(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-534595(P2015-534595A)
(43)【公表日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】難燃性組成物、その繊維、製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
C08L 23/06 20060101AFI20151106BHJP
C08L 85/02 20060101ALI20151106BHJP
D01F 6/46 20060101ALI20151106BHJP
D01F 6/00 20060101ALI20151106BHJP
D01F 6/94 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
C08L23/06
C08L85/02
D01F6/46 C
D01F6/00 A
D01F6/94 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-532581(P2015-532581)
(86)(22)【出願日】2013年9月20日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月7日
(86)【国際出願番号】IN2013000569
(87)【国際公開番号】WO2014045308
(87)【国際公開日】20140327
(31)【優先権主張番号】2960/DEL/2012
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】1253/DEL/2013
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515007752
【氏名又は名称】ディレクター ジェネラル ディフェンス リサーチ アンド ディヴェロップメント オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ アルヴィンド クマール
(72)【発明者】
【氏名】ニガム ヴィニータ
(72)【発明者】
【氏名】クマール サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ケルケッタ アンジュリーナ
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002CQ01X
4J002FD13X
4J002GB00
4J002GC00
4J002GF00
4J002GH00
4J002GK01
4J002GL00
4J002GN00
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD02
4L035EE14
4L035HH02
4L035LA01
4L035LA07
4L035MA01
(57)【要約】
本開示ではマトリックス及び添加剤を含む難燃性組成物及び繊維を提供し、マトリックス及び添加剤のそれぞれは独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。さらに、本開示ではマトリックス及び添加剤の難燃性組成物の溶融紡糸法を提供し、難燃性繊維を得るために、マトリックス及び添加剤のそれぞれは独立してUHMPE及びPPZから選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。本開示の難燃性繊維は多種多様な工業及び医薬用途を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと、
3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含む難燃性組成物であって、
前記マトリックス及び前記添加剤のそれぞれが独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、前記マトリックスがUHMPEである場合、前記添加剤がPPZであり、前記マトリックスがPPZである場合、前記添加剤がUHMPEであることを特徴とする、難燃性組成物。
【請求項2】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMPE)が91%(質量/質量)であり、前記ポリホスファゼンが9%(質量/質量)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリホスファゼン(PPZ)が92%(質量/質量)であり、前記超高分子量ポリエチレン(UHMPE)が8%(質量/質量)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリホスファゼンが、飽和脂肪族、不飽和脂肪族、C6〜C12アリールオキシ誘導体及びフルオロアルコキシ誘導体から成る群から選択されるか又はそれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、押出物、フィルム、膜、積層体、織布、繊維、フィラメント、糸、ペレット、コーティング及び発泡体から成る群から選択される形態で調製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記繊維が、
88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと、
3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含み、
前記マトリックス及び前記添加剤のそれぞれが独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、前記マトリックスがUHMPEである場合、前記添加剤がPPZであり、前記マトリックスがPPZである場合、前記添加剤がUHMPEである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記繊維が、円形、均一な直径を有する輪状繊維、三葉、中空、扁平楕円、楕円から円形、三角形(縁が丸い)、犬用の骨様、長さ方向に小葉様、Y形、リボン形、円形(長さ方向に鋸歯状)から成る群から選択される物理的形状を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
難燃性繊維を製造する方法であって、
88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックス及び3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、
前記反応混合物を、溶融紡糸口金において130℃〜250℃の範囲の温度で紡糸及び延伸して、前記難燃性繊維を得る工程とを含み、
