(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-537225(P2015-537225A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】時計の香箱
(51)【国際特許分類】
G04B 1/14 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
G04B1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-546908(P2015-546908)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(85)【翻訳文提出日】2015年6月16日
(86)【国際出願番号】EP2013071989
(87)【国際公開番号】WO2014095126
(87)【国際公開日】20140626
(31)【優先権主張番号】12197746.6
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ケラン,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴァル,アルテュール
(72)【発明者】
【氏名】ヴォテロ,マルタン
(57)【要約】
枢動駆動手段(42)を備える真(3)に角穴車を嵌め込むための軸方向通路(20)を含む、香箱(1)を巻き上げるための角穴車(2)。
上記角穴車(2)は、上記軸方向通路(20)内に、上記角穴車(2)の上記真(3)への嵌め込みを可能とし、かつ上記枢動駆動手段(42)に支承力を印加する、ストリップばね(230)を含み、上記少なくとも1つのストリップばね(230)は、上記真(3)を枢動駆動するための相補的駆動手段(23)を形成する。
少なくとも1つのゼンマイ(7)を含み、地板(9)と受け(5)との間に枢動可能に設置される、時計の香箱(1)。このゼンマイ(7)は、枢動ドラム(6)と蓋(8)との間に収容され、外端を上記ドラム(6)に、内端を真(3)に引っかけられ、上記真は、枢軸(D)の周りで上記角穴車(2)と一体として枢動するよう設置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真(3)及び時計の香箱(1)を巻き上げるための角穴車(2)を含む、時計のための真‐角穴車組立体であって、
前記角穴車(2)は、凸状又は凹状の枢動駆動手段(42)を含む前記真(3)に前記角穴車を嵌め込むための軸方向通路(20)を含む、真‐角穴車組立体において、
前記角穴車(2)は前記軸方向通路(20)内に、前記角穴車(2)の前記真(3)への嵌め込みを可能とし、かつ前記枢動駆動手段(42)に支承力を印加するよう配設された、少なくとも1つのストリップばね(230)を含み、
前記少なくとも1つのストリップばね(230)は、前記真(3)を枢動駆動するための相補的駆動手段(23)を形成する
ことを特徴とする、真‐角穴車組立体。
【請求項2】
前記角穴車(2)は、前記ストリップばね(230)それぞれについて、前記軸方向通路(20)へと開いているスロット(231)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の真‐角穴車組立体。
【請求項3】
前記角穴車(2)は、地板又は受け又は宝石に対する前記角穴車(2)の移動を制限するための、少なくとも1つの上側当接隅肉(24)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の真‐角穴車組立体。
【請求項4】
前記角穴車(2)は、前記軸方向通路(20)の直近に、ドラム又は香箱コアに対する前記角穴車(2)の移動を制限するための、少なくとも1つの下側当接隅肉(25)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の真‐角穴車組立体。
【請求項5】
地板(9)と受け(5)との間に枢動可能に設置され、少なくとも1つのゼンマイ(7)を含み、請求項1〜4のいずれか1項に記載の真‐角穴車組立体を含む、時計の香箱(1)であって、
前記ゼンマイ(7)は、枢動ドラム(6)と蓋(8)との間に収容され、外端を前記ドラム(6)に、内端を前記真‐角穴車組立の前記真(3)に引っかけられ、
前記真(3)は、枢軸(D)の周りで、前記真‐角穴車組立体の角穴車(2)と一体として枢動するよう設置される、時計の香箱(1)であって、
前記真(3)は、前記枢軸(D)に沿った円筒形ドラム要素(31)の周りに、前記ゼンマイ(7)を引っかけるための凸状のフック(32)と、前記角穴車(2)が備える相補的駆動手段(23)と協働して前記角穴車(2)を枢動駆動する、凸状又は凹状の枢動駆動手段(42)とを含むことを特徴とする、時計の香箱(1)。
【請求項6】
前記枢動駆動手段(42)は、前記枢軸(D)に沿った前記角穴車(2)のための軸方向停止部材を形成すること;
前記真(3)は上側肩部(13)において、前記受け(5)の又は前記受け(5)が備える宝石(52)の孔(51)内で枢動すること;
前記角穴車(2)は、上側当接隅肉(24)を含み、前記上側当接隅肉(24)の移動は、前記受け(5)の又は前記宝石(52)の下面(53)によって制限され、前記角穴車(2)は、前記受け(5)と前記角穴車(2)の下面(22)の反対側の前記ドラム(6)の上面(61)との間に設けられること;及び
前記ドラム(6)は、前記ドラム(6)が備える孔(62)において、前記円筒形ドラム要素(31)上で枢動すること
を特徴とする、請求項5に記載の香箱(1)。
【請求項7】
前記ゼンマイ(7)は、前記枢軸(D)の軸方向に、前記ドラム(6)の内面(65)上で支承されるよう配設された凸状の上側部分(71)と、前記蓋(8)の上側部分(85)上で支承されるよう配設された凸状の下側部分(72)とを含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の香箱(1)。
