特表2015-537022(P2015-537022A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-537022(P2015-537022A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】硫酸化多糖組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/737 20060101AFI20151201BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20151201BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20151201BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20151201BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20151201BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20151201BHJP
   A61K 36/02 20060101ALN20151201BHJP
   A61K 36/04 20060101ALN20151201BHJP
   A61K 36/05 20060101ALN20151201BHJP
   A61K 36/03 20060101ALN20151201BHJP
【FI】
   A61K31/737
   A61P33/00
   A61K47/42
   A61K47/26
   A61K47/46
   C08B37/00 H
   A61K36/02
   A61K36/04
   A61K36/05
   A61K36/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-542280(P2015-542280)
(86)(22)【出願日】2013年11月15日
(85)【翻訳文提出日】2015年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2013073995
(87)【国際公開番号】WO2014076261
(87)【国際公開日】20140522
(31)【優先権主張番号】1260941
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515132939
【氏名又は名称】ユニベルシテ ブレーズ パスカル−クレルモン ドゥジエム
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ミショー
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ ラロシュ
(72)【発明者】
【氏名】オロール ビレー
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル ルセル
(72)【発明者】
【氏名】マリー ディオゴン
(72)【発明者】
【氏名】イシャン エル アラウィ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ドルバック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C090
【Fターム(参考)】
4C076CC31
4C076DD67
4C076EE41
4C076EE57
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA26
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB37
4C088AA12
4C088AA13
4C088AA14
4C088AA15
4C088AC15
4C088BA06
4C088BA09
4C088BA12
4C088NA14
4C088ZB31
4C090AA04
4C090AA09
4C090BA64
4C090BB54
4C090BC04
4C090BC05
4C090BC06
4C090BC07
4C090CA09
4C090DA23
(57)【要約】
本発明は、特に藻類由来の少なくとも1つの硫酸化多糖から製造され、そして少なくとも1つの食品成分と組合わされる組成物に関する。この組成物は、食品分野に、又は特に、ヒト又は動物において微胞子虫により引起される感染の治療又は予防に使用され得る。それは、ヒト又は動物における駆虫剤として;ヒト又は動物において少なくとも1つの微胞子虫により引起される感染の治療又は予防のために;特に微胞子虫ノゼマ(Nosema)、好ましくはノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノセア・アピス(Nosema apis)により、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防のために、又は実際、ミツバチの免疫予防システムを刺激するために、有用な性質を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物における少なくとも1つの微胞子虫病原体により引起される感染の治療又は予防への使用のための、少なくとも1つの硫酸化多糖類及び少なくとも1つの食品成分を含む組成物。
【請求項2】
前記食品成分が、食事タンパク質剤、糖、例えばショ糖(又はスクロース)、ハチミツ、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硫酸化多糖類が天然起源のものである、請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
大型藻類、好ましくは赤大型藻類、緑大型藻類又は褐色大型藻類の中から選択された大型藻類に由来するか;又は微小藻類、好ましくは赤微小藻類及びラン藻類から選択された微小藻類に由来する硫酸化多糖類;又はそのような硫酸化多糖類の混合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
−前記赤大型藻類が、好ましくは、グラシラリア(Gracilaria)、ハリメニア(Halymenia)、ゲリジウム(Gelidium)、プテロクラジア(Pterocladia)、アカントペリチス(Acanthopeltis)、カンピラエフォリア(Campylaephora)、セラニウム(Ceranium)、ユーケウマ(Eucheuma)、コンドラス(Chondrus)、ポルフィラ(Porphyra)、ラウレンシア(Laurencia)、フルセラリア(Furcellaria)、グロイオペルチス(Gloiopeltis)及びイリデア(Iridea )属の、寒天、カラギーナン、ポルフィリン、フラン、又は複合硫酸化ガラクタンを生成する紅藻類(Rhodophyceae)の中から選択され;
−前記緑大型藻類が、好ましくは、アオサ(Ulva)属の、多糖類、例えばウルバン(ulvan)を生成する緑藻(Chlorophyceae)から選択され;
−前記褐色大型藻が、好ましくは、フカス(Fucus)、アスコフィラム(Aschophyllum)又はクラドシフォン(Cladosiphon)属の、硫酸化フランを生成する褐藻類(Pheophyceae)から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
大型藻類由来の前記硫酸化多糖類が、下記工程:
−50℃〜100℃の範囲の温度で水中、還流下で加熱することにより、たぶん前もって脱色された、大型藻類からの硫酸化多糖類の溶液の調製工程;
−少なくとも1つの極性溶媒によるか又は透析による硫酸化多糖類の沈殿工程;
−前記硫酸化多糖類の乾燥工程、
を包含する方法により得られるか、又は多分得られる、請求項4又は5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
−前記赤微小藻類が、ポルフィリジウム(Porphyridium)属又はローデラ(Rhodella)属に属する種から選択され;
−前記ラン藻類が、アルソスピラ・プラテンシス(Arthospira platensis)である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
大型藻類由来の前記硫酸化多糖類が、
−好ましくは光バイオリアクター下での微小藻類の培養;
−真空下で及び30℃〜50℃の範囲の温度での、バイオマスの抽出後の培養培地の濃縮;
−透析濾過、沈殿又は透析による硫酸化多糖類の抽出;
−硫酸化多糖類の乾燥、
を包含する方法により得られるか又は多分得られる、請求項4又は7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
−前記硫酸化多糖類が、多糖類の化学的修飾により得られるか;又は
−前記硫酸化多糖が、硫酸化工程を包含する方法により調製されるか、又は多分調製され得るか;又は
−前記硫酸化多糖類が、5%以上か又は5%に等しいか、好ましくは5%〜50%、好都合により5%〜30%の範囲である、重量基準での硫酸化の割合を有するか;又は
