特表2015-537098(P2015-537098A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-537098溶融金属フィルタの生成に使用可能な親水性を有する熱網状化ポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-537098(P2015-537098A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】溶融金属フィルタの生成に使用可能な親水性を有する熱網状化ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   C08G18/42 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-545862(P2015-545862)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年7月14日
(86)【国際出願番号】US2013073476
(87)【国際公開番号】WO2014089387
(87)【国際公開日】20140612
(31)【優先権主張番号】61/734,546
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514259495
【氏名又は名称】イノアック ユーエスエー インク
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 文徳
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034CA11
4J034DA01
4J034DB03
4J034DF01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA14
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD03
4J034KD04
4J034KD11
4J034KE02
4J034NA03
4J034QB01
4J034QC01
4J034RA04
(57)【要約】
90〜110重量部のポリエステルポリオールと、0.9〜1.1重量部のエステル界面活性剤と、3〜20重量部の親水性界面活性剤と、1.89〜2.31重量部のポリウレタン触媒と、0.126〜0.154重量部のアミン触媒と、3.348〜4.092重量部の水と、46.98〜57.42重量部のトルエンジイソシアネートを含む組成物から製造される、親水性ポリウレタンフォーム。上記ポリウレタンは、約5分以下の時間内に水を吸収可能である。また、上記ポリウレタンフォームは、溶融金属フィルタ形成の前駆体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90〜110重量部のポリエステルポリオールと、
0.9〜1.1重量部のエステル界面活性剤と、
3〜20重量部の親水性界面活性剤と、
1.89〜2.31重量部のポリウレタン触媒と、
0.126〜0.154重量部のアミン触媒と、
3.348〜4.092重量部の水と、
46.98〜57.42重量部のトルエンジイソシアネートを含む組成物から形成される親水性ポリウレタンフォームであって、
前記ポリウレタンは、約5分以下の時間内に水を吸収可能であり、
前記フォームは、溶融金属フィルタ形成の前駆体である、親水性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
3〜15重量部の親水性界面活性剤を含む、請求項1に記載のフォーム。
【請求項3】
3〜10重量部の親水性界面活性剤を含む、請求項2に記載のフォーム。
【請求項4】
4〜9重量部の親水性界面活性剤を含む、請求項3に記載のフォーム。
【請求項5】
5〜8重量部の親水性界面活性剤を含む、請求項4に記載のフォーム。
【請求項6】
6〜7重量部の親水性界面活性剤を含む、請求項5に記載のフォーム。
【請求項7】
前記フォームは網状化されている、請求項1に記載のフォーム。
【請求項8】
前記フォームは熱により網状化されている、請求項7に記載のフォーム。
【請求項9】
前記トルエンジイソシアネートは、2,4−トルエンジイソシアネートと、2,6トルエンジイソシアネートから成る、少なくとも2つの異性体を含む、請求項1に記載のフォーム。
【請求項10】
95〜105重量部のポリエステルポリオールと、
0.95〜1.05重量部のエステル界面活性剤と、
2.00〜2.21重量部のポリウレタン触媒と、
0.133〜0.147重量部のアミン触媒と、
3.534〜3.906重量部の水と、
49.60〜54.82重量部のトルエンジイソシアネートを含む
請求項1に記載のフォーム。
【請求項11】
