(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-537069(P2015-537069A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】タイヤ内部ライナー
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20151201BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20151201BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20151201BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20151201BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/04
C08L57/00
B60C5/14 A
C08L45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-536129(P2015-536129)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(85)【翻訳文提出日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】EP2013071189
(87)【国際公開番号】WO2014060287
(87)【国際公開日】20140424
(31)【優先権主張番号】1259790
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512068547
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(71)【出願人】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】リウー イザベル
(72)【発明者】
【氏名】リウー アリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カビオシュ ジャン−リュク
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC021
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BA012
4J002DA027
4J002DA036
4J002DE238
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、その内部ライナーが、主要量の高不飽和ジエンエラストマー、補強用有機充填剤、グラファイト、チョークおよびガラス転移点Tgが20℃よりも高く且つ軟化点が170℃よりも低い可塑化用炭化水素樹脂を少なくともベースとするゴム組成物を含むところのタイヤに関する。
グラファイトとチョークタイプの非補強用充填剤とを含む上記タイヤの内部ライナーにおけるそのような組成物の使用は、グラファイトのみを含み且つこうした面で既に極めて良好に機能している対照組成物と対比して、またタイヤ内部ライナーにおいて通常使用される対照組成物と対比して気密特性を著しく改良すると共に、通常の対照組成物と同様な良好な剛性レベルと加工特性を維持することを可能にしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の成分をベースとするゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤ内部ライナー:
・主要量の高不飽和ジエンエラストマー;
・補強用有機充填剤;
・グラファイト;
・チョーク;
・ガラス転移点Tgが20℃よりも高く且つ軟化点が170℃よりも低い可塑化用炭化水素樹脂。
【請求項2】
前記高不飽和ジエンエラストマーが、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の内部ライナー。
【請求項3】
前記ジエンエラストマーが、ブタジエン/スチレン(SBR)コポリマー、イソプレン/ブタジエン(BIR)コポリマー、イソプレン/スチレン(SIR)コポリマーおよびイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマー並びにこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項2記載の内部ライナー。
【請求項4】
ジエンエラストマーの含有量が、70phrと100phrの間、好ましくは90phrと100phrの間の量である、請求項1〜3のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項5】
前記ゴム組成物が、さらに、小量で、好ましくは30phr未満で、ハロゲン化または非ハロゲン化ブチルエラストマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項6】
前記ジエンエラストマーが、−40℃よりも高い高ガラス転移点を有するエラストマーである、請求項1〜5のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項7】
前記補強用有機充填剤が、カーボンブラックを含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項8】
カーボンブラックの含有量が、30phrよりも多い、請求項7記載の内部ライナー。
【請求項9】
カーボンブラックの含有量が、30phrと120phrの間の量である、請求項7および8のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項10】
前記可塑化用炭化水素樹脂が、が、+30℃よりも高いTgを有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項11】
可塑化用炭化水素樹脂の含有量が、2phrと35phrの間の量である、請求項10記載の内部ライナー。
【請求項12】
可塑化用炭化水素樹脂の含有量が、5phrと25phrの間の量である、請求項11記載の内部ライナー。
【請求項13】
前記可塑化用炭化水素樹脂が、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる、請求項10〜12のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項14】
前記コポリマー樹脂が、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる、請求項13記載の内部ライナー。
【請求項15】
前記可塑化用炭化水素樹脂が、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/D(CPD)コポリマー樹脂、C5留分/スチレンコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜13のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項16】
グラファイトが、板状形である、請求項1〜15のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項17】
グラファイトが、天然グラファイトである、請求項16記載の内部ライナー。
【請求項18】
グラファイトが、膨張グラファイトである、請求項16および17のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項19】
グラファイトが、合成グラファイトである、請求項16記載の内部ライナー。
【請求項20】
グラファイトが、天然グラファイトおよび/または膨張グラファイトおよび/または合成グラファイトのブレンドからなる、請求項16〜19のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項21】