−組成物中の硫酸化多糖類の質量濃度が、50〜1000mg/ml、好ましくは100〜1000μg/mg、好都合には100〜200μg/mlの範囲であるか;又は
−(硫酸化多糖類/食品成分)の重量比が、0.0001:0.002、好ましくは0.0002:0.001、好都合には0.0002:0.0005の範囲であるか;又は
−前記食品成分が、ショ糖(又はスクロース)、フルクトース、グルコース又はマルトース;好ましくはショ糖、ハチミツ又はそれらの混合物の中から選択されるか;又は
−組成物中の硫酸化多糖類の重量濃度が、0.01%〜2%、好ましくは0.1%〜1%の範囲であるか;又は
−組成物中の食品成分の重量濃度が、95%〜99.99%の範囲である、
請求項1又は8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
−微胞子虫ノゼマ(Nosema)、好ましくはノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノセア・アピス(Nosema apis)による、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防へのその使用のための;又は
−ミツバチの免疫防御システムを刺激するためへのその同時使用のための;又は
−バロア・テストラクター(Varroa destructor)に対抗するための治療に関して、その前に、それと同時に、それに補足的に、それと連続して、それと交互に、又はそれに続いて使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ヒト又は動物における少なくとも1つの微胞子虫により引起される感染の治療又は予防へのその使用のための、請求項3〜9の何れか一項に定義される硫酸化多糖類。
【請求項12】
−微胞子虫ノゼマ(Nosema)、好ましくはノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノセア・アピス(Nosema apis)による、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防へのその使用のための;又は
−ミツバチの免疫防御システムを刺激するためへのその同時使用のための;又は
−バロア・テストラクター(Varroa destructor)に対抗するための治療に関して、その前に、それと同時に、それに補足的に、それと連続して、それと交互に、又はそれに続いて使用される、請求項11に記載の硫酸化多糖類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に藻類由来の少なくとも1つの硫酸化多糖から製造され、そして少なくとも1つの食品成分と組合わされる組成物に関する。この組成物は、食品分野に、又は特に、ヒト又は動物において微胞子虫により引起される感染の治療又は予防に使用され得る。それは、ヒト又は動物における駆虫剤として;ヒト又は動物において少なくとも1つの微胞子虫により引起される感染の治療又は予防のために;特に微胞子虫ノゼマ(Nosema)、好ましくはノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノセア・アピス(Nosema apis)により、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防のために、又は実際、ミツバチの免疫予防システムを刺激するために、有用な性質を有する。
【0002】
本発明はまた、ヒト又は動物において少なくとも1つの微胞子虫により、好ましくはミツバチにおいて微胞子虫ノゼマ(Nosema)により引起される少なくとも1つの感染の治療又は予防へのヒト又は動物における駆虫剤としての硫酸化多糖類の使用にも関する。
【0003】
本発明はまた、本発明の組成物の投与を含んで成る、ミツバチにおける少なくとも1つの寄生虫により引起される感染の治療又は予防にも関する。
【0004】
本発明はまた、ミツバチへの本発明の組成物の投与を含んで成る、少なくとも1つの寄生虫により引起される感染の存在下でハチミツを製造するための製造方法にも関する。
【0005】
本発明はまた、本発明の組成物の投与を含んで成る、少なくとも1つの寄生虫により感染されたミツバチによる植物の受粉の維持方法にも関する。
【0006】
本発明はまた、本発明の組成物の投与を含んで成る、ハチミツにおける免疫防御システムの刺激方法にも関する。
【背景技術】
【0007】
米国特許出願第2003/0181416号は、硫酸化多糖類を利用することにより、哺乳類における微生物感染を治療するための治療方法に関する。
【0008】
日本特許出願第11080003号は、硫酸化多糖類を含む駆虫剤を開示する。日本特許第11080003号は、一般的態様下で、多糖類としてフコイダン、硫酸化ラムナン及びカラギーナンを開示している。
【0009】
Chen et al (Growth - inhibitory effect of a fucoidan from brown seaweed Undaria pinnatifida on Plasmodium parasites by Chen et al, published in September 2008)は、褐藻類、ワカメ(Undaria pinnatifida)由来の3画分のフコイダンのプラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)及びプラスモジウム・ベンゲイ(Plasmodium berghei)に対する抗寄生虫効果に関連する研究の結果を報告している。
【0010】
国際公開第02/02189号は、抗寄生虫処理への硫酸化多糖類、特に硫酸化セルロース又は硫酸化デキストランの使用を開示する。それらの多糖類は、食用カプセルの形で、又はクリーム又はゲルの形で投与され得る。
【0011】
米国特許出願第2011/0172156号は、患者における血液凝固を改善するための硫酸化多糖類の投与に関する。それらの多糖類は、褐藻から抽出され得る。
【0012】
国際公開第2009/144711号は、金属、及び赤微小藻類由来の硫酸化多糖類を含む栄養又は化粧用組成物を開示する。この組成物は、それが含む金属の投与を可能にするよう企画されている。それは栄養又は皮膚科学的治療のために有用であり、そして抗菌性を有する。
【0013】
特許出願PT103983号は、抗ウィルス剤又は抗菌剤としての硫酸化多糖類の使用を開示する。
【0014】
それらの文献の何れも、ヒト又は動物において微胞子虫病原体により引起される感染の予防又は治療に関するものではありません。
【0015】
菌類に関連する単細胞真核生物である微胞子虫は、数ヶ月に渡る長期間、環境中に残留することができる小型の胞子を形成する偏性細胞内寄生体である。現在同定され、そして列挙されている1,300種のうち、大部分は節足動物及び魚に寄生する。従って、特定の微胞子虫が、養殖業において、特にサケ及びエビの養殖において実質的な経済的損失を引起す原因となっている。いくつかの種はまた、ヒトを包含する哺乳類において種々の感染を引起す原因となっている。
【0016】
ノゼマ(Nosema)病(ノゼモシス)、すなわち微胞子虫、ノゼマsp. である原因物質は、成熟ミツバチにおいて最も頻繁に遭遇する疾患の1つである。この微胞子虫は、昆虫の腸の中間の上皮の細胞に侵入し、そしてミツバチの巣箱において下痢の痕跡により特徴付けたれる急性ノゼモシスを引起す。それは、コロニーの平均余命を低める。最近、アジアのミツバチ(アピス・セラナ)において共通する微胞子虫寄生体、ノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)が、弱体化の兆候を示したヨーロッパミツバチ(アピス・メリフェラ)のコロニーに検出された(Higes et al, Nosema ceranae, a new microsporidian parasite in honeybees in Europe. Journal of Invertebrate Pathology (2006), 92(2), 93 - 95 ; Cox - Foster et al, A metagenomic survey of microbes in honey bee colony collapse disorder. Science (2007) 318(5848), 283 - 287)。
【0017】
受粉及びハチミツの生産に関連するそれらの活性によりミツバチに起因することができる、経済的重要性(生物多様性)、及び農業(作物収量)及び経済的影響(ミツバチ)を考えると、この微生物の出現は、科学及び養蜂コミュニティー間で多くの問題を提起して来た。
【0018】
さらに、ノゼマ・セラナエにより引起される感染は、ミツバチの免疫性を低下させることにより(Antunez et al, Immune suppression in the honey bee (Apis mellifera) following infection by Nosema ceranae (Microsporidia). Environmental Microbiology (2009) 11 (9), 2284 - 2290)、他の感染に対する感受性を増大させる。