98〜102重量部のポリエステルポリオールと、
0.98〜1.02重量部のエステル界面活性剤と、
2.06〜2.14重量部のポリウレタン触媒と、
0.137〜0.143重量部のアミン触媒と、
3.646〜3.794重量部の水と、
51.16〜53.24重量部のトルエンジイソシアネートを含む
請求項10に記載のフォーム。
【請求項12】
99〜101重量部のポリエステルポリオールと、
0.99〜1.01重量部のエステル界面活性剤と、
2.08〜2.12重量部のポリウレタン触媒と、
0.139〜0.141重量部のアミン触媒と、
3.683〜3.757重量部の水と、
51.68〜52.72重量部のトルエンジイソシアネートを含む
請求項11に記載のフォーム。
【請求項13】
前記親水性界面活性剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサンを含む、請求項1に記載のフォーム。
【請求項14】
前記親水性界面活性剤は、
ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、aーメチルーwー[3−[1,3,3,3−テトラメチルー1−[(トリメチルシリル)オキシ−]ジシロキサニル]プロポキシ]と、
ジシロキサン、ヘキサメチルを含む、請求項13に記載のフォーム。
【請求項15】
前記フォームは、約2〜100ppiの密度で孔を有するウェブを形成する、請求項1に記載のフォーム。
【請求項16】
前記密度は約2〜70ppiである、請求項15に記載のフォーム。
【請求項17】
前記密度は約5〜35ppiである、請求項16に記載のフォーム。
【請求項18】
前記密度は約10〜30ppiである、請求項17に記載のフォーム。
【請求項19】
前記時間は約4分未満である、請求項1に記載のフォーム。
【請求項20】
前記時間は約3分未満である、請求項19に記載のフォーム。
【請求項21】
前記時間は約2分未満である、請求項20に記載のフォーム。
【請求項22】
前記時間は約1分未満である、請求項21に記載のフォーム。
【請求項23】
前記フォームは、約1.2〜3lb/ft3(0.019〜0.048g/cm3)の密度を有する、請求項1に記載のフォーム。
【請求項24】
前記フォームは、約1.4〜1.9lb/ft3(0.022〜0.030g/cm3)の密度を有する、請求項23に記載のフォーム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本明細書は、2012年12月7日を出願日とする米国特許仮出願第61/734,546号に対する優先権を主張する米国特許非仮出願であり、該出願明細書の全内容が、ここに参考文献として援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、溶融金属フィルタの生成に使用可能な熱網状化ポリウレタンフォームに関する。本発明のフォームは、熱網状化処理の結果得られる全開放セル構造を有する。このフォームは、約5分未満の時間内に水を吸収可能である。
【背景技術】
【0003】
溶融金属用フィルタ材料の生成に、熱による網状化を施したポリウレタンフォームが用いられてきたが、その理由は、網状化フォームには開放セル構造が組み込まれているからである。明らかに、溶融金属フィルタに好適に性能を発揮させるには、空隙連結型の全開放構造が求められる。このような開放構造であれば、溶融金属を貫流させることができる。
【0004】
当業者には明らかであるが、溶融金属フィルタを生成する方法の1つは、網状化ポリウレタンフォームにセラミックスラリーを含浸させることである。詳しくは、セラミックスラリーを網状化フォーム構造の空隙に含浸させた後、セラミックを加熱(または焼成)することで、セラミックにより剛直な構造が形成される。加熱または焼成中、ポリウレタンはセラミックスラリーから焼出し、硬化(または焼成)したセラミック構造のみを残存させる。
【0005】
網状化ポリウレタンフォームにおける問題点の1つとして、その疎水性が挙げられる。これは、つまり、90度より大きいぬれ角の場合、水がポリウレタン表面上で拡散しにくいということである。
【0006】
当業者には明らかであるが、溶融金属フィルタの製造に通常用いられる各セラミックスラリーは水性であることから、網状化ポリウレタンフォームの疎水性によって、フィルタ形成が阻害される。このため、疎水性ポリウレタンフォームの場合、その表面をセラミックスラリーで効率的に湿潤させることができない。これにより、ポリウレタン表面上のスラリー拡散が不十分となり、また、フィルタを加熱または焼成中に形成する場合、支柱形成不良という結果を引き起こす。
【0007】
フォーム表面上でのスラリー拡散が不十分であるため、この対策として、圧力を加えながらセラミックスラリーを塗布することが一般的に行われている。網状化ポリウレタンフォームが疎水性であることから、一般的には、高い圧力を加えることで、セラミックスラリーをフォームの各孔へ強制的に入り込ませる。