グラファイト含有量が、3phrと50phrの間の量である、請求項16〜20のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項22】
前記組成物が、複数種のグラファイトのブレンドを含む、請求項16〜21のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項23】
前記組成物が、1種以上の不活性充填剤を含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項24】
前記組成物が、3phrと50phrの間のチョーク含量を含む、請求項1〜23のいずれか1項記載の内部ライナー。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項記載の内部ライナーを含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ“内部ライナー”として一般に知られている空気不透過性タイヤ内部層の製造用のゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブレスタイヤは、タイヤが圧力低下するのを阻止し且つ上記タイヤの感受性内部領域、例えば、酸化感受性金属コードを含むプライを酸素および水の浸入から保護するための低空気透過性の内表面を有し、この保護がタイヤの耐久性を改良している。現在のところ、タイヤの内表面のそのような保護は、ブチルゴムをベースとするエラストマー組成物からなる内部ライナーによって達成されている。しかしながら、ブチルゴムの空気不透過性能は、小さくはない最小厚(ほぼミリメートル程度)に、ひいては一定の重量に関連しており、これらの新たな必要条件を効果的に満たすことを可能にしていない。
【0003】
従って、カーボンブラックのような補強用充填剤を上記エラストマー内部ライナー組成物に添加してその不透過性を改良する必要がある。しかしながら、大量であっては、これらの補強用充填剤は、上記組成物のある種の性質を、未硬化状態(“加工性”困難と一般に称する未硬化組成物の加工の困難性)および硬化状態(機械的性質の劣化、等に、曲げ強度の低下)の双方において損なう。オイルタイプの可塑剤の導入は、これらの加工および機械的性質局面を克服することを可能にするが、上記不透過性にとっては極めて有害である。
【0004】
これらの欠点を克服するための、特に、多くの場合スメクタイトとして知られている他のタイプの充填剤を使用して上記補強用充填剤に添加することによる種々の解決策が構想されている。これらの有機親和性スメクタイトは、これらのスメクタイトを上記材料中に良好に分散させた場合は、上記材料の不透過特性を改良する。
【0005】
本出願人による公開公報WO 2006/047509号は、タイヤ内部ライナー用の組成物を開示しており、主要量のジエンゴムをベースとし且つカーボンブラックを含むその組成物は、ガスに対する透過性を低下させる有機親和性スメクタイトからなり、エラストマーマトリックス中に分散させた非補強用充填剤と、さらにまた、特に50℃よりも高いガラス転移温度Tgを有するテルペン樹脂からなる特定の可塑剤とを含む。この組成物は、これらの有機親和性スメクタイトとこの高Tg樹脂との組合せ効果によって、この組成物をタイヤ内部ライナーとしての使用において許容可能にする機械的性質および不透過特性を効果的に示している。
【0006】
出願WO 2008/145314号は、ブチルゴム、補強用充填剤、グラファイトおよび可塑化用炭化水素樹脂を少なくともベースとし、従来技術からの組成物と同様に良好な加工性と曲げ強度特性並びに改良された気体不透過特性を有し、且つ転がり抵抗性および耐久特性を有意に改良することも可能にするタイヤ内部ライナー用のゴム組成物を開示している。
【発明の概要】
【0007】
本出願人は、これらの調査研究を続行し、驚くべきことに、少なくとも、主要量の高ジエンエラストマー、補強用有機充填剤、グラファイト、チョークおよびTgが20℃よりも高く且つ軟化点が170℃よりも低い可塑化用炭化水素樹脂をベースとし、上記の解決策と対比して改良されたガス不透過特性を有すると同時に従来技術からの組成物と対比して良好な加工性と機械的性質を保持しているタイヤ内部ライナー用ゴム組成物を見出した。
【0008】
本発明のタイヤは、特に、二輪車(特に、オートバイ)、4×4 (四輪駆動)車およびSUV車 (“スポーツ用多目的車)のような乗用車タイプの動力車に、さらにまた、特に、バン類、および、バス、トラックのような大型道路輸送車のような、さらに、農業用または土木工事用車両のような大型車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
【0009】
本発明、さらにまた、本発明の利点は、以下の説明および典型的な実施態様に照らせば、容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I. 測定および試験法
上記ゴム組成物は、以下で示すように、硬化前後において特性決定する。
I. 1. ムーニー可塑度
フランス規格NF T 43−005 (1991年)に記載されているような振動稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:未硬化状態(即ち、硬化前)の組成物を、100℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本内で2回転/分にて回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0011】
I. 2. 流動度測定
測定は、規格DIN 53529−パート3 (1983年6月)従い、振動室レオメーターにより150℃で実施する。時間の関数としての流量測定トルクの変化によって、加硫反応の結果としての組成物の剛化の変化を説明する。測定値を規格DIN 53529:パート2 (1983年3月)従い処理する:t
iは、誘導時間、即ち、加硫反応を開始する前に必要な時間である。また、30%と80%の転換の間で計算したKで示す一次転換速度定数(分
-1で表す)も測定する;この値は、加硫速度を評価することを可能にする。
【0012】
I. 3. 引張試験
これらの試験は、弾性応力および破断点諸特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46−002に従って実施する。公称割線モジュラス(即ち、MPaでの見掛け応力)を、10%伸び(“MA10”で示す)および100%伸び(“MA100”で示す)において、2回目の伸びにおいて(即ち、順応サイクル後に)測定する。これらの引張測定は、全て、フランス規格NF T 40−101 (1979年12月)に従う標準の温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)条件下に実施する。また、破壊応力(MPaでの)および破断点伸び(%での)も、23℃の温度で測定する。
【0013】
I. 4. 透過性
透過性値は、Mocon Oxtran 2/60透過性“テスター”を使用して40℃で測定する。所定の厚さ(約0.8〜1mm)を有するディスク形状の硬化サンプルを、上記装置に取付け、真空グリースによって漏れ止めとする。ディスクの1面を68.95kPa (10psi)の窒素下に保ち一方、他の1面を68.95kPa (10psi)の酸素下に保つ。酸素濃度の上昇を、“Coulox”酸素検出器を使用して窒素下に保った面においてモニターする。一定の値を得るのを可能にし、酸素透過性を判定するのに使用する窒素下に保った面上の酸素濃度を記録する。
100の任意の値を対照の酸素透過性に対して付与する;100よりも低い結果が、酸素透過性の低下を、従って、良好な不透過性を指標する。
【0014】
II. 発明の詳細な説明
