特表2015-534022(P2015-534022A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

<>
  • 特表2015534022-シェル形軸受用の軌道輪 図000003
  • 特表2015534022-シェル形軸受用の軌道輪 図000004
  • 特表2015534022-シェル形軸受用の軌道輪 図000005
  • 特表2015534022-シェル形軸受用の軌道輪 図000006
  • 特表2015534022-シェル形軸受用の軌道輪 図000007
  • 特表2015534022-シェル形軸受用の軌道輪 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-534022(P2015-534022A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】シェル形軸受用の軌道輪
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20151030BHJP
   F16C 33/62 20060101ALI20151030BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20151030BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20151030BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   F16C33/58
   F16C33/62
   F16C33/64
   F16C33/66 Z
   F16C19/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-541011(P2015-541011)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月30日
(86)【国際出願番号】DE2013200213
(87)【国際公開番号】WO2014071930
(87)【国際公開日】20140515
(31)【優先権主張番号】102012021687.4
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】エクレム アキョル
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ シェーファース
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701BA57
3J701BA63
3J701BA69
3J701BA70
3J701CA14
3J701CA15
3J701DA09
3J701DA11
3J701DA20
3J701EA02
3J701EA03
3J701EA10
3J701FA32
3J701FA44
3J701FA46
3J701XB03
3J701XB26
3J701XE12
(57)【要約】
本発明は、主として内周面(5)若しくは外周面(6)が軸受ころ用の軌道として形成された円筒状のアウタスリーブ(3)若しくはインナスリーブ(4)、並びに軸受ころの軸方向ガイドとして設けられた、前記アウタスリーブ(3)若しくはインナスリーブ(4)の軸方向両端面に一体成形された半径方向内向き若しくは半径方向外向きの2つの縁部(7,8;9,10)から成る、シェル形軸受用の軌道輪(1,2)に関する。本発明に基づきこの軌道輪(1)は、前記両縁部(7,8;9,10)が同一の壁厚さを有しており、且つ前記両縁部(7,8;9,10)は、中空円筒状のシェル素材(13;14)の内周面(11)若しくは外周面(12)の縁部領域に加工成形された2つの溝(15,16;17,18)を介した半径方向縁曲げにより形成されており、前記2つの溝(15,16;17,18)は前記縁曲げ過程後に、前記アウタスリーブ(3)の内周面(5)若しくは前記インナスリーブ(4)の外周面(6)に到る前記縁部(7,8;9,10)の内側(19,20;21,22)の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される2つの空所(23,24;25,26)を形成するという点において優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として内周面(5)若しくは外周面(6)が軸受ころ用の軌道として形成された円筒状のアウタスリーブ(3)若しくはインナスリーブ(4)、並びに軸受ころの軸方向ガイドとして設けられた、前記アウタスリーブ(3)若しくはインナスリーブ(4)の軸方向両端面に一体成形された半径方向内向き若しくは半径方向外向きの2つの縁部(7,8;9,10)から成る、シェル形軸受用の軌道輪(1,2)において、