【0008】
または、親水性ポリウレタンフォームの生成も可能である。例えば、親水性プレポリマーイソシアネート末端基を水と混ぜて反応させる「プレポリマー」処理により、親水性ポリウレタンフォームを調製することが可能である。各親水性ポリウレタンフォームが、米国特許第3,861,993号、および第3,889,417号に記載されている。
【0009】
しかし、プレポリマーを用いた親水性ポリウレタンフォームの生成には、少なくとも問題点が1つあることが知られている。具体的には、この処理方法では、開放性が不十分なフォーム構造が生成されることが多い。また、多くの場合、フォームには個々の空隙の間に薄膜が形成されるため、セラミックスラリーによる湿潤後、金属フィルタを形成するフォームの能力が低下してしまう。
【0010】
親水性フォームは、溶融金属フィルタの生成に用いられてきた。例えば、米国特許第3,833,386号(以降、「’386特許」)には、溶融金属フィルタの生成に用いることができる、親水性プレポリマー法により形成したフォームが記載されている。しかし、’386特許に記載のフォームは、全開放セル構造を有する網状化フォームとは異なり、単に従来のオープンセル構造を有するフォームにすぎない。さらに、’386特許に記載のフォームは、一般的な網状化フォームと比較して、その密度がかなり高い。その結果、孔径を制御して、溶融金属フィルタ材料の生成に十分な空隙スペースを確保することが(不可能ではないにしても)困難になっている。
【0011】
米国特許出願第2006/0284351号には、網状化フォームに「焼入れ」を施すことで、溶融金属フィルタの生成に好適な材料を得る技術が記載されている。「焼入れ」を施した網状化フォームは、従来の熱網状化フォームよりも親水性が向上する。しかし、「焼入れ」処理は、熱網状化処理よりも費用がかかり、また、焼入れ処理により製造したフォームは、熱網状化フォームと比較して、その性能が劣る。
【0012】
欧州特許第0412673号には、ポリウレタンフォームに、バインダ含有セラミック材料の水性スラリーを含浸させる技術が記載されている。上記スラリー含浸フォームは乾燥させて水分を除去する。乾燥後の含浸フォームを焼成して有機フォームを焼失させることで、セラミックフィルタを残存させる。
【0013】
欧州特許第0649334号には同様の方法が記載されている。この方法では、ポリウレタンフォーム等の有機フォームを用いて、溶融金属、特に軽金属用セラミックフィルタを製造する。
【0014】
また、米国特許第7,963,402号には、セラミックスラリーと長さが0.1〜5.0mmの繊維を含浸させた有機プラスチックフォームから溶融金属フィルタを形成することが記載されている。
【0015】
米国特許第2,360,929号と、第2,752,258号と、第3,947,363号と、第5,456,833号と、第5,045,511号には、溶融金属に用いるセラミックフィルタの製造に関して、有機フォーム前駆体を用いてフィルタを製造することが付記されている。
【0016】
米国特許第6,203,593号には、溶融金属の濾過用セラミックフィルタの生成に、網状化ポリウレタンフォームを用いることが記載されている。
【0017】
米国特許第4,866,011号には、フォームの可撓性と含浸性を向上させるために粘着剤を添加した、可撓性を有する疎水性フォーム材料を用いてセラミックフィルタを形成することが、記載されている。
【0018】
米国特許第4,342,664号と、第4,056,586号と、第4,265,659号には、5〜100ppiの構造を有する親水性ポリウレタンフォームを用いたセラミックフィルタの形成が記載されている。
【0019】
米国特許第4,024,212号と第4,075,303号には、ポリエステルポリウレタンフォーム前駆体を用いたセラミックフィルタの形成が記載されている。
【0020】
上記各文献に鑑みて、親水性を有する熱網状化ポリウレタンフォームを用いた溶融金属フィルタの形成には、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第3,861,993号
【特許文献2】米国特許第3,889,417号
【特許文献3】米国特許第3,833,386号
【特許文献4】米国特許出願第2006/0284351号
【特許文献5】欧州特許第0412673号
【特許文献6】欧州特許第0649334号
【特許文献7】米国特許第7,963,402号
【特許文献8】米国特許第2,360,929号
【特許文献9】米国特許第2,752,258号
【特許文献10】米国特許第3,947,363号
【特許文献11】米国特許第5,456,833号
【特許文献12】米国特許第5,045,511号
【特許文献13】米国特許第6,203,593号
