特表2015-535804(P2015-535804A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-535804(P2015-535804A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】表面改質ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/245 20060101AFI20151120BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20151120BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   C03C17/245 A
   C03C21/00 101
   G09F9/00 350Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-535731(P2015-535731)
(86)(22)【出願日】2013年10月1日
(85)【翻訳文提出日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】US2013062828
(87)【国際公開番号】WO2014055491
(87)【国際公開日】20140410
(31)【優先権主張番号】61/709,339
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ポールソン,チャールズ アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC16
4G059EA01
4G059EA11
4G059EA12
4G059EB04
4G059HB03
5G435AA07
5G435EE02
5G435HH05
5G435HH18
5G435KK07
5G435LL07
(57)【要約】
基板の主面を覆う耐引掻性硬質層を含む耐引掻性ガラス基板が開示されている。その層は、バーコビッチ圧子を使用して測定して、少なくとも10GPaの硬度およびこの層の厚さの少なくとも一部に沿ったx線非晶構造を示すことがある。その層は、必要に応じて、少なくとも70%の光透過率および/または少なくとも10MPaの圧縮応力を示すことがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板において、
反対の主面を有するガラス本体、および
第1の主面の大半を覆って設けられた、ある厚さを有する層であって、該層の厚さの少なくとも一部分が、少なくとも10GPaのバーコビッチ圧子硬度およびx線非晶構造を備え、該層が
少なくとも70%の光透過率、および
少なくとも10MPaの圧縮応力、
からなる群より選択される少なくとも1つの属性を有するものである層、
を備えたガラス基板。
【請求項2】
前記層の厚さが約50nmから約2μmの範囲にある、請求項1記載のガラス基板。
【請求項3】
前記層が、10MPaから500MPaに及ぶ圧縮応力を有する、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項4】
前記層が、約20体積%以下の結晶分画を有する、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項5】
前記層が、可視波長での約3未満の屈折率、可視波長での約40%未満の反射率、およびそれらの組合せの内の1つを示す、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項6】
前記ガラス基板が化学強化ガラスから構成される、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項7】
前記層が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、ダイヤモンド状炭素またはそれらの組合せから構成され、前記金属が、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、TaおよびWからなる群より選択される、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項8】
前記ガラス基板が、バーコビッチ圧子および少なくとも60mNの荷重を使用して引っ掻かれた場合、第1の主面の大半を覆って前記層が設けられていないガラス本体と比べて、少なくとも35%の引っ掻き傷の幅の減少を示す、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項9】
前記ガラス基板が、バーコビッチ圧子および約160mNまでの荷重を使用して引っ掻かれた場合、第1の主面の大半を覆って前記層が設けられていないガラス本体と比べて、少なくとも35%の引っ掻き傷の深さの減少を示す、請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項10】
電子機器のハウジングにおいて、
(a)該電子機器のハウジングの前面を提供するように配置され固定された前面ガラスカバーおよび(b)該電子機器のハウジングの背面を提供するように配置され固定された背面ガラスカバーの少なくとも一方、
を備え、前記前面ガラスカバーおよび前記背面ガラスカバーが、請求項1または2記載のガラス基板から構成された電子機器のハウジング。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全てが引用される、2012年10月3日に出願された米国仮特許出願第61/709339号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、表面改質ガラス基板に関し、より詳しくは、基板の主面上に設けられた耐引掻性層を有するガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
引っ掻き傷は、ハンドヘルド機器や、モニタおよび他のディスプレイなどの他の機器におけるガラスカバー用途の懸念の1つである。引っ掻き傷により、光の散乱が増し、そのようなスクリーン上に表示される画像と文字の輝度およびコントラストが低下し得る。さらに、機器のオフ状態において、引っ掻き傷のためにディスプレイが、霞んだように見え、傷もののように見え、魅力的に見えないことがある。特に、ディスプレイおよびハンドヘルド機器にとって、耐引掻性は重要な属性であり得る。
【0004】
