特表2015-534096(P2015-534096A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-534096散乱性埋込防眩層を有するディスプレイ素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-534096(P2015-534096A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】散乱性埋込防眩層を有するディスプレイ素子
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20151030BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20151030BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20151030BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20151030BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20151030BHJP
【FI】
   G09F9/00 313
   G02B5/02 B
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   G02F1/1335
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-527485(P2015-527485)
(86)(22)【出願日】2013年8月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】US2013053737
(87)【国際公開番号】WO2014028267
(87)【国際公開日】20140220
(31)【優先権主張番号】61/684,226
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ゴリア,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ハート,シャンドン ディー
(72)【発明者】
【氏名】コシク−ウィリアムズ,エレン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ククセンコフ,ドミトリ ウラディスラヴォヴィッチ
【テーマコード(参考)】
2H042
2H191
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA09
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA20
2H191FA34X
2H191FA40X
2H191FA42X
2H191FA45X
2H191FA46X
2H191FB02
2H191FB13
2H191FC02
2H191FC13
2H191FC26
2H191FC36
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107DD12
3K107DD16
3K107EE26
3K107EE27
3K107EE28
3K107EE31
3K107FF06
3K107FF08
3K107FF15
5G435AA01
5G435BB04
5G435BB05
5G435BB12
5G435DD12
5G435FF05
5G435HH03
5G435HH04
5G435HH20
(57)【要約】
例えば電子装置上のディスプレイのようなディスプレイを視るためのディスプレイ素子(100)。ディスプレイ素子(100)はディスプレイ素子の前面(110)と背面(140)の間に配置された透明基板(130)及び散乱性防眩層(120)を有し、散乱性防眩層(120)は複数の散乱素子を含む。散乱性防眩素子(120)は低反射率を有し、ディスプレイ素子内の界面で反射される光に対する防眩効果を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ素子において、前記ディスプレイ素子が、
a.防眩面、反射防止面またはこれらの組合せを有する前面、
b.背面、
c.前記前面と前記背面の間に配置された散乱性防眩層であって、透明であり、それぞれが50μmより小さい平均横方向形状寸法を有する複数の散乱素子を有する散乱性防眩層、
及び
d.前記前面と前記背面の間に配置された透明基板であって、プラスチックまたはガラスを含む透明基板、
を有することを特徴とするディスプレイ素子。
【請求項2】
前記散乱性防眩層が回折格子及び多角柱構造の一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ素子。
【請求項3】
前記散乱性防眩層が、前記前面と前記透明基板の間及び前記透明基板と前記背面の間の一方に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスプレイ素子。
【請求項4】
前記散乱性防眩層が2%より小さい総合反射率を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【請求項5】
前記散乱性防眩層が粗化面を有し、前記粗化面が50nmより大きいRMS粗さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【請求項6】
前記散乱性防眩層を透過する光の2%未満が、入射角から5°より大きい角度で散乱されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【請求項7】
前記ディスプレイ素子が5%より小さい透過ヘイズ及び1%より小さい反射ヘイズを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【請求項8】
前記透明基板と前記前面の間に配された偏光板フィルタをさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【請求項9】
前記透明基板及び前記防眩層の少なくとも一方がアルカリアルミノケイ酸ガラスを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【請求項10】
前記散乱性防眩層が0.1mmより薄い厚さを有し、前記散乱性防眩層が0.1から2mmの範囲の距離で前記背面から隔てられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のディスプレイ素子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2012年8月17日に出願された米国仮特許出願第61/684226号の米国特許法第119条の下の優先権の恩典を主張する。本明細書は上記出願の明細書の内容に依存し、上記出願の明細書の内容はその全体が本明細書に参照として含められる。
【技術分野】
【0002】
本開示は視るためのディスプレイウインドウまたは素子に関する。さらに詳しくは、本開示は防眩特性を有するガラスディスプレイ素子に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に「眩光」と称される、周囲光の反射は民生用電子装置におけるディスプレイに対して問題となる。そのような用途において、眩光はディスプレイ表示の視コントラスト及び易読性を低下させる。
【0004】