前記マトリックス及び前記添加剤のそれぞれが独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、前記マトリックスがUHMPEである場合、前記添加剤がPPZであり、前記マトリックスがPPZである場合、前記添加剤がUHMPEであることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、デカリン、THF、ミネラルオイル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、トリフルオロエタノール、クロロホルム及びジクロロメタンから成る群から選択されるか又はそれらの混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及び前記ポリホスファゼン(PPZ)を、不活性雰囲気下での溶液ブレンディングで混合する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及び前記ポリホスファゼン(PPZ)を、不活性雰囲気下での溶融混合法により混合する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マトリックス及び添加剤を含む難燃性組成物に関する。このマトリックス及び添加剤は、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular weight Polyethylene)(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から独立して選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。本開示は、溶融紡糸法により難燃性長繊維を製造する方法にも関し、本開示の難燃性繊維は優れた難燃性及び様々な他の改善された性質を示す。本開示は更に、様々な用途における難燃性繊維の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過去30年間にわたって、比較的大きい分子量を有する可撓性ポリマーのゲル紡糸、溶融紡糸等の様々な紡糸技法が、高性能繊維の製造におけるその有用性により多くの注目を集めてきた。ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ(ビニルアルコール)繊維は、ゲル紡糸加工法を用いて製造できる典型的な高性能繊維である。これらのゲル紡糸繊維の中でも、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)繊維は、その強度が炭素及びアラミド繊維のそれを上回ることから最も注目されてきた。また、ポリホスファゼン(PPZ)の電界紡糸は、過去30年間にわたって、高性能繊維の製造におけるその有用性により多くの注目を集めてきた。
【0003】
米国特許第8057897号は、溶融紡糸可能なUHMPE及びHDPEの組成物を開示している。これらの組成物は、特定の準球状粒子を含む。このような組成物の溶融紡糸法及び製造される溶融フィラメント繊維も開示されている。ブレンド物の流動特性は、細管レオメトリによってキャラクタライズされる。米国特許第6599982号は、異なるムーニー粘度を有する少なくとも2種の単峰性フルオロエラストマーを含む加工助剤を導入することで改良した非フッ化溶融加工可能ポリエチレンの、改善された押出加工性を開示している。
【0004】
米国特許4281070号は、スクリュー押出機、射出成形機等の慣用の溶融成形装置で加工可能な改善された溶融特性を有するUHMPE成形粉を開示している。この成形粉は、70〜95質量%のUHMPE、5〜30質量%の中分子量ポリエチレン及び0.1〜10パーセントの微粉成核剤を含む。米国特許第4413110号は、開口部から押し出され、冷却されて不定長のゲルを形成する、比較的揮発性が低い溶媒中のUHMPE溶液を開示している。ゲルを延伸することで様々な繊維を形成する。
【0005】
米国特許第4545950号は、40〜120℃の融点を有する、パラフィンろうを添加したUHMPEの押出成形を開示している。溶融混合物を、温度180〜300℃のダイで溶融押出する。延伸し、成形した物品には実質的に延伸むらがない。米国特許第5474845号は、紡糸口金(spinnerette)を通して高密度のポリエチレンを溶融紡糸し、紡糸口金から出てくる繊維を冷却し、得られた繊維を50〜150℃で延伸することで製造する高強度ポリエチレン繊維を開示している。溶融紡糸で使用するこのポリエチレンは、125000〜175000g/モルの重量平均分子量Mw、5未満の多分散性及び955g/dm
3より高い密度を有するエチレンのホモポリマーである。延伸工程における延伸度は少なくとも400%である。
【0006】
米国特許第7935283号は、超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレン(HDPE)との均質ブレンド物である組成物を開示しており、これらは溶融紡糸可能である。組成物は特定の準球状粒子を含む。
【0007】
米国特許第5104602号は、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物とエーテルホスファゼンとのブレンド物から電界紡糸により形成される繊維を開示している。次に、この溶液を繊維に形成し、室温で又は中等度の加熱でもって硬化させる。複合材料に低格子エネルギー塩をドープして導電性繊維を形成することもできた。
【0008】
米国特許第5190819号は、金属酸化物、エーテルホスファゼン及び塩のブレンド物からの導電性繊維の製造を開示している。形成される長繊維を、室温での又は中等度の加熱を伴った押出成形により硬化させた。この発明は任意で、帯電防止繊維用の塩を含有する。
【0009】
米国特許第7235295号は、多種多様な医学的及び他の用途において有用な高分子ナノ繊維を開示している。ナノ繊維は生分解性及び非分解性ポリホスファゼン並びにそれらと有機、無機/有機金属ポリマー、またヒドロキシアパタイト等のナノサイズ粒子とのブレンド物から形成される。
【0010】
米国特許出願第2012/0029150号は、それぞれがコア及び速い反応性を有すると公知である少なくとも1つの官能基を有する2種の前駆体を混合して繊維を形成する方法を開示している。次に、ポリホスファゼン繊維製造中、混合した前駆体を加熱下で反応させながら押出成形して架橋を行う。
【0011】
米国特許第4405738号は、難燃剤量のシクロトリ(又はテトラ)ホスファゼンを組み込んだポリエステルポリマー及びコポリエステルポリマーを開示している。これらのホスファゼンを、エステル交換開始時、例えば重縮合及び慣用の溶融紡糸の前又は、望ましい場合、重縮合後だが溶融紡糸の前に添加することができる。
【0012】
Saxenaらは、Journal of Applied Polymer Science,DOI:10.1002/app.32912,(2010),Material and Design 31,1148−1155(2010)、J,Nanoscience&Nanotechnology,9(2009)1−10及びJ.renif.Plast.Comp.(2892)(2009)15において、ポリホスファゼンの合成及び様々なポリマーブレンド物に対するその効果を開示している。
【0013】