【請求項8】
前記ドラム(6)は、前記ドラム(6)と一体として枢動する前記蓋(8)を備え、前記蓋(8)の孔(81)は前記真(3)の前記円筒形ドラム要素(31)と協働すること;及び
前記蓋(8)の下面(82)の移動は、前記地板(9)の又は前記地板(9)に収容される宝石(92)の上面(93)によって制限され、前記地板(9)の又は前記宝石(92)の孔(91)は、前記真(3)の前記円筒形ドラム要素(31)のためのピボットとして作用すること
を特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の香箱(1)。
【請求項9】
前記ドラム(6)のぐらつきは、前記ドラム(6)の前記上面(61)によって前記角穴車(2)に対して下向きに制限され、前記ドラム(6)の前記上面(61)は、前記角穴車(2)の前記下面(22)によって制限されること;
前記角穴車(2)のぐらつきは、前記角穴車(2)の前記隅肉(24)によって前記受け(5)に対して下向きに制限され、前記角穴車(2)の前記隅肉(24)は、前記受け(5)の又は前記受け(5)が備える前記宝石(52)の前記下面(53)によって制限されること;及び
前記蓋(8)のぐらつきは、前記蓋(8)の前記下面(82)によって前記地板(9)に対して上向きに制限され、前記蓋(8)の前記下面(82)は、前記地板(9)又は前記地板が備える前記宝石(92)の前記上面(93)によって制限されること
を特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の香箱(1)。
【請求項10】
前記ゼンマイ(7)は、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロム系合金で作製されること;
前記ゼンマイ(7)は3〜23の幅厚比を有すること;及び
前記真(3)のゼンマイ支承用肩部(31)の最大半径と前記ゼンマイ(7)の厚さとの比は3〜9であること
を特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の香箱(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの地板(9)、受け(5)、請求項5〜10に記載の香箱(1)を含む、時計ムーブメント(100)。
【請求項12】
前記受け(5)は上側停止プレート(56)を含み、前記上側停止プレート(56)の下面(57)は前記真(3)の軸方向移動を制限するよう配設されること;及び
前記地板(9)は下側停止プレート(96)を含み、前記下側停止プレート(96)の上面(97)は前記真(3)の軸方向移動を制限するよう配設されること
を特徴とする、請求項11に記載のムーブメント(100)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のムーブメント(100)を含む、腕時計(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真及び時計の香箱を巻き上げるための角穴車を含む、時計のための真‐角穴車組立体に関し、上記角穴車は、凸状又は凹状の枢動駆動手段を含む上記真に上記角穴車を嵌め込むための軸方向通路を含む。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つのゼンマイを含み、時計の地板と受けとの間に枢動可能に設置され、このタイプの真‐角穴車組立体を含む、香箱にも関し、上記少なくとも1つのゼンマイは、枢動ドラムと蓋との間に収容され、また上記ゼンマイはその外端を上記ドラムに、その内端を上記真‐角穴車組立体の真に引っかけられ、上記真は、枢軸の周りで上記真‐角穴車組立体の上記角穴車と一体として枢動する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1つの地板、受け、上述のタイプの香箱を含む、時計ムーブメントにも関する。
【0004】
本発明はまた、上述のタイプのムーブメントを含む腕時計にも関する。
【0005】
本発明は時計機構の分野に関し、より具体的には主ゼンマイ香箱、時打ち香箱又は同様のタイプの香箱のエネルギ貯蔵機構に関する。
【背景技術】
【0006】
概ね円筒形である真又はより中実な突起で形成されたコアに内端が固定された主ゼンマイの回転数を増大させることによって、パワーリザーブを増大させるための1つの解決策は、香箱真の直径及び上記関連する突起の直径を低減して、ドラム内部のゼンマイのために利用可能な空間を増大させることからなる。
【0007】
ゼンマイの厚さに対するコアの半径の比は通常10〜20であり、本発明は、この比を10以下、好ましくは5〜10の範囲内にまで低減することを提案する。
【0008】
サイズ設定は小さすぎてはならない。コアの直径が小さすぎると、破損のリスクがある。
【0009】
従来の香箱の構造において、角穴車は四角形部分を介して香箱真又はコアに軸方向に設置され、角穴車は通常軸方向のねじによって固定される。よってこのねじ及び四角形部分の寸法は、枢動肩部の最小直径を画定する。枢動肩部に連結される段差部は、地板又は宝石若しくは同様の要素を支持する受けに対する、香箱真又はコアのぐらつき(endshake)を制限する。
【0010】
特に、全ての寸法を単に削減するだけでは十分でない。というのは、これにより材料の断面が耐疲労性を保証するには不十分なものとなるためである。
【0011】
従って問題は、できる限り大きいパワーリザーブを可能とするために、できる限り小さい直径と角穴車駆動装置の剛性との折り合いを付けることである。
【0012】
よってできる限り小さい真の直径によって、角穴車が伝達するトルクを受け渡すことができるような、角穴車及び真を有する香箱を考案する必要がある。
【0013】
ETAによる特許文献1は、ドラム要素を有する非円筒形の真を有する香箱を開示しており、ゼンマイを引っかけるフックは、ドラム要素の上側及び下側肩部が画定する幾何学的円筒によって範囲を定められた陥凹部に収容される。
【0014】
