特表2015-534410(P2015-534410A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノースロップ グラマン システムズ コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特表2015534410-効率的なリソース状態の蒸留 図000015
  • 特表2015534410-効率的なリソース状態の蒸留 図000016
  • 特表2015534410-効率的なリソース状態の蒸留 図000017
  • 特表2015534410-効率的なリソース状態の蒸留 図000018
  • 特表2015534410-効率的なリソース状態の蒸留 図000019
  • 特表2015534410-効率的なリソース状態の蒸留 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-534410(P2015-534410A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(54)【発明の名称】効率的なリソース状態の蒸留
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/47 20060101AFI20151030BHJP
【FI】
   H03M13/47
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-539637(P2015-539637)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月26日
(86)【国際出願番号】US2013064334
(87)【国際公開番号】WO2014066054
(87)【国際公開日】20140501
(31)【優先権主張番号】61/719,063
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】イースティン、ブライアン ケイ.
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AD07
5J065AH04
(57)【要約】
少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成するシステム及び方法が提供される。ジェネレータの第1の組及びジェネレータの第2の組を提供するべく、古典的コードがパンクチャされる。ジェネレータの第1の組が、スタビライザジェネレータの組に対してマッピングされ、且つ、ジェネレータの第2の組が、論理的演算子の組に対してマッピングされる。リソース状態の組が物理的キュービット内において生成される。デコーディングプロセスが、スタビライザジェネレータの組及び論理的演算子の組によって表される量子コードに従って、リソース状態に対して実行され、スタビライザに対応するキュービットが計測される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成する方法であって、
古典的コードを選択するステップであって、前記古典的コードと関連付けられたコードワードのすべてが0 mod 2gの重みを有し、ここで、gは、2の正の整数乗である、前記選択するステップと、
ジェネレータの第1の組が、0 mod 2gの重みを保持し、且つ、ジェネレータの第2の組が、2g−1 mod 2gの重みを有するように、前記古典的コードをパンクチャするステップと、
前記ジェネレータの第1の組をスタビライザジェネレータの組に対してマッピングするステップと、
前記ジェネレータの第2の組を論理的演算子の組に対してマッピングするステップと、
複数の物理的キュービット内において相対的に低忠実度のリソース状態の組を生成するステップと、
前記スタビライザジェネレータの組及び前記論理的演算子の組によって表される量子コードに従って、前記物理的キュービットに対してデコーディングプロセスを実行するステップと、
計測値の組を提供するべく、その値が前記量子コードのスタビライザに対応している計測を前記物理的キュービットの組に対して実行するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
2gは、8に等しく、且つ、前記古典的コードを選択するステップは、次の形態の(m+1)×4mジェネレータ行列を有する古典的コードを選択するステップを有し、
【数1】
ここで、Pは、mビットパリティコードのジェネレータの行列であり、Rは、m個の1のベクトルであり、0は、m個の0のベクトルであり、且つ、mは、4の倍数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記古典的コードをパンクチャするステップは、最初のm−2ビットにおいて前記古典的コードをパンクチャするステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2gは、8に等しく、且つ、前記古典的コードを選択するステップは、次の形態のジェネレータ行列を有する古典的コードを選択するステップを含み、
【数2】
ここで、Dは、二重偶コードのジェネレータの行列であり、Rは、m個の1のベクトルであり、且つ、0は、m個の0のベクトルであり、且つ、mは、8の倍数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
相対的に低忠実度のマジック状態の組を生成するステップは、一連のゲートを介してパンクチャされた古典的コードによって前記複数の物理的キュービットをエンコーディングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
相対的に低忠実度のマジック状態の組を生成するステップは、前記複数の物理的キュービットにまたがって横断的な回転を適用するステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Zタイプのスタビライザジェネレータに対応する前記計測値の組の第1の正確な一部に従って、複数の計測されていない物理的キュービットのうちの少なくとも1つに対して条件付き訂正を提供するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記条件付き訂正は、前記複数の計測されていない物理的キュービットの前記少なくとも1つに対して適用される少なくとも1つのクリフォードゲートを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記計測値の組は、Xタイプのスタビライザジェネレータに対応する、計測値の第1の正確な一部及び計測値の第2の正確な一部を有し、