一般に空気と接触している粗表面の形態にある防眩(AG)処理は、それだけで、または反射率が減じられているコーティングの形態にある反射防止(AR)処理と組み合わされていて、プラスチックカバーを有するディスプレイにおいて普通である。しかし、そのような装置における強靱で耐損傷性のガラスの使用が益々広がっているため、AG層及び/またはAR層の包含は益々問題になってきている。AG特性を達成するに必要な程度の粗さをもつガラス表面を提供することはさらに困難であり、反射防止コーティングまたは反射防止膜だけでは眩光は必ずしも低減されない。理由の1つは、ガラスカバー装置における反射がカバーガラスの外表面によるだけでなく、液晶層の表面、透明導電体、偏光板、カラーフィルタ、等のような、ディスプレイの「スタック」内の他の界面によっても生じることである。
【0005】
4〜15%の総合反射率(すなわち、拡散反射率と鏡面反射率)を生じ得る内部反射の全てを除去することは困難であろう。ディスプレイには複数の層が存在するが、カバーガラスの前面でしか作用せず、その反射率を、例えば4%から1%未満しか、低減できなければ、ユーザにとっての利益は部分的でしかない。AGは、例えば、ガラスにある表面粗さパターンをエッチングでつくり込んで、それをマグネトロンスパッタリングによって単層または複層のAR層で一様に被覆することにより、前面上でARと組み合わせることができる。そのような処理は反射ではうまくはたらくが、AG散乱がディスプレイの鮮明度も劣化させるほど大きくない限り、一般に、下側表面によって反射された透過光に対してはそれほど有効ではないであろう。下側表面で反射された像を消し去るに十分に透過光を散乱させるように、粗構造の平均横寸法が比較的大きくつくられれば、そのような構造はかなりのレベルの「輝光」(隣接画像ピクセル間のクロストーク)も生じさせるであろう。他方で、粗構造の平均横寸法が輝光を最小限に抑えるに十分に小さければ、生じる散乱は大きな角度範囲にわたり、周囲光の下でディスプレイのコントラスト比を低下させる、「ヘイズ」を発生させるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば、電子装置内または電子装置上での使用のような、ディスプレイ表示を視るためのディスプレイ素子を提供することにより、上記及びその他の要求を満たす。ディスプレイ素子は透明基板及び、ディスプレイ素子の前面と背面の間に配された、複数の散乱素子を含む散乱性防眩層を有する。散乱性防眩層は低反射率を有し、ディスプレイ素子内の界面によって反射される光に対する防眩効果を提供する。
【0007】
したがって、本開示の一態様は、
前面、
背面、
前面と背面の間に配置された散乱性防眩層であって、透明であり、複数の散乱素子を含む散乱性防眩層、
及び
前面と背面の間に配置された透明基板、
を有するディスプレイ素子を提供することである。
【0008】
別の態様は、ディスプレイ素子のための散乱性埋込防眩層を提供することである。散乱性埋込防眩層は透明であり、ディスプレイ素子の前面と背面の間に配置することができ、約50μmより小さい平均横寸法を有する、複数の散乱素子を含む。散乱性埋込防眩層は約2%より小さい総合反射率を有する。散乱性埋込防眩層を透過する光の5%未満が、透過光の入射角から約5°より大きい角度で散乱される。
【0009】
本開示のまた別の態様は、
防眩面、反射防止面またはこれらの組合せを有する前面、
背面、
前面と背面の間に配置された散乱性防眩層、及び
前面と背面の間に配置された透明基板、
を有するディスプレイ素子を提供することである。散乱層は透明であり、約50μmより小さい平均横寸法を有する、複数の散乱素子を含む。散乱性埋込防眩層は約2%より小さい総合反射率を有し、散乱性埋込防眩層を透過する光の5%未満が透過光の入射角から約5°より大きい角度で散乱される。
【0010】
上記及びその他の態様、利点及び特徴は、以下の詳細な説明、添付図面及び添付される特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はディスプレイ素子の簡略な断面図である。
図2a図2aはマトリックス材料内に埋め込まれた粗化面層または波打面層を含む散乱性防眩層の簡略な断面図である。
図2b図2bはマトリックス材料内に埋め込まれた複数の粒子を含む散乱性防眩層の簡略な断面図である。
図2c図2cは、マトリックス材料内に埋め込まれた複数の粒子を含み、それぞれの粒子がその厚さにかけて屈折率勾配を有する、散乱性防眩層の簡略な断面図である。
図3図3は、ディスプレイ素子の前面上のシミュレートされた粗さのRMS深さに対する、ディスプレイ素子の前面で反射された光、並びに前面及び平滑な背面の両者で反射された光についての、鏡面反射のプロットである。
図4図4は様々な勾配厚さに対する空気−固体間屈折率勾配界面における反射率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、同様の参照数字は、図面に示されるいくつかの図を通して、同様であるかまたは対応する要素を指す。別途に指定されない限り、「上」、「下」、「外向き」、「内向き」、等のような述語は便宜語であり、限定語として解されるべきではないことも了解される。さらに、ある群が要素及びそれらの組合せの群の少なくとも1つを含むとして述べられる場合は必ず、その群がいかなる数の挙げられた要素も、個々にまたは相互の組合せで、含み得るか、それらから基本的になり得るか、またはそれらからなり得ることが了解される。同様に、ある群が要素及びそれらの組合せの群の少なくとも1つからなるとして述べられる場合は必ず、その群がいかなる数の挙げられた要素からも、個々にまたは相互の組合せで、なり得ることが了解される。別途に指定されない限り、値の範囲は、挙げられた場合、その範囲の上限及び下限のいずれも、また上限と下限の間のいかなる範囲も、含む。本明細書に用いられるように、単数形の名詞は、別途に指定されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書に開示される様々な特徴が、いかなる組合せでも全ての組合せでも、用いられ得ることも了解される。
【0013】
本明細書に用いられるように、術語「ガラス」はガラス及びガラス−セラミックのいずれも含む。術語「ガラス品」は、それらの広い意味において、全てまたは一部がガラス及び/またはガラス−セラミックでつくられている、いかなる物体も含めるために用いられる。
【0014】
述語「実質的に」及び「約」は、いかなる量的比較、値、測定値またはその他の表現に帰因され得る本質的な不確定さの度合いを表すために、本明細書で用いられ得ることに注意されたい。これらの述語は、量的表現が当該主題の基本機能に変化を生じさせずに言及された基準から変わり得る度合いを表すためにも、本明細書で用いられ得る。
【0015】
術語「RMS粗さ」は、評価長さまたは領域内でとられるかまたは測定され、平均線形面から測定される、高さ測定値偏差の二乗平均平方根を指す。
【0016】
全般的に図面を、及び特に図1を参照すれば、図が特定の実施形態を説明する目的のためであり、本開示及び本開示に添付される特許請求の範囲を限定することは目的とされていないことが了解されるであろう。図面は必ずしも比例尺で描かれておらず、図面のいくつかの特徴及びいくつかの図は、明解さ及び簡潔さのため、スケールが誇張されるかまたは簡略に示されることがあり得る。
【0017】
眩光、すなわち周囲光の反射は、視コントラスト及び易読性を低下させるため、ディスプレイをもつ民生用電子装置に対して常に問題であったし、問題であり続けている。一般に空気に触れる粗表面の形態の防眩(AG)処理は、それだけで、または反射率が減じられたコーティングの形態の反射防止(AR)処理との組合せで、プラスチックカバーまたは表示ウインドウを有するディスプレイにおいて一般的である。最近、ガラス−特に化学的強化ガラス−がそのような装置、特に携帯型装置について普通に選ばれるようになっている。しかし、これらの携帯型装置の大半はAG処理またはAR処理が施されずに提供されている。化学的強化ガラスに表面粗さをつくり込むことは容易ではなく、被覆散乱層はガラスの耐スクラッチ性及び/または強度を低下させ得る。単層または多層の反射防止処理は、マグネトロンスパッタリングまたはゾル−ゲル法を用いてガラス表面に施すことが比較的容易である。しかし、ARコーティングだけでは必ずしも眩光の問題を排除しない。この理由の1つは、ガラスカバー装置で見られる反射が、カバーガラスの一方または両方の表面だけでなく、ディスプレイスタック及び接触センサ層内の他の界面によっても生じることである。そのような層には、液晶層、ITOのような透明導電体、偏光板、カラーフィルタ、等の表面がある。これらの反射の全ての和は。合計で4〜15%の大きさになり得る。カバーガラスの表面だけではたらき、例えば4%から1%未満に反射率を減じても、ユーザにとっては部分的な利益しか得られない。カバーガラスの背後の層からの(すなわち、ディスプレイまたは接触センサ構造内の埋込層における)反射の排除が困難であるかまたは費用がかかる場合には、反射物体像の形状を消し去り、よってディスプレイの易読性を向上させるため、比較的小角度散乱素子をディスプレイ素子に加えることができる。