【0019】
ノゼマ病(ノゼモシス)に対する治療に使用される主要分子は、フマギリンである。しかしながら、この分子は最近、フランスを含む多くの欧州諸国で禁止されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、新規分子の探索が、寄生された宿主に対して悪影響を引起さず、そして巣由来の食品中に有害残留物を生成しない効果的抗寄生虫治療を同定するために必要になって来た。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の組成物は、それらの問題又は欠点に対して全体的に又は部分的に、解決策の提供を可能にする。
【0022】
従って、本発明は、ヒト又は動物における少なくとも1つの微胞子虫病原体により引起される感染の治療又は予防への使用のための、少なくとも1つの硫酸化多糖類及び少なくとも1つの食品成分を含む組成物を提供する。
【0023】
従って、本発明の組成物中の食品成分は、硫酸化多糖類を除く、本組成物の一部に相当する。
【0024】
有利な態様によれば、本発明の組成物中の硫酸化多糖類の重量濃度は、0.01%〜2%、好ましくは0.1〜1%の範囲である。
【0025】
好ましい態様によれば、本発明の組成物は、天然起源である硫酸化多糖類を含む。
【0026】
好ましくは態様によれば、本発明の組成物は、大型藻類、微小藻類又はラン藻類由来の少なくとも1つの硫酸化多糖類、又はさらに、大型藻類、微小藻類又はラン藻類由来の硫酸化多糖類の混合物を含むことができる。
【0027】
天然起源の硫酸化多糖類の例によれば、本発明の組成物は、大型藻類、好ましくは赤大型藻類、緑大型藻類又は褐色大型藻類の中から選択された大型藻類に由来する少なくとも1つの硫酸化多糖類を優先的に含む。
【0028】
非常に好ましい態様によれば、本発明の組成物は、下記由来の少なくとも1つの硫酸化多糖類を含む:
−特に、グラシラリア(Gracilaria)、ハリメニア(Halymenia)、ゲリジウム(Gelidium)、プテロクラジア(Pterocladia)、アカントペリチス(Acanthopeltis)、カンピラエフォリア(Campylaephora)、セラニウム(Ceranium)、ユーケウマ(Eucheuma)、コンドラス(Chondrus)、ポルフィラ(Porphyra)、ラウレンシア(Laurencia)、フルセラリア(Furcellaria)、グロイオペルチス(Gloiopeltis)及びイリデア(Iridea )属の、寒天、カラギーナン、ポルフィリン、フラン、又は複合硫酸化ガラクタンを生成する紅藻類(Rhodophyceae)の中から選択された赤大型藻類;
−特に、アオサ(Ulva)属の、多糖類、例えばウルバン(ulvan)を生成する緑藻(Chlorophyceae)から選択された緑大型藻類;
−特に、フカス(Fucus)、アスコフィラム(Aschophyllum)又はクラドシフォン(Cladosiphon)属の、硫酸化フランを生成する褐藻類(Pheophyceae)から選択された褐色大型藻。
【発明を実施するための形態】
【0029】
赤大型藻類由来の多糖類は好ましくは、規則的に交互に並ぶ、3−β−ガラクトピラノーオス及び4−α−ガラクトピラノース単位の線状鎖に基づいて構成される。β−ガラクトース単位は実際、Dシリーズに属し、そしてα−がラクトース単位は、カラギーナンにおいてD配置及びアガロコロイド(例えば、寒天、ポルフィラン、フラノン)においてL配置を有する。さらに、4−α−ガラクトピラノース残基の一部が、3,6−アンヒドロガラクトースの形で存在することができる。3,6−アンヒドロガラクトース形は、生合成の間、ガラクトース−6−スルフィラーゼの作用下で、又はアルカリ処理により、4−結合α−ガラクトース単位の炭素6により担持される硫酸エステルの排除により得られる。それらのガラクトピラノース単位の特定のヒドロキシル基が、硫酸化されるか、メチル化されるか、ピルビン酸化されるか、又は実際、単糖により置換され得る。
【0030】
赤大型藻類由来の硫酸化ガラクタンは、下記式(I)によりあらわされ得る(Delattre et al, Galactans : An Overview of their Most Important Sourcing and Applications as Natural Polysaccharides. Brazilian Archives of Biology and Technology, 2011, 54 : 1075-1092):
【0031】
【化1】
【0032】
式中、
・RA2は、水素原子又はSOを表し;
・RA4は、水素原子、SO又はピルビン酸を表し;
・RA6は、水素原子、メチル基、SO又はピルビン酸を表し;
・RB2は、水素原子、メチル基又はSOを表し;
・RB3は、水素原子を表し;
・RB6は、水素原子又はSOを表す。
【0033】
緑大型藻類の例によれば、ウルベラ(Ulvella)、ウルバ(Ulva)、カウレルパ(Caulerpa)、コジウム(Codium)、ブリオプシス(Bryopsis)属に属する種を挙げることができる。一般的に、多糖類の3ファミリーが、緑藻のマトリックス多糖類を構成する。
【0034】
最も一般的な最初のファミリーは、ウルバンとして言及される硫酸化キシロラムノグリクロナン(xylorhamnoglycuronane)から構成される。
【0035】
このタイプのポリマーは、水溶性であり、そしてラムノース(30%〜50%)、グルクロン酸(10%〜20%)及びスルフェート(16%〜19%)の高い含有率により、藻類から抽出された他の多糖類とは区別される(Lahaye et al, Structure and function properties of ulvan, a polysaccharide from green seaweeds ; Biomacromolecules 8 (2007) : 1765-1774 ; Lahaye, NMR spectroscopic characterization of oligosaccharides from two Ulva rigida ulvan samples (Ulvales, Chlorophyta) degraded by a lyase. Carbohydrate Research (2008) 314 : 1-12)。ウルバ・ラクッカ(Ulva lactuca)種の場合、主要単位は、(1,4)タイプ結合によりβ−D−グルコクロン酸に結合されたα−L−ラムノース−3−スルフェートを含むタイプAウルバノビウロナート−3−スルフェート、及び(1,4)タイプ結合によりα−L−イズロン酸に結合されたα−L−ラムノース−3−スルフェートを含むタイプBウルバノビウロナート−3−スルフェートから構成される(McKinnel et al, The acid polysaccharide from the green seaweed, Ulva lactuca. Journal of Chemical Society (1962) 398-399. ; Quemener et al, Sugar determination in ulvans by a chemical-enzymatic method coupled to high performance anion exchange chromatography. Journal of Applied Phycology (1997) 9 : 179-188)。ウルバン由来のそれらの単位は、最近、ウルバノビオース型構造の同定により増強された(Robic, A, Rondeau-Mouro, C, Sassi, J F, Lerat, Y, Lahaye M (2009). Structure and interactions of ulvan in the cell wall of the marine green algae Ulva rotundata (Ulvales, Chlorophyceae). Carbohydrate Polymers 10 : 210-216)。ウルバンは、下記式A3S、B3S、U3S及びU2′3Sにより表わされ得る:
【0036】
【化2】
【0037】
多糖類の第2ファミリーは、β−(1,4)結合D−キシログルカン及びβ−(1,4)結合D−グルクロナンから構成される。最後のファミリーは、キシロース残基を含む非晶性「セルロース」により表される。
【0038】
クラドフォラレス(Cladophorales)及びコジアレス(Codiales)目の緑藻の場合、硫酸化キシロ−アラビノガラクタンがまた見出され得る。それらは、ガラクトース、アラビノース及びキシロースから構成されるポリマーである。それらは約17%のスルフェートを含む。実際には、反復単位は存在しないが、しかしむしろ、D−ガラクトース単位により分離される(1,4)−L−アラビノースのブロックを含む部分が存在する。D−キシロース単位のすべて、及びD−ガラクトースの一部は、末端位置に存在する。
【0039】