前記両縁部(7,8;9,10)は同一の壁厚さを有しており、且つ前記両縁部(7,8;9,10)は、中空円筒状のシェル素材(13;14)の内周面(11)若しくは外周面(12)の縁部領域に加工成形された2つの溝(15,16;17,18)を介した半径方向縁曲げにより形成されており、前記2つの溝(15,16;17,18)は前記縁曲げ過程後に、前記アウタスリーブ(3)の内周面(5)若しくは前記インナスリーブ(4)の外周面(6)に到る前記縁部(7,8;9,10)の内側(19,20;21,22)の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される2つの空所(23,24;25,26)を形成することを特徴とする、シェル形軸受用の軌道輪。
【請求項2】
前記両縁部(7,8;9,10)は、同一の長さをも有しており且つその壁厚さは、前記円筒状のアウタスリーブ(3)若しくはインナスリーブ(4)の壁厚さに少なくともほぼ等しい、請求項1記載の軌道輪。
【請求項3】
前記中空円筒状のシェル素材(13;14)は、壁厚さが一様で底部が分離された管又はカートリッジ形の深絞り加工部品の、長さを短縮した1つの環状部分により形成される、請求項1記載の軌道輪。
【請求項4】
前記シェル素材(13;14)の内周面(11)若しくは外周面(12)の縁部領域に、好適には送り込み旋削により切削式で前記溝(15,16;17,18)が加工成形される、請求項1記載の軌道輪。
【請求項5】
単一の鉢状の深絞り加工部品(27)から形成されており、主として内周面(5′)が軸受ころ用の軌道として形成された円筒状のアウタスリーブ(3′)、並びに軸受ころの軸方向ガイドとして設けられた、前記アウタスリーブ(3′)の軸方向両端面に一体成形された半径方向内向きの2つの縁部(7′,8′)から成る、シェル形軸受用の軌道輪(1′)であって、一方の縁部(7′)は、前記深絞り加工部品(27)の底部の円形中央部分の打ち抜きにより形成されているものにおいて、
前記両縁部(7′,8′)は、同一の壁厚さを有しており、且つ他方の縁部(8′)は、前記深絞り加工部品(27)の内周面(11′)の自由縁部領域に加工成形された溝(16′)を介した半径方向縁曲げにより形成されており、前記溝(16′)は前記縁曲げ過程後に、前記アウタスリーブ(3′)の前記内周面(5′)に到る前記縁部(8′)の内側(20′)の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される1つの空所(24′)を形成することを特徴とする、シェル形軸受用の軌道輪。
【請求項6】
前記両縁部(7′,8′)は、同一の長さを有しており、且つその壁厚さは、前記円筒状のアウタスリーブ(3′)の壁厚さに少なくともほぼ等しくなっている、請求項6記載の軌道輪。
【請求項7】
前記深絞り加工部品(27)の前記内周面(11′)の縁部領域への前記溝(16′)の加工成形は、好適にはバレル加工により非切削式に行われる、請求項1記載の軌道輪。
【請求項8】
前記シェル素材(13;14)若しくは前記深絞り加工部品(27)は、無心焼入れ鋼から、例えば100Cr6,C80又はC45から、又は肌焼き鋼から、例えば16MnCr5,C16又は17Cr13から成っている、請求項1又は5記載の軌道輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念又は独立請求項5の上位概念に記載の軌道輪に関するものであって、特に有利には、ハウジング又は軸に取り付けられるシェル形軸受けにおいて使用することができる。
【0002】
発明の背景
ころがり軸受技術では一般に、シェル形軸受は、最小の半径方向構成高さを有しており且つ高い半径方向負荷容量を有する、特に省スペース型で取り付けやすい軸受けを可能にする、ころ軸受の構成形式であることが知られている。このような、ハウジング内に圧入可能であるか又は軸に圧着可能なシェル形軸受は、円筒ころ軸受を経済的に代替するものとして、自動車製造や機械製造において多様に使用されており、ハウジングに取り付けられるシェル形軸受けとして構成されたものは、例えば独国特許出願公開第19512668号明細書から公知である。この場合、このようなシェル形軸受の軌道輪は、ハウジングに取り付けられるシェル形軸受けとして構成されているのか、又は軸に取り付けられるシェル形軸受けとして構成されているのかに応じて、主として内周面若しくは外周面が軸受ころの軌道として形成された円筒状のアウタスリーブ若しくはインナスリーブ、並びに軸受ころの軸方向ガイドとして設けられた、アウタスリーブ若しくはインナスリーブの軸方向両端面に一体成形された半径方向内向き若しくは半径方向外向きの2つの縁部から成っている。