【0018】
AGは前面上で、例えばある表面粗さパターンをガラスにエッチングでつくり込んで、それを単AR層または複AR層で一様に被覆することで、ARと組み合わせることができる。そのような処理は、反射では非常にうまくはたらくが、一般に透過光に対してはそれほど有効ではないであろうし、ディスプレイから発せられる画像の視認性を歪め得る。粗さ構造の平均横寸法が比較的大きければかなりのレベルの「輝光」(隣接画像ピクセル間のクロストーク)が生じるであろう。しかし、粗さ構造の平均横寸法が輝光を排除するに十分に小さければ、生じる散乱が広い角度範囲にわたり、周囲光の下でディスプレイのコントラスト比を低下させる「ヘイズ」を発生させるであろう(例えば、そのような場合、黒が灰色に見えるであろう)。
【0019】
比較的低い反射率及び反射性散乱を有するディスプレイ素子が本明細書に説明される。ディスプレイ素子は、ディスプレイ素子内またはディスプレイ素子の前面の背後に配置された「スタック」内の界面によって反射された光に対する防眩効果を生じさせるに十分に強い透過における小角度散乱を提供する。ディスプレイ素子は前面及び背面を有する。光は背面にまたは背面の背後に配置されたディスプレイからディスプレイ素子を透過し、前面を通ってディスプレイ素子を出る。ディスプレイ素子は前面と背面の間に配置された「埋込」または表面下散乱性防眩層及び透明基板も有する。
【0020】
本明細書に説明されるディスプレイ素子100の一実施形態の断面図が図1に示される。(本明細書では単に「散乱層」とも称される)光散乱性埋込防眩層120が、前面110の背後または下の少なくとも約0.01μmの深さに配置されるかまたは「埋め込まれる」。透明基板130も前面110の下または背後に配置される。いくつかの実施形態において、散乱性防眩層120は前面110と透明基板130の間に配置される。図1に示されるように、散乱性防眩層120は、いくつかの実施形態において、前面110の直ぐ後に、または前面110に隣接して、透明基板130の前に配置される。別の実施形態(図示せず)において、散乱性防眩層120は透明基板130の背後で背面140の前に配置することができる。外部周囲光150はディスプレイ素子100内の様々な層によって散乱または反射される。いくつかの実施形態において、ディスプレイ素子100を透過する光の約5%未満が入射角から5°より大きい角度で散乱される。いくつかの実施形態において、ディスプレイ素子100は約3mmまでの厚さを有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ素子100は、背面140上に配置された、エレクトロニクス層、トランジスタ、金属層、酸化インジウムスズ(ITO)層、画像形成層、発光層、接触センサ層、空隙層、等を含むことができるがこれらには限定されない、ディスプレイ層145をさらに有することができる。ディスプレイ層145は、特定の実施形態において、接触センサ層、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、またはこれらの組合せの少なくとも1つを含むことができる。ディスプレイを含む画像形成層は、例えば、LCDディスプレイにおけるカラーフィルタ面またはOLEDディスプレイにおける発光層を含むことができる。いくつかの実施形態において散乱性埋込防眩層120と画像形成層は約2mm未満の距離で隔てられる。ディスプレイ145をディスプレイ素子100の残余領域に接合するため、ディスプレイ145と透明基板130または散乱性防眩層120の間に配置される、接着剤層142を用いることができる。いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層は、約0.1mmから約2mmの範囲にある距離で背面140から隔てられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、前面110は、技術上既知の、防眩層または防眩面、反射防眩層または反射防止面、あるいは防眩層、防眩膜及び/または防眩面と反射防止層、反射防止膜及び/または反射防止面のいずれかの組合せの少なくとも1つを有するかまたは含むことができる。前面110が防眩層または−さらに、ディスプレイ素子の前面の実効摩擦を減じるかまたはつくり込んで、タッチスクリーンの効用を高めることができる−粗面を有する、これらの実施形態において、散乱性埋込防眩層120は防眩機能と等しいかまたはそれより高い防輝機能を提供することができる。そのような場合、散乱性埋込防眩層を「散乱性埋込防輝層」と等価であると説明することが適切になり得る。散乱性埋込防輝層は透明であり、約50μmより小さい平均横寸法を有する複数の散乱素子を含み、ディスプレイ素子100の前面110と背面140の間に配置することができる。埋込層の高空間周波数散乱成分は、これがなければ前面110に付与された表面粗さによって生じる、輝光を減じることができる。粗い前面110は防眩及び/または、減じられているかまたはつくり込まれている実効摩擦を、タッチまたはスタイラスベースの入力に与えることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層120は約0.1mmより薄い厚さを有する。散乱性埋込防眩層120は、ディスプレイ素子100の前外表面110の下に、(エレクトロニクス層、トランジスタ、金属層、ITO層、画像形成層、発光層、接触センサ層、空隙層、等のような)ディスプレイ内のいくつかの反射性内部界面の上にまたは内部界面と一致して配置される。さらに、ディスプレイ素子100の外表面は反射低減処理または眩光低減勝利を含むことができる。
【0024】
上述したように、散乱性埋込防眩層120は、いくつかの実施形態において、散乱層がピクセル構成ディスプレイにかけて配置されたときにおこり得る「ディスプレイ輝光」を低減するかまたは最小限に抑えるように設計される。ディスプレイ輝光は、人間の眼に見える、ディスプレイピクセル強度の歪である。ディスプレイ輝光は、人間の眼を模擬する測定システムを用いてそれぞれのピクセルから検出される総パワーの標準偏差として、測定することができる。ジャック・ゴリア(Jacques Gollier)等の、2011年2月28日に出願された、名称を「ディスプレイ輝光が小さい防眩表面を有するガラス(Glass Having Antiglare Surface with Low Display Sparkle)」とする、米国仮特許出願第61/447242号の優先権を主張する、2012年2月27日に出願された、同じ名称の米国特許出願第13/405787号は、化学エッチングまたは機械加工(例えば、研削、研磨、等)プロセス、等を用いることでつくられた粗化防眩面を教示している。得られる防眩面は、約80μmから約640μmの(時に表面波長と称される)横方向空間周期の範囲内で測定される約300nmまでの第1のRMS粗さ,R長、約20μmより短い横方向空間周期で測定される第2のRMS表面粗さ,R短、及び表面波長フィルタリング無しで測定される、約60nmから約600nmまでの、第3のRMS粗さ,R総を有し、比(R長/R短)は約3.9より小さい。ジャック・ゴリア等の、2011年2月28日に出願された、名称を「輝光を決定するための装置及び方法(Apparatus and Method for Determining Sparkle)」とする、米国仮特許出願第61/447285号の優先権を主張する、2012年1月20日に出願された、同じ名称の米国特許出願第13/354827号は、輝光の尺度である、ピクセルパワー偏差(PPD)を測定するための方法及び装置を教示している。この方法は、