好ましい態様によれば、褐色大型藻類は、好ましくは、フカス(Fucus)、アスコフィラム(Aschophyllum)又はクラドシフォン(Cladosiphon)属の、硫酸化フランを生成する褐藻類(Pheophyceae)から選択される。
【0040】
フカンは、L−フコースを主に含むが、しかしまた、−オース(−ose)という接尾語を有する他の糖類、例えばガラクトース、マンノース、キシロース及びウロン酸も含む硫酸化多糖類の種類を表し(Melo et al, Isolation and characterization of soluble sulphated polysaccharide from the red seaweed Gracilaria cornea. Carbohydrate Polymers (2002) 49 : 491 - 498)、前記他の糖類の含有率は10%以下である(Berteau et al, Sulphated fucans, fresh perspectives : structures, functions, and biological properties of sulphated fucans and an overview of enzymes active toward this class of polysaccharide. Glycobiology (2003) 13 (6) : 29 - 40)。
【0041】
フカレス(Fucales)目(フカスsp.(Fucus sp)、 アスコフィラムsp.(Ascophyllum sp))の藻類から抽出されたフカンは、α−(1,3)又はβ−(1,4)連結されたL−フコースから構成され、そしてC2、C3又はC4上の1又は2つの非糖(スルフェート又はアセテート)により可変的に置換される1つの主鎖から形成される高度に分岐した多糖類である(Berteau et al 2003 ; Patankar et al, 1993 ; Bilan et al, 2002, 2004, 2006)。それらは、ホモフカンである(Chevolot et al, 1999, 2001 ; Bilan et al, 2002, 2004, 2006 ; Chizhov et al, 1999)。それらの分岐は、単糖の分岐(Chizhov et al, A study of fucoidan from the brown seaweed Chorda filum. Carbohydrate Research (1999) 320 : 108 - 119)、三糖の分岐(Bilan et al, A highly regular fraction of a fucoidan from the brown seaweed Fucus distichus. Carbohydrate Research (2004), 339 : 511 - 517)、又は四糖の分岐(Bilan et al, Structure of a fucoidan from the brown seaweed Fucus evanescens. Ag. Carbohydrate Research (2002) 337 : 719 - 730)であり得る。最終的に、キシロース又はガラクトースの少量での存在が検出されるが、しかしそれらの位置は決定されていない(Bilan et al., 2002)。
【0042】
天然起源の別の多糖類によれば、本発明の組成物はまた、好ましくは、赤微小藻類又はラン藻類から選択された、微小藻類由来の硫酸化多糖類を優先的に含むことができる。
【0043】
同等に好ましい態様によれば、本発明の組成物は、下記に由来する少なくとも1つの硫酸化多糖類を含む:
−ポルフィリジウム(Porphyridium)属又はローデラ(Rhodella)属に属する種から選択された赤微小藻類;
−アルソスピラ(アルソスピラ)属、例えばアルソスピラ・プラテンシス(Arthospira platensis)に属する種から選択されたラン藻類。
【0044】
海洋赤微小藻類により生成されるエキソ多糖類は、ポルフィリジウム(Porphyridium)及びローデラ(Rhodella)属に属する種に主に記載されている。それらの多糖類は、可変的に硫酸化され、そして中性単糖類(キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、フコース)、メチル化単糖類(3−O−メチルキシロース、3−O及び4−O−メチルガラクトース)、ウロン酸(グルクロン酸)及びメチルウロン酸(2−O−メチル−グルクロン酸)から構成されるヘテロポリマーである。異なった種の多糖類は、いくつかのタイプのグリコシド結合を提供するが、しかし共通して、アルドバイオウロン酸と称するニ糖類から構成される構築ブロックの存在を有する(Arad et al, Red microalgal cell-wall polysaccharides : biotechnological aspects. Current opinion in Biotechnology (2010) 21 : 358-364 ; Capek et al, The extracellular proteoglycan produced by Rhodella grisea. International Journal of Biological macromolecules (2008) 43, 390 - 393)。
【0045】
ラン藻類は、非常に複雑な構造を有し、そしてウロン酸(グルクロン酸及びガラクツロン酸)、及び多糖類にアニオン性質を付与するよう作用するスルフェート基の存在により特徴付けられるエキソ多糖類を生成する。それらはさらに、かなり高レベルのアセテート基、ペプチド画分及びでオキシ−単糖類の存在により特徴づけられる。ラン藻類に記載されるエキソ多糖類の大部分は、少なくとも6種の異なった単糖類から構成され、そして今日まで、12種の単糖類がラン藻類のエキソ多糖類(EPS)に同定されている。グルコース、ガラクトース、マンノース及びフルクトースがヘキソース間に含まれる。ペントースについては、それらは主にリボース、キシロース及びアラビノースにより表され、そして同定されるデオキシオースは、フコース、ラムノース及びラムノースメチルである。いくつかの場合、修飾された単糖類、例えばN−アセチルグルコサミン、2,3−O−メチルラムノース及び3−O−メチルグルコースの存在が記載されている。それらの種々の単糖類は、広範囲のグリコシド結合により連結されている(Pereira et al, Complexity of cyanobacterial exopolysaccharides : composition, structures, inducing factors and putative genes involved in their biosynthesis and assembly. FEMS Microbiol. Rev. (2009) 33 : 917 - 941)。
【0046】
同等に好ましい態様によれば、本発明の組成物は、多糖類の化学的修飾により得られる少なくとも1つの硫酸化多糖類を含むことができる。次に、多糖類は、化学的手段により修飾された後、得られる。
【0047】
通常の態様によれば、本発明の組成物は、重量に基づく硫酸化の割合が5%以上か又は5%に等しく、好ましくはこの割合は5%〜50%、好ましくは5%〜30%の範囲である、少なくとも1つの硫酸化多糖類を含む。
【0048】
本発明の組成物は、比較的多量の少なくとも1つの硫酸化多糖類を含むことができる。一般的に、本発明の組成物中の硫酸化多糖類の質量濃度は、50〜1,000mg/ml、好ましくは100〜1,000μg/ml、好都合には100〜200μg/mlの範囲である。
【0049】
本発明の組成物はまた、少なくとも1つの硫酸化多糖類と組合わされる、少なくとも1つの食品成分も含む。
【0050】
好都合な態様によれば、本発明の組成物中の食品成分の重量濃度は、98%〜99.99%の範囲である。
【0051】
一般的な態様によれば、本発明の組成物中の食品成分は、ヒト又は動物による消費のためである食品組成物に使用され得る成分である。この食品成分は、そのような使用に関連する安全性及び非毒性の条件を特にすべて満たしている。好ましい態様によれば、本発明の組成物は、食事タンパク質剤、糖、例えばスクロース、ハチミツ、又はそれらの混合物の1つから選択された、少なくとも1つの成分を含む。
【0052】
有益な態様によれば、本発明の組成物は、組成物中の重量濃度が98%〜99.99%、好ましくは99%〜99.9%の範囲である食品成分を含む。
【0053】
好ましい態様によれば、本発明の組成物は、ハチミツ、ショ糖(又はスクロース)、フルクトース、グルコース又はマルトース;好ましくはショ糖、ハチミツ又はそれらの混合物の中から選択される食品成分を含む。本発明の組成物のための食品成分の好ましい混合物は、タンパク質、ハチミツ及びショ糖の混合物;ハチミツ及びショ糖の混合物の中から選択される。本発明の組成物は、食品成分の他の組合せを含むことができる。
【0054】
本発明の組成物においては、(硫酸化多糖類/食品成分)の重量比は、比較的広く変化することができる。一般的に、本発明の組成物における(硫酸化多糖類/食品成分)の重量比は、0.0001:0.002、好ましくは0.0002:0.001、好都合には0.0002:0.0005の範囲である。