SOCIETE ODOによる非特許文献1は、ゼンマイを引っかけるためのフックを支持する管を備える、非円筒形の真を有する香箱を開示している。この真はサークリップのための肩部及び溝を含む。
【0015】
ERICKSONによる特許文献2は、ゼンマイを引っかけるためのフックを支持するコアを備える、長方形部分と呼ばれるファセット加工された部分を含む、非円筒形の真を開示している。
【0016】
BAUMGARTNERによる特許文献3は、香箱コアを支持するスリットスリーブを有する香箱を開示している。
【0017】
DANASINOによる特許文献4は、断面がドラムの外部から内部に向かって次第に増大するゼンマイを有する、香箱を開示している。
【0018】
GLASHUETTER UHRENBETRIEBによる特許文献5は、香箱真の軸方向移動を制限するカバープレートを有する、香箱を開示している。
【0019】
ETAによる特許文献6は、ゼンマイを引っかけるための長手方向溝を含む、単一部品の真を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】仏国特許第2329000A1号
【特許文献2】米国特許第730103A号
【特許文献3】仏国特許第2135134A1号
【特許文献4】スイス特許第15286A号
【特許文献5】仏国特許第1443494A号
【特許文献6】仏国特許第2210784A1号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】XP001219052A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、低減された数の構成部品、許容可能な機械加工コスト、又は好ましくは公知の香箱よりも経済的なコストを維持しながら、特に角穴車に関して高いレベルの剛性を得ることにより、大きなパワーリザーブのために考案された公知の香箱の設計を改良することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
従って本発明は、真及び時計の香箱を巻き上げるための角穴車を含む、時計の真‐角穴車組立体に関し、上記角穴車は、凸状又は凹状の枢動駆動手段を含む上記真に上記角穴車を嵌め込むための軸方向通路を含む。上記角穴車は、上記角穴車が上記軸方向通路内に、上記角穴車の上記真への嵌め込みを可能とし、かつ上記枢動駆動手段に支承力を印加するよう配設された少なくとも1つのストリップばねを含み、上記少なくとも1つのストリップばねは、上記真を枢動駆動するための相補的駆動手段を形成することを特徴とする。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1つのゼンマイを含み、時計の地板と受けとの間に枢動可能に設置され、このタイプの真‐角穴車組立体を含む、香箱にも関し、上記少なくとも1つのゼンマイは、枢動ドラムと蓋との間に収容され、また上記ゼンマイはその外端を上記ドラムに、その内端を上記真‐角穴車組立体の上記真に引っかけられ、上記真‐角穴車組立体の上記真は、枢軸の周りで上述のような角穴車と一体として枢動する。この時計の香箱は、上記真が、上記枢軸に沿った円筒形ドラム要素の周りに、上記ゼンマイを引っかけるための凸状のフックと、上記角穴車が備える相補的駆動手段と協働して上記角穴車を枢動駆動する、凸状又は凹状の枢動駆動手段とを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の特徴によると、上記枢動駆動手段は、上記枢軸に沿った上記角穴車のための軸方向停止部材を形成し、上記真はその上側肩部において、上記受けの又は上記受けが備える宝石の孔内で枢動し、上記角穴車は、上記受け5の又は上記宝石の下面によって移動を制限される上側当接隅肉を含み、上記角穴車は、上記受けと上記角穴車の下面の反対側に上記ドラムが備える上面との間に設けられ、上記ドラムは、上記ドラムが備える孔において、上記円筒形ドラム要素上で枢動する。
【0026】
特定の変形例における本発明の特徴によると、上記ゼンマイは、上記枢軸の軸方向に、上記ドラムの内面上で支持されるよう配設された凸状の上側部分と、上記蓋の上側部分上で支持されるよう配設された凸状の下側部分とを含む。
【0027】
本発明のある特徴によると、上記ドラムのぐらつきは、上記ドラムの上面によって上記角穴車に対して下向きに制限され、上記ドラムの上面は、上記角穴車の下面によって制限され、上記角穴車のぐらつきは、上記角穴車の隅肉によって上記受けに対して下向きに制限され、上記角穴車の隅肉は、上記受けの又は上記受けが備える宝石の下面によって制限され、上記蓋のぐらつきは、上記蓋の下面によって上記地板に対して上向きに制限され、上記蓋の下面は、上記地板の又は上記地板が備える宝石の上面によって制限される。
【0028】
本発明の更に別の特徴によると、上記ゼンマイは、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロム系合金で作製され、上記ゼンマイは3〜23の幅厚比を有し、上記真のゼンマイ支承用肩部の最大半径と上記ゼンマイの厚さとの比は3〜9である。
【0029】
本発明はまた、少なくとも1つの地板、受け、上述のタイプの香箱を含む、時計ムーブメントにも関する。
【0030】
特定の変形例における本発明の特徴によると、上記受けは上側停止プレートを含み、上記上側停止プレートの下面は上記真の軸方向移動を制限するよう配設され、また上記地板は下側停止プレートを含み、上記下側停止プレートの上面は上記真の軸方向移動を制限するよう配設される。
【0031】
本発明はまた、上述のタイプのムーブメントを含む腕時計にも関する。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の第1の変形例による香箱の、枢軸を通る概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の変形例による香箱の、枢軸が通る概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明による香箱を含むムーブメントを含む時計のブロック図である。