ピクセル構成光源と組み合わされた透明サンプルの画像であって、複数の光源ピクセルを含む画像を取り込む工程、
画像内の隣接する光源ピクセル間の境界を決定する工程、
画像内の複数の光源ピクセルのそれぞれについて積分総パワーを得るため、境界内を積分する工程、及び
ピクセル毎の積分総パワーの分散を計算する工程、
を含み、この分散がピクセルパワー偏差である。ジャック・ゴリア等の、2011年5月27日に出願された、名称を「防眩面を有する透明ガラス基板(Transparent Glass Substrate Having Antiglare Surface)」とする、米国仮特許出願第61/490678号の優先権を主張する、2012年5月8日に出願された、同じ名称の米国特許出願第13/466390号は、輝光及び他の形態の透過画像劣化を最小限に抑える防眩面を有する透明ガラス基板を教示し、反射像の有益な眩光ぼけ防止を維持しながら透過画像への負の効果を最小限に抑える、様々な防眩面パラメータとディスプレイの組合せを説明している。防眩面は少なくとも約80nmのRMS振幅を有する粗化領域を有し、粗化されていないかまたは平坦な領域も有することができる。粗化されている防眩面(粗化領域)の画分は少なくとも約0.9であり、粗化されていない表面の画分は約0.10より小さい。防眩面は約7%より小さいピクセルパワー偏差を有する。上述した米国仮特許出願及び米国特許出願の明細書の内容はそれぞれの全体が本明細書に参照として含められる。
【0025】
一実施形態において、散乱性埋込防眩層120は輝光を低減及び/または最小化し、非常に小さい反射散乱を有する(か、または全く有していない)。いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層は約2%より小さい総合反射率(すなわち拡散反射率及び鏡面反射率)を有する。同時に、散乱性防眩層120は有意な前方散乱特性を維持し、前方散乱は、概ねまたは完全に狭い、元の光の入力角からの偏角内に入る。
【0026】
後方反射または反射性散乱が少ないかまたは無く、前方散乱角が本質的に狭い、散乱性埋込防眩層を組み込むことにより、いくつかの望ましい属性を同時に達成することができる。例えば、表面下ディスプレイ層(例えば、ITO層、エレクトロニクス層、等)145からの内部反射が、散乱性埋込防眩層120の前方散乱特性により、見え難くなるか、またはぼやける。外部周囲光150は(1つまたは複数の)表面下ディスプレイ層145から反射される前に散乱性埋込防眩層120を通過し、表面下ディスプレイ層145から反射された後に散乱性埋込防眩層120を再び通過する。そのような2回の前方散乱事象は、視る人によって見られるこれらの表面下ディスプレイ層145からの反射像を拡散させるかまたは「ぼやけさせる」ようにはたらく。
【0027】
散乱性埋込防眩層120からの反射性後方散乱がないことは2つの目的に役立つ。第1に、ディスプレイの総合知覚反射率が散乱性埋込防眩層によって高くなることはない。第2に、散乱性埋込素子または構造は、外部周囲光反射によるディスプレイ表示の「霞がかった」または「消し去られた」見え方を生じさせずに、小さくつくることができる−平均横構造寸法は、ディスプレイピクセル寸法に依存して、いくつかの実施形態においては約50μmより小さく、別の実施形態においては、約15μmより小さい。反射ヘイズは外部周囲光の下で実効ディスプレイ表示コントラストを低下させることが示されている。本明細書に説明されるディスプレイ素子100は、散乱性埋込防眩層100におけるかなりの強さの前方散乱を維持しながら、反射ヘイズを最小限に抑えるかまたは排除する。表面下ディスプレイ層145,142から反射される光におけるヘイズ(広角散乱)の発生を有効に回避するためには、この前方散乱が、概ねまたは完全に、狭い散乱角内に入るべきである。そのような挟角散乱は、周囲光内でのディスプレイ表示の視ヘイズの度合いまたはコントラストにほとんどまたは全く影響しない。本明細書に用いられるように、「横」構造寸法または間隔は、x−y平面における、すなわち、ディスプレイ145内のピクセル平面に平行でディスプレイ145からディスプレイ素子100を通って視る人に向かう光透過方向に直交する、そのようなパラメータの測定値を指す。したがって、横構造寸法は、一般にz方向に、すなわち、ディスプレイ145からディスプレイ素子100を通って視る人に向かう光透過方向に平行に、測定される「粗さ」と区別される。
【0028】
いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層はいかなる微視的固体−空気界面も有していない。そのような実施形態において、散乱は一般に屈折率変化が小さいかまたは屈折率が漸変する界面で生じる。これらの小さい屈折率変化により、防眩構造の設計に新しい自由度が生じ、したがって、外部界面(例えば、少なくとも1つの微視的固体−空気界面)では達成できない特性の組合せが可能になる。
【0029】
いくつかの実施形態において、図2aに簡略に示されるように、散乱性埋込防眩層120内の複数の散乱素子は、屈折率がnのマトリクス材料123内に埋め込まれた、表面が粗化されているかまたは波打っている層122の構造を有する。表面が粗化されているかまたは波打っている層122の構造は、約10μmから約20μmの範囲にある周期性または横方向空間周波数、振幅及び屈折率nを有する。図2aに示される実施形態においては、n<nである。図2bに簡略に示される、別の実施形態において、散乱性埋込防眩層内の複数の散乱素子は、選ばれた粒径、間隔及び屈折率を有する複数の粒子124を含む。複数の粒子124は、いくつかの実施形態において、複数の粒子124の屈折率に等しくするかまたは複数の粒子124の屈折率とは異ならせることができる屈折率を有する、マトリクス材料125内に埋め込まれる。あるいは、複数の粒子124は基板表面上に配するかまたは基板表面に埋め込むことができる(図示せず)。
【0030】
図2bに示される粒子は球対称であるが、粒子が例えば楕円形のような他の形状をとることができ、散乱素子として用いられ得ることは容易に了解されるであろう。粒子が楕円形であるような実施形態においては、より大きな横方向間隔及びより小さな実効粗さを有する散乱構造をつくるため、粒子の長軸は透明基板130の表面に平行に揃えられるべきである。横方向間隔または形状間隔が粗さより大きい関係により、挟角散乱が促進される。
【0031】
別の実施形態において、散乱素子は回折格子またはその他の多角柱構造を含む。図2cに簡略に示される、また別の実施形態において、散乱素子は、断面にわたる屈折率勾配及びコア屈折率を有する粒子127があらかじめ定められた間隔または距離をおいて、粒子127のコア屈折率と異ならせるかまたはコア屈折率と等しくすることができる屈折率を有するマトリクス材料126内に埋め込まれる。いくつかの実施形態において、散乱性埋込層は、粒子を含んでいてもいなくても差し支えない、屈折率勾配を有する界面及び/または粗表面を有することができる。いくつかの実施形態において、散乱素子は、作製を容易にするためまたは欠陥を隠すため、不規則な構造を有することができる。別の実施形態において、複数の粒子124とマトリクス材料125の間の屈折率関係は逆転させることもできる。
【0032】
ディスプレイ輝光は、上に挙げた参考文献に説明されているように、散乱構造の横寸法に依存する。いくつかの実施形態において、埋込散乱材料/素子の横方向最小寸法が小さいと、外部反射ヘイズを強めずにディスプレイ輝光を低減することが可能になる。外表面上の散乱構造の寸法縮小は一般に反射ヘイズを強め、ディスプレイコントラストを低下させるから、外部反射ヘイズを強めない輝光低減/排除の上記組合せを空気に触れる従来の外部粗表面を用いて達成することは一般に困難である。
