(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-536425(P2015-536425A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】圧縮されたオーバーラップ区分を有する摩擦プレート
(51)【国際特許分類】
F16D 13/64 20060101AFI20151124BHJP
F16D 13/62 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
F16D13/64 Z
F16D13/62 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-545189(P2015-545189)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(85)【翻訳文提出日】2015年7月24日
(86)【国際出願番号】US2013072032
(87)【国際公開番号】WO2014085470
(87)【国際公開日】20140605
(31)【優先権主張番号】61/730,406
(32)【優先日】2012年11月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】パトリック リンデマン
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド ファラハティ
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA31
3J056AA57
3J056AA60
3J056BA01
3J056BA02
3J056BC01
3J056BE04
3J056CA04
3J056CA13
3J056CA16
3J056EA22
3J056FA03
3J056FA07
(57)【要約】
摩擦材部品が提供される。摩擦材部品は第1のセグメントと第2のセグメントとを備え、第1のセグメント及び第2のセグメントの中間部分よりも圧縮された接合部を形成するために、第1のセグメントの端部は第2のセグメントの端部にオーバーラップしている。摩擦材部品を製造する方法も提供される。当該方法は、第1の摩擦材セグメントの端部及び第2の摩擦材セグメントの端部を互いにオーバーラップする工程と、圧縮された接合部を形成するために、オーバーラップした端部を圧縮する工程とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセグメントと第2のセグメントとを備え、
前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントの中間部分よりも大きく圧縮された接合部を形成するために、前記第1のセグメントの端部は前記第2のセグメントの端部にオーバーラップしていることを特徴とする摩擦材部品。
【請求項2】
前記圧縮された接合部は、前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントの前記中間部分と略同等の厚さである、請求項1記載の摩擦材部品。
【請求項3】
前記圧縮された接合部は、前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントの前記中間部分よりも高密度である、請求項2記載の摩擦材部品。
【請求項4】
前記圧縮された接合部は前記中間部分の略2倍の密度である、請求項3記載の摩擦材部品。
【請求項5】
前記オーバーラップ端部は、前記圧縮された接合部において、接着手段によって接合されている、請求項1記載の摩擦材部品。
【請求項6】
前記摩擦材部品は、織布複合摩擦ライニングから形成されている、請求項1記載の摩擦材部品。
【請求項7】
前記摩擦材部品は円弧形状である、請求項1記載の摩擦材部品。
【請求項8】
前記摩擦材部品はリング形状である、請求項7記載の摩擦材部品。
【請求項9】
少なくとも1つの更なるセグメントを更に備え、
第2の圧縮された接合部を形成するために、前記第1のセグメントの第2の端部は、前記少なくとも1つの更なるセグメントの第1の端部にオーバーラップしており、
第3の圧縮された接合部を形成するために、前記第2のセグメントの第2の端部は、前記少なくとも1つの更なるセグメントの第2の端部にオーバーラップしている、請求項1記載の摩擦材部品。
【請求項10】
前記少なくとも1つの更なるセグメントは、第3のセグメント及び第4のセグメントを有しており、
前記第3のセグメントの第1の端部は、前記少なくとも1つの更なるセグメントの前記第1の端部を形成しており、
前記更なるセグメントの第1の端部は、前記少なくとも1つの更なるセグメントの前記第2の端部を形成しており、
前記第3のセグメントの第2の端部及び前記第4のセグメントの第2の端部は、第4の圧縮された接合部を形成するために互いにオーバーラップしている、請求項9記載の摩擦材部品。
【請求項11】
基部と、摩擦材リングを形成するために前記基部に取り付けられた複数の摩擦材セグメントと、を備え、
前記複数の摩擦材セグメントのうち2つの摩擦材セグメントは、請求項1に記載された摩擦材部品によって形成されていることを特徴とする、摩擦プレート。
【請求項12】
前記圧縮された接合部は、前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントの中間部分と略同等の厚さである、請求項11記載の摩擦プレート。
【請求項13】
前記圧縮された接合部は、前記第1のセグメント及び前記第2のセグメントの前記中間部分よりも高密度である、請求項12記載の摩擦プレート。
【請求項14】
前記オーバーラップ端部は、前記圧縮された接合部において、接着手段によって接合されている、請求項11記載の摩擦プレート。
【請求項15】
請求項11記載の少なくとも1つの摩擦プレートを備えることを特徴とする、湿式摩擦クラッチ。
【請求項16】
第1の摩擦材セグメントの端部及び第2の摩擦材セグメントの端部を互いにオーバーラップする工程と、
