(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-536717(P2015-536717A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】血圧の連続非侵襲測定のためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20151201BHJP
A61B 5/0225 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
A61B5/02 337L
A61B5/02 336F
A61B5/02 337M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-540204(P2015-540204)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】GB2013052799
(87)【国際公開番号】WO2014068289
(87)【国際公開日】20140508
(31)【優先権主張番号】13/664,670
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1219871.9
(32)【優先日】2012年11月5日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504078154
【氏名又は名称】リドコ グループ ピーエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】515117914
【氏名又は名称】シーエヌシステムズ メディツィンテクニック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】CNSYSTEMS MEDIZINTECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ, エリック
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン, テレンス ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フォルティン, ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】マイアー, カーティャ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB02
4C017AB03
4C017AC01
4C017AD01
4C017BC11
4C017BC23
4C017BD10
4C017DE01
4C017DE05
4C017FF08
(57)【要約】
血圧を監視するのに使用するデバイス及び方法。デバイスは、第1の血圧信号に基づいて第1の血圧測定値を監視するように構成されたコントローラを備える。コントローラは、第1の血圧測定値が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧信号に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するように構成される。第2の血圧測定値の取得を開始する決定は、ただ1つの血圧測定値に基づく。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧を監視するのに使用するデバイスであって、
第1の血圧信号に基づいて第1の血圧測定値を監視するように構成されたコントローラを備え、前記コントローラが、
前記第1の血圧測定値が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧信号に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成され、
前記第2の血圧測定値の取得を開始する決定が、ただ1つの血圧測定値に基づく、デバイス。
【請求項2】
前記コントローラが、前記第1の血圧信号に基づいて計算された脈圧に基づいて前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コントローラが、前記脈圧が15mmHG未満に降下した場合に前記第2の血圧測定値の取得を開始するように、及び/又は前記脈圧が150mmHGを超えた場合に前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラが、ある期間中の脈圧の変化が既定の閾値を超えた場合に前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記期間が固定された期間である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記コントローラが、前記脈圧が前記期間中に50%を超えて低減した場合、及び/又は前記脈圧が前記期間中に100%を超えて増大した場合に、前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記期間が90秒である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記期間が既定の時点から後の期間である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項9】