引っ掻き傷は、その深さと幅により特徴付けることができる。深い引っ掻き傷は材料の表面中に少なくとも2マイクロメートル延在し、幅広い引っ掻き傷は2マイクロメートル超の幅である。引っ掻き傷の物理的範囲のために、破砕またはチッピングには、通常、深いおよび/または幅広い引っ掻き傷が伴う。けれども、ガラス基板などの脆い固体において、深く幅広い引っ掻き傷に対する耐性は、ガラスの化学的性質、すなわち、ガラス組成の最適化によって、改善することができる。
【0005】
他方で、引っ掻き傷は、浅いおよび/または狭いこともあり得る。浅い引っ掻き傷は2マイクロメートル未満の深さにより特徴付けられ、狭い引っ掻き傷は2マイクロメートル未満の幅により特徴付けられる。これらの寸法基準での引っ掻き傷は、「微小延性(microductile)」引っ掻き傷と記載されることもある。ガラスカバーが酸化物ガラスから形成されることのある、ディスプレイおよびハンドヘルド機器において、使用中に蓄積する引っ掻き傷の大半は、微小延性引っ掻き傷であると考えられる。微小延性引っ掻き傷は通常、大容積の破砕したまたは欠けた材料には関連しないが、微小延性引っ掻き傷は、ガラスカバーの光学的性質に悪影響を与え得る。さらに、より大きく「深刻な」引っ掻き傷とは対照的に、微小延性引っ掻き傷は、ガラスの化学的性質の変更によって容易には防げない。
【0006】
微小延性引っ掻き傷の形成は、引っ掻かれている表面の硬度を調節することによって、軽減することができる。より硬い表面は、通常、微小延性引っ掻き傷に対してより耐性である。多くのガラスカバーに使用されるガラス基板を形成する酸化物ガラスは、通常、ここに開示されるように、6から9GPaの範囲の硬度値を有するが、微小延性引っ掻き傷が形成される傾向は、酸化物ガラス上に、より硬質の表面層を形成することによって、劇的に減少させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、経済的であり、下にあるカラスと物理的かつ化学的に適合する、剛性ガラスカバーに施せる硬質の光透過性の耐引掻性層を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
改質表面を有するガラス基板がここに開示されている。このガラス基板は、反対の主面を有するガラス本体および第1の主面の大半を覆って設けられた層を備えている。この層の少なくとも一部分の属性は、少なくとも10GPaのバーコビッチ圧子硬度(すなわちバーコビッチ圧子を使用して測定した硬度)およびx線非晶構造、並びに必要に応じて、少なくとも70%の光透過率および/または少なくとも10MPaの圧縮応力を含む。
【0009】
このガラス基板は、前記層が外向きの層として設けられた電子機器のハウジングの部品として、またはカバーガラスとして、使用することができる。例えば、電子機器のハウジングにおいて、そのガラス基板は、(a)この電子機器の筐体の前面を提供するように配置され固定された前面ガラスカバーおよび/または(b)この電子機器の筐体の背面を提供するように配置され固定された背面ガラスカバー:の少なくとも一部を形成することができる。前面ガラスカバーおよび背面ガラスカバーの一方または両方を、その筐体の側面部を提供するようにハウジングの側部まで延在するよう成形することもできる。
【0010】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された発明を実施することによって認識されるであろう。
【0011】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の実施の形態を提示しており、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されていることを理解すべきである。添付図面は、本発明のさらなる理解を与えるために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。それらの図面は、本発明の様々な実施の形態を図解しており、説明と共に、本発明の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガラス基板の主面を覆って設けられた層の断面図
図2】いくつかの実施の形態によるガラス基板上に層を形成するための単槽スパッタ器具の概略図
図3】単調荷重サイクル下でのガラス表面における引っ掻き傷の形成を示す概略図
図4】様々な実施の形態による耐引掻性ガラスから形成されたカバープレートを有する携帯型電子機器の平面図
図5】様々な実施の形態による電子機器構造の斜視図
図6】裸のガラス本体と比べた1つ以上の実施の形態によるガラス基板の引っ掻き傷の深さと幅の減少を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
ガラス物品は、反対の主面を有するガラス本体、および第1の主面の大半を覆って設けられた層を備えている。この層は、下にあるガラスに耐引掻性を提供することがあり、該層は、少なくとも10GPaのバーコビッチ圧子硬度およびその厚さの少なくとも一部に沿ったx線非晶構造を有する。この層は、必要に応じて、少なくとも70%の光透過率および/または少なくとも10MPaの圧縮応力を示すことがある。
【0014】
この層は、ガラス基板に耐引掻性を与える、光透過性の硬質被膜を構成することがある。実施の形態において、ガラス基板は化学強化ガラスから構成される。その層は、ガラスの全体の光学的透明度を維持しながら、基板の表面の耐引掻性を相当向上させることができる。ガラス本体120の主面を覆って設けられた層110を備えた耐引掻性ガラス基板100が図1に概略示されている。
【0015】
ガラス基板自体は、様々な異なるプロセスを使用して提供してよい。例えば、例示のガラス基板形成方法としては、フロート法、並びにフュージョンドロー法、スロットドロー法およびロール成形法などのダウンドロー法が挙げられる。
【0016】
フロートガラス法において、滑らかな表面および均一な厚さにより特徴付けられることのあるガラス基板は、溶融金属、通常はスズの床上に溶融ガラスを浮かせることによって製造される。例示のプロセスにおいて、溶融スズ床の表面上に供給される溶融ガラスが、浮いているガラスリボンを形成する。そのガラスリボンがスズ浴に沿って流れながら、ガラスリボンが、スズからローラ上に持ち上げられる固体のガラス基板に固化するまで、温度が徐々に低下する。一旦、浴から外されると、そのガラス基板は、さらに冷却し、アニールして、内部応力を減少させることができる。
【0017】