本説明においては、他で明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て、質量パーセントである。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、“a”よりも大きいから“b”よりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除外する)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、“a”から“b”までに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0015】
本説明においては、他で明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て、質量パーセントである。
用語“ジエン”エラストマー(または、区別することなくゴム)は、ジエンモノマー(即ち、共役型であるまたは共役型でない2個の炭素−炭素二重結合を含有するモノマー)から少なくとも部分的に由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解されたい。
略記“phr”は、エラストマーまたはゴム(数種のエラストマーが存在する場合は、エラストマーの総量)の100質量部当りの質量部を意味する。
【0016】
ガラス転移点(Tg)値は、全て、規格ASTM D3418 (1999年)に従い、DSC (示差走査熱量測定法)によって既知の方法で、乾燥状態の(即ち、増量剤オイルを含まない)未架橋エラストマーにおいて測定する。エラストマーのミクロ構造は、エラストマー供給元から周知であり、特にNMR分析またはIR分析によって測定し得る。
【0017】
結果として、本発明に従うタイヤ内部ライナーは、少なくとも以下の成分を含むゴム組成物を含むという本質的な特徴を有する:主要量の高不飽和ジエンエラストマー、補強用有機充填剤、グラファイト、チョーク、およびガラス転移点Tgが20℃よりも高く且つ軟化点が170℃よりも低い可塑化用炭化水素樹脂を含む可塑化用の系;これらの成分を以下で詳細に説明する。
【0018】
II. 1. 高不飽和ジエンエラストマー
従って、本発明に従うタイヤ内部ライナーは、主要量の高不飽和ジエンエラストマーを含むゴム組成物を含むという本質的な特徴を有する。
好ましくは、ジエンエラストマーの含有量は、70phrと100phrの間、好ましくは90phrと100phrの間の量である。
本発明の1つの実施態様の変形によれば、上記ゴム組成物は、さらに、小量で、ハロゲン化または非ハロゲン化ブチルエラストマーを含む;上記ブチルエラストマーの含有量は、好ましくは、30phr未満である。
【0019】
ジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。“本質的に不飽和”なる表現は、一般に、共役ジエンモノマーに少なくとも部分的に由来し、15%(モル%)よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい;従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“本質的に飽和のジエンエラストマー”(低いまたは極めて低い、常に15%よりも低いジエン由来の単位含有量)として説明し得る。“本質的に不飽和のジエンエラストマー”のカテゴリーのうちでは、“高不飽和ジエンエラストマー”なる表現は、特に、50%よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0020】
これらの定義を考慮すれば、さらに詳細には、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーは、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレン、3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンおよび6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーを共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、エチレン、プロピレンおよび特に1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンのような上記タイプの非共役ジエンモノマーから得られるエラストマーのような;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0021】
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ技術における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記タイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0022】
適切な共役ジエンは、特に、1,3‐ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン;例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエンまたは2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンのような2,3−ジ(C
1〜C
5アルキル)−1,3−ブタジエン;アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエンである。適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン;オルソ−、メタ−およびパラ−メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ−(tert−ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレンである。
【0023】
上記のコポリマーは、99質量%と20質量%の間のジエン単位と1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または例えばベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる。また、官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)を挙げることができる。
【0024】
適しているのは、ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のガラス転移点(Tg;規格ASTM D3418に従い測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマーである。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2−プラス3,4−単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス−1,4−単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−20℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
【0025】
要するに、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレン(SBR)コポリマー、イソプレン/ブタジエン(BIR)コポリマー、イソプレン/スチレン(SIR)コポリマーおよびイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーからなる群から選ばれる。
【0026】