前記方法は、
前記計測値の前記第2の正確な一部が既定の望ましい値の組と一貫性を有していない場合に、前記複数の計測されていない物理的キュービット内に保存されている状態を破棄するステップと、
前記計測値の前記第2の正確な一部の全てが前記既定の望ましい値の組と一貫性を有している場合に、前記複数の計測されていない物理的キュービット内に保存されている前記状態を高忠実度リソース状態として受け入れるステップと、
を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記計測値の前記第1の正確な一部は、第1計測基底において前記複数の物理的キュービットの物理的キュービットの第1の組を計測することにより、取得され、且つ、前記計測値の第2の組は、前記第1計測基底とは異なる第2計測基底において物理的キュービットの第2の組を計測することにより、取得される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの高忠実度リソース状態及び前記相対的に低忠実度のリソース状態の組のそれぞれは、ハダマード演算子の+1固有状態と等価であるマジック状態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数の相対的に低忠実度のリソース状態から少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成するシステムであって、
パンクチャされた古典的コードに従って、論理的キュービットの組を複数の物理的キュービットにエンコーディングするエンコーディング回路と、
π/gのブロッホ球の軸を中心としてそれぞれの物理的キュービット内に保存されている状態に回転を適用するべく、前記相対的に低忠実度のリソース状態を消費する回転コンポーネントであって、gは、2の正の整数乗である、前記回転コンポーネントと、
前記複数の物理的キュービットの適切な一部内に保存された前記論理的キュービットの組を提供するべく、前記物理的キュービット内に保存され回転された論理状態をデコーディングするデコーディング回路であって、前記論理的キュービットの組の少なくとも1つは、高忠実度のマジック状態を有する、前記デコーディング回路と、
を備えるシステム。
【請求項13】
前記エンコーディング回路は、前記複数の物理的キュービットを、スタビライザジェネレータの組と関連付けられた重ね合わせ及び前記パンクチャされた古典的コードと関連付けられたXタイプの論理的パウリ演算子を有する状態に、配置するように構成された一連の2キュービットゲートを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記デコーディング回路は、前記エンコーディング回路のものとは逆の順序で実行される前記一連の2キュービットゲートを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記一連の2キュービットゲートは、一連の制御NOT(CNOT)ゲートを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記回転コンポーネントは、物理的キュービットごとに、
前記物理的キュービット内に保存された前記状態を前記回転によって消費される前記相対的に低忠実度のリソース状態とエンタングルさせるように構成された2キュービットゲートであって、前記相対的に低忠実度のリソース状態は、補助キュービット内に保存される、前記2キュービットゲートと、
計測値を提供するべく、前記物理的キュービットを計測するように構成された計測アセンブリと、
前記計測値が望ましい値をとっている場合に、前記補助キュービット内に保存された前記状態が、π/gだけ前記ブロッホ球の前記軸を中心として回転された前記物理的キュービット内に保存された前記状態を表すように、2π/gの前記ブロッホ球の前記軸を中心とした前記補助キュービット内に保存された前記状態に対する回転を適用するように構成された条件付き回転ゲートと、
を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
クリフォードゲートの組の少なくとも1つの高忠実度マジック状態を生成するシステムであって、
|eiπ/4>に等価である相対的に低忠実度の状態をそれぞれが保存する複数の物理的キュービットと、
デコーダであって、
0 mod 8の重みを有するコードワードの第1の組及び7 mod 8の重みを有するコードワードの第2の組を有するパンクチャされた古典的コードから導出された量子コードに従ってZタイプスタビライザジェネレータに対応する複数の物理的キュービットの第1の正確な一部を提供するべく、前記物理的キュービット内に保存された前記状態をデコーディングする第1の複数の量子ゲートと
計測値の第1の組を提供するべく、Zタイプのスタビライザジェネレータに対応する前記複数の物理的キュービットの第1の正確な一部を計測する第1の複数の計測アセンブリと、
を含む前記デコーダと、
訂正コンポーネントであって、
前記計測値の第1の組に従って、前記第1の正確な一部の部分ではない少なくとも1つの物理的キュービット内に保存された状態に対して、関連付けられた動作を条件付きで適用するようにそれぞれが構成された第2の複数の量子ゲートと、
訂正の後に、Xタイプのスタビライザジェネレータに対応する複数の物理的キュービットの第2の正確な一部を計測する計測アセンブリの第2の組と、
を含む前記訂正コンポーネントと、
を備えるシステム。
【請求項18】
前記計測アセンブリの第1の組は、標準基底内のZタイプのスタビライザジェネレータに対応する前記複数の物理的キュービットの前記第1の正確な一部を計測するように構成されており、且つ、前記計測アセンブリの第2の組は、符号基底及びY基底のうちの1つの内部のXタイプのスタビライザジェネレータに対応する前記複数の物理的キュービットの第2の正確な一部を計測するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記符号基底及び前記Y基底のうちの前記1つは、前記計測値の第1の組に従って選択される、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は量子演算に関し、より詳しくは、効率的なリソース状態の蒸留方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古典的コンピュータは、古典物理学の法則に従う情報のビット(2進数)を処理することにより、動作する。ビットは、論理1(例えば、高エネルギー)又は論理0(例えば、低エネルギー)のいずれかに対応する高又は低エネルギーレベルによって物理的に表現される。