前記コントローラが、前記脈圧が以前の第2の血圧測定又は再較正から後に60%を超えて増大した場合、及び/又は前記脈圧が以前の第2の血圧測定又は再較正から後に150%を超えて低減した場合に、前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コントローラが、前記第1の血圧信号に基づいて計算されたmed−dia比に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コントローラが、前記med−dia比が既定の閾値を超えた場合に前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コントローラが、前記med−dia比が21%未満に降下した場合に前記第2の血圧測定値の取得を開始するように、及び/又は前記med−dia比が51%を超えた場合に前記第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記コントローラが、前記第1の血圧測定値が前記第2の血圧測定値と既定量だけ異なる場合に、前記第2の血圧測定値に基づいて前記第1の血圧測定値を再較正するようにさらに構成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記コントローラが、第2の血圧測定値が既定の先行する期間中に取得されている場合に、及び前記第1の血圧測定値が前記第2の血圧測定値を考慮して再較正されなかった場合に、第2の血圧測定値の取得の開始を禁止するようにさらに構成される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記コントローラが、既定の先行する期間中に特定の既定の閾値を超えることに基づいて第2の血圧測定値が取得されていると共に前記第1の血圧測定値が再較正されなかった場合に、前記既定の閾値を超えることに基づいて第2の血圧測定値の取得の開始を禁止するようにさらに構成される、請求項13又は14に記載のデバイス。
【請求項16】
腕カフ及び/又は指カフをさらに備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のデバイスを備える血行動態モニタ。
【請求項18】
血圧を監視する方法であって、
第1の血圧信号を受信するステップと、前記第1の血圧信号に基づいて第1の血圧測定値を監視するステップと、前記第1の血圧測定値が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧信号に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するステップとを含み、前記第2の血圧測定値の取得を開始することの決定が、ただ1つの血圧測定値に基づく、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、血圧の監視に使用するのに適したデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学においては、例えば侵襲的処置の間中に血圧を監視することが望ましい場合が多い。血圧は、動脈ラインを使用して最も確実に測定される。動脈ラインの装着は侵襲的であり、最も一般的には麻酔下で行われる。
【0003】
血圧を非侵襲的に測定する方法及び手段もまた知られている。血圧を非侵襲的に測定する最も一般的な方法は、上腕に巻かれた膨張可能カフによるものである。正確とはいえ、これらの測定では肢への血流が妨げられ、したがって、断続的に測定値を取得することしかできない。
【0004】
調べられる動脈の血流を維持する血圧測定の代替方法が知られている。米国特許第6,669,648号、米国特許第7,390,301号及び米国特許第8,114,025号、並びに米国特許出願公開第2011/0105917号及び米国特許出願公開第2011/0105918号に記載された「脈管負荷軽減技法」では、指に装着された膨張可能カフによって血圧を連続的に測定する。この知られている方法では、調べられる動脈の血流を維持することができ、それによって、長期間の連続測定が可能になる。調べられる動脈の圧負荷及びうっ血は、第2の指に第2の指カフを装着し、血圧測定値を取得するときに2つのカフを交互に換えることによって制限される。
