特表2015-534908(P2015-534908A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-534908(P2015-534908A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】基板加工用の加工ディスク
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/10 20060101AFI20151110BHJP
   B24D 7/06 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   B24D7/10
   B24D7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-542239(P2015-542239)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(85)【翻訳文提出日】2015年7月4日
(86)【国際出願番号】EP2013073577
(87)【国際公開番号】WO2014076059
(87)【国際公開日】20140522
(31)【優先権主張番号】102012220944.1
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】マーチン シュプーヒャー
(72)【発明者】
【氏名】エルハム カティビ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ブリージェス ラズィクラル シャー
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA03
3C063BA08
3C063BA22
3C063BA24
3C063BH05
3C063FF18
3C063FF21
3C063FF30
(57)【要約】
本発明は、収容領域13を有する支持体11と、加工領域14とを備え、支持体11の接続領域24に取り付けられた1つまたは複数のセグメント12を有する加工部17をさらに備える、基板22の加工用の加工ディスク10であって、少なくとも1つのセグメント12及び/又はセグメント12と支持体11の少なくとも1つの接続領域24に冷却開口部25が設けられている。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受入領域(13)と加工領域(14)とを有する支持体(11、31)と、
前記支持体(11、31)の接続領域(24、34)に取り付けられた1つまたは複数のセグメント(12、32)を有する加工部(17)と、
を備え
少なくとも1つのセグメント(12、32)及び/又はセグメント(12、32)と前記支持体(11、31)の少なくとも1つの接続領域(24、34)に、冷却開口部(25、33)が少なくとも部分的に設けられている、
基板(22)の加工用の加工ディスク(10、30)。
【請求項2】
少なくとも1つのセグメント(12、32)及び/又は前記支持体(11、31)の少なくとも1つの接続領域(24、34)に、少なくとも1つの前記冷却開口部(21)が完全に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の加工ディスク。
【請求項3】
少なくとも1つの前記冷却開口部(21)が前記支持体(11)に形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の加工ディスク。
【請求項4】
前記支持体(11)の前記冷却開口部が貫通開口部(21)として構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の加工ディスク。
【請求項5】
前記支持体(11)の前記冷却開口部がブラインド開口部として構成される、ことを特徴とする請求項3の加工ディスク。
【請求項6】
前記支持体(31)及び前記セグメント(32)に少なくとも1つの前記冷却開口部(33)が形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の加工ディスク。
【請求項7】
前記冷却開口部(33)が前記支持体(31)において貫通開口部(35)として、及び前記セグメント(32)において貫通開口部(36)として構成される、ことを特徴とする請求項6に記載の加工ディスク。
【請求項8】
前記冷却開口部が前記支持体(31)において貫通開口部(35)として、及び前記セグメント(32)においてブラインド開口部として構成される、ことを特徴とする請求項6に記載の加工ディスク。