【
図4】
図4は、(角穴車の正中面における断面図で示されている)真が備える平坦な駆動部分と協働する位置において示されているストリップばねを備える、本発明による角穴車の概略上面図である。
【
図5】
図5は、
図4の角穴車の枢軸を通る平面A−Aにおける、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は時計機構の分野に関し、より具体的には主ゼンマイ香箱、時打ち香箱又は同様のタイプの香箱のエネルギ貯蔵機構に関する。
【0035】
本発明は、時計の香箱1を巻き上げるための角穴車2に関する。この角穴車2は、凸状又は凹状の枢動駆動手段42を含む真3に角穴車を嵌め込むための軸方向通路20を含む。
【0036】
本発明によると、この角穴車2は上記軸方向通路内に、角穴車2の真3上への嵌め込みを可能とする少なくとも1つのストリップばね230を含む。このストリップばね230は、真3の枢動駆動手段42に支承力を印加するよう配設される。この少なくとも1つのストリップばね230は、真3を枢動駆動するために上記枢動駆動手段42に相補的となっている相補的駆動手段23を形成する。
【0037】
図4、5に示す変形例では、角穴車2は、上記ストリップばね230それぞれについて、軸方向通路20へと開いているスロット231を含む。このタイプのストリップばね230は、角穴車2の上面21及び/又は下面から突出するよう設置できることに留意されたい。
【0038】
角穴車2は有利には、地板又は受け又は宝石に対する角穴車2の移動を制限するための、少なくとも1つの上側当接隅肉24を含む。
【0039】
角穴車2は有利には、軸方向通路20の直近に、ドラム又は香箱コアに対する角穴車2の移動を制限するための、少なくとも1つの下側当接隅肉25を含む。
【0040】
本発明はまた、少なくとも1つのゼンマイ7を含み、地板9と受け5との間に枢動可能に設置される、時計の香箱1にも関する。このゼンマイ7は、枢動ドラム6と蓋8との間に収容され、外端をドラム6に、内端を真3に引っかけられる。真3は、枢軸Dの周りでこのタイプの角穴車2と一体として枢動するよう設置される。
【0041】
本発明によると、真3は、枢軸Dに沿った円筒形ドラム要素31の周りに、ゼンマイ7を引っかけるための凸状のフック32と、角穴車2が備える相補的駆動手段23と協働して角穴車2を枢動駆動する、凸状又は凹状の枢動駆動手段42とを含む。駆動手段42は、従来の様式で、四角形又は平坦部分からなってよい。
図4は例えば、単一の平坦部分42を有する真3を有する、簡略化された非限定的な変形例を示す。材料の効率が良いバージョンでは、駆動手段42は凹状になっており、例えば真3の溝内の2つの平坦部分で形成され、そして角穴車2の相補的手段23は有利には、角穴車2の真3上への嵌め込みを可能とし、枢動駆動も保証する少なくとも1つのストリップばねからなる。
【0042】
これら枢動駆動手段42は、枢軸Dに沿った角穴車2のための軸方向停止部材を形成する。真3は上側肩部13において、受け5の又は受け5が備える宝石52の孔51内で枢動する。角穴車2は好ましくは、摩擦トルク及び効率の損失を低減するために、少なくとも1つの上側当接隅肉24を含み、この上側当接隅肉24の移動は、(図示されているように)受け5の又は宝石52の下面53によって制限される。角穴車2は、受け5と角穴車2の下面22の反対側にドラム6が備える上面61との間に設けられる。ドラム6は、ドラム6が備える孔62において、円筒形ドラム要素31上で枢動する。
【0043】
図2の第2の変形例では、ゼンマイ7は、枢軸Dの軸方向に、ドラム6の内面65上で支承されるよう配設された凸状の上側部分71と、蓋8の上側部分85上で支承されるよう配設された凸状の下側部分72とを含む。このようにして、真3のぐらつきはゼンマイ7によって補償される。
【0044】
ドラム6は蓋8を備えるが、この蓋8は好ましくは、必ずしもドラム6と一体として枢動するわけではなく、真3の肩部31と協働する孔81を有する。蓋8の下面82の移動は、地板9の又は地板9に収容される宝石92の上面93によって制限され、地板9の又は宝石92の孔91は、真3の肩部31のためのピボットとして作用する。
【0045】
ドラム6のぐらつきは、ドラム6の上面61によって角穴車2に対して下向きに制限され、ドラム6の上面61は、角穴車2の下面22によって制限される。角穴車2のぐらつきは、角穴車2の当接隅肉24によって受け5に対して下向きに制限され、角穴車2の当接隅肉24は、受け5の又は受け5が備える宝石52の下面53によって制限される。蓋8のぐらつきは、蓋8の下面82によって地板9に対して上向きに制限され、蓋8の下面82は、地板9又は地板9が備える宝石92の上面93によって制限される。
【0046】
主ゼンマイは、様々な材料:炭素鋼、ステンレス鋼、「Nivaflex(登録商標)」、シリコン、DLC、石英、ガラス等で作製してよい。特定の応用例において、ゼンマイ7は、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロム系合金で作製される。このゼンマイ7は好ましくは、3〜23、特に9〜21の幅厚比を有する。
【0047】
また、鋼又はステンレス鋼、例えば4C27A硬化性鋼(様々な規格に従って1.4197、ASTM 420F若しくはDIN X22 CrMoNiS 13 1とも呼ばれる)で作製された真3の肩部31の、枢軸Dに対する最大半径(フック32によるいずれの追加の厚さ分は考慮しない)は、ゼンマイ7の最大厚さの9倍未満である。特に、図示した実施形態では、ゼンマイ7の厚さに対する真3の肩部31の最大半径の比は、3〜9、好ましくは4〜6、より好ましくは略5とすることができる。
【0048】