1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、SBR (エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)であるか、或いは、SBR/BR、SBR/NR (またはSBR/IR)、BR/NR (またはBR/IR)或いはSBR/BR/NR (またはSBR/BR/IR)ブレンド(混合物)である。SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または例えば35〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用し得る。
【0027】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(50phrよりも多くにおいて)、イソプレンエラストマーである。“イソプレンエラストマー”なる表現は、知られているとおり、イソプレンホモポリマーまたはイソプレンコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマー類およびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレン(必要に応じてBr、Cl等でハロゲン化したブチルゴム(IIR))、イソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)の各コポリマーが挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは、90%よりも多い、さらに好ましくは98%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0028】
もう1つの特定の実施態様によれば、特に、チューブレスタイヤの気密内部ライナー(または他の空気不透過性要素)用に意図する場合、本発明に従う組成物は、小量において、少なくとも1種の本質的に飽和のジエンエラストマー、特に、少なくとも1種のEPDMコポリマーまたはブチルゴム(必要に応じて塩素化または臭素化した)を、主要量の上述したような高不飽和ジエンエラストマー、特に、NRもしくはIR、BRまたはSBRとの混合物として含有し得る。
【0029】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、−70℃と0℃の間のTgを示す1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、S‐SBR、E‐SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも高いシス−1,4−連鎖含有量(モル%)を示す)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。さらに好ましくは、本発明に従うゴム組成物は、高不飽和ジエンエラストマーとして、ガラス転移点(Tg)が−40℃よりも高いスチレン/ブタジエン(SBR)コポリマー(以降“高Tg SBR”と称する)を含むという特徴を有する。
【0030】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーと、−110℃と−80℃の間、より好ましくは−105℃と−90℃の間のTgを示す1種以上の“低Tg”ジエンエラストマーとのブレンドを含む。低Tgエラストマーは、好ましくは、ブタジエン単位を少なくとも70%に等しい含有量(モル%)で含む;低Tgエラストマーは、好ましくは、90%よりも多いシス−1,4−連鎖含有量(モル%)を示すポリブタジエン(BR)からなる。
【0031】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、例えば、30〜100phr、特に50〜100phrの高Tgエラストマーを、0〜70phr、特に0〜50phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして含む;もう1つの例によれば、上記ゴム組成物は、100phrの全体において、1種以上のSBRを含む。
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いシス−1,4−連鎖含有量(モル%)を示すBR (低Tgエラストマーとして)と1種以上のS−SBRまたはE−SBR (高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含む。
【0032】
本発明の組成物は、1種のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含み得る;上記ジエンエラストマー(1種以上)は、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと、或いはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーとさえ組合せて使用することが可能である。
【0033】
好ましくは、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のスチレン含有量、4%と65%の間のブタジエン成分1,2−結合含有量および20%と80%の間のトランス−1,4−結合含有量を有する高Tg SBRを使用する。当業者であれば、SBRエラストマーのミクロ構造を如何に改変してそのTgを調整するかは承知していることであろう。
【0034】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、40phrと100phrの間、特に50phrと100phrの間の量の高Tg SBRを含む。
1種以上の他のジエンエラストマーを、上記高Tg SBRと組合せ得る。
【0035】
上記任意構成成分としてのさらなるジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー(IR以外の)およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、イソプレン/ブタジエン(BIR)コポリマー、イソプレン/スチレン(SIR)コポリマー、およびイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーからなる群から選ばれる。
【0036】
本発明のもう1つの実施態様によれば、タイヤ内部ライナー用を意図する上記組成物は、小量で、1種以上のブチルゴムを、1種以上のジエンエラストマーとのブレンドとして含み得る。
用語“ブチルゴム”は、ポリ(イソブチレン)のホモポリマーまたはポリ(イソブチレン)のイソプレンとのコポリマー(この場合、このブチルゴムはジエンエラストマーのうちに包含される)およびこれらのポリ(イソブチレン)のホモポリマーまたはポリ(イソブチレン)とイソプレンのコポリマーのハロゲン化誘導体、特に一般的には、臭素化または塩素化誘導体を意味するものと理解されたい。
【0037】
本発明の実施において特に適するブチルゴムの例としては、イソブチレンとイソプレンのコポリマー(IIR)、ブロモイソブチレン/イソプレン(BIIR)コポリマーのようなブロモブチルゴム、クロロイソブチレン/イソプレン(CIIR)コポリマーのようなクロロブチルゴム、およびイソブチレンゴムが挙げられる。
上記定義を拡張すれば、“ブチルゴム”なる名称は、イソブチレンとスチレン誘導体のコポリマー、例えば、臭素化イソブチレン/メチルスチレン(BIMS)コポリマーも包含するであろう。
【0038】
II. 2. 補強用有機充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用有機充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤を使用することができる。
そのような補強用充填剤は、典型的には、ナノ粒子からなり、その平均粒度(質量による)は、500nm未満、通常20nmと200nmの間、特にまた好ましくは20nmと150nmの間の粒度である。
【0039】