【0033】
散乱性埋込防眩層120の前方散乱角は、(1つまたは複数の)表面下ディスプレイ層145から反射される光の像ぼけの、この表面下反射光の過剰な広角散乱を生じさせない、最適な組合せを達成するために、調整することもできる。散乱性埋込防眩層の前方散乱角が広すぎれば、そのような広角散乱はコントラストを低下させる反射ヘイズとして知覚され得る。いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層120における前方散乱は透過光の5%より多くを約±45°角円錐の外側に、いくつかの実施形態においては±20°角円錐の外側に、散乱させるべきではない。また別の実施形態においては、散乱性埋込防眩層120における前方散乱は透過光の5%より多くを±2.5°より大きくはない角円錐の外側に散乱させるべきではなく、これは、散乱性埋込防眩層によってつくられる、約5%より小さい透過ヘイズに対応する。散乱性埋込防眩層120だけの反射ヘイズは一般に透過ヘイズより小さく(例えば、1%より小さく、またはいくつかの実施形態においては0.2%より小さく)なるべきである。いくつかの場合、散乱性埋込防眩層120は、表面下ディスプレイ総142,145からのはっきりした反射ヘイズを回避するため、いずれもが約1%より小さい透過ヘイズ及び反射ヘイズを有することができる。
【0034】
本明細書に説明されるディスプレイ素子においては、散乱性埋込防眩層の優勢横方向空間周波数の大きさを減じると同時に、散乱性埋込防眩層の反射ヘイズ及び透過ヘイズを最小限に抑えることができる。横方向空間周波数の大きさのこの減少−これはディスプレイ輝光を減じるかまたは最小限に抑える−は、いくつかの実施形態において、約50μm未満まで、別の実施形態においては約15μm未満まで、とすることができる。横方向空間周波数のこの減少は、外表面上に空気に接して配置される従来の単一の粗散乱面では達成することが不能な、新しい光学設計自由度を提供する。しかし、ディスプレイの設計及び用途の詳細に依存して、いくつかの実施形態においては、広い角度範囲にわたって表面下の反射性ディスプレイ層から光を拡散させることが望ましいことがあり得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、防眩(AG)層またはコーティングあるいは反射防止(AR)層またはコーティングを、散乱性埋込防眩層120の上の前面110上に配することができる。散乱性埋込防眩層120はいかなる外部ARコーティングよりも下に置くかまたは配することができる。そのような場合、散乱性埋込防眩層120は反射性表面下ディスプレイ層142,145によって生成された反射像をぼかすようにはたらく。従来のAG面によって発生されるディスプレイ輝光を強い反射ヘイズを生じさせずに低減するために、外部散乱粗面(すなわち、従来の「防眩」面または「AG」面)の下に散乱性埋込防眩層120を配置することもできる。同様に、外部防眩面の粗さを小さくすることができ、よって輝光を低減し(図3)、同時にディスプレイ素子100の前面からの外部鏡面反射は抑制したままとすることができよう。同時に、散乱性埋込防眩層120はディスプレイ素子100内からの内部鏡面反射を低減する。これにより、防眩特性(輝光、反射ヘイズ)を単一の空気−固体界面の一般的な挙動から切り離すことが可能になり、よって、従来の空気−固体外部AG面では達成不能である特性の組合せ(低輝光、低ヘイズ、低像鮮明性(DOI)の連立)が可能になる。さらに、散乱性埋込防眩層120は、そのような実施形態において、先に上述したように、防眩機能よりも多めに防輝機能を果たす。
【0036】
外部AR及び/またはAG層またはコーティングと散乱性埋込防眩層120の間の距離は特に限定されない。散乱性埋込防眩層は、いくつかの実施形態において、外部AG及び/またはAR層と前面110の直下に配置することができる。あるいは、散乱性埋込防眩層120は外部AG及び/またはAR層またはコーティングと全面110の下数mmに配置することができる。いくつかの実施形態において、例えば、散乱性埋込防眩層120は、(例えば、透明基板130のような)保護カバーガラスの背面上に、あるいは内部背面140に隣接して、配置され、一方外部AG及び/またはAR層またはコーティングは前面110上に配置される。
【0037】
表面下ディスプレイ層145,142からの光の前方散乱を有効に達成するため、散乱性埋込防眩層120は表面下ディスプレイ層145,142から少なくとも約0.1μm、いくつかの実施形態においては約5mmまで、隔てられるべきである。最大離隔距離は特に限定されず、散乱性埋込防眩層120に設計で仕込められた前方散乱の大きさに依存する。いくつかの実施形態において、表面下ディスプレイ層145,142の1つ以上は少なくとも1つの粗化面を有するか、そうではなくとも散乱素子を含み、よって散乱性埋込防眩層120と同じ機能を強化するかまたは達成する。
【0038】
散乱性埋込防眩層120は、いくつかの実施形態において、散乱素子材料と隣接封入マトリクス材料の間に小さいがゼロではない屈折率差を有する、粒子(図2b)あるいは波打つかまたは粗い表面(図2a)のような、ただしこれらには限定されない、埋込散乱素子を含むことができる。散乱素子とマトリクス材料の間の屈折率差は小さく、大量の反射性散乱を生じさせない程度である。いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層120は約0.5μmより大きい空気界面または空気ポケットを、そのような界面及びインターフェースは大きな屈折率差を生じさせ、反射性後方散乱を強めるから、含んでいない。
【0039】
複数の散乱素子が封入マトリクスと光学的に接触している粗化面または粗面である場合(例えば図2a)、粗さのRMS深さは、空気との界面に施される「従来の」防眩処理の粗さ深さよりも実質的に大きくなければならないであろう。いくつかの実施形態において、粗化面のRMS粗さは約50nmより大きく、別の実施形態においては200nmより大きい。図3は、粗化された前面だけで反射された光(線1)及び粗化された前面と平滑な背面の両者で反射された光(線3)についてシミュレーションされたガラス板の、鏡面反射対前面粗さのRMS深さのプロットである。図3に見られるように、屈折率nが1.5のガラス板の前面反射をほぼ完全に排除するには、100nmのRMS粗さで十分である。平滑な背面からの反射を十分に「消し去る」には、前面上の同じ粗さが少なくとも200nmのRMS粗さを有していなければならないであろう。(例えば、偏光板と、カバーガラスを接合するために用いられる、接着剤の間の)「埋込」面に対し、所要のRMS粗さはさらに大きくなり、いずれの場合にも、屈折率差の比に比例する。例えば、接着剤がガラス(n=1.5)に屈折率整合されていて、偏光板材料の屈折率がn=1.6であれば、屈折率差が小さい、すなわち、Δn=0.1であるから、接着剤−偏光板界面の屈折率は無視できるであろう(約0.1%でしかない)。接着剤−偏光板界面より下の他の界面からの反射を「消し去る」に必要な粗さのRMS深さは200×0.5/Δn、すなわち、200×0.5/0.1=1000nm、すなわち1μmより大きくなければならないであろう。これは、散乱性埋込防眩層内の屈折率変化が約0.1である場合に有効な前方散乱防眩特性を提供するために散乱性埋込防眩層120内に必要な−波打面または粒子のような−散乱素子前部の寸法スケールに対する概略の下限を与える。
【0040】