【0055】
組成物の形は、かなり広い態様で定義され得る。従って、本発明の組成物は、特に固体、ペースト又は液体形で存在することができる。
【0056】
本発明はまた、本発明の組成物を調製するための調製方法にも関する。一般的な態様によれば、本発明の調製方法は、少なくとも1つの硫酸化多糖類及び少なくとも1つの食品成分の混合物を包含する。
【0057】
本発明の組成物を調製するための調製方法は特に、少なくとも1つの多糖類の硫酸化工程を包含する。この硫酸化工程は、硫酸化の割合を高めるために、わずかに硫酸化されるか又は硫酸化されていない多糖類に、又は硫酸化された多糖類に適用され得る。
【0058】
好ましい態様によれば、大型藻類由来の硫酸化多糖類を含む。本発明の組成物の調製方法は、次の工程を包含する:
−50℃〜100℃の範囲の温度で水中、還流下で加熱することにより、たぶん前もって脱色された、大型藻類からの硫酸化多糖類の溶液の調製工程;
−少なくとも1つの極性溶媒によるか又は透析による硫酸化多糖類の沈殿工程;
−前記硫酸化多糖類の乾燥工程。
【0059】
本発明の調製方法は、特に、アセトン又はクロロホルムから選択され得る少なくとも1つの溶媒による大型藻類の脱色の前工程を包含する好都合な態様によれば、沈殿は、極性溶媒、例えばエタノール又はプロパノールを用いて実施され得る。
【0060】
また、好都合な態様によれば、乾燥は、凍結乾燥により、又は特に50℃の温度でのオーブンの使用によりもたらされ得る。本発明の調製方法は、満足する程度の純度の多糖類を得るために、数度、反復され得る。
【0061】
同等に好ましい態様によれば、大型藻類由来の硫酸化多糖類を含む、本発明の組成物の調製方法は、次の工程を包含する:
−好ましくは光バイオリアクター下での微小藻類の培養;
−真空下で及び30℃〜50℃の範囲の温度での、バイオマスの抽出後の培養培地の濃縮;
−透析濾過、沈殿又は透析による硫酸化多糖類の抽出;
−硫酸化多糖類の乾燥。
【0062】
好都合な態様によれば、媒体の濃縮は、40℃の温度で行われる。
【0063】
また、好都合な態様によれば、沈殿による抽出は、遠心分離により行われ得る。
【0064】
また、好都合な態様によれば、乾燥は、凍結乾燥により、又は特に50℃の温度でのオーブンの使用により、もたらされ得る。
【0065】
本発明の調製方法は、満足する程度の純度の多糖類を得るために、数度、反復され得る。
【0066】
同等に好ましい態様によれば、本発明の組成物の調製方法は、多糖類の化学的修飾により得られる硫酸化多糖類を操作可能的に実行する。
【0067】
この硫酸化多糖類は、硫酸化の工程を包含する方法により調製され得る。硫酸化工程は、それ自体既知である種々の異なった方法により実行され得る。この硫酸化は特に、SO/ピリジン又はSO/DMF(ジメチルホルムアミド)複合体を用いてもたらされ得る。
【0068】
硫酸化工程の目的は、本発明の組成物の使用のために十分である硫酸化の割合を、多糖類に提供することであり、又は実際、この目的は、多糖類の硫酸化の割合を高めることを目的とする。
【0069】
本発明はまた、本発明の組成物の使用、及び下記へのその使用のための本発明の組成物に関する:
−ヒト又は動物における駆虫剤として;
−ヒト又は動物において少なくとも1つの微胞子虫により引起される感染の治療又は予防に;
−微胞子虫ノゼマ(Nosema)、好ましくはノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノゼマ・アピス(Nosema apis)により引起されるミツバチにおける感染の治療又は予防に;
−ミツバチの免疫防御システムの刺激のために。
【0070】
本発明はまた、本発明の組成物の使用、及び本発明の組成物のミツバチへの投与を含んで成る、少なくとも1つの寄生体により引起される感染の存在下で、ハチミツを生成するために使用される本発明の組成物にも関する。
【0071】
本発明はまた、本発明の組成物の使用、及び本発明の組成物のミツバチへの投与を含んで成る、少なくとも1つの寄生体により感染されたミツバチによる植物の受粉を維持するために使用される本発明の組成物にも関する。
【0072】
本発明はまた、バロア・デストラクター(Varroa destructor)に対抗するための治療に関して、その前に、それと同時に、それに補足的に、それと連続して、それと交互に、又はそれに続いて使用される、本発明の組成物に関する。バロア・デストラクターは、吸血性(吸血)ダニ、すなわち成熟ミツバチ、幼虫及びサナギに見出される寄生体である。
【0073】
従って、少なくとも1つの硫酸化多糖類及び少なくとも1つの食品成分を含む組成物の使用はたぶん、長時間にわたって維持することであり、実際、たぶんさらに、バロア・デストラクター(Varroa destructor)に対抗するための治療の有効性を高める。
【0074】
本発明に使用される組成物は、本発明の組成物の一般的な、好都合な又は好ましい特徴的な特性に基づいて定義される。
【0075】
本発明はまた、
−本発明の組成物;
−バロア・デストラクター(Varroa destructor)を制御するか又は予防するために使用される剤;
を含んで成る、微胞子虫、ノゼマ(Nosema)及びバロア・デストラクター(Varroa destructor)により、ミツバチにおいて引起される感染の予防又は治療へのその使用のためのキットも提供する。
【0076】
本発明はまた、下記へのその使用のための本発明の組成物のために定義される硫酸化多糖類にも関する:
−ヒト又は動物における駆虫剤として;
−ヒト又は動物において少なくとも1つの微胞子虫により引起される感染の治療又は予防に;
−微胞子虫ノゼマ(Nosema)、好ましくはノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノゼマ・アピス(Nosema apis)により引起されるミツバチにおける感染の治療又は予防に;
−ミツバチの免疫防御システムの刺激のために。
【0077】
本発明はまた、バロア・デストラクター(Varroa destructor)制御するための処置に関して、その前に、それと同時に、それに補足的に、それと連続して、それと交互に、又はそれに続いて使用される、本発明の組成物のために定義される硫酸化多糖類にも関する。本発明の多糖類は、本発明の組成物の一般的な、好都合な又は好ましい特徴的な特性に基づいて定義される。
次の実施例は、本発明の種々の異なった側面の例示により与えられる。
【実施例】
【0078】
硫酸化多糖類の調製
・硫酸化多糖類1(SP1):イオタ カラギーナン
抽出は、ユーケウマ(Eucheuma)、カパフィカス(Kappaphycus)、コンドラス(Chondrus)及びベタフィカス(Betaphycus)属に属する海洋赤藻類の混合物の数時間にわたってのホット(60℃〜90℃)アルカリ抽出(0.1〜1MのNaoH)に基づかれた。得られる懸濁液を、細胞残骸を除去するために、濾過し、そしてイソプロパノールの添加により沈殿せしめた。次に、沈殿物を圧縮し、そして乾燥した。
【0079】
イオタ カラギーナンは、1つの反復単位3−β−ガラクトピラノース及び規則的に交互に存在する4−α−D−ガラクトピラノースを含む。この後者の単位は、有意な割合(平均30%〜50%)の硫酸化を有するアンヒドロガラクトース形で存在する。硫酸化の平均割合は、30%の程度である。
【0080】
・硫酸化多糖類2(SP2)
抽出は、Hemerick培地又はf/2上で赤微小藻類ロデラ・ビオラセア(Rhodella violacea)(LMGE株)を培養した後、実施された。この培養物に由来のバイオマスの抽出を、10℃で10,000gでの30分間の遠心分離により実施した。次に、上清液を、60℃で真空下で濃縮し(2×)、そして次に、MilliQ水(9浴)に対して72時間、透析し、そして次に、残留物を凍結乾燥により乾燥した。
【0081】
このようにして得られたSP2の単糖類組成を、イオンクロマトグラフィーにより決定した:キシロース(20%)、ガラクトース(3%)、グルコース(0.5%)、グルクロン酸(2.5%)、アラビノース(2%)、ラムノース(3%)。百分率は、重量%である。
【0082】
・硫酸化多糖類3(SP3)
抽出は、f/2培地上で赤微小藻類ロデラ・ビオラセア(Rhodella violacea)(Kornmann) Wehrmeyer CCAP 1388/5を培養した後、実施された。この培養物に由来のバイオマスの抽出を、10℃で10,000gでの30分間の遠心分離により実施した。次に、上清液を、60℃で真空下で濃縮し(2×)、そして次に、MilliQ水(9浴)に対して72時間、透析し、そして次に、残留物を凍結乾燥により乾燥した。
【0083】
このようにして得られたSP3の単糖類組成を、イオンクロマトグラフィーにより決定した:キシロース(20%)、ガラクトース(3%)、グルコース(0.5%)、グルクロン酸(2.5%)、アラビノース(2%)、ラムノース(3%)。百分率は、重量%である。
【0084】
・硫酸化多糖類4(SP4)