好ましくは、補強用有機充填剤全体の含有量は、30phrよりも多く、特に30phrと120phrの間の量である。20phrよりも少ないと、上記保護エラストマー層の固着力および機械的性質がある種の用途においては不十分であるリスクがあり、一方、120phrよりも多いと、タイヤのヒステリシス、ひいては転がり抵抗性を高めるリスクが存在する。これらの理由により、補強用充填剤全体の含有量は、さらに好ましくは、30〜100phrの範囲内である。
【0040】
全てのカーボンブラック類、特に、タイヤまたはタイヤのトレッドにおいて通常使用するブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。後者のうちでは、さらに詳細には、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N683、N772またはN990ブラック類のような100、200、300、600、700または900シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が挙げられる。
【0041】
カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO−A−2006/069792号、WO−A−2006/069793号、WO−A−2008/003434号およびWO−A−2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0042】
II. 3. グラファイトタイプの充填剤
用語“グラファイト”は、一般に、炭素原子の非コンパクト六方晶系シートの集合体、即ち、グラフェンを意味するものと理解されたい。グラファイト、即ち、六方晶系は、B面がA面に対して平行移動しているABABタイプの積層体を示す;グラファイトは、結晶群:P63/mmc空間群に属する。
【0043】
グラファイトは、項III. 2において明記している定義の意味内の補強用充填剤とはみなし得ない;しかしながら、グラファイトは、グラファイトが混入されているゴム組成物の引張モジュラスの増進を可能にする限りは、半補強用充填剤とみなし得る。
【0044】
これらの定義を考慮すると、本発明に従う組成物において使用し得るグラファイトは、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 変成作用によって影響を受けた岩石に付随していた、グラファイト鉱脈に伴う不純物を分離した後の、さらに、ミリングした後の任意の天然グラファイト;
(b) 任意の熱膨張性天然グラファイト、即ち、液状の化学化合物、例えば、酸が、そのグラフェン面の間に介在しているグラファイト;
(c) 任意の膨張天然グラファイト、このグラファイトは、2つの段階、即ち、液状の化学化合物、例えば、酸の、化学処理による天然グラファイトのグラフェン面間への介在および高温膨張において生成する;
(d) 石油コークスの黒鉛化によって得られる任意の合成グラファイト。
【0045】
本発明の組成物は、1種のみのグラファイトまたは数種のグラファイトの混合物を含み得る;従って、天然グラファイトおよび/または膨張グラファイトおよび/または合成グラファイトのブレンドを含むことが可能である。
上記で定義したようなグラファイトは、形態学的に板状または非板状形であり得る。
【0046】
驚くべきことに、これら2つのタイプの形態のいずれかを有するグラファイトが本発明に従う組成物において適切であることが判明している;しかしながら、板状形を示すグラファイトが好ましく適しており、グラファイトが気体透過流に対して垂直なその最大面を示すように配向される場合はなお一層適している。
グラファイトは、本発明に従う組成物において、3phr〜50phr、好ましくは5phrと30phrの間の範囲である含有量で存在する。
【0047】
II. 4. チョーク:非補強用充填剤
上記タイヤ内部ライナーは、チョークを非補強用充填剤として含むという本質的な特徴を有する組成物を含む。好ましくは、チョーク含有量は、3phrと50phrの間、さらにより好ましくは5phrと30phrの間の量である。
【0048】
チョークは、好ましくは、微小粒子の形にあり、その平均粒度(質量による)は、1μmよりも大きい。上記チョーク微小粒子の中央値粒度は、好ましくは1μmと200μmの間、特に5μmと100μmの間である。
【0049】
チョーク含有量およびチョーク微小粒子の粒度の双方において、上記の各最低値よりも低いと、上記組成物の目標とする不透過性の技術的効果が得られない;各最高値よりも高いと、上記混合物の加工性の悪化および固着力の低下が観察される。
【0050】
当業者にとって既知のチョークは、コーティング(例えば、ステアリン酸)を有するまたは有さない天然炭酸カルシウム(チョーク)または合成炭酸カルシウムである。
そのような好ましい、且つ商業的に入手可能なチョークの例としては、例えば、Omya社から品名“Omya BLS”として販売されているチョークを挙げることができる。
【0051】
もう1つの実施態様によれば、上記のグラファイトおよびチョークは、クレー粒子、ベントナイト、タルク、カオリン、ガラスマイクロビーズおよびガラスフレークのような他の不活性充填剤と一緒に使用してもよい。
【0052】
II. 5. 可塑化用炭化水素樹脂
本発明に従うタイヤ内部ライナーの組成物は、ガラス転移点Tgが20℃よりも高く且つ軟化点が170℃よりも低い炭化水素樹脂を含む可塑化用の系を含むというもう1つの本質的な特徴を有する。
【0053】
当業者にとっては知られている通り、名称“可塑化用樹脂”は、本出願においては、定義によれば、一方では、室温(23℃)において固体であり(オイルのような液体可塑剤化合物とは対照的に)、そして、他方では、真の希釈剤として作用するように意図するエラストマー組成物と相溶性(即ち、典型的には5phrよりも多い使用量において混和性)である化合物に対して使用される。
【0054】
炭化水素樹脂は、当業者にとって周知のポリマーであって、“可塑化用”としてさらに説明する場合、上記したように、エラストマー組成物中に本来混和性である。
炭化水素は、本明細書の導入部において述べた特許または特許出願において、さらにまた、例えば、R. Mildenberg、M. ZanderおよびG. Collin (New York, VCH, 1997, ISBN 3‐527‐28617‐9)による“Hydrocarbon Resins”と題した著作物に広く説明されており、上記著作物の第5章は、炭化水素樹脂の特にタイヤゴム分野の用途に当てられている(5.5. "Rubber Tires and Mechanical Goods")。
【0055】
炭化水素樹脂は、脂肪族、ナフテン系または芳香族或いは脂肪族/ナフテン系/芳香族タイプであり、即ち、脂肪族および/またはナフテン系および/または芳香族モノマーをベースとし得る。炭化水素樹脂は、天然または合成系であり得、さらに、石油系(そのような場合、石油樹脂の名称でも知られている)であり得または石油系であり得ない。炭化水素樹脂は、好ましくは、専ら炭化水素質を有する、即ち、炭化水素は、炭素原子および水素原子のみを含む。
【0056】
好ましくは、上記可塑化用炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも1つ、より好ましくは全てを有する:
・400g/モルと2000g/モルの間の数平均分子量(Mn);
・3よりも低い多分散性指数(PI) (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量である)。
【0057】
さらに好ましくは、この可塑化用炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも1つ、より好ましくは全てを有する:
・30℃よりも高いTg;
・500g/モルと1500g/モルの間の分子量Mn;
・2よりも低いPI指数。
【0058】
ガラス転移点Tgは、規格ASTM D3418 (1999年)に従うDSC (示差走査熱量測定法)によって既知の方法で測定し、軟化点は、規格ASTM E−28に従って測定する。
【0059】