散乱性埋込防眩層120内の散乱素子の形状は限定されず、球形または非球形の粒子、回折格子、多角柱、正弦波形、半球形、円錐形、角錐形、立方体系、コーナーキューブ形、等を含むことができる。散乱性埋込防眩層120内の散乱層の許容される界面角及び数は、散乱素子とこれらの素子に隣接するマトリクス材料の間の屈折率差によって制限されるであろう。例えば球のような、界面角が大きい形状は小さい、散乱素子と隣接マトリクスの間の、許容屈折率差を有するであろう。したがって、いくつかの場合には大きな角度をとらない浅い波打ちが好ましいことがあり得る。いくつかの場合、散乱素子は、欠陥をより良く隠すため及び作製の容易さのため、不規則な構造を有することができる。
【0041】
一実施形態において、散乱性埋込防眩層120内の散乱素子は屈折率が異なる材料間の界面を有する。いくつかの実施形態において、そのような材料の屈折率は約1.3から約1.7の範囲にある。散乱性埋込防眩層120は、例えば、散乱素子と隣接マトリクス材料の間の屈折率勾配を利用することができる(図2c)。そのような実施形態においては、散乱性埋込防眩層120内の屈折率の急激な不連続性は少ししか無いかまたは全く無い。これは前方散乱を維持しながら後方散乱を低減するに有効な方法であり、散乱性埋込防眩層120内の屈折界面角への制約を緩和する。いくつかの実施形態において、そのような形面にかけての屈折率変化は約0.4以下であり、別の実施形態においては約0.2以下である。いくつかの実施形態において、屈折率勾配は少なくとも50nmの勾配距離にわたって約0.4の最大屈折率変化を示し、別の実施形態において、屈折率勾配は少なくとも1000nmの勾配距離にわたって約0.2の最大屈折率変化を示す。
【0042】
散乱素子と隣接マトリクス材料の間の界面に屈折率勾配が用いられる場合には、屈折率勾配層の厚さまたは遷移長(すなわち、屈折率がnからnまで漸変する距離)が考慮されなければならない。そのような界面における反射を低減するには、遷移長(t)を、光波長の値Lで表して、一般に少なくとも0.1L以上とすべきである。
【0043】
図4は、空気と固体の間の屈折率差が0.4である場合の、様々な勾配プロファイル及び勾配厚さ(t)についての、空気−固体間勾配屈折率界面における反射率のプロットである。屈折率差Dn=0.4の様々な屈折率勾配プロファイルについて、反射率(対数スケール)が入射角(AOI)の関数として図4にプロットされている。線a,b及びcは、様々な勾配プロファイル形状に対して、勾配厚がt=3L(3×波長)の場合に広い入射角範囲にわたって反射が強く抑制されることを示す。
【0044】
空気はスタック内の材料の1つとして含まれるから、図4は「最悪の場合」の状況を表す。いくつかの実施形態において、散乱性埋込防眩層120は、約0.1より小さく、いくつかの場合には0.02以下の、屈折率差を有するべきである。それにもかかわらず。図4は、最悪の場合の空気−固体界面状況においてさえ、反射を実質的に排除するに必要な遷移長(t)の定量的計算値を与える。図4に見られるように、厚さt=3Lの反射性屈折率勾配は、屈折率差Dn=0.4の空気−固体界面に対してさえ、0°と60°の間の全ての角度において反射を約R=0.0001以下に抑制するに有効である。反射率は一般に屈折率差の二乗,Dnに比例するから、この性能は、本明細書に説明される散乱性埋込防眩層によって想定されるような、Dnが0.1以下のシステムを用いることで劇的に改善されるであろう。界面に屈折率勾配をもつ粒子が埋込散乱素子として用いられれば、粒子の表面における屈折率勾配厚さt=3Lは広い角度範囲にわたって反射を有効に排除するに十分以上であり、したがって散乱素子と隣接マトリクスの間に広い界面角度範囲をもつ不規則または半不規則な形状の散乱素子の使用が可能になるはずである。散乱素子として粒子が用いられれば、粒子表面の屈折率は隣接マトリクスと整合し、屈折率は粒子のコアに向けて漸次態様で変化すべきである。一実施形態において、粒子は5〜20μmの範囲の直径及び勾配厚さt=1.5μm(〜3L)の屈折率勾配を有する。
【0045】
Dn=0.4ではなくDn=0.1の系における大きく低められた反射率により、屈折率勾配厚さ(t)は、勾配事例において、散乱素子と隣接マトリクスの組合せに対してn最大−n最小を表す、Dnの特定のレベルに依存して、3Lより小さくすることができる。例えば、0.5L(〜300nm)の屈折率勾配厚さが、多くの場合に、散乱性埋込防眩層の横方向変化屈折率プロファイルは適切な前方散乱を提供するままで、後方反射を抑制するに十分なはずである。
【0046】
本明細書で上述したような、勾配屈折率散乱素子、粒子及び/または表面を作製する、限定ではない方法を次に説明する。いくつかの実施形態において、波打つかまたは粗化された表面(図2a)あるいは粒子において屈折率勾配を確立するため、個々の散乱素子における原子の拡散を用いることができる。屈折率勾配は透明なガラスまたはポリマーの粒子の表面に、粒子内に拡散する原子が豊富であるか、あるいは粒子内の原子の外方拡散を促進する、媒質(一般には気体または液体)内に粒子を入れることで形成することができる。この拡散は粒子表面において屈折率を改変し、粒子のコアに向かう−原子の拡散速度によって決定される−屈折率勾配を形成する。限定ではない一例において、制御されているかまたはあらかじめ定められた量のAgNOを含む溶融KNO塩浴にアルカリ含有ガラスビーズを入れることができる。Agイオン及びKイオンはガラスビーズ内に拡散してガラス内のNaまたはKを置換し、粒子表面で屈折率を高めることができる。波打ち/粗化面に屈折率勾配を形成するため、同様のイオン交換プロセスを用いることができる。
【0047】
別の実施形態において、粒子、波打/粗化面、等のような散乱素子に、様々な手段によってナノ細孔を導入することができる。例えば、シロキサン、ポリイミド、シルセスキオキサン、ゾル−ゲル材料、等のような、モノマーまたはポリマーを含有する液体懸濁液または溶液を、溶液内に分子ミセルを形成する、例えば、BASF Pluronic(登録商標) P103、P128,F68,等のような、ブロック共重合体界面活性剤を含む溶液内に溶解させることができる。この溶液を粗面に注ぎ込むか、または別の手段で粒子の形にして、乾燥させると、ブロック共重合体のナノスケールドメインで満たされた固体ポリマーマトリクスが後に残る。次いで、制御された加熱または溶剤リンスを用いてブロック共重合体を除去することができ、ナノ細孔をもつ表面が後に残り、ナノ細孔は、細孔径は一般に10nm以下であるから、光を散乱させずに表面の実効屈折率を低める。制御された加熱または溶剤リンスは、ブロック共重合体が粒子または層の表面近傍領域からしか除去されず、よって屈折率勾配を形成するような態様で行うことができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、ガラス及びポリマーの屈折率はレーザまたはUV光への曝露によって改変することができる。そのような方法は基板内に勾配屈折率ディフューザー、構造または回折格子を形成するために用いることができる。この一例は、光ファイバに「ファイバブラッグ格子」を形成するために用いられる手法である。多光子照射法を用いて、ガラスまたはポリマーに複雑な三次元で変化する屈折率プロファイルを形成することもできる。
【0049】
いくつかの実施形態において、表面上に屈折率が相異なる複数の層を順次に被着することで屈折率勾配効果を生じさせることができる。そのような実施形態の1つにおいて、カバーガラスの裏面に配置するための粗化(防眩)面が形成される。輝光を最小限に抑えるため、表面の横方向空間周波数が制御される。すなわち、優勢横方向空間周波数は50μm未満に、いくつかの実施形態では15μm未満にするべきである。層の平均粗さは、埋込鏡面反射を有効に「消し去る」ために、上述したように、約0.5μmから約2μmの範囲とすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、ガラス基板の粗面の上に一連の5〜10nm厚の層が被着される。最初の層(すなわち、表面に隣接するかまたは近い層)はガラスの屈折率(例えば1.51)に非常に近くするべきである。例えば、ガラス上に被着される第1の層は10nm厚として屈折率1.51を有することができ、第2の層は10nm厚として屈折率1.515を有することができ、第3の層は10nm厚として屈折率1.52を有することができ、以下同様である。このシーケンスは、例えば、1.56または1.6の屈折率を有する最終層まで続けることができる。