これらの情報ビットに対する変換は、AND及びORゲートなどの単純な古典的論理ゲートを使用することにより、表現することができる。2つの整数を乗算するものなどの古典的アルゴリズムは、これらの単純な論理ゲートの長いストリングに分解することができる。古典的コンピュータと同様に、量子コンピュータも、ビット及びゲートを有する。排他的に論理1及び0を保存する代わりに、量子ビット(「キュービット」)は、ある意味において、1つのキュービットが同時に両方の古典的状態にあることを許容する2の任意の量子機械的重ね合わせを保存することができる。この能力によれば、このような重ね合わせの生成を許容する量子ゲートと結合された状態で、量子コンピュータは、古典的コンピュータのものよりも飛躍的に大きな効率により、特定の問題を解決することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成する方法が提供され、この場合に、状態は、ある角度π/gだけの回転を実装するためのリソースである。コードと関連付けられたコードワードのすべてが0 mod 2gの重みを有する古典的コードが選択され、この場合に、gは、2の正の整数乗である。古典的コードは、コードワードの第1の組が0 mod 2gの重みを保持し、且つ、コードワードの第2の組が2g−1 mod 2gの重みを有するように、パンクチャされる。コードワードの第1の組は、スタビライザジェネレータの組に対してマッピングされ、且つ、コードワードの第2の組は、論理的演算子の組に対してマッピングされる。複数の物理的キュービット内において相対的に低忠実度のリソース状態の組が生成される。スタビライザジェネレータの組及び論理的演算子の組によって表される量子コードに従って、相対的に低忠実度のリソース状態の組に対してデコーディングプロセスが実行される。Zスタビライザに対応する(デコーディング後の)物理的キュービットのそれぞれが計測され、且つ、この結果を使用し、Xスタビライザに対応するものの計測の前に、その他のキュービットに対して実施する訂正を判定する。
【0004】
本発明の別の態様によれば、複数の相対的に低忠実度のリソース状態から少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成するシステムが提供される。エンコーディング回路が、パンクチャされた古典的コードに従って、論理的キュービットの組を複数の物理的キュービットにエンコーディングする。回転コンポーネントは、π/gのブロッホ球の軸を中心としたそれぞれの物理的キュービット内に保存された状態に対する回転を適用するべく、相対的に低忠実度のリソース状態σを消費し、この場合に、gは、2の正の整数乗であり、この結果、回転が論理的キュービットに対して適用される。デコーディング回路は、物理的キュービット内に保存された回転された論理的状態をデコーディングして、複数の物理的キュービットの適切な一部内に保存された論理的キュービットの組を提供し、論理的キュービットの組の少なくとも1つは、高忠実度リソース状態を有する。
【0005】
本発明の更に別の態様によれば、クリフォードゲートの組の少なくとも1つの高忠実度マジック状態を生成するシステムが提供される。複数の物理的キュービットは、それぞれ、|eiπ/4>を近似する相対的に低忠実度の状態を保存する。デコーダは、0 mod 8の重みを有するコードワードの第1の組及び7 mod 8の重みを有するコードワードの第2の組を有するパンクチャされた古典的コードから導出された量子コードに対応する物理的キュービット上に単体デコーダを実装する第1の複数の量子ゲートを含む。デコーダは、複数の物理的キュービットを計測する第1の複数の計測アセンブリを更に含む。訂正コンポーネントは、計測値の第1の組に従って、計測されていない物理的キュービットの1つの内部に保存された状態に対して、関連付けられた演算を条件付きで適用するようにそれぞれが構成された第2の複数の量子ゲートと、計測されていないキュービットの少なくとも1つを計測するための計測アセンブリの第2の組と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一態様による複数の相対的に低忠実度のリソース状態から少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成するシステムの一例を示す。
図2】本発明の一態様によるマジック状態の蒸留を実行する量子回路としての図1のシステムの一実装形態を示す。
図3】生成された|eiπ/g>補助状態を使用してπ/gのZ回転を実行するべく、図2の回転コンポーネント内において使用されてもよい1つの回路を示す。
図4】本発明の一態様による複数の相対的に低忠実度のマジック状態からクリフォードゲートの組の少なくとも1つの高忠実度マジック状態を生成するシステムの別の例を示す。
図5】本発明の一態様によるマジック状態の蒸留を実行する量子回路としての図4のシステムの一実装形態を示す。
図6】少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成する第1の方法を示す。
図7】少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成する第2の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の相対的に低忠実度のリソース状態からの高忠実度リソース状態の蒸留を提供するべく、一群のルーチンが提供される。具体的には、本明細書に記述されているシステム及び方法は、蒸留がより大きな数の入力低忠実度状態に対してスケーリングされるのに伴って、3に接近する、状態オーバーヘッド、即ち、改善された忠実度の出力状態の数に対する低忠実度入力状態の数の比率を実現する、向上した効率性を有する二次誤り抑制を生成する。
【0008】
キュービット状態の標準基底(standard basis)は、|0>として本明細書において表記されるゼロ状態と、ゼロ状態に直交すると共に|1>として本明細書において表記される1状態と、を含む。符号基底(sign basis)は、
【0009】
【数1】
として標準基底において定義されるプラス状態|+>と、
【0010】
【数2】
として標準基底において定義されるマイナス状態|−>と、を含む。Y基底は、
【0011】
【数3】
として標準基底において定義される+1状態|Y>と、
【0012】
【数4】
として標準基底において定義される−1状態|Y>と、を含む。
【0013】