主マトリックス又はナノ繊維を延伸するための添加剤としてのPPZ及び幾つかの特定の特性へのその効果についての広範な研究が、Mark,J.E.、Allcockら(Inorganic Polymers,1st Ed.,Prentice−Hall,Englewood Cliffs,NJ,pg.63,1992)及びAllcock,H.R.(Chemistry and Application of Polyphosphazenes,Wiley−Interscience,NJ,Ch.1,pg.23,2002)によって報告されているが、ポリホスファゼン繊維についての文献は多くはない。
【0014】
Xiaoyan Zhangらは、“Synthesis and Characterization of Novel Magnetic Fe
3O
4/polyphosphazene Nanofibers”,Solid State Sciences,11(2009)1861において、超音波照射による利用し易いアプローチを通して製造に成功した新規な磁気Fe
3O
4/ポリホスファゼンナノ繊維を開示している。
【0015】
Jianwei Fuらは、“The production of porous carbon nanofibers from cross−linked polyphosphazene nanofibers”Carbon 49(2011)1033-1051において、ポリホスファゼンナノ繊維を形成し、それを炭化することで、活性化工程を必要とすることなく製造される、平均直径90nmを有する均一な多孔性炭素ナノ繊維を開示している。
【0016】
Paolo Carampiらは、“Electrospun polyphosphazene nanofibers for in vitro rat endothelial cells proliferation”,Journal of Biomedical Materials Research,Part A,DOI 10.1002/jbm.a.30999において、またLakshmi S.Nairらは、“Fabrication and Optimization of Methylphenoxy Substitute Polyphosphazene Nanofibers for Biomedical Applications”,Biomacromolecules,2004,5,2212において、電界紡糸法では、組織工学及び生物医学用途向けの極薄ポリホスファゼン繊維を形成できることを開示している。
【0017】
これまで、HDPE、LDPEを他の構成要素として使用するゾルゲル技法又は溶融紡糸によるUHMPE繊維の延伸についての研究は報告されているものの、良好な難燃特性及び他の改善された性質を有するUHMPE繊維が必要とされている。
【0018】
電界紡糸による生分解性ポリ[ビス(エチルアラナト)ホスファゼン]−ナノヒドロキシアパタイト(PNEA−nHPAp)複合ナノ繊維マトリックスの製造についての研究は生分解特性を示し、またヒドロキシアパタイトと適合性があることが判明している。
【0019】
高性能複合材料、防火服及び防御用途のデバイスの作製に使用可能な難燃特性を有し、それゆえに高温安定性が必要とされる多目的用途に使用可能な繊維が必要とされている。これまで、ポリホスファゼン繊維の製造での溶融紡糸技法の利用についての開示はなされていない。これまで報告されている開示の殆どは、金属酸化物、ヒドロキシアパタイトその他等を他の構成要素として使用した、電界紡糸技法及び加熱下での溶液押出によるポリホスファゼン繊維の製造を扱ったものである。さらに、ポリホスファゼンエラストマー繊維の延伸は、その溶融安定性の悪さから厄介な作業である。したがって、ポリホスファゼン繊維を製造するための組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0020】
本開示のある態様では、88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含む難燃性組成物を提供し、マトリックス及び添加剤のそれぞれは独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。
【0021】
本開示の別の態様では、88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含む難燃性繊維を提供し、マトリックス及び添加剤のそれぞれは独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。
【0022】
さらに、本開示のある態様では、UHMPE/PPZの難燃性組成物を溶融紡糸して難燃性繊維を得る方法を提供する。
【0023】
本開示の更に別の態様は、本開示の難燃性繊維の様々な工業及び医薬目的での使用を提供する。
【0024】
本主題のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の記載内容を参照するとより深く理解できる。この概要は一連の概念を簡単に紹介するものである。この概要は主題の鍵となる特徴又は本質的な特徴を明らかにすることを意図するものでもなければ、主題の範囲を限定することを意図するものでもない。
主題の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の記載内容及び添付の図面からより深く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1(a)】溶融紡糸した難燃性UHMPE系繊維を示す。
【
図1(b)】溶融紡糸した難燃性PPZ系繊維を示す。
【
図2】純ポリホスファゼンのDSCプロットを示す。
【
図3】ポリホスファゼン/超高分子量ポリエチレンの難燃性組成物のDSCプロットを示す。
【
図4】本開示の組成物(UHMPE(マトリックス)/PPZ(添加剤))のクリープ挙動を示す。
【
図5】(a)流動状態での本開示の組成物のレオマイクログラフ(rheomicrograph)である(UHMPE:88%、PPZ:12%)。(b)流動状態での本開示の組成物のレオマイクログラフである(UHMPE:91%、PPZ:9%)。
【
図6(a)】純ポリホスファゼンのTGAプロットを示す。
【
図6(b)】ポリホスファゼン(マトリックス)/超高分子量ポリエチレン(添加剤)の難燃性組成物のTGAプロットを示す。
【
図7】純ポリホスファゼン及びポリホスファゼン(マトリックス)/超高分子量ポリエチレン(添加剤)の難燃性組成物の粘性を示す。
【
図8】純ポリホスファゼン及びポリホスファゼン(マトリックス)/超高分子量ポリエチレン(添加剤)の難燃性組成物の貯蔵弾性率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示では、88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含む難燃性組成物を提供し、マトリックス及び添加剤のそれぞれは独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。
【0027】
本開示のある実施形態では、マトリックスとしての超高分子量ポリエチレン(UHMPE)と添加剤としてのポリホスファゼン(PPZ)とを含む難燃性組成物を提供する。
【0028】
さらに、本開示のある実施形態では、88〜97%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)と3〜12%(質量/質量)のポリホスファゼンとを含む難燃性組成物を提供する。