【0051】
個々の層厚及び1つの層から次の層への屈折率変化の最適化には様々な方法を利用することができる。上述よりも屈折率ステップを小さくするほど、また層を多くするほど、益々高い性能(すなわち、益々小さい反射)が得られるが、コストが増える。層は技術上既知の方法を用いて被着することができる。例えば、TiO-SiO混合物、Nb-SiO混合物、Ta-SiO混合物、GeO-SiO混合物、等の共堆積膜を、電子ビーム蒸着、スパッタリングまたは化学的気相成長(CVD)法を用いて被着することができる。同様に、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、等によって層が順次に被着されるゾル−ゲル法を用いて、多層屈折率変化複合膜を形成することができる。得られる層は透明ガラス基板130の粗面と準同形になるべきである。
【0052】
例えば1.6の終端屈折率を有する、完成勾配屈折率多層構造は、ガラスの被覆粗面に約1.6の整合屈折率をもつ接着剤でガラスの被覆粗面に接合され、被覆粗面をカバーガラスの裏側(すなわち、視る人から遠い側)すなわち背面140(図1)上において、ディスプレイ素子の取付アセンブリの一部として用いられる。カバーガラスは、先に上述したように、個々のAR処理またはAG処理を(あるいは、複合AR+AG処理を)前側(視る人の側)すなわち前面110(図1)上に有することができる。
【0053】
いくつかの実施形態においては、勾配屈折率構造は必要とされない。散乱性埋込防眩層120は、例えば、封入マトリクスで囲まれた粒子または表面で形成することができる(図2b)。散乱素子/粒子間の屈折率の変化は漸次ではなく、急激であり、例えば、屈折率は20nmより短い距離にかけてnからnに変化する。いくつかの実施形態において、この屈折率変化は小さく−例えば、0.3未満に、いくつかの実施形態においては0.1未満に−することができる。
【0054】
散乱性埋込防眩層120をなす粒状表面または波打ち層は、型押し、エッチング、微細複製、スロットコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、インクジェットプリント、表面結晶化、相分離、等のような、ただしこれらには限定されない、技術上既知の手段によって形成することができる。これらの散乱素子は、上述した方法または同様の方法を用いて封入媒体または接着剤層と光学接触させることができる。
【0055】
透明基板はプラスチック基板またはガラス基板とすることができる。プラスチック基板の限定ではない例には、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、等がある。いくつかの実施形態において、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスまたはアルカリアルミノケイ酸ガラスであるか、あるいはホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスまたはアルカリアルミノケイ酸ガラスを含む。いくつかの実施形態において、上述したガラスは、スロットドロー、フュージョンドロー、リドロー、等のような、技術上既知のプロセスによるダウンドローが可能であり、いくつかの実施形態において、少なくとも130キロポアズ(13kPa・秒)の液相粘度を有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、透明ガラス基板は、少なくとも2モル%のAl及び/またはZrOを含み、いくつかの実施形態において、約64モル%〜約68モル%のSiO,約12モル%〜約16モル%のNaO,約8モル%〜約12モル%のAl,0モル%〜約3モル%のB,約2モル%〜約5モル%のKO,約4モル%〜約6モル%のMgO,及び0モル%〜約5モル%のCaOを含有し、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%,NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%,5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%,(NaO+B)−Al≧2モル%,2モル%≦NaO−Al≦6モル%,及び4モル%≦(NaO+KO)−Al≦10モル%である、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。このガラスは、2007年7月27日に出願され、2007年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/930808号の優先権を主張している、アダム・ジェイ・エリスン(Adam J. Ellison)等の、名称を「カバープレート用ダウンドロー可能化学的強化ガラス(Down-Drawable, Chemically Strengthened Glass for Cover Plate)」とする、米国特許第7666511号明細書に説明されている。上記仮特許出願及び特許の明細書の内容はそれぞれの全体が参照として本明細書に含められる。
【0057】
別の実施形態において、透明ガラス基板は、アルミナ及び酸化ホウ素の少なくとも1つ並びに酸化アルカリ金属及び酸化アルカリ土類の少なくとも1つを含み、−15モル%≦(RO+R'O−Al−ZrO)−B≦4モル%であり、RがLi,Na,K,Rb及びCsの1つであって、R'がMg,Ca,Sr及びBaの1つである、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。いくつかの実施形態において、本アルミノケイ酸ガラスは、約62モル%〜約70モル%のSiO,0モル%〜約18モル%のAl,0モル%〜約10モル%のB,0モル%〜約15モル%のLiO,0モル%〜約20モル%のNaO,0モル%〜約18モル%のKO,0モル%〜約17モル%のMgO,0モル%〜約18モル%のCaO,及び0モル%〜約5モル%のZrOを含む。このガラスは、2008年11月25日に出願され、2007年11月29日に出願された米国仮特許出願第61/004677号の優先権を主張している、マシュー・ジェイ・デイネカ(Matthew J. Dejneka)等の、名称を「改善された靱性及び耐スクラッチ性を有するガラス(Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance)」とする、米国特許出願第12/277573号明細書に説明されている。上記仮特許出願及び特許出願の明細書の内容はそれぞれの全体が参照として本明細書に含められる。
【0058】
また別の実施形態において、透明ガラス基板は、約60モル%〜約70モル%のSiO,約6モル%〜約14モル%のAl,0モル%〜約15モル%のB,0モル%〜約15モル%のLiO,0モル%〜約20モル%のNaO,0モル%〜約10モル%のKO,0モル%〜約8モル%のMgO,0モル%〜約10モル%のCaO,0モル%〜約5モル%のZrO,約50ppm未満のAs,及び約50ppm未満のSbを含み、12モル%≦LiO+NaO+KO≦20モル%及び0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。本ガラスは、2009年23月25日に出願され、2008年2月26日に出願された米国仮特許出願第61/067130号の優先権を主張している、シヌー・ゴメス(Sinue Gomez)等の、名称を「ケイ酸ガラスのための清澄剤(Fining Agents for Silicate Glasses)」とする、米国特許出願第12/392577号明細書に説明されている。上記仮特許出願及び特許出願の明細書の内容はそれぞれの全体が参照として本明細書に含められる。
【0059】