本明細書において使用されるユニバーサル量子ゲートの組というフレーズは、量子コンピュータ上において可能である任意の演算が低減されうる、即ち、任意のその他の単体演算が、その組からのゲートの有限のシーケンスとして(ある程度の任意の精度に)近似されうる、量子ゲートの任意の組である。逆に、ゲートの非ユニバーサルな組とは、この特性を欠いた量子ゲートの組を意味している。ゲートの非ユニバーサルな組の一例は、クリフォードゲートの組である。本明細書において使用されるクリフォードゲートの組は、パウリ演算子のそれぞれを実行するゲート、制御not(controlled not:CNOT)ゲート、ハダマードゲート、及びπ/2のZ回転ゲート、標準基底のグランド状態に対する高忠実度初期化、並びに、標準基底、符号基底、及びY基底におけるキュービット状態を計測する計測アセンブリを含むものと定義される。
【0014】
本明細書において使用される「リソース状態」とは、その組に含まれていない量子演算を、又はその組を使用した生成に好都合ではない量子演算さえも提供するべく、所与のゲートの組と共に使用されうる量子状態である。リソース状態を構成するものは、所与のゲートの組に伴って変化することを理解されたい。本明細書において使用される「マジック状態」とは、任意の量子演算を提供するべく、クリフォードゲートの組と共に使用されうると共に、クリフォードゲートの組からのゲートを使用して構築された回路によって忠実度が改善されうる量子状態である。事実上、クリフォードゲートと共に、所与のマジック状態を、又はむしろ、そのマジック状態の有限数のインスタンスを使用することにより、ユニバーサルな量子演算が可能になる。
【0015】
本明細書において使用される「蒸留」とは、より高い忠実度を有する所与の状態をとるキュービットのより小さな組を生成するように、所与の状態のキュービットの組を確率論的に変換するプロセスを意味している。量子情報理論においては、忠実度は、2つの量子状態の「密接度」の尺度である。本明細書において使用される忠実度とは、望ましい理想的な状態に対する状態の所与のインスタンスの密接度を意味している。「低忠実度状態」とは、量子演算に使用するのに望ましい忠実度のレベル未満であるが、蒸留プロセスに必要とされる最小限の忠実度を上回る状態を意味している。本発明の一態様によれば、リソース状態は、状態蒸留の反復的な適用を介して任意の忠実度のレベルに改善することができる。
【0016】
古典的な誤り訂正コードは、いずれの誤りが、エンコーディングされた状態を破壊するのかを診断するべく、シンドローム計測を使用している。量子誤り訂正も、エンコーディングされた状態における量子情報を妨げないが、誤りに関する情報を取得するマルチキュービット計測を実行することにより、シンドローム計測を利用している。シンドローム計測は、キュービットが破壊されたかどうかを判定することが可能であり、且つ、破壊されている場合には、いずれのものが破壊されているのかを判定することができる。実際に、この動作の結果は、いずれの物理的キュービットが影響を受けたのかのみならず、いくつかの可能な方式のうちのいずれにおいて、その物理的キュービットが影響を受けたのかをも、通知することができる。大部分のコードにおいて、誤りは、ビットフリップ内に、若しくは(フェーズの)符号フリップ内に、又は(パウリ行列X、Z、及びYに対応する)これらの両方内に、投影される。物理的キュービットが、本明細書において量子コードと呼称されるマルチキュービットのパウリ演算子の集合体の固有状態となるように、エンコーディングを使用することにより、論理的キュービットと呼称されるキュービットのグループと関連付けられた情報を物理的キュービットのより大きなグループ上に拡散させる。CSS量子コードとは、コードを定義するマルチキュービットパウリ演算子の基底が、そのそれぞれが単一のキュービットパウリ演算子X及びI又は単一のキュービットパウリ演算子Z及びIのみから構成されるマルチキュービットパウリ演算子を使用することによって表現されうる、量子コードである。
【0017】
図1は、本発明の一態様による複数の相対的に低忠実度のリソース状態12から少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成するシステム10の一例を示している。システム10は、論理的キュービットの組を物理的キュービット14〜17のより大きな組上にエンコーディングするべく、CSS量子コードを利用している。このコードは、それぞれの論理的キュービットに対するエンコーディングされた−π/gの回転が、物理的キュービットのそれぞれに対するπ/gの回転の横断的な適用を介して実装されうるという特性を有するように、選択されており、ここで、gは、2の正の整数乗である。これを目的として、物理的キュービット14〜17のそれぞれは、π/gの回転を含まないゲートの組を介して高忠実度を有するように生成されうる状態を有するように生成される。
【0018】
エンコーディング回路22は、望ましい特性を有するパンクチャされた古典的コードに従って、論理的キュービットの組を複数の物理的キュービット14〜17にエンコーディングしている。古典的コードワードの第1の組は、量子コードのスタビライザを表すことが可能であり、且つ、古典的コードワードの第2の組は、論理的演算子を表すことができることを理解されたい。具体的には、本発明者は、コードワードのそれぞれが0 mod 2gの重みを有する古典的コードが、−π/gの横断的な回転を適用する際に使用するのに適していることを見出した。このようなコードは、望ましい誤り抑制の程度(例えば、二次、三次、四次など)を提供するべく、選択し、且つ、適切にパンクチャすることができる。
【0019】
回転コンポーネント24は、ブロッホ球の軸を中心として物理的キュービット14〜17内に保存されている状態のそれぞれに対して回転を適用する。具体的には、π/gの回転が提供される。回転要素24は、横断的な回転を提供するべく、複数の低忠実度リソース状態を消費することを理解されたい。一実装形態において、この回転は、ブロッホ球のZ軸を中心として実行されている。回転コンポーネント内において使用されてもよい量子回路の一例が、以下の図3に提供される。
【0020】
デコーダ26は、論理的キュービットの組を提供するべく、物理的キュービット14〜17内に保存されている状態をデコーディングしている。デコーディングプロセスの一部として、(単一のデコーディングの後に)スタビライザのうちの1つを表す物理的キュービットのそれぞれが、計測基底において計測される。スタビライザと関連付けられた計測値が望ましいものになっている場合には、残りのキュービットは、回転コンポーネント24において消費された状態のものよりも大きな忠実度を有するリソース状態として、保持される。計測値の第2の組のうちの1つ又は複数が正しい値をとらない場合には、残りのキュービットを訂正又は破棄することができる。
【0021】