上記炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびPI)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する;溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/l;流量 1ml/分;注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターによって濾過した溶液;ポリスチレン標準によるムーア較正;直列の3本“Waters”カラムセット(“Styragel”HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(“Waters 2410”)およびその関連操作用ソフトウェア(“Waters Empower”)による検出。
【0060】
特定の好ましい実施態様によれば、上記可塑化用炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C
5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる。
【0061】
好ましくは、上記コポリマー樹脂のうちでは、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C
5留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、C
5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれるコポリマー樹脂を使用する。
【0062】
用語“テルペン”は、この場合、知られている通り、α−ピネンモノマー、β−ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する;好ましくは、リモネンモノマーを使用する;この化合物は、知られている通り、3種の可能性ある異性体の形で存在する:L‐リモネン(左旋性鏡像体)、D‐リモネン(右旋性鏡像体)或いはジペンテン、即ち、右旋性鏡像体と左旋性鏡像体のラセミ体混合物。
【0063】
ビニル芳香族モノマーとして適するのは、例えば、スチレン;α‐メチルスチレン;オルソ−、メタ−またはパラ−メチルスチレン;ビニルトルエン;パラ(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびC
9留分(または、より一般的にはC
8〜C
10留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーである。好ましくは、上記ビニル芳香族化合物は、スチレンまたはC
9留分(または、より一般的にはC
8〜C
10留分)に由来するビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、該当するコポリマー中のモル画分で表して少量モノマーである。
【0064】
特に好ましい実施態様によれば、上記可塑化用炭化水素樹脂は、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/D(CPD)コポリマー樹脂、C
5留分/スチレンコポリマー樹脂、C
5留分/C
9留分コポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる。
【0065】
上記好ましい樹脂は、当業者にとって周知であって、商業的に入手可能であり、例えば、下記に関しては市販されている:
・ポリリモネン樹脂:DRT社から品名“Dercolyte L120”(Mn = 625g/モル;Mw = 1010g/モル;PI = 1.6;Tg = 72℃)として、またはArizonaから品名“Sylvagum TR7125C”(Mn = 630g/モル;Mw = 950g/モル;PI = 1.5;Tg = 70℃);
・C
5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、特に、C
5留分/スチレンまたはC
5留分/C
9留分コポリマー樹脂:Neville Chemical Company社から品名“Super Nevtac 78”、“Super Nevtac 85”または“Super Nevtac 99”として、Goodyear Chemicals社から品名“Wingtack Extra”として、Kolon社から品名“Hikorez T1095”および“Hikorez T1100”として、またはExxon社から品名“Escorez 2101”および“ECR 373”として;
・リモネン/スチレンコポリマー樹脂:DRT社から品名“Dercolyte TS 105”として、またはArizona Chemical Company社から品名“ZT115LT”および“ZT5100”として。
【0066】
炭化水素樹脂の含有量は、好ましくは、2phrと35phrの間の量である。上記の最低値よりも少ないと、目標とする技術的効果が不十分であることが判明し得、一方、上記最高値よりも多いと、未硬化状態の組成物の混合装置に対する粘着性が、ある場合には、工業的見地から全く許容し得なくなり得る。炭化水素樹脂に含有量は、さらに好ましくは、5phrと25phrの間の量である。
【0067】
上記タイヤ内部ライナーの組成物は、さらに、20℃において液体である可塑剤も含み得る;この可塑剤は、“低Tg”可塑剤と称する、即ち、この可塑剤は、−20℃よりも低い、好ましくは−40℃よりも低いTgを有する。
【0068】
芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の増量剤オイル、或いはジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用することができる。周囲温度(20℃)において、これらの可塑剤またはこれらのオイルは、おおよそ粘稠であり、特に周囲温度において本来固体である可塑化用炭化水素樹脂とは対照的に液体である(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形を取る能力を有する物質)。
【0069】
芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の増量剤オイル、或いはジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用することができる。周囲温度(20℃)において、これらの可塑剤またはこれらのオイルは、おおよそ粘稠であり、特に周囲温度において本来固体である可塑化用炭化水素樹脂とは対照的に液体である(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形を取る能力を有する物質)。
【0070】
特に適するのは、液体ジエンポリマー、ポリオレフィンオイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、DAE (留出物芳香族抽出物)オイル、MES (中度抽出溶媒和物)オイル、TDAE (処理留出物芳香族系抽出物)オイル、RAE (残留芳香族抽出物(Residual Aromatic Extract))オイル、TRAE (処理残留芳香族抽出物(Treated Residual Aromatic Extract))オイルおよびSRAE (安全残留芳香族抽出物(Safety Residual Aromatic Extract))オイル、鉱油、植物油、可塑化用エーテル、可塑化用エステル、可塑化用ホスフェート、可塑化用スルホネートおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる液体可塑剤である。より好ましい実施態様によれば、液体可塑剤は、MESオイル、TDAEオイル、ナフテン系オイル、植物油およびこれらのオイルの混合物からなる群から選ばれる。