抽出は、f/2培地上で赤微小藻類ロデラ・ビオラセア(Rhodella violacea)CCAP 1388/2を培養した後、実施された(Evans et al, Studies on the synthesis and composition of extracellular mucilage in the unicellular red alga Rhodella, Journal of Cell Science, 1974, 16, 1 - 21を参照のこと)。
【0085】
この培養物に由来のバイオマスの抽出を、10℃で10,000gでの30分間の遠心分離により実施した。次に、上清液を、60℃で真空下で濃縮し(2×)、そして次に、MilliQ水(9浴)に対して72時間、透析し、そして次に、残留物を凍結乾燥により乾燥した。
【0086】
ロデラ・マキュラタ(Rhodella maculate)のエキソ多糖類は、炭水化物(50%)、タンパク質(16%)及び有意な部分のスルフェート(10%)を含む。最も有力な単糖類はキシロースである。ウロン酸、ガラクトース及びグルコースもまた、同定されている。
【0087】
・硫酸化多糖類5(SP5)
抽出は、f/2培地上で赤微小藻類ポルフィリジウム・プルプレウム(Porphyridium purpureum )(Bory) Drew & Ross (1965) CCAP 1380 / 1Aを培養した後、実施された。この培養物に由来のバイオマスの抽出を、10℃で10,000gでの30分間の遠心分離により実施した。次に、上清液を、60℃で真空下で濃縮し(2×)、そして次に、MilliQ水(9浴)に対して72時間、透析し、そして次に、残留物を凍結乾燥により乾燥した。
【0088】
・硫酸化多糖類6(SP6)
抽出は、f/2培地上で赤微小藻類ポルフィリジウム・マリナム(Porphyridium marinum) Kylin (1937) CCAP 1380 - 1310を培養した後、実施された。この培養物に由来のバイオマスの抽出を、10℃で10,000gでの30分間の遠心分離により実施した。次に、上清液を、60℃で真空下で濃縮し(2×)、そして次に、MilliQ水(9浴)に対して72時間、透析し、そして次に、残留物を凍結乾燥により乾燥した。
【0089】
・硫酸化多糖類7(SP7)
抽出は、ラン藻類アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)PCC8005のZarouk培地上での培養の後、実施された。この培養物由来のバイオマスの抽出を、40μm−100μmの多孔度を有する焼結ガラス上での濾過により実施した。続いて、浸透物を、60℃で真空下で濃縮し(2×)、そして次に、MilliQ水(9浴)に対して72時間、透析し、そして次に、残留物を凍結乾燥により乾燥した。アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)からのエキソ多糖類は一般的に、硫酸化されたアニオン性へテロ多糖類であると思われる。同定された主要単糖類は、ガラクトース(14.9%)、キシロース(14.3%)、グルコース(13.2%)、フルクトース(13.2%)、ラムノース(3.7%)、アラビノース(1%)、マンノース(0.3%)及びウロン酸(13.5%、ガラクツロン酸及びグルクロン酸により表される)である(Trabelsi et al, Partial characterization of extracellular polysaccharide produced by Artrospira platensis. Biotechnology and Bioprocess Engineering, 2009,14, 27 - 31)。
【0090】
・硫酸化多糖類8(SP8)
ハリメニア・ダルビレイ(Halymenia durvillei)の乾燥藻類を、水により洗浄し、そして次に60℃でのオーブンにおいて乾燥した。続いて、多糖類の抽出を、90℃で4時間、MilliQ水(1:20の比)中、還流下で加熱することにより実施した。そして次に、低下する多孔度(160μm〜40μm)のフィルター上での濾過工程を行った。このようにして得られた濾液を、10,000gで30分間(周囲温度)、遠心分離した。続いて、上清液を、3体積の96%エタノールの添加により、沈殿せしめた。続いて、沈殿物を、圧縮又は遠心分離(10,000g、20分、周囲温度)により集め、そして次に、凍結乾燥により乾燥した。
【0091】
SP8は、3−β−D−ガラクトピラノース単位及び4−α−D/L−ガラクトピラノース単位を含む。3−β−D―ガラクトピラノース単位を、2位(26%)及び2/6位(58%)で硫酸化した。4−α−D/L−ガラクトピラノース単位を、6位(19%)及び2,6位(47%)で硫酸化し、そしていくつかの残基は、タイプ3,6アンヒドロガラクトピラノースの残基であった。多糖類は、少量でガラクトース、キシロース、アラビノース及びフコースのようなタイプの単糖類により結合され、そしてピルベートもまた、検出されている(1.8%)
【0092】
・硫酸化多糖類9(SP9)
抽出を、エタノール、アセトン及びクロロホルムによる処理により脱色された乾燥微小藻類ウルバ・ラクッカ(Ulva lactuca)に対して実施した。抽出を、pH6の50mMシュウ酸ナトリウム溶液中で、90℃で3時間、還流下でのインキュベーションにより実施した。12,000gで、30分間及び4℃での遠心分離の後、上清液を、イソプロパノールにより沈殿せしめ、遠心分離により集め、そして次に、凍結乾燥した。多糖類SP9は、用語アルバンにより参照され、そしてD−グルクロン酸、D−イズロン酸、D−キシロース、L−ラムノース及びスルフェートから構成され、そして硫酸化キシロラムノグリクロナンと呼ばれる。アルドバイオウロン酸と称する反復単位が同定されている(Ray et al, Cell-wall polysaccharides from the marine green alga Ulva << rigida >> (Ulvales chlorophytal) chemical structure of ulvan. Carbohydrate Research, 1995, 274 : 313 - 318)。
実施例1:本発明の硫酸化多糖類の細胞毒性の評価
96ウェルプレートにおけるHFF(ヒト包皮線維芽細胞)の培養
【0093】
集密性でのHFF細胞の75cmフラスコから、培養培地を除き、そして次に、2mlのトリプシン−EDTA(0.025%トリプシン及び0.01%EDTA−エチレンジアミン四酢酸)を添加した(37℃で)。次に、フラスコを簡単にすすぎ、そしてトリプシンを除去した。続いて、2mlのトリプシン−EDTAを添加し、そしてフラスコを、37℃でのオーブンにおいて5分間インキュベートした。
【0094】
5mlの培養培地(最少必須培地−MEM(PARA Laboratories GmbH)+グルタミン(2ml)+ファギソン(2.5μg/ml)+ペニシリン(100単位/ml)+ストレプトマイシン(100μg/ml)+15%不活性化ウシ胎児血清)を添加し、そして次に、フラスコを、ピペットによりすすいだ。培地及び細胞を、管に回収した。Malassez計数チャンバーに基づく計数を実施した。
【0095】
続いて細胞を、200gで7分間、遠心分離し、そして次に、上清液を除いた。ペレットを、10細胞/mlを得るための態様で、培養培地に取った。
【0096】
ウェル当たり200μlのこの懸濁液を分配し、第1及び12列及びA及びH行のウェルを空にした。空のまま残ったウェルを、蒸発を妨げるために、200μLの培養培地により満たした。
硫酸化多糖類の添加
【0097】
細胞がウェルにおいて集密性に達した場合(約48時間)、培地を、真空抽出ポンプを利用して吸引し、そして次に、試験される種々多糖類(50、100及び200μg/mlで試験される)を含む培養培地200μLを添加した。
【0098】
各濃度で3回、試験した。各プレートは、陰性対照(抽出物を含まない培養培地)、陽性対照(20%のDMSOを含む培養培地)、及びフマギリン対照(1μg/ml)を含んでいる必要があった。結果は、下記表1に要約される。
【0099】
【表1】
【0100】
細胞毒性の試験
96時間のインキュベーションの後、ウェルに含まれる培地を、真空抽出ポンプにより吸引し、そして次に、200μlの新鮮な培養培地及び50%でのTCA(トリクロロ酢酸)50μlを添加し、そしてその混合物を、周囲温度で5分間、及び次に、4℃での2時間、放置した。
【0101】
上清液を、真空抽出ポンプにより除去し、そして100μlの蒸留水により5度、洗浄し(96ウェルプレートを転倒することにより)、そして次に、プレートを乾燥した(真空抽出ポンプにおいて1時間、又はベンチ上での2時間、転倒される)。乾燥されると、プレートを、続くその使用まで、周囲温度で貯蔵した。
【0102】
100μlのスルホローダミンB(1%酢酸中、0.4%)を添加し、そしてその混合物を、周囲温度で20分間インキュベートした。スルホローダミンBを、真空抽出ポンプを用いて除去した。100μlの1%酢酸により5度、反復される洗浄サイクル(96ウェルプレートを転倒することにより)を、実施し、そして次に、プレートを、それを転倒することにより、周囲温度で5分間、乾燥した。
【0103】