圧縮された接合部を形成するために、前記オーバーラップした端部を圧縮する工程と、を備えることを特徴とする、摩擦材部品を製造する方法。
【請求項17】
前記圧縮する工程が、摩擦材部品を形成するために、前記第1の摩擦材セグメント及び前記第2の摩擦材セグメントを互いに接合する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記圧縮する工程が、前記オーバーラップ端部を、前記第1の摩擦材セグメント及び前記第2の摩擦材セグメントの中間部分の高さにまで平坦化する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記圧縮された接合部は、前記第1の摩擦材セグメント及び前記第2の摩擦材セグメントの中間部分よりも高密度である、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦クラッチ及び摩擦プレートに関し、より詳細には、各プレートがセグメント化された摩擦材を有する複数の摩擦プレートを備える、湿式摩擦クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
湿式摩擦クラッチにおける摩擦材は、一般的に、オイルに浸された環境下で作動するものであり、多くの場合、当該摩擦材には、摩擦材リングを形成するために紙ベースの材料が使用される。製造中の廃棄物を減らすために、湿式摩擦材リングは、複数のセグメントに打ち抜き加工され、その後、摩擦材リングを形成するためにプレートに結合される。しかしながら、セグメント間の端部は、早期の材料故障の要因となり得るものであり、湿式摩擦材の寿命を減らし得る。早期の材料故障の要因は、1つには、圧縮されていない目地部分の端部に浸入し得る流体にある。
【0003】
米国特許第6585096号明細書は、減少した厚さを有する接合部を開示しており、米国特許7165664号明細書は、接合部に、押圧された平坦な領域を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6585096号明細書
【特許文献2】米国特許7165664号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合部において全セグメントを高圧縮することは耐久性を改善し得るが、接合部で圧縮することにより引き起こされる減少した厚さは、摩擦材リングの内径部と外径部との間での流体の通流に至り、係合中のオイル漏れの要因にもなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のセグメント及び第2のセグメントを備える摩擦材部品を提供し、第1のセグメント及び第2のセグメントの中間部分よりも圧縮された接合部を形成するために、第1のセグメントの端部は第2のセグメントの端部にオーバーラップしている。
【0007】
又、本発明は、第1の摩擦材セグメントの端部及び第2の摩擦材セグメントの端部を互いにオーバーラップする工程と、圧縮された接合部を形成するためにオーバーラップした端部を圧縮する工程とを備える、摩擦材部品を製造する方法を提供する。
【0008】
本発明は、好ましい実施形態を表す図面に基づいて、これに限定することなく更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】本発明の一実施形態による摩擦材部品を形成する工程を概略的に示す。
【
図1b】本発明の一実施形態による摩擦材部品を形成する工程を概略的に示す。
【
図1c】本発明の一実施形態による摩擦材部品を形成する工程を概略的に示す。
【
図2】
図1a、
図1b、
図1cの実施形態に示したセグメントを4つ備える摩擦プレートを示す。
【
図3】
図2に示された複数の摩擦プレートを有する摩擦クラッチを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1a、
図1b、及び
図1cは、本発明の一実施形態に係る摩擦材部品10を形成する工程を概略的に示す。一つの好ましい実施形態において、摩擦材部品10は、織布複合摩擦ライニングから成る。
図1aにおいて概略的な側面図で示されたように、2つの別個の摩擦材セグメント12,14の各々は、それぞれ第1の端部12a,14aと第2の端部12b,14bを有する。摩擦材セグメント12,14は、第2の端部12bが第1の端部14aの上に位置する状態で、第2の端部12b及び第1の端部14aが互いにオーバーラップするように整列される。この好ましい実施形態では、摩擦材セグメント12,14は同じ厚さTから成っており、両摩擦材セグメント12,14は、それらの長さに亘り均一な厚さから成っている。摩擦材セグメント12,14は、それらの下面全体に接着剤又は別の接着手段を有していてよい。例えば、摩擦材セグメント12,14が摩擦材の巻反から切断され、接着手段が材料片の裏面全体に被着されてもよいし、通常は、材料片全体が摩擦材の巻反からセグメント12,14に切断される前に、接着手段が材料片の裏面全体に被着される(即ち、摩擦材の巻反が解かれ、接着手段が裏面側に被着され、その後各セグメントが切断され、プレートに例えば
図2に示された基部120に付着される)。代替的な1つの実施形態において、接着手段は、プレートそれ自体に被着されてもよい。その後、オーバーラップ端部12b,14aを高圧縮することによって、オーバーラップ端部12b,14aは接合領域16において接合され、この結果、
図1bにおける概略的な側面図及び
図1cにおける概略的な斜視図に示された摩擦材部品10を形成するために、オーバーラップ端部12b,14aは接着手段によって接合される。代替的な実施形態において、オーバーラップ端部12a,14bは、それらが接着手段によって接着される前又は後に高圧縮されてよい。オーバーラップ端部12a,14bは、例えば型を使用してプレス加工することによって高圧縮され、これにより、オーバーラップ端部12a,14bを平坦化することによって、接合部18が高圧縮された摩擦材から形成される。別の摩擦材セグメント12,14は、それらが一緒に搬送される前にある程度圧縮され、接着され、高圧縮されてよい。従って、本明細書において使用される高圧縮とは、別の摩擦材セグメント12,14が一緒に搬送される前における当該摩擦材セグメント12,14の、上述した圧縮の程度よりも大きな圧縮の程度を表している。