本発明はまた、少なくとも1つの地板9及び受け5及びこのタイプの香箱1を含む、時計ムーブメント100にも関する。受け5は、角穴車2の当接隅肉24に加えて又は角穴車2の当接隅肉24の代わりに、角穴車2の上面21と、接触表面が可能な限り最小となる状態で協働するよう構成された、少なくとも1つのネットを含んでよい。
【0049】
図1の第1の変形例では、受け5は、ねじ若しくはリベット58を用いた固定、接着接合又は溶接等が施された上側停止プレート56を含み、上側停止プレート56の下面57は真3の軸方向移動を制限するよう配設される。地板9は、ねじ若しくはリベット98を用いた固定、接着接合又は溶接等が施された下側停止プレート96を含み、下側停止プレート96の下面97は真3の軸方向移動を制限するよう配設される。
【0050】
本発明はまた、このタイプのムーブメント100を含む、腕時計200にも関する。
【0051】
要するに、
図1の第1の変形例は、真3の直径が実質的に一定であり、フック32の機械加工が容易であり、駆動手段42の機械加工も同様に容易であるため、有利である。コアの直径は、枢動駆動手段42のサイズによってのみ制限される。
【0052】
図2の変形例では、真3のぐらつきはゼンマイ7によって補償され、真3は、第1の変形例の場合と同一の有利な低コストの構成を採用する。コアの直径は、典型的には四角形部分等である、駆動手段42の寸法によって制限される。
【手続補正書】
【提出日】2015年6月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の香箱を巻き上げるための角穴車に関し、上記角穴車は、凸状又は凹状の枢動駆動手段を含む真に上記角穴車を嵌め込むための軸方向通路を含む。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つのゼンマイを含み、時計の地板と受けとの間に枢動可能に設置される香箱にも関し、上記少なくとも1つのゼンマイは、枢動ドラムと蓋との間に収容され、その外端を上記ドラムに、その内端を真に引っかけられ、上記真は、枢軸の周りで上述のような角穴車と一体として枢動する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1つの地板、受け、上述のタイプの香箱を含む、時計ムーブメントにも関する。
【0004】
本発明はまた、上述のタイプのムーブメントを含む腕時計にも関する。
【0005】
本発明は時計機構の分野に関し、より具体的には主ゼンマイ香箱、時打ち香箱又は同様のタイプの香箱のエネルギ貯蔵機構に関する。
【背景技術】
【0006】
概ね円筒形である真又はより中実な突起で形成されたコアに内端が固定された主ゼンマイの回転数を増大させることによって、パワーリザーブを増大させるための1つの解決策は、香箱真の直径及び上記関連する突起の直径を低減して、ドラム内部のゼンマイのために利用可能な空間を増大させることからなる。
【0007】
ゼンマイの厚さに対するコアの半径の比は通常10〜20であり、本発明は、この比を10以下、好ましくは5〜10の範囲内にまで低減することを提案する。
【0008】
サイズ設定は小さすぎてはならない。コアの直径が小さすぎると、破損のリスクがある。
【0009】
従来の香箱の構造において、角穴車は四角形部分を介して香箱真又はコアに軸方向に設置され、角穴車は通常軸方向のねじによって固定される。よってこのねじ及び四角形部分の寸法は、枢動肩部の最小直径を画定する。枢動肩部に連結される段差部は、地板又は宝石若しくは同様の要素を支持する受けに対する、香箱真又はコアのぐらつき(endshake)を制限する。
【0010】
特に、全ての寸法を単に削減するだけでは十分でない。というのは、これにより材料の断面が耐疲労性を保証するには不十分なものとなるためである。
【0011】
従って問題は、できる限り大きいパワーリザーブを可能とするために、できる限り小さい直径と角穴車駆動装置の剛性との折り合いを付けることである。
【0012】
よってできる限り小さい真の直径によって、角穴車が伝達するトルクを受け渡すことができるような、角穴車及び真を有する香箱を考案する必要がある。
【0013】
ETAによる特許文献1は、ドラム要素を有する非円筒形の真を有する香箱を開示しており、ゼンマイを引っかけるフックは、ドラム要素の上側及び下側肩部が画定する幾何学的円筒によって範囲を定められた陥凹部に収容される。
【0014】
SOCIETE ODOによる非特許文献1は、ゼンマイを引っかけるためのフックを支持する管を備える、非円筒形の真を有する香箱を開示している。この真はサークリップのための肩部及び溝を含む。
【0015】
ERICKSONによる特許文献2は、ゼンマイを引っかけるためのフックを支持するコアを備える、長方形部分と呼ばれるファセット加工された部分を含む、非円筒形の真を開示している。
【0016】
BAUMGARTNERによる特許文献3は、香箱コアを支持するスリットスリーブを有する香箱を開示している。
【0017】
DANASINOによる特許文献4は、断面がドラムの外部から内部に向かって次第に増大するゼンマイを有する、香箱を開示している。
【0018】
GLASHUETTER UHRENBETRIEBによる特許文献5は、香箱真の軸方向移動を制限するカバープレートを有する、香箱を開示している。
【0019】
ETAによる特許文献6は、ゼンマイを引っかけるための長手方向溝を含む、単一部品の真を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】仏国特許第2329000A1号
【特許文献2】米国特許第730103A号
【特許文献3】仏国特許第2135134A1号
【特許文献4】スイス特許第15286A号
【特許文献5】仏国特許第1443494A号
【特許文献6】仏国特許第2210784A1号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】XP001219052A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、低減された数の構成部品、許容可能な機械加工コスト、又は好ましくは公知の香箱よりも経済的なコストを維持しながら、特に角穴車に関して高いレベルの剛性を得ることにより、大きなパワーリザーブのために考案された公知の香箱の設計を改良することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