【0005】
異なる測定技法を用いて、又は体の異なる箇所において取得された血圧測定値を直接比較することは、特に、例えば指の小さい動脈と主動脈の間の血圧の差により、可能ではない場合があることを理解されたい。この理由のために、血圧測定値を較正(calibrate)することが有益であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、第1の血圧信号に基づいて第1の血圧測定値を監視するように構成されたコントローラを備える、血圧を監視するのに使用するデバイスが提供される。コントローラは、第1の血圧測定値が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧信号に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するようにさらに構成される。第2の血圧測定値の取得を開始する決定は、第1の血圧測定値など、ただ1つの血圧測定値に基づく。血圧測定値の監視を単一の測定値に集中させることによって、患者の不快感がさらに低減される。
【0007】
本発明の第2の実施形態によれば、第1の血圧信号を受信するステップと、第1の血圧信号に基づいて第1の血圧測定値を監視するステップと、第1の血圧測定値が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧信号に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するステップとを含む、血圧を監視する方法が提供される。第2の血圧測定値の取得を開始する決定は、ただ1つの血圧測定値に基づく。
【0008】
既定の閾値は、最小閾値又は最大閾値とすることができる。第1の血圧信号は、単一の指カフ(例えば、上記の米国特許に記載されている指カフの1つなど)から得られるものなど、連続的及び/又は非侵襲的血圧信号とすることができる。第2の血圧信号は、膨張可能腕カフを使用する測定器/血圧計(spygmamometer)から供給又は獲得することができる。
【0009】
血圧を監視するのに使用するデバイスは、第1及び/又は第2の血圧信号を取得するのに必要な一部又は全ての圧力カフ、又は他のデバイスをそれ自体で備えることができる。すなわちデバイスは、腕カフ及び/又は指カフを備えることができる。或いは、デバイスはただ単に、すでに臨床使用中の既知の血圧測定デバイスから血圧信号を受信する監視制御ユニットとすることもできる。デバイスは、血行動態モニタの一部を形成することができる。
【0010】
第1の血圧測定値を監視する際、コントローラは、第1の血圧測定値の較正を確認するのはいつが好ましいかを(上記で論じられた閾値に従って)決定することができる。血圧測定値が既定の閾値を超えたときだけ較正測定を開始することによって、較正測定の回数が最少になる。これは、多数の二次較正測定が患者の不快感を引き起こすことがあり、また第1の血圧測定を一時的に妨げることがあるので、有利である。
【0011】
コントローラは、第2の血圧測定値の取得を開始する決定を、第1の血圧信号を使用して計算された脈圧に基づかせるように構成することができる。脈圧(PP)は、収縮期圧(P
sys)と拡張期圧(P
dia)の差であり、すなわち次式となる。
PP=P
sys−P
dia
【0012】
コントローラは、脈圧が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧測定値の取得を開始することができる。脈圧は通常、特定の範囲内にとどまる。健康な安静時の脈圧は、普通の大人で約30〜40mmHGである。非常に高いか、又は非常に低い脈圧が測定された場合、このような値は、第1の血圧測定値の較正が確認を必要とする可能性があることを表示するものと解釈され得る。一実施形態では、コントローラは、脈圧が15mmHG未満に降下した場合、及び/又は脈圧が150mmHGを超えた場合に、第2の血圧測定値の取得を開始するように構成される。
【0013】
加えて、又は別法として、短時間中に発生する大きな脈圧の変化は、血圧測定値の較正が確認されるべきことを表示するものであり得る。コントローラは、ある期間中の脈圧の変化が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧測定値の取得を開始するように構成することができる。この期間は、先行する90秒の間中など、固定された期間とすることができる。一実施形態でコントローラは、脈圧が90秒以内に50%を超えて低減した場合、及び/又は脈圧が90秒以内に100%を超えて増大した場合に、第2の血圧測定値の取得を開始するように構成される。
【0014】