【特許文献14】米国特許第4,866,011号
【特許文献15】米国特許第4,342,664号
【特許文献16】米国特許第4,056,586号
【特許文献17】米国特許第4,265,659号
【特許文献18】米国特許第4,024,212号
【特許文献19】米国特許第4,075,303号
【発明の概要】
【0022】
本発明は、先行技術における1つ以上の問題点の解決を図るものである。
【0023】
一実施形態では、本発明により、90〜110重量部のポリエステルポリオールと、0.9〜1.1重量部のエステル界面活性剤と、3〜20重量部の親水性界面活性剤と、1.89〜2.31重量部のポリウレタン触媒と、0.126〜0.154重量部のアミン触媒と、3.348〜4.092重量部の水と、46.98〜57.42重量部のトルエンジイソシアネートから形成する、親水性ポリウレタンフォームが提供される。上記ポリウレタンは、約5分以下の時間内に水を吸収可能である。また、上記フォームは、溶融金属フィルタ形成の前駆体である。
【0024】
他の各実施形態では、上記フォームは、3〜15重量部、3〜10重量部、4〜9重量部、5〜8重量部、または、6〜7重量部の親水性界面活性剤を含んでもよい。
【0025】
上記フォームは網状化されてもよい。その場合、上記フォームは熱により網状化されてもよい。
【0026】
一実施形態では、上記フォーム中のトルエンジイソシアネートは、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートから成る、少なくとも2つの異性体を含んでもよいことが企図される。
【0027】
別の実施形態では、上記フォームは、95〜105重量部のポリエステルポリオールと、0.95〜1.05重量部のエステル界面活性剤と、2.00〜2.21重量部のポリウレタン触媒と、0.133〜0.147重量部のアミン触媒と、3.534〜3.906重量部の水と、49.60〜54.82重量部のトルエンジイソシアネートを含んでもよい。
【0028】
さらに、上記フォームは、98〜102重量部のポリエステルポリオールと、0.98〜1.02重量部のエステル界面活性剤と、2.06〜2.14重量部のポリウレタン触媒と、0.137〜0.143重量部のアミン触媒と、3.646〜3.794重量部の水と、51.16〜53.24重量部のトルエンジイソシアネートを含んでもよいことが企図される。
【0029】
別の実施形態では、上記フォームは、99〜101重量部のポリエステルポリオールと、0.99〜1.01重量部のエステル界面活性剤と、2.08〜2.12重量部のポリウレタン触媒と、0.139〜0.141重量部のアミン触媒と、3.683〜3.757重量部の水と、51.68〜52.72重量部のトルエンジイソシアネートを含んでもよい。
【0030】
さらに、上記親水性界面活性剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサンであってもよいことが企図される。
【0031】
一実施形態では、上記親水性界面活性剤は、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、a−メチル−w−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ−]ジシロキサニル]プロポキシ]と、ジシロキサン、ヘキサメチルを含んでもよい。
【0032】
上記フォームは、約2〜100ppi、2〜70ppi、5〜35ppi、および/または10〜30ppiの密度で孔を有するウェブを形成することが可能である。
【0033】
上記吸水時間は、約4分未満、約3分未満、約2分未満、および/または、約1分未満であってもよいことが企図される。
【0034】
さらに、上記フォームは、約1.2〜3lb/ft3(0.019〜0.048g/cm3)の密度を有してもよい。または、上記フォームは、約1.4〜1.9lb/ft3(0.022〜0.030g/cm3)の密度を有してもよい。さらに、上記フォームは、約1.8lb/ft3(「pcf」)(0.0288g/cm3)の密度を有してもよいことが企図される。
【0035】
本発明のさらなる有利な特徴は、以下に述べる内容から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付図面を用いることなく、本発明を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、セラミックスラリーによる湿潤後の溶融金属フィルタの形成に好適な孔径を実現する、親水性を有する熱網状化ポリウレタンフォームに関する。このポリウレタンフォームにより、セラミックスラリー等のスラリーによって湿潤して、溶融金属の濾過に好適なセラミックフィルタを形成するウェブまたは構造体が形成される。