【0029】
本開示の別の実施形態では、91%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)と9%(質量/質量)のポリホスファゼン(PPZ)とを含む難燃性組成物を提供する。
【0030】
本開示の更に別の実施形態では、マトリックスとしてのポリホスファゼン(PPZ)と添加剤としての超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性組成物を提供する。
【0031】
さらに、本開示のある実施形態では、88〜97%(質量/質量)のポリホスファゼン(PPZ)と3〜12%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性組成物を提供する。
【0032】
本開示の別の実施形態では、92%(質量/質量)のポリホスファゼン(PPZ)と8%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性組成物を提供する。
【0033】
本開示の更に別の実施形態では、90%(質量/質量)のポリホスファゼン(PPZ)と10%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性組成物を提供する。
【0034】
本開示のある実施形態では、押出物、フィルム、膜、積層体、織布、繊維、フィラメント、糸(yarn)、ペレット(pellet)、コーティング及び発泡体から成る群から選択される形態で調製される難燃性組成物を提供する。
【0035】
本開示の別の実施形態では、88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含む繊維を提供し、マトリックス及び添加剤のそれぞれは独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。
【0036】
本開示の更に別の態様では、円形、均一な直径を有する輪状繊維、三葉、中空、扁平楕円、楕円から円形、三角形(縁が丸い)、犬用の骨様(dog−bone)、長さ方向に小葉様、Y形、リボン形、円形(長さ方向に鋸歯状)の物理的形状を有する繊維を提供する。
【0037】
本開示ではさらに、難燃性繊維の製造方法であって、88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックス及び3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を、溶融紡糸口金において100℃〜250℃の範囲の温度で紡糸及び延伸して、前記難燃性繊維を得る工程とを含み、前記マトリックス及び前記添加剤のそれぞれが独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、前記マトリックスがUHMPEの場合、前記添加剤がPPZであり、前記マトリックスがPPZの場合、前記添加剤がUHMPEである方法を提供する。
【0038】
本開示のある実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、88〜97%(質量/質量)の範囲の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及び3〜12%(質量/質量)の範囲のポリホスファゼン(PPZ)を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度100℃〜250℃で紡糸及び延伸して、前記難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0039】
本開示の別の実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、97%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及び3%(質量/質量)のポリホスファゼンを有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度130℃〜250℃で紡糸及び延伸して、難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0040】
本開示の更に別の実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、91%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及び9%(質量/質量)のポリホスファゼンを有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度130℃〜250℃で紡糸及び延伸して、難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0041】
本開示のある実施形態においては、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼンを不活性雰囲気下での溶液ブレンディング(solution blending)又は溶融混合法により混合する。
【0042】
さらに、本開示のある実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、88〜97%(質量/質量)の範囲のポリホスファゼン(PPZ)及び3〜12%(質量/質量)の範囲の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度100℃〜250℃で紡糸及び延伸して、難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0043】
本開示のある実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、97%(質量/質量)のポリホスファゼン及び3%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度100℃〜250℃で紡糸及び延伸して、難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0044】
本開示の別の実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、92%(質量/質量)のポリホスファゼン及び8%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度100℃〜250℃で紡糸及び延伸して、難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0045】
本開示の更に別の実施形態では、難燃性繊維の製造方法であって、90%(質量/質量)のポリホスファゼン及び10%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)を有機溶媒と混合して、反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を溶融紡糸口金において温度100℃〜250℃で紡糸及び延伸して、難燃性繊維を得る工程とを含む方法を提供する。