別法として、又は加えて、脈圧の変化は、ある固定された時点で開始した、ある期間中ずっと監視することができる。例えば、コントローラは、脈圧がすぐ前の最後の第2の血圧信号の取得から後に既定の量だけ変化した場合に、第2の血圧測定値の取得を開始するように構成することができる。以前の第2の血圧測定から後の60%を超える脈圧の増大、及び/又は以前の第2の血圧測定から後の150%を超える脈圧の低減は特に、血圧測定値の較正の確認が望ましい状況を表すことが判明した。短期間中のこのような大きな脈圧の変動は、生理学的又は病理学的な事象の結果としては通常起こらず、したがって、第1の血圧信号の較正が確認を必要とすることのよい指標になり得る。
【0015】
較正確認が必要であり得ることのよい指標になることが判明した別のパラメータは、med−dia比である。med−dia比は、平均動脈圧(MAP)と拡張期圧(P
dia)の差を脈圧(PP)で割ったものであり、すなわち次式となる。
【数1】
【0016】
コントローラは、第1の血圧信号に基づいて計算されたmed−dia比に基づいて第2の血圧測定値の取得を開始するように構成することができる。コントローラは、med−dia比が既定の閾値を超えた場合に第2の血圧測定値の取得を開始するように構成することができる。一実施形態では、コントローラは、med−dia比が21%未満に降下した場合、及び/又は51%を超えた場合に第2の血圧測定値の取得を開始するように構成される。
【0017】
第2の血圧測定値が受信/取得された後、第1の血圧測定値を第2の血圧測定値に基づいて再較正することができる。第1の血圧測定値の較正は、第1の血圧測定値を増幅すること、又はいくつかの値が第2の血圧測定値のものに密接に一致するようにバイアスを加えることを含み得る。他方で、第1と第2の血圧測定値が著しく異ならない場合には、第1の血圧測定値を正確なものとしてそのまま保持することができる。コントローラは、第1の血圧測定値が第2の血圧測定値と既定量だけ異なる場合に、第2の血圧測定値に基づいて第1の血圧測定値を較正するように構成することができる。コントローラは、例えば、第1と第2の血圧測定値の収縮期血圧値、又はこれら2つの測定値の拡張期血圧値、又は両方を比較するように構成/プログラムすることができる。第1と第2の血圧測定値の差異が13mmHG以下である場合には、再較正は省略することができ、コントローラはそれに応じて構成できることが判明した。
【0018】
較正確認の結果として再較正をすることにならなかった場合、すなわち、第1と第2の血圧測定値の間の差が、第1の血圧測定値を再較正する根拠とするには小さすぎると考えられた場合には、正確に較正されていることが分かっている測定値をデバイスが繰り返し確認することがないように、自動較正確認を一時的に禁止することが有利であり得る。一実施形態では、コントローラは、第2の血圧測定値が既定の先行する期間中に取得されていると共に第1の血圧測定値が再較正されなかった場合には、第2の血圧測定値の取得を開始するいかなるステップも禁止するように構成される。第2の血圧信号の取得の開始を禁止する決定は、複数の閾値のどれも、既定の期間内に第2の血圧信号を取得する必要性を評価するために使用されないように、コントローラによって適用することができる。
【0019】
コントローラはまた、既定の先行する期間中に特定の既定の閾値を超えることに基づいて第2の血圧測定値が取得されていると共に第1の血圧測定値が再較正されなかった場合には、既定の閾値を超えることに基づいて第2の血圧測定値の取得を開始しないように構成することもできる。こうすることは、最大及び最小脈圧、又はmed−dia比などの絶対値の閾値では特に有利である。
【0020】
本発明は、図面と併せて以下の詳細な説明から、より完全に理解され評価されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態による、連続的に血圧を測定し自動的に再較正するシステムの図である。
【
図2】監視された血圧信号の較正を確認することが望ましいかどうかを決定する方法を詳述する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態による、連続的に血圧を監視し自動的に再較正するシステムを示す。血圧モニタ100は、連続血圧信号を受信するために、連続BPインターフェース106を介して1組の指カフ120(一度にそのうちの1つだけが使用される)に接続され、また、要求されたときに較正血圧信号を受信するために、較正BPインターフェース108を介して腕カフ140に接続される。インターフェース106及び108はコントローラ102に接続され、このコントローラは、指カフ120及び腕カフ140からインターフェース106及び108を通して受信された血圧信号に基づいて、較正された連続血圧信号を計算することができる。コントローラは、メモリ104に収納された実行可能ソフトウェアコードに基づいて、その機能を実行する。コントローラ102は、較正された連続血圧信号を分析し、較正された連続血圧信号と関連付けられた閾値が既定の閾値を超えた場合、腕カフ血圧測定デバイス140に命令を送出して較正血圧測定値を取得する(