タンパク質を、周囲温度で攪拌しながら、プレート上で5分間、200μlのTris−Base(10mM)を用いることにより溶解した。550nmでのOD(光学密度)を、マイクロプレートクーダー(Multiskan FC357, Thermo Scientific)を用いて測定した。
【0104】
結果は、下記表2に提供される。ODの平均及び標準偏差を、生成物の毒性に関して、結論に到達するために、試験される各サンプルについて調査した。
【0105】
【表2】
【0106】
結果は、本発明の硫酸化多糖類が特に100μg/mlまで、細胞毒性を提供しないことを示唆する。
実施例2:本発明の硫酸化多糖類の、微胞子虫エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi)に対するインビトロ抗寄生虫活性の評価
48ウェルプレートにおけるHFF(ヒト包皮線維芽細胞)の培養
【0107】
集密性でのHFF細胞の75cmフラスコから、培養培地を除き、そして次に、2mlのトリプシン−EDTA(0.025%トリプシン及び0.01%EDTA−エチレンジアミン四酢酸)を添加した(37℃で)。次に、フラスコを簡単にすすぎ、そしてトリプシンを除去した。続いて、2mlのトリプシン−EDTA(0.025%トリプシン及び0.01%EDTA)を添加し、そしてプレートを、37℃でのオーブンにおいて5分間インキュベートした。
【0108】
5mlの培養培地(MEM(PARA Laboratories GmbH)+グルタミン(2ml)+ファギソン(2.5μg/ml)+ペニシリン(100単位/ml)+ストレプトマイシン(100μg/ml)+15%不活性化ウシ胎児血清)を添加し、そして次に、皿を、ピペットによりすすいだ。培地及び細胞を、管に回収した。Malassez計数チャンバーに基づく計数を実施した。続いて細胞を、200gで7分間、遠心分離した。次に、上清液を除き、そしてペレットを、10細胞/mlを得るための態様で、培養培地に取った。
【0109】
ウェル当たり400μlのこの懸濁液を分配し、第1及び8列及びA及びF行のウェルを空にした。空のまま残ったウェルを、蒸発を妨げるために、400μLの培養培地により満たした。
微胞子虫に対するELISA試験
【0110】
細胞がウェル中で集密性に達した場合(約48時間)、培地を、真空抽出ポンプを用いて吸引した。次に、試験される種々の多糖類(最高の非毒性濃度、すなわち100又は200μg/mlで試験された)を含む培養培地400μlを添加し、そして37℃でオーブンにおいて2時間インキュベートした。
【0111】
並行して、5×10の胞子/mlの濃度でエンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoom cuniculi)(実験室に保持されている培養上清液から得られる)の胞子溶液を、試験される多糖類を含む培養培地において37℃で2時間、プレインキュベートした。胞子をまた、同じ条件(但し、多糖類を含まない)下で、プレインキュベートし、前記胞子は、さらに下記に引用される陰性対照を生成するために使用される細胞に感染するのに役立った。続いて、胞子を、細胞と、37℃で1時間、接触し、ここで多糖類はまだ存在する。
【0112】
非付着性胞子を除くために、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)により洗浄した後、種々の多糖類を添加し、そして従って、試験操作の間(5日)、放置した。各多糖類を3度、試験した。各プレートは、感染されていない「健康細胞」対照、陰性対照(処置を伴わないでの感染された細胞)及び陽性対照(1μg/mlでフマギリンの存在下でインキュベートされた感染細胞)を含んだ。試験操作の最後で、各ウェルの培養培地を除き、そして200μlのPBSによる洗浄サイクルを実施した。ウェルを、−80℃で20分間、100μlのメタノールにより、個別に固定し、そして次に、細胞を、4℃で一晩、100μlのブロッキング溶液(100mMのトリス、2%ウシ血清アルブミンBSA)により飽和させた。続いて、ブロッキング溶液を、真空抽出ポンプを用いて除去し、次に抗体のための希釈緩衝液(10 mMのトリスpH = 7.4、 150 mMの NaCl、 0.05% Tween 20、0.2% BSA)により1/1,000倍に希釈された、天然において感染されたウサギ血清(一次抗体)100μlを添加した。200μlの洗浄溶液(0.05%Tween20、10mMのトリス、pH=9.8)による5度、反復される洗浄サイクルを行った。抗体のための希釈緩衝液により1/10,000に希釈されたアルカリホスファターゼにカップリングされた、100μlの抗−ウサギIgG二次抗体(IgGアルカリホスファターゼAP−接合Promega 1mg/ml)を添加した。その混合物を、37℃で1時間インキュベートし、そして次に、200μlの洗浄溶液による5度、反復される洗浄サイクルを行った。
【0113】
適切な溶液(1mMのMgCl、50mMのNaCO、pH=9,8)により1/100に希釈された、200μlの10mMのMUP(4−メチルウンベリフェリルホスフェート)を添加し、そして次に、その混合物を、暗室で、軽い攪拌条件下で30分間インキュベートした。
【0114】
読み取りを、それぞれ、355nm及び450nmの励起波長及び発光波長でフルオロスキャンにより実施した。結果は、下記表3に表される。
【0115】
寄生虫成長阻害データを、次の情報を考慮することにより計算した:「健康細胞」対照はブランクサンプルに対応し、陰性対照(処理なしでの感染された第棒)は100%の寄生虫成長に対応する。試験される多糖類の阻害能力を、次の尺度に基づいて評価した:
−<30%:低阻害;
−30%〜40%:平均的阻害;
−40%〜50%:満足の行く阻害;
−50%〜70%:強阻害;
−70%〜90%:非常に強い阻害;
−>90%:優れた阻害。
【0116】
【表3】
【0117】
結果は、本発明の硫酸化多糖類が微胞子虫に対して満足する抗寄生虫活性を示すことを示唆する。ポリフィリジウム属の微小藻類由来の硫酸化多糖類は、卓越した増殖阻害活性を示す。
実施例3:ハチミツにおけるノゼマ(Nosema)に対する本発明の硫酸化多糖類のインビボ阻害活性の評価
【0118】
本明細書に提供される結果は、夏ミツバチから得られている。
出現する(新生児)ミツバチの検索/回収、及び養蜂箱(特製)における保持
【0119】
ガラスフレームホルダーにより養蜂場からの1つの同腹チャンバーフレーム(又は必要により、ミツバチにおける)の回収の後、それを、それらの細胞からのミツバチの発生を可能にするような態様で24〜48時間、34℃でのオーブンに配置した。次に、若いミツバチを1対の昆虫学者用鉗子を用いて、フレームから取得し、そして50匹のミツバチ/箱に基づいて、養蜂箱(特製)に配置した。PseudoQueen (Contech Enterprises, Canada)の1/6チューブスティックを、各養蜂箱に追加した。
ミツバチのフィーディング
【0120】
各多糖類処理を、三重反復(3回の箱/処理)して行った。各試験操作は、「健康ミツバチ」対照(実験的に感染されているが、処理されていないミツバチ)、及びフマギリン対照を含み;そしてそれらの対照はまた、3重反復下で存在する。
【0121】
ミツバチは、シロップのみ(「健康ミツバチ」対照及び「感染されたミツバチ」対照)、1mg/mlのフマギリンにより補充されたシロップ(フマギリン対照)、又は試験される種々の硫酸化多糖類を含むシロップ(最高の非細胞毒性濃度、いわゆる100又は200μg/mlで)を、感染の前3日間、供給された。シロップは、50%の多糖類から構成され、1%のタンパク質を補充されている(Provita'Bee, Laboratoires Corylis, France)。
【0122】
ミツバチのフィーディングは、ミツバチ自身でのフィーディングを可能にするために、その端部を穿孔された、5mlの透明プラスチック管により達成された。
ノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)によるミツバチの個々の感染
【0123】
ミツバチは、感染の前、30〜60分間、絶食条件下で維持された。この時間の間、ノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)胞子の溶液を、3μlで125,000の胞子に基づいて、フィーディングシロップに胞子を希釈することにより調製した。従って、各ミツバチは、125,000の胞子により感染された。
【0124】
続いて、ミツバチは、COガスにより処理された(約1分/箱)。ミツバチが目を覚まし始める場合、それらは1対の昆虫学者用ピンセットを用いて取り出された。続いてミツバチは、3μlの調製された胞子溶液を含むピペットを用いて、それぞれ経口感染された(ミツバチが3μlの溶液を完全に飲み込んだことを確かめることにより)。同じ試験操作を、「健康ミツバチ」対照の箱に行い、そしてフィーディングシロップのみが与えられたことを確かめた。箱当たり45匹のミツバチが、特製箱に配置された。
【0125】