ダウンドロー法では、均一な厚さを有し、比較的無垢な表面を備えたガラス基板が製造される。ガラス基板の平均曲げ強度は、表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小の無垢表面は、初期強度がより高い。次いで、この高強度ガラス基板がさらに強化される(例えば、化学的に)と、結果として生じた強度は、ラップ仕上げされ、研磨された表面を有するガラス基板の強度よりも高いことがあり得る。ダウンドロー法により製造されたガラス基板は、約2mm未満の厚さまで板引き(drawn)されることがある。その上、ダウンドロー法により製造されたガラス基板は、非常に平らで滑らかな表面を有し、これは、費用のかかる研削と研磨を必要とせずに、最終用途に使用することができる。
【0018】
フュージョンドロー法では、例えば、溶融ガラス原材料を受け入れるための通路を有する板引き用タンクが使用される。その通路は、通路の両側に通路の長手方向に沿って上部が開いた堰を有する。その通路が溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰を越えて溢れる。溶融ガラスは、重力のために、板引き用タンクの外面を2つの流れるガラス膜として下方に流れる。板引き用タンクのこれらの外面は、板引き用タンクの下の縁で接合するように、下方と内方に延在している。2つの流れるガラス膜は、この縁で結合して融合し、1つの流れるガラス基板を形成する。フュージョンドロー法は、通路を越えて流れる2つの薄いガラス膜が共に融合するので、結果として得られるガラス基板の外面の両方とも、装置のどの部分とも接触しないという利点を提示する。このように、フュージョンドロー法により形成されたガラス基板の表面特性は、そのような接触により影響を受けない。
【0019】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法において、溶融原材料ガラスが板引き用タンクに供給される。板引き用タンクの底部に開放スロットがあり、このスロットは、スロットの長さに伸びるノズルを有している。溶融ガラスはスロット/ノズルを通って流れ、連続基板として下方に、アニール領域へと板引きされる。
【0020】
いくつかの実施の形態において、ガラス基板120に使用されるガラス基板には、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、およびSnO2を含む群から選択される少なくとも1種類の清澄剤が0〜2モル%バッチ配合されることがある。
【0021】
ガラス基板は、一旦形成されたら、イオン交換プロセスによって化学強化してよい。このプロセスにおいて、通常は、ガラス基板を所定の期間に亘り溶融塩浴中に浸漬することによって、ガラスの表面またはその近くのイオンが、塩浴からのより大きい金属イオンと交換される。1つの実施の形態において、溶融塩浴の温度は約400℃から約430℃であり、所定の期間は約4から約8時間である。より大きいイオンをガラス中に含ませることによって、表面近くの領域に圧縮応力が生じるために、基板が強化される。その圧縮応力を釣り合わせるために、対応する引張応力がガラスの中央領域内に誘発される。
【0022】
1つの例示の実施の形態において、化学強化ガラス中のナトリウムイオンは、溶融浴からのカリウムイオンにより置換することができるが、ルビジウムやセシウムなどの原子半径のより大きい他のアルカリ金属イオンも、そのガラス中のより小さいアルカリ金属イオンを置換し得る。特別な実施の形態によれば、ガラス中のより小さいアルカリ金属イオンは、Ag+イオンにより置換され得る。同様に、以下に限られないが、硫酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩をイオン交換プロセスに使用してもよい。
【0023】
ガラス網目構造が緩和し得る温度より低い温度で、より小さいイオンをより大きいイオンで置換すると、ガラスの表面に亘り、応力プロファイルをもたらすイオン分布が生じる。入り込むイオンの体積がより大きいために、ガラスの表面に圧縮応力(CS)が、ガラスの中央に張力(中央張力、またはCT)が生じる。この圧縮応力は、以下の近似の関係式により中央張力に関連付けられる:
【0024】
【数1】
式中、tはガラス板の全厚であり、DOLは、層の深さとも称される、交換の深さである。
【0025】
1つの実施の形態において、化学強化ガラス板は、少なくとも300MPa、例えば、少なくとも400、450、500、550、600、650、700、750または800MPaの表面圧縮応力、少なくとも約20μm(例えば、少なくとも約20、25、30、35、40、45または50μm)の層の深さ、および/または40MPa超(例えば、40、45、または50MPa超)であるが、100MPa未満(例えば、100、95、90、85、80、75、70、65、60、または55MPa未満)の中央張力を有し得る。
【0026】
ガラス基板として使用してよい例示のイオン交換可能なガラスは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスまたはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスであるが、他のガラス組成物も考えられる。ここに用いたように、「イオン交換可能な」は、ガラスが、そのガラスの表面またはその近くに位置する陽イオンを、サイズがそれより大きいか小さい同じ価数の陽イオンと交換できることを意味する。ガラス組成物の一例は、SiO2、B23およびNa2Oを含み、ここで、(SiO2+B23)≧66モル%およびNa2O≧9モル%である。ある実施の形態において、ガラス基板は少なくとも6質量%の酸化アルミニウムを含む。さらに別の実施の形態において、ガラス基板は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5質量%であるように、1種類以上のアルカリ土類酸化物を含む。適切なガラス組成物は、いくつかの実施の形態において、K2O、MgO、およびCaOの内の少なくとも1つをさらに含む。特別な実施の形態において、ガラス基板は、61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl23、0〜12モル%のB23、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaOを含んで差し支えない。
【0027】