【0046】
本開示の方法で使用する有機溶媒の非限定的な例は、デカリン、THF、ミネラルオイル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、トリフルオロエタノール、クロロホルム及びジクロロメタン又はそれらの混合物である。
【0047】
本開示に従った繊維の溶融紡糸で使用する溶融紡糸口金の非限定的な例は、Ventures and Consultancy Bradford Limited社が製造するモデルである。
【0048】
紡糸口金から出てくる繊維は、長さ約2.5メートルの冷却スタックに通される。
【0049】
本開示のある実施形態において、ポリホスファゼン(PPZ)及び超高分子量ポリエチレン(UHMPE)は、不活性雰囲気下での溶液ブレンディング又は溶融混合法によって混合される。
【0050】
本開示の別の実施形態においては、PPZ及びUHMPEを質量で88:12〜97:3の範囲の比で混合し、この混合を、不活性雰囲気下での溶液ブレンディング、低温粉砕(cryogenic grinding)又は溶融混合法により行う。
【0051】
本開示に従った溶融紡糸を、ポリマーがそのポリマーの分解温度より低い温度で加工可能な形で、様々な圧力及び約60℃〜250℃の温度で行う。
【0052】
本開示に従って使用するポリホスファゼン(PPZ)の非限定的な例は、飽和脂肪族、不飽和脂肪族、アリールオキシ誘導体及びフルオロアルコキシ誘導体から成る群から選択されるか又はそれらの混合物である。ポリホスファゼンの調製に使用されるこのアリールオキシ誘導体は通常、C
6〜C
12の炭素原子を有する。フルオロアルコキシ誘導体は通常、C
2〜C
5の範囲の炭素原子を有するフルオロアルコールを使用して調製される。
【0053】
本開示で使用するポリホスファゼンを、AllcockらがJ.Am.Chem.Soc.1965,87,4216で報告したように、ヘキサクロロホスホニトリルトライマーの熱開環重合とそれに続く、適当な有機部分を使用した求核置換により合成する。フルオロアルコキシ及びアリルフェノキシをペンダント基として有する多種多様なPPZコポリマーが調製され、溶液流延により正しく分散させることで添加剤としてのUHMPEを添加して繊維を延伸するのに利用される。得られたポリマーのキャラクタリゼーションを行い、繊維を延伸するために溶融紡糸する。
【0054】
本開示のある実施形態において、難燃性延伸性繊維は、50℃〜150℃の範囲の温度で製造可能である。
【0055】
本開示ではさらに、88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックスと3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤とを含む難燃性繊維を提供し、前記マトリックス及び前記添加剤のそれぞれは独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択され、マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。
【0056】
本開示のある実施形態では、88〜97%(質量/質量)の範囲の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)と3〜12%(質量/質量)の範囲のポリホスファゼン(PPZ)とを含む難燃性繊維を提供する。
【0057】
本開示の別の実施形態では、91%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)と9%(質量/質量)のポリホスファゼンとを含む難燃性繊維を提供する。
【0058】
さらに、本開示のある実施形態では、88〜97%(質量/質量)の範囲のポリホスファゼン(PPZ)と3〜12%(質量/質量)の範囲の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性繊維を提供する。
【0059】
本開示の別の実施形態では、97%(質量/質量)のポリホスファゼン(PPZ)と3%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性繊維を提供する。
【0060】
本開示の更に別の実施形態では、92%(質量/質量)のポリホスファゼン(PPZ)と8%(質量/質量)の超高分子量ポリエチレン(UHMPE)とを含む難燃性繊維を提供する。
【0061】
本開示の別の実施形態では、最高300℃〜最高400℃の範囲において熱安定性を有する難燃性繊維を提供する。
【0062】
本開示ではさらに、本開示に従って製造した難燃性繊維の、様々な工業及び医薬目的での使用を提供する。本開示の難燃性繊維には様々な用途があり、その幾つかは以下の通りである:(a)本開示の難燃性繊維は、戦車、装甲車、対切創ジャケット、対切創手袋等の防衛装備に良好な温度順応性を付与するために広く使用可能であり、(b)本開示の難燃性繊維は、航空、宇宙飛行用の複合材料、海軍船舶用ロープ、漁網、風及び波に対する海のいけす(ocean cage)、スポーツ用品、建築計画等の複合材料分野でも使用可能であり、(c)航空機内装、住居内装、船舶内装、ホテル内装、公共レクリエーションセンターの内装、全ての車両の内装における独立型用途向けの本開示の難燃性繊維、(d)本開示の難燃性繊維は、防弾チョッキ、ジャケット、衣料品、ヘルメット及びプレートの製造にも使用され、(e)本開示の難燃性繊維を既存の高分子材料に組み入れてこれらの材料を可燃性から不燃性複合材料に変化させることが可能である。
【0063】
本開示に従って製造した難燃性繊維は、多種多様な工業及び医療用途で使用するための、滑らかな質感、良好な難燃性及び改善された延伸性、耐久性及び熱安定性を有する。
【0064】
ある実施形態において、本開示の難燃性繊維の引張強度は、マトリックスとしてのUHMPE/PPZの分子量の変化に伴って、また添加剤としてのPPZ/UHMPEの量によって変化する。
【0065】
UHMPE/PPZ系繊維の高い溶融粘度及び加工性の悪さは、高分子量ポリマー鎖の絡み合いが原因と考えられる。高い絡み合い密度は最終用途において優れた機械的性質を付与するものの、加工中、溶融物中のポリマー鎖の易動度は制限される。したがって、UHMPEの絡み合い密度を低下させ、またPPZの溶融安定性を上昇させることで、より高い流動特性を有する加工性の高い繊維とその完全に融合した製品が得られる。この寄稿論文で報告された手法は、溶液ブレンディング中のポリマー鎖の絡み合いを防止し、それによって独特の初期モルホロジーをUHMPEに作り出すことをベースとしている。レオロジー実験は、エラストマーポリホスファゼンをUHMPEマトリックスにおける添加剤として使用し、またUHMPEをPPZマトリックスに対する添加剤として使用することで、独特で絡み合っていないモルホロジーを有する超高分子量ポリエチレン及び繊維の延伸に十分な溶融強度及び流動性を有する独特なモルホロジーのポリホスファゼンを開発可能であることを証明した。例えば、12Phr(樹脂100部あたりの部数)のPPZをUHMPEマトリックスに添加し、10Phr(樹脂100部あたりの部数)のUHMPEをPPZマトリックスに添加する。分散物(dispersant)のPhrが上記の組成より多いと、主マトリックス本来の性質が失われる。したがって、後に応用することを考慮すると、繊維を延伸するためには上記の組成が最適である。最適な絡み合い密度は、圧縮成形によるシート形成及び繊維延伸により実証されるように、流動ひいては材料の加工性に良い影響を及ぼす。続いて、融点(Tm)より高い温度で加熱するとポリマー鎖が徐々に絡み合い、完全に融合した粒界のない製品が形成される。