【0038】
特定の一実施形態では、本発明のポリウレタンフォームは、該フォームが約5分未満の時間内に湿潤(または水を吸収)が可能である密度、または、孔径を実現する。別の実施形態では、本発明により、約4分未満の時間内に湿潤するポリウレタンフォームが提供される。別の実施形態では、本発明には、約3分未満の時間内に水を吸収するポリウレタンフォームが含まれる。別の実施形態では、約2分未満の時間内に湿潤するポリウレタンフォームが含まれる。また、本発明には、ポリウレタンフォームが約1分未満の時間内に水を吸収する実施形態も含まれる。特に具体的に、本発明のポリウレタンフォームは、約38秒以内に湿潤する。
【0039】
本発明のポリウレタンフォームの湿潤性により、溶融金属フィルタの製造が容易になる。まず、湿潤化に際して、ポリウレタンフォームは、その網状化構造の孔へ、水性セラミックスラリーを十分に取り込む(受け入れる)。次に、ポリウレタンフォームが比較的短時間でセラミックスラリーにより湿潤可能であるため、製造工程が適宜短い時間間隔内に行われ、これにより、利点の中でも特に、製造工程の商業効率を向上させる。
【0040】
一実施形態では、本発明の親水性ポリウレタンフォームは、熱による網状化処理を介して製造されるが、熱網状化処理は、本発明の実施に不可欠ではない。当業者には明らかであるが、フォームの網状化は他の方法や工程で行ってもよい。
【0041】
一実施形態では、界面活性剤(例えば、親水性界面活性剤)を、約3〜20重量部(または「pbw」)の濃度で用いて、上記フォームを生成することが企図される。一変形例では、本発明は、界面活性剤を、約3〜15重量部の濃度で用いることで達成される。さらに、本発明のフォームは、界面活性剤を、約3〜10重量部の濃度で用いて生成してもよい。より具体的には、フォームは、界面活性剤を、約4〜9重量部の濃度で用いて生成してもよい。さらに、本発明のフォームは、界面活性剤を、約5〜8重量部の濃度で用いて製造してもよい。最後に、本発明のフォームは、変形例の中でも特に、界面活性剤を、約6〜7重量部、約6重量部、または約7重量部の濃度で用いて製造してもよいことが企図される。上記各例における界面活性剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサン等の化合物であってもよい。当業者には明らかであるが、異なる種類の界面活性剤を含む上記以外の添加剤を、代わりに用いてもよい。
【0042】
本発明において、「界面活性剤」という用語は広義で用いられ、当業者が理解し得る広範囲の物質を含むことが意図される。本発明範囲の理解を促すために、界面活性剤を以下に定義する。界面活性剤は、液体の表面張力、2液体の境界面の表面張力、または、液体と固体の間の表面張力を低下させる化合物(または一群の化合物)である。界面活性剤は、溶剤、湿潤剤、乳化剤、起泡剤、および分散剤として作用してもよい。通常、界面活性剤は、両親媒性である有機化合物であり、すなわち、疎水基(末端)と親水基(先端)の両方を含有している。したがって、界面活性剤は、水不溶性(または油溶性)成分と水溶性成分の両方含有している。水を油と混ぜる場合、界面活性剤は水中で拡散し、空気と水の境界面、または、油と水の境界面に吸着する。不溶性疎水基は、凝集水相から気相または油相へと延び、一方、水溶性先端基は水相に留まる。界面活性剤の表面におけるこの配向によって、水と空気の境界面、または、水と油の境界面での水の表面特性が改質される。
【0043】
界面活性剤の使用に関して、従来のフォームでは、一般的に、0.5〜1.5重量部以下で界面活性剤が用いられている。これから明らかなように、界面活性剤を3〜20重量部の濃度で含むということは、本発明のポリウレタンフォームでは、従来のフォームの2倍から40倍を上回る量の界面活性剤を用いることになる。
【0044】
孔径に関して、本発明のフォームは、約2〜100ppi(1インチ)当たりの孔数)の孔径を有する。別の実施形態では、本発明によるフォームの孔径は、約70ppi未満である。一実施形態では、上記孔径は約2〜70ppiである。別の実施形態では、上記孔径は約2〜50ppiである。さらに別の実施形態では、上記孔径は約5〜35ppiである。さらに、上記孔径は約10〜30ppiであってもよい。一実施形態における好ましい孔径は約25ppiである。
【0045】
本発明のフォームに関して、該フォームは、1立方フィート当たり約1.2〜3ポンド(lb/ft3)(0.019〜0.048g/cm3)の密度を有することが企図される。特定の一実施形態では、該フォームは、約1.4〜1.9lb/ft3)(0.022〜0.030g/cm3)の密度を有することが企図される。さらに、該フォームは、約1.8lb/ft3(0.0288g/cm3)の密度を有してもよい。これは、通常、6lb/ft3(0.096g/cm3)以上の密度を有する先行技術のフォームと比較すると、格段に低い。