【請求項9】
前記少なくとも1つの冷却開口部が前記セグメント(32)において貫通開口部(36)として構成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の加工ディスク。
【請求項10】
前記冷却開口部(25、33)が前記セグメント(12、32)の断面積の最大80%を占める、ことを特徴とする請求項1乃至9の少なくとも1つに記載の加工ディスク。
【請求項11】
前記冷却開口部(25、33)が熱伝導物質で充填され、該物質の熱伝導率が前記支持体(11、31)の熱伝導率よりも高い、ことを特徴とする請求項1乃至10の少なくとも1つに記載の加工ディスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に規定された基板加工用の加工ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
「加工ディスク」という用語は、研磨、切断及びそれらと類似の手段を用いて基板を加工するための加工ディスクすべてを包含する。加工ディスクは平面型またはなべ型に構成してもよいことに加え、支持体と、支持体に接続された1つまたは複数のセグメントからできた加工部とを備えてよい。加工ディスクは、複数のセグメントまたは1つの環状のセグメントを有してもよい。加工ディスクの加工法によっては、セグメントを研磨セグメントおよび切断セグメントとする。
【0003】
加工ディスクを無機質基板、被覆基板等の表面加工用の研磨ディスクとして構成することが特許文献1から知られている。研磨ディスクはなべ型に構成されるうえ、受入領域及び研磨領域を有する支持体と、複数の研磨セグメントを有する加工部とを備える。研磨セグメントは、加工する基板とは反対の背面において支持体の接続領域に取り付けられる。研磨セグメントを接続するための加工手段としてはんだ付け、溶接等が用いられる。廃棄物を排出するため、研磨ディスクは支持体に排出口を有し、その排出口を通じて廃棄物が排出系により排出される。
【0004】
研磨ディスクを用いた表面加工の際に、加工する基板との摩擦により研磨セグメントに熱が生じる。研磨セグメントの寿命を延ばし、機械加工プロセスを支援するために、加工中には研磨ディスクを冷却する。冷媒は、研磨セグメントと支持体の排出口の間の中間スペースを通じて研磨ディスクの内部領域に流入する。研磨セグメントは冷媒に冷却される一方で、冷却された支持体に熱を放出する。
【0005】
既知の加工ディスクには、切断セグメント間の中間スペースを通じて冷媒を加えても、セグメントの寿命が短いという欠点がある。さらに、セグメント間の中間スペースが小さいことから、冷却が妨げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0865878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、寿命の長いセグメントを有する基板を加工する加工ディスクの開発である。さらに、加工中の加工速度の高速化も目的となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上述べた加工ディスクについて、本発明の目的は独立項の構成により達成される。有効な改良点は従属項に記載されている。
【0009】
本発明において冷却開口部は、少なくとも1つのセグメント及び/又はセグメントと支持体の少なくとも1つの接続領域において部分的に設けられている。基板の加工中には、支持体の接続領域に設けられた冷却開口部により、セグメントのみ、または支持体とセグメントの両方においてセグメントからの放熱性が改善される。放熱性の改善により、セグメントの寿命が延び、加工中の加工速度が上昇する。
【0010】
上述の少なくとも1つの冷却開口部は、少なくとも1つのセグメント及び/又は支持体の少なくとも1つの接続領域の全体に設けられることが好ましい。冷却開口部がセグメントのみ、またはセグメント及び接続領域の全体に位置しているならば、セグメントを含めた冷媒用の接触面が拡大し、冷却効果が増大する。冷媒は気体または液体で、空気が主に冷媒として用いられる。
【0011】
第1の変形された態様では、支持体に冷却開口部が形成され、冷却開口部は貫通開口部またはブラインド(出口のない、閉塞した)開口部として構成される。支持体に冷却開口部を形成すると、製造が容易になるので都合がよい。支持体を例えば鋼体として形成する場合、掘削、ミリング、スタンピングまたは類似の製造法で支持体に冷却開口部を製造する。
【0012】