図2を参照して論じられるように)。コントローラ102は、較正血圧値を取得するための腕カフ140への命令を、連続血圧測定の開始時、又はユーザインターフェース110を介してユーザから要求されたときなど、他の時間に送出することもできる。血圧信号は、将来の分析及び患者記録のために、メモリ104に収納することができる。
【0023】
較正血圧信号は、コントローラ102で分析され、使用されて較正関数が計算される。較正関数は、コントローラ102で連続血圧信号に適用されて、較正された血圧信号が計算される。次に、較正された血圧信号は、出力部112を介して出力することができる。出力部112は、モニタ、ネットワーク接続部、メモリデバイス、又は他の出力部とすることができる。
【0024】
指カフ120は、米国特許第6,669,648号及び米国特許第7,390,301号、並びに米国特許出願公開第2012/0059233号に開示されたものなどとすることができる。2つの指の血圧を測定できる2つの指カフ120が設けられる。一度に1つの指が測定され、測定は、指に加わる不快感及び圧迫感を低減するために、それぞれの指の間で周期的に交換される。切換えによって、実施形態では新しい指の測定値が、何の腕カフ測定値も取得されることなく、最後の連続血圧値と照合して較正される。
【0025】
指カフ120は、腕カフ140を付けている腕と反対の腕に装着して、指カフ120を用いた測定を妨げる腕カフ140の起動を回避することができる。或いは、腕カフ140と指カフ120を同じ腕に装着して、他方の腕を医療処置時に別に使用するために空けておくこともできる。血圧を連続測定する他の手段、及び較正血圧信号を提供する他の手段を使用できること、並びに本発明が、指カフ及び腕カフと一緒に機能することに限定されないことに留意されたい。
【0026】
図2は、本発明の実施形態による、連続血圧信号が較正を必要とするかどうかを決定する方法200を詳述する流れ図を示す。この方法は、上述の装置によって実施することができる。
【0027】
測定値が記録される前に連続血圧信号はまず、較正血圧信号を使用して較正される(210)。連続血圧信号及び較正血圧信号は、例えば、
図1にそれぞれ示された指カフ120及び腕カフ140を使用して得ることができる。較正測定で腕カフを使用することは、このような測定法が現在ではゴールドスタンダードと考えられているので好ましい。血圧信号が較正された後、較正された連続血圧測定値を取得することができる(220)。較正された血圧信号は継続的に監視されて、1つ又は複数の事前選択された閾値を超えたかどうかが確認される(230)。閾値の1つを超えた場合、新しい較正血圧測定値が取得される(240)。較正された連続血圧測定信号が既定の量だけ較正信号と異なる場合、連続血圧信号が再較正される(260)。較正された連続血圧信号が較正信号と異ならない場合、較正は不要であり、測定220が持続される。ステップ230で閾値を超えるたびに連続血圧信号が再較正されるようにステップ250を省略できることを理解されたい。連続血圧信号が再較正された後(260)、較正された連続血圧測定値が持続される(220)。継続的に血圧測定値を監視し、閾値を超えるたびに再較正することによって、測定精度を依然として確保しながら較正測定の回数を制限することができる。
【0028】
図3Aは、1つの心周期中の典型的な血圧変化を示す。縦座標は血圧を表示し、横座標は時間を示す。1心周期中の最大圧は収縮期圧(P
sys)であり、最小圧は拡張期圧(P
dia)である。1心周期中の平均圧は平均動脈圧(MAP)である。収縮期圧(P
sys)と拡張期圧(P
dia)の差は脈圧(PP)になる。
PP=P
sys−P
dia
【0029】
予測されるパターンからの脈圧の逸脱が、血圧測定値の較正が確認されるべきことをよく表示するものになることが判明した。特に、脈圧が既定の圧範囲から外れる場合、これは血圧測定がもはや正確ではないことを表示している可能性があることが判明した。例えば、約15mmHG未満への脈圧の降下、又は約150mmHGを超える脈圧の上昇は、通常の生理機能ではまずめったに起きないことが判明し、そのため、誤較正を表示していると確実に考えることができ、したがって、測定値の較正が確認されるべきことの指標と解釈することができる。
【0030】