【0046】
この点において、本発明のフォームの密度は、先行技術から大きく飛躍を遂げている。具体的には、先行技術では、プレポリマー技術を用いて、本発明のような低密度のフォームを生成することは不可能である。上述したように、プレポリマー技術を用いて生成したフォームは、その密度が、6lb/ft3(0.096kg/cm3)以上であり、これは、本発明によるフォームの密度よりかなり高い。具体的には、先行技術のフォームでは、その密度が、本発明によるフォームの2倍以上大きい。
【0047】
上述したように、本発明では、そのフォームを、HPH2として知られる界面活性剤(本明細書では親水性界面活性剤とも呼ぶ)を用いて生成することが企図される。
【0048】
HPH2は、Evonik Goldschmidt社(所在地:914 East Randolph Road,Hopewell,Virginia 23860,United States of America)が、「Ortegol HPH2」(本明細書では「HPH2」と呼ぶ)の商品名で販売する、ポリエーテル変性ポリシロキサンである。
【0049】
該化合物の2011年10月12日付け材料仕様書(その全内容が、ここに参考文献として援用される)によると、HPH2は下記の2種類の主要成分を含有している。(1)ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、a−メチル−w−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ−]ジシロキサニル]プロポキシ]を75%より高い濃度で含有。(2)ジシロキサン、ヘキサメチルを0.1%未満の濃度で含有。HPH2は、TAGCC法の測定によると、200(F(93.33(C)より高い引火点を有する。HPH2は、黄色または茶系色をした、クラスIIIBの可燃性液体である。HPH2は水溶性である。HPH2は、40g/lの水および20(Cの温度で4.5〜6.8のpHを有する。また、HPH2は、体積当たりの重量が8.41lb/gal(1.00774g/cc)と報告されており、25(Cで、11〜24mPA.sの動的粘度を有している。
【0050】
以下に示す表に、「例1」、「例2」、「例3」として、本発明によるフォームの企図される組成例を3つ示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、先行技術によるフォームとの比較も示す。
【表1】
【0051】
参考として、上述の略字はそれぞれ下記の材料を指す。
(1)「2C−76」ポリエステルポリオール、OHV=60、Chemtura社が販売(所在地:199 Benson Road,Middlebury,Connecticut 06749,United States of America)
(2)「B8330」従来のエスエル界面活性剤、Evonik社が販売
(3)「HPH2」親水性界面活性剤、Evonik社が販売(上述参照)
(4)「M−75」(アミン)触媒、Huntsman社が販売(所在地:10003 Woodloch Forest Drive,The Woodlands,Texas 77380,United States of America)
(5)「B−16」(アミン)触媒、Air Products社が販売(所在地:7201 Hamilton Blvd.,Allentown,Pennsylvania 18195−1501,United States of America)
(6)「T−80」、「T−65」トルエンジイソシアネート、Bayer社が販売(所在地:100 Bayer Road,Building 4,Pittsburg,Pennsylvania 15205−9741,United States of America)。
但し、これらの化合物は本発明を限定するものではない。
【0052】
表♯1に列記する各比率は、具体的な単位の定めが別途ない限り、重量比(部)である。表♯1から明らかなように、4種類の組成物において唯一数値が異なっているのは、例♯1〜例♯3における、HPH2の添加である。HPH2によって、フォームの吸収速度が、7時間超から1分未満まで短くなっている。上述したように、吸収時間が短くなると、製造工程が迅速化する。
【0053】
例♯1〜例♯3に関して、以下に追加情報を述べる。
【0054】
C2−76は、Chemtura社が「Fomrez 2C76」の商品名で販売するポリマー樹脂である(以下、「C2−76」と呼ぶ)。該化合物の2013年11月4日付け物質安全データシート(その全内容が、ここに参考文献として援用される)によると、2012年7月30日を改訂日とし、2C−76は、379(F(193(C)より高い引火点を有するポリマーである。
【0055】