【0003】
この公知のシェル形軸受の軌道輪の製造も、やはり前掲の独国特許出願公開第19512668号明細書に記載された方法で行われる。まず最初に単段又は多段の深絞り過程により、円形プレス素材から、底部及び周壁から成る鉢形の絞り加工部品を成形する。この鉢形の絞り加工部品は、軌道輪の軸方向幅に縁部の高さを足したものよりも僅かに長く形成されており、その周壁は、底部とは反対の側に減少された壁厚さを有している。次いで第2の方法ステップにおいて、絞り加工部品から底部の中心部を打ち抜くと、固定縁部と呼ばれる第1の縁部が軌道輪に生ぜしめられる。第3の方法ステップにおいて、絞り加工部品の周壁の、減少された壁厚さの領域を切断して、絞り加工部品における不均一な絞り縁部を取り除く。次いで第4の方法ステップにおいて、減少された壁厚さの開始部の縁部を縁曲げすることにより、周壁を半径方向内側に縁曲げし、これにより、縁曲げ縁部と呼ばれる第2の縁部を、小さな空所と共に軌道輪に生ぜしめ、最終的には一体的に成形した縁曲げ縁部を、第5の方法ステップにおいて更に穿孔過程により、固定縁部の直径と整合させる。
【0004】
但し、この方法により製造された軌道輪は不都合にも、その縁部が製作に起因したそれぞれ異なる壁厚さを有しており、その結果、このような軌道輪を備えて形成されたシェル形軸受は常に、その軸受座に向きを合わせて取り付ける必要がある。これは、支持されるべき軸が一般には軸の撓みに適合された成形部を軌道範囲に備えて形成されるので、ころ軸受が逆向きに取り付けられると、ころセットが中心を外れて負荷され、且つころ軸受を損傷させる軸方向ずれの生じる恐れがあるために不可欠である。更に、公知の軌道輪は、固定縁部を備えて形成された軌道輪が一般には全体的に焼き入れされ、且つ縁曲げ縁部側は、ころセットの装着後に閉じることができるように、再度焼なましされて軟化される、という欠点を有している。縁曲げ縁部側を焼なましして軟化させる際には、必然的に軌道範囲部分も再び軟化されるので、この軌道箇所では摩耗の増大が生じ、これによってころ軸受の耐用年数が減少される。このような軌道輪では、これらの軌道輪が縁曲げ縁部にのみ、付加的な潤滑剤リザーバとして利用可能な、容積を限定された小さな空所を有している、ということもやはり不都合であるということが判った。これによりシェル形軸受は、比較的短い間隔で潤滑されねばならないか、又は比較的短い耐用年数を有することになる。上述した前記軌道輪の製造は更に、各軌道輪の比較的多数の所要製造ステップに基づき、比較的高い切断・工具コストが生じる、という欠点を有している。
【0005】
発明の課題
よって本発明の課題は、公知の従来技術の前記欠点から出発して、シェル形軸受のより長い潤滑インターバル若しくはより長い耐用年数を保証し、且つシェル形軸受の向きを合わせて取り付ける必要性を考慮せずに済む、シェル形軸受用の廉価に製造可能な軌道輪を構想することにある。
【0006】
本発明の説明
この課題は、本発明に基づき請求項1の上位概念に記載の軌道輪において、次のように解決される。即ち、両縁部は同一の壁厚さを有しており、且つ両縁部は、中空円筒状のシェル素材の内周面若しくは外周面の縁部領域に加工成形された2つの溝を介した半径方向縁曲げにより形成されており、前記2つの溝は縁曲げ過程後に、アウタスリーブの内周面若しくはインナスリーブの外周面に到る前記縁部の内側の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される2つの空所を形成する。
【0007】
本発明により形成された軌道輪の好適な構成及び改良は、従属請求項2〜4に記載されている。
【0008】
請求項2に記載の、本発明により形成された軌道輪では、両縁部が、同一の長さをも有しており且つその壁厚さは、円筒状のアウタスリーブ若しくはインナスリーブの壁厚さに少なくともほぼ等しい。この場合、円筒状のアウタスリーブ若しくはインナスリーブの壁厚さと、両縁部の壁厚さとの間の僅かな差は、両縁部を縁曲げする際の材料変形によって、且つ/又は軌道輪として形成される、アウタスリーブの内周面若しくはインナスリーブの外周面を、両縁部の内側と共に切削加工することによって生じ得る。
【0009】