図2は、本発明の一態様に従ってマジック状態蒸留を実行する量子回路30としての図1のシステムの一実装形態を示している。図示の実装形態において、マジック状態とは、ハダマード演算子の+1固有状態と等価である一群の状態のうちの1つである。「等価」とは、それぞれの状態が、1キュービットのクリフォード単体演算子を介して、その他のものから導出されうることを意味している。この例における特定のマジック状態は、|0>+eiπ/4|1>として標準基底において表される|eiπ/4>である。量子回路は、論理的キュービットを表す物理的キュービット34〜36、41、及び45内に保存されているプラス状態の5個のコピー及び0状態の9つのコピーのみならず、|eiπ/4>状態の14個のコピーをも含む高忠実度の初期状態の組を保存する14個のキュービット32〜45を使用している。高忠実度の状態のそれぞれは、標準基底におけるグランド(0)状態へのキュービットの初期化を介して、又は、プラス状態を提供するべく初期化されたそのようなキュービットに対するハダマードゲート演算を介して、生成されうることを理解されたい。
【0022】
高忠実度の初期状態の組のそれぞれは、論理的キュービットのそれぞれに対するエンコーディングされた−π/4のZ回転が、キュービットのすべてにまたがる横断的なπ/4のZ回転を介して実行されうるという特性を有するCCS量子コードによって初期状態の組内において表された14個の物理的キュービットをエンコーディングするべく、エンコーディングコンポーネント46に適用される。一般に、CCS量子コードは、望ましい特性を有する古典的コードをパンクチャすると共にパンクチャされたコード内のコードワードのジェネレータを量子コード内のスタビライザジェネレータ及び論理的演算子に対してマッピングすることにより、生成される。この例においては、パンクチャされていないジェネレータの第1の組は、Xタイプのスタビライザを表すことが可能であり、且つ、パンクチャされたジェネレータの第2の組は、Xタイプの論理的パウリ演算子を表すことができる。図示の実施形態においては、エンコーディングは、一連の制御NOT(CNOT)ゲートを介して実行されるが、エンコーディングは、クリフォードゲートの任意の適切な組を介して実行することも可能であることを理解されたい。
【0023】
図示の実装形態においては、古典的コードは、コードワードのすべてが重み0(mod 8)を有するように、選択されている。パンクチャは、ジェネレータが、1の値を有する複数のビットを失うことがなく、且つ、パンクチャされていないジェネレータが残りのビットをカバーするように、構成されている。蒸留は、パンクチャされていないジェネレータが(単位行列Iに対して0を、且つ、パウリX演算子Xに対して1を、マッピングする状態で)Xタイプのスタビライザであり、且つ、パンクチャされたジェネレータがXタイプの論理的パウリ演算子であると解釈することにより、実行することができる。又、単一キュービットのクリフォード演算において等価であるスタビライザジェネレータ及び論理的演算子に対するコードワードの任意のその他のマッピングも、利用されうることを理解されたい。図2の例において、使用されている古典的コードは、5のレートと、16の長さと、を有する1次リードミュラーコードである。リードミュラーコード用のジェネレータ行列は、次のように表すことができる。
【0024】
【数5】
図示の実装形態において、コードは、二重にパンクチャされ、これにより、次のように表現可能な二重にパンクチャされたコード用のジェネレータ行列が得られる。
【0025】
【数6】
パンクチャされたコードにおいて、最初の2つのコードワードの重みは、重み7 mod 8に低減されている一方、最後の3つのコードワードの重みは、影響を受けないことを理解されたい。従って、量子回路用のスタビライザジェネレータは、次のように表すことができる。
【0026】
【数7】
Xタイプの論理的パウリ演算子は、次式のように表すことができる。
【0027】
【数8】
エンコーディングコンポーネント46の効果は、高忠実度の初期状態を保存するキュービットを、スタビライザジェネレータ及びXタイプの論理的パウリ演算子と関連付けられた重ね合わせを有する状態に、配置するというものである。本発明の一態様によれば、回転コンポーネント48は、複数のキュービットにまたがって横断的に回転を適用するべく、14個の生成された低忠実度の|eiπ/4>状態を消費する。図2の回路において、回転は、π/4のZ回転である。
【0028】
図2のπ/4のZ回転は、より一般的な種類のπ/gのZ回転の特殊なケースに過ぎないことを理解されたい。図3は、生成された|eiπ/g>補助状態を使用してπ/gのZ回転を実行するべく、図2の回転コンポーネント48内において使用されてもよい1つの回路60を示している。回路60は、ターゲットキュービット62と、|eiπ/g>補助状態を保存する補助キュービット64と、を含む。制御not(CNOT)ゲート66は、ターゲットキュービット62に対して実行され、且つ、補助キュービット64により、制御されている。次いで、ターゲットキュービット62は、標準基底においてターゲットキュービットを計測する計測アセンブリ68において計測される。回転コンポーネント70は、ターゲットキュービットの計測に基づいて、2π/gのZ回転を補助キュービット64に対して条件付きで適用する。具体的には、Xゲートによって後続される2π/gのZ回転は、ターゲットキュービットが励起された(即ち、「1」の)状態にあると計測された場合にのみ、適用される。gのいくつかの値(例えば、4の倍数)の場合には、回転コンポーネントは、クリフォードゲートになることを理解されたい。その他の場合には、クリフォードゲートを使用して回転を実装するべく、追加リソース状態が必要でありうる。条件付き回転の後に、補助キュービット64は、π/gの回転が適用されたターゲットキュービット62の状態を表す状態となる。
【0029】
図2を再度参照すれば、回転された状態は、次いで、量子コードを有する物理的キュービット32〜45から論理的キュービットを取得するデコーディングコンポーネント50に提供される。図示の実装形態においては、デコーディングコンポーネント50は、エンコーディングコンポーネント46のものに類似した、但し、逆の順序で実装されたCNOTゲートの組を利用している。デコーディングの後に、Zタイプのスタビライザに対応する物理的キュービットのそれぞれ(Zタイプスタビライザは、グランド状態において始まる物理的キュービット32、33、37〜40、及び42〜44に対応している)は、標準(Z)基底において計測される。Xタイプのスタビライザに対応する物理的キュービットのそれぞれ(Xタイプのスタビライザは、物理的キュービット36、41、及び45に対応している)は、符号(X)基底において計測される。これらの計測された値の任意のものが予想値ではない場合には、誤りが蒸留プロセスにおいて発生したと仮定することが可能であり、且つ、残りの物理的キュービット34及び35内に保存されている状態を破棄することができる。計測値のすべてが予想値を提供している場合には、残りの物理的キュービット34及び35内に保存されている状態は、回転要素48において消費されたリソース状態と比べた場合に、向上した忠実度を有するリソース状態となる。