【0066】
本開示に従って製造する繊維の物理的形状の非限定的な例は、均一な直径を有する輪状繊維、円形、三葉、中空、扁平楕円、楕円から円形、三角形(縁が丸い)、犬用の骨様、長さ方向に小葉様、Y形、リボン形、円形(長さ方向に鋸歯状)である。
【0067】
本開示の難燃性繊維の一般的な製造スキームは以下の通りである。
【0068】
ジクロロポリホスファゼンエラストマーの調製:ヘキサクロロホスホニトリルトライマーの熱開環重合を、Allcock,H.R.らがAm.Chem.Soc.1965,87,4216において報告しているように250℃の炉内で行った。
【0069】
求核置換PPZの調製:上記のジクロロポリホスファゼンをTHFが入った三つ口フラスコに入れ、トリフルオロエタノール、オクタフルオロペンタノール及びアリルフェノールのナトリウム塩をそれぞれ、不活性雰囲気下で滴下漏斗で滴加し、約24時間にわたって撹拌した。得られた材料を水中に注いでエラストマーを回収し、次に真空乾燥機で乾燥させた。
【0070】
マトリックスと添加剤との混合:88〜97%(質量/質量)の範囲のマトリックス及び3〜12%(質量/質量)の範囲の添加剤。マトリックス及び添加剤はそれぞれ独立して超高分子量ポリエチレン(UHMPE)及びポリホスファゼン(PPZ)から選択される。マトリックスがUHMPEの場合、添加剤はPPZであり、マトリックスがPPZの場合、添加剤はUHMPEである。トリフルオロエトキシ、オクタフルオロペントキシ及びアリルフェノキシを有するUHMPE/PPZマトリックスは添加剤としてのPPZ/UHMPEと混合される。マトリックス及び添加剤を、溶液混合により混合した。使用した溶媒はデカリン及びTHFであった。溶解後のポリマーを次に低温粉砕により混合し、300℃での圧縮成形によりフィルムに成型した。
【0071】
回転式レオメトリ:純UHMPE、純PPZ、上述したように調製したUHMPE及びPPZ組成物のフィルムの粘度及び流動特性を、回転式レオメータ、モデルAR.G2により室温(27±2℃)でキャラクタライズした。全ての試験において、使用したコーン/プレートジオメトリは直径25mmを有し、コーン角度は2°であった。フィルムを小さな円形片に切断し、コーン/プレートジオメトリの間に置き、フィルム片は溶融し、粘度をせん断速度で測定した。
【0072】
溶融紡糸:UHMPE及びPPZの様々な組成物の繊維を紡糸し、Veuntures and Consultancy Bradford Limited社製の溶融紡糸口金において、紡糸温度120〜250℃で紡糸及び延伸した。紡糸口金から出てきた繊維を長さ約2.5メートルの冷却スタックに通した。この冷却スタックから、繊維をリバースロールを経由して延伸ロールに送った。
【0073】
本開示の別の実施形態において、反応性ペンダント基及びPPZに対する添加剤(UHMPE)量が様々なPPZ系繊維のLOI(限界酸素指数)値。
【0074】
本開示の更に別の実施形態において、反応性ペンダント基及びUHMPEに対する添加剤(PPZ)量が様々なUHMPE系繊維のLOI値。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は本開示を説明するためのものであって、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当然のことながら、上記の概要及び以下の詳細な記載内容は共に例示、説明のためのものにすぎず、主題についてより詳しく説明することを意図したものである。
【0076】
実施例1
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0077】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合97/3(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、300℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を200℃で繊維に溶融紡糸した。
【0078】
実施例2
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0079】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合88/12(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、280℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタライズし、最後に、混合物を190℃で繊維に溶融紡糸した。
【0080】
実施例3
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0081】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合91/9(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、300℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を200℃で繊維に溶融紡糸した。
【0082】
実施例4
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20グラム)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全塊を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0083】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりPPZ/UHMPEの割合88/12(質量/質量)でUHMPE8(質量/質量%)と混合し、次に低温粉砕により混合し、300℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を180℃で繊維に溶融紡糸した。
【0084】
実施例5
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20グラム)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全塊を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0085】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりPPZ/UHMPEの割合97/3(質量/質量)でUHMPE8(質量/質量%)と混合し、次に低温粉砕により混合し、300℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を180℃で繊維に溶融紡糸した。