貫通開口部とされる、支持体を貫通する冷却開口部がもたらす優位性としては、セグメントの裏側に冷媒が接触し、セグメントから熱が直接冷媒に放出されるということが挙げられる。冷却開口部の大きさと形状は、支持体の接続領域へのセグメントの安全な取り付けが保証され、かつ加工ディスクの承認に必要な剪断力が維持されるように選択される。貫通開口部は、さらなる優位性をもたらす。貫通開口部がセグメントと支持体の接続面を縮小することにより、溶接中の接触圧が増加する。接触圧の増加は、セグメントと支持体の接続性の向上につながる。
【0013】
完全に支持体を貫通しない、ブラインド開口部とされる冷却開口部のもたらす優位性としては、冷却開口部により支持体とセグメントの接触面が小さくならないということが挙げられる。支持体のブラインド開口部は、支持体上のセグメントの取り付けが難しい加工ディスクに適している。
【0014】
第2の変形された態様では、冷却開口部が支持体及びセグメントに形成される。冷却開口部が支持体及びセグメントに形成されると、セグメントと冷媒の接触面が大きくなり、セグメントから冷媒への熱移動が増加する。セグメントと冷媒の接触面が大きくなる程、セグメントの冷却効果が向上し、セグメントの寿命が延びる。
【0015】
冷却開口部は支持体の貫通開口部として、またセグメントの貫通開口部として形成されることが好ましい。セグメントと支持体を完全に貫通する冷却開口部により、セグメントと冷媒の接触面が大きくなり、冷却効果が改善される。冷媒はセグメント全体を流れ、セグメントから熱を運び去る。加えて、廃棄物は冷却開口部を介して排出してよい。
【0016】
または、冷却開口部は支持体の貫通開口部として、及びセグメントのブラインド開口部として形成される。セグメントを完全に貫通しない冷却開口部がもたらす優位性としては、セグメントの断面部全体の加工が可能になることが挙げられる。
【0017】
第三の変形された態様では、冷却開口部がセグメントの貫通開口部として形成される。セグメントの貫通開口部はセグメントと支持体の接続面を縮小させ、よって溶接の際の接触圧を増加させる。接触圧の増加はセグメントと支持体の接続性の向上につながる。
【0018】
別の好ましい形態では、冷却開口部はセグメントの断面積の最大80%を占める。セグメントと冷媒の接触面が大きくなる程、セグメントの冷却効果が向上し、セグメントの寿命が延びる。セグメントが支持体に安全に取り付けされることを保証し、所定の剪断力を達成するには、セグメントと支持体の接続面がセグメントの断面積の少なくとも20%を占める必要がある。
【0019】
さらなる好ましい態様では、冷却開口部が熱伝導材料で充填され、その熱伝導材料の熱伝導率は支持体の熱伝導率よりも高い。胴、樹脂、及びアルミニウムは、鉄鋼製の支持体用の材料として適している。冷却開口部の熱伝導性材料で充填すると、安定性が向上するので加工ディスクに適している。冷却開口部を有さない加工ディスクの冷却効果を改善するには、支持体よりも熱伝導率が高い材料を選択する。
【0020】
本発明の模範的な実施例を図面に基づき順に記載する。これらの実施例は必ずしも模範的実施例と同じ縮尺にはなっていなないが、図面には説明がしやすいように概略的及び/又は若干の変更を加えてある。先行技術文献については、図面から直接認識できる教示に関連する追加事項に基づいて述べている。よって、特定の実施例の形態及び詳細に影響する変更を複数加えたとしても、本発明の広義の概念から逸脱することはない。発明の詳細な説明、図面、及び請求項に開示された本発明の特徴は、単独または任意の組み合わせで、本発明の改良に不可欠である。さらに、本発明の技術的範囲には、発明の詳細な説明、図面、及び/又は請求項に開示された少なくとも2つの特徴の組み合わせのすべてが含まれる。本発明の広義の概念は以下で記載する好適な実施例の具体的な形態または詳細に限定されることもなければ、請求項が請求する法定主題との比較において限定されるであろう法定主題に限られることもない。引用された寸法幅については、境界内に入ると記載されている数値は限定値であり、任意に適用可能及び請求可能とすべきである。
【0021】
簡素化のため、同一若しくは類似の要素、または同一若しくは類似の機能を有する要素には同じ参照番号を順に用いている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A図1Aは、支持体と複数の研磨セグメントとを備えた研磨ディスクとして構成された本発明の加工ディスクの第1の具体的実施例を、研磨セグメントの下から見た図である。
図1B図1Bは、図1Aの線I−Iに沿った研磨ディスクの一部分である。