請求項3に記載の、本発明により形成された軌道輪の別の特徴では、中空円筒状のシェル素材が、壁厚さが一様で底部が分離された管又はカートリッジ形の深絞り加工部品の、長さを短縮した1つの環状部分により形成される。この場合、複数のシェル素材を分離するために管を使用することは、同一の外径を有するシェル形軸受を大量生産するために最も廉価であるのに対して、異なる外径を有する少ない個数のシェル形軸受を生産するためには、カートリッジ形の深絞り加工部品を使用するほうが、より廉価である、ということが判った。
【0010】
請求項4に記載の、本発明により形成されたシェル形軸受は更に、シェル素材の内周面若しくは外周面の縁部領域に、好適には送り込み旋削により切削式で溝が加工成形される、という点において優れている。択一的に、前記溝をバレル加工等によって非切削式に加工成形することも可能であるが、送り込み旋削のほうが、より廉価であるということが判った。それというのも、バレル加工機に比べて調達が廉価な、単純な1軸旋削機を用いて、シェル素材に溝を施すことができるからである。更に、送り込み旋削によって、溝の幅を、軸受ころ用の軌道が、同一寸法を有する中実のころ軸受におけるよりも大きくなるように仕上げることができ、その結果、軸受ころを支持する長さが増大して、シェル形軸受の負荷容量を向上させている。
【0011】
公知の形式で単一の鉢状の深絞り加工部品から形成されており、且つ一方の縁部は、深絞り加工部品の底部の円形中央部分の打ち抜きにより形成されている、独立請求項5の上位概念に記載の軌道輪では、本発明の前記課題が同様に、両縁部がやはり同一の壁厚さを有しており、且つ他方の縁部だけが、深絞り加工部品の内周面の自由縁部領域に加工成形された溝を介した半径方向縁曲げにより形成されており、前記溝は縁曲げ過程後に、アウタスリーブの内周面に到る前記縁部の内側の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される1つの空所を形成することによって解決される。
【0012】
また、本発明により形成された軌道輪の前記構成では、請求項6によれば、両縁部が同一の長さをも有しており、且つその壁厚さは、円筒状のアウタスリーブの壁厚さに少なくともほぼ等しくなっている。この場合、請求項7によれば、深絞り加工部品の内周面の縁部領域への溝の加工成形は、好適にはバレル加工により非切削式に行われるが、送り込み旋削により切削式に行われてもよい。
【0013】
最後に請求項8によれば、本発明により形成された軌道輪の上述した2つの構成に共通の特徴として更に、シェル素材若しくは深絞り加工部品は、無心焼入れ鋼から、例えば100Cr6,C80又はC45から、又は肌焼き鋼から、例えば16MnCr5,C16又は17Cr13から成っている。これらの材料は、良好な変形加工性若しくは引張り成形するための特別な適正という点において優れており、且つその良好な反転特性若しくは巻込み特性に基づき、シェル形軸受に特に適している。
【0014】
まとめると、シェル形軸受用の、本発明により形成された軌道輪は、従来技術から公知の軌道輪に比べると、上述した3つの構成全てにおいて、同一の縁部厚さを有する2つの縁部を有しているので、この軌道輪を備えて形成されたシェル形軸受は、最早向きを合わせて取り付ける必要がない、という利点を有している。アウタスリーブの内周面若しくはインナスリーブの外周面に到る、縁曲げされた縁部の内側の移行部に、1つ又は2つの空所が配置されることにより、このような軌道輪を備えて形成されたシェル形軸受は更に、従来のシェル形軸受よりも大きな潤滑剤リザーバを有することになるので、シェル形軸受の潤滑インターバル及び/又は耐用年数が、著しく延ばされる。この拡大された潤滑剤リザーバは更に付加的に、軌道輪において空所の基礎を成している溝が、それぞれ異なる軸方向幅で形成されることにより、その容積若しくは半径方向の広がりが可変に形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ハウジングに取り付けられるシェル形軸受の、本発明により形成された軌道輪の縁部を縁曲げする前の状態で示す断面図である。
図2図1に示した、本発明により形成された軌道輪の縁部を縁曲げした状態で示す断面図である。
図3】軸に取り付けられるシェル形軸受の、本発明により形成された軌道輪の縁部を縁曲げする前の状態で示す断面図である。
図4図3に示した、本発明により形成された軌道輪の縁部を縁曲げした状態で示す断面図である。
図5】ハウジングに取り付けられるシェル形軸受の、深絞り加工部品から製造された本発明による軌道輪の縁部を縁曲げする前の状態で示す断面図である。
図6図5に示した、本発明により形成された軌道輪の縁部を縁曲げした状態で示す断面図である。
【0016】