加えて、脈圧の急な変化は、測定値の較正がもはや正しくない可能性があることを表示し得ることが判明した。したがって、実施形態では、血圧測定値の較正を確認するための追加又は代替のトリガとして、脈圧の変化速度を使用する。較正を確認するための腕カフ測定は特に、脈圧が90秒以内に50%を超えて減少するか、又は90秒以内に100%を超えて増大した場合に起動される。このトリガ事象では、脈圧の変化速度を評価するのに既定の固定期間を使用するが、変化速度を評価する代替又は追加の方法では、設定/規定された時点以後の脈圧の変化量を考慮することになる。例えば、最後の較正又は較正確認から後の脈圧の大きな変化は、現在の較正を確認することが必要なことを表示している可能性がある。実施形態では、最後の較正若しくは較正確認から後に60%を超えて脈圧が低減するか、又は最後の較正若しくは較正確認から後に150%を超えて脈圧が増大した場合に、信号が再較正される。
【0031】
誤較正の確実な指標になることが判明した別のパラメータはmed−dia比であり、これは、平均動脈圧(MAP)と拡張期圧(P
dia)の差を脈圧(PP)で割ったもの、すなわち、
【数2】
である。med−dia比は、通常の休んでいる速度においてMAPが、
【数3】
のように近似することができるので、通常状態で約1/3である。較正の確認は、med−dia比が既定の帯域を外れた場合に必要になり得ることが判明した。特に、21%(0.21)未満、又は51%(0.51)超のmed−dia比が、較正確認の確実なトリガとして特定された。
【0032】
短期間の変動をフィルタで除去するには、脈圧及びmed−dia比などの測定されたパラメータに移動平均を適用することができる。こうすることで信号対雑音比を改善して、血圧信号をより明瞭にすることが可能になるはずであり、また雑音若しくは短期間の誤較正により較正確認又は再較正を開始させないことが確実になるはずである。このような雑音又は短期間誤較正をフィルタリングする別の方法は、測定されたパラメータに適用されるメディアンフィルタであり、移動平均の代わりに移動窓の中心値が使用される。
【0033】
閾値を超えると、較正測定値が取得される。この較正測定値を使用して連続血圧信号を較正することができるが、測定値の一貫性を維持するために、較正された連続血圧信号が較正測定値と既定量だけ異なる場合では、較正された連続血圧信号だけを再較正することが有益であり得る。較正された信号の収縮期圧又は拡張期圧が較正信号で測定されたものと13mmHGだけ異なる場合には、較正が必要であり得ることが判明した。
【0034】
実施形態でユーザは、再較正、又は使用される指カフの交換をいつでも自由に要求できる。ユーザが較正測定値を要求した場合、又はユーザが指カフ測定を他方の指と交換することを要求した場合、較正された信号と較正信号の差にかかわらず、再較正が実施される。
【0035】
較正測定値が較正された血圧測定値と十分に異ならない場合、システムは正しく較正されている可能性があり、デバイスは、自動再較正を既定の時間、例えば一実施形態では5分間、禁止する。さらに、較正確認が、最大脈圧などの閾値を超える絶対値の結果として開始され、再較正が必要ではない場合、その閾値は、血圧信号源が次に変更される/カフが次に指間で交換されるまでなど、その後のある期間無視することができる。
【0036】
較正測定値はまた、指変更の間に取得することもできる。一実施形態では、較正測定値は、例えば、最後の指交換から後に、又は最後の較正測定から後に経過した時間が4分より長くなった場合に取得することができる。較正測定値が取得された場合、間隔が決められているどの指変更も遅らせることができる。
【0037】
図3Bは、入力血圧信号及び第2の較正血圧信号に基づいて、較正された血圧信号をどのようにして計算することができるかを示す。入力血圧信号は、較正信号と同じ振幅、すなわち脈圧を有するように増幅される。この増幅された血圧信号は、平均動脈圧が較正信号と一致するようにバイアス圧だけオフセットされる。したがって、較正された最終の測定値は、較正信号と類似の収縮期圧及び拡張期圧を有するはずである。較正は、脈圧又は平均動脈圧の一方を照合することだけを含むことに留意されたい。同様に、他の係数を使用して入力信号を較正することができる。入力連続血圧信号をより正確に較正するために、複数の心周期(例えば連続血圧信号として記録された最後の10回の拍動)中の平均値を使用することができる。
【0038】
較正信号から計算された係数は、較正時点以後の入力連続血圧信号に継続的に適用される較正関数を形成するために使用される。各再較正が実施されると、新しい較正関数が計算され連続血圧信号に適用されて、較正された連続血圧測定値が得られる。
【0039】
いくつかの実施形態が説明されたが、これらの実施形態は例示的にのみ提示されており、本発明の範囲を限定するものではない。実際、本明細書で説明された新規の方法、装置及びシステムは、様々な他の形態で具現化することができ、さらに、本発明の主旨から逸脱することなく、本明細書で説明された方法及びシステムの形態についての様々な省略、置換及び変更を加えることができる。添付の特許請求の範囲及びその等価物は、本発明の範囲及び趣旨に入るそのような形態又は修正を包含するものである。
【国際調査報告】