オングストロームのRaとを達成してから、組成物3がプロセスDで4.89オングストロームのRMSと3.73オングストロームのRaとを達成することで、最高の性能が得られた。これらの組成物はまた、断面Bに記されているように最高の除去速度を達成し、MRR値はそれぞれ45.2,51.5,47.0nm/minである。
【0132】
R面サファイアウェハは、似たような傾向が観察されたC面ウェハと同じ条件で研磨されうる。例えば、R面ウェハがプロセスDで固体40%の組成物4を使用して3時間研磨されると、43.5ミクロン/分の材料除去速度となり、2.64オングストロームのRMSと2.1オングストロームのRaとを達成する。R面ウェハがプロセスDで固体40%の組成物6を使用して3時間研磨されると、40.6ミクロン/分の材料除去速度となり、2.92オングストロームのRMSと2.3オングストロームのRaとを達成する。
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図8A
図8B
図8C
図10
図12
図14
図16
図18
図1
図4
図5
図6
図7
図9
図11
図13
図15
図17
図19
【国際調査報告】