【0071】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、液体可塑剤、特に石油は、非芳香族タイプである。液体可塑剤は、その液体可塑剤が、液体可塑剤の総質量に対して、3質量%未満の多環式芳香族化合物含有量(IP 346法に従うDMSO中での抽出物によって測定)を有する場合に、非芳香族として説明される。この点については、好ましくは、MESオイル、TDAEオイル、ナフテン系オイル(低または高粘度を有し、特に、水素化または非水素化系)、パラフィン系オイルおよびこれらのオイルの混合物からなる群から選ばれる液体可塑剤を使用し得る。また、石油として適しているのは、低含有量の多環式化合物を含むRAEオイル、TRAEオイル、SRAEオイルまたはこれらのオイルの混合物である。
もう1つの特定の実施態様によれば、液体可塑剤は、テルペン誘導体である。例えば、Yasuhara社からの製品Dimaroneを特に挙げることができる。
【0072】
また、適しているのは、例えば、ポリブテン類、ポリジエン類、特に、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンとイソプレンのコポリマー、ブタジエンまたはイソプレンとスチレンのコポリマーからなる群から選ばれるポリマーのようなオレフィン類またはジエン類の重合から得られる液体ポリマー並びにこれらの液体ポリマーの混合物である。そのような液体ポリマーの数平均分子量は、好ましくは500g/モル〜50000g/モル、より好ましくは1000g/モル〜10000g/モルの範囲内である。例えば、特に、Sartomer社からの“Ricon”製品を挙げることができる。
【0073】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、液体可塑剤は、植物油である。好ましくは、アマニ油、ベニバナ油、ダイズ油、コーン油、綿実油、カブ(turnip seed)油、ヒマシ油、キリ油、マツ油、ヒマワリ油、ヤシ油、オリーブ油、ココナツ油、ラッカセイ油およびグレープシードオイル、並びにこれらのオイルの混合物からなる群から選ばれるオイル、特に、ヒマワリ油を使用することができる。この植物油、特に、ヒマワリ油は、さらに好ましくは、オレイン酸リッチの油である、即ち、ヒマワリ油に由来する脂肪酸(数種存在する場合は脂肪酸全体)は、オレイン酸を、少なくとも60%に等しい、より好ましくは少なくとも70%に等しい、特に少なくとも80%以上の質量画分で含む。
【0074】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、液体可塑剤は、エーテルである;例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを挙げることができる。
また、適しているのは、可塑化用エステル、可塑化用ホスフェート、可塑化用スルホネートおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる液体可塑剤である。
カルボン酸トリエステル、リン酸トリエステル、スルホン酸トリエステルおよびこれらのトリエステルの混合物からなる群から選ばれるトリエステルは、特に適している。可塑化用カルボン酸エステルの例としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケートおよびグリセリントリエステル、並びにこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物を挙げることができる。これらのトリエステルのうちでは、特に、好ましくは、主として(50質量%よりも多くから、より好ましくは80質量%よりも多くから)、C
18不飽和脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物からなる群から選ばれる脂肪酸からなるグリセリントリエステルを挙げることができる;さらに好ましくは、合成由来または天然由来のいずれであれ、使用する脂肪酸は、60質量%よりも多くの、さらにより好ましくは70質量%よりも多くのオレイン酸からなる。天然または合成由来の高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレート)は、周知である;そのようなトリエステルは、例えば出願WO 02/088238号において、タイヤトレッドにおける可塑剤として説明されている。ホスフェート可塑剤としては、例えば、12個と30個の間の炭素原子を含むホスフェート可塑剤、例えば、リン酸トリオクチルを挙げることができる。
【0075】
II. 6. 各種添加剤
また、本発明に従うタイヤ内部ライナーゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;上記で説明した可塑剤以外の可塑剤;疲労防止剤;補強用樹脂;メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドをベースとする架橋系;加硫促進剤または加硫活性化剤のような、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において慣用的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
【0076】
また、これらの組成物は、カップリング剤に加えて、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用の薬剤、或いは、知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し且つ組成物の粘度を低下させることによって、未硬化状態におけるこれらの組成物の加工性を改良することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;第一級、第二または第三級アミン;或いはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0077】
II. 7. ゴム組成物の製造
本発明のタイヤのトレッドにおいて使用するゴム組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階と称する)、並びに、その後の典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度に下げて機械加工する第2段階(“生産”段階と称する)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋系を混入する。
【0078】
そのような組成物の製造方法は、例えば、下記の段階を含む:
・高不飽和ジエンエラストマーを、補強用有機充填剤、他の充填剤および可塑化用の系と一緒に、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階(例えば、1回以上の工程で) (“非生産”段階と称する);
・混合物全体を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
・その後、第2(“生産”)段階において、架橋系を混入する段階;
・全てを、110℃よりも低い最高温度まで混練する段階。
【0079】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械段階で実施し、その間に、最初の工程において、全てのベース成分(高不飽和ジエンエラストマー(1種以上)、可塑化用の系、補強用有機充填剤および他の充填剤)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、第2工程において、例えば1〜2分間混練した後、架橋系を除いた他の添加剤、任意構成成分としてのさらなる充填剤被覆用の薬剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間の時間である。
【0080】
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、この場合、低温(例えば、40℃と100℃の間の温度)に維持したオープンミルのような開放ミキサー内に混入する;その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2〜15分間の時間で混合する(生産段階)。