感染工程の後、各箱に、フィーディング管を付加し、異なった条件に対応せしめた(「健康ミツバチ」対照及び「感染されたミツバチ」対照についてはシロップのみ、フマギリン対照については1μg/mlのフマギリンにより補充されたシロップ、種々の硫酸化多糖類を含むシロップ)。ミツバチを、33℃(湿度60−70%)でのオーブンに配置し、そして20日間、連続してフィーディングした。
後−感染期の間、試験操作のモニターリング
【0126】
後−感染期の間(20日の期間)、死亡したミツバチを計数し、そして死亡率を追跡し、そしてモニターするために、各箱から毎日、除去した。フィーディングチューブを、試験操作の最後まで、2日ごとに交換した。ハチミツによる種々の異なった供給処理の消費をモニターする目的でフィーディングチューブを計量することが可能であった。
【0127】
ミツバチにおける寄生虫負荷を評価する目的で、ノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)胞子の計数を行うために、20日の最後で、30匹の生存ミツバチ(10匹のミツバチ/箱)を、試験される各条件のために殺害した。このために、各ミツバチの腸及び直腸膨大部を切開し、そして次に、100μlのPBS下でPotterミルにより粉砕した。3回の洗浄の後、計数をKovacsチャンバーで行った。結果は、下記表4に提供される。
【0128】
【表4】
【0129】
結果は、ミツバチが、本発明の硫酸化多糖類を含む組成物を供給された場合、ミツバチの死亡率の有利な低下を示した。特に、ポルフィリジウム・マリナム(Porphyridium marinum)由来の硫酸化多糖類SP6は、ミツバチ間の死亡率の有意な低下を示す。従って、本発明の硫酸化多糖類は、寄生虫の発育及び成長を制限する能力(胞子数の減少により示される)、及びそれにより、ノゼマ病により感染されたミツバチ間の死亡率を有意に低める能力を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2015年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物における少なくとも1つの微胞子虫病原体により引起される感染の治療又は予防への使用のための、少なくとも1つの硫酸化多糖類及び少なくとも1つの食品成分を含む組成物。
【請求項2】
前記食品成分が、食事タンパク質剤、ショ糖又はスクロース、ハチミツ、又はそれらの混合物を含む糖からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硫酸化多糖類が天然起源のものである、請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
大型藻類に由来するか;又は微小藻類及びラン藻類に由来する硫酸化多糖類;又はそのような硫酸化多糖類の混合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
赤大型藻類、緑大型藻類及び褐色大型藻類の中から選択される大型藻類に由来する;又は赤微小藻類から選択される微小藻類に由来する硫酸化多糖類;又はそのような硫酸化多糖類の混合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
−前記赤大型藻類が、寒天、カラギーナン、ポルフィリン、フラン、又は複合硫酸化ガラクタンを生成する紅藻類(Rhodophyceae)の中から選択され;
−前記緑大型藻類が多糖類を生成する緑藻(Chlorophyceae)から選択され;
−前記褐色大型藻が、硫酸化フランを生成する褐藻類(Pheophyceae)から選択される、請求項4又は5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
−前記赤大型藻類が、グラシラリア(Gracilaria)、ハリメニア(Halymenia)、ゲリジウム(Gelidium)、プテロクラジア(Pterocladia)、アカントペリチス(Acanthopeltis)、カンピラエフォリア(Campylaephora)、セラニウム(Ceranium)、ユーケウマ(Eucheuma)、コンドラス(Chondrus)、ポルフィラ(Porphyra)、ラウレンシア(Laurencia)、フルセラリア(Furcellaria)、グロイオペルチス(Gloiopeltis)及びイリデア(Iridea )属の、寒天、カラギーナン、ポルフィリン、フラン、又は複合硫酸化ガラクタンを生成する紅藻類(Rhodophyceae)の中から選択され;
−前記緑大型藻類が、アオサ(Ulva)属の、多糖類、例えばウルバン(ulvan)を生成する緑藻(Chlorophyceae)から選択され;
−前記褐色大型藻が、フカス(Fucus)、アスコフィラム(Aschophyllum)又はクラドシフォン(Cladosiphon)属の、硫酸化フランを生成する褐藻類(Pheophyceae)から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
大型藻類由来の前記硫酸化多糖類が、下記工程:
−50℃〜100℃の範囲の温度で水中、還流下で加熱することにより、たぶん前もって脱色された、大型藻類からの硫酸化多糖類の溶液の調製工程;
−少なくとも1つの極性溶媒によるか又は透析による硫酸化多糖類の沈殿工程;
−前記硫酸化多糖類の乾燥工程、
を包含する方法により得られるか、又は多分得られる、請求項4〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
−前記赤微小藻類が、ポルフィリジウム(Porphyridium)属又はローデラ(Rhodella)属に属する種から選択され;
−前記ラン藻類が、アルソスピラ・プラテンシス(Arthospira platensis)である、請求項4又は5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
大型藻類由来の前記硫酸化多糖類が、
光バイオリアクター下での微小藻類の培養;
−真空下で及び30℃〜50℃の範囲の温度での、バイオマスの抽出後の培養培地の濃縮;
−透析濾過、沈殿又は透析による硫酸化多糖類の抽出;
−硫酸化多糖類の乾燥、
を包含する方法により得られるか又は多分得られる、請求項4〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
−前記硫酸化多糖類が、多糖類の化学的修飾により得られるか;又は
−前記硫酸化多糖が、硫酸化工程を包含する方法により調製されるか、又は多分調製され得るか;又は
−前記硫酸化多糖類が、5%以上か又は5%に等しい重量基準での硫酸化の割合を有するか;又は
−組成物中の硫酸化多糖類の質量濃度が、50〜1000mg/mlの範囲であるか;又は
−(硫酸化多糖類/食品成分)の重量比が、0.0001:0.002の範囲であるか;又は
−前記食品成分が、ショ糖又はスクロース、フルクトース、グルコース又はマルトースハチミツ又はそれらの混合物の中から選択されるか;又は
−組成物中の硫酸化多糖類の重量濃度が、0.01%〜2%の範囲であるか;又は
−組成物中の食品成分の重量濃度が、95%〜99.99%の範囲である、
請求項1又は10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
−微胞子虫ノゼマ(Nosema)による、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防へのその使用のための;又は
−ミツバチの免疫防御システムを刺激するためへのその同時使用のための;又は
−バロア・テストラクター(Varroa destructor)に対抗するための治療に関して、その前に、それと同時に、それに補足的に、それと連続して、それと交互に、又はそれに続いて使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
微胞子虫ノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノセア・アピス(Nosema apis)による、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防へのその使用のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ヒト又は動物における少なくとも1つの微胞子虫により引起される感染の治療又は予防へのその使用のための、請求項3〜11の何れか一項に定義される硫酸化多糖類。
【請求項15】
−微胞子虫ノゼマ(Nosema)による、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防へのその使用のための;又は
−ミツバチの免疫防御システムを刺激するためへのその同時使用のための;又は
−バロア・テストラクター(Varroa destructor)に対抗するための治療に関して、その前に、それと同時に、それに補足的に、それと連続して、それと交互に、又はそれに続いて使用される、請求項14に記載の硫酸化多糖類。
【請求項16】
微胞子虫ノゼマ・セラナエ(Nosema ceranae)又はノセア・アピス(Nosema apis)による、ミツバチにおいて引起される感染の治療又は予防へのその使用のための、請求項14に記載の硫酸化多糖類。
【国際調査報告】