別の実施形態において、透明ガラス基板は、SiO及びNaOを含み、ガラスの粘度が35キロポアズ(3.5kPa・秒)になる温度T35kpをガラスが有し、ジルコンが分解してZrO及びSiOになる温度T分解がT35kpより高い、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。いくつかの実施形態において、本アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約61モル%〜約78モル%のSiO,約7モル%〜約15モル%のAl,0モル%〜約12モル%のB,約9モル%〜約21モル%のNaO,0モル%〜約4モル%のKO,0モル%〜約7モル%のMgO,及び0モル%〜約3モル%のCaOを含む。このガラスは、2010年8月10日に出願され、2009年8月29日に出願された米国仮特許出願第61/235762号の優先権を主張している、マシュー・ジェイ・デイネカ等の、名称を「ダウンドローのためのジルコン相溶性ガラス(Zircon Compatible Glasses for Down Draw)」とする、米国特許出願第12/856840号明細書に説明されている。上記仮特許出願及び特許出願の明細書の内容はそれぞれの全体が参照として本明細書に含められる。
【0060】
別の実施形態において、透明ガラス基板は、少なくとも50モル%のSiO及び、酸化アルカリ金属及び酸化アルカリ土類金属からなる群から選ばれる、少なくとも1つの改質剤を含み、[(Al(モル%)+B(モル%))/(Σアルカリ金属改質剤(モル%))]>1である、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。いくつかの実施形態において、本アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約50モル%〜約72モル%のSiO,約9モル%〜約17モル%のAl,約2モル%〜約12モル%のB,約8モル%〜約16モル%のNaO,及び0モル%〜約4モル%のKOを含む。このガラスは、2010年8月18日に出願され、2009年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/235767号の優先権を主張している、クリステン・エル・ベアフット(Kristen L. Barefoot)等の、名称を「耐クラック/スクラッチ性ガラス及びこれでつくられたエンクロージャ(Crack and Scratch Resistant Glass and Enclosure Made Therefrom)」とする、米国特許出願第12/858490号明細書に説明されている。上記仮特許出願及び特許出願の明細書の内容はそれぞれの全体が参照として本明細書に含められる。
【0061】
別の実施形態において、透明ガラス基板は、SiO,Al,P及び少なくとも1つの酸化アルカリ金属(RO)を含み、M=Al+Bとして、0.75≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦1.2である、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。いくつかの実施形態において、本アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約40モル%〜約70モル%のSiO,0モル%〜約28モル%のB,0モル%〜約28モル%のAl,約1モル%から約14モル%のP,及び約12モル%〜約16モル%のROを含み、いくつかの実施形態においては、約40モル%〜約64モル%のSiO,0モル%〜約8モル%のB,約16モル%〜約28モル%のAl,約2モル%から約12モル%のP,及び約12モル%〜約16モル%のROを含む。このガラスは、2011年11月28日に出願され、2010年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/417941号の優先権を主張している、ダナ・シー・ブックバインダー(Dana C. Bookbinder)等の、名称を「深い圧縮層及び高い損傷閾をもつイオン交換可能ガラス(Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold)」とする、米国特許出願第13/305271号明細書に説明されている。上記仮特許出願及び特許出願の明細書の内容はそれぞれの全体が参照として本明細書に含められる。
【0062】
また別の実施形態において、透明ガラス基板は少なくとも4モル%のPを含み、M=Al+Bとし、ROをアルカリアルミノケイ酸ガラス内に存在する一価及び二価のカチオン酸化物の和として、(M(モル%)/RO(モル%))<1である、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。いくつかの実施形態において、一価及び二価のカチオン酸化物は、LiO,NaO,KO,RbO,RbO,CsO,MgO,CaO.SrO,BaO及びZnOからなる群から選ばれる。このガラスは、2011年11月16日に出願された、ティモシー・エム・グロス(Timothy M. Gross)の、名称を「高いクラック発生閾をもつイオン交換可能ガラス(Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold)」とする、米国仮特許出願第61/560434号明細書に説明されている。上記仮特許出願の明細書の内容はその全体が参照として本明細書に含められる。
【0063】
また別の実施形態において、透明基板は、少なくとも約50モル%のSiO及び少なくとも約11モル%のNaOを含み、圧縮応力が少なくとも約900MPaの、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含むかまたはそのようなアルカリアルミノケイ酸ガラスからなる。いくつかの実施形態において、本ガラスはさらに、Al並びにB,KO,MgO及びZnOの内の少なくとも1つを含み、−340+27.1・Al−28.7・B+15.6・NaO−61.4・KO+8.1・(MgO+ZnO)≧0モル%である。特定の実施形態において、このガラスは、約7モル%〜約26モル%のAl,0モル%〜約9モル%のB,約11モル%〜約25モル%のNaO,0モル%〜約2.5モル%のKO,0モル%〜約8.5モル%のMgO,及び0モル%〜約1.5モル%のCaOを含む。このガラスは、2011年7月1日に出願された、マシュー・ジェイ・デイネカ等の、名称を「高い圧縮応力をもつイオン交換可能ガラス(Ion Exchangeable Glass with High Compressive Stress)」とする、米国仮特許出願第61/503734号明細書に説明されている。上記仮特許出願の明細書の内容はその全体が参照として本明細書に含められる。
【0064】
いくつかの実施形態において、上述したガラスは、リチウム、ホウ素、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、アンチモン及びヒ素の内の少なくとも1つを実質的に含んでいない(すなわち、含有量が0モル%である)。
【0065】
例証の目的のため、代表的な実施形態を述べたが、上述は本開示の範囲または添付される特許請求の範囲への限定と見なされるべきではない。したがって、当業者には、本開示または添付される特許請求項の精神及び範囲を逸脱しない、様々な改変、翻案及び代替が思い浮かび得る。
【符号の説明】
【0066】
100 ディスプレイ素子
110 前面
120 散乱性埋込防眩層(散乱層)
122 粗化面/波打ち面層
123,125,126 マトリクス材料
124,127 粒子
130 透明基板
140 背面
142 接着剤層
145 ディスプレイ層
150 外部周囲光
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
【国際調査報告】