【0086】
実施例6
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20グラム)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全塊を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0087】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりPPZ/UHMPEの割合92/8(質量/質量)でUHMPE8(質量/質量%)と混合し、次に低温粉砕により混合し、300℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を180℃で繊維に溶融紡糸した。
【0088】
実施例7
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20グラム)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0089】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりPPZ/UHMPEの割合90/10(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、280℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を150℃で繊維に溶融紡糸した。
【0090】
実施例8
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0091】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合98/2(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合した。最後に、この混合物は溶融紡糸ができなかった。これは分散物PPZのPhrがUHMPEマトリックスに流動性を付与するには不十分だったからである。
【0092】
実施例9
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0093】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合99/1(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合した。最後に、この混合物は溶融紡糸ができなかった。これは分散物PPZのPhrがUHMPEマトリックスに流動性を付与するには不十分だったからである。
【0094】
実施例10
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0095】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりPPZ/UHMPEの割合98/2(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合した。最後に、この混合物は溶融紡糸ができなかった。これは分散物PPZのPhrがPPZマトリックスに流動性を付与するには不十分だったからである。
【0096】
実施例11
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0097】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合51/49(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、250℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を150℃で繊維に溶融紡糸した。得られた組成物は本質的に不混和性であったが、これは分散相の濃度が飽和したからであり繊維はその質感及び性質において不均一であった。
【0098】
実施例12
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0099】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりUHMPE/PPZの割合50/50(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、250℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を150℃で繊維に溶融紡糸した。得られた組成物は本質的に不混和性であったが、これは分散相の濃度が飽和したからであり繊維はその質感及び性質において不均一であった。
【0100】
実施例13
報告された方法で調製したジクロロポリホスファゼンエラストマー(20.0グラム、0.055モル)を、無水THF(400ml)が入った三つ口フラスコ(3.0リットル)に入れた。トリフルオロエタノール(26.4グラム、0.264モル)、オクタフルオロペンタノール(11.49グラム、0.0495モル)及びアリルフェノール(2.21グラム、0.0165モル)のナトリウム塩を不活性雰囲気下、無水THF中で別々に調製した。調製したフルオロアルコール及びアリルフェノールのナトリウム塩を、不活性雰囲気下でポリマー溶液に一滴ずつあるいは滴下漏斗により添加し、24時間にわたって連続的に撹拌した。反応完了後、全材料を水中に注ぐと置換PPZが得られた。このようにして得られたPPZを真空乾燥機で4時間にわたって100℃、6〜7mmHgで乾燥させた。
【0101】
調製したPPZを、UHMPE及びPPZそれぞれの共溶媒としてのデカリン及びTHF中での溶液混合によりPPZ/UHMPEの割合51/49(質量/質量)でUHMPEと混合し、次に低温粉砕により混合し、250℃での圧縮成形によりフィルムに成型し、キャラクタリゼーションを行い、最後に、混合物を150℃で繊維に溶融紡糸した。得られた組成物は本質的に不混和性であったが、これは分散相の濃度が飽和したからであり繊維はその質感及び性質において不均一であった。
【0102】
実施例14
UHMPE、PPZ及びこれらの組成物の熱的性質
示差走査熱量測定(DSC)は、試料(本開示の繊維3〜5mg)及び基準の温度を上昇させるのに必要な熱量における差を温度の関数として測定する熱分析技法である。実験中、試料及び基準は共にほぼ同じ温度に維持される。一般に、DSC分析用の温度プログラムは、試料ホルダの温度が時間の関数として直線的に上昇するように設計される。基準試料は、走査する温度範囲にわたって明確に定義された熱容量を有する。示差走査熱量計(DSC)は、材料における熱転移に関係した温度及び熱流を測定する。これによって、難燃性繊維のガラス転移温度及び融点が得られる。通常の用法には、研究中の材料の調査、選択、比較及び最終用途性能、品質管理並びに製造用途が含まれる。純UHMPE、純PPZ及びその様々な組成物のDSC結果を表1に示す。UHMPEの融点は組成物ごとに変化した。UHMPEを3〜12%質量/質量のPPZと化合した後、DSCサーモグラフにはたった1つの鋭い溶融ピークしか現れず、これは単相モルホロジーの形成に起因すると考えられる。純PPZ及びPPZ/UHMPE(92:8)組成物のDSCサーモグラフを、