従って本発明は、時計の香箱を巻き上げるための角穴車に関し、上記角穴車は、凸状又は凹状の枢動駆動手段を含む真に上記角穴車を嵌め込むための軸方向通路を含む。上記角穴車は、上記角穴車が上記軸方向通路内に、上記角穴車の上記真への嵌め込みを可能とし、かつ上記枢動駆動手段に支承力を印加するよう配設された少なくとも1つのストリップばねを含み、上記少なくとも1つのストリップばねは、上記真を枢動駆動するための相補的駆動手段を形成することを特徴とする。
【0024】
本発明はまた、少なくとも1つのゼンマイを含み、時計の地板と受けとの間に枢動可能に設置される香箱にも関し、上記少なくとも1つのゼンマイは、枢動ドラムと蓋との間に収容され、その外端を上記ドラムに、その内端を真に引っかけられ、上記真は、枢軸の周りで上述のような角穴車と一体として枢動する。この時計の香箱は、上記真が、上記枢軸に沿った円筒形ドラム要素の周りに、上記ゼンマイを引っかけるための凸状のフックと、上記角穴車が備える相補的駆動手段と協働して上記角穴車を枢動駆動する、凸状又は凹状の枢動駆動手段とを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の特徴によると、上記枢動駆動手段は、上記枢軸に沿った上記角穴車のための軸方向停止部材を形成し、上記真はその上側肩部において、上記受けの又は上記受けが備える宝石の孔内で枢動し、上記角穴車は、上記受け5の又は上記宝石の下面によって移動を制限される上側当接隅肉を含み、上記角穴車は、上記受けと上記角穴車の下面の反対側に上記ドラムが備える上面との間に設けられ、上記ドラムは、上記ドラムが備える孔において、上記円筒形ドラム要素上で枢動する。
【0026】
特定の変形例における本発明の特徴によると、上記ゼンマイは、上記枢軸の軸方向に、上記ドラムの内面上で支持されるよう配設された凸状の上側部分と、上記蓋の上側部分上で支持されるよう配設された凸状の下側部分とを含む。
【0027】
本発明のある特徴によると、上記ドラムのぐらつきは、上記ドラムの上面によって上記角穴車に対して下向きに制限され、上記ドラムの上面は、上記角穴車の下面によって制限され、上記角穴車のぐらつきは、上記角穴車の隅肉によって上記受けに対して下向きに制限され、上記角穴車の隅肉は、上記受けの又は上記受けが備える宝石の下面によって制限され、上記蓋のぐらつきは、上記蓋の下面によって上記地板に対して上向きに制限され、上記蓋の下面は、上記地板の又は上記地板が備える宝石の上面によって制限される。
【0028】
本発明の更に別の特徴によると、上記ゼンマイは、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロム系合金で作製され、上記ゼンマイは3〜23の幅厚比を有し、上記真のゼンマイ支承用肩部の最大半径と上記ゼンマイの厚さとの比は3〜9である。
【0029】
本発明はまた、少なくとも1つの地板、受け、上述のタイプの香箱を含む、時計ムーブメントにも関する。
【0030】
特定の変形例における本発明の特徴によると、上記受けは上側停止プレートを含み、上記上側停止プレートの下面は上記真の軸方向移動を制限するよう配設され、また上記地板は下側停止プレートを含み、上記下側停止プレートの上面は上記真の軸方向移動を制限するよう配設される。
【0031】
本発明はまた、上述のタイプのムーブメントを含む腕時計にも関する。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の第1の変形例による香箱の、枢軸を通る概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の変形例による香箱の、枢軸が通る概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明による香箱を含むムーブメントを含む時計のブロック図である。
【
図4】
図4は、(角穴車の正中面における断面図で示されている)真が備える平坦な駆動部分と協働する位置において示されているストリップばねを備える、本発明による角穴車の概略上面図である。
【
図5】
図5は、
図4の角穴車の枢軸を通る平面A−Aにおける、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は時計機構の分野に関し、より具体的には主ゼンマイ香箱、時打ち香箱又は同様のタイプの香箱のエネルギ貯蔵機構に関する。
【0035】
本発明は、時計の香箱1を巻き上げるための角穴車2に関する。この角穴車2は、凸状又は凹状の枢動駆動手段42を含む真3に角穴車を嵌め込むための軸方向通路20を含む。
【0036】
本発明によると、この角穴車2は上記軸方向通路内に、角穴車2の真3上への嵌め込みを可能とする少なくとも1つのストリップばね230を含む。このストリップばね230は、真3の枢動駆動手段42に支承力を印加するよう配設される。この少なくとも1つのストリップばね230は、真3を枢動駆動するために上記枢動駆動手段42に相補的となっている相補的駆動手段23を形成する。
【0037】
図4、5に示す変形例では、角穴車2は、上記ストリップばね230それぞれについて、軸方向通路20へと開いているスロット231を含む。このタイプのストリップばね230は、角穴車2の上面21及び/又は下面から突出するよう設置できることに留意されたい。
【0038】
角穴車2は有利には、地板又は受け又は宝石に対する角穴車2の移動を制限するための、少なくとも1つの上側当接隅肉24を含む。
【0039】
角穴車2は有利には、軸方向通路20の直近に、ドラム又は香箱コアに対する角穴車2の移動を制限するための、少なくとも1つの下側当接隅肉25を含む。
【0040】