【0011】
摩擦材セグメント10は、2つの端部12a,14bと、接合部18を形成するために接合される摩擦材セグメント12の端部12b,14aと、を有する。この実施形態において、摩擦材部品10は均一な厚さを有し、端部12a,14bは接合部18と同じ厚さを有している。摩擦材セグメント12,14の接合中における端部12b,14aの圧縮は、耐久性のある接合部18を提供する一方で、摩擦材部品10の均一な厚さは、接合部18において摩擦材セグメントを横断する流体の流れを妨げる。
【0012】
従って、この実施形態における圧縮された厚さの接合部18は、摩擦板に対する単位圧力を減少するための摩擦領域を提供する一方で、内径部ID及び外径部OD間におけるオイルの浸潤を妨げるのに役立つ。
【0013】
例えば
図2に示されたように、摩擦プレート100は、例えば金属製のプレートである基部120と、4つのセグメントから成る摩擦面とを備え、当該セグメントは、
図1a,1b,1cの実施形態において示されたセグメント12,14と、セグメント12,14と同様の2つの別のセグメント112,114とを有する。セグメント12,14,112,114は、隣接するセグメントに接合されており、これにより4つの接合部18,118,218,318を有する摩擦リング150を形成する。各セグメント12,14,112,114の両端部は、対応する接合部18,118,218,318において高圧縮されており、接着手段により接合されている。例えば、これらのセグメント12,14,112,114は、基部120に接着又は別の方法で付着され、これにより摩擦プレート100の摩擦リング150を形成する。セグメント12,14,112,114の端部は、図示されたように整合するように湾曲されているが、別の端部形状は例えば嵌合端部であることも可能である。
【0014】
好ましい実施形態において、セグメント12,14,112,114は、当該セグメント12,14,112,114の端部が隣接するセグメントの端部とオーバーラップする状態で、リング形状に整列され得る。例えば、
図1aに示されるように、端部14a,12bは互いにオーバーラップしており、同様に、端部114a,14bは互いにオーバーラップし、端部112a,114bは互いにオーバーラップし、端部12a,112bは互いにオーバーラップしている。接着手段は、セグメント12,14に関連して上述したように、セグメント12,14,112,114に被着され得る。その後、例えば型を用いたプレス加工によって、オーバーラップ端部が全て同時に圧縮され、これにより、端部14a,12bが接合部18を、端部114a,14bが接合部118を、端部112a,114bが接合部218を、端部12a,112bが接合部318を同時に形成し、オーバーラップ端部は平坦化される。代替的な実施形態において、接合部18,118,218,318は順次形成されてもよく、又は接合部18,118,218,318は2つ一組で形成されてもよい。又、更なる実施形態において、端部がオーバーラップされて、接着手段によって一体にして順次搬送され、その後同時に圧縮されてもよい。
【0015】
好ましい実施形態において、高圧縮された接合部18,118,218,318が形成され、摩擦リング150を形成するためにセグメント12,14,112,114が接合された後、摩擦リング150は均一な厚さを有している。従って、外径部OD及び内径部ID間における通流は、接合部18,118,218,318によって妨げられるか又は低減され、当該接合部18,118,218,318は改善された耐久性を提供し得る。上述したように、好ましい実施形態において、セグメント12,14,112,114は、接合され且つ圧縮される前において同じ厚さから成っている。従って、セグメント12,14,112,114の端部は平均して約50%圧縮され、これにより、セグメント12,14,112,114の端部が、接合部18,118,218,318間に延在する中間部分12c,14c,112c,114cの約2倍の密度を成すように接合部18,118,218,318を形成する。代替的な実施形態において、セグメント12,14,112,114は、均一な厚さから成っていなくてもよい。例えば、接合部18,318を形成するための、所望の圧縮及び接合後の端部12a,12bにおける所望の密度によっては、セグメント12は、端部12a,12bが高圧縮される前の中間部分12cよりも厚いか又は薄い端部12a,12bによって形成されていてもよい。接合部18,318及びこれに対応する端部12a,12bが、中間部分12cの2倍の密度よりも小さいことを所望されている場合、端部12a,12bが端部112b,14aにそれぞれオーバーラップされて且つ平坦化される前において、端部12a,12bは中間部分12cよりも薄くてよい。接合部18,318及びこれに対応する端部12a,12bが、中間部分12cの2倍の密度よりも大きいことを所望されている場合、端部12a,12bが端部112b,14aにそれぞれオーバーラップされて且つ平坦化される前において、端部12a,12bは中間部分12cよりも厚くてよい。
【0016】
図3は、複数の摩擦プレート100,200,300を有する自動車用変速機の湿式摩擦クラッチ50を概略的に示しており、摩擦プレート200,300は、例えば
図2に示された摩擦プレート100と同様である。軸線方向に可動なプレート100,200,300は、例えば液圧駆動のピストン52によって、軸線方向に可動な分離プレートに対して押圧され、これにより摩擦係合を提供する。
【0017】
高圧縮された端部は、摩擦材セグメントにおける別の部分を非圧縮状態で残しつつ、摩擦材セグメントの端部を圧縮することによって製造され得る。リングを形成するために2つ又はそれ以上のセグメントが使用されるが、好ましくは、リングを形成するために少なくとも4つのセグメントが使用される。別の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】