図2、3に示す。純PPZのTgは約55℃であり、幅広い溶融ピークが約70℃で観察され、これはPPZの非晶質性を示している。溶融は50℃から始まり、130℃で終了する。PPZを添加剤としての3〜12質量%のUHMPEと化合した後、DSCサーモグラフには約117℃のたった1つの鋭い溶融ピークしか現れず、これは単相モルホロジーの形成に起因すると考えられる。これらの特徴は、PPZ及びUHMPEが相溶性であることを示唆している。
【0103】
PPZ/UHMPE(92:8)のTG(熱重量)分析は、室温から300℃まで質量における損失がなかったことを示したことから、これらの組成物は最高300℃まで熱的に安定であると推論し得る。さらに、実施例1〜7の組成物は室温から400℃まで質量における損失を示さなかったことから、これらの組成物は最高300℃まで熱的に安定であると推論し得る。全ての組成物の分解は約300℃で始まり、500℃で終了し、最高分解速度は430〜490℃であった。800℃でのチャー収率は30%であると判明した。
【0104】
純粋なPPZのTG分析は、捕捉された溶媒に起因する、200〜250℃から始まる質量損失を示した。ポリマー主鎖の分解は300℃で始まり、分解速度は320℃で最高となり、382℃で終了する。800℃でのPPZのチャー収率は55%であると判明し、Krevelen式に基づいたLOIは表1に示すように29.5%であった。純ポリマー及び様々な組成物のTG分析は、PPZ含有量が上昇するとチャー収率及びLOI(限界酸素指数)値が一貫して上昇することを明らかにし、これはチャー形成特性と難燃性との直接的な相関関係を示している。後出の表1の結果から、実施例1〜7の組成物は優れた難燃性及び熱的性質を有し、それに対して実施例8、9、10の組成物は所望の難燃性及び熱的性質を有していないと結論づけることができる。実施例11、12、13の難燃性及び熱的性質は、不均一な繊維形成により又は繊維が形成されなかったことから評価することができない。
【0105】
【表1】
【0106】
実施例15
UHMPE、PPZ及びこれらの組成物の機械的性質
これは、1本の繊維の強度を示す最も重要な単一指標である。繊維を引き離すのに必要な力を、切れる前に繊維がどのぐらい伸びるかと共に求める。引張試験をASTM D−3822に準拠してエレクトロパルス1000ユニバーサル試験機で行い、引張試験のクロスヘッド速度は1mm/分であった。各組成物について少なくとも5個の試料を試験し、結果の平均値をとった。後出の表2の結果から、実施例1〜3の組成物は優れた機械的性質を有するが、それに対して実施例8、9、10の組成物は所望の機械的性質を有していないと結論づけることができる。実施例11、12、13の機械的性質は、不均一な繊維形成により評価することができない。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例16
UHMPE、PPZ及びこれらの組成物のレオロジーキャラクタリゼーション
様々な組成物の貯蔵弾性率及び粘度は、PPZ含有量の上昇に伴って低下する。しかしながら、添加剤としてのPPZの9%組成物の貯蔵弾性率(G’)は28℃で約60GPaに留まり、この値は周囲条件下でのUHMPE繊維の通常の用途には十分である。純UHMPE及びUHMPE/PPZ組成物のクリープ曲線を
図6に示す。純UHMPEでは一般的な粘弾性流動は見られず、流動はPPZを添加した組成物において一貫していた。
図6に示すように、組成物中のPPZ含有量が多くなればなるほど見掛け粘度は低くなり、解きほぐしは減る。PPZエラストマーの導入は粘度を低下させ、UHMPEの加工性を改善した。本開示のUHMPE/PPZ組成物は改善されたレオロジー挙動を示した。PPZはUHMPEに溶融粘弾性流動を付与し、したがってPPZを添加したUHMPEは慣用の方法で加工可能であると期待し得る。これらの観察結果は学術的にも工業的にも、また主には防衛部門用途にとって重要となり得る。また、様々な組成物の粘度及び貯蔵弾性率は、
図7、8においてそれぞれ示すように、PPZにおけるUHMPE含有量の上昇に伴って上昇する。純PPZの貯蔵弾性率(G’)は約100Paであると判明しているが、UHMPEをPPZに添加するだけで、貯蔵弾性率は700paまで上昇する。組成物の貯蔵弾性率におけるこの7倍の上昇は溶融安定性をPPZ溶融物に付与し、粘度データもまた、PPZ及びPPZ/UHMPE粘度がより高い応力で互いに匹敵することを示している。
【0109】
その特定の好ましい実施形態を参照しながら主題について極めて詳細に説明してきたが、他の実施形態も可能である。したがって、本開示の趣旨及び範囲を、本明細書に記載の好ましい実施形態の記載内容に限定するべきではない。
【0110】
参考文献
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11. Paolo Carampi, Maria Teresa Conconi, Silvano Lora, Anna Michela Menti, Silvia Baiguera, Silvia Bellin, Claud io Grandi, Pier Paolo Parnigotto, “Electrospun polyphosphazene nanofibers for in vitro rat endothelial cells proliferation”, Journal of Biomedical Materials Research, Part A, DOI 10.1002/jbm.a.30999.
12. Lakshmi S. Nair, Subhabrata Bhattacharya, Jared D. Bender, Yaser E. Greish, Paul W. Brown, Harry R. Allcock, and Cato T. Laurencin, “Fabrication and Optimization of Methylphenoxy Substitute Polyphosphazene Nanofibers for Biomedical Applications”, Biomacromolecules, 2004, 5, 2212.
13. Bhattacharya, Subhabrata, Kumbar, Sangamesh G., Khan, Yusuf M.,Nair, Lakshmi S., Singh, Anurima, Krogman, Nick R., Brown, Paul W., Allcock, Harry R., Laurencin, Cato T., “Biodegradable Polyphosphazene-Nanohydroxyapatite Composite Nanofibers: Scaffolds for Bone Tissue Engineering”, Journal of Biomedical Nanotechnology, Volume 5, Number 1, February 2009, pp. 69-75(7)
【国際調査報告】