本発明はまた、少なくとも1つのゼンマイ7を含み、地板9と受け5との間に枢動可能に設置される、時計の香箱1にも関する。このゼンマイ7は、枢動ドラム6と蓋8との間に収容され、外端をドラム6に、内端を真3に引っかけられる。真3は、枢軸Dの周りでこのタイプの角穴車2と一体として枢動するよう設置される。
【0041】
本発明によると、真3は、枢軸Dに沿った円筒形ドラム要素31の周りに、ゼンマイ7を引っかけるための凸状のフック32と、角穴車2が備える相補的駆動手段23と協働して角穴車2を枢動駆動する、凸状又は凹状の枢動駆動手段42とを含む。駆動手段42は、従来の様式で、四角形又は平坦部分からなってよい。
図4は例えば、単一の平坦部分42を有する真3を有する、簡略化された非限定的な変形例を示す。材料の効率が良いバージョンでは、駆動手段42は凹状になっており、例えば、真3の溝内の2つの平坦部分で形成され、そして角穴車2の相補的手段23は有利には、角穴車2の真3上への嵌め込みを可能とし、枢動駆動も保証する少なくとも1つのストリップばねからなる。
【0042】
これら枢動駆動手段42は、枢軸Dに沿った角穴車2のための軸方向停止部材を形成する。真3は上側肩部13において、受け5の又は受け5が備える宝石52の孔51内で枢動する。角穴車2は好ましくは、摩擦トルク及び効率の損失を低減するために、少なくとも1つの上側当接隅肉24を含み、この上側当接隅肉24の移動は、(図示されているように)受け5の又は宝石52の下面53によって制限される。角穴車2は、受け5と角穴車2の下面22の反対側にドラム6が備える上面61との間に設けられる。ドラム6は、ドラム6が備える孔62において、円筒形ドラム要素31上で枢動する。
【0043】
図2の第2の変形例では、ゼンマイ7は、枢軸Dの軸方向に、ドラム6の内面65上で支承されるよう配設された凸状の上側部分71と、蓋8の上側部分85上で支承されるよう配設された凸状の下側部分72とを含む。このようにして、真3のぐらつきはゼンマイ7によって補償される。
【0044】
ドラム6は蓋8を備えるが、この蓋8は好ましくは、必ずしもドラム6と一体として枢動するわけではなく、真3の肩部31と協働する孔81を有する。蓋8の下面82の移動は、地板9の又は地板9に収容される宝石92の上面93によって制限され、地板9の又は宝石92の孔91は、真3の肩部31のためのピボットとして作用する。
【0045】
ドラム6のぐらつきは、ドラム6の上面61によって角穴車2に対して下向きに制限され、ドラム6の上面61は、角穴車2の下面22によって制限される。角穴車2のぐらつきは、角穴車2の当接隅肉24によって受け5に対して下向きに制限され、角穴車2の当接隅肉24は、受け5の又は受け5が備える宝石52の下面53によって制限される。蓋8のぐらつきは、蓋8の下面82によって地板9に対して上向きに制限され、蓋8の下面82は、地板9又は地板9が備える宝石92の上面93によって制限される。
【0046】
主ゼンマイは、様々な材料:炭素鋼、ステンレス鋼、「Nivaflex(登録商標)」、シリコン、DLC、石英、ガラス等で作製してよい。特定の応用例において、ゼンマイ7は、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロム系合金で作製される。このゼンマイ7は好ましくは、3〜23、特に9〜21の幅厚比を有する。
【0047】
また、鋼又はステンレス鋼、例えば4C27A硬化性鋼(様々な規格に従って1.4197、ASTM 420F若しくはDIN X22 CrMoNiS 13 1とも呼ばれる)で作製された真3の肩部31の、枢軸Dに対する最大半径(フック32によるいずれの追加の厚さ分は考慮しない)は、ゼンマイ7の最大厚さの9倍未満である。特に、図示した実施形態では、ゼンマイ7の厚さに対する真3の肩部31の最大半径の比は、3〜9、好ましくは4〜6、より好ましくは略5とすることができる。
【0048】
本発明はまた、少なくとも1つの地板9及び受け5及びこのタイプの香箱1を含む、時計ムーブメント100にも関する。受け5は、角穴車2の当接隅肉24に加えて又は角穴車2の当接隅肉24の代わりに、角穴車2の上面21と、接触表面が可能な限り最小となる状態で協働するよう構成された、少なくとも1つのネットを含んでよい。
【0049】
図1の第1の変形例では、受け5は、ねじ若しくはリベット58を用いた固定、接着接合又は溶接等が施された上側停止プレート56を含み、上側停止プレート56の下面57は真3の軸方向移動を制限するよう配設される。地板9は、ねじ若しくはリベット98を用いた固定、接着接合又は溶接等が施された下側停止プレート96を含み、下側停止プレート96の下面97は真3の軸方向移動を制限するよう配設される。
【0050】
本発明はまた、このタイプのムーブメント100を含む、腕時計200にも関する。
【0051】
要するに、
図1の第1の変形例は、真3の直径が実質的に一定であり、フック32の機械加工が容易であり、駆動手段42の機械加工も同様に容易であるため、有利である。コアの直径は、枢動駆動手段42のサイズによってのみ制限される。
【0052】
図2の変形例では、真3のぐらつきはゼンマイ7によって補償され、真3は、第1の変形例の場合と同一の有利な低コストの構成を採用する。コアの直径は、典型的には四角形部分等である、駆動手段42の寸法によって制限される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の香箱(1)を巻き上げるための角穴車(2)であって、
前記角穴車(2)は、凸状又は凹状の枢動駆動手段(42)を含む真(3)に前記角穴車を嵌め込むための軸方向通路(20)を含む、時計の香箱(1)において、
前記角穴車(2)は前記軸方向通路(20)内に、前記角穴車(2)の前記真(3)への嵌め込みを可能とし、かつ前記枢動駆動手段(42)に支承力を印加するよう配設された、少なくとも1つのストリップばね(230)を含み、
前記少なくとも1つのストリップばね(230)は、前記真(3)を枢動駆動するための相補的駆動手段(23)を形成する