【0030】
本発明者は、本発明のシステム及び方法は、そのコードワードが、いずれも、重み0 mod 2gを有する古典的コードを使用することにより、|eiπ/g>用の蒸留ルーチンのために一般化可能であると判定した。π/gのZ回転において使用される|eiπ/g>状態の直接的な蒸留は、π/4のZ回転及びハダマードゲートを使用したπ/gのZ回転の生成よりも、リソースの観点において格段に効率的であることが明らかとなりうる。
【0031】
|e−iπ/g>状態のそれぞれの出力コピー当たりの|eiπ/g>状態の入力コピーの数は、リソース状態蒸留ルーチンの効率の尺度と見なしてもよい。本明細書において、状態オーバーヘッドと呼称されるこの測定基準により、本発明の時点における出力誤り確率の二次低減を実現するための最良の既存のマジック状態蒸留ルーチンは、出力状態当たり5入力状態のオーバーヘッドを有していた。図2及び図4に示されている例示用の蒸留回路は、出力状態当たり7入力状態というオーバーヘッドを有しているが、この同一の技法を使用し、出力状態当たり3入力状態というオーバーヘッドの近傍に任意に接近することができる。
【0032】
図2及び図4の横断的な回転技法の一般的な実装形態は、mビットパリティコードを4ビット反復コードと連結することによって形成された古典的コードによって始まるステップであって、ここで、mは、4の倍数である、ステップと、次いで、4ビットパリティコードと連結されたmビット反復コードの独立的なジェネレータによってコードを拡大するステップと、により実行することができる。換言すれば、この方法は、その(m+1)×4mジェネレータ行列が次の形態を有する古典的コードによって始まる。
【0033】
【数9】
ここで、Pは、mビットパリティコードのジェネレータの行列であり、Rは、m個の1のベクトルであり、0は、m個の0のベクトルであり、且つ、mは、4の倍数である。
【0034】
コードは、最初のm−2ビットにおいてパンクチャされ、且つ、パンクチャされたジェネレータは、論理的なX演算子を定義するべく使用され、且つ、パンクチャされていないものは、Xタイプのスタビライザを定義するべく、使用される。このような量子コードを使用した横断的回転蒸留は、出力状態当たり(4m−(m−2))/(m−2)=(3m+2)/(m−2)入力状態という代償を払って、誤り確率の二次低減をもたらし、これは、大きなmを限度として、3に接近する。但し、限界出力誤り率の係数は、mの増大に伴って増大することを理解されたい。
【0035】
又、横断的回転蒸留ルーチンは、次の形態のジェネレータを有する古典的コードからも導出することができる。
【0036】
【数10】
ここで、Dは、二重偶コードのジェネレータの行列であり、Rは、k個の1のベクトルであり、0は、k個の0のベクトルであり、且つ、kは、8の倍数である。
【0037】
例えば、Dが拡張型二元ゴレイコードであると解釈すると共に10個の座標をパンクチャすることにより、出力状態当たり3.8(38対10)入力状態という代償を払って、二次誤り抑制を伴う横断的回転蒸留ルーチンが得られる。この特定のケースにおいては、式5の構造は、より優れた38対10ルーチンを付与する。
【0038】
又、更に大きな次数の誤り抑制を伴う横断的回転蒸留ルーチンを利用することもできる。より強力な誤り抑制を実現するための1つの方法は、式5に示されている形態の4mビットの古典的コードの第1項のみをパンクチャするというものであり、ここで、mは、4の倍数である。mが4に等しい際には、対応する横断的回転蒸留は、出力状態当たり15入力状態の代償を払って、誤り確率の3次低減をもたらす。より強力な誤り抑制は、より高次のリードミュラーコードなどのより複雑な古典的コードによって開始することにより、実現することができる。例えば、(標準的なビットの順序付けの場合に)ビット1、2、3、5、9、17、33、及び65において128ビットの二次リードミュラーコードRM(2;7)をパンクチャすることにより、四次誤り抑制を伴う120対8蒸留ルーチンが得られる。
【0039】
図4は、本発明の一態様による複数の相対的に低忠実度のマジック状態からクリフォードゲートの組の少なくとも1つの高忠実度マジック状態を生成するシステム150の別の例を示している。出力マジック状態当たりの拡張された入力マジック状態の数は、重要であるが、蒸留ルーチンの効率に関係する唯一の値ではない。マジック状態の蒸留が、多大な努力を通じて高度に安定した状態となったキュービット及びクリフォードゲートを使用して実行されると想定した場合には、蒸留ルーチン内の場所の数が、誤りが観察されないであろうようにこれらのコンポーネント内において実現しなければならない誤り率に影響を及ぼすことになる。従って、別の重要な値は、本明細書において場所オーバーヘッドと呼称される出力状態当たりの蒸留ルーチン内の場所の数である。状態及び場所オーバーヘッドは、特に、いくつかの量子演算アーキテクチャの場合に予想される状況である1回又は2回のリソース状態蒸留しか必要とされない際に、異なるルーチンを推奨する可能性がある。この結果、場所オーバーヘッドの極小化により、独立的な検討が正当化される。
【0040】
図3の実装形態において、エンコーダは、それぞれの論理的キュービット上において|+>状態しか生成する必要がないことに留意されたい。CSSコードの場合には、本発明者は、エンコーディングされた状態は、それぞれの物理的キュービット上において|+>を横断的に生成し、Zスタビライザのそれぞれを計測し、且つ、次いで、計測結果によって示されているように訂正Xゲートを適用することにより、生成されうると判定した。このエンコーダは、必ずしも、直接的エンコーディングよりもコンパクトではないが、計測及び訂正を横断的な物理的なπ/4のZ回転の右辺に移動させることができる。Zスタビライザ計測は、この変換により、変更されないが、訂正Xゲートが、訂正Z(π/2)Xゲートに変換される。π/4のZ回転による初期の|+>生成を|eiπ/4>状態に組み合わせることが可能であり、且つ、回路アイデンティティのシーケンスを使用し、計測を強制的に実行することが可能であり、且つ、コードサブ空間の訂正は、回路が回路内における最後の計測に直接的に着手する時点まで、回路の末尾に向かうものであってもよい。
【0041】