B8330は、ポリエーテル変性ポリシロキサンと界面活性剤の混合物であり、上述したEvonik社が「Tegostab B 8330」(以下、「B8330」と呼ぶ)の商品名で販売している。該物質の物質安全データシート(2006年12月8日付け、2007年12月7日を改訂日とし、その全内容が、ここに参考文献として援用される)によると、「B8330」は、以下の3種類の成分を含有する暗褐色の液体である。
(1)プロパノール、オキシ−ビスを31.5%の濃度で含有。
(2)シロキサン、シリコーン、Di−Me、3−ヒドロキシプロピルMe、ポリエチレングリコールモノ−Meエーテルを含むエーテル系溶剤を19.75%の濃度で含有。
(3)蒸留液、石油、水素処理軽ナフテンを8.32〜9.36%の濃度で含有。B8330は、207(F(97.22(C)の引火点を有するクラスIIIBの可燃性液体である。B8330は、DIN51757法の測定によると、77(F(25(C)で、0.98〜1.02g/ccの密度を有する。B8330は、25(Cで水溶性であり、40g/lの水および25(Cの温度で4〜7のpHを有し、DIN53015(ヘプラー)法の測定では、25(Cで100〜300mPa.sの動的粘度を有している。
【0056】
該材料の製品シート(2012年公開番号140−11−078−GLB、その全内容が、ここに参考文献として援用される)によると、商品名を「Dabco B−16 Catalyst」とするB−16触媒は、アミン触媒である。B−16は、25(Cで0.80g/ccの比重と、25(Cで9mPa.sの粘度と、39.5(Cの引火点を有する、淡黄色の液体である。
【0057】
その2009年11月9日付け物質安全データシート(その全内容が、参照することによりここに援用される)によると、M−75は商品名「Jeffcat M 75」(以降、「M−75」と呼ぶ)で販売されている、液状ポリウレタン触媒である。M−75は3種類の成分を含有している。
(1)N−ブチルモルホリンを60〜100%の濃度で含有。
(2)ジエチレングリコールモノブチルエーテルを13〜30%の濃度で含有。
(3)N,N’−ジメチルピペラジンを3〜10%の濃度で含有。M−75は、125.6(F(52(C)の引火点を有する(密閉式)。M−75は、比重が0.9であり、動粘性率が0.2cm2/s未満である(40(Cで<20cSt)。
【0058】
該材料の製品シート(その全内容が、参照することによりここに援用される))によると、T−80は、Bayer社が商標名「Desmodur T 80」(以下、「T−80と呼ぶ」)で販売している材料である。T−80は、2,4−トルエンジイソシアネートと、2,6トルエンジイソシアネートの2つの異性体を80:20の割合で含有する混合物である。その製品シートによると、上記2,4−異性体の含有率は、79.5〜81.5重量%である。加水分解性塩素の含有率は、0.01重量%以下である。酸性度は、0.004重量%以下である。T−80は、25(Cで1.22g/ccの密度(DIN51757)、また、25(Cで約3mPa.sの密度(DIN53015)を有する、無色から淡色の液体である。T−80の引火点は127(Cである(DIN51758)。
【0059】
該材料の2011年5月10日付け製品シート(その全内容が、参照することによりここに援用される)によると、T−65は、Bayer社が商標名「Desmodur T 65 N」(以降、「T−65と呼ぶ」)で販売している材料である。T−65は、2,4−トルエンジイソシアネートと、2,6トルエンジイソシアネートの2つの異性体の混合物である。その製品シートによると、上記2,4−異性体の含有率は、66〜68重量%である。加水分解性塩素の含有量は、100mg/kg以下である。酸性度は、40mg/kg以下である。T−65は、25(Cで1.22g/ccの密度(DIN51757)、また、25(Cで約3mPa.sの密度(DIN53015)を有する、無色から淡色の液体である。T−65の引火点は127(Cである(DIN51758)。トルエンジイソシアネート製剤は他の商品名でも販売されており、これらも本発明に好適と考えられる。
【0060】
また、上記T−65は、Bayer社が商標名「Mondur TD−65」で販売する材料であってもよい。このメーカの2013年9月19日付け物質安全データシート(その全内容が、参照することによりここに援用される)によると、このT−65の代替品には、2,4−トルエンジイソシアネートが60〜100重量%、2,6−トルエンジイソシアネートが30〜40重量%含まれる。該T−65の代替品は、凝固点が10(C(50(F)、沸点が1,013hPaで251.67〜253.89(C(485.01〜489(F)、引火点が128(C(262.4(F)(DIN51758)、密度が20(C(68(F)で1.22g/cm3(DIN51757)、比重が20(C(68(°F)で1.22である、無色から淡黄色の液体である。