ガラス基板に適したさらに別の例のガラス組成物は、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl23、0〜15モル%のB23、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、ここで、12モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦20モル%、および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0028】
さらにまた別の例のガラス組成物は、63.5〜66.5モル%のSiO2、8〜12モル%のAl23、0〜3モル%のB23、0〜5モル%のLi2O、8〜18モル%のNa2O、0〜5モル%のK2O、1〜7モル%のMgO、0〜2.5モル%のCaO、0〜3モル%のZrO2、0.05〜0.25モル%のSnO2、0.05〜0.5モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、ここで、14モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦18モル%、および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0029】
特別な実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、アルミナ、少なくとも1種類のアルカリ金属およびいくつかの実施の形態において、50モル%超のSiO2、他の実施の形態において、少なくとも58モル%のSiO2、さらに他の実施の形態において、少なくとも60モル%のSiO2を含み、ここで、比(Al23+B23)/Σ改質剤>1であり、この比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラスは、特別な実施の形態において、58〜72モル%のSiO2、9〜17モル%のAl23、2〜12モル%のB23、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oを含み、から実質的になり、またはからなり、比(Al23+B23)/Σ改質剤>1である。
【0030】
別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl23、0〜12モル%のB23、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaOを含む、から実質的になる、またはからなる。
【0031】
さらに別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl23、0〜15モル%のB23、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0032】
さらに別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、64〜68モル%のSiO2、12〜16モル%のNa2O、8〜12モル%のAl23、0〜3モル%のB23、2〜5モル%のK2O、4〜6モル%のMgO、および0〜5モル%のCaOを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、66モル%≦SiO2+B23+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B23+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B23)−Al23≦2モル%、2モル%≦Na2O−Al23≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)−Al23≦10モル%である。
【0033】
このガラス基板は、約100マイクロメートルから5mmに及ぶ厚さを有し得る。例の基板の厚さは、100マイクロメートルから500マイクロメートルに及び、例えば、100、200、300、400または500マイクロメートルである。さらに別の例の基板の厚さは、500マイクロメートルから1000マイクロメートルに及び、例えば、500、600、700、800、900または1000マイクロメートルである。このガラス基板は、1mm超、例えば、約2、3、4、または5mmの厚さを有してもよい。
【0034】
前記層は、転写層またはその場で堆積された薄膜であってもよい。転写層は、一般に、ソースウェハー(例えば、Al23)を、このソースウェハー中へのイオン注入により画成される劈開面に沿って劈開させる工程を含む層転写法により設けてよい。通常は、イオン注入種として、水素が使用される。層転写法の利点の1つは、水素注入により誘発した剥離が何度も繰り返され、よって初期の自立ウェハーから多くの層を収穫できることである。収穫した層は、ガラス基板の表面に結合することができる。
【0035】
さらに別の実施の形態において、前記層は、適切な出発材料のガラス基板上への直接のまたは先に表面改質したガラス基板上への化学蒸着(例えば、プラズマ支援化学蒸着)、物理蒸着(例えば、スパッタ堆積またはレーザアブレーション)または熱蒸発によって形成することができる。
スパッタ法は、反応性スパッタリングまたは非反応性スパッタリングを含んでもよい。そのような層を形成するための単槽スパッタ堆積装置200が図2に概略示されている。この装置200は、1つ以上のガラス基板212をその上に搭載できる基板ステージ210、およびマスクステージ220を有する真空室205を備えており、このマスクステージは、基板の規定領域上への層のパターン付き堆積のためのシャドーマスク222を搭載するために使用できる。真空室205には、内圧を制御するための真空ポート240、並びに水冷ポート250およびガス入口ポート260が設けられている。この真空室は、クライオポンプ(CTI−8200/Helix;米国、マサチューセッツ州)で操作することができ、蒸発プロセス(〜10-6トル)およびRFスパッタ堆積プロセス(〜10-3トル)の両方に適した圧力で作動することができる。
【0036】
図2に示されるように、各々が随意的な対応するシャドーマスク222を有する、ガラス基板212上に材料を蒸発させるための多数の蒸発設備280が、リード線282を通じてそれぞれの電源290に接続されている。蒸発させるべき出発材料200は、各設備280に配置することができる。厚さモニタ286は、堆積される材料の量の制御を行うために、制御装置293および制御ステーション295を含むフィードバック制御ループに組み込むことができる。
【0037】