この時点において、Zスタビライザ計測は、単に個々のキュービット上における計測であるが、訂正単体(correcting unitary)は、Z(π/2)回転、制御Zゲート、及びXゲートの複雑なシーケンスになっている。Z固有基底において計測されるキュービットに対して作用する制御Zゲートは、キュービットの古典的計測結果に基づいて制御されるZゲートによって置換することができる。Z固有基底において計測されるキュービットに対して作用するZ(π/2)回転ゲートは、影響を有しておらず、且つ、Xゲートは、次のZ計測の値をわずかにフリップさせる。この結果、これらのゲート及び最終的なZ計測は、省略することができる。更には、Xゲートは、X固有基底における計測の結果に対して影響を有しておらず、従って、これらの計測に直接的に先行しているXゲートも、省略することができる。
【0042】
この結果、図4のシステム150によって表される小型化された横断的生成(compacted−transversal−preparation:CTP)蒸留回路へのこれらの回路の変換が完了する。具体的には、図示のシステムは、|eiπ/4>に等価である一群の状態からの相対的に低忠実度の状態をそれぞれが保存する複数の物理的キュービット152〜155によって始まっている。「等価」とは、一群の状態のうちのそれぞれの状態が、1キュービットのクリフォード単体演算子を介して、|eiπ/4>状態から導出されうることを意味している。
【0043】
システム150は、選択された量子コードに従って、複数の物理的キュービット152〜155内に保存された低忠実度状態に対してデコーディングプロセスを適用するデコーダ160を含む。本発明の一態様によれば、量子コードは、0 mod 8の重みを有するコードワードの第1の組と、7 mod 8の重みを有するコードワードの第2の組と、を有するパンクチャされた古典的コードから導出される。「〜から導出される」とは、量子コード用のジェネレータが、標準的なマッピングプロセス(即ち、単位演算子に対するそれぞれの0ビット及びX演算子に対するそれぞれの1ビット)を介して、又は、それぞれのビットを表す演算子が標準的なマッピングに適用される1キュービットのクリフォード単体演算子を介して導出されうるクリフォード等価マッピングプロセスを介して、生成されたことを意味するものと理解されたい。
【0044】
デコーダ160は、Zタイプのスタビライザジェネレータを個々の物理的キュービットにデコーディングする複数の量子ゲートを含む。デコーダ160は、Zタイプのスタビライザジェネレータに対応する(デコーディング後の)物理的キュービットを計測する複数の計測アセンブリを更に含む。これらの計測値は、例えば、関連付けられた古典的コンピュータにおける一時的ではないコンピュータ可読媒体上において、計測値の第1の組として、記録することができる。残りの物理的キュービットは、Zタイプのスタビライザジェネレータの計測から得られた結果によって判定される方式により、Xタイプのスタビライザジェネレータ及び論理的キュービットを保存する。
【0045】
訂正コンポーネント170は、複数の量子ゲートを含み、このそれぞれは、計測値の第1の組に従って、計測されていない状態に留まっている物理的キュービットの適切な一部に対して、関連付けられた動作を条件付きで適用するように構成されている。「条件付きで適用する」とは、それぞれの回転ゲートが、計測値の第1の組のうちの1つ又は複数が所与の値をとる場合にのみ、関連付けられたキュービットに対して適用されることを意味している。訂正コンポーネント内のゲートは、関連付けられたコンピュータ(図示せず)及び様々な古典的制御メカニズムを介して、古典的に制御されうることを理解されたい。条件付きゲートの効果は、誤りが存在しない、望ましいマジック状態になると予想される状態に、論理的キュービットに対応する物理的キュービットの第1の組を配置するというものである。計測値の第2の組を提供するべく、量子コード内のXタイプのスタビライザを表す残りの物理的キュービットの組を計測するように、複数の計測アセンブリが設けられる。計測値の第2の組から、システム150が様々なタイプの誤りのうちの1つを経験したかどうかを判定することができる。従って、計測値の第2の組が、対応する望ましい値をとっている場合には、残りのキュービットは、高忠実度マジック状態として保持される。計測値の第2の組のうちの1つ又は複数が正しい値をとらない場合には、残りのキュービットは、訂正又は破棄することができる。
【0046】
図5は、本発明の一態様に従ってマジック状態蒸留を実行する量子回路200としての図4のシステムの一実装形態を示している。図示の量子回路200は、+1ハダマード固有状態と等価である一群の状態から相対的に低忠実度のマジック状態においてそれぞれが生成された複数の物理的キュービット202〜215を含む。わかりやすくするために、この状態は、本明細書において、|eiπ/4>状態と呼称される。Zタイプのスタビライザジェネレータを個々の物理的キュービットに対してデコーディングするように、デコーディングコンポーネント220が適用されている。マジック状態蒸留の特定の用途の場合には、量子コードは、コードワードのすべてが重み0(mod 8)を有するように選択されたパンクチャされた古典的コードに基づいており、これらのパンクチャは、ジェネレータが、1の値を有する複数のビットを失うことがなく、且つ、パンクチャされていないジェネレータが残りのビットをカバーするように、構成されている。図示のデコーダ220においては、1次の16ビットリードミュラーコードが利用されている。図示されているように、デコーダ220は、生成された状態をデコーディングするべく、この場合には、制御CNOTゲートである一連の2キュービットゲートを利用している。
【0047】
デコーダ220は、複数の計測アセンブリを含み、且つ、デコーディングプロセスの一部として、物理的キュービット202、203、207〜210、212〜214の第1の組が、標準(Z)基底において計測される。これらの計測値は、計測値の第1の組として記録される。計測値の第1の組及び残りのキュービット状態は、訂正アセンブリ230に提供される。訂正アセンブリ230は、量子演算をキュービット204〜206、211、及び215の第2の組に対して条件付きで適用するべく、計測値の第1の組に従って古典的に制御される複数の量子ゲートを含む。複数の量子ゲートは、任意の適切なクリフォードゲートを含むことが可能であり、且つ、図示の例においては、Xゲート及び可変Z回転と共に、一連の制御Zゲートが使用されている。
【0048】