【0081】
実際の架橋系は、好ましくは、イオウと一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系に、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等を添加し、上記第1非生産段階中におよび/または上記生産段階中に混入する。イオウ含有量は、好ましくは0.5phrと3.0phrの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0082】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプおよびその誘導体の促進剤、並びにチウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用することができる。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2−メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCBS”と略記する)、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(“ZBEC”と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択する。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤、例えば、“TBZTD”(テトラベンジルチウラムジスルフィド)を使用する。
【0083】
その後、そのようにして得られた最終組成物は、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはスラブの形にカレンダー加工してもよく、或いは、押出加工して、例えば、内部ライナーの製造において使用するゴム形状要素を成形することもできる。
本発明は、未硬化状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上記タイヤに関する。
【実施例】
【0084】
III. 発明の典型的な実施態様
III. 1. 組成物の製造
以下の試験を、以下の方法で実施する:高不飽和ジエンエラストマー、補強用有機充填剤、グラファイト、チョーク、可塑化用の系、さらにまた、加硫系を除いた各種他の成分を、初期容器温度がおよそ60℃である密閉ミキサーに連続して導入する(最終充填比:約70容量%)。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1工程で実施する;この段階は、165℃の最高“落下”温度に達するまで合計でおよそ3〜4分間続く。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、イオウとスルフェンアミドタイプの促進剤を30℃のミキサー(ホモ・フィニッシャー)内で混入し、全てを適切な時間(例えば、5〜12分間)混合する(生産段階)。その後、そのようにして得られた組成物をタイヤ内部ライナーの形に押出加工する。
【0085】
III. 2. 試験
以下の試験は、驚くべきことに、二輪車(特に、オートバイ、自転車等)におけるタイヤ内部ライナーの良好な不透過性および機械的性質を実証している。
これらの試験の前提条件として、4通りのタイヤ内部ライナー組成物、即ち、本発明に従う1つの組成物(以下、C.4で示す)および本発明に従わない3通りの組成物(以下、C.1〜C.3で示す対照組成物)を、上記で示すようにして製造した。これら組成物の配合(phrで示す)は、下記の表1に示している。
【0086】
上記ゴム組成物C.1〜C.4は、全て、通常のスチレン/ブタジエンゴムとブレンドした、高ガラス転移点を有する70phrのスチレン/ブタジエンゴムをベースとしている。
組成物C.1は、タイヤ内部ライナーにおいて使用する、80phrの補強用有機充填剤を含み他の充填剤を含まない通常の対照組成物である。また、組成物C.2〜C.4も80phrのこの同じ補強用充填剤を含む。組成物C.2は、さらに、20phrのチョークを含むがグラファイトは含まず;組成物C.3は、さらに、15phrのグラファイトを含むがチョークは含まない。組成物C.4のみが、本発明に従い、20phrのチョークと15phrのグラファイトの双方を含む。
組成物C.1〜C.4は、全て、2種類の可塑剤、即ち、オイルタイプの液体可塑剤(20phrのTDAEオイル)と10phrの可塑化用炭化水素樹脂(C
5樹脂)の混合物を含む。
【0087】
これら組成物の硬化(加硫)前後の性質を、下記の表2に要約している。
グラファイトとチョークを含む本発明に従う組成物C.4は、未硬化状態において、対照組成物C.1〜C.3の加工性と等価の加工性を有することが観察されている;さらにまた、その流動特性は、組成物C.1〜C.3の流動特性と同等である。
【0088】
さらにまた、本発明に従う組成物C.4は、対照組成物C.1およびC.2の透過性よりも低い透過性を有しており、この透過性は、そのような組成物の不透過性の増進に対する証しである。組成物C.4は、こうした面で既に極めて良好に機能している組成物である対照組成物C.3よりも低い透過性を有している。
【0089】
組成物C.3およびC.4は、双方ともグラファイトを含み、対象組成物C.1およびC.2のそれよりも高い剛性(MA10)を有している。この剛性の上昇は、タイヤを設計する当業者にとって許容し得るものである。グラファイトとチョークの双方を含む組成物C.4は、グラファイトのみを含む組成物C.3と等価の剛性を有する。本発明に従う組成物C.4へのチョークの添加は、剛性の有意の上昇に寄与してはいない。
【0090】
従って、グラファイトとチョークタイプの非補強用充填剤とを含む本発明に従う組成物は、グラファイトのみを含み且つこうした面で既に極めて良好に機能している対照組成物(C.3)と対比して、またタイヤ内部ライナーにおいて通常使用される対照組成物(C.1)と対比して気密特性を著しく改良すると共に、通常の対照組成物と同様な良好な剛性レベルと加工特性を維持することを可能にしている。
【0091】
【表1】
(1) 41%のスチレン単位および65%のブタジエン単位を含み;ブタジエン成分においては、24%の1,2‐単位、26%のシス−1,4−単位および50%のトランス−1,4−単位を含むSBR (乾燥SBRとして示した含有量) (Tg = −25℃);
(2) 40%のスチレン単位および56%のブタジエン単位を含み;ブタジエン成分においては、24%の1,2‐単位、26%のシス−1,4−単位および50%のトランス−1,4−単位を含むSBR (Tg = −30℃);
(3) カーボンブラック(Rhodia社からの“Zeosil 1165MP”);
(4) チョーク (Omya社からの“CaCO3 ST”);
(5) グラファイト (Timcal社からの“Timerx 80 150”);
(6) TDAE;
(7) C
5樹脂;
(8) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニルパラフェニレンジアミン(Flexsys社からの“Santoflex 6−PPD”);
(9) 酸化亜鉛(工業級;Umicore社);
(10) Stearin (Uniquema社からの“Pristerene”);
(11) N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”);
(12) ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛 (Performance Additives社からの“Perkacit ZBEC”);
(13) DPG = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からの“Perkacit DPG”)。
【0092】
【表2】
【国際調査報告】