例のシステムにおいて、蒸発設備280の各々には、約80〜180ワットの動作電力でDC電流を供給するために、一対の銅線282が備えられている。実効設備抵抗は、一般に、その形状の関数であり、これにより、正確な電流とワット数が決まる。
【0038】
材料(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物または金属ホウ化物)の層をガラス基板上に形成するための、スパッタ目標310を有するRFスパッタガン300も設けられている。このRFスパッタガン300は、RF電源390およびフィードバック制御装置293を通じて、制御ステーション395に接続されている。この層をスパッタリングにより形成するために、水冷円筒型RFスパッタガン(Onyx−3(商標)、ペンシルベニア州、Angstrom Sciences)を真空室205内に配置することができる。適切なRF堆積条件には、約〜5Å/秒の典型的な堆積速度に対応する、50〜150W順電力(<1W反射電力)がある(米国、コロラド州、Advanced Energy)。実施の形態において、スパッタ率は、例えば、0.1オングストローム/秒と10オングストローム/秒の間で様々であり得る。
【0039】
ガラス基板が化学強化ガラス基板である実施の形態において、その基板内の応力プロファイルに悪影響を与えないために、基板の表面を覆って層を形成する工程は、そのガラス基板を500℃の最高温度に加熱する工程を含む。その層を形成する工程中の基板の温度は、約−200℃から500℃に及び得る。実施の形態において、基板の温度は、層の形成中に、ほぼ室温と500℃の間の温度、例えば、500℃未満または300℃未満の温度に維持される。
【0040】
前記層(転写層または堆積層)は、その化学的性質、機械的性質および/または光学的性質によって特徴付けられるであろう。様々な実施の形態によれば、耐引掻性ガラス基板は、低質量、高い耐衝撃性、および高い光透過率を含むことがある、一連の性質を有することがある。組成的には、前記層は、金属酸化物層、金属窒化物層、金属炭化物層、金属ホウ化物層、またはダイヤモンド状炭素層から構成されることがある。そのような酸化物層、窒化物層、炭化物層またはホウ化物層の例の金属としては、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、ハフニウム、タンタルおよびタングステンが挙げられる。前記層は無機材料から構成されても差し支えない。非限定的な例の無機層としては、酸化アルミニウム層および酸化ジルコニウム層が挙げられる。
【0041】
前記層は、化学量論的組成(例えば、Al23)または非化学量論的組成(例えば、Al23-x、0.05<x<0.3)から構成されることがある。さらに、2種類以上の金属添加物を含む複合酸化物を使用してもよい。例えば、層の全体的な組成は、アルミナなどの基礎酸化物に加え、CaOまたはMgOなどのアルカリ土類酸化物を5〜40質量%含んでもよい。
【0042】
実施の形態において、前記層は、使用中に剥離したり剥がれたりしないように、下にあるガラス基板に適切に付着している。その層がガラス基板と直接物理的に接触している実施の形態において、層とガラス基板との間の付着は、10から100J/m2以上の範囲、例えば、100または150J/m2超の界面エネルギーにより特徴付けることができる。
【0043】
前記層の1つの属性は耐薬品性であり得る。外向きの層として、水、塩水、アンモニア、イソプロピルアルコール、メタノール、アセトンおよび他の市販の清浄液などの一般的な溶媒中のその層の不溶性は、層の耐久性と寿命を延ばすことができる。その層が、紫外線を含む周囲照明への曝露による劣化に耐性であることも有益であろう。実施の形態において、その層は、1000時間または10000時間の露光後に感知できる黄変を示さない。
【0044】
前記層の厚さは、10nmから2マイクロメートルに及び得る。例えば、層の平均厚は、約10、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500または2000nmであり得る。実施の形態において、層の厚さは50から200nmに及び得る。例えば、約100nm厚と200nm厚の間の転写層は、転写法に適した機械的適合性であって、ガラス基板に結合可能な機械的適合性を有するであろう。単結晶(すなわち、一層転写)層について、結晶材料内の転位密度は、108/cm2未満、すなわち、・・、約105/cm2と108/cm2の間であり得る。
【0045】
その層は、基板の硬度より大きい(例えば、それより少なくとも10%大きい)硬度を有し得る。例えば、層の硬度は、基板の硬度より少なくとも10、20、30、40または50%大きいことがあり得る。例の層は、少なくとも10GPaの、100nmより浅い圧痕のバーコビッチ圧子硬度、例えば、10GPaと30GPaの間のバーコビッチ圧子硬度を有し得る。
【0046】
その層のヤング率は、50から200GPaの範囲、例えば、60から100GPa、または100から200GPaの範囲にあり得る。さらに別の実施の形態において、この層のヤング率は200GPa超であり得る。
【0047】
実施の形態において、その層は、非多孔質の、緻密な、または実質的に緻密な層である。理論密度について、その層は、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%または90%の相対密度を有し得る。実施の形態において、その層の密度は理論密度の約70〜90%である。
【0048】
1つ以上の実施の形態において、その層は、非晶質として、またはx線非晶構造を有するものとして、特徴付けることができる。1つ以上の特別な実施の形態において、その層は、約20体積%以下の結晶分画を含むか、あるいは結晶分画を含まない。その層は、約18体積%以下、約16体積%以下、約14体積%以下、約12体積%以下、約10体積%以下、約8体積%以下、約6体積%以下、約4体積%以下、約2体積%以下、約1体積%以下、およびそれらの間の全範囲または部分的範囲の結晶分画を含んでよい。1つ以上の実施の形態において、x線非晶質層は、結晶材料または多結晶材料と比べた場合、均一な特徴を有するであろう。説明目的のために、多結晶材料は、原子がどのように下にある表面上に堆積されたかに基づいて、異なる方向を有するように成長または形成された結晶を含む。複数の層として形成された多結晶材料を形成するこれらの異なる結晶成長方向のために、それに力が印加された場合、または多結晶層が引っ掻かれた場合、多結晶層の部分が、細かく砕け、薄片となって剥がれることがあり得る。
【0049】