図1C図1Cは、支持体を上から見た図である。
図2A図2Aは、支持体と複数の研磨セグメントとを備えた本発明の加工ディスクの第2の具体的実施例を、研磨セグメントの下から見た図である。
図2B図2Bは、図2Aの線II−IIに沿った研磨ディスクの一部分である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aから図1Cは、無機(鉱物)質または被覆基板の加工用の本発明の加工ディスク10の第1の具体的な実施例を示す。加工ディスクは、なべ型の研磨ディスク10として構成されている。研磨ディスク10は、支持体11と、支持体11に接続された複数の研磨セグメント12とを備える。研磨セグメント12は、例えば、支持体11にはんだ付けあるいは溶接するか、または類似の加工方法で支持体11に取り付けられる。
【0024】
図1Aは、研磨ディスク10を下から研磨セグメント12に向かって見た図である。研磨ディスク10の支持体11は、なべ型の研磨ディスク10として形成された、受入領域13と、研磨領域として構成される加工領域14と、受入領域13と研磨領域14を接続する遷移領域15とを備える。加工ディスクが平らな場合、遷移領域は省略される。支持体11の受入領域13は、ツールの駆動軸に研磨ディスク10を固定するために用いられる。駆動軸用の中央開口部16は、受入領域13に設けられる。
【0025】
研磨セグメント12は、研磨領域14で支持体11に接続される。切断セグメント12は、それら全体で加工部17とする(図1Bを参照)。研磨ディスク10は7つの三角形の研磨セグメント12を備えた加工部17を有し、研磨セグメント12の側面は外に向かって湾曲している。研磨セグメントとその他の要素を図中で区別するため、「.i」という拡張子を使用している。研磨セグメント12の数と形状は、研磨ディスク10の直径及び加工する基板にあわせられる。三角形の研磨セグメント12に加え、L型の研磨セグメント、U型の研磨セグメント、及び側面が湾曲した長方形の研磨セグメントが知られている。研磨セグメント12は、各構成において、支持体11の研磨領域14と反対を向いた前面18上に2つの溝19を有する。溝19は、廃棄物の排出を助けるためにある。
【0026】
研磨領域14は複数の排出口21を有する。排出口21は研磨ディスク10の周方向に位置し、お互いの距離は実質的に同じである。研磨ディスク10での研磨の際、加工中の基板からの廃棄物は排出口21を通じて排出される。排出口21は研磨ディスク10用に長円形になっており、支持体11の遷移領域15から移動したところにある。排出が良好に行われることを確実にするには、排出口21を大きくすることが好ましい。一方で支持体11は、研磨領域14で十分に安定していることが必要である。
【0027】
図1Bは、基板22の加工の際の研磨ディスク10及び第1の研磨セグメント12.1の一部分を図1Aの線I−Iに沿って示す。支持体11と研磨セグメント12の接続は、第1の研磨セグメント12.1を例として説明する。加工部17のさらなる6つの研磨セグメントである研磨セグメント12.2−12.7も、第1の研磨セグメント12.1と同様の構造であることから、同じ説明が成り立つ。
【0028】
第1の研磨セグメント12.1は、前面18とは逆の背面23上の支持体11と接続されている。支持体11は、研磨セグメント12.1が支持体11に取り付けされている接続領域24.1を有する。第1の研磨セグメント12.1が当接する支持体11全体が接続領域とされ、その接続領域には接続面だけが含まれるわけではない。
【0029】
冷却開口部とされる開口部25.1は、支持体11の接続領域24.1に設置される。冷却開口部25.1は、支持体11全体を貫通する貫通開口部として支持体11に設けられる。冷媒は貫通開口部25.1を通じて支持体11から研磨セグメント12.1へと流れ、その背面22上で研磨セグメント12.1を冷却する。冷媒は液体または気体で、主に冷媒として用いられるのは空気である。
【0030】
図1Cは、支持体11に対して上から見た研磨ディスク10の図である。7つの長円形の排出口である排出口21.1−21.7及び7つの円形の冷却開口部である冷却開口部25.1−25.7が支持体11の研磨領域14に設けられている。円形の冷却開口部21.1−21.7(25.1−25.7)は支持体11の接続領域24.1−24.7に位置し、排出口21.1−21.7は接続領域24.1−24.7の間の研磨領域14に位置する。
【0031】