【0061】
表♯1に示すように、上述への捕捉説明として、いくつかの実施形態では、本発明のフォームは、約1.8pcf(立方フィート当たりのポンド、またはlb/ft3)(0.0288g/ccまたはg/cm3)の密度を有してもよい。さらに、該フォームは、上記密度の±10%以内の密度を有してもよい。言い換えれば、本発明のフォームの各実施形態では、フォーム密度が約1.6〜2.0pcf(0.0256〜0.320g/cc)であることを企図する。これとは別に、該フォームは1.8pcf(0.0288g/cc)の±5%以内の密度を有してもよいことが企図される。このような例示によれば、該フォームは、約1.7〜1.9pcf(0.0272〜0.0304g/cc)の密度を有することが企図される。さらに、本発明によるフォームの密度は、約1.8pcf(0.0288g/cc)から±約2%の範囲内で前後してもよいことが企図される。その場合、上記密度は、約1.76〜1.84pcf(0.0282〜0.0295g/cc)の範囲内で変化してもよいことが企図される。
【0062】
表♯1にも示すように、本発明では、そのフォームが、約40ppiの孔径を有することが企図される。広範囲に渡る孔径について上述したが、表♯1に列記する各数値に関して、孔径は上記から約±10%以内、つまり約35〜45ppiであってよいことが企図される。これとは別に、本発明によるフォームの密度は、40ppiから約±5%の範囲内で変化してもよい。このため、本発明によるフォームは、約38〜42ppiの孔隙密度にしてもよいことが企図される。さらに、孔隙密度は、本発明の範囲を逸脱することなく、約39〜41ppiの範囲内で変化してもよいことが企図される。
【0063】
表♯1に列記する個々の化合物に関して、これら化合物の比率は、本発明の範囲を逸脱することなく、列記した量から変化させてもよいことが企図される。特に、各化合物の比率は、表に記載した比率から、約±10%、±5%、±2%、または、±1%の範囲内で変化させてもよい。
【0064】
これらの変更例を想定すると、2C−76の比率は、本発明の範囲を逸脱することなく、約90〜110重量部、95〜105重量部、98〜102重量部、または、99〜101重量部と、変化させてもよい。同様に、B8330は、本発明の範囲を逸脱することなく、約0.9〜1.1重量部、0.95〜1.05重量部、0.98〜1.02重量部、または、0.99〜1.01重量部と、変化させてもよい。また、M−75の比率は、本発明の範囲を逸脱することなく、約1.89〜2.31重量部、2.00〜2.21重量部、2.06〜2.14重量部、または、2.08〜2.12重量部と、変化させてもよい。次に、B−16の比率は、本発明の範囲を逸脱することなく、約0.126〜0.154重量部、0.133〜0.147重量部、0.137〜0.143重量部、または、0.139〜0.141重量部の範囲内で、変化させてもよいことが企図される。上記混合物内の水の比率は、本発明の範囲を逸脱することなく、約3.348〜4.092重量部、3.534〜3.906重量部、3.646〜3.794重量部、または、3.683〜3.757重量部の範囲内で変化させてもよい。最後に、引き続き表♯1を参照して、T−80とT−65の比率は、本発明の範囲を逸脱することなく、約23.49〜28.71重量部、24.80〜27.41重量部、25.58〜26.62重量部、または、25.84〜26.36重量部と、変化させてもよい。
【0065】
本発明の親水性ポリウレタンフォームを製造するには、例♯1〜例♯3に列記した含有成分を、指定した比率、または、指定した比率の範囲内で、混ぜ合わせる。これら成分により生成したフォームは、その後、熱により(または、他の網状化処理を介して)網状化させることで、開放セル構造が形成される。
【0066】
セラミックフィルタ構造を形成するには、上記指定時間内で、網状化フォームをセラミックスラリーで湿潤させる。フォームは、セラミックスラリーで湿潤された後、セラミックスラリーが固体セラミック構造へ遷移し、フォームが焼失するまで、(焼成炉において)焼成される。当業者にとっては明らかであるが、焼成の温度や時間は各変数値によって変わる。各変数値には、限定はされないが、セラミックスラリーを含浸させたフォームの厚みも含まれる。焼成後、セラミックフィルタは、ポリウレタンフォームの網状化構造を有し、溶融金属や他の好適な液体の濾過を目的とした用途に用いることができる。
【0067】
当業者にとっては明らかであるが、本発明は、上述した材料や各記載事項に限定することを意図したものではない。それに反して、これまで本発明について述べた内容を理解したうえで、当業者であれば、数多くの変形例や均等物があることを理解できるはずである。本発明には、これら変形例や均等物も包含することが企図される。
【国際調査報告】