1つ以上の代わりの実施の形態において、前記層の少なくとも一部は、単結晶層および/または多結晶層であり得る。そのような単結晶層および/または多結晶層は、その層内の副層と称されることがある。1つの変形例において、層の非晶質部分間に、結晶副層および/または多結晶副層が配置されることがある。言い換えれば、その層の非晶質部分が、結晶層および/または多結晶層の上部と下部に非晶質副層を形成することがある。例えば、層転写法を使用して、単結晶副層を設けてもよい。堆積薄膜として、多結晶副層を形成してもよい。多結晶副層は等軸結晶粒から構成されることがある。結晶および/または多結晶副層内で、複数の粒子が、無作為に配向されていても、または好ましい配向を有していてもよい。特定の実施の形態において、多結晶副層は、非晶質分画を含むことがある。そのような多結晶材料内の結晶含量は、少なくとも50%、例えば、少なくとも50、60、70、80、90または95%であり得る。例えば、多結晶副層は、50〜80%の範囲内の結晶含量を有し得る。
【0050】
多結晶副層は、それらの粒径によって特徴付けられるであろう。実施の形態において、多結晶副層における平均粒径は10マイクロメートル超であり得る。さらに別の実施の形態において、その粒径は、50nm超であり、約200nmから5000nmの範囲に亘る粒子を含み得る。
【0051】
その層は、ガラス基板にCTEを一致させることができる。実施の形態において、その層は、ガラス基板の熱膨張係数から、多くとも10ppmしか異ならない熱膨張係数を有する、例えば、CTEの差は10または5ppm未満である。実施の形態において、この層とガラス基板との間の熱膨張係数の差は、5ppmと10ppmの間である。
【0052】
転写単結晶サファイア層について、例えば、熱膨張係数は底(c軸)面において等方性である。それゆえ、a軸、m軸またr軸のサファイアを提供することに加え、転写サファイア層はc軸材料から構成されることがある。
【0053】
その層は、圧縮応力の状態にあり得る。わずかな圧縮応力は、層内のまたは層を通る亀裂伝搬に対する耐性を改善することができる。層が圧縮応力の状態にある実施の形態において、応力の絶対値(通常、圧縮については負であり、張力については正である)は10MPaと500MPaの間にあり得る。
【0054】
その層は、いくつかの実施の形態によれば、0.1から0.8、例えば、0.1から0.3または0.3から0.8の範囲内の摩擦係数を有することがある。その層の例示の摩擦係数値としては、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7および0.8が挙げられる。
【0055】
その層の外向き表面はざらついていて差し支えないが、実施の形態において、その外向きの表面は、100nm未満、例えば、5から100nmの、1μm2の面積に亘る二乗平均平方根(rms)粗さにより特徴付けられることがある滑らかで平らな表面である。実施の形態において、その層のrms表面粗さは5nm未満である。
【0056】
上述したように、その層は、ガラス基板の表面に直接設けてもよい。あるいは、その層は、先に表面改質したガラス基板上に設けてもよい。その層とガラス基板との間に1つ以上の介在層が含まれる場合、その層としては、反射防止層、きらめき防止(anti-sparkle)層、防眩層および接着促進層が挙げられるであろう。
【0057】
層の光学的性質は、光の散乱と吸収を最小にするように調節することができ、これにより、光学的品質の高いガラス物品を得ることができる。ガラス基板がディスプレイのカバーガラスとして使用される用途において、その層は、光学的に透明(例えば、無色透明)かつ光透過性であり得る。例えば、その層は、約3未満、例えば、約1.4から2、約1.45から1.55、または約1.7から2.8の可視スペクトル内の屈折率、および40%未満、例えば、40、30、20、10または5%未満の可視スペクトル内の最大反射率を有し得る。この層の屈折率は、ガラス基板の屈折率と実質的に等しくあり得る。
【0058】
実施の形態において、その層は、入射光の70%超、例えば、少なくとも70%または80%を透過できる。例えば、その層は、入射光の80%と90%の間を透過できる。さらに別の実施の形態において、その層は、入射光の95%以上、例えば、少なくとも95、96、97、98または99%を透過できる。無色透明層は入射光の98%超を透過させる。
【0059】
ディスプレイのガラスカバー内での使用を促進し得る、その層の光透過性に加え、その層は、高周波に対して透明であり得る。実施の形態において、その層の高周波(RF)透過率は少なくとも50%であり得る。例えば、その層のRF透過率は50、60、70、80、90または95%であり得る。その層は、微小延性引っ掻き傷を含む引っ掻き傷を実質的に含まないことがあり得る。
【0060】
耐引掻性試験中に施される荷重サイクルは、通常、3つの異なる応答領域(regime)を引き起こす。印加された荷重の関数としてガラス表面に生じた引っ掻き傷パターンが、図3に概略示されている。図3の矢印Aは、引っ掻き傷の方向を示している。第1の領域は、微小延性領域(I)であり、これは、圧子400の下での塑性変形および永久的な溝410の出現に相当する。この第1の領域において、表面下の横断亀裂も現れることもある。微小延性形態の特徴は、溝410の両側に損傷または破片がないことである。荷重が増加したときに遭遇する、第2の領域(II)は、微小亀裂領域と呼ばれる。横断亀裂の表面との交差の結果として、小片およびかけら420の形成が、微小亀裂領域で生じる。微小亀裂領域において、半径方向(シェブロン)亀裂425が形成されることもある。そのような亀裂は、ガラスの光透過性に劇的に影響を与え得る。第3の領域(III)は、微小摩耗領域と称され、多量の破片430の形成により特徴付けられる。
【0061】
1つ以上の実施の形態において、改質表面を有する(例えば、ここに記載したような層を含む)ガラス基板は、そのようなガラス基板を様々な荷重でバーコビッチ圧子を使用して引っ掻いたときに、そのような層を有さないガラス基板(または裸のガラス基板)と比べた場合、引っ掻き傷の幅および/または引っ掻き傷の深さの減少を示すであろう。そのような荷重は、ここに記載したそのようなカラス基板を組み込んだ電子機器の使用をシミュレーションするであろう。例えば、そのような荷重としては、60mN、120mN、および/または160mNが挙げられるであろう。そのような荷重でバーコビッチ圧子を使用して生じる引っ掻き傷の深さは、層を含まず(または裸のガラス基板)、同じ様式で引っ掻かれたガラス基板と比べて、60%も減少することがある。1つ以上の実施の形態において、層を含むそのようなガラス基板の引っ掻き傷の深さは、それぞれ、160mNの荷重、120mNの荷重および60mNの荷重でバーコビッチ圧子を使用して引っ掻かれた後、そのような層を含まないガラス基板(または裸のガラス基板)と比べて、35%以上、または40%以上、またさらには60%以上減少することがある。1つ以上の実施の形態において、引っ掻き傷の幅も、ガラス基板がここに記載されたような層を含むように改質された場合、同様に改善されるであろう。例えば、引っ掻き傷の幅は、そのようなガラス基板が60mN、120mNまたさらには160mNの荷重でバーコビッチ圧子を使用して引っ掻かれた場合、そのような層を含まないガラス基板(または裸のガラス基板)と比べて、少なくとも35%減少することがある。