冷媒は冷却開口部25へと流入し、背面22で研磨セグメント12を冷却する。研磨セグメント12からの熱は、直接冷媒へと放出される。冷却開口部25のサイズが大きくなるほど、研磨セグメント12の冷却効果は高まる。冷却開口部25のサイズは、研磨セグメント12が背面22で支持体11に接続されているため制限を受ける。そのため、優れた冷却効果を保証されることに加え、支持体11に研磨セグメント12が確実に取り付けられ、加工ディスク10が承認されるために所定の剪断力が達成されるように冷却開口部25の大きさを選択する。
【0032】
支持体11の接続領域24を貫通する貫通開口部である図1Aから図1Cの冷却開口部25の代わりに、支持体11において冷却開口部をブラインド開口部として構成してもよい。ブラインド開口部によって支持体11と研磨セグメント12の接続面が縮小されることはないが、貫通開口部と比べるとブラインド開口部の冷却効果は小さい。
【0033】
研磨ディスク10は、7つの三角形の研磨セグメントである研磨セグメント12.1−12.7及び7つの円形の冷却開口部である冷却開口部25.1−25.7を支持体11の接続領域24.1−24.7に有する。代わりに、冷却開口部の形状が異なる研磨セグメントを研磨ディスクが有しても、研磨セグメントの構造が同様である接続領域の異なる箇所に冷却開口部が位置しても、研磨セグメントが同様の構造の場合に冷却開口部の形状が異なってもよい。冷却開口部25の形状は、研磨セグメント12の形状、加工する基板等に適合されている。円形、三角形、長方形、8角形、星型、楕円形等が冷却開口部25の形状として適している。
【0034】
図2A及び図2Bは、無機質または被覆した基板の表面加工用の本発明の加工ディスク30の第2の具体的実施例を示す。加工ディスク30は、なべ型の研磨ディスクとして加工ディスク10と同様に構成されている。
【0035】
研磨ディスク30は、支持体31と、支持体31に接続された複数の研磨セグメント32とを備える。図1Aから図1Cが示す冷却開口部を有する研磨ディスク10とは異なり、研磨ディスク30では冷却開口部が支持体31及び研磨セグメント32に配置されている。
【0036】
図2Aは、研磨セグメント32に向かって研磨ディスク30を下から見た図である。研磨ディスク10の支持体11と同様に、研磨ディスク30の支持体31は、研磨領域14と、遷移領域15と、及び中央開口部16を有する中央開口部16とを備える。研磨セグメント32は三角形に構成され、研磨領域14とは反対の前面18上にそれぞれ2つの溝19を有する。
【0037】
冷却開口部33は、各研磨セグメント32に1つずつ割り当てられている。冷却開口部33は、支持体31及び研磨セグメント32を完全に貫通する円形の貫通開口部として構成されている。冷媒は支持体31の上側を通って冷却開口部33へ流入し、支持体31及び研磨セグメント32を流れて廃棄物とともに排出系により排出される。
【0038】
図2Bは、基板22の加工の際の研磨ディスク30及び第1の研磨セグメント32.1の一部分を図2Aの線II−IIに沿って示す。支持体31と研磨セグメント32の接続並びに支持体31及び研磨セグメント32における冷却開口部33の配置を、第1の研磨セグメント32.1を例に説明する。その説明は、その他の研磨セグメントである研磨セグメント32.2−32.7の全てにおいても成り立つ。
【0039】
支持体31は、研磨セグメント32.1が支持体31に取り付けられている接続領域34.1を有する。冷却開口部33.1は2つの部分に分けることができる。1つは支持体31の貫通開口部35.1、もう1つは研磨セグメント32.1の貫通開口部36.1である。支持体31及び研磨セグメント32.1を完全に貫通した冷却開口部33がもたらす優位性としては、冷媒と研磨セグメント32.1の接触面を大きくすることによる冷却効果の改善が挙げられる。
【0040】
冷却開口部33の断面積は、研磨セグメント32を取り付けするための接続面が冷却開口部33の断面によって減少することから制限を受ける。研磨ディスクの承認のためには、所定の剪断力が達成されなければならない。そのためには、支持体11(31)と研磨セグメント32の接触面がある程度必要である。優れた冷却効果に加え、支持体11(31)に研磨セグメント32が確実に取り付けされ、所定の剪断力が確実に達成されるように冷却開口部33の断面積の大きさを選択する。
【0041】
図2A及び図2Bが示す支持体11(31)及び研磨セグメント12(32)の貫通開口部35,36の代わりに、支持体11(31)において冷却開口部を貫通開口部としても、研磨セグメント12(32)において冷却開口部をブラインド開口部としてもよい。

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
【国際調査報告】