以下に、シェル形軸受用の、本発明により形成された軌道輪の異なる複数の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【0017】
図2及び図4にはそれぞれ、軌道輪1,2が一般にハウジング又は軸に取り付けられるシェル形軸受に使用される様子が明確に、軌道輪1,2の第1及び第2の実施形態として示されている。これらの軌道輪1,2は公知の形式で、それぞれその内周面5若しくは外周面6が軸受ころ(図示せず)用の軌道として形成された、円筒状のアウタスリーブ3若しくはインナスリーブ4、並びに軸受ころ(図示せず)の軸方向ガイドとして設けられた、アウタスリーブ3若しくはインナスリーブ4の軸方向端面に一体成形された、半径方向内向き若しくは半径方向外向きの2つの縁部若しくはつば7,8;9,10から成っている。
【0018】
更に図2及び図4からは、軌道輪1,2の両縁部7,8;9,10が、従来の軌道輪とは異なり、同一の壁厚さを有していると共に、付加的に同一の長さをも有しており、両縁部7,8;9,10の壁厚さは、円筒状のアウタスリーブ3若しくはインナスリーブ4の壁厚さに少なくともほぼ等しい、ということが判る。図1及び図3を一緒に見ると更に、両縁部7,8;9,10は、中空円筒状のシェル素材13;14の内周面11若しくは外周面12の縁部領域に加工成形された2つの溝15,16;17,18を介した半径方向の縁曲げによって形成されていることがはっきりと認められ、前記溝15,16;17,18は縁曲げ過程の後に、アウタスリーブ3の内周面5若しくはインナスリーブ4の外周面6に到る縁部7,8;9,10の内側19,20;21,22の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される2つの空所23,24;25,26を形成する。この場合、中空円筒状のシェル素材13,14は、1つの管の長さを短縮した環状部分として形成されており、この環状部分の縁部領域において、溝15,16;17,18が、内周面11又は外周面12のいずれかに、送り込み旋削によって加工成形されている。
【0019】
図6には更に、ハウジングに取り付けられるシェル形軸受けのための軌道輪1′の第3の実施形態が示されており、この軌道輪1′は、図5に示した単一の鉢形の深絞り加工部品27から製造されていて、主としてやはり、内周面5′が軸受ころ用の軌道として形成された円筒状のアウタスリーブ3′、並びにアウタスリーブ3′の軸方向両端面に一体成形された、軸受ころの軸方向ガイドとして設けられた半径方向内向きの2つの縁部7′,8′から成っており、この場合、一方の縁部7′は、深絞り加工部品27の底部の円形の中心部分の打ち抜きにより形成されている。この実施形態もやはり、両縁部7′,8′が同一の壁厚さを有しているという点において優れているが、但し第1及び第2の実施形態とは、他方の縁部8′のみが、深絞り加工部品27の内周面11′の自由縁部領域に加工成形された溝16′を介した半径方向の縁曲げにより形成されている、という点で相違しており、前記溝16′は縁曲げ過程の後に、アウタスリーブ3′の内周面5′に到る縁部8′の内側20′の移行部に配置され且つ容積可変の潤滑剤リザーバとして形成される空所24′を形成する。この軌道輪1′の実施形態においても、両縁部7′,8′は同一の長さを有しており、その壁厚さは、円筒状のアウタスリーブ3′の壁厚さに少なくともほぼ等しく、且つ深絞り加工部品27の内周面11′の縁部領域には、送り込み旋削により溝16′が加工成形される。
【符号の説明】
【0020】
1 ハウジングに取り付けられる軌道輪、 1′ 深絞り加工部品から製造される軌道輪、 2 軸に取り付けられる軌道輪、 3 1のアウタスリーブ、 3′ 1′のアウタスリーブ、 4 2のインナスリーブ、 5 1の内周面、 5′ 1′の内周面、 6 2の外周面、 7 1の左側の縁部、 7′ 1′の左側の縁部、 8 1の右側の縁部、 8′の右側の縁部、 9 2の左側の縁部、 10 2の右側の縁部、 11 13の内周面、 11′ 27の内周面、 12 14の外周面、 13 1のシェル素材、 14 2のシェル素材、 15 11の左側の溝、 16 11の右側の溝、 16′ 11′の溝、 17 12の左側の溝、 18 12の右側の溝、 19 7の内側、 20 8の内側、 20′ 8′の内側、 21 9の内側、 22 10の内側、 23 19と5の間の空所、 24 20と5の間の空所、 24′ 20′と5′の間の空所、 25 21と6の間の空所、 26 22と6の間の空所、 27 深絞り加工部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】