【0062】
耐引掻性から恩恵を受けるであろうガラス物品を取り入れる技術としては、時計のガラス、食料品店のスキャナー窓、コピー機のスキャナー窓、およびLCDスクリーンプロテクタ、ハードディスクメモリの表面、エンジンのピストンリング、工作機械、および他の移動および摺動する構成要素を含む軍事用と民間用の光学素子が挙げられる。
【0063】
その少なくとも一部が透過性であるカバープレートを備えた携帯型電子機器も開示されている。そのような携帯型電子機器としては、以下に限られないが、個人情報端末、携帯電話、ペイジャー、時計、ラジオ、ラップトップコンピュータおよびノート型コンピュータなどの携帯型通信機器が挙げられる。ここに用いたように、「カバープレート」は、視覚ディスプレイをカバーするガラス板またはウィンドウを称する。カバープレートの少なくとも一部は、ディスプレイを見ることができるように透過性である。このカバープレートは、ある程度、衝撃、破壊、および引っ掻き傷に対して耐性であることがあり、高い表面強度、硬度、および耐引掻性を有するウィンドウが望ましいそれらの電子機器に用途が見出されている。1つの実施の形態において、そのカバープレートはタッチセンサー方式である。
【0064】
携帯電話の平面図の略図が図5に示されている。携帯電話500は、ここに記載された表面改質ガラス基板から構成されたカバープレート510を備えている。携帯電話500において、カバープレート510はディスプレイ・ウィンドウとして働く。カバープレートの形成中、ダウンドロー法により形成されたガラスの板を所望の形状とサイズに切断することができる。カバープレートを所望のサイズに切断する前または後に、ガラス板をイオン交換により強化し、次いで、ガラスの曝露表面を覆って耐引掻性の無機層を設けてもよい。次いで、カバープレートを、接着剤または当該技術分野に公知の手段を使用して、携帯型電子機器の本体に接合してもよい。
【0065】
以下に限られないが、上述した携帯型電子機器並びに非電子式時計などの機器用カバープレートも提供される。このカバープレートは、先に開示されたガラス組成物のいずれから形成してもよい。
【0066】
ここに開示されている実施の形態は、電子機器のためのハウジングにも関する。実施の形態において、電子機器のハウジングは、ガラスから形成された、前面または背面などの1つ以上の外側部材(例えば、露出された主面)を有し得る。この1つ以上のガラス表面は、電子機器のハウジングの他の部分に固定できる外側部材アセンブリの一部であって差し支えない。
【0067】
電子機器のハウジングとして、1つの実施の形態は、例えば、少なくとも、電子機器の筐体のための前面を提供するように配置され固定された前面ガラスカバーおよび電子機器の筐体のための背面を提供するように配置され固定された背面ガラスカバーを備えることができる。
【0068】
図5に示されるように、電子機器600は、電子機器の最外部の側面、上面および底面(例えば、面610、616、618および619)のいくつかまたは全てを画成するために電子機器600の周囲を取り囲む外周部材620を備えている。この外周部材620は、どのような適切な形状を有しても差し支えなく、電子機器の構成部材を中に組み立て、保持できる機器の内容積を取り囲むことができる。
【0069】
いくつかの実施の形態において、外周部材620は、開口、つまみ、延長部、フランジ、面取りした面、または機器の構成部材または要素を収容するための他の特徴を1つ以上備えることができる。その外周部材の特徴は、例えば、内面から、または外面からを含む、外周部材のどの面からも延在できる。具体的には、外周部材620は、カードやトレイを収容するためのスロットまたは開口624を備えることができる。開口624は、挿入された構成部材(例えば、挿入されたSIMカード)を収容し、接続するように作動する1つ以上の内部構成部材と揃えることができる。別の例として、外周部材620は、それを通じてコネクタが電子機器600の1つ以上の導電ピンに係合できるコネクタ開口625(例えば、30ピンのコネクタ)を備えることができる。さらに、外周部材620は、ユーザに音声を提供するための(例えば、スピーカーに隣接した開口)、またはユーザからの音声を受信するための(例えば、マイクロフォンに隣接した開口)開口627を備えることができる。
【0070】
内容積内に構成部材を保持するために、電子機器600は、それぞれ、電子機器の前面と背面を提供する前面カバーアセンブリ650および背面カバーアセンブリ(図示せず)を備えることができる。各カバーアセンブリは、例えば、接着剤、テープ、機械的留め具、フック、タブ、またはそれらの組合せの使用を含む、どの適切な手法を使用して、外周部材620に結合しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、カバーアセンブリの一方または両方は、例えば、電子機器の構成部材(例えば、電池)を修理または交換するために、取り外し可能であり得る。いくつかの実施の形態において、カバーアセンブリは、例えば、固定部品と取り外し可能な部品を含む、いくつかの別個の部品を備えることができる。
【0071】
図示された例において、前面カバーアセンブリ650は、ガラス基板654がその上に組み立てられる支持構造652を備えることができる。支持構造652は、そこを通じてディスプレイ655を提供できる開口を含む、1つ以上の開口を備えることができる。いくつかの実施の形態において、支持構造652およびガラス基板654は、ボタン用開口656および受信部用開口657などの機器の構成部材のための開口を備えることができる。
【0072】
ガラス基板654は、ここに開示されたような表面改質ガラス基板を含んで差し支えない。一例として、前記ハウジングは、ハウジング(図のような)の前面を提供する前面外側ガラス基板およびハウジングの背面を提供する背面ガラス基板の一方または両方を備えることができる。電子機器は、携帯型であり得、ある場合には、ハンドヘルド式であり得る。
【0073】