ことを特徴とする、時計の香箱(1)を巻き上げるための角穴車(2)。
【請求項2】
前記角穴車(2)は、前記ストリップばね(230)それぞれについて、前記軸方向通路(20)へと開いているスロット(231)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の角穴車(2)。
【請求項3】
前記角穴車(2)は、地板又は受け又は宝石に対する前記角穴車(2)の移動を制限するための、少なくとも1つの上側当接隅肉(24)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の角穴車(2)。
【請求項4】
前記角穴車(2)は、前記軸方向通路(20)の直近に、ドラム又は香箱コアに対する前記角穴車(2)の移動を制限するための、少なくとも1つの下側当接隅肉(25)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の角穴車(2)。
【請求項5】
少なくとも1つのゼンマイ(7)を含み、地板(9)と受け(5)との間に枢動可能に設置される、時計の香箱(1)であって、
前記ゼンマイ(7)は、枢動ドラム(6)と蓋(8)との間に収容され、外端を前記ドラム(6)に、内端を真(3)に引っかけられ、
前記真(3)は、枢軸(D)の周りで、請求項1〜4のいずれか1項に記載の角穴車(2)と一体として枢動するよう設置される、時計の香箱(1)であって、
前記真(3)は、前記枢軸(D)に沿った円筒形ドラム要素(31)の周りに、前記ゼンマイ(7)を引っかけるための凸状のフック(32)と、前記角穴車(2)が備える相補的駆動手段(23)と協働して前記角穴車(2)を枢動駆動する、凸状又は凹状の枢動駆動手段(42)とを含むことを特徴とする、時計の香箱(1)。
【請求項6】
前記枢動駆動手段(42)は、前記枢軸(D)に沿った前記角穴車(2)のための軸方向停止部材を形成すること;
前記真(3)は上側肩部(13)において、前記受け(5)の又は前記受け(5)が備える宝石(52)の孔(51)内で枢動すること;
前記角穴車(2)は、上側当接隅肉(24)を含み、前記上側当接隅肉(24)の移動は、前記受け(5)の又は前記宝石(52)の下面(53)によって制限され、前記角穴車(2)は、前記受け(5)と前記角穴車(2)の下面(22)の反対側の前記ドラム(6)の上面(61)との間に設けられること;及び
前記ドラム(6)は、前記ドラム(6)が備える孔(62)において、前記円筒形ドラム要素(31)上で枢動すること
を特徴とする、請求項5に記載の香箱(1)。
【請求項7】
前記ゼンマイ(7)は、前記枢軸(D)の軸方向に、前記ドラム(6)の内面(65)上で支承されるよう配設された凸状の上側部分(71)と、前記蓋(8)の上側部分(85)上で支承されるよう配設された凸状の下側部分(72)とを含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の香箱(1)。
【請求項8】
前記ドラム(6)は、前記ドラム(6)と一体として枢動する前記蓋(8)を備え、前記蓋(8)の孔(81)は前記真(3)の前記円筒形ドラム要素(31)と協働すること;及び
前記蓋(8)の下面(82)の移動は、前記地板(9)の又は前記地板(9)に収容される宝石(92)の上面(93)によって制限され、前記地板(9)の又は前記宝石(92)の孔(91)は、前記真(3)の前記円筒形ドラム要素(31)のためのピボットとして作用すること
を特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の香箱(1)。
【請求項9】
前記ドラム(6)のぐらつきは、前記ドラム(6)の前記上面(61)によって前記角穴車(2)に対して下向きに制限され、前記ドラム(6)の前記上面(61)は、前記角穴車(2)の前記下面(22)によって制限されること;
前記角穴車(2)のぐらつきは、前記角穴車(2)の前記隅肉(24)によって前記受け(5)に対して下向きに制限され、前記角穴車(2)の前記隅肉(24)は、前記受け(5)の又は前記受け(5)が備える前記宝石(52)の前記下面(53)によって制限されること;及び
前記蓋(8)のぐらつきは、前記蓋(8)の前記下面(82)によって前記地板(9)に対して上向きに制限され、前記蓋(8)の前記下面(82)は、前記地板(9)又は前記地板が備える前記宝石(92)の前記上面(93)によって制限されること
を特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の香箱(1)。
【請求項10】
前記ゼンマイ(7)は、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロム系合金で作製されること;
前記ゼンマイ(7)は3〜23の幅厚比を有すること;及び
前記真(3)のゼンマイ支承用肩部(31)の最大半径と前記ゼンマイ(7)の厚さとの比は3〜9であること
を特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の香箱(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの地板(9)、受け(5)、請求項5〜10のいずれか1項に記載の香箱(1)を含む、時計ムーブメント(100)。
【請求項12】
前記受け(5)は上側停止プレート(56)を含み、前記上側停止プレート(56)の下面(57)は前記真(3)の軸方向移動を制限するよう配設されること;及び
前記地板(9)は下側停止プレート(96)を含み、前記下側停止プレート(96)の上面(97)は前記真(3)の軸方向移動を制限するよう配設されること
を特徴とする、請求項11に記載のムーブメント(100)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のムーブメント(100)を含む、腕時計(200)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】