複数の量子ゲートのうちの所与のものが利用されるかどうかを判定すること以外に、計測値の第1の組は、それぞれのZ回転の特定の角度のみならず、量子コードのXタイプのスタビライザを表す物理的キュービット206、211、及び215のそれぞれが符号(X)基底又はY基底において計測されるかどうかをも判定するべく、使用される。いずれの基底が使用されるのかとは無関係に、これらの計測から導出される計測値の第2の組は、予想値の組と比較することができる。これらの計測値の任意のものが予想値であると見出されない場合には、誤りが蒸留プロセスにおいて発生したものと仮定することが可能であり、且つ、残りの(計測されていない)物理的キュービット204及び205内に保存されている状態は、破棄することができる。計測のすべてが予想値を提供している場合には、残りの物理的キュービット204及び205内に保存されている状態は、初期状態と比較した場合に向上した忠実度を有するマジック状態となる。
【0049】
図1図5において上述した上記の構造的且つ機能的特徴の観点において、図6及び図7を参照することにより、例示用の方法がより良く理解されよう。説明のわかりやすさを目的として、図6及び図7の方法は、逐次的に稼働するものとして図示及び記述しているが、いくつかの動作は、その他の例においては、本明細書に図示及び記述されているものとは異なる順序で且つ/又は同時に発生しうることから、本発明は、図示の順序に限定されるものではないことを理解及び認識されたい。
【0050】
図6は、少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成する方法250を示している。252において、古典的コードが選択されており、この場合に、コードと関連付けられたコードワードのすべてが、0 mod 2gの重みを有し、ここで、gは、2の正の整数乗である。一実装形態において、これは、1次の16ビットリードミュラーコードである。254において、コードワードの第1の組が0 mod 2gという重みを保持し、且つ、コードワードの第2の組が2g−1 mod 2gという重みを有するように、古典的コードがパンクチャされている。一実装形態において、コードは、二重にパンクチャされ、それぞれのコードワードの最初の2つのビットが除去されている。256において、ジェネレータの第1の組(古典的コードの場合)が、スタビライザジェネレータの組に対してマッピングされている。258において、ジェネレータの第2の組が論理的演算子に対してマッピングされている。一実装形態においては、ジェネレータ及び演算子を提供するべく、コードワード内の二進の0は、単位演算子に対してマッピングされ、且つ、コードワード内の二進の1は、パウリX演算子に対してマッピングされている。
【0051】
260において、複数の物理的キュービット内において、相対的に低忠実度のリソース状態の組が生成されている。一実装形態においては、スタビライザジェネレータの組及び論理的演算子の組によって表された量子コードを使用することにより、高忠実度の初期状態がエンコーディングされ、且つ、回転が、物理的キュービットにまたがって横断的に適用されている。別の実装形態において、それぞれの物理的キュービットは、単純に、望ましいリソース状態において生成される。262において、スタビライザジェネレータの組及び論理的演算子の組によって表される量子コードに従って、相対的に低忠実度のリソース状態の組に対してデコーディングプロセスが実行されている。この結果、量子コードから論理的キュービットの組を抽出するプロセスが始まる。264において、Zタイプのスタビライザに対応する物理的キュービットの計測が実行されており、且つ、266において、この計測値の組を使用し、残りの物理的キュービットに対する選択的な訂正を制御している。任意の必要な訂正に続いて、計測されていない物理的キュービットは、論理的キュービットに対応する第1の組とXタイプのスタビライザに対応する第2の組に分割することができる。268において、計測値の第2の組を提供するべく、第2の組内の物理的キュービットのそれぞれが計測されている。計測値の第2の組は、低忠実度の状態によって導入される誤りの検出を可能にする。計測の第2の組のすべてが望ましい値をとっている場合には、残りのキュービットは、リソース状態の高忠実度表現を収容するものと予想されることになる。
【0052】
図7は、少なくとも1つの高忠実度リソース状態を生成する方法300を示している。302において、古典的コードが選択されており、この場合に、コードと関連付けられたコードワードのすべては、0 mod 2gの重みを有し、ここで、gは、2の正の整数乗である。一実装形態において、これは、1次の16ビットリードミュラーコードである。304において、コードワードの第1の組が0 mod 2gという重みを保持し、且つ、コードワードの第2の組が、2g−1 mod 2gという重みを有するように、古典的コードがパンクチャされている。一実装形態において、コードは、二重にパンクチャされ、それぞれのコードワードの最初の2ビットが除去されている。306において、ジェネレータ(古典的コードの場合)の第1組が、スタビライザジェネレータの組に対してマッピングされている。308において、ジェネレータの第2の組が、論理的演算子の組に対してマッピングされている。一実装形態においては、ジェネレータ及び演算子を提供するべく、コードワード内の二進の0は、単位演算子に対してマッピングされ、且つ、コードワード内の二進の1は、パウリX演算子に対してマッピングされている。
【0053】
310において、物理的キュービットの組が複数の初期状態において生成されている。一実装形態において、これらの状態は、複数のプラス状態及び複数の0状態を含むことができる。312において、物理的キュービットは、スタビライザジェネレータの組及び論理的演算子の組によって表される量子コードを使用することにより、エンコーディングされている。314において、回転が、物理的キュービットにまたがって横断的に適用されている。316において、スタビライザジェネレータの組及び論理的演算子の組によって表される量子コードに従って、キュービットに対してデコーディングプロセスが実行されている。318において、Zタイプのスタビライザ及びXタイプのスタビライザに対応する物理的キュービットの計測が実行されている。すべての計測値が望ましい値をとっている場合には、残りの物理的キュービットは、リソース状態の高忠実度表現を保存しているものと予想されることになる。
【0054】
上述した内容は、本発明の例である。当然のことながら、本発明の説明を目的として、コンポーネント及び方法のすべての想定可能な組合せについて記述することは不可能であり、当業者は、本発明の多くの更なる組合せ及び順列が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるそれらすべての変更形態、修正形態、及び変形形態を含むことを意図されている。
図2
図3
図5
図1
図4
図6
【国際調査報告】