いくつかの実施の形態において、ガラス基板654は、電子機器の内部の構成部材を視界から隠す化粧仕上げを備えることができる。例えば、ディスプレイ655を取り囲むガラス基板の周辺領域に不透明層を施して、ディスプレイ回路の非ディスプレイ部分を視界から隠すことができる。1つ以上のセンサが、ガラス基板654を通して信号を受信することがあるので、その不透明層は、信号がガラス板を通ってその板の背後のセンサに通過できるように選択できるか、または選択的に除去できる。例えば、ガラス基板654は、そこを通してセンサ(例えば、カメラ、赤外線センサ、近接センサ、または周辺光センサ)が信号を受信できる領域659aおよび659bを備えることができる。
【0074】
ここに用いたように、単数形の名詞は、文脈が明白にそうではないと示していない限り、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、「層」への言及は、文脈が明白にそうではないと示していない限り、「層」を2つ以上有する例を含む。
【0075】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、としてここに表すことができる。そのような範囲が表現されている場合、例は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞を使用して、近似として表現されている場合、特定の値は別の態様を構成することが理解されよう。範囲の各々の端点は、他の端点に関してと、他の端点とは無関係の両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0076】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを要求すると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、工程が従うべき順序を実際に列挙していない場合、または工程が特定の順序に制限されるべきことが、請求項または説明において他に具体的に述べられていない場合、どのような特定の順序も暗示されることは決して意図されていない。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本開示の特定の非限定的実施の形態を提示する。
【0078】
層がその上に配置されたガラス本体と、配置されていないガラス本体により示される引っ掻き傷の深さおよび引っ掻き傷の幅の減少を示すために、実施例1および比較実施例2を調製した。実施例1の3つのサンプルの各々は、各々が反対の主面を有する化学強化ガラス本体を3つ提供し、各サンプルの一方の主面に、酸窒化ケイ素から構成された層を形成することによって調製した。この層の厚さは2.6μmであった。この層は、DC Magnetronシステムを使用したイオンアシストDCスパッタリングプロセスによって堆積させた。この層は、6kWのDC電力を供給し、約60sccm(標準状態下の立方センチメートル毎分)(約0.104Pa・m3/s)の流量で流されたアルゴンの存在下で約0.5ミリトルの圧力でターゲットからスパッタリングした。このイオンビームは、窒素ガスとアルゴンガスの混合物を使用して、0.18kWの電力で発生させた。比較実施例2の3つのサンプルの各々は、実施例1のサンプルに使用したガラス本体と同じ圧縮応力および圧縮応力層の厚さを有する化学強化ガラス本体を3つ提供することによって調製した。実施例1および比較実施例2のサンプルの各々を、バーコビッチ圧子を使用して3つの異なる荷重で引っ掻いた。実施例1のサンプルについて、層を備えたガラス本体の側面を引っ掻いた。サンプルの各々の引っ掻き傷の幅と深さを測定した。これらが、表1に示されている。
【0079】
【表1】
図6は、各サンプルを引っ掻いた後の、実施例1と比較実施例2のサンプルの原子間力顕微鏡法(AFM)の画像を示している。
【0080】
ここでの記述は、特定の様式で機能するように「構成されている」または「適合されている」構成要素を称することにも留意されたい。この点に関して、そのような構成要素は、特定の性質を具体化するように、すなわち特定の様式で機能するように「構成されており」または「適合されており」、ここで、そのような記述は、意図する使用の記述とは対照的に、構造的な記述である。より詳しくは、構成要素が「構成されている」または「適合されている」様式へのここでの言及は、その構成要素の既存の物理的状態を意味し、それ自体、その構成要素の構造的特徴の明確な記述と解釈すべきである。
【0081】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、「含む」という移行句を使用して開示されていることがあるが、移行句「からなる」または「から実質的になる」を使用して記載されていることもあるものを含む、代わりの実施の形態が暗示されていることも理解すべきである。それゆえ、例えば、ガラス材料を含むガラス基板に対して暗示された代わりの実施の形態は、ガラス基板がガラス材料からなる実施の形態およびガラス基板がガラス材料から実質的になる実施の形態を含む。
【0082】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本開示に様々な改変および変更を行えることが、当業者には明白であろう。本発明の精神および実体を組み込んだ開示された実施の形態の改変、組合せ、下位の組合せおよび変更が、当業者に想起されるであろうから、本発明は、付随の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に全てを含むように解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0083】
100 耐引掻性ガラス物品
110 無機層
120,212 ガラス基板
200 単槽スパッタ装置
205 真空室
210 基板ステージ
220 マスクステージ
222 シャドーマスク
240 真空ポート
250 水冷ポート
260 ガス入口ポート
280 蒸発設備
290 電源
293 制御装置
295,395 制御ステーション
300 RFスパッタガン
310 スパッタ目標
390 RF電源
400 圧子
410 溝
420 小片またはかけら
430 破片
500 携帯電話
510 カバープレート
600 電子機器
620 外周部材
625 コネクタ開口
650 前面カバーアセンブリ
652 支持構造
654 ガラス基板
655 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】